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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
G02B6/44 376
G02B6/44 366
G02B6/44 381
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021107346
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2022165364
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2021070085
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安冨 徹也
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-128169(JP,A)
【文献】特開2014-178431(JP,A)
【文献】特開2009-282388(JP,A)
【文献】特開2000-241688(JP,A)
【文献】米国特許第05109457(US,A)
【文献】特開2020-076842(JP,A)
【文献】特表平10-509814(JP,A)
【文献】特表2000-504436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線からなるコアと、
光ファイバケーブルの長手方向に垂直な断面において、前記コアを中心に対向する部位に設けられる第1のテンションメンバと、
前記第1のテンションメンバ同士の周方向の間に配置され、前記第1のテンションメンバよりも引張剛性が低い複数の第2のテンションメンバと、
前記コア、前記第1のテンションメンバ及び前記第2のテンションメンバを覆うように設けられる外被と、
を具備し、
前記第1のテンションメンバと外被との密着力が50N/10mm以下であり、
前記第2のテンションメンバと外被との密着力は前記第1のテンションメンバと外被との密着力よりも大きいことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記第1のテンションメンバと外被との密着力が15N/10mm以下であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記第2のテンションメンバと外被との密着力が300N/10mm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記第2のテンションメンバと前記第1のテンションメンバは、周方向に略等間隔で配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記第2のテンションメンバと前記第1のテンションメンバは、周方向に等間隔で配置されず、前記第2のテンションメンバは、前記第1のテンションメンバの対向方向に対して垂直な方向に偏在して配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記コアを中心に対向するそれぞれの部位において、前記第1のテンションメンバが複数配置され、少なくとも一部の前記第1のテンションメンバは、前記第1のテンションメンバ同士の対向方向に平行な中心線上からずれた位置にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバ心線からなる光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルとしては、多数の光ファイバ心線からなるコアと、コアの外周に配置されたテンションメンバとが、外被で被覆されたものが用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような光ファイバケーブルは、一対のテンションメンバがコアを中心として対向する位置に配置されるため、テンションメンバを結ぶ直線を曲げの中心とした方向には曲げやすく、それ以外の方向には曲げにくい。すなわち、光ファイバケーブルには、曲げやすさの方向性が存在する。特に、テンションメンバを結ぶ直線と直交する中心線を曲げ中心とする方向には最も曲げにくくなる。
【0004】
これに対し、コアを挟んで対向する位置にテンションメンバを配置し、このテンションメンバ結ぶ線と垂直方向にも、同様のテンションメンバを配置した光ファイバケーブルが提案されている(特許文献2)。すなわち、互いに直交する方向に、コアを挟んでそれぞれテンションメンバを配置した光ファイバケーブルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-109400号公報
