(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】双極型鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/114 20210101AFI20250121BHJP
H01M 10/18 20060101ALI20250121BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20250121BHJP
H01M 50/529 20210101ALI20250121BHJP
【FI】
H01M50/114
H01M10/18
H01M50/121
H01M50/529
(21)【出願番号】P 2020205123
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 涼音
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530450(JP,A)
【文献】特開2001-239589(JP,A)
【文献】特開平07-006751(JP,A)
【文献】特表2014-534582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/06-10/18
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル部材と樹脂で形成された基板とが交互に複数積層されて前記セル部材同士が直列に接続された双極型鉛蓄電池であって、
前記セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を備えた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を備えた負極と、前記正極と前記負極との間に介在する電解層と、を有し、
前記基板は、当該基板の一面と他面を連通させる連通孔を有し、
前記基板の前記連通孔の内部に位置して、前記基板の一面側に存在する前記正極用鉛層と前記基板の他面側に存在する前記負極用鉛層とを電気的に接続する接続手段を備え、
前記基板の前記連通孔の内壁面の略周方向全長に、前記接続手段の少なくとも一部が固定保持され
、
前記接続手段は、前記基板の前記連通孔の内部に挿入された導通体である双極型鉛蓄電池。
【請求項2】
前記接続手段は、前記基板に直接的に固定保持されている請求項1に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項3】
前記樹脂は、金属結合性樹脂である請求項1
または請求項
2に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項4】
前記金属結合性樹脂は
、酸性の官能基を分子構造に有する熱可塑性樹脂である請求項
3に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項5】
前記金属結合性樹脂は、熱硬化性樹脂である請求項
3に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項6】
前記金属結合性樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に、無機材料と結合可能な無機材結合性官能基及び有機材料と結合可能な有機材結合性官能基を分子構造に有するカップリング剤を含有させたものである請求項
3に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項7】
前記無機材結合性官能基は、シリル基,チタネート,アルミネート,ホスホン酸誘導体から選択される少なくとも一種である請求項
6に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項8】
前記有機材結合性官能基は、ビニル基,アクリル基,エポキシ基,アミノ基,イソシアネート基,酸無水物から選択される少なくとも一種である請求項
6に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体,ポリメチルメタクリレート,ポリアミド,ポリカーボネート,フッ素樹脂から選択される少なくとも一種である請求項
4又は請求項
6に記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂,エポキシ樹脂
,ポリイミド,不飽和ポリエステルから選択される少なくとも一種である請求項
5又は請求項
6に記載の双極型鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された鉛蓄電池は、額縁形をなす樹脂からなるフレームの内側に、樹脂からなる基板が取り付けられている。基板の一面及び他面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が配設されている。正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載された鉛蓄電池は、一面側と他面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池であって、セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔(連通孔)の内部に入り込んで接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような特許文献1に記載の従来の双極型鉛蓄電池においては、例えば、基板と正極用鉛層との間に電解液が浸入してしまうと、穿孔を介して基板と負極用鉛層との間に浸入して液洛を生じてしまい、電圧低下を引き起こして性能低下を生じてしまうおそれがあった。
