(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】NKp46およびCD123に結合する多機能性ナチュラルキラー(NK)細胞エンゲージャ
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20250121BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250121BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250121BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20250121BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250121BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20250121BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
A61K39/395 N
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12P21/08
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2023539973
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(86)【国際出願番号】 IB2021062494
(87)【国際公開番号】W WO2022144836
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2024-10-29
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(73)【特許権者】
【識別番号】505473891
【氏名又は名称】イネイト・ファルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ゴーチエ
(72)【発明者】
【氏名】アリアーヌ・シーレン
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ・アマラ
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ・ニコラッツィ
(72)【発明者】
【氏名】マリエル・シロン
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ドゥフィユー
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・ヴィロン-オッドス
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・ベニンガ
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-503713(JP,A)
【文献】特表2019-531701(JP,A)
【文献】特表2018-524326(JP,A)
【文献】特表2017-521400(JP,A)
【文献】特表2018-513831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2抗原結合ドメイン(ABD)を形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、(III)を含む結合タンパク質であって、
ポリペプチド(I)は、配列番号64のアミノ酸配列からなり、
ポリペプチド(II)は、配列番号65のアミノ酸配列からなり、
ポリペプチド(III)は、配列番号66のアミノ酸配列からなる、
結合タンパ
ク質。
【請求項2】
請求項
1に記載の結合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項3】
第1および第2抗原結合ドメイン(ABD)を形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III):
配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド(I);
配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド(II);および
配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド(III)
を含む結合タンパク質。
【請求項4】
請求項
3に記載の結合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む多機能性結合タンパク質に関し、第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する。
【0002】
また、本開示は、前記結合タンパク質、その組成物の製造方法、ならびにそれらの、急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)が挙げられる増殖性障害の処置または予防が挙げられる使用に関する。
【背景技術】
【0003】
急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)は、異種クローン腫瘍性疾患である。これは、白血病幹細胞の亜集団から生じると考えられており、従来の化学療法に対する耐性傾向があり、そしてさらに、疾患再発の原因となり得る。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、非従来的な免疫に関与するリンパ球の亜集団である。NK細胞は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞等の不所望の細胞を除外することができる有効な免疫監視機構を提供する。NK細胞の特徴および生物学的特性として、CD16、CD56、および/またはCD57が挙げられる表面抗原の発現、細胞表面上でのα/βまたはγ/δTCR複合体の不在、MHC拘束性なしに、細胞、特に特定の細胞溶解性酵素の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現しない細胞に結合してこれを殺滅する能力、NK活性化受容体用のリガンドを発現する腫瘍細胞または他の疾患の細胞を殺滅する能力、ならびに免疫応答を刺激するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力が挙げられる。
【0005】
また、関心は、その潜在的な抗腫瘍特性に起因して、ナチュラルキラー(NK)細胞に集中してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
依然として、急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)等の増殖性障害を処置または予防する活性剤の必要が切迫している。
【0007】
また、治療効果がある新規のNKエンゲージャが必要とされている。
【0008】
また、副作用なしに、または副作用を低下させて、製造および/または投与するのがより容易な新規の化合物が必要とされている。特に、患者におけるサイトカイン放出症候群のリスクがないか、または低下した(例えば、IL-6関連サイトカイン放出がないか、または低下した)新規の化合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み;
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する。
【0010】
特定の実施形態において、結合タンパク質は、以下で定められる2つのABDを形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を含み:
