(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】部材加工方法、部材加工システム、部材の接合方法、電子部材、および加工の課金システム
(51)【国際特許分類】
B05D 3/06 20060101AFI20250121BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20250121BHJP
H01L 21/3213 20060101ALI20250121BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B05D3/06 Z
B05C9/12
H01L21/88 C
(21)【出願番号】P 2021017290
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵友
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-511720(JP,A)
【文献】特開2000-249821(JP,A)
【文献】特開2008-224781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
B05C 1/00-21/00
G02B 5/20-5/28
G03C 3/00-7/18
G03F 7/00-7/42
H01L 21/88-21/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の被加工面に、光反応性粒子を含む塗布溶液を塗布し、塗布膜を形成させる塗布工程と、
前記塗布膜中の前記光反応性粒子を前記部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化工程と、
光照射手段により、前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射工程と、を有し、
前記光が照射された、前記部材の被加工面近傍の前記光反応性粒子により、前記部材の被加工面を加工する、部材加工方法
であり、
前記粒子偏在化工程が、前記塗布膜の上に配置された第1の電極と、電圧印加手段と、を含む電界発生手段により電界を発生させ、前記塗布膜中の前記光反応性粒子を、前記部材の被加工面側に集中させる工程である、部材加工方法。
【請求項2】
前記光照射手段が、光源と、前記光源と前記塗布膜との間に配置される光シャッターと、を備え、
前記光照射工程において、光照射制御手段で前記光シャッターを制御し、前記光源からの光を前記塗布膜に選択的に透過させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電界発生手段が、前記部材を挟んで前記第1の電極と対向するように配置される第2の電極を含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電極が、複数の微細電極を含み、
前記電界発生手段が、前記第1の電極と、前記電圧印加手段と、電界制御手段とを備え、
前記粒子偏在化工程において、前記電界制御手段で前記微細電極を制御し、選択的に電圧を印加する、請求項
1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記光反応性粒子が、コアシェル粒子であり、
シェルが、フラーレン誘導体である、請求項1から
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記塗布溶液が、水を含む、請求項1から
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記光が、紫外線を含む、請求項1から
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
部材の被加工面に形成された塗布膜中の光反応性粒子を前記部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化手段と
前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射手段と、を備える部材加工装置を有する、部材加工システム
であり、
前記粒子偏在化手段が、前記部材の被加工面に形成された塗布膜の上に配置される第1の電極と、電圧印加手段と、を含み、前記塗布膜中の前記光反応性粒子の位置を制御するための電界を発生させる電界発生手段である、部材加工システム。
【請求項9】
前記部材加工装置と、前記光照射手段の光を制御する光照射制御手段と、を有し、
前記光照射手段が、光源と、前記光源と前記塗布膜の間に配置される光シャッターと、を含み、
前記光照射制御手段が、前記光シャッターの光の透過領域を制御する手段である、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記電界発生手段が、前記部材を挟んで前記第1の電極と対向するように配置される第2の電極を含む、請求項
8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の電極が、複数の微細電極を含み、
前記電界発生手段が、前記第1の電極と前記電圧印加手段との間に配置され、複数の前記微細電極と前記電圧印加手段との間の電気的接続をそれぞれ制御する電界制御手段を含む、請求項
8から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
第1の部材と第2の部材とを接合する部材の接合方法であり、
請求項1から
7のいずれかに記載の方法により、前記第1の部材の前記第2の部材との接合部に凹部を形成する工程と、
請求項1から
7のいずれかに記載の方法により、前記第2の部材の前記第1の部材との接合部に前記凹部に嵌合できる凸部を形成する工程と、
