(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】固定構造、及び電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20250121BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20250121BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250121BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/30
B60R16/02 623D
F16B2/08 U
(21)【出願番号】P 2021027600
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥林 良介
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 武志
(72)【発明者】
【氏名】内堀 正紀
(72)【発明者】
【氏名】足立 貴博
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 拓人
(72)【発明者】
【氏名】パク ギョンドン
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-045216(JP,U)
【文献】特開2012-054049(JP,A)
【文献】特開2015-223919(JP,A)
【文献】実開平04-095378(JP,U)
【文献】特開2012-125117(JP,A)
【文献】特開2018-066458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/30
B60R 16/02
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部材を固定するための固定部材と、前記所定部材が取付けられる被取付部材の挿着部とで構成され、前記固定部材のアンカー部が挿着方向に沿って前記挿着部に係止される固定構造であって、
前記固定部材の前記アンカー部は、
前記挿着方向に沿って形成された凹状の差込孔が設けられ、
前記被取付部材の前記挿着部は、
前記アンカー部が前記挿着方向に沿って挿入される挿入孔を有する座面部と、
前記挿入孔から挿入された前記アンカー部が収容される収容空間と、
該収容空間に向けて突設され、前記固定部材に設けた凹状の前記差込孔に前記挿着方向に沿って挿入される突設部とで構成され
、
前記被取付部材の前記挿着部は、
前記座面部に対して前記収容空間を挟んで前記挿着方向で対向する対向面部が設けられ、
前記固定部材の前記アンカー部は、
前記挿着部に係止された状態において、前記差込孔に前記突設部が挿入され、かつ先端が前記対向面部に当接しない前記挿着方向の長さに形成された
固定構造。
【請求項2】
前記被取付部材の前記突設部は、
前記挿着方向から見て前記挿入孔の略中央に配置された
請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記固定部材の前記差込孔は、
前記アンカー部の先端面から前記挿着方向とは逆方向へ向けて延びる開口で構成され、
前記挿着部の前記突設部は、
前記挿着方向とは逆方向へ延びるとともに、前記挿着方向に沿った断面において、前記挿着方向とは逆方向へ向かうほど先細の先端を有する断面形状に形成された
請求項1または請求項
2に記載の固定構造。
【請求項4】
前記挿着部の前記挿入孔は、
前記挿着方向から見て略長楕円形状に形成され、
前記挿着部の前記突設部、及び前記固定部材の前記差込孔は、
前記挿
入孔の長軸方向または短軸方向に長い形状に形成された
請求項1から請求項
3のいずれか1つに記載の固定構造。
【請求項5】
前記固定部材の前記アンカー部は、
前記挿着方向に対して直交する展開方向に対向配置され、前記収容空間において前記展開方向へ向けて展開することで前記挿着部に係止される一対の係止爪を備え、
前記被取付部材の前記挿着部は、
前記挿着方向から見て前記展開方向に直交する直交方向で前記収容空間に対向配置されるとともに、前記直交方向への係止爪の展開を規制する一対の展開規制部が備えられた
請求項1から請求項
4のいずれか1つに記載の固定構造。
【請求項6】
前記固定部材は、
前記所定部材の外周に巻き回して、前記所定部材を保持する略帯状のバンド部が設けられた
請求項1から請求項
5のいずれか1つに記載の固定構造。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1つに記載の固定構造と、
略箱状の接続箱本体とが備えられ、
前記固定構造の挿着部が設けられた被取付部材は、前記接続箱本体であり、
前記挿着部は、前記接続箱本体の外面部分に配置された
電気接続箱。
【請求項8】
前記固定構造の固定部材を第1固定部材とし、前記固定構造の前記挿着部を第1挿着部として、
前記接続箱本体は、
前記第1固定部材が挿入される略長楕円形状の挿入孔を有するとともに、前記第1固定部材が係止される前記第1挿着部と、
前記第1挿着部とは異なる外面部分に配置されるとともに、所定部材を固定するための第2固定部材が、略長楕円形状の挿入孔を介して係止される第2挿着部とが備えられ、
前記第1固定部材は、
前記略長楕円形状の短軸方向または長軸方向の一方へ向けて展開することで前記第1挿着部に係止される一対の係止爪が設けられ、
前記第2固定部材は、
前記略長楕円形状の短軸方向または長軸方向の他方へ向けて展開することで前記第2挿着部に係止される一対の係止爪が備えられ、
前記第1挿着部は、
前記短軸方向または長軸方向の他方へ向けた係止爪の展開を規制する一対の展開規制部が設けられ、
前記第2挿着部は、
前記短軸方向または長軸方向の一方へ向けた係止爪の展開を規制する一対の展開規制部が設けられた
請求項
7に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電気接続箱にワイヤーハーネスを、固定部材を用いて固定するような固定構造、及び電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーハーネスなどの所定部材を、車両などの被取付部材に取付ける場合、被取付部材の挿着部に係止される固定部材を用いて、所定部材を被取付部材に固定している。
例えば、特許文献1には、固定部材として、ワイヤーハーネスの外周に巻き付けるバンド部(バンド体20)と、車両の挿着部に係止されるアンカー部(差込突部51)とを備えたバンドクランプ(クランプ1)が開示されている。
【0003】