V1A-C1A-ヒンジ1-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-ヒンジ2-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-ヒンジ3 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
ヒンジ1、ヒンジ2、およびヒンジ3は、同一であるか、または異なり、免疫グロブリンヒンジ領域の全てまたは一部に相当し;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1は、アミノ酸リンカーである。
【0011】
特定の実施形態において、C1Bは、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)であり;C2Aは、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)であり;CLは、免疫グロブリンカッパ軽鎖定常ドメイン(Cκ)に相当し;(CH2-CH3)Aは、配列番号69のアミノ酸配列に相当し;(CH2-CH3)Bは、配列番号70のアミノ酸配列に相当し;ヒンジ1は、配列番号74のアミノ酸配列に相当し;ヒンジ2は、配列番号75のアミノ酸配列に相当し;ヒンジ3は、配列番号77のアミノ酸配列に相当し;L1は、配列番号76のアミノ酸配列に相当する。
【0012】
特定の実施形態において、EUナンバリングに従うFc領域またはそのバリアントの残基N297は、N結合グリコシル化を含む。
【0013】
特定の実施形態において、Fc領域またはそのバリアントの全てまたは一部は、ヒトCD16A(FcγRIII)ポリペプチドに結合する。
【0014】
特定の実施形態において、結合タンパク質は、少なくとも1つのジスルフィド架橋によって連結された少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む。
【0015】
特定の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)および(II)は、C1Aとヒンジ2との間の少なくとも1つのジスルフィド架橋によって連結されており、かつ/またはポリペプチド鎖(II)および(III)は、ヒンジ3とC2Bとの間の少なくとも1つのジスルフィド架橋によって連結されている。
【0016】
特定の実施形態において、V1AはVL1であり、V1BはVH1である。特定の実施形態において、V2AはVH2であり、V2BはVL2である。
【0017】
特定の実施形態において、(a)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(b)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(c)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(d)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(e)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(f)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(g)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(h)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;(i)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;または
(j)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0018】
特定の実施形態において、(a)VH1およびVL1は、配列番号41および43のアミノ酸配列にそれぞれ相当するか、もしくは配列番号42および44のアミノ酸配列にそれぞれ相当し;かつ/または
(b)VH2およびVL2は、配列番号45および53のアミノ酸配列にそれぞれ;配列番号46および54のアミノ酸配列にそれぞれ;配列番号47および55のアミノ酸配列にそれぞれ;配列番号48および56のアミノ酸配列にそれぞれ;配列番号49および57のアミノ酸配列にそれぞれ;配列番号50および58のアミノ酸配列にそれぞれ;配列番号51および59のアミノ酸配列にそれぞれ;もしくは配列番号52および60のアミノ酸配列にそれぞれ相当する。
【0019】
特定の実施形態において:
(a)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号45のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号53のアミノ酸配列を含み;
(b)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み;
(c)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(d)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号48のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号56のアミノ酸配列を含み;
(e)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号49のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号57のアミノ酸配列を含み;
(f)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号50のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号58のアミノ酸配列を含み;
(g)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号51のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号59のアミノ酸配列を含み;
(h)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号52のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号60のアミノ酸配列を含み;
(i)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号45のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号53のアミノ酸配列を含み;
(j)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み;
(k)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(l)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号48のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号56のアミノ酸配列を含み;
(m)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号49のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号57のアミノ酸配列を含み;
(n)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号50のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号58のアミノ酸配列を含む。
(o)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号51のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号59のアミノ酸配列を含み;
