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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】基板処理装置及びクランプ機構
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20250121BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20250121BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250121BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20250121BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C23C14/50 D
C23C14/00 B
H01L21/68 N
H05B33/14 A
H05B33/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022127630
(22)【出願日】2022-08-10
(65)【公開番号】P2024024764
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大介
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082868(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103668102(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/50
C23C 14/00
H01L 21/683
H10K 50/10
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する装置であって、
前記基板に表面処理を施す処理室と、
前記基板が載置される基板載置部と、前記基板載置部に載置された前記基板を支持可能なクランプ機構とを備え、前記処理室内に配置された基板保持部と、
前記基板の処理対象領域に対応する形状を有するマスク開口部を有するフレーム部を備えるマスクと、
を備え、
前記クランプ機構は、
前記基板保持部の側面から露出する可動アームと、
前記基板を支持可能なクランプ部と、
前記基板保持部に支持された固定ベース部と、
前記固定ベース部によって支持された回転軸と、
第1可動部と、第2可動部と、軸支部とを有する可動ベース部と、
を有し、
前記第1可動部は、前記可動アームが延在する方向において前記固定ベース部に対して離間可能又は近接可能であり、
前記第2可動部は、前記可動ベース部が延在する方向において前記回転軸に対して前記第1可動部とは反対側に位置し、
前記第2可動部は、前記可動アームを支持し、
前記軸支部は、前記第1可動部と前記第2可動部との間に設けられているとともに前記回転軸に支持されており、
前記クランプ部は、前記可動アームに支持されるアーム支持部と、前記基板載置部において前記基板に接触可能な基板コンタクト部と、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置する延在アームとを有し、
前記延在アームが延在する方向と、前記可動アームが延在する方向とは互いに交差している、
基板処理装置。
【請求項2】
前記クランプ機構は、前記固定ベース部と前記第1可動部との間に設けられた突出部を有し、
前記固定ベース部は、
前記第1可動部に対向する第1固定ベース面と、
前記第2可動部に対向する第2固定ベース面と、
を有し、
前記第1可動部は、第1磁石を有し、
前記第1固定ベース面は、前記第1磁石に対向する第2磁石を有し、
前記第2可動部は、第3磁石を有し、
前記第2固定ベース面は、前記第3磁石に対向する第4磁石を有し、
前記第1磁石及び前記第2磁石の各々は、互いに吸引し合う磁性を有し、
前記第3磁石及び前記第4磁石の各々は、互いに反発し合う磁性を有し、
前記突出部において前記固定ベース部と前記第1可動部とが接触している状態においては、前記第1磁石及び前記第2磁石は、互いに離間している、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記クランプ部は、
前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置するとともに前記延在アームに設けられたフランジと、
を有し、
前記基板載置部は、前記基板の外周領域を支持する外周載置部と、前記基板の厚さ方向において前記外周載置部から突出する複数の凸部と、前記基板の辺に平行な方向において前記複数の凸部のうちの互いに隣り合う2つの凸部の間に設けられた切欠部と、を有し、
前記切欠部に前記延在アームの一部が挿入されており、
前記アーム支持部から前記基板コンタクト部に向かう方向において前記フランジは前記切欠部を覆う、
請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理室は、
前記基板に表面処理を施す第1室と、
前記第1室に隣接した第2室と、
を備え、
前記第2室は、
前記基板が通過する搬送口と、
前記基板保持部を支持しかつ回転させる回転支持軸を有し、前記基板保持部を水平位置と起立位置との間で回転移動させる回転支持機構と、
を備え、
前記マスクは、
前記第1室と前記第2室との間の境界部に位置し、かつ、重力方向に略平行となるように起立するように配置されており、
前記基板保持部の前記水平位置においては、前記基板保持部は、前記搬送口を通じた搬送が可能なように前記基板を水平方向に向けて支持し、
前記基板保持部の前記起立位置においては、起立した前記マスクの前記マスク開口部に前記基板の前記処理対象領域を露出させるように前記基板保持部が前記マスクに近づいて配置され、前記マスク開口部を通じて前記基板の前記処理対象領域に対して表面処理が可能である、
請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記クランプ部の前記延在アームには、前記可動アームが延在する方向に凹む凹部を有し、
前記基板載置部は、前記基板の外周領域を支持する外周載置部と、前記基板の厚さ方向において前記外周載置部から突出する凸部とを有し、
前記フレーム部は、前記クランプ部に面するフレーム面と、前記フレーム面から突出する第1マスク突起部及び第2マスク突起部を有し
前記第1マスク突起部は、間隔をあけて前記凹部の内部に挿入可能であり、
前記第2マスク突起部は、前記基板に平行な方向において間隔をあけて前記凸部の隣に位置することが可能となるように、かつ、間隔をあけて前記外周載置部に対向することが可能となるように、前記第1マスク突起部とは異なる位置に設けられており、
前記回転支持機構によって前記基板保持部が前記起立位置に移動した際、
前記第1マスク突起部は、間隔をあけて前記凹部の内部に挿入され、
前記凹部と前記第1マスク突起部との間に形成された空間には、前記基板に平行な方向に対して屈曲する第1屈曲空間が形成されており、
前記凸部は、間隔をあけて前記フレーム面に対向し、
前記第2マスク突起部は、間隔をあけて前記外周載置部に対向するとともに、前記基板に平行な方向において間隔をあけて前記凸部の隣に位置し、
前記凸部と前記第2マスク突起部との間に形成された空間には、前記基板に平行な方向に対して屈曲する第2屈曲空間が形成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1室は、蒸着源を有し、
前記第1室において蒸着処理が行われる、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1室は、カソードを有し、
前記第1室においてスパッタ処理が行われる、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板処理装置を構成する基板保持部において基板を支持するクランプ機構であって、
前記基板保持部に支持される固定ベース部と、
前記固定ベース部によって支持されている回転軸と、
第1可動部と、第2可動部と、軸支部とを有する可動ベース部と、
前記第2可動部によって支持された可動アームと、
前記可動アームに支持されるアーム支持部と、前記基板に接触可能な基板コンタクト部と、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置する延在アームとを有し、前記基板を支持可能なクランプ部と、
前記固定ベース部と前記第1可動部との間に設けられた突出部と、
を備え、
前記第1可動部は、前記固定ベース部に対して離間可能又は近接可能であり、
前記第2可動部は、前記可動ベース部が延在する方向において前記回転軸に対して前記第1可動部とは反対側に位置し、
前記軸支部は、前記第1可動部と前記第2可動部との間に設けられているとともに前記回転軸に支持されており、
前記延在アームが延在する方向と、前記可動アームが延在する方向とは互いに交差しており、
前記固定ベース部は、
前記第1可動部に対向する第1固定ベース面と、
前記第2可動部に対向する第2固定ベース面と、
を有し、
前記第1可動部は、第1磁石を有し、
前記第1固定ベース面は、前記第1磁石に対向する第2磁石を有し、
前記第2可動部は、第3磁石を有し、
前記第2固定ベース面は、前記第3磁石に対向する第4磁石を有し、
前記第1磁石及び前記第2磁石の各々は、互いに吸引し合う磁性を有し、
前記第3磁石及び前記第4磁石の各々は、互いに反発し合う磁性を有し、
前記突出部において前記固定ベース部と前記第1可動部とが接触している状態においては、前記第1磁石及び前記第2磁石は、互いに離間している、
クランプ機構。
【請求項9】
前記クランプ部は、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置するとともに前記延在アームに設けられたフランジを有する、
請求項8に記載のクランプ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及びクランプ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス分野、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野においては、基板(被処理体)に各種の薄膜を形成する成膜装置として、スパッタリング装置や蒸着装置が知られている。
【0003】
スパッタリング装置においては、減圧雰囲気が維持されたチャンバ内にて、カソードに取り付けられたターゲットに対向するように基板が配置され、ターゲットから材料分子が弾き出され、マスクの開口に露出する基板に対して成膜を行う。