【文献】特開2020-204752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の光ファイバケーブルは、上述した曲がりやすい方向に対してもテンションメンバが配置されるため、全体としての剛性が高く、いずれの方向にも曲げにくくなる。このため、小径のドラムに巻くことができず、必要以上に大きなドラムに巻くことによる過剰な梱包が必要となる。また、無理に小径のドラムに巻き付けると、テンションメンバが座屈する恐れがある。これに対し、特許文献1の光ファイバケーブルのように曲げやすい方向があれば、より小さなドラムにも巻き付けることができる。
【0007】
ここで、このような光ファイバケーブルを管路内に敷設する方法がいくつか提案されている。例えば、図4に示すように、光ファイバケーブル101を空気圧送によって管路100に挿通する方法がある。この方法では、光ファイバケーブル101を、キャタピラ(登録商標)状の推進部103を介して、圧送ヘッド105から管路100に挿通する。圧送ヘッド105に高圧の空気を送りながら(図中矢印D)、推進部103によって光ファイバケーブル101を送り出すことで、光ファイバケーブル101を管路100へ圧送することができる(図中矢印C)。
【0008】
しかし、特許文献1のような光ファイバケーブルは、テンションメンバを結ぶ直線を曲げ中心とする方向には非常に曲がりやすいため、圧送時に、例えば管路の曲がり部などにおいて、光ファイバケーブルの先端に引っ掛かりなどがあると、光ファイバケーブルの曲がりや波打ちによって、管路内で詰まってしまう恐れがある。
【0009】
これに対し、特許文献2の光ファイバケーブルは、上述した曲がりやすい方向に対してもテンションメンバが配置されるため、全体としての剛性が高く、このような管路内での光ファイバケーブルの詰まりの発生を抑制することができる。
【0010】
一方、牽引ロープを用いて光ファイバケーブルを管路内に挿通する方法もある。この場合、あらかじめ光ファイバケーブルを牽引するロープを管路内に敷設し、牽引ロープの端部に光ファイバケーブルを接続し、牽引ロープを管路の他端から引っ張ることで、光ファイバケーブルを敷設することができる。
【0011】
このような方法において、連続した複数の管路に光ファイバケーブルを敷設する場合がある。この場合には、まず、図5(a)に示すように、上述した方法で、牽引ロープ107を用いて、1番目の管路100aに光ファイバケーブル101を挿通する(図中矢印E)。その後、図5(b)に示すように、1番目の管路100aと2番目の管路100bの間で、一度光ファイバケーブル101を管路外(例えば地上)に取り出し、光ファイバケーブル101をいわゆる「八の字取り」する。所定の長さの光ファイバケーブル1を1番目の管路100aから取出した後、上述と同様の方法で2番目の管路100bに光ファイバケーブル101を挿通する。
【0012】
しかし、特許文献2の光ファイバケーブルのように、全方向に対して曲げにくいと、このような八の字取りを行うことが困難である。これに対し、特許文献1の光ファイバケーブルのように、一方向に対して曲げやすい方向があると、八の字取りは可能であるが、曲げやすさの方向性が強いと(すなわち、曲げやすい方向への曲げ剛性が小さすぎると)、曲げやすい方向へ許容曲げ半径以下に簡単に曲がってしまうおそれがある。このため、許容曲げ半径以下に曲がらないように注意しながら作業する必要があるため、作業性が悪いという問題がある。また、無理に曲げようとすると、テンションメンバが座屈してしまう恐れがある。
【0013】
このように、従来の光ファイバケーブルは、敷設作業性と取り扱い性(ドラムへの巻き付け性や八の字取りのしやすさ)を両立するものが存在しなかった。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、敷設作業性に優れ、取り扱い性に優れた光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達するために本発明は、複数の光ファイバ心線からなるコアと、光ファイバケーブルの長手方向に垂直な断面において、前記コアを中心に対向する部位に設けられる第1のテンションメンバと、前記第1のテンションメンバ同士の周方向の間に配置され、前記第1のテンションメンバよりも引張剛性が低い複数の第2のテンションメンバと、前記コア、前記第1のテンションメンバ及び前記第2のテンションメンバを覆うように設けられる外被と、を具備し、前記第1のテンションメンバと外被との密着力が50N/10mm以下であり、前記第2のテンションメンバと外被との密着力は前記第1のテンションメンバと外被との密着力よりも大きいことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0016】