(p)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号52のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号60のアミノ酸配列を含む。
【0020】
特定の実施形態において、ポリペプチド(I)は、配列番号64のアミノ酸配列を含み;ポリペプチド(II)は、配列番号65のアミノ酸配列を含み;ポリペプチド(III)は、配列番号66のアミノ酸配列を含む。
【0021】
特定の実施形態において、ポリペプチド(I)は、配列番号64のアミノ酸配列からなり;ポリペプチド(II)は、配列番号65のアミノ酸配列からなり;ポリペプチド(III)は、配列番号66のアミノ酸配列からなる。
【0022】
一実施形態において、本開示は、先で定められる結合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0023】
一実施形態において、本開示は、先で定められる結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に関する。
【0024】
一実施形態において、本開示は、先で定められる核酸分子を含む発現ベクターに関する。
【0025】
一実施形態において、本開示は、先で定められる核酸分子を含む単離細胞に関する。
【0026】
一実施形態において、本開示は、先で定められる発現ベクターを含む単離細胞に関する。特定の実施形態において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。
【0027】
一実施形態において、本開示は、先で定められる結合タンパク質を製造する方法であって:(a)先で定められる発現ベクターを宿主細胞中に導入するステップと;(b)宿主細胞を、結合タンパク質を発現するのに適した条件の下で培養するステップと;(c)場合により、発現された結合タンパク質を回収するステップとを含む方法に関する。
【0028】
一実施形態において、本開示は、先で定められる結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含むことを特徴とする単離核酸分子に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み:
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み;
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
配列番号27~配列番号29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~配列番号32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~配列番号35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~配列番号38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、配列番号31、および配列番号40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み:
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する。
【0029】
一実施形態において、本開示は、先で定められる結合タンパク質の1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む発現ベクターに関する。
【0030】
一実施形態において、本開示は、先で定められる核酸分子を含む単離細胞に関する。
【0031】
一実施形態において、本開示は、先で定められる発現ベクターを含む単離細胞に関する。
【0032】
一実施形態において、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む複数の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0033】
一実施形態において、本開示は、血液癌を処置または予防する方法であって、前記処置または予防が必要な対象に、先で定められる医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0034】
一実施形態において、本開示は、骨髄異形成症候群(MDS)またはリンパ増殖性障害を処置または予防する方法であって、前記処置または予防が必要な対象に、先で定められる医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0035】
一実施形態において、本開示は、急性骨髄性白血病(AML)を処置または予防する方法であって、前記処置または予防が必要な対象に、先で定められる医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0036】
一実施形態において、本開示は、CD64ポジティブおよびCD64ネガティブ急性骨髄性白血病(AML)を処置または予防する方法であって、前記処置または予防が必要な対象に、先で定められる医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0037】
一実施形態において、本開示は、CD64ポジティブ急性骨髄性白血病(AML)を処置または予防する方法であって、前記処置または予防が必要な対象に、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を投与することを含み、第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する、方法に関する。
【0038】
そうでないと指定されていないならば、本開示の結合タンパク質は、標準的な使用および慣例に従って、左側にアミノ末端方向(「N末端(N-terminal end)」または「N末端(N-term)」)、そして右側にカルボキシル末端方向(「C末端(C-terminal end)」または「C末端(C-term)」)の向きになっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】1つのヒトNKp46結合部位および1つのヒトCD123結合部位を含む二重特異性F5フォーマットのバリアントであるF25フォーマットの三次元概略図。
図1において、ポリペプチドのC末端は左側にあり、N末端は右側にある。
【
図2A】
図2A~
図2Dは、ポリペプチド鎖毎に関連ドメインをそれぞれ含むF25、F5、F26、およびF6フォーマットの二次元概略図を示す。
図2A~2Dにおいて、ポリペプチドのC末端は左側にあり、N末端は右側にある。ヒトNKp46結合ドメインは、左側のVH/VL対によって形成される。ヒトCD123結合ドメインは、右側のVH/VL対によって形成される。
図2Aは、F25フォーマットの二次元概略図を示す。この図は、特許請求される「NKp46-CD123_F25」結合タンパク質を表す。
【
図2B】
図2A~
図2Dは、ポリペプチド鎖毎に関連ドメインをそれぞれ含むF25、F5、F26、およびF6フォーマットの二次元概略図を示す。
図2A~2Dにおいて、ポリペプチドのC末端は左側にあり、N末端は右側にある。ヒトNKp46結合ドメインは、左側のVH/VL対によって形成される。ヒトCD123結合ドメインは、右側のVH/VL対によって形成される。
図2Bは、F5フォーマットの二次元概略図を示す。F25と比較した場合に、NKp46結合ドメインのC
LおよびC
H対が、C
H1ドメインおよびV
Lドメインを含む第3のポリペプチド鎖と交換されているという点で、F5は異なる。
【
図2C】
図2A~
図2Dは、ポリペプチド鎖毎に関連ドメインをそれぞれ含むF25、F5、F26、およびF6フォーマットの二次元概略図を示す。
図2A~2Dにおいて、ポリペプチドのC末端は左側にあり、N末端は右側にある。ヒトNKp46結合ドメインは、左側のVH/VL対によって形成される。ヒトCD123結合ドメインは、右側のVH/VL対によって形成される。