【0004】
また、例えば、特許文献1に開示されている蒸着装置においては、減圧雰囲気が維持されたチャンバ内にて、蒸着源から材料分子を蒸発させ、マスクの開口に露出する基板に対して成膜を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-165571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成膜装置においては、基板を保持する基板保持部に基板を密着させる複数のクランプ機構が用いられている。基板保持部の外周領域には、複数の開口部が設けられている。クランプ機構は、複数の開口部の各々の内部に収容されている。
【0007】
ところで、ターゲットや蒸着源から発した材料分子は、マスクと基板との間の隙間を通るように飛翔する。さらに、材料分子は、クランプ機構を収容する複数の開口部を通り、基板保持部を構成する複数の構成部品の間の空間に侵入する。この空間において、材料分子は、構成部品の表面に対して直接的に付着したり、構成部品の表面に対して反射した後に構成部品の表面に付着したりする。このような材料分子は、構成部品の表面に堆積する堆積物となる。この堆積物は、構成部品の表面から剥がれ易く、パーティクルの発生源となるという問題がある。
【0008】
さらに、パーティクルの発生を事前に抑制するためには、成膜装置の稼働を一旦停止して成膜装置の内部の雰囲気を大気圧雰囲気とした状態で、基板保持部を分解し、堆積物が付着した使用済みの構成部品と使用前の構成部品とを交換するといったメンテナンスが必要である。しかしながら、メンテナンスを行う頻度を減らすことができず、メンテナンスに要する時間及び工数が増加し、成膜装置の稼働停止に伴って生産性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成する。
1.基板処理装置においてマスクと基板との間の隙間を通る材料分子が基板保持部の内部に侵入することを抑制する。
2.パーティクルの発生を抑制する。
3.メンテナンスに要する時間及び工数の低減を図り、装置の生産性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る基板処理装置は、基板に表面処理を施す処理室と、前記基板が載置される基板載置部と、前記基板載置部に載置された前記基板を支持可能なクランプ機構とを備え、前記処理室内に配置された基板保持部と、前記基板の処理対象領域に対応する形状を有するマスク開口部を有するフレーム部を備えるマスクと、を備える。前記クランプ機構は、前記基板保持部の側面から露出する可動アームと、前記基板を支持可能なクランプ部と、前記基板保持部に支持された固定ベース部と、前記固定ベース部によって支持された回転軸と、第1可動部と、第2可動部と、軸支部とを有する可動ベース部とを有する。前記第1可動部は、前記可動アームが延在する方向において前記固定ベース部に対して離間可能又は近接可能である。前記第2可動部は、前記可動ベース部が延在する方向において前記回転軸に対して前記第1可動部とは反対側に位置する。前記第2可動部は、前記可動アームを支持する。前記軸支部は、前記第1可動部と前記第2可動部との間に設けられているとともに前記回転軸に支持されている。前記クランプ部は、前記可動アームに支持されるアーム支持部と、前記基板載置部において前記基板に接触可能な基板コンタクト部と、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置する延在アームとを有し、前記延在アームが延在する方向と、前記可動アームが延在する方向とは互いに交差している。
【0011】
言い換えると、延在アームは、基板載置部に対して略平行な方向において、アーム支持部から基板コンタクト部に延びている。可動アームは、基板載置部に対して略垂直な方向、例えば、鉛直方向に延在している。可動アームは、基板保持部の側面に対向している。
アーム支持部において延在アーム及び可動アームは互いに繋がっており、延在アーム及び可動アーム、略L字形状を形成する。つまり、延在アーム及び可動アームは、L字アームと称することができる。L字アームは、基板保持部の上面と側面との間のコーナー部に面している。
【0012】
この構成によれば、可動アームを基板保持部の内部に設ける必要がなくなる。つまり、従来のような、可動アームを収容するための開口部を基板保持部に設ける必要がない。したがって、基板処理装置において飛翔する材料分子は、マスクと基板との間の隙間を通るように飛翔するが、材料分子が基板保持部の内部に侵入することが抑制される。このため、基板保持部を構成する複数の構成部品の間の空間への材料分子の侵入を抑制することができる。具体的に、材料分子が構成部品の表面に対する直接的な付着を抑制することができる。また、材料分子が構成部品の表面での反射の後に材料分子が構成部品の表面に付着することを抑制することができる。これにより、構成部品の表面に対する材料分子の堆積を抑制することができる。したがって、構成部品の表面における材料分子の堆積物に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。
【0013】
さらに、基板保持部を構成する構成部品の表面に対する材料分子の堆積を抑制することができるので、パーティクルの発生が抑制された状態を維持しながら、長期間にわたって基板保持部を構成する構成部品を使用することができる。したがって、使用済みの構成部品と使用前の構成部品とを交換するといったメンテナンスの頻度を低減することができる。このため、メンテナンスに要する時間及び工数が低減することができ、成膜装置をより長く連続的に使用することができ、基板処理装置の生産性を向上させることができる。
【0015】
この構成によれば、基板保持部の側面から可動アームを露出させた状態で、回転軸の周りに可動アームを回転させることができる。可動アームの回転に伴って、基板コンタクト部は、基板を支持することができ、または、基板の支持状態を解除することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記クランプ機構は、前記固定ベース部と前記第1可動部との間に設けられた突出部を有し、前記固定ベース部は、前記第1可動部に対向する第1固定ベース面と、前記第2可動部に対向する第2固定ベース面と、を有し、前記第1可動部は、第1磁石を有し、前記第1固定ベース面は、前記第1磁石に対向する第2磁石を有し、前記第2可動部は、第3磁石を有し、前記第2固定ベース面は、前記第3磁石に対向する第4磁石を有し、前記第1磁石及び前記第2磁石の各々は、互いに吸引し合う磁性を有し、前記第3磁石及び前記第4磁石の各々は、互いに反発し合う磁性を有し、前記突出部において前記固定ベース部と前記第1可動部とが接触している状態においては、前記第1磁石及び前記第2磁石は、互いに離間してもよい。
【0017】
この構成によれば、互いに吸引し合う磁石の吸引力と、互いに反発し合う磁石の反発力とを利用して、基板クランプ状態又はクランプ解除状態となるクランプ機構の状態を安定させることができる。さらに、突起部によって、吸引力が働く2つの磁石の間の接触を防止することができる。言い換えると、このようなクランプ機構においては、スプリングを用いていない。一般的に、スプリングを用いる機構では、スプリングを保持する座面とスプリングとの間で摩擦が生じ、摩擦部分からパーティクルが発生するという問題がある。これに対し、スプリングの復元力に代えて磁石の吸引力及び反発力を利用する機構では、パーティクルの発生を抑制することができる。
さらに、突出部によって、吸引力が作用する第1磁石と第2磁石との非接触状態が維持されるので、第1磁石と第2磁石とを容易に離間させることができる。
【0018】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記クランプ部は、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置するとともに前記延在アームに設けられたフランジと、を有し、前記基板載置部は、前記基板の外周領域を支持する外周載置部と、前記基板の厚さ方向において前記外周載置部から突出する複数の凸部と、前記基板の辺に平行な方向において前記複数の凸部のうちの互いに隣り合う2つの凸部の間に設けられた切欠部と、を有し、前記切欠部に前記延在アームの一部が挿入されており、前記アーム支持部から前記基板コンタクト部に向かう方向において前記フランジは前記切欠部を覆ってもよい。
【0019】
この構成によれば、クランプ部によって基板が支持された支持状態では、基板保持部の切欠部は、フランジによって覆われる。したがって、基板処理装置において飛翔する材料分子が基板保持部の切欠部を通過することが抑制される。切欠部を通った材料分子の飛散を抑制することができる。このため、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記処理室は、前記基板に表面処理を施す第1室と、前記第1室に隣接した第2室と、を備え、前記第2室は、前記基板が通過する搬送口と、前記基板保持部を支持しかつ回転させる回転支持軸を有し、前記基板保持部を水平位置と起立位置との間で回転移動させる回転支持機構と、を備え、前記マスクは、前記第1室と前記第2室との間の境界部に位置し、かつ、重力方向に略平行となるように起立するように配置されており、前記基板保持部の前記水平位置においては、前記基板保持部は、前記搬送口を通じた搬送が可能なように前記基板を水平方向に向けて支持し、前記基板保持部の前記起立位置においては、起立した前記マスクの前記マスク開口部に前記基板の前記処理対象領域を露出させるように前記基板保持部が前記マスクに近づいて配置され、前記マスク開口部を通じて前記基板の前記処理対象領域に対して表面処理が可能であってもよい。
【0021】
この構成によれば、上述したクランプ機構を有する基板保持部を備えた縦型の基板処理装置を実現することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記クランプ部の前記延在アームには、前記可動アームが延在する方向に凹む凹部を有し、前記基板載置部は、前記基板の外周領域を支持する外周載置部と、前記基板の厚さ方向において前記外周載置部から突出する凸部とを有し、前記フレーム部は、前記クランプ部に面するフレーム面と、前記フレーム面から突出する第1マスク突起部及び第2マスク突起部とを有する。前記第1マスク突起部は、間隔をあけて前記凹部の内部に挿入可能である。前記第2マスク突起部は、前記基板に平行な方向において間隔をあけて前記凸部の隣に位置することが可能となるように、かつ、間隔をあけて前記外周載置部に対向することが可能となるように、前記第1マスク突起部とは異なる位置に設けられている前記回転支持機構によって前記基板保持部が前記起立位置に移動した際、前記第1マスク突起部は、間隔をあけて前記凹部の内部に挿入され、前記凹部と前記第1マスク突起部との間に形成された空間には、前記基板に平行な方向に対して屈曲する第1屈曲空間が形成されており、前記凸部は、間隔をあけて前記フレーム面に対向し、前記第2マスク突起部は、間隔をあけて前記外周載置部に対向するとともに、前記基板に平行な方向において間隔をあけて前記凸部の隣に位置し、前記凸部と前記第2マスク突起部との間に形成された空間には、前記基板に平行な方向に対して屈曲する第2屈曲空間が形成されてもよい。
