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特許7623094レーザーリフトオフ用の積層基板、基板処理方法、及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】レーザーリフトオフ用の積層基板、基板処理方法、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023545446
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2022031324
(87)【国際公開番号】W WO2023032706
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2021142969
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大池 昇
(72)【発明者】
【氏名】今井 清隆
(72)【発明者】
【氏名】廣田 良浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基之
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-106197(JP,A)
【文献】国際公開第2021/131711(WO,A1)
【文献】特開2021-114534(JP,A)
【文献】特開2003-163323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーリフトオフ用の積層基板であって、
レーザー光線を透過する第1基板と、前記レーザー光線を吸収する第1絶縁層と、前記レーザー光線を透過する第1ポリシリコン層と、前記レーザー光線を吸収する第2絶縁層と、前記レーザー光線を透過する第2ポリシリコン層と、第1デバイス層と、をこの順番で備え、
前記第1絶縁層を貫通して前記第1基板と前記第1ポリシリコン層とを電気的に接続する第1電極と、前記第2絶縁層を貫通して前記第1ポリシリコン層と前記第2ポリシリコン層とを電気的に接続する第2電極と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極は、前記レーザー光線を透過する材料を含み、平面視にて重なることなく離れている、レーザーリフトオフ用の積層基板。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極は、ポリシリコンを含む、請求項1に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板。
【請求項3】
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層は、一方の厚みが他方の厚みよりも大きい、請求項1又は2に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板。
【請求項4】
前記第2絶縁層と前記第2ポリシリコン層との間に、前記レーザー光線を反射する導電層を更に備える、請求項1又は2に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板。
【請求項5】
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層は、シリコン酸化層である、請求項1又は2に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板。
【請求項6】
前記第1デバイス層と電気的に接続される第2デバイス層と、前記第2デバイス層が形成される第2基板と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板は、前記第1デバイス層と前記第2デバイス層を介して接合されている、請求項1又は2に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板を準備することと、
前記第1基板を介して前記レーザー光線を前記第1絶縁層に照射することで、前記第1基板と前記第1絶縁層の界面、前記第1絶縁層の内部、前記第1ポリシリコン層と前記第2絶縁層の界面、又は前記第2絶縁層の内部に剥離起点を形成することを有する、基板処理方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のレーザーリフトオフ用の積層基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部で保持されている前記積層基板に対して、前記レーザー光線を照射する照射器と、
