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特許7623168外装構造および該外装構造を備えたワイヤーハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】外装構造および該外装構造を備えたワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20250121BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20250121BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H02G3/04 081
H01B7/00 301
F16L57/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021040926
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022140882
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】三吉 隆宜
(72)【発明者】
【氏名】榊 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大崎 祥司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
(72)【発明者】
【氏名】井上 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慎一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165468(JP,A)
【文献】特開2004-248367(JP,A)
【文献】特開2012-070601(JP,A)
【文献】特開2015-163007(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034665(WO,A1)
【文献】特開2018-102066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0322796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0237770(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0174718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外側を囲繞する外装構造であって、
断面周方向に分割された複数の分割体を有し、
前記断面周方向において隣り合う前記分割体の端部同士の突合せ部に係合部が備えられ、
前記係合部は、隣り合う前記分割体のうち、何れか一方の前記分割体に設けられた係合片と、他方の前記分割体に設けられ、前記係合片と係合する被係合片とで構成され、
前記係合片の先端部分には、前記電線の軸方向と直交する内外方向の一方側に向けて突出する突出部が形成され、
前記被係合片の先端部分には、前記内外方向の一方側に向けて窪むとともに、隣り合う前記分割体が合体した状態において、前記突出部が係合する係合凹部が形成され、
前記係合片及び前記被係合片は、前記内外方向に撓み変形可能に形成された
外装構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記軸方向から視て、前記断面周方向の先端側に向かうに伴い、前記内外方向の他方側に向けて傾斜する、先端側が鋭角状の三角形状であり、
前記係合凹部は、隣り合う前記分割体が合体した状態において、前記突出部が嵌合する
請求項1に記載の外装構造。
【請求項3】
前記突合せ部の周辺において、一方の前記分割体の内面と他方の前記分割体の内面とが前記断面周方向において面一である
請求項1又は請求項2に記載の外装構造。
【請求項4】
前記分割体は導電性を有する導電性部材である
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の外装構造。
【請求項5】
前記分割体は絶縁性を有する樹脂製である
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の外装構造。
【請求項6】
前記分割体は、導電層を有する
請求項5に記載の外装構造。
【請求項7】
前記導電層は、樹脂製の前記分割体の径内側及び径外側の少なくとも一方に設けられた
請求項6に記載の外装構造。
【請求項8】
前記導電層は、前記樹脂製の前記分割体の肉厚内部に設けられた
請求項6又は請求項7に記載の外装構造。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうちいずれかに記載の外装構造と、前記電線とが備えられ、
前記電線の外側を前記外装構造で囲繞した
ワイヤーハーネス。
【請求項10】
電線の外側を囲繞する外装構造であって、
断面周方向に分割された複数の分割体を有し、
前記断面周方向において隣り合う前記分割体の端部同士の突合せ部に係合部が備えられ、
前記係合部は、隣り合う前記分割体のうち、何れか一方の前記分割体に設けられた係合片と、他方の前記分割体に設けられ、前記係合片と係合する被係合片とで構成され、
前記係合片の先端部分には、前記電線の軸方向と直交する内外方向の一方側に向けて突出する突出部が形成され、
前記被係合片の先端部分には、前記内外方向の一方側に向けて窪むとともに、隣り合う前記分割体が合体した状態において、前記突出部が係合する係合凹部が形成され、
前記係合片及び前記被係合片は、前記内外方向に撓み変形可能に形成され、
前記係合片は、前記突出部の基端側における前記内外方向の一方側の周面に、隣り合う前記分割体が合体した状態において、前記被係合片における前記内外方向の他方側の周面と接着する接着部が設けられた
外装構造。
【請求項11】
電線の外側を囲繞する外装構造であって、
断面周方向に分割された複数の分割体を有し、
前記断面周方向において隣り合う前記分割体の端部同士の突合せ部に係合部が備えられ、
前記係合部は、隣り合う前記分割体のうち、何れか一方の前記分割体に設けられた係合片と、他方の前記分割体に設けられ、前記係合片と係合する被係合片とで構成され、
前記係合片の先端部分には、前記電線の軸方向と直交する内外方向の一方側に向けて突出する突出部が形成され、