【0023】
言い換えると、第1屈曲空間及び第2屈曲空間の各々は、ラビリンス構造を有する。
この構成によれば、基板保持部が起立位置に配置された状態では、第1屈曲空間に材料分子が通過することで、延在アーム、凹部、フレーム面、及び第1マスク突起部に対する材料分子の衝突、反射、及び付着が生じる。同様に、第2屈曲空間に材料分子が通過することで、基板保持部の外周載置部、凸部、フレーム面、及び第2マスク突起部に対する材料分子の衝突、反射、及び付着が生じる。したがって、飛翔した材料分子が第1室から第2室に向けて流れる際に、ラビリンス構造を有する第1屈曲空間及び第2屈曲空間に材料分子を付着させることができ、第2室への材料分子の侵入を抑制することができる。すなわち、第1屈曲空間及び第2屈曲空間によって、材料分子をトラップするトラップ効果を得ることができる。
【0024】
したがって、第1屈曲空間及び第2屈曲空間によって、材料分子のトラップ効果が得られていることで、処理室のメンテナンスを行う際には、材料分子をトラップした部品のみを交換することができる。具体的に、材料分子が付着した部品、例えば、マスク、クランプ部、外周載置部を構成する部品のみを交換するだけで、メンテナンスを完了することができる。
また、上述したトラップ効果により、第2室を構成する構成部材のうち交換が難しい部品への材料分子の付着を抑制することができる。このため、メンテナンス作業においては、交換が難しい部品を除いて、材料分子が付着した部品のみを交換するだけでよいため、メンテナンス性が向上する。
【0025】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記第1室は、蒸着源を有し、前記第1室において蒸着処理が行われてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、蒸着によって基板に成膜処理を施す際に、基板保持部の内部への材料分子の侵入を抑制することができる。材料分子の堆積に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。メンテナンスに要する時間及び工数が低減することができ、成膜装置をより長く連続的に使用することができ、基板処理装置の生産性を向上させることができる。
【0027】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記第1室は、カソードを有し、前記第1室においてスパッタ処理が行われてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、スパッタリングによって基板に成膜処理を施す際に、基板保持部の内部への材料分子の侵入を抑制することができる。材料分子の堆積に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。メンテナンスに要する時間及び工数が低減することができ、成膜装置をより長く連続的に使用することができ、基板処理装置の生産性を向上させることができる。
【0029】
本発明の一態様に係るクランプ機構は、基板処理装置を構成する基板保持部において基板を支持するクランプ機構であって、前記基板保持部に支持される固定ベース部と、前記固定ベース部によって支持されている回転軸と、第1可動部と、第2可動部と、軸支部とを有する可動ベース部と、前記第2可動部によって支持された可動アームと、前記可動アームに支持されるアーム支持部と、前記基板に接触可能な基板コンタクト部と、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置する延在アームとを有し、前記基板を支持可能なクランプ部と、前記固定ベース部と前記第1可動部との間に設けられた突出部とを備える。前記第1可動部は、前記固定ベース部に対して離間可能又は近接可能である。前記第2可動部は、前記可動ベース部が延在する方向において前記回転軸に対して前記第1可動部とは反対側に位置する。前記軸支部は、前記第1可動部と前記第2可動部との間に設けられているとともに前記回転軸に支持されている。前記延在アームが延在する方向と、前記可動アームが延在する方向とは互いに交差している。前記固定ベース部は、前記第1可動部に対向する第1固定ベース面と、前記第2可動部に対向する第2固定ベース面と、を有する。前記第1可動部は、第1磁石を有する。前記第1固定ベース面は、前記第1磁石に対向する第2磁石を有する。前記第2可動部は、第3磁石を有する。前記第2固定ベース面は、前記第3磁石に対向する第4磁石を有する。前記第1磁石及び前記第2磁石の各々は、互いに吸引し合う磁性を有する。前記第3磁石及び前記第4磁石の各々は、互いに反発し合う磁性を有する。前記突出部において前記固定ベース部と前記第1可動部とが接触している状態においては、前記第1磁石及び前記第2磁石は、互いに離間してもよい。
【0030】
この構成によれば、上述した基板処理装置と同様の効果を得ることができる。
【0032】
この構成によれば、上述した基板処理装置と同様の効果を得ることができる。
【0033】
本発明の一態様に係るクランプ機構においては、前記クランプ部は、前記アーム支持部と前記基板コンタクト部との間に位置するとともに前記延在アームに設けられたフランジを有してもよい。
【0034】
この構成によれば、上述した基板処理装置と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様に係る基板処理装置及びクランプ機構によれば、基板処理装置においてマスクと基板との間の隙間を通る材料分子が基板保持部の内部に侵入することを抑制することができる。パーティクルの発生を抑制することができる。メンテナンスに要する時間及び工数の低減を図り、装置の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置を示す模式平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室の一部を示す斜視図であって、プラテンチャンバ、基板保持部、回転支持機構、及びマスクを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る基板保持部の一部を示す図であって、図2の符号Gの部分を示す拡大斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るクランプ機構を示す側面図であって、クランプ機構の動作を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室で行われる工程を示す模式側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室で行われる工程を示す模式側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室で行われる工程を示す模式側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室で行われる工程を示す模式側面図である。
図9】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室で行われる工程を示す図であって、マスク、クランプ機構、及び基板保持部の要部を示す模式断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る基板処理装置における成膜室で行われる工程を示す図であって、マスク及び基板保持部の要部を示す模式断面図である。
図11A】本発明の実施形態に係る基板処理装置において、ラビリンス構造が得られていない場合を説明する図である。
図11B】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
図11C】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
図11D】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
図11E】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
図12A】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
図12B】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
図12C】本発明の実施形態の変形例に係る基板処理装置において、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係る基板処理装置を、図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0038】
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。重力方向、つまり、鉛直方向に平行な方向をZ方向と称する。Z方向のうち、重力方向に一致する方向を下方向(下方)、または、-Z方向と称する。重力方向とは反対方向を上方向(上方)、または、+Z方向と称する。以下の説明において、「平面視」は、対象物を重力方向又は下方向に見ることを意味する。ガラス基板の搬送方向をX方向と称する。X方向のうち、搬送室から成膜室に基板が搬送される方向を+X方向と称する。成膜室から搬送室に基板が搬送される方向を-X方向と称する。回転支持軸が延在する方向をY方向と称する。Y方向のうち、回転駆動部から成膜室に向かう方向を+Y方向と称する。+Y方向とは反対方向を-Y方向と称する。X方向及びY方向を水平方向と称する。
【0039】
<基板処理装置>
図1は、本実施形態に係る基板処理装置を示す模式平面図である。図1において、符号1は、基板処理装置である。基板処理装置1は、ガラスや樹脂からなる基板に対して、真空環境下で加熱処理、成膜処理、エッチング処理等を行うインターバック式のスパッタリング装置や有機ELの製造に用いる蒸着装置に適用される。基板処理装置1は、例えば、FPD(Flat Panel Display)の製造工程に用いられる。この場合、基板には、例えば、TFT(Thin Film Transistor)を形成することができる。本実施形態においては、基板処理装置1がスパッタリング装置である場合を説明する。言い換えると、基板処理装置1において行われる表面処理は、成膜処理であり、すなわち、スパッタ処理である。本実施形態では、基板として、ガラス基板が用いられる場合を説明する。