前記第2の部材の前記凸部を前記第1の部材の前記凹部にはめ込む工程と、を有する接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材加工方法および部材加工システム、ならびにそれを利用した部材の接合方法に関するものである。また、本発明は、電子部材に関するものである。また、本発明は、部材の課金システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などの微細加工では、フォトレジストなどを用いて、基板上にパターンを形成し、ドライエッチングなどにより、基板の加工を施し、その後に、フォトレジストを除去していた(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-109586号公報
【文献】特開2009-147215号公報
【文献】特開平5-136047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フォトレジストを利用した従来の加工方法は、加工工程が多いという問題があった。近年、半導体素子は、画像素子やメモリー、ロジックなどの組み合わせによりアセンブリ後の素子構造自体が複雑化し、プロセス負担が増大している。そのため、プロセス負担を低減できる、新たな3次元凹凸形成技術が求められていた。
【0005】
また、フォトレジストを利用した従来の加工方法は、基板上に所望のパターンを形成するために、複数のマスクが必要になり、多品種少量生産に対応することが難しかった。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、少ない工数で、精度よく加工ができ、形成させるパターンも簡単に変更できる部材の加工方法およびそのシステムを提供することである。また、本発明の目的は、本発明の加工方法を利用した部材の接合方法および電子部材を提供することである。また、加工の課金システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 部材の被加工面に、光反応性粒子を含む塗布溶液を塗布し、塗布膜を形成させる塗布工程と、前記塗布膜中の前記光反応性粒子を前記部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化工程と、光照射手段により、前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射工程と、を有し、前記光が照射された、前記部材の被加工面近傍の前記光反応性粒子により、前記部材の被加工面を加工する、部材加工方法。
<2> 前記光照射手段が、光源と、前記光源と前記塗布膜との間に配置される光シャッターと、を備え、前記光照射工程において、光照射制御手段で前記光シャッターを制御し、前記光源からの光を前記塗布膜に選択的に透過させる、前記<1>に記載の方法。
<3> 前記粒子偏在化工程が、前記塗布膜の上に配置された第1の電極と、電圧印加手段と、を含む電界発生手段により電界を発生させ、前記塗布膜中の前記光反応性粒子を、前記部材の被加工面側に集中させる工程である、前記<1>または<2>に記載の方法。
<4> 前記電界発生手段が、前記部材を挟んで前記第1の電極と対向するように配置される第2の電極を含む、前記<3>に記載の方法。
<5> 前記第1の電極が、複数の微細電極を含み、前記電界発生手段が、前記第1の電極と、前記電圧印加手段と、電界制御手段とを備え、前記粒子偏在化工程において、前記電界制御手段で前記微細電極を制御し、選択的に電圧を印加する、前記<3>または<4>に記載の方法。
<6> 前記光反応性粒子が、コアシェル粒子であり、シェルが、フラーレン誘導体である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の方法。
<7> 前記塗布溶液が、水を含む、前記<1>から<6>のいずれかに記載の方法。
<8> 前記光が、紫外線を含む、前記<1>から<7>のいずれかに記載の方法。
【0009】
<9> 部材の被加工面に形成された塗布膜中の光反応性粒子を前記部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化手段と前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射手段と、を備える部材加工装置を有する、部材加工システム。
<10> 前記部材加工装置と、前記光照射手段の光を制御する光照射制御手段と、を有し、前記光照射手段が、光源と、前記光源と前記塗布膜の間に配置される光シャッターと、を含み、前記光照射制御手段が、前記光シャッターの光の透過領域を制御する手段である、前記<9>に記載のシステム。
<11> 前記粒子偏在化手段が、前記部材の被加工面に形成された塗布膜の上に配置される第1の電極と、電圧印加手段と、を含み、前記塗布膜中の前記光反応性粒子の位置を制御するための電界を発生させる電界発生手段である、前記<9>または<10>に記載のシステム。
<12> 前記電界発生手段が、前記部材を挟んで前記第1の電極と対向するように配置される第2の電極を含む、前記<11>に記載のシステム。
<13> 前記第1の電極が、複数の微細電極を含み、前記電界発生手段が、前記第1の電極と前記電圧印加手段との間に配置され、複数の前記微細電極と前記電圧印加手段との間の電気的接続をそれぞれ制御する電界制御手段を含む、前記<11>または<12>に記載のシステム。
【0010】
<14> 第1の部材と第2の部材とを接合する部材の接合方法であり、前記<1>から<8>のいずれかに記載の方法により、前記第1の部材の前記第2の部材との接合部に凹部を形成する工程と、前記<1>から<8>のいずれかに記載の方法により、前記第2の部材の前記第1の部材との接合部に前記凹部に嵌合できる凸部を形成する工程と、前記第2の部材の前記凸部を前記第1の部材の前記凹部にはめ込む工程と、を有する接合方法。
<15> 複数の部材を有する電子部材であり、凹部が形成された接合部を有する第1の部材と、前記凹部に嵌合可能な凸部が形成された接合部を有する第2の部材とを有し、前記第1の部材の前記凹部に、前記第2の部材の前記凸部が嵌合され、電気的に接合されている電子部材。
【0011】