前記第1のテンションメンバと外被との密着力が15N/10mm以下であることが望ましい。
また、第2のテンションメンバと外被との密着力が300N/10mm以上であることが望ましい。
【0017】
前記第2のテンションメンバと前記第1のテンションメンバは、周方向に略等間隔で配置されてもよい。
【0018】
前記第2のテンションメンバと前記第1のテンションメンバは、周方向に等間隔で配置されず、前記第2のテンションメンバは、前記第1のテンションメンバの対向方向に対して垂直な方向に偏在して配置されてもよい。
【0019】
前記コアを中心に対向するそれぞれの部位において、前記第1のテンションメンバが複数配置され、少なくとも一部の前記第1のテンションメンバは、前記第1のテンションメンバ同士の対向方向に平行な中心線上からずれた位置にそれぞれ配置されてもよい。
【0020】
本発明によれば、コアを中心に第1のテンションメンバを対向配置して、第1のテンションメンバよりも引張剛性の低い第2のテンションメンバを第1のテンションメンバの周方向の間に配置することで、第1のテンションメンバの対向方向の中心線を曲げ中心とした曲げ方向(以下、単に「曲げやすい方向」という場合がある)の曲げやすさを低減することができる。このため、全体として剛性が高くなり、意図しない光ファイバケーブルの曲がりを抑制することができる。
【0021】
また、第1のテンションメンバの対向方向に垂直な中心線を曲げ中心とした曲げ方向(以下、単に「曲げにくい方向」という場合がある)と比較して、曲げやすい方向へは、相対的に曲げが容易であるため、八の字取りやドラムへの巻き付けの際に、容易に光ファイバケーブルを曲げることができる。また、曲げやすい方向への曲げやすさが低減されているため、この方向へ光ファイバケーブルが曲がりすぎることを抑制することができる。
【0022】
すなわち、本発明は、特許文献1のような光ファイバケーブルと比較して、曲げやすい方向への剛性を高めて曲げにくくするとともに、特許文献2の光ファイバケーブルと比較して、曲げにくい方向に対して、あえて相対的に曲げやすい方向性を設けたものである。このように、本発明によれば、互いに直交する方向に対して、曲げやすさのバランスを適切にしたことで、従来の特許文献1、2の光ファイバケーブルの長所を両立することができる。
【0023】
また、特に引張剛性の高い第1のテンションメンバと外被との密着力を所定以下とすることで、光ファイバケーブルが曲げにくい方向に曲げられた際に、第1のテンションメンバが外被から受ける拘束力を低減し、テンションメンバと外被の間でずれを生じさせることができるため、第1のテンションメンバに局所的なひずみが加わり、座屈が発生することを抑制することができる。このため、光ファイバケーブルの圧送時や巻取り時における光ファイバケーブルの損傷を抑制することができる。
【0024】
なお、第1のテンションメンバと外被との密着力を所定以下とすることで、環境温度の変化に対する外被の伸縮を第1のテンションメンバが抑制することができないため、外被内に収納された光ファイバの損失変動が懸念されるが、第2のテンションメンバと外被との密着を維持させることで、第2のテンションメンバが外被の伸縮を抑制するため、特性を安定化させることができる。
【0025】
また、第2のテンションメンバと第1のテンションメンバとを周方向に等間隔で配置すれば、第2のテンションメンバによる曲げやすさの方向性をなだらかに変化させることができる。
【0026】
また、第2のテンションメンバと第1のテンションメンバとを周方向に等間隔で配置せずに、第1のテンションメンバの対向方向に垂直な方向に第2のテンションメンバを偏在して配置することで、曲げやすい方向と曲げにくい方向との曲げやすさの差を小さくすることができる。すなわち、第2のテンションメンバの配置によって、曲げやすい方向に対する曲げ剛性を容易に調整することができる。
【0027】
また、コアを中心に対向するそれぞれの部位において、第1のテンションメンバを複数配置して、第1のテンションメンバを、その対向方向の中心線上からずれた位置にそれぞれ配置することで、第1のテンションメンバの対向方向の中心線を曲げ方向(すなわち曲げやすい方向)の曲げやすさを低減することができる。このため、曲げやすい方向と曲げにくい方向との曲げやすさの差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、敷設作業性に優れ、取り扱い性に優れた光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】光ファイバケーブル1の断面図。