このようなバンドクランプは、複数本のワイヤーハーネスを束ねて保持するとともに、保持した複数本のワイヤーハーネスを一体的に車両に固定することで、複数のワイヤーハーネスの配索経路を規制している。
【0004】
ところで、例えば2本のワイヤーハーネスを、それぞれ接続先となる機器へ向けて分岐させる場合、それぞれのワイヤーハーネスが取付けられる2つの挿着部を、ワイヤーハーネスの分岐箇所近傍における被取付部材に設けて、分岐したワイヤーハーネスの配索経路を規制する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなバンドクランプは、被取付部材の複数の挿着部に対して、同一のものが使用されることが多い。このため、作業者が、所望される被取付部材の挿着部とは異なる挿着部にバンドクランプを係止して、意図しない不具合が生じるおそれがあった。
【0006】
例えば、作業者が、一方のワイヤーハーネスを取付けるための挿着部に対して、他方のワイヤーハーネスを固定した場合、ワイヤーハーネスが誤った経路に配索され、適切な機器に接続できないという問題が生じる。
そこで、所定部材を被取付部材に取付ける現場では、被取付部材の挿着部に対する固定部材の誤組付けを防止できる固定構造が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、被取付部材の挿着部に対する固定部材の誤組付けを防止できる固定構造、及び電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、所定部材を固定するための固定部材と、前記所定部材が取付けられる被取付部材の挿着部とで構成され、前記固定部材のアンカー部が挿着方向に沿って前記挿着部に係止される固定構造であって、前記固定部材の前記アンカー部は、前記挿着方向に沿って形成された凹状の差込孔が設けられ、前記被取付部材の前記挿着部は、前記アンカー部が前記挿着方向に沿って挿入される挿入孔を有する座面部と、前記挿入孔から挿入された前記アンカー部が収容される収容空間と、該収容空間に向けて突設され、前記固定部材に設けた凹状の前記差込孔に前記挿着方向に沿って挿入される突設部とで構成され、前記被取付部材の前記挿着部は、前記座面部に対して前記収容空間を挟んで前記挿着方向で対向する対向面部が設けられ、前記固定部材の前記アンカー部は、前記挿着部に係止された状態において、前記差込孔に前記突設部が挿入され、かつ先端が前記対向面部に当接しない前記挿着方向の長さに形成されたことを特徴とする。
【0010】
上記固定部材は、所定部材を保持するとともに、被取付部材の挿着部に係止されるバンドクランプのような部材、あるいは所定部材を保持する保持部材を被取付部材の挿着部に固定するためのクリップのような部材などのことをいう。
上記差込孔は、例えば挿入方向に延びる開口、または凹溝形状の孔などのことをいう。
【0011】
この発明によれば、固定構造は、被取付部材の挿着部に対する固定部材の誤組付けを防止することができる。
具体的には、アンカー部に適切な形状の差込孔が設けられた場合、固定部材は、被取付部材の挿着部に係止することができる。
【0012】
一方で、アンカー部に差込孔が設けられていない、あるいは挿着部の突設部に対応しない差込孔が設けられた不適切な形状の場合、固定部材は、アンカー部が挿着部の突設部に当接することで、挿入孔への挿入が阻害される。
【0013】
これにより、固定構造は、不適切な形状の固定部材が、被取付部材の挿着部に係止されることを防止できる。このため、固定構造は、被取付部材の挿着部に対して、不適切な形状の固定部材が誤って組付けられることを防止できる。
【0014】
また、前記被取付部材の前記挿着部は、前記座面部に対して前記収容空間を挟んで前記挿着方向で対向する対向面部が設けられ、前記固定部材の前記アンカー部は、前記挿着部に係止された状態において、前記差込孔に前記突設部が挿入され、かつ先端が前記対向面部に当接しない前記挿着方向の長さに形成されている。
【0015】
これにより、固定部材は、アンカー部が挿着部の対向面部に当接しない適切な挿着方向の長さの場合、被取付部材の挿着部に係止することができる。
一方で、アンカー部が適切な挿着方向の長さよりも長い不適切な形状の場合、不適切な形状の固定部材は、アンカー部が挿着部の対向面部に当接することで、被取付部材の挿着部への係止が阻害される。
これにより、固定構造は、アンカー部の長さが不適切な固定部材が、被取付部材の挿着部に誤組付けされることを防止できる。
【0016】
この発明の態様として、前記被取付部材の前記突設部は、前記挿着方向から見て前記挿入孔の略中央に配置されてもよい。
この構成によれば、固定構造は、固定部材の組付け性を損なうことなく、固定部材の誤組付けをより防止することができる。
【0017】
具体的には、挿着方向から見て挿入孔の周縁に突設部が配置されている場合、挿着方向に対して傾斜した方向から固定部材のアンカー部が挿着部の挿入孔に挿入されると、挿入される方向によってはアンカー部が突設部に接触しないおそれがある。
【0018】
これに対して、挿入孔の略中央に突設部を配置したことにより、固定構造は、例えば差込孔が設けられていないアンカー部を、挿入される方向に関わらず突設部に確実に接触させることができる。このため、固定構造は、不適切な形状の固定部材が、誤って被取付部材の挿着部に係止されることを防止できる。
【0019】
さらに、固定構造は、挿着方向から見て挿入孔の開口縁に突設部が配置されたに比べて、突設部の視認性を向上することができる。このため、作業者は、突設部の有無、及び突設部の形状や向きを確認しながら、固定部材を被取付部材の挿着部に組付けることができる。
これにより、固定構造は、固定部材の組付け性を損なうことなく、不適切な形状の固定部材の誤組付けをより防止することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記固定部材の前記差込孔は、前記アンカー部の先端面から前記挿着方向とは逆方向へ向けて延びる開口で構成され、前記挿着部の前記突設部は、前記挿着方向とは逆方向へ延びるとともに、前記挿着方向に沿った断面において、前記挿着方向とは逆方向へ向かうほど先細の先端を有する断面形状に形成されてもよい。
【0021】
この構成によれば、固定構造は、例えば、固定部材のアンカー部が、挿着方向に対して傾斜した方向から挿着部の挿入孔に挿入された場合であっても、差込孔への突設部の挿入を容易にすることができる。
【0022】
このため、固定構造は、不適切な形状の固定部材の誤組付け防止と、挿着部に対する固定部材の組付け性向上とを両立することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記挿着部の前記挿入孔は、前記挿着方向から見て略長楕円形状に形成され、前記挿着部の前記突設部、及び前記固定部材の前記差込孔は、前記挿入孔の長軸方向または短軸方向に長い形状に形成されてもよい。