【0040】
基板処理装置1は、成膜室4、4Aとロード・アンロード室2、2Aとを備える。成膜室4、4Aとロード・アンロード室2、2Aは、搬送室3の周囲を取り囲むように配置されている。成膜室4、4Aとロード・アンロード室2、2Aの各々は、例えば、互いに隣接するチャンバである。搬送室3は、トランスファチャンバである。また、基板処理装置1は、基板処理装置1を制御する不図示の制御装置を有する。制御装置は、成膜室4、4A及びロード・アンロード室2、2Aにおける動作を制御する。後述するように、制御装置は、成膜室4、4Aにおける回転支持機構10の回転動作を制御する。また、制御装置は、クランプ機構30を駆動させるクランプ駆動機構14を制御する。
【0041】
<ロード・アンロード室>
例えば、一方のロード・アンロード室2は、基板処理装置1の外部から内部に向けてガラス基板11を搬入するロード室として機能する。他方のロード・アンロード室2Aは、基板処理装置1の内部から外部に向けてガラス基板11を搬出するアンロード室として機能する。また、成膜室4と成膜室4Aとにおいては、同じ成膜工程が行われてもよいし、互いに異なる成膜工程が行われてもよい。ガラス基板11は、「基板」の一例である。
【0042】
ロード・アンロード室2と搬送室3との間、ロード・アンロード室2Aと搬送室3との間、成膜室4と搬送室3との間、及び成膜室4Aと搬送室3との間には、それぞれ、仕切りバルブが配置されている。
【0043】
ロード・アンロード室2には、位置決め部材が配置されている。位置決め部材には、ロード・アンロード室2の外部から内部に搬入されたガラス基板11が載置される。位置決め部材は、ガラス基板11の位置を設定して、ガラス基板11のアライメントを可能としている。ロード・アンロード室2には、ロード・アンロード室2の内部空間を減圧する(粗真空引きする)粗引き排気部が接続されている。粗引き排気部は、例えば、ロータリーポンプ等である。
【0044】
<搬送室>
図1に示すように、搬送室3は、搬送室3の内部に配置された搬送装置3aを備える。搬送装置3aは、例えば、搬送ロボットである。
搬送装置3aは、回転軸と、回転軸を回転駆動する駆動源と、回転軸に取り付けられたロボットアームと、ロボットアームの一部に形成されたロボットハンドと、上下動機構とを有している。ロボットアームは、互いに交差した第1移動レール及び第2移動レールと、第1移動レールに対して第2移動レールを移動可能な第1ベースと、第2移動レールに対してロボットハンドを移動可能な第2ベースとを備える。搬送装置3aは、被搬送物であるガラス基板11を、成膜室4、4Aとロード・アンロード室2、2Aとの間で移動させることができる。
なお、ロボットアームは、互いに屈曲可能な第1能動アーム、第2能動アーム、第1従動アーム、及び第2従動アームから構成されていてもよい。
【0045】
<成膜室>
成膜室4、4Aは、同じ構成を有する。以下では、成膜室4について説明し、成膜室4Aの説明を省略する。成膜室4は、プラズマチャンバ4m及びプラテンチャンバ4nによって構成されている。プラズマチャンバ4mは、「第1室」の一例である。プラテンチャンバ4nは、「第2室」の一例である。
【0046】
<プラズマチャンバ>
プラズマチャンバ4mには、カソードユニット5を構成するターゲット7及びバッキングプレート6が配置されている。プラズマチャンバ4mは、電源4pと、ガス雰囲気設定機構4gと、カソードユニット5とを備える。電源4p、ガス雰囲気設定機構4g、及びカソードユニット5は、ガラス基板11に対して成膜処理を行うために用いられる。
プラズマチャンバ4mにおいては、ガラス基板11に対して成膜処理が施される。言い換えると、プラズマチャンバ4mにおいて行われる表面処理は、成膜処理であり、すなわち、スパッタ処理である。
【0047】
<電源、ガス雰囲気設定機構>
電源4pは、後述するカソードユニット5のバッキングプレート6に接続されている。電源4pは、バッキングプレート6に負電位のスパッタ電圧を印加する
ガス雰囲気設定機構4gは、プラズマチャンバ4mの内部におけるガス雰囲気を設定するように構成されている。
ガス雰囲気設定機構4gは、プラズマチャンバ4mの内部に処理ガスを導入するガス導入部と、プラズマチャンバ4mの内部空間を減圧する(高真空引きする)高真空排気部とを有する。ガス導入部は、ガス供給源に接続されている。ガス導入部は、例えば、ガス供給源から供給されるガスの流量を調整するマスフローコントローラである。高真空排気部は、例えば、ターボ分子ポンプ等である。
【0048】
<カソードユニット>
カソードユニット5は、プラズマチャンバ4mの内部に立設されている。
カソードユニット5は、ターゲット7と、ターゲット7を保持するバッキングプレート6とを有する。カソードユニット5は、「カソード」の一例である。
バッキングプレート6は、カソード電極として機能する。バッキングプレート6は、プラズマチャンバ4mの内部において、搬送室3と成膜室4との間に位置する搬送口4aから最も遠い位置に立設される。
バッキングプレート6の前面側には、ガラス基板11を処理する際にガラス基板11と略平行に対面するターゲット7が固定される。バッキングプレート6は、ターゲット7に対して負電位のスパッタリング電圧を印加するための電極である。
【0049】
バッキングプレート6の後面側には、ターゲット7上に所定の磁場を形成するためのマグネトロン磁気回路が設置されている。マグネトロン磁気回路は、揺動機構に装着されている。揺動機構は、マグネトロン磁気回路を揺動させる駆動装置を有する。揺動機構の駆動装置は、マグネトロン磁気回路を揺動可能に構成されている。
【0050】
<カソードユニットの変形例>
カソードユニット5の変形例として、複数のロータリーカソードがプラズマチャンバ4mに適用されてもよい。複数のロータリーカソードの構成としては、複数の円筒状のカソードを並列に配置し、各カソードの外周面にターゲットが設けられた構成を採用することができる。複数のロータリーカソードの各々は、円筒軸周りに回転可能であってもよい。プラズマチャンバ4mは、ガラス基板11を処理する際に複数のロータリーカソードに対してマグネトロン磁気回路をガラス基板11と略平行に揺動させる揺動機構を備えてもよい。
【0051】
<プラテンチャンバ>
次に、図2図5を参照して、プラテンチャンバ、マスク、基板保持部、支持回転機構、及びクランプ機構について説明する。
図2は、本実施形態に係る基板処理装置1における成膜室4の一部を示す斜視図であって、プラテンチャンバ、基板保持部、回転支持機構、及びマスクを示す図である。
【0052】
プラテンチャンバ4nは、プラズマチャンバ4mに向かって開口する成膜口4bを有する。プラテンチャンバ4nは、成膜口4bを介してプラズマチャンバ4mに隣接している。成膜口4bにおいては、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとの境界部4cに、マスク20が配置されている。マスク20は、Z方向に略平行となるように起立するように配置されている。ここで、「Z方向に略平行」とは、重力方向と一致する方向又は重力方向に対して数度の角度で傾斜する方向を意味する。
成膜前工程においては、図示しないマスクアライメント部によって、マスク20の位置をアライメントすることが可能である。
【0053】
プラテンチャンバ4nは、搬送室3に向かって開口する搬送口4aを有する。プラテンチャンバ4nは、搬送口4aを介して搬送室3に隣接されている。搬送口4aは、ガラス基板11の搬送の際にガラス基板11が通過する開口である。搬送口4aには、仕切りバルブが配置されている。仕切りバルブの開閉により、プラテンチャンバ4nと搬送室3とが連通したり、搬送室3に対してプラテンチャンバ4nが隔離されたりする。
【0054】
<マスク>
マスク20は、略矩形のマスクフレーム20aと、マスクフレーム20aに縦横に張られた複数のリブ20bとを有する。マスクフレーム20aは、ガラス基板11の成膜対象領域11Tに対応する形状を有するマスク開口部20cを囲む。複数のリブ20bは、マスク開口部20cの領域、すなわち、マスクフレーム20aの内側領域を区画する。マスクフレーム20aは、「フレーム部」の一例である。成膜対象領域11Tは、「処理対象領域」の一例である。
【0055】
マスクフレーム20aは、プラズマチャンバ4mに面するフレーム表面20Tと、フレーム表面20Tとは反対のフレーム裏面20Rとを有する。フレーム裏面20Rは、「フレーム面」の一例である。フレーム裏面20Rは、基板保持部13が起立位置P2(図8参照)に移動した際に、後述するクランプ機構30のクランプ部80に面する部位である。
【0056】
<マスク突起部>
後述する図9及び図10において説明するように、フレーム裏面20Rには、第1マスク突起部20Fと第2マスク突起部20Sとが設けられている。第1マスク突起部20Fは、フレーム裏面20Rから突出する。第2マスク突起部20Sは、第1マスク突起部20Fとは異なる位置に設けられており、フレーム裏面20Rから突出する。
【0057】
マスクフレーム20aは、剛性を有するSUS等の金属で形成されている。リブ20bは、インバー等とされる金属箔で形成されている。マスクフレーム20aによってリブ20bの両端が引張された状態で、マスクフレーム20aにリブ20bが固定されている。マスクフレーム20aの内側において、縦横に張られた複数のリブ20bによって囲まれた領域が、成膜対象領域11Tに対応する。
【0058】
<基板保持部>
図2に示すように、プラテンチャンバ4nの内部には、基板保持部13が配置されている。基板保持部13は、例えば、プラテンである。基板保持部13は、ガラス基板11が載置される基板載置部15と、基板載置部15に載置されたガラス基板11を支持可能なクランプ機構30とを備える。基板保持部13が水平位置P1(図5図7参照)にある場合、基板保持部13の形状は、Z方向に見て略矩形平板状である。基板保持部13は、ガラス基板11の裏面をプラテンチャンバ4n内で支持可能である。
【0059】
図3は、本実施形態に係る基板保持部13の一部を示す図であって、図2の符号Gの部分を示す拡大斜視図である。図3は、基板保持部13にクランプ機構30が設けられた構造を示している。また、図3は、基板保持部13が水平位置P1にある場合を示している。図3に示すように、基板保持部13は、X方向に延在するX側面16Xと、Y方向に延在するY側面16Yとを有する。以下の説明では、X側面16X及びY側面16Yを単に側面16と称する場合がある。
【0060】
図3に示すように、基板保持部13は、Z方向において重ねられた基板保持ベース部17と、温度調整部18と、外周プレート19とを有する。温度調整部18は、Z方向における基板保持ベース部17の上面に設けられている。