図2】光ファイバケーブル1aの断面図。
図3】光ファイバケーブル1bの断面図。
図4】従来の光ファイバケーブル101の通線方法の一例を示す図。
図5】(a)、(b)は、従来の光ファイバケーブル101の他の通線方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、第1の発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型ケーブルであり、コア5、第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9b、外被13等により構成される。
【0031】
コア5は、複数の光ファイバ心線3からなる。より詳細には、複数の光ファイバ心線3が撚り合わせられて光ファイバユニットが形成され、複数の光ファイバユニットがさらに撚り合わせられて、コア5が形成される。なお、光ファイバ心線3は、例えば、長手方向に対して間欠的に接着された、間欠接着型の光ファイバテープ心線であってもよい。
【0032】
図1に示すように、コア5(複数の光ファイバ心線3)の外周には、押さえ巻き7が設けられる。押さえ巻き7は、テープ状の部材や不織布等であり、例えば縦添え巻きによってコア5の外周を一括して覆うように配置される。すなわち、押さえ巻き7の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と略一致し、押さえ巻き7の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向となるようにコア5の外周に縦添え巻きされる。なお、押さえ巻き7は必ずしも必須ではなく、また、押さえ巻き7を含めてコア5と呼ぶ場合がある。
【0033】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面において、コア5を中心に対向する部位には第1テンションメンバ9aが設けられる。また、第1テンションメンバ9a同士の周方向の間には、複数の第2テンションメンバ9bが配置される。第2テンションメンバ9bは、第1テンションメンバ9aよりも引張剛性(軸剛性=軸方向力/軸方向変形量)が低い。例えば、それぞれの第1テンションメンバ9aの径(断面積)は、それぞれの第2テンションメンバ9bの径(断面積)よりも大きい。
【0034】
第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9bは、光ファイバケーブル1の張力を負担する。なお、第1テンションメンバ9aは、光ファイバケーブル1の張力を主に負担し、第2テンションメンバ9bは、光ファイバケーブル1の張力を補助的に負担する。なお、第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9bの材質は特に限定されないが、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維等による繊維補強プラスチック(FRP)等が使用できる。また、第1テンションメンバ9aと第2テンションメンバ9bとは、異なる材質であってもよい。
【0035】
図示した例では、第2テンションメンバ9bが、第1テンションメンバ9a同士の周方向の間にそれぞれ3本ずつ配置される。すなわち、第1テンションメンバ9a同士の周方向の間に、第2テンションメンバ9bは合計6本配置される。なお、第1テンションメンバ9aの断面積の総計は、第2テンションメンバ9bの断面積の総計よりも大きいことが望ましく、さらに、それぞれの第1テンションメンバ9aの断面積を、第2テンションメンバ9bの総断面積よりも大きくしてもよい。
【0036】
また、第2テンションメンバ9bと第1テンションメンバ9aは、周方向に略等間隔で配置される。すなわち、第1テンションメンバ9aは、180°の間隔で配置され、第2テンションメンバ9b同士及び隣り合う第1テンションメンバと第2テンションメンバ9bは、それぞれ約45°間隔で配置される。なお、第2テンションメンバ9bの本数は特に限定されない。
【0037】