【0024】
この構成によれば、固定構造は、例えば挿着方向から見て略円形の突設部及び差込孔に比べて、不適切な形状の固定部材の誤組付けを確実に防止することができる。
具体的には、固定構造は、突設部が長軸方向に長い被取付部材の挿着部に対して、差込孔が短軸方向に長い固定部材が組付けられることを防止できる。あるいは、固定構造は、突設部が短軸方向に長い被取付部材の挿着部に対して、差込孔が長軸方向に長い固定部材が組付けられることを防止できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記固定部材の前記アンカー部は、前記挿着方向に対して直交する展開方向に対向配置され、前記収容空間において前記展開方向へ向けて展開することで前記挿着部に係止される一対の係止爪を備え、前記被取付部材の前記挿着部は、前記挿着方向から見て前記展開方向に直交する直交方向で前記収容空間に対向配置されるとともに、前記直交方向への係止爪の展開を規制する一対の展開規制部が備えられてもよい。
【0026】
この構成によれば、一対の係止爪が展開方向で対向する適切な形状の固定部材は、被取付部材の挿着部に係止することができる。
一方で、一対の係止爪が展開方向に直交する直交方向で対向する不適切な形状の固定部材の場合、固定部材は、挿着部の展開規制部によって係止爪の展開が阻害されるため、被取付部材の挿着部に係止することができない。
【0027】
これにより、固定構造は、挿着部の突設部、及び挿着部の展開規制部によって、不適切な形状の固定部材に差込孔が設けられた場合であっても、不適切な形状の固定部材の誤組付けをさらに確実に防止することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記固定部材は、前記所定部材の外周に巻き回して、前記所定部材を保持する略帯状のバンド部が設けられてもよい。
この構成によれば、固定構造は、例えば所定部材を保持部材で保持し、保持部材とは別体の固定部材を用いて、保持部材を被取付部材の挿着部に固定する構成の場合に比べて、部品点数の増加を抑えることができる。
【0029】
さらに、固定構造は、所定部材に予め固定部材を装着することができるため、挿着部への所定部材の取付けを容易にして、被取付部材の挿着部に対する所定部材の組付け性を向上することができる。
【0030】
またこの発明は、上述した固定構造と、略箱状の接続箱本体とが備えられ、前記固定構造の挿着部が設けられた被取付部材は、前記接続箱本体であり、前記挿着部は、前記接続箱本体の外面部分に配置された電気接続箱であることを特徴とする。
【0031】
上記電気接続箱とは、ワイヤーハーネスなどの電線同士を中継、あるいは分岐するジャンクションボックス、もしくは電線の一端に接続された機器との各種情報の授受を行う制御装置などのことをいう。
【0032】
この発明によれば、電気接続箱は、挿着部に対して所望される所定部材とは異なる部材が組付けられることを防止できる。このため、例えば所定部材をワイヤーハーネスとした場合、電気接続箱は、ワイヤーハーネスが誤った配索経路に規制されることを防止できる。
【0033】
この発明の態様として、前記固定構造の固定部材を第1固定部材とし、前記固定構造の前記挿着部を第1挿着部として、前記接続箱本体は、前記第1固定部材が挿入される略長楕円形状の挿入孔を有するとともに、前記第1固定部材が係止される前記第1挿着部と、前記第1挿着部とは異なる外面部分に配置されるとともに、所定部材を固定するための第2固定部材が、略長楕円形状の挿入孔を介して係止される第2挿着部とが備えられ、前記第1固定部材は、前記略長楕円形状の短軸方向または長軸方向の一方へ向けて展開することで前記第1挿着部に係止される一対の係止爪が設けられ、前記第2固定部材は、前記略長楕円形状の短軸方向または長軸方向の他方へ向けて展開することで前記第2挿着部に係止される一対の係止爪が備えられ、前記第1挿着部は、前記短軸方向または長軸方向の他方へ向けた係止爪の展開を規制する一対の展開規制部が設けられ、前記第2挿着部は、前記短軸方向または長軸方向の一方へ向けた係止爪の展開を規制する一対の展開規制部が設けられてもよい。
【0034】
上記第2固定部材によって固定される所定部材は、第1固定部材によって固定される所定部材と同一、または第1固定部材によって固定される所定部材とは異なる所定部材のことをいう。
この構成によれば、電気接続箱は、第1挿着部に第2固定部材が組付けられ、第2挿着部に第1固定部材が組付けられることを防止できる。このため、電気接続箱は、第1挿着部及び第2挿着部が設けられた場合であっても、第1固定部材及び第2固定部材の誤組付けを防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、被取付部材の挿着部に対する固定部材の誤組付けを防止できる固定構造、及び電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ワイヤーハーネスが取付けられた電気接続箱の外観を示す外観斜視図。
【
図2】分解状態における電気接続箱及び固定部材の外観を示す外観斜視図。
【
図4】固定部材が取付けられた電気接続箱の断面位置を説明する説明図。
【
図7】第1挿着部の外観を部分断面で示す断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態は、自動車などの車両において、ワイヤーハーネスを固定するための固定部材と、ワイヤーハーネスが取付けられる電気接続箱とで構成された固定構造について、
図1から
図12を用いて説明する。
【0038】
なお、
図1は第1ワイヤーハーネス1及び第2ワイヤーハーネス2が取付けられた電気接続箱3の外観斜視図を示し、
図2は分解状態における電気接続箱3、第1固定部材10、及び第2固定部材20の外観斜視図を示し、
図3は第1固定部材10の外観斜視図を示している。
【0039】
さらに、
図4は第1固定部材10及び第2固定部材20が取付けられた電気接続箱3の断面位置を説明する説明図であり、
図4(a)は電気接続箱3の正面図を示し、
図4(b)は幅方向一方側YRから見た電気接続箱3の側面図を示している。
【0040】
加えて、
図5は
図4中のA-A矢視断面図を示し、
図6は
図4中のB-B矢視断面図を示し、
図7は第1挿着部31の断面斜視図を示し、
図8は
図4中のC-C矢視断面図を示している。
さらにまた、
図9は第2固定部材20の外観斜視図を示し、
図10は
図4中のD-D矢視断面図を示し、
図11は
図4中のE-E矢視断面図を示し、
図12は
図4中のF-F矢視断面図を示している。
【0041】
また、図中の矢印Xは電気接続箱3の前後方向(以降、前後方向Xとする)を示し、
図1中の左側へ向かう方向を前方側Xfとし、
図1中の右側へ向かう方向を後方側Xrとする。