【0007】
このようなことから、本発明は、液洛の発生を大きく抑制することができる双極型鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため、本発明は、以下の構成(1)~(3)を有する双極型鉛蓄電池を提供する。
(1)セル部材と樹脂で形成された基板とが交互に複数積層されてセル部材同士が直列に接続された双極型鉛蓄電池である。言い換えれば、複数のセル部材が間隔を開けて積層配置され、積層方向で隣り合うセル部材の間に樹脂製の基板が配置され、セル部材同士が直列に電気的に接続された双極型鉛蓄電池である。
(2)セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を備えた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を備えた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有する。
(3)基板は、基板の一面と他面を連通させる連通孔を有する。基板の連通孔の内部に位置して、基板の一面側に存在する正極用鉛層と基板の他面側に存在する負極用鉛層とを電気的に接続する接続手段を備える。基板の連通孔の内壁面の略周方向全長に、接続手段の少なくとも一部が固定保持されている。
ここで、略周方向全長とは、実質的に本発明の効果を損なわない程度であれば、完全に周方向全長ではなくてもよいことを示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る双極型鉛蓄電池によれば、正極用鉛層及び負極用鉛層の一方と基板上との間に電解液が浸入しても、正極用鉛層及び負極用鉛層の他方と基板上との間への連通孔を介した電解液の浸入を防止することができるので、液洛の発生を大きく抑制し、電圧低下の発生を大きく減らして性能低下を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る双極型鉛蓄電池の第一の実施形態の概略構成を表す断面図である。
【
図2】
図1の双極型鉛蓄電池の一部抽出拡大図である。
【
図3】本発明に係る双極型鉛蓄電池の第二の実施形態の概略構成を表す断面図である。
【
図4】
図3の双極型鉛蓄電池の一部抽出拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る双極型鉛蓄電池の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
〈第一の実施形態〉
本発明に係る双極型鉛蓄電池の第一の実施形態を
図1,2に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の双極(バイポーラ)型鉛蓄電池100は、複数のセル部材150と、複数の内部用フレームユニット110と、第一の端部用フレームユニット120と、第二の端部用フレームユニット130を有する。
複数のセル部材150は、
図1の上下方向に、間隔を開けて積層配置されている。内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、および第二の端部用フレームユニット130は、複数のセル部材150を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成する。
【0013】
内部用フレームユニット110は、平面形状が長方形の基板111と、四角状の枠形(額縁形)のリム(フレーム)112とからなる。内部用フレームユニット110の基板111は、
図1の上下方向(セル部材150の積層方向)で隣り合うセル部材150の間に配置されている。複数の内部用フレームユニット110を構成する各リム112は、
図1の上下方向(セル部材150の積層方向)で互いに対向する接合面を備えている。
基板111には、一方面側(
図1,2中、下方面側)と他方面側(
図1,2中、上方面側)との間を連通する連通孔111aが複数形成されている。
基板111はリム112の内側に一体化されている。内部用フレームユニット110は樹脂製である。基板111は、リム112の厚さ方向(
図1,2中、上下方向)の中程に位置している。リム112は、基板111の厚さよりも厚い厚さ(例えば、3倍)となっている。
【0014】
第一の端部用フレームユニット120は、平面形状が長方形の第一の端板121と、四角状の枠形(額縁形)の第一の端部リム(フレーム)122とからなる。第一の端板121は第一の端部リム122の内側に一体化されている。第一の端部用フレームユニット120は樹脂製である。
第一の端部用フレームユニット120は、双極型鉛蓄電池100の一方端側(
図1,2中、下方端側)において、セル部材150の側面と負極152側を囲うものである。第一の端板121がセル部材150の負極152側を囲い、第一の端部リム122が、セル部材150の側面を囲っている。
【0015】
第一の端板121は、内部用フレームユニット110の基板111と平行に配置され、第一の端部リム122は、隣に位置する内部用フレームユニット110のリム112と接するように配列されている。
第一の端板121は、基板111の厚さよりも厚い厚さ(例えば、2倍)となっている。第一の端部リム122は、第一の端板121の厚さよりも厚い厚さ(例えば、2倍)となっている。第一の端板121は、第一の端部リム122の厚さ方向(