<16> 部材に行う加工に対応する加工パターン情報を有したパターンデータベースに利用者がアクセスして所定の前記加工パターン情報を取得するパターン情報取得手段を備えた端末と、前記端末と接続された加工手段とを備え、前記加工手段は、前記端末の加工パターン情報に基づいて前記部材を加工する加工の課金システムであって、前記加工パターン情報それぞれには、一定、あるいは、異なる料金が設定されており、前記端末が取得した加工パターン情報に応じた料金を前記利用者に請求する、加工の課金システム。
<17> 前記加工手段が、前記部材の被加工面に形成された塗布膜中の光反応性粒子を前記部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化手段、および前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射手段を備える部材加工装置であり、前記端末が、前記光照射手段を制御する光照射制御手段として用いられ、前記光照射制御手段において前記光照射手段の制御に用いられる情報として、前記加工パターン情報を用いた、前記<16>に記載の加工の課金システム。
<18> 前記光照射手段が、光源と、前記光源と前記塗布膜の間に配置される光シャッターと、を有し、前記加工パターン情報が、前記光シャッターの透過および非透過の情報である、前記<17>に記載の加工の課金システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少ない工数で、精度よく加工ができ、形成させるパターンも簡単に変更できる部材の加工方法およびそのシステムが提供される。また、本発明の加工方法を利用した部材の接合方法および電子部材が提供される。また、加工の課金システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明にかかる部材加工システムの模式図である。
【
図2】本発明にかかる部材加工方法を説明するための図である。
【
図3】粒子偏在化工程における光反応性粒子の動きと発生させる電界の向きを示した図である。
【
図4】光照射工程における光反応性粒子の動きを示した図である。
【
図5】本発明にかかる別の態様の部材加工システムの模式図である。
【
図6】本発明にかかる別の態様の部材加工システムの模式図である。
【
図7】粒子偏在化工程における光反応性粒子の動きと発生させる電界の向きを示した図である。
【
図8】光照射工程における光反応性粒子の動きを示した図である。
【
図9】光照射工程における光反応性粒子の動きを示した図である。
【
図10】本発明にかかる課金システムの模式図である。
【
図11】本発明にかかる課金システムの動作シーケンスである。
【
図12】本発明にかかる接合方法を説明するための図である。
【
図13】本発明にかかる接合方法により得られる電子部材の模式図である。
【
図14】本発明にかかる接合方法により得られる電子部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0015】
<部材加工方法>
本発明は、部材の被加工面に、光反応性粒子を含む塗布溶液を塗布し、塗布膜を形成させる塗布工程と、前記塗布膜中の前記光反応性粒子を前記部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化工程と、光照射手段により、前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射工程と、を有し、前記光が照射された、前記部材の被加工面近傍の前記光反応性粒子により、前記部材の被加工面を加工する、部材加工方法(以下、「本発明の部材加工方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
【0016】
本発明の部材加工方法の特徴のひとつは、光を利用し、光反応性粒子によって部材の被加工面を加工することである。本発明者は、部材の被加工面近傍に集中した水酸化フラーレンのような光反応性粒子によって、被加工面を加工することができることを発見した。光を照射することで光反応性粒子の触媒作用を促進させ、部材側に偏在(集中)した光反応性粒子と部材間で、化学反応を生じさせて部材を加工していったり、光を照射することで光反応性粒子が改質され、部材を加工していったりすると考えられる。このように光を利用して、光反応性粒子により部材の被加工面を加工することで、フォトレジストを使用する必要がないので、工数が減り、精度よく加工ができる。また、加工したいパターンに対応するように光を制御することで、簡単にパターンの異なる加工をすることができる。
【0017】
また、本発明者は、電界を利用することで、部材の被加工面の加工(除去)したい部分の近傍に、水酸化フラーレンのような光反応性粒子を偏在(集中)させることができることを発見した。光と電界を利用することで、加工パターンの変更などがより簡単に行え、所望のパターンに加工することできる。
【0018】
<部材の加工システム>
また、本発明は、部材の被加工面に形成された塗布膜中の光反応性粒子を前記部材の被加工面に集中させる粒子偏在化手段と、前記塗布膜中の前記光反応性粒子に光を照射する光照射手段と、備える部材加工装置を有する、部材加工システム(以下、「本発明の部材加工システム」と記載する場合がある。)に関するものである。
【0019】
本発明の部材加工システムを用いることで、本発明の部材加工方法を行うことができる。本発明の部材加工システムは、フォトレジストを使用せずに部材の加工を行うことができ、加工したいパターンの変更も容易に行うことができる。
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の加工方法およびそのシステムについて説明する。
【0021】
<部材加工システム100Aおよびこれを利用した部材加工方法>
図1は、本発明にかかる部材加工システム100Aの模式図である。
図2は、部材加工システム100Aを利用する本発明にかかる部材加工方法(以下、「部材加工方法A」とする)を説明するための図である。
図3は、粒子偏在化工程における光反応性粒子の動きと発生させる電界の向きを示した図である。
図4は、光照射工程における光反応性粒子の動きを示した図である。
【0022】
<部材加工システム100A>