さらに、
図1中の上側を電気接続箱3の上方、
図1中の下側を電気接続箱3の下方とする。
【0042】
加えて、図中の矢印Yは平面視において前後方向Xに直交する方向(以降、幅方向Yとする)を示し、
図1中の右側へ向かう方向を幅方向一方側YRとし、
図1中の左側へ向かう方向を幅方向他方側YLとする。
【0043】
本実施形態は、
図1に示すように、第1ワイヤーハーネス1及び第2ワイヤーハーネス2が取付けられる電気接続箱3と、第1ワイヤーハーネス1を電気接続箱3に固定するための第1固定部材10と、第2ワイヤーハーネス2を電気接続箱3に固定するための第2固定部材20とで構成されている。
【0044】
まず、第1ワイヤーハーネス1及び第2ワイヤーハーネス2は、
図1に示すように、電気接続箱3における幅方向一方側YRの側面、及び前面に沿うように、電気接続箱3に隣接して配索されている。
【0045】
具体的には、第1ワイヤーハーネス1は、
図1に示すように、電気接続箱3における幅方向一方側YRの側面に沿って、前方側Xfへ向けて配索されたのち、電気接続箱3の前部近傍で下方へ向けて配索されている。
【0046】
一方、第2ワイヤーハーネス2は、
図1に示すように、電気接続箱3における幅方向一方側YRの側面に沿って、前方側Xfへ向けて配索されたのち、電気接続箱3の前方へ回り込むように、幅方向他方側YLへ向けて配索されている。
【0047】
なお、第1ワイヤーハーネス1及び第2ワイヤーハーネス2は、
図1に示すように、前方側Xfへ向けて配索された部分が、例えば粘着テープTで束ねられ、電気接続箱3の前部近傍で分岐している。
【0048】
また、電気接続箱3は、詳細な図示を省略するが、略箱状の接続箱本体30と、接続箱本体30の内部に収容保持された回路基板、ヒューズ、及びバスバーなどで構成されている。この電気接続箱3の接続箱本体30は、
図1及び
図2に示すように、上方に位置する箱本体上部30aと、箱本体上部30aに対して下方に位置する箱本体下部30bとを、上下方向に組付けて構成している。
【0049】
このような電気接続箱3には、
図1及び
図2に示すように、第1ワイヤーハーネス1が取付けられる第1挿着部31と、第2ワイヤーハーネス2が取付けられる第2挿着部32とが設けられている。
【0050】
具体的には、第1挿着部31は、
図1に示すように、箱本体下部30bの前部下方において、電気接続箱3における幅方向一方側YRの側面部分をなすように形成されている。この第1挿着部31には、
図1及び
図2に示すように、第1固定部材10(後述する第1固定部材10のアンカー部12)が幅方向他方側YLへ向かう方向に沿って係止される。
【0051】
一方、第2挿着部32は、
図1に示すように、箱本体上部30aの前部において、電気接続箱3の前面部分をなすように形成されている。この第2挿着部32は、
図1及び
図2に示すように、第2固定部材20(後述する第2固定部材20のアンカー部22)が後方側Xrへ向かう方向に沿って係止される。
【0052】
引き続き、このような電気接続箱3の第1挿着部31と第1固定部材10との固定構造について、さらに詳述する。
まず、第1固定部材10は、
図1に示すように、第1ワイヤーハーネス1の上下方向に延びる部分を保持するとともに、第1ワイヤーハーネス1を電気接続箱3の第1挿着部31に固定する部材である。
【0053】
この第1固定部材10は、
図2及び
図3に示すように、第1ワイヤーハーネス1を保持するクランプ体11と、電気接続箱3の第1挿着部31に係止されるアンカー部12とで構成されている。
クランプ体11は、所謂、結束バンドと略同じ構造部分である。このクランプ体11は、
図2及び
図3に示すように、幅方向Yから見て略矩形のベース部11aと、ベース部11aの前端側から幅方向Yへ延びる略帯状のバンド部11bとで構成されている。
【0054】
ベース部11aには、後方側Xrへ向けて湾曲させ、第1ワイヤーハーネス1の外周面に巻き回したバンド部11bが、前方側Xfへ向けて挿通されるとともに、バンド部11bが係止されるロック部分(図示省略)が設けられている。
【0055】
アンカー部12は、
図3に示すように、ベース部11aから幅方向他方側YLへ延びるアンカー軸体13と、アンカー軸体13の基部から広がるように延びる傘部分14と、アンカー軸体13から延設された一対の係止爪15とで構成されている。
【0056】
アンカー軸体13は、
図3に示すように、幅方向Yから見て略長楕円形状であって、略長楕円形状の長軸方向が上下方向となるように配置されている。さらに、アンカー軸体13は、先端近傍が、幅方向他方側YLへ向かうほど先細になるように形成されている。
【0057】
なお、アンカー軸体13は、
図5に示すように、第1挿着部31に係止された状態において、後述する差込孔13bに第1挿着部31の突設部313が挿入され、かつその先端が第1挿着部31の対向面部312に当接しない幅方向Yの長さに形成されている。
【0058】
このようなアンカー軸体13には、
図3から
図6に示すように、前後方向X(短軸方向)に沿って開口した貫通孔13aと、幅方向Yに沿って開口した差込孔13bとが形成されている。
具体的には、貫通孔13aは、
図3から
図6に示すように、幅方向Yに長い正面視略矩形であって、アンカー軸体13の短軸方向で対向する面を前後方向X(短軸方向)に貫通するように形成されている。
【0059】
一方、差込孔13bは、後述する第1挿着部31の突設部313が挿入される開口であって、アンカー軸体13の先端面に開口形成されている。この差込孔13bは、
図3から
図6に示すように、幅方向Yから見て上下方向に長い略長楕円形状であって、アンカー軸体13の先端面から傘部分14に至る幅方向Yの長さで開口形成されている。
【0060】
傘部分14は、
図3に示すように、アンカー軸体13の基部から幅方向他方側YLかつ四方へ向けて広がるように延設されている。このため、傘部分14は、幅方向Yから見てアンカー軸体13よりも大径、かつ上下方向に長い略長楕円形状に形成されている。
【0061】
一対の係止爪15は、
図3から
図5に示すように、前後方向Xに対向配置され、前後方向Xへ向けて展開することで第1挿着部31に係止可能に形成されている。換言すると、一対の係止爪15は、アンカー軸体13の短軸方向に対向配置され、短軸方向へ向けて展開することで第1挿着部31に係止可能に形成されている。
【0062】
具体的には、一対の係止爪15は、
図3、
図5、及び
図6に示すように、アンカー軸体13の差込孔13bを挟んで対向するように、貫通孔13aに配置されている。この一対の係止爪15は、幅方向他方側YLの端部が貫通孔13aにおける幅方向他方側YLの縁端に連結され、アンカー軸体13の短軸方向、すなわち前後方向Xに弾性変形して展開するように形成されている。
【0063】