図2Cは、F26フォーマットの二次元概略図を示す。このF26は、各C
H2ドメイン上にFcサイレントN297S変異を含むという点で、
図2AのF25と異なる。
【
図2D】
図2A~
図2Dは、ポリペプチド鎖毎に関連ドメインをそれぞれ含むF25、F5、F26、およびF6フォーマットの二次元概略図を示す。
図2A~2Dにおいて、ポリペプチドのC末端は左側にあり、N末端は右側にある。ヒトNKp46結合ドメインは、左側のVH/VL対によって形成される。ヒトCD123結合ドメインは、右側のVH/VL対によって形成される。
図2Dは、F6フォーマットの二次元概略図を示す。このF6は、各C
H2ドメイン上にFcサイレントN297S変異を含むという点で、
図2BのF5と異なる。
【
図2E】F25フォーマットのバリアントの詳細な二次元図を示す。このF25フォーマット図は、
図2Aのものに対応する。
【
図3】
図3は、CD123を発現する腫瘍細胞(すなわちAML細胞株;すなわちMOLM-13)ならびにNKp46およびFcγ受容体(CD16a)を発現するNK細胞のジョイント結合後に殺滅するためのNK細胞エンゲージャ(NKCE)の候補作用機序を示す。Gauthier、L.ら(「Multifunctional natural killer cell engagers targeting NKp46 trigger protective tumor immunity」Cell 177巻、1701~1713頁(2019年))から再現して応用した。
【
図4A】
図4A~
図4Bは、AML細胞株(MOLM-13)または原発性AMLブラスト細胞に対する本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質のインビトロ細胞傷害性をそれぞれ報告する。
図4Aは、AML細胞株(MOLM-13)に対する、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、およびNKp46にのみ結合するフォーマットF25のネガティブアイソタイプ対照バリアント(NKp46-IC_F25)のインビトロ細胞傷害性を示す。
図4Bは、エクスビボ患者サンプルによる同じ実験を再現しており、NKp46-CD123_F25、NKp46-IC_F25、NKp46に対する特異性のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、およびADCC活性が増大しており、かつNKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC-hIgG1-ADCC-enh)の細胞傷害性が、原発性AMLブラスト細胞に対して評価される。
【
図4B】
図4A~
図4Bは、AML細胞株(MOLM-13)または原発性AMLブラスト細胞に対する本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質のインビトロ細胞傷害性をそれぞれ報告する。
図4Aは、AML細胞株(MOLM-13)に対する、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、およびNKp46にのみ結合するフォーマットF25のネガティブアイソタイプ対照バリアント(NKp46-IC_F25)のインビトロ細胞傷害性を示す。
図4Bは、エクスビボ患者サンプルによる同じ実験を再現しており、NKp46-CD123_F25、NKp46-IC_F25、NKp46に対する特異性のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、およびADCC活性が増大しており、かつNKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC-hIgG1-ADCC-enh)の細胞傷害性が、原発性AMLブラスト細胞に対して評価される。
【
図5】NKp46およびCD16a双方にエンゲージすることによってヒトNK細胞を活性化して、そのFcコンピテントフォーマット(F25)によりADCC活性を誘導することができる本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、ならびにCD16aにではなくNKp46にのみエンゲージすることによってヒトNK細胞を活性化して、そのFcサイレントフォーマット(F6)により引き下げられたADCC活性を誘導するNKp46-CD123_F6結合タンパク質のMOLM-13 AML細胞株に対するフレッシュな健康ドナーNK細胞を用いるインビトロ細胞傷害性データ(EC
50データ)を提供する。
【
図6A】
図6A~
図6B上部パネルは、様々なAML細胞株に対する、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、NKp46について結合のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、およびADCC活性が増大しており、NKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC_hIgG1-ADCC-enh)のインビトロ細胞傷害性を報告する。試験したAML細胞株は:CD64(+)およびCD32(+)を発現する細胞株、THP-1(
図6A);CD64(-)を発現しないが、CD32(+)を発現する細胞株、MOLM-13(
図6A)、CD64(-)についてノックアウトされ、CD32(+)を発現する細胞株、THP-1 CD64KO(
図6B);ならびにCD64(+)を発現し、CD32(-)についてノックアウトされた細胞株、THP-1 CD32KO(
図6B)である。
図6Aおよび6B下部パネルは、悪性AML細胞株およびサブクローンの表現型、ならびにフローサイトメトリ分析によるCD123、CD64、CD32a/bの発現を報告する。また、マウス-IgG2a(IC_mouse IgG2a)およびマウス-IgG1(IC_mouse IgG1)アイソタイプ対照によるAML細胞のバックグラウンド染色が示される。
【
図6B】
図6A~
図6B上部パネルは、様々なAML細胞株に対する、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、NKp46について結合のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、およびADCC活性が増大しており、NKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC_hIgG1-ADCC-enh)のインビトロ細胞傷害性を報告する。試験したAML細胞株は:CD64(+)およびCD32(+)を発現する細胞株、THP-1(
図6A);CD64(-)を発現しないが、CD32(+)を発現する細胞株、MOLM-13(
図6A)、CD64(-)についてノックアウトされ、CD32(+)を発現する細胞株、THP-1 CD64KO(
図6B);ならびにCD64(+)を発現し、CD32(-)についてノックアウトされた細胞株、THP-1 CD32KO(
図6B)である。
図6Aおよび6B下部パネルは、悪性AML細胞株およびサブクローンの表現型、ならびにフローサイトメトリ分析によるCD123、CD64、CD32a/bの発現を報告する。また、マウス-IgG2a(IC_mouse IgG2a)およびマウス-IgG1(IC_mouse IgG1)アイソタイプ対照によるAML細胞のバックグラウンド染色が示される。
【
図7A】
図7A~
図7Bは、2つの異なるドナー由来の原発性AMLブラストに対するCD107aポジティブNK細胞のパーセンテージにより測定したNK脱顆粒のエクスビボ誘導を報告する。ドナー#1由来の原発性AMLブラストはCD64(+)であり(
図7A)、ドナー#2由来の原発性AMLブラストはCD64(-)である(
図7B)。試験した結合タンパク質は、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、NKp46に対する特異性のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、CD123に結合しないが、NKp46およびCD16aに結合するフォーマットF25のネガティブアイソタイプ対照バリアント(NKp46-IC_F25)、ならびにADCC活性が増大しており、NKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC_hIgG1-ADCC-enh)である。