前記照射器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1基板を介して前記レーザー光線を前記第1絶縁層に照射することで、前記第1基板と前記第1絶縁層の界面、前記第1絶縁層の内部、前記第1ポリシリコン層と前記第2絶縁層の界面、又は前記第2絶縁層の内部に剥離起点を形成する制御を行う、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザーリフトオフ用の積層基板、基板処理方法、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハなどの基板の上にデバイス層を形成する際に、プラズマCVD(Chemical Vapor Depositon)、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)、又はプラズマエッチングなどが用いられている。プラズマの照射によって、荷電粒子が蓄積してしまうと、デバイス層が破損してしまう。そこで、デバイス層が破損しないように、放電経路を形成することが提案されている(例えば非特許文献1参照)。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Z. Wang, A. Scarpa, S. Smits, C. Salm, F. Kuper, "Temperature Effect on Antenna Protection Strategy for Plasma-Process Induced Charging Damage," International Symposium on Plasma and Process-Induced Damage, pp. 134-137, 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、放電経路を介したデバイス層に対するレーザー光線の照射を抑制し、デバイス層の破損を抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るレーザーリフトオフ用の積層基板は、レーザー光線を透過する第1基板と、前記レーザー光線を吸収する第1絶縁層と、前記レーザー光線を透過する第1ポリシリコン層と、前記レーザー光線を吸収する第2絶縁層と、前記レーザー光線を透過する第2ポリシリコン層と、第1デバイス層と、をこの順番で備える。前記積層基板は、前記第1絶縁層を貫通して前記第1基板と前記第1ポリシリコン層とを電気的に接続する第1電極と、前記第2絶縁層を貫通して前記第1ポリシリコン層と前記第2ポリシリコン層とを電気的に接続する第2電極と、を備える。前記第1電極と前記第2電極は、前記レーザー光線を透過する材料を含み、平面視にて重なることなく離れている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、放電経路を介したデバイス層に対するレーザー光線の照射を抑制でき、デバイス層の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る積層基板を示す断面図である。
図2図2は、一実施形態に係る基板処理装置による剥離起点の形成を示す断面図である。
図3図3は、剥離起点の配置の一例を示す断面図である。
図4図4は、一実施形態に係る基板処理装置による剥離を示す断面図である。
図5図5は、第1変形例に係る積層基板を示す断面図である。
図6図6は、第1絶縁層の厚みと、剥離起点の形成に必要なレーザー光線のエネルギーとの関係の一例を示す図である。
図7図7は、第2変形例に係る積層基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において「平面視」とは、積層基板1のレーザー光線LBを照射する面に対して垂直な方向から見ることを意味する。
【0009】
図1を参照して、一実施形態に係るレーザーリフトオフ用の積層基板1について説明する。積層基板1は、例えば、第1基板11と、第1絶縁層12と、第1ポリシリコン層13と、第2絶縁層14と、第2ポリシリコン層15と、第1デバイス層16と、をこの順番で備える。レーザーリフトオフは、詳しくは後述するが、図2図4に示すように、第1基板11を透過するレーザー光線LBを用いて、第1基板11を第1デバイス層16から剥離する技術である。
【0010】
第1基板11は、例えばシリコンウェハである。第1基板11は、シリコンウェハには限定されず、化合物半導体ウェハ、又はガラス基板であってもよい。第1基板11の片面には、第1絶縁層12と、第1ポリシリコン層13と、第2絶縁層14と、第2ポリシリコン層15と、第1デバイス層16とがこの順番で形成される。その後、後述する第1接合層17が形成されてもよい。
【0011】
第1絶縁層12は、図3に示すように、レーザー光線LBを吸収し、剥離起点12aを形成する。剥離起点12aには、せん断応力などでクラックが形成される。剥離起点12aには、第1絶縁層12を改質した改質層が形成されてもよい。剥離起点12aは、第1基板11と第1絶縁層12の界面に形成されるが、第1絶縁層12の内部に形成されてもよい。
【0012】
第1絶縁層12は、絶縁性を有する。絶縁性の材料は、レーザー光線LBの吸収性に優れている。第1絶縁層12は、例えば酸化層である。酸化層の具体例としては、シリコン酸化層が挙げられる。酸化層は、熱酸化法、CVD(Chemical Vapor Depositon)法、又はALD(Atomic Layer Deposition)法などで形成される。CVD法でシリコン酸化層を形成する場合、シリコン酸化層の原料としてTEOS(Tetra Ethoxy Silane)などが用いられる。なお、第1絶縁層12は、シリコン窒化層、又はシリコン炭窒化層などであってもよい。