前記被係合片の先端部分には、前記内外方向の一方側に向けて窪むとともに、隣り合う前記分割体が合体した状態において、前記突出部が係合する係合凹部が形成され、
前記係合片及び前記被係合片は、前記内外方向に撓み変形可能に形成され、
前記分割体は、他の部分よりも剛性の高い高剛性部位を有し、前記突合せ部は前記高剛性部位に設けられた
外装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の外側を囲繞する外装構造および該外装構造を備えたワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に配索されるワイヤーハーネスは、複数の電線を束にしてなり、これら電線が外装部材で囲繞されている。そして、ワイヤーハーネスは、電線を外装部材で囲繞することで、内部の電線の電磁シールド性能、耐チッピング性能、防水性能等を確保している。
【0003】
ところで、ワイヤーハーネスが長い配索経路において配索される場合には、それに伴って外装部材も総じて長尺物になる傾向がある。
このように、外装部材が長尺物となった場合等においては、電線に対して外装部材を外装する作業時に、長尺物である外装部材の内部に電線を挿通させる必要があるため、時間がかかり、製造効率が悪化してしまうおそれがある。
【0004】
このような課題を解決するため、特許文献1では、外装部材として、軸方向に沿って分割された形状の一対の分割体を合体することにより構成されるシールドパイプを用いることで、外装部材の内部に電線を挿通させずとも、電線に対して外装部材を外装できるため、外装作業の改善を図っている。
【0005】
具体的に、特許文献1のシールドパイプは、断面周方向において隣り合う一対の分割体のうち一方の分割体における突合せ端部に、直線状に突出するラップ嵌合部が形成されるとともに、他方の分割体における突合せ端部に、ラップ嵌合部の突出方向に凹状の溝部とが形成される。
【0006】
そして、特許文献1のシールドパイプは、一対の分割体の端部同士を突き合せることでラップ嵌合部が溝部に嵌合され、一対の分割体が互いに合体される構成としている。
【0007】
しかし、特許文献1のシールドパイプは、直線状に突出するラップ嵌合部を溝部に差し込んで突合せ端部同士を嵌合させただけであるため、シールドパイプに外力が作用する等した際に、ラップ嵌合部が溝部から抜けるなどして嵌合が解除されるおそれがある。
【0008】
そうすると、特許文献1のシールドパイプにおいては、一対の分割体の間に生じた隙間から内部の電線が露出し、内部の電線をしっかりと保護できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6132206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、隣り合う分割体の突合せ端部同士が互いに分離しないように合体した状態に保つことで、内部の電線をしっかりと保護することができる外装構造および該外装構造を備えたワイヤーハーネスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、電線の外側を囲繞する外装構造であって、断面周方向に分割された複数の分割体を有し、前記断面周方向において隣り合う前記分割体の端部同士の突合せ部に係合部が備えられ、前記係合部は、隣り合う前記分割体のうち、何れか一方の前記分割体に設けられた係合片と、他方の前記分割体に設けられ、前記係合片と係合する被係合片とで構成され、前記係合片の先端部分には、前記電線の軸方向と直交する内外方向の一方側に向けて突出する突出部が形成され、前記被係合片の先端部分には、前記内外方向の一方側に向けて窪むとともに、隣り合う前記分割体が合体した状態において、前記突出部が係合する係合凹部が形成され、前記係合片及び前記被係合片は、前記内外方向に撓み変形可能に形成されたことを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、隣り合う前記分割体の端部同士を、周方向に係合することで、該端部同士が互いに分離しないようにしっかりと係合した状態に保つことができる。
従って、内部の電線をしっかりと保護することができる。
また、筒状に一体に形成された外装構造のように、電線を挿通させてなくても電線に対して外装構造を容易に囲繞することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記突合せ部の周辺において、一方の前記分割体の内面と他方の前記分割体の内面とが前記断面周方向において面一としてもよい。
前記構成によれば、前記突合せ部の周辺において、前記被係合片や前記係合片が、分割体の内部空間に向けて突出しない。すなわち、前記被係合片や前記係合片によって内部空間が侵されない。このため、内部空間に有する電線が前記分割体の内面に当接することによって損傷するおそれがなく、内部の電線をしっかりと保護することができる。
【0014】
また、外装部材は、前記被係合片や前記係合片によって内部空間が侵されないため、広い内部空間を確保することができ、外径を大きく形成することなく、より一層多数または太い電線を収容することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記分割体は導電性を有する導電性部材で形成されてもよい。
【0016】
前記構成によれば、前記分割体は電磁シールド効果を得ることができる。
ここで、前記分割体は導電性部材であれば、金属で形成する、或いは金属以外の導電性を有する部材を備え、または含有する絶縁部材(非導電部材)で形成してもよい。
【0017】
但し、分割体は導電性部材の中でも金属で形成することで、チッピング等の外力に対する剛性も確保し易くなるため、好ましい。
【0018】
またこの発明の態様として、前記分割体は絶縁性を有する樹脂製としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、周辺の電気機器や電線、或いはこれらに備えた端子金具等の導電性部材と電気的に接触しても、これら導電部材に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0020】
また、前記分割体は樹脂製であるため、被係合片が設けられた前記分割体および係合片が設けられた前記分割体を、樹脂成形により容易に形成することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記分割体は、導電層を有してもよい。