Z方向における温度調整部18の上面は、基板載置部15である。温度調整部18は、基板載置部15に載置されたガラス基板11の温度を調整する。温度調整部18は、例えば、ガラス基板11を加熱するヒータである。温度調整部18の構成は、ヒータに限定されず、ガラス基板11を冷却するクーラであってもよい。基板保持ベース部17は、クランプ機構30を支持する部材である。
【0061】
外周プレート19は、ボルト等の公知の締結部材Bにより基板保持ベース部17に固定されている。外周プレート19は、X方向に延びるXプレート19Xと、Y方向に延びるYプレート19Yとによって構成されている。Xプレート19X及びYプレート19Yの各々は、プレート切欠部19Cを有する。プレート切欠部19Cの形状は、クランプ機構30を構成するクランプ部80のフランジ83の形状に対応している。
【0062】
X方向及びY方向における基板載置部15の外周部15Pには、外周載置部15Mが設けられている。外周載置部15Mは、複数の支持ピン15Sと、複数の延在凸部15Tと、複数の切欠部15Cとを有する。複数の支持ピン15Sは、ガラス基板11の成膜対象領域11Tとは反対の裏面を支持する部材である。支持ピン15Sは、+Z方向において外周載置部15Mから突出するよう設けられている。複数の延在凸部15Tは、外周載置部15Mの外縁15Eに設けられており、外周載置部15Mの上面からZ方向に突出する。複数の延在凸部15Tの各々は、X方向及びY方向に延在している。延在凸部15Tは、「凸部」の一例である。X方向及びY方向の各々において、互いに隣り合う2つの延在凸部15Tの間には、切欠部15Cが形成されている。切欠部15Cには、後述する延在アーム82の一部が挿入されている。
【0063】
言い換えると、基板載置部15は、ガラス基板11の外周領域11Eを支持する外周載置部15Mを有する。外周載置部15Mは、ガラス基板11の厚さ方向において外周載置部15Mから突出する延在凸部15Tを有する。さらに、外周載置部15Mは、X方向及びY方向に延びるガラス基板11の辺に平行な方向において延在凸部15Tの隣に設けられた切欠部15Cを有する。切欠部15Cには、延在アーム82の一部が挿入されている。アーム支持部81から基板コンタクト部84に向かう方向においてフランジ83は切欠部15Cを覆う。
【0064】
すなわち、Y側面16Yに設けられているクランプ機構30を構成する延在アーム82の一部は、Y方向に延在する2つの延在凸部15Tの間に形成された切欠部15Cに挿入されている。この場合、X方向に見て、フランジ83は切欠部15Cを覆っている。同様に、X側面16Xに設けられているクランプ機構30を構成する延在アーム82の一部は、X方向に延在する2つの延在凸部15Tの間に形成された切欠部15Cに挿入されている。この場合、Y方向に見て、フランジ83は切欠部15Cを覆っている。
【0065】
基板保持部13のX側面16X及びY側面16Yの各々には、複数のクランプ機構30が設けられている。X側面16X及びY側面16Yに設けられる複数のクランプ機構30のピッチ、すなわち、互いに隣り合う2つのクランプ機構30の間の距離は、例えば、200~300mmである。
【0066】
<回転支持機構>
図2に示すように、プラテンチャンバ4nの内部には、回転支持機構10が配置されている。
回転支持機構10は、基板保持部13を支持しかつ回転させる回転支持軸12を有する。回転支持軸12は、回転支持軸12の回転中心回りに回転可能である。基板保持部13は、回転支持軸12に取り付けられている。
【0067】
回転支持軸12には、回転駆動部12Aが接続されている。回転駆動部12Aは、回転支持軸12を軸線周りに回転可能である。回転支持軸12は、プラテンチャンバ4nを形成する側壁を貫通している。回転駆動部12Aは、プラテンチャンバ4nの外側に配置されている。
【0068】
基板保持部13によってガラス基板11が支持された状態で、回転支持機構10は、基板保持部13を水平位置P1と起立位置P2との間で回転移動させるように構成されている。言い換えると、回転支持機構10は、基板保持部13を水平位置P1に配置させたり、基板保持部13を起立位置P2に配置させたりすることが可能である。
【0069】
回転支持機構10によって基板保持部13が水平位置P1に配置された場合には、基板保持部13は、搬送口4aを介してガラス基板11を移動可能なように、水平方向に向くようにガラス基板11を支持する。これにより、プラテンチャンバ4nにおいては、搬送口4aを通じて搬送室3から成膜室4にガラス基板11を搬送したり、搬送口4aを通じて成膜室4から搬送室3にガラス基板11を搬送したりすることが可能である。水平位置においては、基板保持部13のクランプ機構30によるガラス基板11の支持状態を維持したり、かつ、支持状態を解除したりすることが可能である。
【0070】
回転支持機構10によって基板保持部13が起立位置P2に配置された場合には、基板保持部13がマスク20に近づいて配置される。これにより、起立したマスク20のマスク開口部20cにガラス基板11の成膜対象領域11Tが露出する。ターゲット7と対向するようにガラス基板11が保持(支持)され、マスク開口部20cに露出したガラス基板11の成膜対象領域11Tに成膜処理を行うことが可能である。起立位置P2においては、基板保持部13のクランプ機構30によるガラス基板11の支持状態が維持される。これにより、起立状態にあるガラス基板11が基板保持部13から滑り落ちことがなく、マスク20に対するガラス基板11の位置がずれることもない。
【0071】
<クランプ駆動機構>
図2に示すように、プラテンチャンバ4nには、クランプ駆動機構14が設けられている。クランプ駆動機構14は、後述するロッド14Rと、ロッド14RをZ方向に移動させる移動機構14Mとを備える。ロッド14R及び移動機構14Mは、プラテンチャンバ4nの内部に配置されている。移動機構14Mは、プラテンチャンバ4nの底部に位置しており、例えば、水平位置に配置された基板保持部13に対向している。ロッド14Rは、基板保持部13の基板載置部15とは反対側の面に設けられた開口を通じ、基板保持部13の内部に挿入されている。ロッド14Rは、基板保持部13の内部において、クランプ駆動機構14を構成する後述の可動先端部64を押圧することが可能であり、クランプ駆動機構14を駆動させるように構成されている。
【0072】
<クランプ機構>
図4は、本実施形態に係るクランプ機構30を示す側面図である。
図4においては、クランプ機構30が設置される基板保持部13が点線で示されている。
【0073】
以下の説明においては、図4を参照しつつ、Y側面16Yに設けられたクランプ機構30について説明する。なお、図4において、X方向をY方向と読み替え、かつ、Y方向をX方向と読み替えれば、X側面16Xに設けられたクランプ機構30となる。このため、X側面16Xに設けられたクランプ機構30の説明を省略する。
クランプ機構30は、固定ベース部40と、回転軸50と、可動ベース部60と、可動アーム70と、クランプ部80とを有する。
【0074】
<固定ベース部>
固定ベース部40は、基板保持部13に支持される部位である。固定ベース部40は、L字型の形状を有する。このため、固定ベース部40を屈曲部と称することができる。固定ベース部40は、X方向に延びる水平ベース42と、Z方向に延びる垂直ベース41とを有する。垂直ベース41は、ボルト等の公知の締結部材Bにより基板保持部13の基板保持ベース部17の側面16に固定されている。水平ベース42は、回転軸支持部43を有する。回転軸支持部43は、後述する回転軸50を支持する。
水平ベース42は、基板保持ベース部17に設けられたX方向に延びる穴部17Hに挿入されている。垂直ベース41が基板保持ベース部17の側面16に固定されているため、穴部17Hの内部における水平ベース42の位置は固定されている。
固定ベース部40を構成する材料としては、公知の金属材料が挙げられる。例えば、アルミニウムやSUS304等のステンレス鋼を採用することができる。
【0075】
<回転軸>
回転軸50は、固定ベース部40の水平ベース42によって支持されている。回転軸50は、複数のクランプ機構30が配列する方向に平行な軸中心を有する。図4に示す例では、回転軸50は、Y側面16Yに設置された複数のクランプ機構30が並ぶY方向に延びる軸中心を有する。
回転軸50を構成する部材のうち強度が求められる部位を構成する材料としては、公知の金属材料が挙げられる。例えば、アルミニウムやSUS304等のステンレス鋼を採用することができる。回転軸50は、可動ベース部60の軸支部63や固定ベース部40の回転軸支持部43に対して摺動する摺動部を有する。摺動部を構成する材料としては、樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、アウトガス特性、耐プラズマ性、耐久性等にも優れた材料が選択され、例えば、ベスペル(登録商標)等を採用することができる。
【0076】
<可動ベース部>
可動ベース部60は、第1可動部61と、第2可動部62と、軸支部63とを有する。第1可動部61は、可動アーム70が延在するZ方向において、固定ベース部40の水平ベース42に対して離間可能又は近接可能である。第2可動部62は、軸支部63に対して第1可動部61とは反対側に位置する。第2可動部62は、可動アーム70を支持する。後述するように第2可動部62は締結部材Bにより可動アーム70と接続されている。軸支部63は、第1可動部61と第2可動部62との間に設けられている。軸支部63は、回転軸50に支持されている。これにより、可動ベース部60は、回転軸50の周りに回転可能である。
【0077】
第1可動部61は、可動先端部64を有する。可動先端部64は、クランプ駆動機構14を構成するロッド14Rに接触する部位である。ロッド14Rは、基板保持ベース部17の内部に設けられたZ方向に延びる穴部17Pに配置されている。可動ベース部60においては、ロッド14Rが可動先端部64を+Z方向に押圧した際に、第1可動部61が移動し、回転軸50の周りに可動ベース部60が回転する。
【0078】
可動ベース部60は、水平ベース42と第1可動部61との間に設けられた突出部65を有する。突出部65は、第1可動部61に設けられている。突出部65は、Z方向において第1可動部61から水平ベース42に向けて突出している。突出部65に対向する水平ベース42の位置には、接触部66が設けられている。接触部66は、突出部65に接触する部位である。接触部66を構成する材料としては、樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、アウトガス特性、耐プラズマ性、耐久性等にも優れた材料が選択され、例えば、ベスペル(登録商標)等を採用することができる。