図1に示す部材加工システム100Aは、電界発生手段3と、光照射手段4とを備える部材加工装置10aと、光照射制御手段12とを有する。
図2に示すように、加工対象の部材1の被加工面に光反応性粒子20を含む塗布膜2を形成させる塗布工程を行ったのち、部材加工システム100Aを利用して粒子偏在化工程および光照射工程を行うことで、部材1を加工することができる。
【0023】
[電界発生手段3]
電界発生手段3は、第1の電極30と電圧印加手段34とを備える。電界発生手段3は、粒子偏在化手段であり、部材1の被加工面に形成される塗布膜2中の光反応性粒子20の位置を制御するための電界を発生させるものである。
【0024】
(第1の電極30)
第1の電極30は、部材1の被加工面に形成された塗布膜2の上に配置される透明の電極である。第1の電極30は、第1の電極30に対して垂直方向上方の位置に配置される光照射手段4からの光を塗布膜2まで透過させることができる程度に透明であればよい。第1の電極30としては、ITOなどを用いることができる。なお、後述するように、第1の電極30は、複数の微細電極を有するものとしてもよい。また、第1の電極30は、金属配線を微細化して構成することもでき、例えば金属配線の配置部分と非配置部分を設ける構成とすることも可能でなる。例えば、金属配線の配置部分と非配置部分がメッシュ状に構成されたものや、金属配線の線幅を狭くし、ストライプ状に配置したものを第1の電極30としてもよい。
【0025】
(電圧印加手段34)
電圧印加手段34は、部材1と第1の電極30とを電気的に接続し、部材1と第1の電極30との間に電圧を印加できるものであればよく、直流電源、交流電源、パルス電源など一般的な電源を用いることができる。なお、前記の電源の選択は、加工速度や加工精度等を考慮して、選択することが好ましい。電圧印加手段34により、部材1と第1の電極30との間に電圧を印加し、部材1と第1の電極30との間に電界を発生させることができる。
【0026】
[光照射手段4]
光照射手段4は、光源40と、光シャッター42とを備える。光照射手段4は、部材1の被加工面に形成される塗布膜2中の光反応性粒子20に光を照射するものである。
【0027】
(光源40)
光源40は、部材1の被加工面に対して垂直方向上方に設置される、紫外線(波長10~400nm)を含む光を放射できる平面状の光源である。このような波長の範囲の光を照射できる光源としては、レーザー光源、エキシマランプ、UV-LED、低圧水銀ランプなどを用いることができる。照射強度は、レーザー光源の場合では、0.8mW~1.3mWが好ましく、1mW前後(例えば、0.9mW~1.1mW)がより好ましい。その他の光源であれば、70mW~120mWが好ましく、100mW前後(例えば、90mW~110mW)がより好ましい。
【0028】
なお、光源40から放射される光は、紫外線領域の波長に限定されず、光反応性粒子20に対して感度が良い波長であればいずれも選択可能である。例えば、光源40から放射される光は、10nm~780nmの波長を含んでよい。紫外線領域の光を用いることが、加工速度の面などから好ましい。
【0029】
(光シャッター42)
光シャッター42は、光源40から照射された光のうち、加工したい形状に応じた部分の光のみを透過させるものである。光シャッター42としては、液晶光シャッターなどを用いることができる。液晶間の電圧を制御することで、光の透過を制御することができる。また、部材加工システム100Aでは、光シャッター42は、光源40と塗布膜2との間に配置される。光シャッター42は、塗布膜2から0.01mm~1.00mm離れた位置に配置されることが好ましい。0.01mmより狭くなると、第1の電極30を薄くしなければならず、第1の電極30の機械的強度が低下してしまう可能性がある。1.00mmより広くなると、塗布膜2と光シャッター42との距離が離れることで、光の拡散現象が生じ、高精度に加工できない可能性がある。
【0030】
[光照射制御手段12]
光照射制御手段12は、光照射手段4により照射される光のパターンを制御する手段である。部材加工システム100Aでは、光照射制御手段12は、光シャッター42の光の透過領域を選択、制御するものである。光照射制御手段12としては、コンピューターなどの端末を用いることができる。コンピューターに保存(記憶)された加工パターンや、ネットやサーバー上のパターンデータベースから、目的のパターンの情報を端末に読み出す。次いで、パターンに対応する部分が光の透過領域となるように液晶等を制御する加工パターン情報を端末から光シャッター42に送信し、光の透過領域を制御する。
【0031】
<部材加工方法A>
図2に示す部材加工方法Aは、塗布工程と、粒子偏在化工程と、光照射工程とを有する。
【0032】
[塗布工程]
塗布工程は、部材1の被加工面に、光反応性粒子20を含む塗布溶液を塗布し、塗布膜2を形成させる工程である(
図2の(a)から(b)参照)。
【0033】
(部材1)
部材加工システム100Aは、加工する部材1を、第1の電極30と対向する電極として用いるものである。部材1と第1の電極30との間に電圧印加が可能な材料であればよく、部材1に特に制限はない。具体的には、金、銀、銅、アルミ、鉄などの金属単体やその合金、前記金属単体や合金に添加物を添加した金属材料、導電性樹脂、導電性セラミックなどの導電性材料で形成された部材(基板など)を用いることができる。また、シリコン基板や二酸化ケイ素(SiC)、炭化ケイ素(SiO2)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、サファイアなどの半導体材料で形成された部材(基板など)を用いることができる。好ましい部材1は、銅(Cu)等の金属基板である。
【0034】
(光反応性粒子20)
光反応性粒子20とは、光照射時に部材1との反応性を有する粒子、および/または、光によって光反応性粒子20自身が部材1を除去できる粒子に改質される性質を有する粒子である。また、光反応性粒子20は、その表面が正または負に帯電している、表面電荷を有するものである。これにより、電界の向きを制御することで光反応性粒子20は部材1の被加工面近傍に偏在する。