【
図7B】
図7A~
図7Bは、2つの異なるドナー由来の原発性AMLブラストに対するCD107aポジティブNK細胞のパーセンテージにより測定したNK脱顆粒のエクスビボ誘導を報告する。ドナー#1由来の原発性AMLブラストはCD64(+)であり(
図7A)、ドナー#2由来の原発性AMLブラストはCD64(-)である(
図7B)。試験した結合タンパク質は、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質、NKp46に対する特異性のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、CD123に結合しないが、NKp46およびCD16aに結合するフォーマットF25のネガティブアイソタイプ対照バリアント(NKp46-IC_F25)、ならびにADCC活性が増大しており、NKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC_hIgG1-ADCC-enh)である。
【
図8】重症複合免疫不全(SCID)マウスモデルにおける、MOLM-13ヒト細胞に対するmuNKp46-huCD123_F25結合タンパク質(抗マウスNKp46および抗ヒトCD123結合ドメインを有し、moNKp46-huCD123としても知られている)による用量依存性抗腫瘍活性を報告する。
【
図9】
図9A~
図9Cは、3000μg/kgまたは3mg/kgでの(
図9A)、3μg/kgでの(
図9B)、そして0.5μg/kg(
図9C)での、非ヒト霊長類(M1、M2、M3、M4、およびM6)における本開示の投与NKp46-CD123_F25結合タンパク質後の最長28日間のCD123ポジティブ好塩基球枯渇を報告する。
【
図10】
図10A~
図10Bは、NK細胞健康ドナーサンプル(D648)の存在下での、2つのAML細胞株、MOLM-13(
図10A)およびTHP-1(
図10B)に対する、2つのNKp46-CD123 NKCE Fcコンピテント結合タンパク質(本開示のNKp46-CD123_F25、およびNKp46-CD123_F5)、ならびにCD123およびCD16aに結合するがNKp46に結合しないフォーマットF5の対照バリアント(CD123-IC_F5)のインビトロ細胞傷害性を報告する。
【
図11】左側パネルは、NKp46-CD123_F25(CD123-NKCE;用量範囲0.001~10μg/mL)、NKCEアイソタイプ対照NKp46-IC_F25(IC-NKCE;CD123に結合しないがNKp46およびCD16aに結合)(用量範囲0.001~10μg/mL)、またはCD3-CD123二重特異性T細胞エンゲージャ(CD123-TCEツール;0.001~0.1μg/mL)による処理によってインビトロ誘導された健康なドナーPBMC(N=10)におけるCD123ポジティブ好塩基球枯渇を報告する。中央パネルは、試験した最も高い用量(10μg/mL、68nM)でのNKp46-CD123_F25最大枯渇活性を報告する。右側パネルは、6つの健康ドナーのPBMCについてのNKp46-CD123_F25用量応答から算出した、CD123ポジティブ好塩基球枯渇についてのEC
50(pM)を報告する。
【
図12】0.1、1、および10μg/mLの用量でのNKp46-CD123_F25、NKCEアイソタイプ対照NKp46-IC_F25(CD123に結合しないが、NKp46およびCD16aに結合する)による処理後の、健康ドナーPBMC(N=10)によるインビトロでのIL-1β、TNF-α、IFN-γ(グラフではINFgと記載)、およびIL-6サイトカイン放出、または0.1μg/mLの用量でのCD123およびCD3結合部位を共標的化する二重特異性T細胞エンゲージャツール(TCEツール)を示す。
【
図13-1】
図13A~
図13Fは、6頭の雄カニクイザル(M1~M6)についての、3000μg/kg(
図13Aおよび
図13B)、3μg/kg(
図13Cおよび
図13D)、0.5μg/kg(
図13E)、および0.5μg/kg未満(
図13F)でのNKp46-CD123_F25結合タンパク質濃度との相関における、個々のIL-6およびIL-10血漿濃度対時間プロファイルを示す。
【
図14-1】
図14Aは、CD64を発現する(#AML5、#AML6)、または発現しない(#AML1、#AML2)患者由来のAMLブラストに対する、NKp46に対する特異性のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1)、ならびにADCC活性が増大しており、かつNKp46に対する特異性もCD123に対する特異性もないネガティブアイソタイプ対照Fc最適化抗体(IC-hIgG1-ADCC-enh)と比較して、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質の細胞傷害性を提示する。AML患者由来の悪性細胞を標的として用い、そして精製した健康ドナーNK細胞をエフェクタとして用いた。結果を、試験した全ての健康なドナーNK細胞について示す。
図14Bは、フローサイトメトリ分析によるCD33、CD123、CD32a/b、およびCD64の発現を示す、
図14Aに用いた患者由来の悪性AML細胞の表現型を報告する。
【
図15】
図15Aは、腫瘍細胞上のCD123を標的とし、かつNK細胞にエンゲージしない(IC-CD123_F6)、またはCD16aのみ(IC-CD123_F25)もしくはNKp46のみ(NKp46-CD123_F6)によってNK細胞にエンゲージする、もしくはNKp46+CD16にコエンゲージ(NKp46-CD123_F25)するNKCEの細胞傷害性の比較である。MOLM-13細胞を標的細胞として、そして精製静止健康ドナーNK細胞をエフェクタとして用いた。2つのNKドナーを示す。
図15Bは、AML細胞株MOLM-13に対して、CD123に結合していないネガティブアイソタイプ対照NKCE分子(NKp46-IC_F25)と比較して、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質の細胞傷害性を報告する。5つの健康なNK細胞ドナーについての結果を示す。
【
図16】
図16Aは、AML患者(AML#8~#10)由来のNKおよび悪性細胞のフローサイトメトリ分析である。上部パネルは、(CD33ポジティブ集団にゲーティングした)AMLブラスト上でのCD123の発現を示す;中央パネルは、CD123ポジティブAMLブラスト上でのCD64の発現(CD64は黒色の、そしてアイソタイプ対照は灰色の染色)を示す;下部パネルは、NK AMLサンプルNK細胞上でのNKp46およびCD16aの発現を示す。
図16Bは、ブラストの細胞表面にてCD64を発現し(AML#8および#9)、そしてCD64を発現しない(AML#10)AML患者サンプル由来のPBMC上での、NKp46-CD123_F25(CD123-NKCE)、NKp46に対する特異性のない抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス1、またはグラフではCD123-IgG1+)、CD123に結合しないが、NKp46およびCD16aに結合する対照アイソタイプNKp46-IC_F25(600および120ng/mL)(IC-NKCE)、ならびにIgG1アイソタイプ対照(600ng/ml)(IC-IgG1+)による一晩の処理後のNK細胞によるCD107a/b発現の分析である。
【
図17-1】MOLM-13細胞と共培養した、またはしなかったNK細胞(NK+MOLM-13対NK単独)を用いる実験設定において、NKp46およびCD16のみにエンゲージするもの(NKp46-IC_F25)が挙げられる対照との比較において、濃度を上昇させたNKp46-CD123_F25により処理したNK細胞によるマーカー発現(CD107、CD69、TNF-α、IFN-γ、およびMIP-1β)のパーセントを示す。3つのNK細胞ドナーについての結果を示す。