前記分割体は、導電層によって電磁シールド効果を得ることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記導電層は、樹脂製の前記分割体の径内側及び径外側の少なくとも一方に設けられてもよい。
上述の分割体の径内側及び径外側は、分割体の厚み方向の中間に対して径内側あるいは径外側であることを示し、前記導電層は、分割体の内表面や外表面に面するように或いは面しないように設けてもよい。
【0023】
この発明により、分割体における径内側及び径外側の少なくとも一方に設けられた導電層同士を隣り合う分割体の間で容易に電気的に接続するとともに、導電層を接地回路に接続することで、囲繞する電線に対して電磁シールド効果を奏することができる。
【0024】
具体的には、導電層が分割体の径内側に配置された場合、囲繞される電線と導電層との距離が縮まるため、電磁シールド効果を得るための導電層をコンパクトに構成することができる。逆に、導電層が径外側に配置された場合、囲繞される電線と導電層との距離が離れるため、外部電線からの電磁波の入射、及び電線から外部への電磁波の放射の影響が低くなり、高いシールド効果を得ることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記導電層は、前記樹脂製の前記分割体の肉厚内部に設けられてもよい。
上述の前記分割体の肉厚内部は、分割体の外表面や内表面よりも厚み方向の内側部分を示し、導電層が分割体の外表面や内表面に面しないように厚み方向の内部に設けられることをいう。
【0026】
この発明により、導電層の損傷を防止でき、各分割体に設けられた導電層同士を電気的に接続するとともに、導電層を接地回路に接続することで、外装構造で外部を囲繞する電線に対して安定した電磁シールド効果を奏することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記断面周方向において隣り合う前記分割体同士を接着する接着部が設けられてもよい。
上述の接着部は、接着する分割体の対向する対向面同士が接着膜を介して当接するように接着されても良いし、対向面同士の間に接着層が形成され、接着層を介して対向面同士が接着されてもよい。
【0028】
この発明により、係合部によって分割体同士が係合されて電線を囲繞する外装構造において、係合部と接着部とが協働して分割体同士を接合するため、耐久性のある外装構造を構築することができる。
【0029】
またこの発明は、上述した外装構造と、前記電線とが備えられ、前記電線の外側を前記外装構造で囲繞したワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0030】
前記構成によれば、隣り合う分割体の突合せ端部同士が互いに分離しないように合体した状態に保つことで、内部の電線をしっかりと保護することができる外装構造を備えることができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、隣り合う分割体の突合せ端部同士が互いに分離しないように合体した状態に保つことで、内部の電線をしっかりと保護することができる外装構造および該外装構造を備えたワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態のワイヤーハーネスの要部を一部断面で示す斜視図。
図2図1のA-A線矢視拡大断面図。
図3図2の要部拡大図。
図4】一対の分割体を合体する手順の一例を示す断面図。
図5】(a1)は変形例1のワイヤーハーネスの図1に対応する図、(a2)図2に対応する図、(b1)は変形例2のワイヤーハーネスの図1に対応する図、(b2)図2に対応する図。
図6】(a1)は変形例3のワイヤーハーネスの図1に対応する図、(a2)図2に対応する図、(b1)は変形例4のワイヤーハーネスの図1に対応する図、(b2)図2に対応する図。
図7】(a)は変形例5のワイヤーハーネスの図3に対応する図、(b)は変形例6のワイヤーハーネスの図3に対応する図。
図8】変形例7のワイヤーハーネスの図3に対応する図。
図9】変形例8のワイヤーハーネスの図2に対応する図。
図10】変形例9のワイヤーハーネスの図2に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1図2に示すように、本実施形態のワイヤーハーネス1は、複数(当例では2本)の電線3と、複数の電線3を囲繞する外装部材としての管状体2が備えられている。
なお、図中、矢印Xは管状体2の軸方向、矢印Yは管状体2の径方向、矢印Zは管状体2の周方向を夫々示す。また、以下の説明において、径方向の内側を径内側と略記するとともに径方向の外側を径外側と略記することがある。
【0034】
本実施形態のワイヤーハーネス1は、図示省略するが、電気自動車やハイブリッド車におけるバッテリーとモータとを繋いでいる高電圧用のものであり、例えば車両の床下パネルに配策されている。なお、本実施形態においてワイヤーハーネス1はバッテリーとモータとを繋いでいるが、これに限定されない。
【0035】
2本(一対の)の電線3は、互いの間隔が長手方向に沿って略一定になるように、すなわち略並列(平行)に配置されている。図1図2に示すように、これら2本の電線3は、管状体2によって一括して包囲されている。本実施形態において2本の電線3は構造および大きさが同じであるため、一方の電線3に基づいて説明する。
【0036】
電線3は、電圧・大電流に対応可能な高圧電線であって、図2に示すように、導電性を有する複数の芯線を束ねて構成された導体部31と、該導体部31の外周全体を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部32とで構成されている。
【0037】
図示省略するが、電線3は、長手方向(軸方向)の両側の末端部に端子金具が取り付けられるとともに、末端部付近が管状体2から延出されている。そして、電線3の長手方向の一方の末端部に備えられた端子金具は、バッテリー側に設けられたコネクタ等における図示省略する所定の端子取付け部に接続されている。一方、電線3の長手方向の他方の末端部に備えられた端子金具は、モータ側に設けられたコネクタ等における図示省略する所定の端子取付け部に接続されている。
【0038】
なお、電線3における管状体2の両端部からの延出部分は、可撓性導電部材としての筒状の編組線(図示省略)により覆われた構成としてもよい。