さらに、前方側Xfの係止爪15の前面、及び後方側Xrの係止爪15の後面には、
図3及び
図5に示すように、アンカー軸体13に連続する傾斜面15aと、傾斜面15aから階段状に延設された段付き面15bとが幅方向他方側YLからこの順番で形成されている。
なお、係止爪15の段付き面15bは、
図5に示すように、後述する第1挿着部31に係止される部分として形成されている。
【0064】
より詳しくは、前方側Xfの係止爪15は、傾斜面15aが、アンカー軸体13との連結箇所から前方側Xfかつ幅方向一方側YRへ向けて傾斜した略平面に形成され、段付き面15bが、傾斜面15aから後方側Xrかつ幅方向一方側YRへ向けた階段状に形成されている。
【0065】
一方、後方側Xrの係止爪15は、傾斜面15aが、アンカー軸体13との連結箇所から後方側Xrかつ幅方向一方側YRへ向けて傾斜した略平面に形成され、段付き面15bが、傾斜面15aから前方側Xfかつ幅方向一方側YRへ向けた階段状に形成されている。
【0066】
また、電気接続箱3の第1挿着部31は、
図5から
図7に示すように、接続箱本体30の側面部分をなす座面部311と、座面部311に対向する対向面部312と、座面部311及び対向面部312の間に形成された収容空間S1と、収容空間S1へ向けて突設された突設部313及び一対の展開規制部314とで構成されている。
【0067】
座面部311は、
図5及び
図7に示すように、幅方向Yに厚みを有する平板状であって、幅方向一方側YRから幅方向他方側YLへ向けて第1固定部材10のアンカー部12が挿入される挿入孔311aが開口形成されている。
この挿入孔311aは、
図2及び
図7に示すように、アンカー軸体13に略同じ大きさの略長楕円形状であって、略長楕円形状の長軸方向が上下方向となるように開口形成されている。
【0068】
対向面部312は、
図5から
図7に示すように、座面部311に対して幅方向他方側YLへ所定間隔を隔てるとともに、第1固定部材10のアンカー部12が当接しない位置に形成されている。この対向面部312は、座面部311に対面する面が略平面に形成されている。
【0069】
収容空間S1は、
図5及び
図7に示すように、座面部311と対向面部312とで構成された空間である。この収容空間S1は、挿入孔311aから挿入された第1固定部材10のアンカー部12が収容されるとともに、アンカー部12の一対の係止爪15が展開される展開空間として構成されている。
【0070】
突設部313は、
図5及び
図6に示すように、幅方向Yから見て挿入孔311aの略中央に位置するように配置されるとともに、第1固定部材10の差込孔13bが幅方向一方側YRから幅方向他方側YLへ向けて挿入可能に形成されている。
【0071】
詳述すると、突設部313は、
図5から
図7に示すように、幅方向Yから見て挿入孔311aの長軸方向に長い略矩形であって、対向面部312から幅方向一方側YRへ向けて立設されている。
この突設部313は、
図5及び
図6に示すように、前後方向Xに沿った水平断面、及び幅方向Yに沿った垂直断面において、先端近傍が幅方向一方側YRへ向かうほど先細になるように形成されている。
【0072】
一対の展開規制部314は、
図6から
図8に示すように、収容空間S1において、挿入孔311aの長軸方向、すなわち上下方向に対向配置されている。この一対の展開規制部314は、第1固定部材10とは異なる固定部材であって、挿入孔311aの長軸方向へ向けて展開する係止爪を有する固定部材が挿入孔311aに挿入された際、挿入孔311aの長軸方向へ向けた係止爪の展開を規制している。
【0073】
より詳しくは、一対の展開規制部314は、
図7及び
図8に示すように、突設部313を挟んで上下方向に対向配置されている。
この一対の展開規制部314のうち、上方に位置する上側展開規制部314aは、
図8に示すように、第1挿着部31に係止された第1固定部材10のアンカー軸体13に対して、上方側かつ後方側Xrよりの位置に形成されている。
【0074】
具体的には、上側展開規制部314aは、
図7及び
図8に示すように、前後方向Xに厚みを有する板状であって、その下方側の側面(以降、下面とする)が挿入孔311aの縁面に沿うように座面部311から対向面部312へかけて立設されている。
【0075】
このため、上側展開規制部314aの下面は、
図8に示すように、前後方向Xに沿った垂直断面において、アンカー軸体13の湾曲面に近接するとともに、アンカー軸体13の湾曲面に沿って湾曲した形状に形成されている。
【0076】
一方、一対の展開規制部314のうち、下方に位置する下側展開規制部314bは、
図8に示すように、第1挿着部31に係止された第1固定部材10のアンカー軸体13に対して、下方側かつ前後方向Xの略中央の位置に形成されている。
【0077】
具体的には、下側展開規制部314bは、
図7及び
図8に示すように、前後方向Xに厚みを有する板状であって、その上方側の側面(以降、上面とする)が挿入孔311aの縁面に沿うように座面部311から対向面部312へかけて立設されている。
【0078】
このため、下側展開規制部314bの上面は、
図8に示すように、前後方向Xに沿った垂直断面において、アンカー軸体13の湾曲面に近接するとともに、アンカー軸体13の湾曲面に沿って湾曲した形状に形成されている。
【0079】
引き続き、電気接続箱3の第2挿着部32と第2固定部材20との固定構造について詳述する。
まず、第2固定部材20は、
図1に示すように、第2ワイヤーハーネス2の幅方向Yに延びる部分を保持するとともに、第2ワイヤーハーネス2を電気接続箱3の第2挿着部32に固定する部材である。
この第2固定部材20は、
図2及び
図9に示すように、第2ワイヤーハーネス2を保持するクランプ体21と、電気接続箱3の第2挿着部32に係止されるアンカー部22とで構成されている。
【0080】
クランプ体21は、
図2及び
図9に示すように、略矩形のベース部21aと、ベース部21aから延びる略帯状のバンド部21bとで構成されている。
一方、アンカー部22は、
図9に示すように、ベース部21aから後方へ延びるアンカー軸体23と、アンカー軸体23の基部から広がるように延びる傘部分24と、アンカー軸体23から延設された一対の係止爪25とで構成されている。
【0081】
このような第2固定部材20は、上下方向を回転軸として平面視時計回りに90度回転させ、さらに前後方向Xを回転軸として正面視反時計回りに90度回転させた状態の第1固定部材10に対して、クランプ体21、アンカー軸体23、及び傘部分24が略同じ大きさの形状に形成され、一対の係止爪25が異なる位置に形成されている。
【0082】
クランプ体21のベース部21a及びバンド部21bは、第1固定部材10のベース部11a及びバンド部11bと略同じ構成かつ略同じ大きさであるため、その詳細な説明を省略する。