【0035】
表面電荷が正(プラス)である光反応性粒子20としては、TTF(テトラチアフルバレン)やアルカリ金属などドナー原子や分子や、これらの原子や分子を表面に有する粒子などが挙げられる。また、表面電荷が負(マイナス)である光反応性粒子20としては、フラーレン誘導体やフラーレン誘導体を表面に有する粒子などが挙げられる。
【0036】
例えば、銅(Cu)等の金属基板の部材1に対しては、水酸化フラーレンや、後述する水酸化フラーレンをシェルとして有するコアシェル粒子が、光反応性粒子20として好適である。
【0037】
光反応性粒子20は、コアシェル粒子であることが好ましい。コアシェル粒子は、コア粒子が粒子状のシェルで被覆されたもの、または、コア粒子が層状のシェルで被覆されたものである。コアの粒径は0.05~1μm程度とできる。また、シェルは、1~10nm程度の粒子または層である。
【0038】
コア粒子は、シリカや二酸化ケイ素、ダイヤモンドなどの硬質粒子とすることができる。シェルは、フラーレン誘導体とすることができる。フラーレン誘導体としては、例えば、フラーレンC60、フラーレンC70、水酸化フラーレンC60、水酸化フラーレンC70、水素化フラーレンC60、水素化フラーレンC70、フラーレンスート、オニオンライクカーボン等が挙げられる。これらのフラーレン誘導体のなかでも、入手が容易、かつ、水に対する分散性が高いという点で、水酸化フラーレンC60がより好ましい。
【0039】
シェルが水酸化フラーレンであるコアシェル粒子を含む塗布溶液は、例えば、ダイヤモンドやシリカなどのコア粒子とする材料が分散した水分散液と、水酸化フラーレン水溶液とを混合することで簡単に得ることができる。コア粒子にシェルを吸着させるときの温度(混合時温度)は、例えば、通常-20℃以上80℃以下であり、0℃以上60℃以下が好ましく、5℃以上40℃以下がより好ましく、10℃以上35℃以下が特に好ましい。コア粒子にシェルを吸着させるときの時間(混合時間)は、例えば、通常0.05時間以上24時間以下であり、0.1時間以上12時間以下が好ましく、0.5時間以上6時間以下がより好ましい。
【0040】
また、コア粒子とする材料が分散した水分散液と、水酸化フラーレン水溶液とを混合するときにpH調整剤を用いて、pHを調整してもよい。pH調整剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムなどの塩基性物質や、クエン酸などの酸性物質が挙げられる。また、界面活性剤や分散剤を混合してもよい。フラーレン誘導体で被覆されたコアシェル粒子を用いる場合、分散性を高めるために、塗布溶液のpHはアルカリ性であることが好ましい。具体的には、pHは、10~12が好ましい。また、界面活性剤や分散材を混合してもよい。
【0041】
得られた溶液はそのまま塗布溶液として用いてもよい。また、光反応性粒子20(コアシェル粒子)を濃縮したい場合には、このアルカリ状態から酸性状態にすることで光反応性粒子20を分離することが可能である。この濃縮された、光反応性粒子を再びアルカリ性にすることで、塗布溶液として用いることができ、この場合、より光反応性粒子の濃度が濃い塗布溶液を作製することができる。
【0042】
(塗布溶液)
塗布溶液は、光反応性粒子20が溶媒に溶解または分散したものである。塗布溶液に含まれる溶媒としては、水、有機溶剤、アルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。塗布溶媒は、使用する光源の波長を吸収しにくい物質を選択することが好ましい。
【0043】
塗布溶液中の光反応性粒子の濃度は、5質量%以上15質量%以下が好ましい。光反応性粒子の量が少なすぎると、加工が難しい場合がある。また、光反応性粒子の量が多すぎるとコスト的に不利になることがあり、製品の価格が上がる可能性がある。
【0044】
(塗布方法)
部材1の被加工面に塗布膜2を形成させる方法としては、スプレー、インクジェット、スリットコート、ブレードコート、スピンコート、ディップコートなどの方法が挙げられる。特に、スピンコートでは、塗布膜2の中に気泡を生じることが少ないので好ましい。
【0045】
(塗布膜2)
塗布膜2は、光反応性粒子20と溶媒22とを含む膜である。塗布膜2に対する光反応性粒子20の質量比は、5~15質量%である。塗布膜2に対して光反応性粒子20が少なすぎると加工が難しい場合がある。また、塗布膜2に対して光反応性粒子20が多すぎるとコスト的に不利になることがあり、製品の価格が上がる可能性がある。
【0046】
塗布膜2の厚さは、2μm~15μmが好ましい。塗布膜2の厚さが厚すぎると塗布膜が外部へ流れ出す可能性があったり、各部材間の平行度などを保つことができる可能性があり加工精度が低下する可能性がある。また、塗布膜2の厚さが薄すぎると光反応性粒子の絶対量が少なくなり塗布工程の頻度が増すことになり、生産性が低下する可能性がある。そのため、塗布膜2の厚さは、10μm程度が最適と考えられ、5μm以上、7μm以上、9μm以上の順で膜厚が厚くなる程より好ましい。また、その上限は、13μm以下、12μm以下、11μm以下の順で膜厚が薄くなる程より好ましい。
【0047】
塗布工程後、部材1の被加工面に形成された塗布膜2の上に第1の電極30を配置し、粒子偏在化工程(電界発生工程)を行う(
図2の(c)参照)。
【0048】
[粒子偏在化工程]
粒子偏在化工程は、塗布膜2の上に配置された第1の電極と電圧印加手段34とを含む電界発生手段3により電界を発生させ、塗布膜2中の光反応性粒子20を、部材1の被加工面に集中させる工程である(
図2の(c)から(d)、
図3参照)。
【0049】
第1の電極30と部材1とをそれぞれ電圧印加手段34に接続し、電圧を印加することで、第1の電極30と部材1との間に電界を発生させることができる。印加する電圧は120~1000Vとすることができる。
【0050】
電界は、塗布膜2中の光反応性粒子20が、部材1側に移動し集中するように発生させる必要があり、発生させる電界の向きは、光反応性粒子20の表面電荷に応じて決定される。