【0013】
第1絶縁層12には、貫通穴が形成される。その貫通穴には、第1電極18が設けられる。第1電極18は、第1絶縁層12を貫通して、第1基板11と第1ポリシリコン層13を電気的に接続する。第1電極18は、第1デバイス層16の形成時に第1デバイス層16に蓄積する荷電粒子(例えば電子又は正孔)を第1基板11に放電する放電経路の一部として用いられる。
【0014】
第1デバイス層16の形成には、プラズマCVD、プラズマALD、又はプラズマエッチングなどが用いられる。プラズマの照射によって、荷電粒子が蓄積してしまうと、第1デバイス層16が破損してしまう。本実施形態によれば、第1電極18などが放電経路を形成するので、第1デバイス層16の破損を抑制できる。
【0015】
第1電極18は、例えばポリシリコンを含み、例えば1.0×1019/cm以上3.0×1020/cm未満の不純物濃度を有する。不純物(ドーパント)は、電子を提供するドナーでもよいし、正孔を提供するアクセプターでもよい。不純物濃度が1.0×1019/cm以上であれば、放電性が良い。不純物濃度が3.0×1020/cm未満であれば、第1電極18はレーザー光線LBに対して高い透過率を有する。
【0016】
第1ポリシリコン層13は、上記の放電経路の一部である。第1ポリシリコン層13は、例えば1.0×1019/cm以上3.0×1020/cm未満の不純物濃度を有する。不純物は、ドナーでもよいし、アクセプターでもよい。不純物濃度が1.0×1019/cm以上であれば、放電性が良い。不純物濃度が3.0×1020/cm未満であれば、第1ポリシリコン層13はレーザー光線LBに対して高い透過率を有する。
【0017】
第2絶縁層14は、レーザー光線LBを吸収する。第2絶縁層14におけるレーザー光線LBの吸収率は、例えば70%~100%である。高い強度のレーザー光線LBが第1デバイス層16に照射されるのを抑制でき、第1デバイス層16の破損を抑制できる。第2絶縁層14は、第1絶縁層12と同じ厚みを有するが、後述するように異なる厚みを有してもよい。
【0018】
第2絶縁層14は、第1絶縁層12と同様に、絶縁性を有する。絶縁性の材料は、レーザー光線LBの吸収性に優れている。第2絶縁層14は、例えば酸化層である。酸化層の具体例としては、シリコン酸化層が挙げられる。酸化層は、熱酸化法、CVD法、又はALD法などで形成される。なお、第2絶縁層14は、シリコン窒化層、又はシリコン炭窒化層などであってもよい。
【0019】
第2絶縁層14には、貫通穴が形成される。その貫通穴には、第2電極19が設けられる。第2電極19は、第2絶縁層14を貫通して、第1ポリシリコン層13と第2ポリシリコン層15を電気的に接続する。第2電極19は、上記の放電経路の一部である。第2電極19は、例えばポリシリコンを含み、例えば1.0×1019/cm以上3.0×1020/cm未満の不純物濃度を有する。不純物は、ドナーでもよいし、アクセプターでもよい。
【0020】
第2ポリシリコン層15は、上記の放電経路の一部である。第2ポリシリコン層15は、例えば1.0×1019/cm以上3.0×1020/cm未満の不純物濃度を有する。不純物は、ドナーでもよいし、アクセプターでもよい。不純物濃度が1.0×1019/cm以上であれば、放電性が良い。不純物濃度が3.0×1020/cm未満であれば、第2ポリシリコン層15はレーザー光線LBに対して高い透過率を有する。
【0021】
第1デバイス層16は、例えば半導体素子を含む。第1デバイス層16は、例えば3D NANDセル、ロジックセル、又はDRAMセルなどを含む。
【0022】
ところで、仮に積層基板1が第2絶縁層14を備えていない場合、レーザー光線LBは、第1電極18を透過した後、第2絶縁層14で吸収されずに、そのまま第1デバイス層16に照射されてしまう。高い強度のレーザー光線LBが第1デバイス層16に照射されてしまうので、第1デバイス層16が破損してしまう。
【0023】
本実施形態の積層基板1は第2絶縁層14を備えている。それゆえ、レーザー光線LBは、図3に二点鎖線の矢印で示すように、第1電極18を透過した後、第2絶縁層14で吸収される。よって、高い強度のレーザー光線LBが第1デバイス層16に照射されるのを抑制でき、第1デバイス層16の破損を抑制できる。なお、第1電極18の外側では、レーザー光線LBは、図3に実線の矢印で示すように、第1絶縁層12で吸収されるので、第1デバイス層16を破損しない。
【0024】
ところで、第1ポリシリコン層13と、第2ポリシリコン層15と、第1電極18と、第2電極19は、レーザー光線LBを透過する材料(例えばポリシリコン)を含む。仮に平面視にて(図3において上方から見て)、第1電極18と第2電極19が重なっている場合、レーザー光線LBは、第1電極18を透過した後、第2電極19を透過し、そのまま第1デバイス層16に到達してしまう。
【0025】
本実施形態では、平面視にて、第1電極18と第2電極19は重なることなく離れている。従って、レーザー光線LBは、図3に二点鎖線の矢印で示すように、第1電極18を透過した後、第2絶縁層14で吸収される。よって、高い強度のレーザー光線LBが第1デバイス層16に照射されるのを抑制でき、第1デバイス層16の破損を抑制できる。