【
図18】SCIDマウスにおける、散在性(disseminated)ヒトAML、MOLM-13に対する、代用muNKp46-huCD123_F25二重特異性抗体(moNKp46-huCD123としても知られている)の活性を示す。MOLM-13細胞を、単回投与で0日目に静脈内注射した。処置を、腹腔内経路によって、腫瘍移植後1日目に施した。huCD123ではなくmuNKp46およびマウスFcγRに結合するアイソタイプ対照抗体(muNKp46-IC)を、0.5mg/kgにて投与した。muNKp46-huCD123_F25およびリファレンス-1を、5、0.5、0.25、および0.05mg/kgにて投与した。対照群は、未処置のままにした。グラフは、muNKp46-huCD123_F25二重特異性抗体、リファレンス-1、および対照によって、5、0.5、0.25、および0.05mg/kgにて処置した動物についてのカプラン・マイヤー曲線を示す。
***:p<0.001(対対照群);
**:p<0.01(対対照群);
*:p<0.05(対対照群);
###:p<0.001(対リファレンス1);
#:p<0.05(対リファレンス1)。n=5~10マウス/群。
【
図19】散在性ヒトMOLM-13腫瘍細胞を有するSCIDマウスにおける、代用muNKp46-huCD123_F25二重特異性抗体のインビボ有効性に及ぼすNK枯渇の影響を評価する。NK枯渇は、腫瘍細胞移植の1日前および移植後5日目の抗アシアロGM1血清の2回の腹腔内投与によって誘導した。MOLM-13細胞を、単回投与における0日目に静脈内注射した。処置を、腫瘍移植後1日目に腹膜内に施した。また、huCD123ではなくmuNKp46およびマウスFcγRに結合するアイソタイプ対照抗体(muNKp46-IC)、ならびにマウスNKp46(IC-huCD123)ではなくhuCD123およびマウスFcγRに結合する第2のアイソタイプ対照抗体を含む対照を評価した。グラフは、muNKp46-huCD123_F25二重特異性抗体および対照(muNKp46-IC、IC-huCD123)によって、0.5、0.25、および0.05mg/kgにて処置した動物についてのカプラン・マイヤー曲線を示す。n=10マウス/群。
***:p<0.001(対対照群);
**:p<0.01(対対照群);
###:p<0.001(対同処置+NK枯渇);
#:p<0.05(対同処置+NK枯渇)。
【
図20】
図20Aは、単回1時間静注として3μg/kgの低用量にて処置したサルM3およびM4の血液由来のCD123ポジティブ好塩基球の枯渇を示す。血液サンプルを、投与前に、そして注入開始から24時間後に収集して、フローサイトメトリによって分析した。CD123ポジティブ好塩基球を、ゲート内に示す。
図20Bは、単回の1時間の静注として3mg/kgにより処置したサルM1(橙色)およびM2(紫色)、ならびに単回の1時間の静注として3μg/kgにより処置したサルM3(赤色)およびM4(青色)における研究時の循環CD123ポジティブ好塩基球(白抜き記号)および総CD123ポジティブ白血球(塗潰し記号)の数を示す。
図20Cは、単回の1時間の静注として3mg/kgおよび3μg/kgのそれぞれ高用量および低用量により処置したカニクイザルにおけるサイトカイン生成を報告する。血漿IL-6およびIL-10濃度が、投与前(0)、ならびに処置開始から1.5、5、および24時間後に示される。
図20Dは、3mg/kgおよび3μg/kgの高用量および低用量により処置したカニクイザルの1時間の注入開始から1.5、5、24、48、72、168、240、336、504、および672時間(すなわち、0.04、0.06、0.21、1、2、3、7、10、14、21および28日)後に監視した血漿NKp46-CD123_F25(CD123-NKCE)濃度を報告する。定量下限(LLOQ;0.25ng/mL)が、水平破線によって示される。
【
図21】
図21Aは、3mg/kg/投与の用量にて4週間、毎週(1、8、15、および22日目に)処置した雄サルM5における、NKp46-CD123_F25(CD123-NKCE)分子のトキシコキネティクス(TK)を示す。血漿CD123-NKCE濃度を、投与前、そして1、8、15日目の1時間の注入の開始から1、1.5、5、24、および/または72時間後に、そして投与前、そして22日目の最後の4回目の1時間の注入の開始から1、1.5、5、24、および168時間後に求めた。定量下限(LLOQ:0.25ng/mL)未満の値は、グラフ上で報告されていない。注入日が、垂直破線によって示されている。
図21Bは、3mg/kg/投与の高用量により4週間、毎週処置したサルM5におけるインターロイキン-6生成の分析である。血漿IL-6濃度を、投与前、そして1、8、15日の1時間注入の開始から1、1.5、5、および24時間後に、そして投与前、そして22日目の最後の4回目の1時間注入の開始から1、1.5、5、24、および168時間後に監視した。
図21Cは、3mg/kg/週の用量にて処置したサルM5についての、研究の時点までの、血中(左側のパネル)または骨髄中(右側のパネル)の循環CD123ポジティブ好塩基球(白抜き記号)および総CD123ポジティブ白血球(塗潰し記号)の数を定量化する。
【
図22-1】2人の健康なドナー(HD)由来のヒト末梢血液単核細胞(PBMC)によるアッセイにより、THP1細胞毒性活性を視覚的に示す。NK細胞およびTHP1 GFP標的細胞を、CD123にエンゲージし、かつ0.1、1、10、および100ng/mLにてそのFcサイレントフォーマット(F6)によりADCC活性の引下げを誘導するNKp46-CD123_F25またはそのアイソタイプ対照IC-CD123_F6の存在下でインキュベートした。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、免疫NK細胞上の一表面バイオマーカー、すなわちNKp46、および腫瘍標的細胞上の注目する一抗原、すなわちCD123に結合し、そしてCD123表面バイオマーカーを発現する標的細胞を溶解させるようにNK細胞を再方向付けすることができる多機能性結合タンパク質を提供する。本開示の多機能性結合タンパク質はさらに、Fc-γ受容体(FcγR)、特に、活性化Fc-γ受容体(FcγR)、例えばCD16aとも呼ばれているFcγRIIIaに結合するFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む。
【0041】
また、本開示の例示される多機能性結合タンパク質は、N結合グリコシル化を含む二量体Fcドメインを有し、かつ受容体CD16a等の活性化Fc-γ受容体(FcγR)に結合することによって、有益な免疫増強活性を提供する。
【0042】
発明者らは、NKp46、FcγR、例えばCD16a、および細胞表面バイオマーカーCD123にエンゲージすることによって、最適なNK細胞調節、特にNK細胞活性化を、インビトロでAML細胞株MOLM-13およびTHP1、ならびにエクスビボでAML患者由来の一次サンプル(例えば、AML患者由来の末梢血リンパ球)の双方において、より良好な安全性プロファイルで達成することができるという実験上の証拠を提供する。
【0043】
重要なことに、「F25」として本明細書中で報告されるフォーマットによって特徴付けられ、そしてヒトCD16ポリペプチドへの結合を保持する中央断片結晶化可能(Fc)領域を含む、本開示のNKp46-CD123結合タンパク質のインビトロ細胞傷害性活性が、エクスビボで再現された。
【0044】
したがって、発明者らは、特にAMLおよび他の増殖性障害を処置および予防するのに用いられる、二重特異性NKp46/CD16-CD123結合タンパク質の治療特性の実験上の支持を提供する。
【0045】
発明者らはさらに、NKp46-CD123結合タンパク質が、そのCD64発現状況に拘わらず、AML患者由来の一次サンプルにおいてNK細胞を活性化するという実験上の証拠を提供する。
【0046】
それゆえに、細胞表面マーカーNKp46/CD16への結合を介したNK細胞のエンゲージメントが、薬剤として用いられるロバストかつ再現性がある戦略として証明される。