また、第1テンションメンバ9a及び第2テンションメンバ9bとは異なる周方向位置であって、コア5を挟んで互いに対向する位置には引き裂き紐11が設けられる。また、コア5の外周には、外被13が設けられる。第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9bおよび引き裂き紐11は、外被13に埋設される。すなわち、コア5(複数の光ファイバ心線3)、第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9b等を覆うように外被13が設けられる。外被13の外形は略円形である。外被13は、例えばポリオレフィン系の樹脂である。
【0038】
なお、第1テンションメンバ9aと外被13との密着力は、第2テンションメンバ9bと外被13との密着力よりも小さいことが望ましい。例えば、第1テンションメンバ9aと外被13との密着力は、50N/10mm以下であることが好ましく、より望ましくは、15N/10mm以下である。
【0039】
このようにすることで、光ファイバケーブル1を曲げにくい方向に曲げた際に、第1テンションメンバ9aが外被13から受ける拘束力を低減することができ、テンションメンバと外被の間でずれを生じさせることができる。このため、第1テンションメンバ9aの座屈の発生を抑制することができる。一方、第2テンションメンバ9bと外被13は密着しているため、環境温度の変化に対する外被13の伸縮による損失変動を抑制し、特性を安定化させることができる。
【0040】
ここで、光ファイバケーブル1は、第1テンションメンバ9aの対向方向に平行な中心線(図中の中心線A)を曲げ中心とした方向(図中の上下方向)が、曲げやすい方向であり、それ以外の方向(例えば、中心線Aに直交する中心線B)が曲げにくい方向となる。
【0041】
この場合、第2テンションメンバのない従来の光ファイバケーブル(例えば特許文献
1の光ファイバケーブル)と比較すると、光ファイバケーブル1は、曲げやすい方向の曲げやすさが、第2テンションメンバ9bによって低減する(すなわち曲げにくくなる)。すなわち、曲げやすい方向の曲げ剛性を大きくすることができる。
【0042】
一方、第1テンションメンバ9aを互いに直交する方向にそれぞれ対向させて、いずれの方向にも曲げにくくした光ファイバケーブル(例えば特許文献2の光ファイバケーブル)と比較すると、光ファイバケーブル1には、曲げにくい方向と曲げやすい方向とが存在する。すなわち、中心線Aを曲げ中心とする方向へは、他の方向と比較して相対的に曲げやすく、曲げやすい方向となる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、従来の曲げやすい方向への曲げ剛性を高めることができるため、例えば圧送時における光ファイバケーブルの曲がりの発生と、これによる詰まりの発生を抑制することができる。また、八の字取りを行う際にも、許容曲げ半径を超えて光ファイバケーブルが曲がることを抑制することができる。
【0044】
また、光ファイバケーブルをドラム等に巻き付ける際には、曲げやすい方向に光ファイバケーブルを曲げてドラム等に巻き付けることができるため、ドラム等のサイズが大型化することを抑制することができる。このように、異なるテンションメンバを併用して、曲げやすい方向と曲げにくい方向とを残しつつ、曲げやすい方向の曲げ剛性を高めて、方向による曲げやすさのバランスを適正にすることで、取り扱い性や敷設作業性に優れた光ファイバケーブルを得ることができる。
【0045】
また、第2テンションメンバ9bが周方向に略等間隔に配置されているため、第2テンションメンバ9bによる曲げやすさの方向性をなだらかに変化させることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施形態にかかる光ファイバケーブル1aを示す断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
光ファイバケーブル1aは、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、第1テンションメンバ9aの形態が異なる。前述した光ファイバケーブル1では、2本の第1テンションメンバ9aが、コア5を挟んで対向する位置に1本ずつ配置されたが、光ファイバケーブル1aでは、計4本の第1テンションメンバ9aが、コア5を挟んで対向する位置に1それぞれ2本ずつ配置される。
【0048】
それぞれの部位において、第1テンションメンバ9aは、周方向に隙間をあけて配置される。このように、コア5を中心として互いに対向する位置に、それぞれ複数の第1テンションメンバ9aを周方向に離間して配置することで、第1テンションメンバ9aを、第1テンションメンバ9a同士の対向方向に平行な中心線A上からずれた位置にそれぞれ配置することができる。
【0049】