可動ベース部60を構成する材料としては、公知の金属材料が挙げられる。例えば、アルミニウムやSUS304等のステンレス鋼を採用することができる。
【0079】
なお、図4に示す例では、突出部65が第1可動部61に設けられ、かつ、接触部66が水平ベース42に設けられている構成が採用されている。突出部65が水平ベース42に設けられ、かつ、接触部66が第1可動部61に設けられている構成が採用されてもよい。また、水平ベース42及び第1可動部61の各々に突出部65に設けられてもよい。この場合、互いに対向する2つの突出部65のうち一方に接触部66が設けられている。
【0080】
<固定ベース部及び可動ベース部における磁力構造>
固定ベース部40を構成する水平ベース42は、第1固定ベース面44と第2固定ベース面45とを有する。第1固定ベース面44は、第1可動部61に対向する。第2固定ベース面45は、第2可動部62に対向する。
可動ベース部60を構成する第1可動部61は、第1固定ベース面44に対向する第1可動ベース面67を有する。第1可動ベース面67には、第1磁石M1が取り付けられている。第1固定ベース面44には、第1磁石M1に対向する第2磁石M2が取り付けられている。第1磁石M1及び第2磁石M2の各々は、互いに吸引し合う磁性を有する。例えば、第1磁石M1がS極の磁性を有する場合、第2磁石M2はN極の磁性を有する。反対に、第1磁石M1がN極の磁性を有する場合、第2磁石M2はS極の磁性を有する。つまり、第1固定ベース面44と第1可動部61との間には、第1固定ベース面44と第1可動部61とが互いに吸引し合う吸引力が作用する。
【0081】
可動ベース部60を構成する第2可動部62は、第2固定ベース面45に対向する第2可動ベース面68を有する。第2可動ベース面68には、第3磁石M3が取り付けられている。第2固定ベース面45には、第3磁石M3に対向する第4磁石M4が取り付けられている。第3磁石M3及び第4磁石M4の各々は、互いに反発し合う磁性を有する。例えば、第1磁石M1がS極の磁性を有する場合、第2磁石M2はS極の磁性を有する。反対に、第1磁石M1がN極の磁性を有する場合、第2磁石M2はN極の磁性を有する。つまり、第2固定ベース面45と第2可動部62との間には、第2固定ベース面45と第2可動部62とが互いに反発し合う反発力が作用する。
【0082】
図4に示すように、第1可動部61の突出部65が水平ベース42の接触部66に接触している状態においては、第1磁石M1及び第2磁石M2は互いに離間している。言い換えると、突出部65は、吸引力が作用している第1磁石M1及び第2磁石M2を離間させている。特に、第1磁石M1及び第2磁石M2によって生じる吸引力と、第3磁石M3及び第4磁石M4によって生じる反発力との作用により、突出部65が接触部66を押圧する力が発生している。このため、接触部66から突出部65が離間することがない。このような磁力の作用により、突出部65と接触部66とが安定的に静止した状態が維持される。
【0083】
<可動アーム>
可動アーム70は、基板保持部13の側面16から露出している。言い換えると、プラテンチャンバ4nの内部空間において、可動アーム70は、基板保持部13の側面16に面している周囲空間に露出している。具体的に、Y側面16Yに取り付けられたクランプ機構30の可動アーム70は、Y方向においてプラテンチャンバ4nの内部空間を形成する内壁とY側面16Yとの間の空間に露出している。X側面16Xに取り付けられたクランプ機構30の可動アーム70は、X方向において搬送口4aとX側面16Xとの間の空間に露出し、かつ、X方向において成膜口4bとX側面16Xとの間の空間に露出している。
【0084】
可動アーム70は、下接続部71と上接続部72とを有する。可動アーム70は、下接続部71から上接続部72に向けてZ方向に延在している。上接続部72は、可動アーム70の第1接続部と称することができる。下接続部71は、可動アーム70の第2接続部と称することができる。下接続部71は、ボルト等の公知の締結部材Bにより可動ベース部60の第2可動部62に固定されている。すなわち、可動アーム70は、第2可動部62によって支持されている。
【0085】
下接続部71と第2可動部62とが接触する部位には、ガイド溝が設けられてもよい。これより、X方向において、ガイド溝を介して下接続部71と第2可動部62とを相対的に移動させることが可能となる。したがって、可動ベース部60の第2可動部62に対する下接続部71のX方向の位置を自在かつ容易に調整することが可能である。
可動アーム70を構成する材料としては、公知の金属材料が挙げられる。例えば、アルミニウムやSUS304等のステンレス鋼を採用することができる。
【0086】
<クランプ部>
クランプ部80は、基板載置部15に載置されたガラス基板11を支持可能である。
クランプ部80は、アーム支持部81と、延在アーム82と、フランジ83と、基板コンタクト部84とを有する。
【0087】
<アーム支持部>
アーム支持部81は、可動アーム70の上接続部72に支持される部位である。アーム支持部81は、L字型の形状を有する。このため、アーム支持部81を屈曲部と称することができる。アーム支持部81は、X方向に延びる水平部81Hと、Z方向に延びる垂直部81Vとを有する。垂直部81Vは、ボルト等の公知の締結部材Bにより可動アーム70に固定されている。垂直部81Vと可動アーム70とが接触する部位には、ガイド溝が設けられてもよい。これより、Z方向において、ガイド溝を介して垂直部81Vと可動アーム70とを相対的に移動させることが可能となる。したがって、可動アーム70の上接続部72に対するアーム支持部81のZ方向の位置を自在かつ容易に調整することが可能である。水平部81Hは、フランジ83に繋がっている。言い換えると、アーム支持部81にフランジ83が設けられている。
クランプ機構30が基板保持ベース部17に設けられている状態では、アーム支持部81及びフランジ83は、基板保持部13の側面16よりも外側に位置する。言い換えると、アーム支持部81及びフランジ83は、側面16から+X方向に向けて、つまり、基板保持部13の側面16から外側に向けて突出するように配置されている。
【0088】
<延在アーム>
延在アーム82は、アーム支持部81と基板コンタクト部84との間に位置する。延在アーム82は、延在部82Aと、傾斜部82Bと、先端部82Cとを有する。延在部82Aには、アーム支持部81と基板コンタクト部84との間に位置するフランジ83が設けられている。言い換えると、延在部82Aと水平部81Hとの間にフランジ83が設けられている。
【0089】
延在部82Aは、フランジ83から-X方向に延びている。傾斜部82Bは、X方向に対して傾斜する傾斜方向IDに延びている。傾斜部82Bは、延在部82Aに繋がっており、延在部82Aに対してアーム支持部81とは反対側に位置する。
先端部82Cは、傾斜部82Bに繋がっており、傾斜部82Bの端部からX方向に延びている。先端部82Cは、傾斜部82Bに対して延在部82Aとは反対側に位置する。先端部82Cは、後述する基板コンタクト部84を支持する部位である
【0090】
延在アーム82には、凹部82Dが形成されている。X方向において、凹部82Dは、基板コンタクト部84と延在部82Aとの間に位置する。凹部82Dは、基板コンタクト部84と傾斜部82Bとの間に形成されている。凹部82Dは、可動アーム70が延在する方向、すなわち、Z方向に凹むように形成されている。X方向に対する傾斜部82Bの傾斜方向IDの角度は、特に限定されない。凹部82Dの形状に応じて、傾斜方向IDの角度は、適宜設定される。例えば、X方向に対して約30度の傾斜角を有してもよい。
また、凹部82Dの形状は、後述するラビリンス構造の形状に応じて、適宜変更可能である。
【0091】
<フランジ>
図3及び図4に示すように、クランプ機構30が基板保持部13の温度調整部18に設置された際、延在アーム82は、外周載置部15Mの切欠部15Cに配置される。-X方向に見て切欠部15Cに貫通孔が生じないように、フランジ83は切欠部15Cに重なる形状を有する。-X方向に見たフランジ83の面積は、基板保持部13の切欠部15Cの開口面積よりも大きい。X方向に見たフランジ83の形状は、例えば、略矩形形状である。切欠部15Cに重なる形状が得ることができれば、フランジ83の形状は、略矩形形状に限定されない。
【0092】
本実施形態において、延在アーム82の延在部82Aが延在する方向は、可動アーム70が延在する方向とは互いに交差している。延在アーム82が延在する方向と可動アーム70が延在する方向とが交差する角度は、例えば、直角である。延在アーム82及び可動アーム70によって形成されたアームは、L字アームと称することができる。
クランプ機構30が基板保持部13に設けられている状態では、延在アーム82は、基板保持部13の側面16よりも内側に位置する。つまり、延在アーム82は、基板保持部13の側面16から-X方向に向けて突出するように設けられている。言い換えると、延在アーム82は、基板保持部13の側面16から基板載置部15に載置されるガラス基板11に向かう方向において、フランジ83から突出するように設けられている。
アーム支持部81、延在アーム82、及びフランジ83を構成する材料としては、公知の金属材料が挙げられる。例えば、アルミニウムやSUS304等のステンレス鋼を採用することができる。
【0093】
<基板コンタクト部>
基板コンタクト部84は、ボルト等の公知の締結部材Bにより、延在アーム82の先端部82Cに固定されている。基板コンタクト部84は、基板載置部15においてガラス基板11の周縁部11Pに接触可能な部位である。
さらに、基板コンタクト部84は、ガラス基板11の周縁部11Pに接触することで、基板載置部15におけるガラス基板11の位置をアライメントする機能も有する。
基板コンタクト部84は、樹脂材料で形成されている。このため、基板コンタクト部84がガラス基板11に接触した際には、ガラス基板11に対する傷の発生が防止され、ガラス基板11の欠けや破損の発生が防止される。基板コンタクト部84に用いられる樹脂材料としては、アウトガス特性、耐プラズマ性、耐久性等にも優れた材料が選択され、例えば、ベスペル(登録商標)等を採用することができる。
【0094】
<クランプ機構の駆動>
クランプ機構30の状態は、基板クランプ状態又はクランプ解除状態である。
<基板クランプ状態>
基板クランプ状態とは、クランプ部80が基板載置部15に載置されたガラス基板11を支持し、かつ、基板載置部15にガラス基板11を密着させている位置を意味する。図4は、基板クランプ状態におけるクランプ機構30の状態を示している。基板クランプ状態では、クランプ駆動機構14のロッド14Rは、可動ベース部60の可動先端部64を押圧していない。この場合、第1磁石M1と第2磁石M2との間に作用する吸引力と、第3磁石M3と第4磁石M4との間に作用する反発力とにより、第1固定ベース面44と第1可動部61とが近づくような力が働いている。ただし、突出部65が接触部66に接触しつつ、突出部65が接触部66を押圧しているため、第1磁石M1及び第2磁石M2が互いに離間した状態が安定的に維持されている。