【0047】
I.定義
本明細書中で用いられる「CD123」マーカーまたは、「表面抗原分類123」は、「インターロイキン3受容体、アルファ(IL3RA)」または「IL3R」、「IL3RX」、「IL3RY」、「IL3RAY」、「hlL-3Ra」としても知られており、ヘテロ二量体サイトカイン受容体のインターロイキン3特異的サブユニットを表す。機能的インターロイキン3受容体は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン5(IL-5)用の受容体と共有される特異的アルファ鎖(IL-3A;CD123)およびIL-3受容体ベータ鎖(βθ;CD131)を含むヘテロ二量体である。CD123は、I型内在性膜貫通タンパク質であり、導き出された分子量は約43kDaであり、IL-3結合に関与する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および約50アミノ酸の短い細胞質尾部を含有する。細胞外ドメインは、2つの領域:配列がGM-CSFおよびIL-5受容体アルファ鎖の等しい領域に対する類似性を示す約100アミノ酸のN末端領域;ならびに4つの保存システイン残基、およびこのサイトカイン受容体ファミリーの他のメンバーに共通のモチーフを含有する膜貫通ドメインに近位の領域で構成される。IL-3結合ドメインは、2つのIg様折畳みドメインで構成される約200アミノ酸残基サイトカイン受容体モチーフ(CRM)を含む。CD123の細胞外ドメインは、リガンド結合および受容体シグナル伝達の双方に必須のN-グリコシル化により、高度にグリコシル化されている。タンパク質ファミリーは、3つのメンバー:IL3RA(CD123A)、CSF2RA、およびIL5RAを集めたものである。構造全体は、3つのメンバー間でよく保存されているが、配列相同性は非常に低い。CD123の1つの300アミノ酸長アイソフォームがこれまで発見されているが、受託番号ACM241 16.1によってGetentryデータベース上でアクセス可能なRNAレベル上にしかない。全長ヒトCD123タンパク質(シグナルペプチドを含む)のリファレンス配列が、受託番号NP_002174.1によって、そしてUniprot受託番号P26951によってNCBIデータベースから入手可能である。ヒトCD123(ECD)の細胞外ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列からなる。CD123(インターロイキン-3受容体アルファ鎖IL-3Ra)は、種々の血液学新生物において過剰発現する腫瘍抗原である。大部分のAMLブラストは、表面CD123を発現し、この発現は、AMLのサブタイプによって変動しない。診断時のAML上でのCD123の発現が高いほど、予後不良と関連することが報告されている。CD123発現が、脊髄形成異常、全身性肥満細胞症、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)、ALL、および有毛細胞白血病が挙げられる他の血液学的悪性腫瘍において報告されている。
【0048】
本明細書中で用いられる「ナチュラルキラー」または「NK細胞」は、非従来の免疫に関与するリンパ球の亜集団を指す。NK細胞は、特定の特徴および生物学的特性、例えば、CD16、CD56、および/またはCD57、ヒトNK細胞についてNKp46が挙げられる特定の表面抗原の発現、細胞表面上のアルファ/ベータまたはガンマ/デルタTCR複合体の不在、特定の細胞溶解機構の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現できない細胞に結合してこれを殺滅する能力、NK活性化受容体用のリガンドを発現する腫瘍細胞または他の罹患細胞を殺滅する能力、ならびに免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力によって特定することができる。これらの特徴および活性のいずれも、当該技術において周知の方法を用いて、NK細胞を特定するのに用いることができる。また、NK細胞のいずれの亜集団も、用語NK細胞によって包含される。本明細書中の文脈の範囲内で、「活性」NK細胞は、標的細胞を溶解させるか、または他の細胞の免疫機能を増強する能力を有するNK細胞が挙げられる、生物学的に活性なNK細胞を示す。NK細胞は、当該技術において知られている種々の技術、例えば、血液サンプルからの単離、サイタフェレシス、組織または細胞コレクションその他によって得ることができる。NK細胞を包含するアッセイに有用なプロトコルは、Natural Killer Cells Protocols(Campbell KSおよびColonna Mによって編集)Human Press.219~238頁(2000年)において見出すことができる。
【0049】
本明細書中で用いられる「NKp46」マーカーまたは「天然細胞傷害性トリガー受容体1」(「CD335」または「NKP46」または「NK-p46」または「LY94」としても知られている)は、Ncr1遺伝子によってコードされるタンパク質またはポリペプチドを指す。全長ヒトNKp46タンパク質のリファレンス配列が、受託番号NP_004820によってNCBIデータベースから入手可能である。ヒトNKp46細胞外ドメイン(ECD)は、配列番号84のアミノ酸配列に相当する。ヒトNKp46 mRNA配列は、NCBI受託番号NM_004829に記載されている。
【0050】
本明細書中で用いられる用語「Fc-γ受容体」または「FcγR」または「Fcガンマ受容体」は、活性化および阻害FcγRの双方を指し得る。Fcガンマ受容体(FcγR)は、免疫グロブリンG(IgG)のFc領域についての細胞受容体である。複合型IgGの結合により、FcγRは、細胞免疫エフェクタ機能を調節することによって、ADCC媒介免疫応答が挙げられる適応免疫系および自然免疫系を関連付けることができる。ヒトにおいて、6つの古典的FcγRが現在報告されている:1つの高親和性受容体(FcγRI)および5つの低~中親和性FcγR(FcγRIIA、-B、および-C、FcγRIIIAおよび-B)。全てのFcγRが、IgG Fc上の同じ領域に、但し、高い(FcgRI)および低い(FcgRIIおよびFcgRIII)異なる親和性で、結合する。機能レベルで、ほとんどのFcγRが、ADCC媒介免疫応答が挙げられる上記の細胞応答を誘導することができる活性化受容体である。FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、およびFcγRIIIaは、細胞内免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)によって特徴付けられる活性化受容体であるが、FcγRIIbは、阻害モチーフ(ITIM)を有しているので、阻害性である。特に明記しない限り、用語FcγRは、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32a)、FcγRIIIa(CD16a)、およびFcγRIIIb(CD16b)、好ましくはFcγRIIIa(CD16a)が挙げられる活性化受容体を包含する。
【0051】
本明細書中で用いられる用語「FcγRIIIa(CD16a)」または「FcγRIIIa」または「CD16a」または「CD16」または「表面抗原分類16」は、膜貫通受容体として肥満細胞、マクロファージ、およびナチュラルキラー細胞上で発現される50~65kDaの細胞表面分子を指し得る。FcγRIIIaは、関連FcRγ-鎖内の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する活性化受容体である。ITAMは、受容体発現、表面アセンブリ、およびシグナル伝達に必須である。CD16aは、IgGに対して低い親和性の受容体であり、NK細胞によるADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性)を媒介する重要な受容体である。高親和性受容体CD16aは、NK細胞および単球上で優先的に見出されており、IgG結合により抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘導する。