【0026】
積層基板1は、第1デバイス層16を基準として第1基板11とは反対側に、第1接合層17と、第2接合層27と、第2デバイス層26と、第2基板21と、をこの順番で備えてもよい。第1基板11と第2基板21は、第1デバイス層16と第2デバイス層26を介して接合される。
【0027】
第1接合層17は、第1デバイス層16の表面に形成される。第1接合層17は、シリコン酸化層などの絶縁層である。第1接合層17は、第1デバイス層16と第2デバイス層26を電気的に接続する配線を含んでもよい。第1接合層17は、第2接合層27に接する接合面17aを有する。接合面17aは、第1接合層17と第2接合層27を向かい合わせて接合する前に、プラズマなどで活性化されてもよく、更に水又は水蒸気の供給によって親水化されてもよい。
【0028】
第2基板21は、例えばシリコンウェハである。第2基板21は、シリコンウェハには限定されず、化合物半導体ウェハ、又はガラス基板であってもよい。第2基板21の第1基板11との対向面には、第2デバイス層26と、第2接合層27とがこの順番で形成される。
【0029】
第2デバイス層26は、例えば半導体素子を含む。第2デバイス層26は、第1デバイス層16と電気的に接続される。第2デバイス層26は、第1デバイス層16とは異なる機能を有する。例えば、第2デバイス層26がCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ロジック回路を含み、第1デバイス層16が3D NANDセルを含む。
【0030】
第2接合層27は、第1接合層17と同様に、シリコン酸化層などの絶縁層である。第2接合層27は、第1デバイス層16と第2デバイス層26を電気的に接続する配線を含んでもよい。第2接合層27は、第1接合層17に接する接合面27aを有する。接合面27aは、プラズマなどで活性化されてもよく、更に水又は水蒸気の供給によって親水化されてもよい。
【0031】
第1接合層17と第2接合層27は、ファンデルワールス力(分子間力)及びOH基同士の水素結合などで接合される。水素結合の脱水縮合反応で共有結合が生じてもよい。液体の接着剤を使用せずに、固体同士を直接貼り合わせるので、接着剤の変形などによる位置ずれを防止できる。また、接着剤の厚みムラなどによる傾きの発生を防止できる。
【0032】
なお、積層基板1は、第1基板11と、第1絶縁層12と、第1ポリシリコン層13と、第2絶縁層14と、第2ポリシリコン層15と、第1デバイス層16と、をこの順番で備えればよい。積層基板1は、第1接合層17、第2接合層27、第2デバイス層26、及び第2基板21を備えなくてもよい。
【0033】
次に、図2図4を参照して、一実施形態に係る基板処理装置3と、基板処理装置3を用いた基板処理方法について説明する。基板処理装置3は、第1基板11を透過するレーザー光線LBを用いて、第1基板11を第1デバイス層16から剥離する。基板処理装置3は、例えば、第1基板保持部31と、照射器32と、第1駆動部33と、第2基板保持部34と、第2駆動部35と、制御部39と、を備える。
【0034】
第1基板保持部31は、図2に示すように、積層基板1を保持する。第1基板保持部31は、例えば、第1基板11を上に向けて、積層基板1を下方から水平に保持する。第1基板保持部31は、例えば真空チャックである。第1駆動部33は、第1基板保持部31を水平方向に移動させ、鉛直な回転軸を中心に回転させる。第1駆動部33は、第1基板保持部31を鉛直方向に移動させてもよい。
【0035】
照射器32は、第1基板保持部31で保持されている積層基板1に対してレーザー光線LBを照射する。レーザー光線LBは、例えば赤外線であり、例えば8.8μm~11μmの波長を有する。第1基板11であるシリコンウェハは赤外線に対して高い透過性を有し、第1絶縁層12は赤外線に対して高い吸収性を有する。第1絶縁層12におけるレーザー光線LBの照射点に、剥離起点12aが形成される。
【0036】
照射器32は、レーザー光線LBを発振する発振器を含む。発振器は、レーザー光線LBをパルス発振させる。発振器は、例えばCOレーザーである。COレーザーの波長は、約9.3μmである。照射器32は、集光レンズを含んでもよい。集光レンズは、レーザー光線LBを積層基板1に向けて集光する。
【0037】
照射器32は、積層基板1におけるレーザー光線LBの照射点を移動させるべく、ガルバノスキャナ又はポリゴンスキャナを含んでもよい。なお、第1駆動部33が、第1基板保持部31を水平方向に移動させること又は鉛直な回転軸を中心に回転させることで、積層基板1におけるレーザー光線LBの照射点を移動させてもよい。この場合、ガルバノスキャナなどは不要である。
【0038】
第2基板保持部34は、図4に示すように、積層基板1を保持する。第2基板保持部34は、第1基板保持部31とは反対側(例えば上方)から、積層基板1を保持する。第2基板保持部34は、例えば真空チャックである。第2駆動部35は、第2基板保持部34を水平方向に移動させ、鉛直な回転軸を中心に回転させる。第2駆動部35は、第2基板保持部34を鉛直方向に移動させてもよい。
【0039】