図1中、上下方向)で一方寄り(
図1中、下方寄り)に位置するように設定されている。
【0016】
第二の端部用フレームユニット130は、平面形状が長方形の第二の端板131と、四角状の枠形(額縁形)の第二の端部リム(フレーム)132とからなる。第二の端板131は第二の端部リム132の内側に一体化されている。第二の端部用フレームユニット130は樹脂製である。
第二の端部用フレームユニット130は、双極型鉛蓄電池100の他方端側(
図1中、上方端側)において、セル部材150の側面と正極151側を囲うものである。第二の端板131がセル部材150の正極151側を囲い、第二の端部リム132が、セル部材150の側面を囲っている。
【0017】
第二の端板131は、内部用フレームユニット110の基板111と平行に配置され、第二の端部リム132は、隣に位置する内部用フレームユニット110のリム112と接するように配列されている。
第二の端板131は、基板111の厚さよりも厚い厚さ(例えば、2倍)となっている。第二の端部リム132は、第二の端板131の厚さよりも厚い厚さ(例えば、2倍)となっている。第二の端板131は、第二の端部リム132の厚さ方向(
図1中、上下方向)で他方寄り(
図1中、上方寄り)に位置するように設定されている。
【0018】
基板111の一面上には、正極用鉛層101が配設されている。基板111の他面上には、負極用鉛層102が配設されている。基板111を挟んで対向する正極用鉛層101と負極用鉛層102とが、連通孔111aの内部へそれぞれ凹形に窪むように入り込んで加熱圧接加工等により直接的に接合されている。
正極用鉛層101上には、正極用活物質層103が配設されている。負極用鉛層102上には、負極用活物質層104が配設されている。対向する正極用活物質層103と負極用活物質層104との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層105が配設されている。
【0019】
第一の端板121の他面上には、負極用鉛層102が配設されている。第一の端板121上の負極用鉛層102には、負極用活物質層104が配設されている。第一の端板121上の負極用活物質層104と、対向する基板111の正極用活物質層103との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層105が配設されている。
第二の端板131の一面上には、正極用鉛層101が配設されている。第二の端板131上の正極用鉛層101には、正極用活物質層103が配設されている。第二の端板131上の正極用活物質層103と、対向する基板111の負極用活物質層104との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層105が配設されている。
第一の端板121上の負極用鉛層102には、第一の端板121の外側へ導通する負極端子108が設けられている。第二の端板131上の正極用鉛層101には、第二の端板131の外側へ導通する正極端子107が設けられている。
【0020】
つまり、本実施形態の双極型鉛蓄電池100においては、一面側と他面側とを連通させる連通孔111aを有する基板111とセル部材150とが交互に複数積層されて、セル部材150同士が直列に接続されている。セル部材150は、正極用鉛層101に正極用活物質層103を設けた正極151と、負極用鉛層102に負極用活物質層104を設けた負極152と、正極と負極との間に介在する電解層105と、を有する。
そして、基板111の連通孔111aの内部に位置して、基板の一面側に存在する正極用鉛層101と基板の他面側に存在する負極用鉛層102とを電気的に接続する接続手段として、接続部106を備えている。接続部106は、基板の一面側の正極用鉛層が連通孔の内部に入った部分と、基板の他面側の負極用鉛層の連通孔の内部に入った部分と、が接合された部分である。
【0021】
次に、内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、第二の端部用フレームユニット130を形成する材料について詳述する。内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、および第二の端部用フレームユニット130は、金属との結合性を有する樹脂(金属結合性樹脂)で形成されている。
金属結合性樹脂としては、(a)エポキシ基又は酸性の官能基を分子構造に有する熱可塑性樹脂、(b)熱硬化性樹脂、(c)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に、無機材料と結合可能な無機材結合性官能基及び有機材料と結合可能な有機材結合性官能基を分子構造に有するカップリング剤を含有させたものが例示できる。
【0022】
エポキシ基を分子構造に有する熱可塑性樹脂は、例えば、グリシジルメタクリレート(GMA)をモノマーとして使用することで得ることができる。酸性の官能基を分子構造に有する熱可塑性樹脂は、例えば、ベースとなる熱可塑性樹脂に無水マレイン酸変性を行うことで得ることができる(無水マレイン酸変性ポリプロピレン等)。
無機材結合性官能基としては、シリル基,チタネート,アルミネート,およびホスホン酸誘導体から選択される少なくとも一種等を挙げることができる。有機材結合性官能基としては、ビニル基,アクリル基,エポキシ基,アミノ基,イソシアネート基,および酸無水物から選択される少なくとも一種等を挙げることができる。このようなカップリング剤の上記官能基は、基板を構成するベースとなる樹脂の種類等に応じて組み合わせ等を適宜選択できる。