アンカー部22のアンカー軸体23は、
図9に示すように、第1固定部材10のアンカー軸体13と略同じ大きさの背面視略長楕円形状であって、先端近傍が、後方側Xrへ向かうほど先細になるように形成されている。このアンカー軸体23は、略長楕円形状の長軸方向が幅方向Yとなる状態で第2挿着部32に挿着される。
【0083】
なお、アンカー軸体23は、
図10に示すように、第2挿着部32に係止された状態において、その先端が後述する第2挿着部32の対向面部322に当接しない前後方向Xの長さに形成されている。
【0084】
さらに、アンカー軸体23には、
図9から
図11に示すように、幅方向Y(長軸方向)に沿って開口した貫通孔23aが形成されている。なお、アンカー軸体23には、第1固定部材10の差込孔13bに相当する開口が形成されていない。
具体的には、貫通孔23aは、
図9及び
図10に示すように、幅方向Yから見て前後方向Xに長い略矩形であって、アンカー軸体23の長軸方向(幅方向Y)で対向する面を幅方向Yに貫通するように形成されている。
【0085】
傘部分24は、
図9に示すように、アンカー軸体23の基部から後方側Xrかつ四方へ向けて広がるように延設されている。このため、傘部分24は、アンカー軸体23よりも大径、かつ幅方向Yに長い背面視略長楕円形状に形成されている。
【0086】
一対の係止爪25は、
図9、
図11、及び
図12に示すように、貫通孔23a内において幅方向Yに対向配置され、幅方向Yへ向けて展開することで第2挿着部32に係止可能に形成されている。換言すると、一対の係止爪25は、アンカー軸体23の長軸方向に対向配置され、長軸方向へ向けて展開することで第2挿着部32に係止可能に形成されている。
【0087】
具体的には、一対の係止爪25は、
図9及び
図11に示すように、後方側Xrの端部が貫通孔23aの後端縁に連結され、アンカー軸体23の長軸方向、すなわち幅方向Yに弾性変形して展開するように形成されている。
この一対の係止爪25には、第1固定部材10の係止爪15と同様に、傾斜面25aと段付き面25bとが形成され、段付き面25bが後述する第2挿着部32に係止される。
【0088】
また、電気接続箱3の第2挿着部32は、
図10から
図12に示すように、接続箱本体30の前面部分をなす座面部321と、座面部321に対向する対向面部322と、座面部321及び対向面部322の間に形成された収容空間S2と、収容空間S2へ向けて突設された一対の展開規制部323とで構成されている。
【0089】
座面部321は、
図11に示すように、前後方向Xに厚みを有する平板状であって、前方側Xfから後方側Xrへ向けて第2固定部材20のアンカー部22が挿入される挿入孔321aが開口形成されている。
この挿入孔321aは、
図2、
図10及び
図11に示すように、第1挿着部31の挿入孔311aに略同じ大きさの略長楕円形状であって、略長楕円形状の長軸方向が幅方向Yとなるように開口形成されている。
【0090】
対向面部322は、
図11に示すように、座面部321に対して後方側Xrへ所定間隔を隔てるとともに、第2固定部材20のアンカー部22が当接しない位置に形成されている。この対向面部322は、座面部321に対面する面が略平面に形成されている。
【0091】
収容空間S2は、
図11に示すように、座面部321と対向面部322とで構成された空間である。この収容空間S2は、挿入孔321aから挿入された第2固定部材20のアンカー部22が収容されるとともに、アンカー部22の一対の係止爪25が展開される展開空間として構成されている。
【0092】
一対の展開規制部323は、
図10及び
図12に示すように、収容空間S2において、挿入孔321aの短軸方向、すなわち上下方向に対向配置されている。この一対の展開規制部323は、第2固定部材20とは異なる固定部材であって、挿入孔321aの短軸方向へ向けて展開する係止爪を有する固定部材が挿入孔321aに挿入された際、挿入孔321aの短軸方向へ向けた係止爪の展開を規制している。
【0093】
より詳しくは、一対の展開規制部323は、
図10及び
図12に示すように、係止された第2固定部材20のアンカー部22を挟んで上下方向に対向配置されている。この一対の展開規制部323は、上下方向に厚みを有する板状であって、上下方向で互いに対向する面が挿入孔321aの縁面に沿うように座面部321から対向面部322へかけて立設されている。
【0094】
このため、一対の展開規制部323は、
図12に示すように、幅方向Yに沿った垂直断面において、上下方向で互いに対向する面が、第2固定部材20のアンカー軸体23における短軸方向で対向する平面に近接するとともに、アンカー軸体13の平面に略平行な平面に形成されている。
【0095】
このような構成のため、第1挿着部31に対応しない固定部材、例えば、第2固定部材20が第1挿着部31の挿入孔311aに挿入された場合、第2固定部材20は、第1挿着部31の突設部313及び一対の展開規制部314によって、挿入孔311aへの挿入及び係止爪25の展開が規制され、第1挿着部31への係止が阻止される。
【0096】
また、第1固定部材10が第2挿着部32の挿入孔321aに挿入された場合、第1固定部材10は、第2挿着部32の一対の展開規制部323によって、係止爪15の展開が規制され、第2挿着部32への係止が阻止される。
このようにして、本実施形態の固定構造は、第1ワイヤーハーネス1及び第2ワイヤーハーネス2をそれぞれ所望される配索経路に規制している。
【0097】
以上のような本実施形態の固定構造は、第1ワイヤーハーネス1を固定するための第1固定部材10と、第1ワイヤーハーネス1が取付けられる接続箱本体30の第1挿着部31とで構成され、第1固定部材10のアンカー部12が幅方向他方側YLに沿って第1挿着部31に係止される構造である。
【0098】
このような本実施形態の固定構造において、第1固定部材10のアンカー部12は、幅方向他方側YLに沿って形成された差込孔13bが設けられたものである。
そして、接続箱本体30の第1挿着部31は、アンカー部12が幅方向他方側YLに沿って挿入される挿入孔311aを有する座面部311を備えたものである。
【0099】
さらに、第1挿着部31は、挿入孔311aから挿入されたアンカー部12が収容される収容空間S1と、収容空間S1に向けて突設され、第1固定部材10に設けた差込孔13bに幅方向他方側YLに沿って挿入される突設部313とを備えたものである。
【0100】
これによれば、本実施形態の固定構造は、接続箱本体30の第1挿着部31に対する第2固定部材20の誤組付けを防止することができる。
具体的には、アンカー部22に適切な形状の差込孔13bが設けられているため、第1固定部材10は、接続箱本体30の第1挿着部31に係止することができる。
【0101】