なお、この場合でも、それぞれの第1テンションメンバ9aの断面積は、それぞれの第2テンションメンバ9bの断面積よりも大きい。また、さらにそれぞれの第1テンションメンバ9aの断面積を第2テンションメンバ9bの総断面積よりも大きくしてもよい。また、この場合でも、それぞれの第1テンションメンバ9aの引張剛性は、それぞれの第2テンションメンバ9bの引張剛性よりも大きい。また、さらにそれぞれの第1テンションメンバ9aの引張剛性を、第2テンションメンバ9bの引張剛性の総和よりも大きくしてもよい。
【0050】
ここで、通常、部材を曲げると、曲げの外側では引張変形となり、曲げの内側では圧縮変形となるところ、曲げ中心線上は引張及び圧縮の中立軸となる。このため、中心線近傍の変形量は小さく、中心線上の構造による曲げ剛性への影響が小さくなる。このため、前述したように、第1テンションメンバ9aの対向方向の中心線Aを曲げ中心とする曲げ方向が、光ファイバケーブル1aの曲げやすい方向となる。すなわち、前述した光ファイバケーブル1のように中心線A上に第1テンションメンバ9aを配置することで、この方向の曲げに対して、第1テンションメンバ9aによる曲げ剛性の向上を最小化することができ、当該方向へは曲げやすくなる。
【0051】
一方、光ファイバケーブル1aでは、中心線Aからずれた位置に第1テンションメンバ9aが配置されるため、光ファイバケーブル1と比較して、第1テンションメンバ9aによる曲げ剛性への影響が大きくなる。すなわち、中心線Aからずれた位置に第1テンションメンバ9aを配置することで、中心線Aを曲げ中心とした曲げ方向の曲げ剛性が向上し、第2テンションメンバ9bを配置した効果をさらに補完することができる。
【0052】
なお、第1テンションメンバ9aがそれぞれの部位に複数配置される場合には、その周方向の中央位置を第1テンションメンバ9aの代表位置とする。例えば、第1テンションメンバ9a同士のそれぞれの間に3本の第2テンションメンバ9bを配置する場合には、第1テンションメンバ9a(の代表位置)と第2テンションメンバ9bとの配置角度が45°となる。
【0053】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、コア5を中心として対向する位置に、それぞれ第1テンションメンバ9aを複数配置し、中心線Aからずれた位置に第1テンションメンバ9aを配置することで、曲げやすい方向への曲げ剛性を向上させることができる。なお、本実施形態において、第2テンションメンバ9bによる曲げ剛性の向上効果と合わせても、中心線Aを曲げ中心とした曲げ方向への曲げ剛性は、これと直交する中心線Bを曲げ中心とした曲げ方向への曲げ剛性よりも低いため、この方向が曲げやすい方向であることは変わらない。
【0054】
なお、それぞれの対向位置に配置される第1テンションメンバ9aが偶数の場合には、周方向のそれらの中央を結ぶ直線を対向方向の中心線Aとすればよい。また、それぞれの対向位置に配置される第1テンションメンバ9aが奇数の場合には、その中央の第1テンションメンバ9aを結ぶ直線を対向方向の中心線Aとすればよい。但し、それぞれの部位に第1テンションメンバ9aが3本以上配置される場合には等間隔に配置されるものとする。
【0055】
このように、それぞれの対向位置に配置される第1テンションメンバ9aが奇数の場合には、中央の第1テンションメンバ9aは中心線A上に配置されるが、他の少なくとも一部の第1テンションメンバ9aが、第1テンションメンバ9a同士の対向方向の中心線A上からずれた位置にそれぞれ配置されるため、同様の効果を得ることができる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図3は、第3の実施形態にかかる光ファイバケーブル1aを示す断面図である。光ファイバケーブル1bは、光ファイバケーブル1aと略同様の構成であるが、第2テンションメンバ9bの配置が異なる。前述した光ファイバケーブル1、1aでは、第2テンションメンバ9bと第1テンションメンバ9aは、周方向に等間隔に配置される。例えば、第1テンションメンバ9a同士のそれぞれの間に3本の第2テンションメンバ9bを配置する場合には、第2テンションメンバ9b同士の配置角度と、第1テンションメンバ9aと両端の第2テンションメンバとの配置角度は、いずれも約45°である。
【0057】
しかし、本実施形態の光ファイバケーブル1bでは、第2テンションメンバ9bと第1テンションメンバ9aは等間隔で配置されず、第2テンションメンバ9bは、第1テンションメンバ9aの対向方向に対して垂直な方向に偏在して配置される(図中F位置)。例えば、第1テンションメンバ9a同士のそれぞれの間に3本の第2テンションメンバ9bを配置する場合において、第2テンションメンバ9b同士の配置角度は約30°であり、第1テンションメンバ9aと両端の第2テンションメンバとの配置角度は約60°である。