【0095】
したがって、可動ベース部60に接続された可動アーム70、アーム支持部81を介して可動アーム70に接続された延在アーム82、及び延在アーム82の先端部82Cに固定された基板コンタクト部84の位置も、安定的に維持されている。このような基板クランプ状態においては、基板コンタクト部84によって支持されたガラス基板11の位置が安定し、基板載置部15にガラス基板11を密着させることができる。
【0096】
<クランプ解除状態>
クランプ解除状態とは、クランプ部80によってガラス基板11が支持された支持状態が解除される位置を意味する。
クランプ機構30の状態をクランプ解除状態にするには、まず、クランプ駆動機構14を構成するロッド14Rが+Z方向において可動先端部64を押圧する。磁力の作用によって突出部65が接触部66を押圧する押圧力よりも、ロッド14Rが可動先端部64を押圧する押圧力が大きくなった場合、可動先端部64は+Z方向に移動する。この場合、可動ベース部60は、回転方向R1に向けて回転する。可動ベース部60の回転に伴って、可動ベース部60に接続された可動アーム70、アーム支持部81を介して可動アーム70に接続された延在アーム82、及び延在アーム82の先端部82Cに固定された基板コンタクト部84も回転方向R1に向けて回転する。
このようなクランプ解除状態においては、基板コンタクト部84は、ガラス基板11から離間し、ガラス基板11を基板載置部15から取り外すことが可能となる。
【0097】
これに対し、可動先端部64に対するロッド14Rの押圧を解除すると、ロッド14Rが可動先端部64を押圧する押圧力よりも、磁力の作用によって突出部65が接触部66を押圧する押圧力が大きくなる。この場合、可動先端部64は-Z方向に移動する。この場合、可動ベース部60は、回転方向R2に向けて回転する。可動ベース部60の回転に伴って、可動ベース部60に接続された可動アーム70、アーム支持部81を介して可動アーム70に接続された延在アーム82、及び延在アーム82の先端部82Cに固定された基板コンタクト部84も回転方向R2に向けて回転する。これにより、図4に示す基板クランプ状態を実現することができる。このような基板クランプ状態においては、基板コンタクト部84によって支持されたガラス基板11の位置が安定し、基板載置部15にガラス基板11を密着させることができる。
【0098】
<成膜室おいて行われる工程>
図5図10を参照し、成膜室4で行われる工程と、ガラス基板11とマスク20との間の隙間を通る材料分子の流動について説明する。
図5図8は、本実施形態に係る成膜室4で行われる工程を示す模式側面図である。
図9は、本実施形態に係る成膜室4で行われる工程を示す模式側面図であって、マスク20、クランプ機構30、及び基板保持部13の要部を示す模式断面図である。
図10は、本実施形態に係る成膜室4で行われる工程を示す模式側面図であって、マスク20及び基板保持部13の要部を示す模式断面図である。
図9は、クランプ機構30の断面を含む断面図である。図10は、クランプ機構30の断面を含まない断面図である。図9及び図10は、ガラス基板11とマスク20との間の隙間を通る材料分子の流動を説明するための図である。
【0099】
図5は、ガラス基板11が成膜室4に搬送される前の状態を示している。
図5に示す状態では、回転駆動部12Aが駆動することにより、基板保持部13が回転し、基板保持部13が水平位置P1に配置される。クランプ機構30は、クランプ解除状態となっている。また、不図示の複数のリフトピンが基板保持部13の表面から突出した準備位置となっている。これにより、成膜室4は、ガラス基板11を受け入れる前のスタンバイ状態となる。
【0100】
搬送室3では搬送装置3aが動作して、搬送装置3aのロボットハンドがロード・アンロード室2に挿入される。ロード・アンロード室2では、位置決め部材に載置されたガラス基板11が、搬送装置3aのロボットハンドで支持される。ガラス基板11は、搬送装置3aによって、ロード・アンロード室2から取り出される。
【0101】
次に、図6に示すように、成膜室4の搬送口4aに設置されている仕切りバルブが開き、搬送口4aが開放される。これにより、搬送室3とプラテンチャンバ4nとが連通した状態となる。その後、搬送装置3aは、符号Aに示す方向において、ガラス基板11を搬送室3から成膜室4へと搬送する。成膜室4へと到達したガラス基板11は、搬送装置3aによって、基板保持部13から突出した複数のリフトピンに渡される。この状態においても、クランプ機構30は、クランプ解除状態となっている。
【0102】
次に、図7に示すように、複数のリフトピンが下がり、ガラス基板11は、基板載置部15に置かれる。その後、ロッド14Rによって可動先端部64が押圧された状態が解除され、上述した磁力の作用により、クランプ機構30は、基板クランプ状態となる。基板コンタクト部84は、ガラス基板11の周縁部11Pに接触し、ガラス基板11の位置をアライメントし、ガラス基板11を保持する。
【0103】
次に、図8に示すように、回転駆動部12Aが駆動することにより、基板保持部13が符号Cで示す方向に回転し、基板保持部13が起立位置P2に配置される。この状態においては、クランプ機構30は、基板クランプ状態となっている。これにより、ガラス基板11と基板保持部13とによって成膜口4bがほぼ閉塞された状態となる。同時に、ガラス基板11がマスク20に近接する。
【0104】
この状態で、図示しないマスクアライメント部によってマスク20が、マスク20の面内における位置のアライメントが行われる。具体的には、図示しない撮像装置によって、マスク20とガラス基板11との面内における位置を検出する。この検出結果に基づいて、マスクアライメント部によってマスク20を駆動して、マスク20とガラス基板11との輪郭の位置合わせを行う。
【0105】
次に、マスク20の面内における位置のアライメントが終了した後、マスクアライメント部は、マスク20を、マスク20の面に対して鉛直な方向に移動させ、マスク20をガラス基板11に近づける。マスク20の移動により、マスク20に接触している基板コンタクト部84がマスク20によって押圧される。これにより、図9に示すように、ガラス基板11は、支持ピン15Sと基板コンタクト部84によって支持された状態となる。
【0106】
図9に示すように、回転支持機構10によって基板保持部13が起立位置P2に移動した際、第1マスク突起部20Fは、間隔をあけて、延在アーム82の凹部82Dの内部に挿入される。凹部82Dと第1マスク突起部20Fとの間には空間91が形成されている。この空間91は、ガラス基板11に平行な方向に対して屈曲する第1屈曲空間91である。
さらに、図10に示すように、延在凸部15Tは、間隔をあけてフレーム裏面20Rに対向している。第2マスク突起部20Sは、間隔をあけて外周載置部15Mに対向している。第2マスク突起部20Sは、ガラス基板11に平行な方向において、間隔をあけて延在凸部15Tの隣に位置している。延在凸部15Tと第2マスク突起部20Sとの間には空間92が形成されている。この空間92は、ガラス基板11に平行な方向に対して屈曲する第2屈曲空間92である。
言い換えると、図9及び図10に示す構造では、第1屈曲空間91及び第2屈曲空間92の各々は、ラビリンス構造を形成している。
【0107】
上述した工程を経て、ガラス基板11の成膜対象領域11Tは、マスク開口部20cを通じて、プラズマチャンバ4mに露出する。この状態で、プラズマチャンバ4mにおいて、成膜工程が行われる。
成膜工程においては、ガス雰囲気設定機構4gのガス導入部からプラズマチャンバ4mにスパッタガスと反応ガスとが供給される。成膜工程においては、外部の電源4pからバッキングプレート6にスパッタ電圧を印加する。また、成膜工程においては、マグネトロン磁気回路によりターゲット7上に所定の磁場を形成する。同時に、必要な揺動動作あるいは回転動作を、バッキングプレート6またはマグネトロン磁気回路において行う。
【0108】
これにより、プラズマチャンバ4m内で発生するプラズマによりスパッタガスのイオンが励起される。スパッタガスのイオンは、バッキングプレート6のターゲット7に衝突して、成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、ターゲット7から飛び出した成膜材料の材料分子と反応ガスとが結合した後、結合した材料分子と反応ガスとが、ガラス基板11に付着する。これにより、ガラス基板11の表面、つまり、ガラス基板11の成膜対象領域11Tに所定の膜が形成される。
【0109】
一般的に、ターゲットから飛び出した材料分子は、四方八方に飛散する特性を有する。また、材料分子は、材料分子が持つエネルギーの量に応じて材料分子が最初に衝突した面に直接的に付着したり、衝突した面に反射されて、別の面に付着したりする特性を有する。反射の回数は、限定されないが、反射の回数が増加するにしたがって、材料分子が持つエネルギーが徐々に小さくなり、最終的に衝突した面に付着する。
【0110】
ここで、図9及び図10を参照して材料分子の挙動について説明する。
図9に示すように、ガラス基板11とマスク20との間の隙間を通じた材料分子95は、第1屈曲空間91に入る。材料分子95は、第1屈曲空間91を通る。このとき、延在アーム82、凹部82D、フレーム裏面20R、及び第1マスク突起部20Fに対する材料分子95の衝突、反射、及び付着が生じる。
【0111】
図10に示すように、ガラス基板11とマスク20との間の隙間を通じた材料分子95は、第2屈曲空間92に入る。材料分子95は、第2屈曲空間92を通る。このとき、外周載置部15M、延在凸部15T、フレーム裏面20R、及び第2マスク突起部20Sに対する材料分子95の衝突、反射、及び付着が生じる。
【0112】
したがって、飛翔した材料分子95がプラズマチャンバ4mからプラテンチャンバ4nに向けて流れる際に、ラビリンス構造を有する第1屈曲空間91及び第2屈曲空間92に材料分子95を付着させることができ、プラテンチャンバ4nへの材料分子95の侵入を抑制することができる。すなわち、第1屈曲空間91及び第2屈曲空間92によって、材料分子95をトラップするトラップ効果を得ることが可能である。
【0113】
<効果>