図3(a)に示すように、光反応性粒子20として、表面電荷がプラスである光反応性粒子20pを用いた場合、第1の電極30から部材1に向かう方向に電界が発生するように電圧を印加する。これにより、部材1側がマイナスとなり、光反応性粒子20pが部材1側に移動する。また、
図3(b)に示すように、光反応性粒子20として、表面電荷がマイナスである光反応性粒子20nを用いた場合、部材1から第1の電極30に向かう方向に電界が発生するように電圧を印加する。これにより、部材1側がプラスとなり、光反応性粒子20nが部材1側に移動する。
【0051】
[光照射工程]
光照射工程は、部材1の被加工面に対して垂直方向上方の位置に配置された光照射手段4により、部材1の被加工面に形成された塗布膜2に光を照射する工程である(
図2の(e)~(f)、
図4参照)。部材加工方法Aの光照射工程では、電界発生手段3により電界をかけた状態を維持しながら、目的の加工パターンとなるように、光照射制御手段12で光シャッター42を制御し、目的の加工パターンに対応するように、光源か40からの光Lを塗布膜2に選択的に透過させる。これにより、目的の加工パターンの部分の光反応性粒子20のみに光Lが照射される。電界により部材1の被加工面に集中した光反応性粒子20に光Lが照射されることで、光反応性粒子20により部材1の被加工面を除去し、所定のパターンを形成させることができる。
【0052】
光照射時間は、予め測定しておいた光照射時間と加工深さなどの関係を求めておき、その関係に基づいて光照射時間を決定することができる。また、加工深さなどをモニタリングすることで、光照射時間を決定してもよい。
【0053】
<部材加工システム100Bおよびこれを利用した部材加工方法>
図5は、本発明にかかる部材加工システム100Bの模式図である。部材加工システム100Bは、電界発生手段3の代わりに電界発生手段3bを有すること以外は部材加工システム100Aと同じであるので、対応する部分には
図1と同符号を付してその説明を省略する。また、部材加工システム100Bを利用する本発明の部材加工方法(以下、「部材加工方法B」とする)は、粒子偏在化工程において、電界発生手段3の代わりに電界発生手段3bを用いて電界を発生させること以外は部材加工方法Aと同じである。
【0054】
<部材加工システム100B>
図5に示す部材加工システム100Bは、電界発生手段3bと、光照射手段4とを備える部材加工装置10bと、光照射制御手段12とを有する。加工対象の部材1bの被加工面に光反応性粒子20を含む塗布膜2を形成させる塗布工程を行ったのち、部材加工システム100Bを利用して粒子偏在化工程および光照射工程を行うことで、部材1bを加工することができる。
【0055】
電界発生手段3bは、第1の電極30と第2の電極32と電圧印加手段34とを備える。電界発生手段3bは、粒子偏在化手段であり、電界発生手段3と同様に、部材1bの被加工面に形成される塗布膜2中の光反応性粒子20の位置を制御するための電界を発生させるものである。第2の電極32は、部材1bを挟んで第1の電極30と対向するように配置される。第1の電極30と第2の電極32とを電圧印加手段34にそれぞれ接続し、電圧を印加することで第1の電極30と第2の電極32との間に電界を発生させることができる。
【0056】
第2の電極32は、導電性材料であればよい。具体的には、金、銀、銅、アルミ、鉄などの導電材料単体や、前記導電材料単体に添加物を添加したもの、あるいは導電性材料単体と他の材料の合金でもよい。あるいは、導電性樹脂や導電性セラミックでもよく、加工方法に適した材料を適宜選択することができる。
【0057】
<部材加工方法B>
部材加工システム100Bは、部材1bを挟んで対向する第1の電極と第2の電極32との間に電圧を印加して、加工を行うものであるので、部材加工方法Bによって加工される部材1bは、導電性材料で形成された部材と非導電材料で形成された部材のどちらも用いることができる。具体的には、部材1bは、部材1と同様と同様に、金属材料、導電性樹脂、導電性セラミックなどの導電性材料で形成された部材や、シリコン基板や二酸化ケイ素(SiC)、炭化ケイ素(SiO2)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、サファイアなどの半導体材料で形成された部材(基板など)を用いることができる。また、部材1bは、非導電材料で形成された部材であってもよいので、シリカ系ガラスやサファイア系ガラスなどのガラス系材料も用いることができる。
【0058】
部材加工方法Bでは、塗布工程後、部材1bの被加工面に形成された塗布膜2の上に第1の電極30を配置し、部材1bを挟んで対向するように第2の電極32を配置し、粒子偏在化工程(電界発生工程)を行う。
【0059】
部材加工方法Bにおいて、粒子偏在化工程は、第1の電極30と第2の電極32と電圧印加手段34とを含む電界発生手段3bにより電界を発生させ、塗布膜2中の光反応性粒子20を、部材1b側に移動させ、集中させる工程である。電圧印加手段34により第1の電極30と第2の電極32との間に印加する電圧は、120~1000Vとすることができる。
【0060】
また、部材加工方法Aと同様に、光反応性粒子20の表面電荷に応じて、塗布膜2中の光反応性粒子20が、部材1b側に移動するように電圧は印加する。光反応性粒子20の表面電荷がプラスである場合、第1の電極30から、第2の電極32に向かう方向に電界が発生するように電圧を印加する。また、光反応性粒子20の表面電荷がマイナスである場合、第2の電極32から、第1の電極30に向かう方向に電界が発生するように電圧を印加する。
【0061】
<部材加工システム100Cおよびこれを利用した部材加工方法>
図6は、部材加工システム100Cの模式図である。部材加工システム100Cは、電界発生手段3の代わりに電界発生手段3cを有し、光照射手段4の代わりに光照射手段4c(光源40)を有すること以外は部材加工システム100Aと同じであるので、対応する部分には
図1と同符号を付してその説明を省略する。また、部材加工システム100Cを利用する本発明の部材加工方法(以下、「部材加工方法C」とする)は、粒子偏在化工程において、電界発生手段3の代わりに電界発生手段3cを用いて電界を発生させ、光照射工程において、光照射手段4の代わりに光照射手段4cを用いて光を照射すること以外は部材加工方法Aと同じである。