【0058】
前述したように、中心線Aから離れるにつれて、中心線Aを曲げ中心とした曲げ方向の曲げ剛性の向上効果が大きい。このため、第2テンションメンバ9bを、第1テンションメンバ9aの対向方向に対して垂直な方向に偏在して配置することで、光ファイバケーブル1bの曲げやすい方向に対して、効率よく曲げ剛性を向上させることができる。
【0059】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2テンションメンバ9bを、第1テンションメンバ9aの対向方向に対して垂直な方向に偏在して配置することで、光ファイバケーブル1bの曲げやすい方向に対して、効率よく曲げ剛性を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施形態において、第2テンションメンバ9bを偏在させることによって曲げ剛性を向上させても、中心線Aを曲げ中心とした曲げ方向への曲げ剛性は、これと直交する中心線Bを曲げ中心とした曲げ方向への曲げ剛性よりも低いため、曲げやすい方向であることは変わらない。
【実施例
【0061】
テンションメンバの構成を変化させた種々の光ファイバケーブルについて評価した。評価に供した光ファイバケーブル、概ね図2に示す断面形態である。まず、直径200μmの光ファイバ12本を間欠的に接着し12心の光ファイバテープ心線を作成した。この光ファイバテープ心線を12本撚り合わせ、2mm幅のプラスチックテープを巻付けて144心の光ファイバユニットを構成した。
【0062】
144心の光ファイバユニットを48本サプライし、中心から2-9-15-22配列となるように4層に撚り合わせた上で、吸水性不織布を縦添えし、フォーミング治具で丸めた上に、ナイロン製の押え糸を巻付け、6912心のコアを作成した。
【0063】
こうして作成したコアと、テンションメンバと、外被を切裂く切裂き紐をケーブル長手に沿って撚らずにストレートに配置し、外被材にて円筒状にシースし光ファイバケーブルを作成した。ここで、テンションメンバとしては、φ2.0mmのG-FRP(ガラス繊維補強樹脂)製の4本の第1テンションメンバと、φ0.5mmのK-FRP(アラミド繊維補強樹脂)製の所定本数の第2テンションメンバを用いた。
【0064】
なお、外被材はLLDPEとした。光ファイバケーブルの外径は30mm、内径(コア外径)は22mmとした。なお、φ2.0mmのG-FRP製の第1テンションメンバは、対向する位置にそれぞれ2本配置し、φ0.5mmのK-FRP製の第2のテンションメンバは、第1テンションメンバの間に等間隔で配置した。この際の、第2テンションメンバの本数を振って圧送可能距離、曲げ剛性、および巻取り張力30kgで巻き付け可能なドラムの胴径を比較した。
【0065】
圧送試験は、Condux International社のGulfstream 400XLを使用し、空気圧は100psiとし、HDPE製の2インチダクトに送通した。2インチダクトは2000m用意し、400mごとに曲げ半径R=2000mmで折り返した。3回の送通実験を行い、最も圧送距離が短かったものを圧送可能距離として採用した。
【0066】
曲げ剛性はIEC 60794-1-21 E17Aに従って行った。なお、治具間隔は500mm、加圧速度は200mm/分、変位量は10mmとして試験を実施した。なお、曲げ剛性は、第1テンションメンバの対向方向を中心線とした曲げ方向(図2の中心線Aを曲げ中心とした曲げ方向であって曲げやすい方向)と、これと直交する中心線Bを曲げ中心とした曲げ方向(曲げにくい方向)について評価した。
【0067】
巻き付け可能なドラムについては、それぞれのサイズのドラムに光ファイバケーブルを巻き付け、巻き付けた際の反発が強く、胴面とケーブルの間に隙間が空かないものを巻き付け可能と判定し、巻き付けることができた最も小さいサイズのドラムを、巻き付け可能な最小ドラム径とした。
【0068】
第1テンションメンバと外被の密着力は、以下のようにして測定した。まず、第1テンションメンバを含み、第1テンションメンバの軸方向に対し、幅20mm、長さ100mmの外被片を切り出した。次に、長さ方向に10mm長の外被を残し、前後45mmずつの外被を第1テンションメンバの外周から除去したサンプルを作成した。露出した第1テンションメンバをφ2.8mmの穴をあけた引き抜きダイスに通して、インストロン型引張試験機で引張速度500mm/分で引っ張り、引き抜けたときの最大応力をテンションメンバと外被との密着力とした。なお、第1テンションメンバと外被との密着力は、外被の押出温度や、第1テンションメンバ外周への滑剤の塗布などの製造条件の設定によって調整可能である。また、第2テンションメンバについても、第1テンションメンバと同様の方法でφ1.0mmの穴をあけた引き抜きダイスに通して、テンションメンバと外被との密着力を測定した。