本実施形態に係る基板処理装置1によれば、可動アーム70を基板保持部13の内部に設ける必要がなくなる。つまり、従来のような、可動アーム70を収容するための開口部を基板保持部13に設ける必要がない。したがって、基板処理装置1において飛翔する材料分子95は、マスク20とガラス基板11との間の隙間を通るように飛翔するが、材料分子95が基板保持部13の内部に侵入することが抑制される。このため、基板保持部13を構成する複数の構成部品の間の空間への材料分子95の侵入を抑制することができる。具体的に、材料分子95が構成部品の表面に対する直接的な付着を抑制することができる。また、材料分子95が構成部品の表面での反射の後に材料分子95が構成部品の表面に付着することを抑制することができる。これにより、構成部品の表面に対する材料分子95の堆積を抑制することができる。したがって、構成部品の表面における材料分子95の堆積物に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。
【0114】
また、基板保持部13を構成する構成部品の表面に対する材料分子95の堆積を抑制することができるので、パーティクルの発生が抑制された状態を維持しながら、長期間にわたって基板保持部13を構成する構成部品を使用することができる。したがって、使用済みの構成部品と使用前の構成部品とを交換するといったメンテナンスの頻度を低減することができる。このため、メンテナンスに要する時間及び工数が低減することができ、成膜装置をより長く連続的に使用することができ、基板処理装置1の生産性を向上させることができる。
【0115】
また、基板保持ベース部17の側面から可動アーム70を露出させた状態で、回転軸50の周りに可動アーム70を回転させることができる。可動アーム70の回転に伴って、基板コンタクト部84は、ガラス基板11を支持することができ、または、ガラス基板11の支持状態を解除することができる。
【0116】
この構成によれば、互いに吸引し合う磁石M1、M2の吸引力と、互いに反発し合う磁石M3、M4の反発力とを利用して、基板クランプ状態又はクランプ解除状態となるクランプ機構30の状態を安定させることができる。さらに、突出部65によって、吸引力が作用する第1磁石M1と第2磁石M2との非接触状態が維持されるので、第1磁石M1と第2磁石M2とを容易に離間させることができる。突出部65によって、吸引力が働く2つの磁石M1、M2の間の接触を防止することができ、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0117】
この構成によれば、クランプ部80によってガラス基板11が支持された支持状態では、基板保持部13の切欠部15Cは、フランジ83によって覆われる。したがって、基板処理装置において飛翔する材料分子95が基板保持部13の切欠部15Cを通過することが抑制される。フランジ83によって、切欠部15Cを通った材料分子95の飛散を抑制することができる。このため、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0118】
また、第1屈曲空間91及び第2屈曲空間92によって、材料分子95をトラップするトラップ効果を得られているので、プラテンチャンバ4nに配置されている基板保持部13や回転支持機構10を構成する構成部品に対する材料分子95の付着を抑制することができる。
したがって、処理室のメンテナンスを行う際には、材料分子95をトラップした部品のみを交換することができる。具体的に、材料分子95が付着した部品、例えば、マスク20、クランプ部80、外周載置部15Mを構成する部品のみを交換するだけで、メンテナンスを完了することができる。
また、上述したトラップ効果により、プラテンチャンバ4nを構成する構成部材のうち交換が難しい部品への材料分子95の付着を抑制することができる。このため、メンテナンス作業においては、交換が難しい部品を除いて、材料分子95が付着した部品のみを交換するだけでよいため、メンテナンス性が向上する。
【0119】
<変形例1>
上述した実施形態に係る基板処理装置1において行われる表面処理は、スパッタ処理であったが、表面処理は、スパッタ処理に限定されない。スパッタ処理に代えて蒸着処理が行われてもよい。この場合、第1室は、蒸着源を有し、第1室において蒸着処理が行われる。
【0120】
<変形例2>
次に、図11A図12Cを参照し、マスク、クランプ部、及び基板保持部によって形成されるラビリンス構造について説明する。
図11A図12Cにおいて、上述した実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0121】
図11Aは、ラビリンス構造が形成されていない構造を示している。図11Aに示す構造においては、部材100に直線的に延在する直線空間101のみが形成されている。この構造においては、材料分子95は、直線空間101内で反射することがない。言い換えると、直線空間101内における材料分子95の反射回数は0回である。図11Aに示す構造がマスク、クランプ部、及び基板保持部に適用された場合、材料分子のトラップ効果を得ることができず、基板保持部の内部やプラテンチャンバの内部に対する材料分子95の飛散や付着を抑制することができない。
【0122】
図11B図12Cは、第1屈曲空間91及び第2屈曲空間92の各々の変形例を示している。以下の説明では、第1屈曲空間91及び第2屈曲空間92を単に屈曲空間93と称する。図11B図12Cにおいて、符号200で示す部材は、マスク20、クランプ機構30、及び基板保持部13に相当する。
【0123】
図11Bに示す例では、屈曲空間93は、2つの直線部96と、1つの屈曲部97とを有する。1つの屈曲部97を介して、2つの直線部96が繋がっている。屈曲空間93と通る材料分子95は、2つの直線部96を通る際に1つの屈曲部97に衝突する。または、材料分子95は、1つの屈曲部97において反射する。屈曲空間93において、1つの屈曲部97が設けられているので、屈曲空間93における材料分子95の反射回数は1回である。
【0124】
図11Cに示す例では、屈曲空間93は、3つの直線部96と、2つの屈曲部97とを有する。2つの屈曲部97を介して、3つの直線部96が繋がっている。屈曲空間93と通る材料分子95は、3つの直線部96を通る際に2つの屈曲部97に衝突する。または、材料分子95は、2つの屈曲部97において反射する。屈曲空間93において、2つの屈曲部97が設けられているので、屈曲空間93における材料分子95の反射回数は2回である。
【0125】
図11Dに示す例では、屈曲空間93は、4つの直線部96と、3つの屈曲部97とを有する。3つの屈曲部97を介して、4つの直線部96が繋がっている。屈曲空間93と通る材料分子95は、4つの直線部96を通る際に3つの屈曲部97に衝突する。または、材料分子95は、3つの屈曲部97において反射する。屈曲空間93において、3つの屈曲部97が設けられているので、屈曲空間93における材料分子95の反射回数は3回である。
【0126】
図11Eに示す例では、屈曲空間93は、5つの直線部96と、4つの屈曲部97とを有する。4つの屈曲部97を介して、5つの直線部96が繋がっている。屈曲空間93と通る材料分子95は、5つの直線部96を通る際に4つの屈曲部97に衝突する。または、材料分子95は、4つの屈曲部97において反射する。屈曲空間93において、4つの屈曲部97が設けられているので、屈曲空間93における材料分子95の反射回数は4回である。
【0127】
図11B図11Eに示す構造においては、ラビリンス構造が得られている。屈曲空間によって材料分子95をトラップする効果を得ることができる。特に、図11Eに示す構造では、より優れた材料分子95のトラップ効果を得ることができる。
【0128】
上述した図11B図11Eにおいては、屈曲部97の形状は、直角形状であり、屈曲部97に接続される2つの直線部96が延在する方向が直角であった。屈曲部97の形状は、直角形状に限定されない。
図12Aは、屈曲部97に接続される2つの直線部96がなす角度が鈍角である場合を示している。図12Aは、屈曲部97に接続される2つの直線部96がなす角度が鋭角である場合を示している。図12Cは、屈曲部97が曲面を有する場合を示している。
図12A図12Cに示す屈曲部97の形状は、図11B図11Eに示す構造に適用することが可能である。図12A図12Cに示す屈曲部97を用いる場合であっても、材料分子95のトラップ効果を得ることができる。
【0129】
本発明の好ましい実施形態及び変形例を説明し、上記で説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0130】
1…基板処理装置、2、2A…ロード・アンロード室、3…搬送室、3a…搬送装置、4、4A…成膜室、4a…搬送口、4b…成膜口、4c…境界部、4g…ガス雰囲気設定機構、4m…プラズマチャンバ、4n…プラテンチャンバ、4p…電源、5…カソードユニット、6…バッキングプレート、7…ターゲット、10…回転支持機構、11…基板、11…ガラス基板、11E…外周領域、11P…周縁部、11T…成膜対象領域、12…回転支持軸、12A…回転駆動部、13…基板保持部、14…クランプ駆動機構、14M…移動機構、14R…ロッド、15…基板載置部、15C…切欠部、15E…外縁、15M…外周載置部、15P…外周部、15S…支持ピン、15T…延在凸部、16…側面、16X…側面、16Y…側面、17…基板保持ベース部、17H…穴部、17P…穴部、18…温度調整部、19…外周プレート、19C…プレート切欠部、19X…Xプレート、19Y…Yプレート、20…マスク、20a…マスクフレーム、20b…リブ、20c…マスク開口部、20c…マスク開口部、20F…第1マスク突起部、20R…フレーム裏面、20S…第2マスク突起部、20T…フレーム表面、30…クランプ機構、40…固定ベース部、41…垂直ベース、42…水平ベース、43…回転軸支持部、44…第1固定ベース面、45…第2固定ベース面、50…回転軸、60…可動ベース部、61…第1可動部、62…第2可動部、63…軸支部、64…可動先端部、65…突出部、66…接触部、67…第1可動ベース面、68…第2可動ベース面、70…可動アーム、71…下接続部、72…上接続部、80…クランプ部、81…アーム支持部、81H…水平部、81V…垂直部、82…延在アーム、82A…延在部、82B…傾斜部、82C…先端部、82D…凹部、83…フランジ、84…基板コンタクト部、91…第1屈曲空間、91…空間、92…第2屈曲空間、92…空間、93…屈曲空間、95…材料分子、96…直線部、97…屈曲部、100…部材、101…直線空間、M1…第1磁石(磁石)、M2…第2磁石(磁石)、M3…第3磁石(磁石)、M4…第4磁石(磁石)、P1…水平位置、P2…起立位置、R1…回転方向、R2…回転方向
図1
図2
図3
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図6
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図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C