制御部39は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)391と、メモリなどの記憶媒体392とを備える。記憶媒体392には、基板処理装置3において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部39は、記憶媒体392に記憶されたプログラムをCPU391に実行させることにより、基板処理装置3の動作を制御する。
【0040】
制御部39は、照射器32と第1駆動部33を制御することで、第1基板11と第1絶縁層12の界面に剥離起点12aを形成する制御を行う。剥離起点12aは、第1基板11の径方向と周方向に間隔をおいて多数形成される。複数の剥離起点12aは、同心円状に配置されてもよいし、渦巻き状に配置されてもよい。なお、剥離起点12aは、上記の通り、第1絶縁層12の内部に形成されてもよい。
【0041】
その後、制御部39は、第2駆動部35を制御することで、第1基板11を第1デバイス層16から剥離する制御を行う。例えば、第1基板保持部31が第2基板21を吸着し、第2基板保持部34が第1基板11を吸着した状態で、第2駆動部35が第2基板保持部34を上昇させる。複数の剥離起点12aを面状につなぐクラックが形成され、第1基板11と第1デバイス層16とが剥離される。
【0042】
なお、制御部39は、第2基板保持部34の上昇の代わりに、又は第2基板保持部34の上昇に加えて、第1基板保持部31の下降を行ってもよい。制御部39は、第1基板保持部31と第2基板保持部34を相対的に上下方向に離間させればよい。制御部39は、第1基板保持部31又は第2基板保持部34の回転を行ってもよい。
【0043】
次に、図5を参照して、第1変形例に係るレーザーリフトオフ用の積層基板1について説明する。以下、上記実施形態と第1変形例との相違点について主に説明する。図5に示すように、第1絶縁層12の厚みt1は、第2絶縁層14の厚みt2よりも大きくてもよい。第1絶縁層12の厚みt1は、例えば1.0μm超である。第2絶縁層14の厚みt2は、例えば0.5μm~1.0μmである。
【0044】
図6に、第1絶縁層12の厚みt1と、剥離起点12aの形成に必要なレーザー光線LBのエネルギーEとの関係の一例を示す。図6に示すように、第1絶縁層12の厚みt1が大きいほど、必要なエネルギーEは小さくなる。第1絶縁層12の厚みt1が大きいほど、第1絶縁層12によるレーザー光線LBの吸収率が高く、熱が生じやすく、小さなエネルギーEで所望のせん断応力が得られるからである。
【0045】
第1絶縁層12の厚みt1が第2絶縁層14の厚みt2よりも大きければ、小さなエネルギーEのレーザー光線LBを用いて第1絶縁層12に剥離起点12aを形成できるだけではなく、第2絶縁層14に剥離起点が形成されるのを抑制でき、意図しない位置で剥離が生じるのを抑制できる。
【0046】
なお、第1絶縁層12の厚みt1と第2絶縁層14の厚みt2の大小関係は逆でも良く、第2絶縁層14の厚みt2が第1絶縁層12の厚みt1よりも大きくてもよい。この場合、剥離起点12aは、第1ポリシリコン層13と第2絶縁層14の界面、又は第2絶縁層14の内部に形成される。
【0047】
次に、図7を参照して、第2変形例に係るレーザーリフトオフ用の積層基板1について説明する。以下、上記実施形態と第2変形例との相違点について主に説明する。図7に示すように、積層基板1は、第2絶縁層14と第2ポリシリコン層15の間に、レーザー光線LBを反射する導電層41を有してもよい。導電層41におけるレーザー光線LBの反射率は、例えば70%~100%である。
【0048】
導電層41は、上記の放電経路の一部である。導電層41は、例えば遷移金属、導電性酸化物、又はポリシリコンなどを含む。遷移金属は、例えば、Cu、Co、Ru、Mo、W、Tiからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。導電性酸化物は、例えば、IGZO(インジウムとガリウムと亜鉛を含む酸化物)、又はITO(酸化インジウムスズ)などを含む。導電層41に含まれるポリシリコンは、第2ポリシリコン層15よりも高い不純物濃度を有し、例えば3.0×1020/cm以上3.0×1021/cm以下の不純物濃度を有する。
【0049】
導電層41は、レーザー光線LBを反射することで、第1デバイス層16に到達するレーザー光線LBの強度を低下でき、第1デバイス層16の破損を確実に抑制できる。
【0050】
以上、本開示に係るレーザーリフトオフ用の積層基板、基板処理方法、及び基板処理装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0051】
本出願は、2021年9月2日に日本国特許庁に出願した特願2021-142969号に基づく優先権を主張するものであり、特願2021-142969号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0052】
1 積層基板
11 第1基板
12 第1絶縁層
13 第1ポリシリコン層
14 第2絶縁層
15 第2ポリシリコン層
16 第1デバイス層
18 第1電極
19 第2電極
LB レーザー光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7