【0069】
曲げ試験は、第1テンションメンバの対向方向に対し90度の角度をなす線を中心線とした曲げ方向(図2の中心線Bを曲げ中心とした曲げ方向であって曲げにくい方向)に対して、半径600mm、300mmのそれぞれの曲げ半円状のマンドレルを用意し、ケーブルをマンドレルに対して180度巻き付けるようにして実施した。この際の第1テンションメンバの座屈の有無を確認し、座屈があったものを×とし、座屈が見られなかったものを○とした。
【0070】
また、-30~70℃のヒートサイクル試験中の伝送損失の増加について評価を行った。胴径1400mmのドラムにケーブルを1000m巻き、恒温槽内で温度変動を温度保持時間6時間、温度移動時間6時間で3サイクル繰り返した際の、波長1550nmの伝送損失の初期値に対する最大増加値を測定した。この結果、0.15dB/km以下であるものを〇とし、0.15dB/kmを超えたものを×とした。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1~実施例3は、いずれも第2テンションメンバを8本(すなわち、第1テンションメンバ同士の間にそれぞれ4本ずつ)配置したものであり、第1テンションメンバと第2テンションメンバの配置間隔は全て36°とした。
【0073】
一方、比較例1は、実施例1等と同様に、第2テンションメンバを8本配置したものであり、第1テンションメンバと第2テンションメンバの配置間隔は全て36°とした。比較例2は、第2テンションメンバを6本(すなわち、第1テンションメンバ同士の間にそれぞれ3本ずつ)配置したものであり、第1テンションメンバと第2テンションメンバの配置間隔は全て45°(すなわち図2と同様)とした。比較例3は、第2テンションメンバを4本(すなわち、第1テンションメンバ同士の間にそれぞれ2本ずつ)配置したものであり、第1テンションメンバと第2テンションメンバの配置間隔は全て60°とした。
【0074】
結果より、第2テンションメンバを追加した実施例1~3及び比較例1~3は、いずれも、曲げ剛性が増加し、1000m以上の圧送が可能であった。また、実施例1~3及び比較例1~3は、いずれも、1000mm径のドラムに巻き付けることが可能であった。
【0075】
一方、結果は省略するが、第2テンションメンバを有さない光ファイバケーブルにおいて、圧送可能距離を延ばすために、単に光ファイバケーブルの曲げ剛性を高めるだけでは、巻き付け可能な最小ドラム径が著しく大きくなる。また、曲げ剛性が大きすぎるため、八の字取りも困難であった。これに対し、第2テンションメンバによって、曲げやすい方向への曲げ剛性を適切に調節することで、敷設作業性と取り扱い性を両立することができた。
【0076】
第2テンションメンバと外被の密着力は、いずれも300N/10mm以上であり、第1テンションメンバと外被の密着力よりも高かった。
【0077】
また、第1テンションメンバと外被との密着力が50N/10mm以下の実施例1~3は、半径600mmでの曲げ試験において、第1テンションメンバの座屈は見られなかった。さらに、第1テンションメンバと外被との密着力が15N/10mm以下の実施例1~2は、半径300mmでの曲げ試験においても、第1テンションメンバの座屈は見られなかった。また、第1テンションメンバと外被との密着力を低くしても、第2テンションメンバと外被との密着により、ヒートサイクル中における伝送損失の増加は所定以下であった。
【0078】
一方、第1テンションメンバと外被との密着力が50N/10mmを超える比較例1~3は、いずれも、半径600mmでの曲げ試験において、第1テンションメンバの座屈が見られた。
【0079】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0080】
1、1a、1b………光ファイバケーブル
3………光ファイバ心線
5………コア
7………押さえ巻き
9a………第1テンションメンバ
9b………第2テンションメンバ
11………引き裂き紐
13………外被
100、100a、100b………管路
101………光ファイバケーブル
103………推進部
105………圧送ヘッド
107………牽引ロープ
図1
図2
図3
図4
図5