一方で、アンカー部22に差込孔が設けられていない第2固定部材20は、アンカー部22が第1挿着部31の突設部313に当接することで、挿入孔311aへの挿入が阻害される。
【0102】
これにより、本実施形態の固定構造は、不適切な形状の第2固定部材20が、接続箱本体30の第1挿着部31に係止されることを防止できる。このため、本実施形態の固定構造は、接続箱本体30の第1挿着部31に対して、第2固定部材20が誤って組付けられることを防止できる。
【0103】
また、接続箱本体30の突設部313は、幅方向Yから見て挿入孔311aの略中央に配置されたものである。
この構成によれば、本実施形態の固定構造は、第1固定部材10の組付け性を損なうことなく、第2固定部材20の誤組付けをより防止することができる。
【0104】
具体的には、幅方向他方側YLから見て挿入孔311aの周縁に突設部が配置されている場合、幅方向Yに対して傾斜した方向から第2固定部材20のアンカー部22が第1挿着部31の挿入孔311aに挿入されると、挿入される方向によってはアンカー部22が突設部に接触しないおそれがある。
【0105】
これに対して、挿入孔311aの略中央に突設部313を配置したことにより、本実施形態の固定構造は、第2固定部材20のアンカー部22を、挿入される方向に関わらず突設部313に確実に接触させることができる。このため、本実施形態の固定構造は、不適切な形状の第2固定部材20が、誤って接続箱本体30の第1挿着部31に係止されることを防止できる。
【0106】
さらに、本実施形態の固定構造は、幅方向他方側YLから見て挿入孔311aの開口縁に突設部が配置されたに比べて、突設部313の視認性を向上することができる。このため、作業者は、突設部313の有無、及び突設部313の形状や向きを確認しながら、第1固定部材10を接続箱本体30の第1挿着部31に組付けることができる。
これにより、本実施形態の固定構造は、第1固定部材10の組付け性を損なうことなく、第2固定部材20の誤組付けをより防止することができる。
【0107】
また、接続箱本体30の第1挿着部31は、座面部311に対して収容空間S1を挟んで幅方向他方側YLで対向する対向面部312が設けられたものである。そして、第1固定部材10のアンカー部12は、第1挿着部31に係止された状態において、差込孔13bに突設部313が挿入され、かつ先端が対向面部312に当接しない幅方向Yの長さに形成されたものである。
【0108】
この構成によれば、第1固定部材10は、アンカー部12が第1挿着部31の対向面部312に当接しない適切な幅方向Yの長さの場合、接続箱本体30の第1挿着部31に係止することができる。
一方で、アンカー部が適切な幅方向Yの長さよりも長い不適切な形状の場合、不適切な形状の固定部材は、アンカー部が第1挿着部31の対向面部312に当接することで、接続箱本体30の第1挿着部31への係止が阻害される。
これにより、本実施形態の固定構造は、アンカー部の長さが不適切な固定部材が、接続箱本体30の第1挿着部31に誤組付けされることを防止できる。
【0109】
また、第1固定部材10の差込孔13bは、アンカー部12の先端面から幅方向一方側YRへ向けて延びる開口で構成されたものである。そして、第1挿着部31の突設部313は、幅方向一方側YRへ延びるとともに、幅方向Yに沿った断面において、幅方向一方側YRへ向かうほど先細の先端を有する断面形状に形成されたものである。
【0110】
この構成によれば、本実施形態の固定構造は、例えば、第1固定部材10のアンカー部12が、幅方向Yに対して傾斜した方向から第1挿着部31の挿入孔311aに挿入された場合であっても、差込孔13bへの突設部313の挿入を容易にすることができる。
【0111】
このため、本実施形態の固定構造は、接続箱本体30の第1挿着部31に対する第2固定部材20の誤組付け防止と、第1挿着部31に対する第1固定部材10の組付け性向上とを両立することができる。
【0112】
また、第1挿着部31の挿入孔311aは、幅方向Yから見て略長楕円形状に形成されたものである。そして、第1挿着部31の突設部313、及び第1固定部材10の差込孔13bは、挿入孔311aの長軸方向に長い形状に形成されたものである。
【0113】
この構成によれば、本実施形態の固定構造は、例えば幅方向Yから見て略円形の突設部及び差込孔に比べて、不適切な形状の固定部材の誤組付けを確実に防止することができる。
具体的には、本実施形態の固定構造は、突設部313が長軸方向に長い接続箱本体30の第1挿着部31に対して、差込孔が短軸方向に長い固定部材が組付けられることを防止できる。
【0114】
また、第1固定部材10のアンカー部12は、前後方向Xに対向配置され、収容空間S1において前後方向Xへ向けて展開することで第1挿着部31に係止される一対の係止爪15を備えたものである。
そして、接続箱本体30の第1挿着部31は、上下方向で収容空間S1に対向配置されるとともに、第2固定部材20の係止爪25の展開を規制する一対の展開規制部314が備えられたものである。
【0115】
この構成によれば、一対の係止爪15が前後方向Xで対向する適切な形状の第1固定部材10は、接続箱本体30の第1挿着部31に係止することができる。
一方で、第2固定部材20は、第1挿着部31の展開規制部314によって係止爪25の展開が阻害されるため、接続箱本体30の第1挿着部31に係止することができない。
【0116】
これにより、第1挿着部31と第1固定部材10との固定構造は、第1挿着部31の突設部313、及び第1挿着部31の展開規制部314によって、第2固定部材20に差込孔が設けられた場合であっても、第2固定部材20の誤組付けをさらに確実に防止することができる。
【0117】
また、第2固定部材20のアンカー部22は、幅方向Yに対向配置され、収容空間S1において幅方向Yへ向けて展開することで第2挿着部32に係止される一対の係止爪25を備えたものである。
そして、接続箱本体30の第2挿着部32は、上下方向で収容空間S2に対向配置されるとともに、第1固定部材10の係止爪15の展開を規制する一対の展開規制部323が備えられたものである。
【0118】
この構成によれば、一対の係止爪25が幅方向Yで対向する適切な形状の第2固定部材20は、接続箱本体30の第2挿着部32に係止することができる。
一方で、第1固定部材10は、第2挿着部32の展開規制部323によって係止爪15の展開が阻害されるため、接続箱本体30の第2挿着部32に係止することができない。
【0119】
これにより、第2挿着部32と第2固定部材20との固定構造は、第2挿着部32の展開規制部323によって、接続箱本体30の第2挿着部32に対する第1固定部材10の誤組付けを確実に防止することができる。
【0120】
また、第1固定部材10は、第1ワイヤーハーネス1の外周に巻き回して、第1ワイヤーハーネス1を保持する略帯状のバンド部11bが設けられたものである。