この構成を適用する場合において、編組線は、例えば、錫メッキが施された銅製の素線、すなわち、錫メッキ銅線を編んで形成した編組部材を採用することができる。
但し、編組線は、このように錫メッキ銅線を編んで形成した編組部材に限らず、メッキを施していないもの、或いは、アルミニウム等他の金属種(すなわち、アルミ素線を編組して形成したアルミ編組線)であってもよい。
【0039】
管状体2は、内部に複数(当例では2本)の電線3を囲繞できる程度の内径を有する円筒状パイプであり、電線3を飛び石等から保護するとともに配索経路に沿って保持可能な所定の剛性を有している。
【0040】
管状体2は、軸方向に直交する断面視(以下、「直交断面視」と称する)が略正円形状、すなわち、円管状となるように形成されるとともに、複数(当例では2つ)の分割体4(4A,4B)を有して形成されている。
【0041】
一対の分割体4は、夫々の直交断面視で略正円形状が略2等分された形状、すなわち、略半円形状となるように軸方向の全長に亘って形成されている。本実施形態においては、一対の分割体4は、互いに同一形状に形成されている。また、一対の分割体4の夫々は、直交断面視形状が軸方向の全長に亘って同一形状に形成されている。
【0042】
一対の分割体4は、互いに対向させた姿勢で夫々の分割体4の周方向の両端部を相手側の分割体4の周方向の両端部と突き合わさるようにして合体(嵌合)されている。
但し、互いに同一形状で形成された一対の分割体4は、互いに線対称となるように対向させた姿勢で合体させるのではなく、互いに点対称となるように対向させた姿勢で合体されている。
【0043】
以下の説明において、図2に示すように、一対の分割体4の端部同士が突き合わさる部分を「突合せ部5」と称する。すなわち、管状体2には、2つの突合せ部5を有している。以下の説明において、これら2つの突合せ部5のうち一方を「第1突合せ部5A」と称するとともに、他方を「第2突合せ部5B」と称する。
【0044】
また、図2に示すように、管状体2は、2つの突合せ部5を含めて全周に亘って肉厚が略一定となる円筒状に形成されており、径方向の略中間位置において導電層として、導電性を有するアルミニウムで形成されたアルミ層6が周方向における、突合せ部5を除く全体に亘って形成されている。
【0045】
導電層は、導電性部材であれば、本実施形態のアルミ層6のようにアルミニウムを採用するに限定せず、鉄や銅、ステンレスなど配置箇所に応じた金属種を適宜採用してもよい。導電層は、例えば、黒鉛など金属以外の材料を備えた構成としてもよい。
【0046】
なお、図示省略するが本実施形態においては、管状体2のアルミ層6の少なくとも一方の端部が、アース電線等を介して接地回路に接地されている。具体的には、図示省略するが管状体2の軸方向の両端部には、管状体2の外面からアルミ層6に向けて径方向に連通する穴が設けられており、アース電線の一端部は、穴に差し込まれた状態でアルミ層6に電気的に接続されている。本実施形態におけるアルミ層6は、上述したように、分割体4ごとに管状体2の周方向において分断されているため、図示省略するが、分割体4ごとに設けられたアルミ層6に対してアース電線の一端部が電気的に接続されている。これにより、管状体2は、略全周に亘って内部の電線3の電磁シールド性を確保している。
【0047】
管状体2におけるアルミ層6以外の部分(「管状体本体7」と称する)は、樹脂製である。そして、一対の分割体4の夫々は、押し出し成形等により、樹脂製の管状体本体7とアルミ層6とが一体に形成されている。
【0048】
図1図3に示すように、上述した2つの突合せ部5の夫々には、一対の分割体4の互いに突き合わさる端部同士を係合する係合部11,21が備えられている。
ここで、図2に示すように、一対の分割体4は、上述したように、互いに同一形状で形成されるとともに点対称となるように対向させた姿勢で合体される。
【0049】
このため、第1突合せ部5Aと第2突合せ部5Bは、管状体2の直交断面視において点対称となるため、以下、突合せ部5に備えられた係合部11,21の構成を、第1突合せ部5Aに基づいて説明するとともに、一対の分割体4を合体した状態(すなわち、後述するように係合片11と被係合片21とが互いに係合された状態)に基づいて説明する。
【0050】
図2に示すように、第1突合せ部5Aに備えられた係合部11,21は、一対の分割体4のうち、一方の分割体4Aの端部5Aa(「一方側端部5Aa」と称する)に設けられた係合片11と、他方の分割体4Bの端部5Ba(「他方側端部5Ab」と称する)に設けられた被係合片21とで構成されている。
【0051】
係合片11と被係合片21とは、第1突合せ部5Aにおける径方向の内外各側において配設されるとともに、何れも周方向において相手側の端部に向けて突出形成されている。そして、係合片11と被係合片21とは周方向および径方向において互いに係合可能に構成されている。
【0052】
具体的に、図3に示すように、第1突合せ部5Aに備えられた係合部11,21のうち、係合片11は、一方の分割体4Aにおける一方側端部5Aaの径方向の内側部位において、他方側端部5Abの径方向の内側部位の端面5Ab1まで突出している。係合片11の基部12は、突合せ部5の肉厚の略半分よりも若干薄い肉厚で形成されている。
【0053】
係合片11の先端部13には、係合片11の基部12よりも径方向の外側へ突出する径外突出部131が一体に形成されている。径外突出部131は、第1突合せ部5Aの径方向の中間位置よりも径方向の外側へ突出するとともに、係合片11の基部12の径方向の外面に対して径方向の外側へ段状に突出形成されている。
【0054】
径外突出部131は、径方向の外側への突出長さが段部131bから先端側へ徐々に小さくなるように、すなわち、係合片11の先端部13が先端11tに向けて鋭角状になるように径外面131aがテーパ形状に形成されている。
なお、係合片11の先端11tは、係合片11の基部12と略同じ肉厚に形成されている。
【0055】
このような係合片11によって、第1突合せ部5Aの一方側端部5Aaの径方向内側部位が形成されている。係合片11は、突出方向の先端11tが、他方側端部5Abの径方向内側部位の端面5Ab1に当接するように形成されている。
【0056】
係合片11の径方向の内面11aによって一方の分割体4Aの内周面4Aaの一部、すなわち、第1突合せ部5Aの内周面が形成されている。また、係合片11は、他方の分割体4Bの内周面4Baに沿って、すなわち、他方の分割体4Bの周方向に沿って円弧状に突出して形成されている。そして、係合片11の径内面11aと、一対の分割体4における、係合片11と周方向で隣接する部位の径内面(4Aa,4Ba)とは、互いに面一となるように形成されている。