【0023】
ベースとなる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体,ポリメチルメタクリレート,ポリアミド,ポリカーボネート,フッ素樹脂から選択される少なくとも一種等を挙げることができ、特に、ポリプロピレン又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体であると好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂,エポキシ樹脂,フラール樹脂,ポリイミド,および不飽和ポリエステルから選択される少なくとも一種等を挙げることができる。
【0024】
このような双極型鉛蓄電池100においては、基板の一面側および他面側と連通孔に鉛層が接続部106を形成して固定された状態の、内部用フレームユニット110を作製する必要がある。そのために、内部用フレームユニット110の形状に対応した金型内に、樹脂等の原料と共に、対応する各鉛層101,102を配設した後、加熱成型加工を行う。すなわち、同一の基板111上の正極用鉛層101と負極用鉛層102とを連通孔111aの内部へそれぞれ凹形に窪むように入り込ませて、加熱圧接等により直接的に接合して接続部106を形成すると共に、各鉛層101,102の基板111の連通孔111a内に入り込んだ接続部106を、連通孔111aの内壁面の全体にわたって加熱圧接する。これと併せて、基板111の一面側および他面側に対して各鉛層101,102を加熱圧接する。
【0025】
これにより、金属結合性樹脂中の上述した官能基やカップリング剤や熱硬化性樹脂が各鉛層101,102の表面と結合するので、各鉛層101,102は、接続部106が基板111の連通孔111aの内壁面の全体にわたって直接的に固定保持されると共に、基板111の一面側および他面側に直接的に固定保持される。なお、各端板121,131においても、対応する各鉛層101,102を載置して加熱圧接することにより、各端板121,131に対応する各鉛層101,102を直接的に固定保持することができる。
【0026】
このため、本実施形態に係る双極型鉛蓄電池100においては、基板111の一面および他面と各鉛層101,102との間に電解液が浸入してしまうことを防止できるのはもちろんのこと、万が一、正極用鉛層101及び負極用鉛層102の一方と基板111上との間に電解液が浸入しても、連通孔111aの内壁面と各鉛層101,102との間を介して正極用鉛層101及び負極用鉛層102の他方と基板111上との間への電解液の浸入を防止することができる。
【0027】
このように、本実施形態に係る双極型鉛蓄電池100によれば、基板110の連通孔111aの内壁面の略周方向全長に、接続部106が固定保持されているため、液洛の発生を大きく抑制することができるので、電圧低下の発生を大きく減らして性能低下を生じ難くすることができる。
なお、各フレームユニット110,120,130の基板(端板)111,121,131と各鉛層101,102との結合を高めるように各鉛層101,102に表面粗さを付与するための研磨処理を施すと、非常に好ましい。
また、密着性のさらなる向上が可能な樹脂層を接続部106と連通孔111aとの間に介在させて、接続部106を連通孔111aの内壁面に間接的に固定保持するようにすることも可能である。
【0028】
また、内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、および第二の端部用フレームユニット130が、官能基を分子構造に有する熱可塑性樹脂で形成されている場合、当該樹脂における官能基の割合は、0.5質量%以上10質量%以下であると好ましく、特に、2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましい。なぜなら、上述した割合が0.5質量%未満であると、正極用鉛層101および負極用鉛層102との結合力を十分に確保することが難しくなってしまい、好ましくない。他方、上述した割合が10質量%を超えると、官能基同士が反応し易くなってしまい、粘度の増加を招いて成形性の低下を引き起こしてしまうおそれがあり、好ましくないからである。
【0029】
また、内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、および第二の端部用フレームユニット130が、カップリング剤を含む樹脂で形成されている場合、当該樹脂における樹脂中に占めるカップリング剤の割合は、0.5質量%以上10質量%以下であると好ましく、特に、2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましい。なぜなら、上述した割合が0.5質量%未満であると、正極用鉛層101および負極用鉛層102との結合力を十分に確保することが難しくなってしまい、好ましくない。他方、上述した割合が10質量%を超えると、官能基同士が反応し易くなってしまい、粘度の増加やダマの発生を招いて成形性の低下を引き起こしてしまうおそれがあり、好ましくないからである。
【0030】
また、上述した固定保持を行う際の、温度は200℃以上250℃以下であると好ましく、圧力は0.5MPa以上5MPa以下であると好ましく、時間は10秒以上20分以下であると好ましい。