【0062】
<部材加工システム100C>
図6に示す部材加工システム100Cは、電界発生手段3cと、光照射手段4cとを備える部材加工装置10cを有する。加工対象の部材1の被加工面に光反応性粒子20を含む塗布膜2を形成させる塗布工程を行ったのち、部材加工システム100Cを利用して粒子偏在化工程および光照射工程を行うことで、部材1を加工することができる。
【0063】
電界発生手段3cは、第1の電極30cと電圧印加手段34と電界制御手段36とを備える。電界発生手段3cは、粒子偏在化手段であり、電界発生手段3、3bと同様に、部材1の被加工面に形成される塗布膜2中の光反応性粒子20の位置を制御するための電界を発生させるものである。
【0064】
(第1の電極30c)
第1の電極30cは、部材1の被加工面に形成された塗布膜2の上に配置される電極であり、複数の微細電極31を有する。第1の電極30cは、光を塗布膜2まで透過させることができる程度に透明であればよい。第1の電極30cとしては、微細なITO電極を透明基板に埋没したものなどを用いることができる。
【0065】
(電界制御手段36)
電界制御手段36は、第1の電極30cと電圧印加手段34との間に配置され、各微細電極31と電圧印加手段34との間の電気的接続をそれぞれ制御するものである。電界制御手段36によって、加工パターンに対応する部分の微細電極31にのみ電流が流れるように制御し、加工パターンに対応する微細電極31と部材1との間にのみ電圧を印加させる。この電界制御手段36は、例えば、後述するように、加工パターン情報が記憶された端末を電極制御手段として用いて、電極制御手段から送信された加工パターン情報に基づいて制御することができる。
【0066】
<部材加工方法C>
部材加工方法Cでは、塗布工程後、部材1の被加工面に形成された塗布膜2の上に第1の電極30を配置し、粒子偏在化工程(電界発生工程)および光照射工程を行う。
【0067】
部材加工方法Cにおいて、粒子偏在化工程は、第1の電極30cと電圧印加手段34と電界制御手段36とを含む電界発生手段3cにより電界を発生させ、塗布膜2中の光反応性粒子20を、部材1側に移動させ、集中させる工程である(
図7参照)。このとき、目的の加工パターンとなるように、電界制御手段36で、第1の電極30cを構成する微細電極31と電圧印加手段34との間の電気的接続をそれぞれ制御し、目的の加工パターンに対応する部分の微細電極31と部材1との間に選択的に電圧を印加する。電圧は、部材加工方法Aと同様に、光反応性粒子20の表面電荷に応じて、塗布膜2中の光反応性粒子20が、部材1側に移動する(偏る、集中する)ように印加する。これにより、目的の加工パターンに対応する部分の光反応性粒子のみが部材1の被加工面に集中する。印加する電圧は120~1000Vとすることができる。
【0068】
部材加工方法Cにおいて、光照射工程は、部材1の被加工面に対して垂直方向上方の位置に配置された光照射手段4cにより、部材1の被加工面に形成された塗布膜2に光Lを照射する工程である(
図8参照)。部材加工方法Cでは、目的の加工パターンに対応する部分のみに電圧が印加され、目的の加工パターンに対応する部分の光反応性粒子のみが被加工面に集中している。そのため、光シャッター42を介さずに、光源40を用いて部材1の被加工面全体に向かって光Lを照射しても、目的の加工パターンに加工することができる。
【0069】
また、部材加工方法Cにおいては、加工途中において、電圧を印加している微細電極31の周りの別の微細電極31に電圧を印加したり、電圧の印加を止めたりすることで、複雑な加工を部材1に施すことができる。例えば、
図9のような加工も施すことができる。すなわち、加工途中で中央の微細電極31の両脇の微細電極31に電圧を印加することで、中央部の深さが深くなった凹部を部材1に形成できる。
【0070】
なお、部材加工方法A~Cは、粒子偏在化工程の後に光照射工程を行う方法として説明したが、粒子偏在化工程と光照射工程の順番は特に限定されない。光照射工程の後に粒子偏在化工程を行ってもよい。この場合、塗布膜に光を照射した状態を維持しながら、粒子偏在化工程を行い、部材を加工する。また、粒子偏在化工程と光照射工程とを同時に行ってもよい。
【0071】
本発明の部材加工方法は、部材の被加工面に凹部および/または凸部を形成させる加工方法として好適である。例えば、本発明の部材加工方法により、部材の被加工面に、1~100nmや1~50nm程度の深さの凹部や、1~100nmや1~50nm程度の高さの凸部を形成させることができる。具体的には、本発明の部材加工方法は、半導体搭載の基板を加工する方法や半導体ICの組み立て方法とすることができる。
【0072】
なお、本発明の部材加工システムの構成よれば、課金システムによるビジネスモデルも考えられる。例えば、
図10に示すような、部材加工装置201と、コンピューター202(端末)と、パターンデータベース203と、を有する部材加工システムを利用した課金システム200を例として説明する。
【0073】
部材加工装置201は、部材の被加工面に形成された塗布膜中の光反応性粒子を部材の被加工面側に集中させる粒子偏在化手段、および塗布膜中の光反応性粒子に光を照射する光照射手段を備えるものである。部材加工装置201としては、前述の部材加工装置10a、10b、10c等を用いることができる。コンピューター202は、パターンデータベース203に加工パターン情報の取得を要求する情報取得手段や、データベース203からの受信した加工パターン情報を記憶する記憶手段、部材加工装置201の粒子偏在化手段を制御する電極制御手段、部材加工装置201の光照射手段を制御する光照射制御手段等を有する。パターンデータベース203は、部材に行う加工に対応する加工パターン情報(例えば、光シャッターの透過および非透過の情報や、電極の通電および非通電の情報など)が複数記憶された情報記憶手段等を有する。また、コンピューター202とパターンデータベース203は、通信回線Nを介して相互に接続されている。部材加工装置201は、有線または無線にてコンピューター202に接続されている。