【0057】
一方、図3に示すように、第1突合せ部5Aに備えられた係合部11,21のうち、被係合片21は、他方の分割体4Bにおける他方側端部5Abの径方向の外側部位において、一方側端部5Aaにおける径方向の外側部位の端面5Aa1に向けて突出している。被係合片21は、一方の分割体4Aの外周面4Abおよび係合片11の径外面11bに沿って、すなわち、一方の分割体4Aの周方向に沿って円弧状に突出して形成されている。
【0058】
このような被係合片21によって、第1突合せ部5Aの他方側端部5Abの径方向外側部位が形成されている。被係合片21は、突出方向の先端21tが、一方側端部5Aaの径方向外側部位の端面5Aa1と周方向に隙間を隔てて対向するように形成されている。この隙間は、径方向に延びるとともに径方向の外側(管状態の外側)に向けて開口する縦溝51として形成される。
【0059】
被係合片21は、突合せ部5の肉厚の略半分の肉厚で形成されている。これにより、被係合片21の先端部22における径内面は、係合片11の基部12における径外面と径方向に隙間を隔てて対向するように形成されている。この隙間は、周方向に延びる横溝52として形成される。横溝52は、第1突合せ部5Aの径方向の略中間位置に相当する。
【0060】
上述した縦溝51と横溝52とは、縦溝51の径方向の内端部と横溝52の周方向における一方の分割体4Aの側の端部とが連通しており、直交断面視でL字形状に形成されている。そして、横溝52および縦溝51には、接着剤61が充填され、接着部60が形成されている。
【0061】
接着部60は、第1突合せ部5Aの突き合せた端部同士、すなわち一方側端部5Aaと他方側端部5Abを接着するとともに、突き合せた端部同士の隙間(縦溝51および横溝52)の止水性を確保している。
【0062】
被係合片21の基部23は、被係合片21の基部23の径方向の内面よりも径方向の外側へ凹んだ係合凹部24が形成されている。係合凹部24は、第1突合せ部5Aの径方向の中間位置よりも径方向の外側へ凹状に形成されるとともに、係合片11の先端部13に設けられた径外突出部131の径方向外側への突き出し形状に対応して径方向外側へ段状に凹んで形成されている。
【0063】
これにより、係合片11の径外突出部131は、被係合片21の係合凹部24に対して隙間なく嵌り込むように形成されている。そして、径外突出部131が係合凹部24に嵌り込んだ状態において、係合凹部24の段状の縁部24aと径外突出部131の段部131bとが互いに当接することで周方向において互いに係合する。さらに、係合凹部24のテーパ状の径内面24bと、径外突出部131のテーパ状の径外面131aとが互いに当接することで周方向および径方向において互いに係合する。
【0064】
被係合片21の径方向の外面21bによって他方の分割体4Bの外周面4Bbの一部、すなわち、第1突合せ部5Aの外周面が形成されている。さらに、被係合片21の径外面21bと、一対の分割体4における、被係合片21と周方向で隣接する部位の径外面(4Ab,4Bb)とは、互いに面一となるように形成されている。
上述した係合片11と被係合片21とは、互いに分離した状態から周方向および径方向において互いに係合可能に径方向に撓み変形可能に形成されている。
【0065】
また、図2図3に示すように、上述したアルミ層6は、管状体2の径方向の略中間位置、すなわち横溝52と径方向に一致する箇所に該横溝52と略同じ厚みを有して形成されている。
但し、係合片11の径外突出部131は、管状体2の径方向の略中間位置を径方向の内側から外側へ横切るように配置されているため、径外突出部131については、アルミ層6および横溝52が形成されていない(図2図3参照)。
【0066】
続いて、一対の分割体4を、電線3を囲繞した状態で互いに合体する手順の一例について説明する。
作業者は、第1突合せ部5Aの一方側端部5Aaと、他方側端部5Abとのうち、少なくとも何れか一方に、接着剤61を塗布する(図4(a)参照)。同様に、作業者は、第2突合せ部5Bの一方側端部5Baと、他方側端部5Bbとのうち、少なくとも何れか一方に、接着剤61を塗布する(図4(a)参照)。
なお、図4(a)は、一対の分割体4のうち、一方の分割体4aの一方側端部5Aaおよび他方側端部5Bbのみに接着剤61を塗布した例を図示している。
【0067】
また、作業者は、一対の分割体4を合体した後で、縦溝51の径方向外端部から縦溝51および横溝52に対して接着剤61を注入してもよいが、上述したように、一対の分割体4を合体する前に横溝52および縦溝51の形成面に接着剤61を予め塗布しておくことで、一対の分割体4を合体した状態において横溝52および縦溝51に対して隙間なく接着剤61を充填することができる。
【0068】
次いで、図4(b)に示すように、一対の分割体4を互いに点対称の姿勢で対向させる。具体的に、一対の分割体4は、第1突合せ部5Aの一方側端部5Aaに設けられた係合片11と他方側端部5Abに設けられた被係合片21とを互いに対向させるとともに、第2突合せ部5Bの一方側端部5Baに設けられた被係合片21と他方側端部5Bbに設けられた係合片11とを互いに対向させることができる。
このとき、作業者は、一対の分割体4の間に2本の電線3を介在させた状態で対向させる。
【0069】
次いで、作業者は、図4(c)に示すように、第1突合せ部5Aの一方側端部5Aaと他方側端部5Abが突き合わさるとともに、第2突合せ部5Bの一方側端部5Baと他方側端部5Bbを突き合わせるように一対の分割体4を互いに近接させる(図4(c)中の太矢印参照)。
【0070】
このとき、図4(c)中の一部拡大部分を示す図4(d)に示すように、係合片11の径外突出部131は、被係合片21の先端部22に当接するが、それに伴って、係合片11が径方向の内側へ撓み変形しながら一対の分割体4は、互いに近接する。やがて図2図3に示すように、係合片11の径外突出部131は、被係合片21の係合凹部24に嵌り込むことで係合片11と被係合片21とは互いに周方向および径方向に係合するとともに、第1突合せ部5Aと第2突合せ部5Bとの夫々に横溝52および縦溝51が形成される(図3参照)。
【0071】
そして、第1突合せ部5Aと第2突合せ部5Bとの夫々において、上述したように、予め接着剤61が塗布されているため、図3に示すように、横溝52および縦溝51には、接着剤61が充填された状態となり、第1突合せ部5Aの一方側端部5Aaと他方側端部5Ab、および第2突合せ部5Bの一方側端部5Baと他方側端部5Bbが、接着剤61(接着部60)を介して互いに接着される。