なぜなら、温度が200℃未満であると、結合に要する時間が長くなり過ぎてしまい、好ましくない。温度が250℃を超えると、基板(端板)111,121,131が柔らかくなり過ぎてしまい、圧力により変形してしまうおそれを生じ、好ましくない。圧力が0.5MPa未満であると、結合に要する時間が長くなり過ぎてしまい、好ましくない。圧力が5MPaを超えると、押し付ける圧力によって変形してしまうおそれを生じ、好ましくない。時間が10秒未満であると、十分な結合力を得ることが難しくなってしまい、好ましくない。時間が20分を超えると、エネルギ的に無駄を生じてしまい、好ましくないからである。
【0031】
〈第二の実施形態〉
本発明に係る双極型鉛蓄電池の第二の実施形態を
図3,4に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態での説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図3,4に示すように、基板111の連通孔111a内には、正極用鉛層101と負極用鉛層102とを電気的に接続する鉛からなる接続手段である導通体206が挿入されている。
【0032】
つまり、第一の実施形態の双極型鉛蓄電池100では、接続手段として、接続部106、すなわち「基板の一面側の正極用鉛層が連通孔の内部に入った部分と、基板の他面側の負極用鉛層の連通孔の内部に入った部分と、が直接的に接合された部分」を設けているが、本実施形態の双極型鉛蓄電池200では、基板111の連通孔111aの内部に、接続手段として導通体206を挿入している。
このような双極型鉛蓄電池200においては、基板の連通孔に導通体206が挿入された状態の、内部用フレームユニット110を作製する必要がある。そのために、内部用フレームユニット110の形状に対応した金型内に、樹脂等の原料と共に、対応する各鉛層101,102及び導通体206を配設した後、加熱成型加工を行う。
【0033】
これにより、金属結合性樹脂中の上述した官能基やカップリング剤や熱硬化性樹脂が、導通体206及び各鉛層101,102の表面と結合するので、導通体206は、基板111の連通孔111aの内壁面の全体にわたって直接的に固定保持されると共に、各鉛層101,102が各フレームユニット110,120,130の基板(端板)111,121,131の対向面において直接的に固定保持される。
このため、本実施形態に係る双極型鉛蓄電池200においては、前述した第一の実施形態の場合と同様に、基板111上と各鉛層101,102との間に電解液が浸入してしまうことを防止できるのはもちろんのこと、万が一、正極用鉛層101及び負極用鉛層102の一方と基板111上との間に電解液が浸入しても、連通孔111aの内壁面と導通体206との間を介して正極用鉛層101及び負極用鉛層102の他方と基板111上との間への電解液の浸入を防止することができる。
【0034】
このように、本実施形態に係る双極型鉛蓄電池200によれば、基板110の連通孔111aの内壁面の略周方向全長に、導通体206が固定保持されているため、前述した実施形態の場合と同様に、液洛の発生を大きく抑制することができるので、電圧低下の発生を大きく減らして性能低下を生じ難くすることができる。
なお、各フレームユニット110,120,130の基板(端板)111,121,131と各鉛層101,102及び導通体206との結合を高めるように、各鉛層101,102及び導通体206に表面粗さを付与するための研磨処理を施すと、非常に好ましい。
また、密着性のさらなる向上が可能な樹脂層を導通体206と連通孔111aとの間に介在させて、導通体206を連通孔111aの内壁面に間接的に固定保持するようにすることも可能である。
【0035】
〈他の実施形態〉
なお、前述した第一および第二の実施形態の双極型鉛蓄電池100,200では、接続部106や導通体206を連通孔111aの内壁面の全体にわたって固定保持すると共に、各鉛層101,102を基板111の対向面に固定保持している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、接続部106や導通体206の少なくとも一部が、連通孔111aの内壁面の略周方向全長にわたって固定保持されていれば、本発明の目的を達することができる。
【0036】
しかしながら、前述した第一および第二の実施形態の双極型鉛蓄電池100,200のように、接続部106や導通体206が連通孔111aの内壁面全体にわたって固定保持されていると、より確実に液洛の発生を大きく抑制することができるので、好ましい。加えて、第一および第二の実施形態の双極型鉛蓄電池100,200のように、各鉛層101,102を基板111の対向面に加熱圧接して直接的に固定保持するようにすれば、さらに確実に液洛の発生を大きく抑制することができるので、非常に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る双極型鉛蓄電池は、液洛の発生を大きく抑制し、電圧低下の発生を大きく減らして性能低下を生じ難くすることができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 双極(バイポーラ)型鉛蓄電池
101 正極用鉛層
102 負極用鉛層
103 正極用活物質層
104 負極用活物質層
105 電解層
106 接続部(接続手段)
107 正極端子
108 負極端子
109 外装容器
109a 通気弁
110 内部用フレームユニット
111 基板
111a 連通孔
112 リム
120 第一の端部用フレームユニット
121 第一の端板
122 第一の端部リム
130 第二の端部用フレームユニット
131 第二の端板
132 第二の端部リム
150 セル部材
151 正極
152 負極
200 双極(バイポーラ)型鉛蓄電池
206 導通体(接続手段)
C セル(セル部材を収容する空間)