【0074】
図11は、課金システム200の動作シーケンスの例である。課金システム200は、部材の加工に利用する加工パターン情報を、加工パターン情報を利用したい利用者と、パターンデータベース203を有する事業者との間で売買するためのものである。すなわち、利用者(ユーザー)は、予めパターンデータベース203を運用する法人などの事業者と、契約をする。次に、利用者が必要な情報、例えば後述する半導体IC等の組み立てに最適な加工パターン情報を所望する場合、利用者が所有するコンピューター202上から、パターンデータベース203にアクセスして、コンピューター202の情報取得手段から、パターンデータベース203に対して所望の加工パターン情報の取得要求を行う(S210)。取得要求した加工パターン情報に応じた料金の請求(課金処理)(S221)およびそれに対する支払い(S222)が行われると、パターンデータベース203より所望の加工パターン情報(信号)が通信回線Nなどを介して、コンピューター202に送信される(S230)。所望の加工パターン情報を受信したコンピューター202は、加工パターン情報をメモリ等に記憶する(S240)。そして、コンピューター202は、記憶した加工パターン情報に基づき、部材加工装置201の光シャッターや電極等を制御し、部材に加工を施す(S250、260)。例えば、コンピューター202を光照射制御手段として機能させ、コンピューター202に記憶された加工パターン情報を部材加工装置201に送信し光照射手段を制御したり、コンピューター202を電極制御手段として機能させ、コンピューター202に記憶された加工パターン情報を部材加工装置201に送信し粒子偏在化手段を制御したりすることで、部材の被加工面を所望の加工パターンに研削する。
【0075】
加工パターン情報には、料金が設定されている。この際に、パターンデータベース側で、パターン情報の希少性や難易度によって、料金を異ならせたり、あるいは希少性や難易度に関係なく料金を一定とすることもできる。上記の通り、加工パターン情報の購入(取得)を希望する利用者は、所定の料金を振り込むことなどによって、購入が成立する。この購入処理は、例えば、決済代行会社の決済代行サーバーに対して、コンピューター202から支払いを行うことにより実現してもよい。このように、本発明の部材加工システムは、ネットビジネスなどにも適応可能である。課金システム200により、利用者は、加工パターン情報を簡単に取得でき、形成させる加工パターンを簡単に変更することができる。
【0076】
<部材の接合方法>
本発明の部材加工方法により形成された部材の被加工面の凹部および/または凸部を利用して、部材同士を接合することができる。本発明の部材加工方法を利用する本発明の接合方法は、電子部材の各種部材の接合に好適である。これにより、凹部が形成された接合部を有する第1の部材と、前記凹部に嵌合可能な凸部が形成された接合部を有する第2の部材と、を有し、前記第1の部材の前記凹部に、前記第2の部材の前記凸部が嵌合され、接合されている電子部材を得ることができる。電子部材を構成する第1の部材や第2の部材としては、Siチップや配線基板、蓋、カメラ、メモリー、CPU、電源などの各種部材が挙げられる。
【0077】
図12に示す、第1の部材である配線基板50と、第2の部材である半導体素子60との接合を例として、本発明の接合方法を具体的に説明する。まず、本発明の部材加工方法により、配線基板50の半導体素子60との接合部52に凹部54を形成する。また、本発明の部材加工方法により、半導体素子60の配線基板50との接合部62に対して、配線基板50の凹部54に嵌合できる凸部64を形成する。次いで、半導体素子60の凸部64を配線基板50の凹部54にはめ込み、配線基板50と半導体素子60とを接合する。これにより、凹部54が形成された接合部52を有する配線基板50と、凹部54に嵌合可能な凸部64が形成された接合部62を有する半導体素子60と、を有し、配線基板50と半導体素子60とが嵌合して接合されている電子部材が得られる。
【0078】
また、配線基板50の接合部52の形状と、半導体素子60の接合部62の形状は、互いに嵌合できればよいので、配線基板50の接合部52に凸部を形成し、半導体素子60の接合部62に凹部を形成し、互いに嵌合させてもよい。また、凹凸形状は、嵌合によるチップ間の固定と端子の役割を有するものとできる。
【0079】
また、本発明の接合方法は、配線基板と半導体素子の接合に限定されないので、
図13および
図14に示すように、Siチップや配線基板、蓋、カメラ、メモリー、CPU、電源などの各種部材の接合に用いることができる。このように本発明の部材加工方法および接合方法により、パッケージのレイアウトに合わせ加工エリアを自由に選択できる。
【0080】
なお、本発明の接合方法は、本発明の部材加工方法を用いて、凹凸部を形成したが、他の方法でも実現可能である。本発明の接合方法は、多品種少量生産の半導体モジュールを生産するうえで、非常に有用であり、凹凸部の形成によって、各チップの配置のバリエーションが豊富かつ、各チップ間の容易になるとともに、チップ間の及びチップと基板間等の接合強度や接合精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の部材加工システムおよび部材加工方法によれば、半導体分野の各部材を接合させるための加工などを行うことができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0082】
1、1b 部材
2 塗布膜
3、3b、3c 電界発生手段
4、4c 光照射手段
10a、10b、10c、201 部材加工装置
12 光照射制御手段
20、20p、20n 光反応性粒子
22 溶媒
30、30c 第1の電極
31 微細電極
32 第2の電極
34 電圧印加手段
36 電界制御手段
40 光源
42 光シャッター
50 配線基板
52、62 接合部
54 凹部
60 半導体素子
64 凸部
100A、100B、100C 部材加工システム
200 課金システム
202 コンピューター
203 パターンデータベース