これにより、一対の分割体4を、電線3を囲繞した状態で互いに合体することができる。
【0072】
なお、管状体2の両端部において、上述したように、アース電線(図示省略)を一対の分割体4の夫々に備えたアルミ層6に電気的に接続することで管状体2は、内部の電線3の電磁シールド効果を得ることができる。
【0073】
図1図3に示すように、上述した本実施形態の管状体2は、電線3の外側を囲繞する外装構造であって、周方向に分割された一対の分割体4を有し、周方向において隣り合う一対の分割体4の端部同士が突き合わさる2つの突合せ部5(第1突合せ部5Aおよび第2突合せ部5B)の夫々において、係合部11,21が備えられている。
【0074】
そして、図2図3に示すように、第1突合せ部5Aに設けられた係合部11,21は、一方の分割体4Aに設けられた係合片11と、他方の分割体4Bに設けられ、係合片11と周方向に係合する被係合片21とで構成されている。さらに、図2に示すように、第2突合せ部5Bに設けられた係合部11,21は、一方の分割体4Aに設けられた被係合片21と、他方の分割体4Bに設けられ、被係合片21と周方向に係合する係合片11とで構成されている。
【0075】
前記構成によれば、本実施形態の管状体2は、例えば、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿って配索された電線3を外側から囲繞する外装作業時などにおいて、一対の分割体4が2つの突合せ部5の夫々において互いに突き合わせる方向と逆方向(分離させる方向)の外力が管状体2に作用しても、上述したように、一対の分割体4の2つの突合せ部5(第1突合せ部5Aおよび第2突合せ部5B)の夫々において、係合片11と被係合片21とが周方向に係合するため、2つの突合せ部5の夫々において、互いに突き合わさる端部同士が分離しないようにしっかりと係合した状態に保つことができる。
【0076】
なお、管状体2の上述した外装作業の具体例として、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿って公知のパイプベンダー機を使用して管状体2に対して曲げ加工を施す作業を挙げることができる。
従って、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿って配索された電線3を管状体2によって保護することができる。
【0077】
また、本実施形態の管状体2は、一対の分割体4で構成されるため、周方向に一体に形成された管状体のように、電線3を挿通させてなくてもよいため、管状体が長尺化しても電線3に対して容易に外装することができる。
【0078】
また、図2図3に示すように、前記直交断面視で突合せ部5において、一方の分割体4Aの内周面4Aaと他方の分割体4Bの内周面4Baとが周方向に面一である。
前記構成によれば、突合せ部5において、係合片11や被係合片21が、電線3が収容される内部空間に向けて突出しない。すなわち、係合片11や被係合片21によって内部空間が侵されない。このため、内部空間に収容された電線3が分割体4の内周面4Aa,4Baに当接することによって損傷するおそれがなく、内部の電線3をしっかりと保護することができる。
【0079】
また、係合片11や被係合片21によって、内部空間が侵されないため、広い内部空間を確保することができ、管状体2が大型化することなく、より一層多数または太い電線3を収容することができる。
【0080】
また、図1図3に示すように、本実施形態の分割体4の主要部である管状体本体7は絶縁性を有する樹脂製である。
前記構成によれば、管状体2が、仮に該管状体2の周辺に配置された電気機器や電線、或いはこれらに備えた端子金具等の導電性部材と電気的に接触しても、これら導電性部材に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0081】
また、前記構成によれば、係合片11および被係合片21が設けられた分割体4を樹脂成形により容易に形成することができる。
また、図1図3に示すように、本実施形態の分割体4は、導電層としてのアルミ層6を有している。
【0082】
前記構成によれば、分割体4は、アルミ層6によって内部に収容した電線3の電磁シールド効果を得ることができる。
【0083】
また、図1図3に示すように、本実施形態の管状体2は、一対の分割体4同士を接着する接着部60が設けられている。
前記構成によれば、一対の分割体4の突合せ部5同士が係合部11,21によって係合されて、電線3の外側を囲繞する管状体2において、係合部11,21と接着部60とが協働して一対の分割体4を接合するため、耐久性のある外装構造を構築することができる。
【0084】
詳述すると、従来より、電気自動車やハイブリッド車両においては、高電圧部品へ大電力を送電するために耐電圧の高いワイヤーハーネス(以下、「高圧ハーネス」と称する)が用いられ、該高圧ワイヤーハーネスは、車両床下に配索されることが多い。
【0085】
このような高圧ハーネスとして用いられる本実施形態のワイヤーハーネス1に備えられた管状体2は、電磁シールド性能に加え、上述したように、耐久性のある外装構造を構築することができるため、耐チッピング性能も満たすことができる。
【0086】
また、高圧ハーネスは、車両床下に配索されることが多いため、それに伴って高圧ハーネスに備えられる外装部材は、長尺化し易いが、本実施形態の管状体2は、上述したように、一対の分割体4から成る分割構造を採用することで電線挿通作業を要することなく、電線3の外側を容易に囲繞することができる。
【0087】
加えて、本実施形態の管状体2は、一対の分割体4の突合せ部5の隙間(縦溝51および横溝52)が形成されるため、一対の分割体4の合体時に抉ることがなく合体することができる。また、突合せ部5の隙間(縦溝51および横溝52)には接着剤61が充填され接着部60が形成されている。このため、本実施形態の管状体2は、分割構造を採用しながらも一対の分割体4の突合せ部5の隙間から内部に水が浸入しないような防水性能も満足することができる。
【0088】
また、一対の分割体同士を接合するために、従来のように、例えば、溶接を用いる手法を採用した場合には、設備が大掛かりになることや、作業者への安全も十分に配慮する必要が生じることが懸念される。
【0089】