この構成によれば、本実施形態の固定構造は、例えば第1ワイヤーハーネス1を保持部材で保持し、保持部材とは別体の固定部材を用いて、保持部材を接続箱本体30の第1挿着部31に固定する構成の場合に比べて、部品点数の増加を抑えることができる。
【0121】
さらに、本実施形態の固定構造は、第1ワイヤーハーネス1に予め第1固定部材10を装着することができるため、第1挿着部31への第1ワイヤーハーネス1の取付けを容易にして、接続箱本体30の第1挿着部31に対する第1ワイヤーハーネス1の組付け性を向上することができる。
【0122】
また、第2固定部材20が、第2ワイヤーハーネス2を保持する略帯状のバンド部21bを備えているため、第2挿着部32と第2固定部材20との固定構造は、第1固定部材10がバンド部11bを備えた場合と同様の効果を奏することができる。
【0123】
また、本実施形態の電気接続箱3は、上述した本実施形態の固定構造と、略箱状の接続箱本体30とが備えられたものである。そして、第1挿着部31は、接続箱本体30の外面部分に配置されたものである。
【0124】
これによれば、電気接続箱3は、第1挿着部31に対して所望される第1ワイヤーハーネス1とは異なるワイヤーハーネスが組付けられることを防止できる。このため、電気接続箱3は、ワイヤーハーネスが誤った配索経路に規制されることを防止できる。
【0125】
また、接続箱本体30は、第1固定部材10が挿入される略長楕円形状の挿入孔311aを有するとともに、第1固定部材10が係止される第1挿着部31を備えている。さらに、接続箱本体30は、第1挿着部31とは異なる外面部分に配置されるとともに、第2ワイヤーハーネス2を固定するための第2固定部材20が、略長楕円形状の挿入孔321aを介して係止される第2挿着部32が備えられたものである。
【0126】
加えて、第1固定部材10は、略長楕円形状の短軸方向へ向けて展開することで第1挿着部31に係止される一対の係止爪15が設けられている。
一方、第2固定部材20は、略長楕円形状の長軸方向へ向けて展開することで第2挿着部32に係止される一対の係止爪25が備えられている。
【0127】
そして、第1挿着部31は、略長楕円形状の長軸方向へ向けた係止爪の展開を規制する一対の展開規制部314が設けられたものである。
一方、第2挿着部32は、略長楕円形状の短軸方向へ向けた係止爪の展開を規制する一対の展開規制部323が設けられたものである。
【0128】
この構成によれば、電気接続箱3は、第1挿着部31に第2固定部材20が組付けられ、第2挿着部32に第1固定部材10が組付けられることを防止できる。このため、電気接続箱3は、第1挿着部31及び第2挿着部32が設けられた場合であっても、第1固定部材10及び第2固定部材20の誤組付けを防止することができる。
【0129】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の所定部材は、実施形態の第1ワイヤーハーネス1及び第2ワイヤーハーネス2に対応し、
以下同様に、
固定部材は、第1固定部材10に対応し、
被取付部材は、接続箱本体30に対応し、
挿着部は、第1挿着部31に対応し、
挿着方向は、幅方向他方側YLに対応し、
展開方向は、前後方向Xに対応し、
直交方向は、上下方向に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0130】
例えば、上述の実施形態において、バンド部11b及びアンカー部12を有する第1固定部材10としたが、これに限定せず、第1ワイヤーハーネス1を保持する保持部材を、接続箱本体30の第1挿着部31に固定するためのアンカー付きクリップを固定部材としてもよい。
【0131】
また、電気接続箱3の接続箱本体30に取付けられる所定部材をワイヤーハーネスとしたが、これに限定せず、固定部材を用いて電気接続箱3に固定される部材であれば、適宜の部材であってもよい。
また、固定部材が係止される被取付部材を電気接続箱3としたが、これに限定せず、車両の車体や合成樹脂製のブラケットなど適宜の部材を被取付部材としてもよい。
【0132】
また、第1ワイヤーハーネス1を1つの第1固定部材10を用いて接続箱本体30に固定したが、これに限定せず、第1ワイヤーハーネス1を複数の固定部材を用いて接続箱本体30に固定してもよい。この場合、複数の固定部材は、第1固定部材10または第2固定部材20のいずれか一方、あるいは第1固定部材10及び第2固定部材20が混在する構成であってもよい。
【0133】
また、幅方向Yに沿って第1固定部材10のアンカー軸体13に開口形成した孔を差込孔13bとしたが、これに限定せず、アンカー軸体23の外周面に凹設した溝形状を差込孔としてもよい。この場合、第1挿着部31の突設部は、第1固定部材10の差込孔に応じた形状に形成する。
【0134】
また、第1挿着部31の挿入孔311a、及び第2挿着部32の挿入孔321aを略長楕円形状としたが、略円形の孔であってもよい。この場合、第1固定部材10のアンカー部及び第2固定部材20のアンカー部を、それぞれ第1挿着部の挿入孔及び第2挿着部の挿入孔に対応する形状に形成する。
【0135】
また、第1挿着部31の突設部313、及び第1固定部材10の差込孔13bを、挿入孔311aの長軸方向に長い形状としたが、これに限定せず、挿入孔311aの短軸方向に長い形状の突設部及び差込孔であってもよい。
【0136】
この場合であっても、本実施形態の固定構造は、例えば幅方向Yから見て略円形の突設部及び差込孔に比べて、不適切な形状の固定部材の誤組付けを確実に防止することができる。
具体的には、固定構造は、突設部が短軸方向に長い接続箱本体30の第1挿着部に対して、差込孔が長軸方向に長い第1固定部材が組付けられることを防止できる。
【0137】
また、第1挿着部31における一対の展開規制部314を、座面部311から対向面部312にかけて立設された形状としたが、これに限定せず、先端が収容空間S1に位置するように、座面部311から立設された形状であってもよい。
また、第2挿着部32における一対の展開規制部323を、座面部321から対向面部322にかけて立設された形状としたが、これに限定せず、先端が収容空間S2に位置するように、座面部321から立設された形状であってもよい。
【符号の説明】
【0138】
1…第1ワイヤーハーネス
2…第2ワイヤーハーネス
3…電気接続箱
10…第1固定部材
11b…バンド部
12…アンカー部
13b…差込孔
15…係止爪
20…第2固定部材
25…係止爪
30…接続箱本体
31…第1挿着部
32…第2挿着部
311…座面部
311a…挿入孔
312…対向面部
313…突設部
314…展開規制部
321a…挿入孔
323…展開規制部
S1…収容空間
X…前後方向
YL…幅方向他方側