これに対して、本実施形態の管状体2は、一対の分割体4の突合せ部5において係合部11,21によって係合するとともに、突合せ部5の隙間に接着部60を形成するだけでよいため、製造時における設備準備や作業者への安全配慮を、より簡便に行うことができる。
【0090】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
本発明の管状体は、上述した実施形態の管状体2のように、周方向に2等分した形状の分割体4を一対備えた構成に限らず、図5(a1)(a2)に示す変形例1の管状体2Aのように、周方向に3等分した形状の分割体4(4A,4B,4C)を3つ備えた構成としてもよい。
【0091】
なお、言うまでもなく、本発明の管状体は、周方向に4等分以上した形状の分割体4を複数備えた構成としてもよい。また、本発明の管状体は、上述したように、周方向に等分した形状の分割体4を複数備えた構成に限らず、図示省略するが、周方向の長さが夫々異なるように分割した形状の分割体を複数備えた構成としてもよい。
【0092】
また、本発明の管状体は、直交断面視で正円形状に形成したが、これに限らず、例えば、楕円形状、長円形状、或いは、四角形状などの多角形状で形成してもよい。
【0093】
管状体を直交断面視で四角形状に形成する場合は、例えば、図5(b1)(b2)に示す変形例2の管状体2Bのような正方形状、図6(a1)(a2)に示す変形例3の管状体2Cのような長方形状、或いは図示省略するが台形形状で形成することができる。
【0094】
図5(b2)において、2つの突合せ部5は、直交断面視で正方形状を形成する4つの辺部(71~74)(直線部)のうち、互いに対向する所定の辺部71,73の中間部に設けることで、一対の分割体4A,4Bを互いに同一形状とできるため、好ましいが、隅角部など他の部位に設けてもよい。
【0095】
図6(a2)において、2つの突合せ部5は、直交断面視で長方形状を形成する4つの辺部(75~78)(直線部)のうち、互いに対向する短辺部76,78に設けている。
【0096】
短辺部76,78は、長辺部75,77よりも剛性が高い(撓み難い)ため、2つの突合せ部5を短辺部76,78に設けることで、係合片11と被係合片21との係合が不用意に外れることを抑制できる。
但し、言うまでもなく、2つの突合せ部5は、短辺部76,78に設けることに限らず、長辺部75,77、或いは隅角部など他の部位に設けることを排除しない。
【0097】
本発明の管状体は、直交断面視で長円形状に形成される場合には、例えば、図6(b1)(b2)に示すように、2つの突合せ部5は、半円弧状部81に設けることができる。
【0098】
半円弧状部81は、直線状の辺部82よりも剛性が高い(撓み難い)ため、2つの突合せ部5を半円弧状部81に設けることで、係合片11と被係合片21との係合が不用意に外れることを抑制できる。
但し、言うまでもなく、2つの突合せ部5は、半円弧状部81に設けることに限らず、直線状の辺部82、或いは隅角部(半円弧状部81と直線状の辺部82との境界部)など他の部位に設けてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態においては、第1突合せ部5Aと第2突合せ部5Bの夫々において、互いに突き合せた端部同士の隙間として、縦溝51および横溝52が形成されている。
【0100】
この構成によれば、縦溝51および横溝52に充填された接着剤61(接着部60)により、突合せ部5に周方向の外力および径方向の外力が作用した場合においても、突き合せた端部同士の隙間における良好な止水性、並びに突き合せた端部同士の良好な接着性を得ることができる。
【0101】
但し、変形例として、第1突合せ部5Aと第2突合せ部5Bの夫々において、互いに突き合せた端部同士の隙間には、縦溝51と横溝52とのうち、何れか一方を形成した構成を採用してもよい。
【0102】
具体的には、図7(a)は、第1突合せ部5Aにおいて、突き合せた端部同士の隙間として縦溝51のみを形成した変形例5の管状体2Dを示している。
この構成によれば、係合片11の基部12と被係合片21の先端部22との径方向の間に横溝52が存在しないことに起因して、これら基部12と先端部22とが径方向において互いに隙間なく当接し、その分、係合片11と被係合片21との周方向の係合力を高めることができる。
【0103】
また、図7(b)は、第1突合せ部5Aにおいて、突き合せた端部同士の隙間として横溝52のみを形成した変形例6の管状体2Fを示している。
この構成によれば、係合片11と被係合片21との周方向の係合力に加えて、
一方側端部5Aaの径方向の外側部位の端面5Aa1と、被係合片21の先端21tとが周方向において突き当たるため、その分、周方向の係合力を高めることができる。
【0104】
また、この変形例6の横溝52は、縦溝51を介して管状体2の外側へと連通しないため、横溝52に充填された接着剤61は、管状体2の外側へと露出しない。よって、接着剤61の耐久性を持続させることができる。
【0105】
なお、言うまでもなく、本発明は、第1突合せ部5Aと第2突合せ部5Bの夫々において、互いに突き合せた端部同士の隙間において、縦溝51と横溝52との双方が形成されていない構成についても排除しない(図示省略)。
【0106】
また、上述した実施形態の係合部11,21は、例えば、第1突合せ部5Aにおいて、係合片11が一方側端部5Baから、被係合片21が他方側端部5Bbから夫々径方向の内外各側において配設されるように周方向において相手側の端部に向けて突出形成されたものである(図2図3参照)。
【0107】
但し、本発明の係合部は、この実施形態に限定せず、例えば、図8に示す変形例7の管状体2Gように、第1突合せ部5Aにおいて、被係合片21が径方向の内側に、係合片11が径方向の外側に配設されるように突出形成された構成としてもよい。
【0108】
前記構成によれば、上述した実施形態のように、縦溝51の径方向外側の端部が径外側(管状体2の外側)へ向けて開口しないため(図8参照)、縦溝51および横溝52に充填された接着剤61(接着部60)が、縦溝51における径方向外側の端部から管状体2の外側へ脱落することがなく、また、上述したように、接着剤61の耐久性を持続させることができる。
【0109】
また、上述した実施形態において、導電層としてのアルミ層6は、管状体2の径方向の略中間位置に形成されたものであるが、この構成に限らず、図9に示す変形例8の管状体2Hのように、管状体2Hの径方向の略中間位置に対して、例えば、径内側に設けられた構成としてもよい。
【0110】
具体的には、図9に示す管状体2Hのように、アルミ層6は、第1突合せ部5Aおよび第2突合せ部5Bにおいては、被係合片21よりも径方向の内側に配置された係合片11を通過するように管状体2の径方向の内側において、周方向の全長に亘って連続して設けられている。
【0111】
さらに、図9に示す管状体2Hのように、アルミ層6は、管状体2Hの肉厚内部、すなわち、管状体2Hの径方向の内側であるが、該アルミ層6の径方向の内面が管状体2の内周面4Aa,4Baとなるような最内層ではなく、最内層よりも径方向の外側に設けられた構成としている。
【0112】
このように、アルミ層6が径方向の内側に配置された場合、囲繞される電線3とアルミ層6との距離が縮まるため、電磁シールド効果を得るためのアルミ層6をコンパクトに構成することができる。
【0113】
或いは、図10に示す変形例9の管状体2Iのように、導電層としてのアルミ層6は、管状体2の径方向の中間位置に対して径方向の外側に設けられた構成としてもよい。
【0114】
具体的には、図10に示す変形例9の管状体2Iのように、アルミ層6は、第1突合せ部5Aおよび第2突合せ部5Bにおいては、係合片11よりも径外側に配置された被係合片21を通過するように管状体2Iの径方向の外側において、周方向の全長に亘って連続して設けられている。
【0115】
さらに、図10に示す変形例9の管状体2Iのように、アルミ層6は、管状体2の肉厚内部、すなわち、管状体2の径方向の外側であるが、該アルミ層6の径方向の外面が管状体2の外周面4Ab,4Bbとなるような最外層ではなく、最外層よりも径方向の内側に設けられた構成としている。
【0116】
このように、アルミ層6が径方向の外側に配置された場合、囲繞される電線3とアルミ層6との距離が離れるため、外部電線からの電磁波の入射、及び電線3から外部への電磁波の放射の影響が低くなり、高い電磁シールド効果を得ることができる。
【0117】
また、図9に示す管状体2H、図10に示す管状体2Iに備えられたアルミ層6は、何れも管状体2H,2Iの全周に亘って形成されている。すなわち、何れの管状体2H,2Iにおいても、一方の分割体4Aに備えられたアルミ層6と、他方の分割体4Bに備えられたアルミ層6とは、分割体4を合体した状態において、一対の分割体4の間で導通性を確保できる(つまり、互いに電気的に接続される)。
【0118】
このため、管状体2H,2Iの両端部において、アース電線等を介して接地回路に接地する際において、アース電線の一端部を一対の分割体4の夫々に備えたアルミ層6について電気的に接続する必要がなく、何れか一方のアルミ層6にのみ電気的に接続することで、管状体2H,2Iは、全周に亘って、内部の電線3の電磁シールド効果を得ることができる。
【0119】
さらに、アルミ層6は、樹脂製の分割体4の最内層よりも径内側、或いは、最外層よりも径外側に位置する肉厚内部に設けられた構成とすることで、損傷、酸化を防止でき、各分割体4に設けられたアルミ層6同士を電気的に接続するとともに、アルミ層6を接地回路に接続することで、管状体2H,2Iで外部を囲繞する電線3に対して安定した電磁シールド効果を奏することができる。
【0120】
また、アルミ層6は、分割体4の径方向において径外突出部131に対して内側または外側に避けて形成することで、径外突出部131がアルミ層6によって径方向に分断されることがなく、径外突出部131を樹脂で一体に形成することができるため、結果として径外突出部131の強度を確保することができる。
【0121】
本発明の導電層は、例えば、上述した管状体2,2H,2Iに備えられたアルミ層6のように、管状体の径方向の中間部と外側と内側のうち、何れか1箇所に形成するに限らず、複数層に亘って形成された構成としてもよい。また、本発明の管状体は、全体が導電性部材により形成された構成としてもよく、逆に、導電層を備えずに、全体が樹脂部材により形成された構成としてもよい。
【0122】
また、図9は、アルミ層6が、管状体2Hの径方向の中間位置に対して内側に形成された構成の一例であるとともに、図10は、アルミ層6が、管状体2Iの径方向の中間位置に対して外側に形成された構成の一例である。
【0123】
すなわち、言うまでもなく、本発明は、図9図10に示すように、アルミ層6が、管状体2H,2Iの径方向の中間位置に対して内側又は外側に形成された構成を、例えば、図5(a1)(a2)に示す変形例1の管状体2Aに適用するなど、上述した実施形態および変形例の特徴を適宜組み合わせた構成としてもよい(図示省略)。
【0124】
また、上述した管状体2は、一対の分割体4の夫々について、周方向の両端部のうち、何れかの一方の端部に係合片11が形成されるとともに、他方の端部に被係合片21が形成された構成として、一対の分割体4を互いに同一形状に形成している。これにより、管状体2は、部品管理や組付け作業の効率化を図ることができる点で有利である。但し、本発明の管状体は、例えば、一方の分割体4Aの両端部に係合片11が形成されるとともに、他方の分割体4Bの両端部に被係合片21が形成された構成としてもよい。
【0125】
具体的には図示省略するが、第1突合せ部5Aの一方側端部5Aaに係合片11が形成されるとともに他方側端部5Abに被係合片21が形成される一方で、第2突合せ部5Bの一方側端部5Baに被係合片21が形成されるとともに他方側端部5Bbに係合片11が形成される構成としてもよい。
【0126】
また、2本の電線3は、互いに撚り合されて形成されるツイストペア電線を採用してもよい。
言うまでもなく、本実施形態のワイヤーハーネス1は、2本の電線3を備えたが、本発明のワイヤーハーネスは、2本に限らず、1本、或いは3本以上の複数本が備えられた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…ワイヤーハーネス
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I…管状体(外装構造)
3…電線
4…分割体
4A…一方の分割体(何れか一方の分割体又は他方の分割体)
4B…他方の分割体(他方の分割体又は何れか一方の分割体)
4Aa…一方の分割体の内面
4Ba…他方の分割体の内面
5…突合せ部
5A…第1突合せ部
5B…第2突合せ部
5Aa,5Ba…一方側端部(分割体の端部)
5Ab,5Bb…他方側端部(分割体の端部)
6…アルミ層(導電層)
11,21…係合部
11…係合片
21…被係合片
60…接着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10