【0052】
本明細書中で用いられる用語「FcγRII CD32」、「FcγRII」、「FCGR2」、「CD32a」、「CD32A」、「CD32」、または「表面抗原分類32」は、Ig遺伝子スーパーファミリーに属する表面受容体糖タンパク質である。CD32Aは、全ての骨髄細胞上で発現されるが、リンパ球上では発現されない。CD32は、単量体形態のIgG抗体のFc領域に対する親和性が低いが、IgG免疫複合体に対する親和性が高い。CD32は、2つの主要な機能:細胞応答調節、および免疫複合体の吸収を有する。CD32によって調節される細胞応答として、ファゴサイトーシス、サイトカイン刺激、およびエンドサイトーシス輸送が挙げられる。調節不全CD32は、全身性エリテマトーデスが挙げられる様々な形態の自己免疫と関連する。ヒトにおいて、3つの主要なCD32サブタイプ:CD32A、CD32B、およびCD32Cが存在する。CD32AおよびCD32Cは、細胞応答の活性化に関与する一方、CD32Bは、阻害性であり、CD32Aの活性化特性のバランスをとる。CD32Aは、種々の免疫細胞上で見出すことができるCD32の活性化サブタイプである。特に、CD32A(FcγRIIA)は、凝集IgGの低い結合親和性により、顆粒球、単球、B細胞、血小板、および樹状細胞のエフェクタ機能を媒介する。IgG免疫複合体に結合すると、サイトゾルITAMは、好中球およびマクロファージにおいて、食細胞活性およびサイトカイン分泌を促進することができる。
【0053】
本明細書中で用いられる用語「hFcγRICD64」、「hFcγRI」、「CD64」、または「表面抗原分類64」は、単球およびマクロファージ上でのみ構成的に発現される表面受容体であるが、サイトカイン刺激により顆粒球上で上方制御される。
【0054】
本明細書中で用いられる用語「フォーマット5」または「F5」、「フォーマット25」または「F25」、「フォーマットF6」または「F6」、および「フォーマット26」または「F26」は、多抗原結合ドメインを単一の抗体分子中に操作するように特異的に設計された二重特異性または多重特異性抗体の特異的結合タンパク質構成を指す。NKp46結合ドメインおよびCD123結合ドメインを含む本開示の多機能性結合タンパク質は、
図1および
図2において例示されるように、F25フォーマットに基づいて製造される。F25およびフォーマットF26は、フォーマットF5およびF6とそれぞれ、第2のポリペプチド鎖と第3のポリペプチド鎖との間の1つのC
H1/C
L対が、C
L/C
H1対を形成するように交換されている点で、異なる。F5およびF6フォーマットは、国際公開第2017114694号(参照によって本明細書に組み込まれる)に以前に記載されている。
【0055】
本明細書中で用いられる用語「二重特異性結合タンパク質」は、2つの異なる抗原結合ドメイン(ABD)を介して2つの異なる抗原標的(例えば、ヒトNKp46およびヒトCD123)に特異的に結合する結合タンパク質を指す。
【0056】
本明細書中で用いられる用語「~に特異的に結合する」または「特異的に~に結合する」は、エピトープを含有する抗原(例えば、ヒトNKp46および/またはヒトCD123)に、少なくとも約1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M、もしくはそれを超えるKdで結合し、かつ/またはエピトープに、非特異的抗原に対する親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で結合する抗原結合ドメイン(ABD)の能力を指す。
【0057】
本明細書中で用いられる用語「ヒトNK46ポリペプチドに特異的に結合する」は、配列番号84のアミノ酸配列を含むポリペプチドに向かう特異的結合を指し得る。
【0058】
本明細書中で用いられる用語「ヒトCD123ポリペプチドに特異的に」は、配列番号86のアミノ酸配列を含むポリペプチドに向かう特異的結合を指し得る。
【0059】
本明細書中で用いられる用語「ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する」は、配列番号87または配列番号88のアミノ酸配列を含むポリペプチドに向かう結合を指し得る。
【0060】
特定の結合を判定する競合結合アッセイおよび他の方法が、以下でさらに記載されており、当該技術において周知である。「~に特異的に結合する」または「~に対する特異性で」等の表現は、互換的に用いられている。当該用語は、列挙される標的/結合パートナーに実際に結合する抗体、ポリペプチド、および/または多鎖ポリペプチドを、また、非結合型の形態で提供されるが、列挙される標的に対する特異性を保持する抗体、ポリペプチド、および/または多鎖ポリペプチドを排他的に指すものと解釈されない。結合特異性は、親和性定数KA(またはKA)および解離定数KD(またはKD)によって定量的に判定することができる。
【0061】
本明細書中で用いられる用語「親和性」、濃度(EC50)または平衡解離定数(KD)は、抗体またはポリペプチドの、エピトープへの結合の強さを意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]と定められる、解離定数KDである特定の種類の平衡定数によって与えられ、式中、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は、結合していない抗体のモル濃度であり、[Ag]は、結合していない抗原のモル濃度である。親和性定数KAは、1/KDによって定められる。mAbの親和性を判定する好ましい方法は、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1988年)、Coliganら編、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience、N.Y.(1992年、1993年)、およびMuller、Meth.Enzymol.92巻:589~601頁(1983年)(これらの参考文献は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。mAbの親和性を判定する当該技術において周知の好ましい標準的な一方法が、表面プラスモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置による分析による)の使用である。非制限的な様式で、SPRによって、そして生理学的条件下で(例えば、標準的なバッファ条件下で6~8に及ぶpHにて)判定した50nM未満のKDは、通常、抗原-抗原結合ドメイン(ABD)相互作用についての結合の特異性を示すと考えることができる。例として、そして一部の特定の例示される実施形態に従えば、本明細書中で報告される結合タンパク質は:
-生理学的条件下で、SPRによって判定して、10nM未満のKDで、特に0.5nM未満のKDで、ヒトCD123に特異的に結合する抗原結合ドメイン;
-生理学的条件下で、SPRによって判定して、50nM未満のKDで、特に20nM未満のKDで、ヒトNKp46に特異的に結合する抗原結合ドメイン
を含む。
【0062】
本明細書中で用いられる用語「および/または」は、これが接続するケースの1つまたはそれ以上が起こり得ることを包含すると解釈されることとなる文法上の連結である。例えば、文言「そのような天然の配列タンパク質を、標準的な組換え方法および/または合成方法を用いて製造することができる」は、天然の配列タンパク質を、標準的な組換え方法および合成方法を用いて製造することができ、または天然の配列タンパク質を、標準的な組換え方法を用いて製造することができ、または天然の配列タンパク質を、合成方法を用いて製造することができることを示す。
【0063】
本明細書中で用いられる「処置する」は、そのような障害または症状の1つまたはそれ以上の徴候の経過を食い止める、軽減する、阻害する治療的使用(すなわち、所与の疾患を有する対象への)および手段を指す。したがって、処置は、疾患の全治につながる処置だけでなく、疾患の進行を減速し、かつ/または対象の生存期間を延長する処置をも指さす。
【0064】
本明細書中で用いられる「予防する」は、予防的使用(すなわち、所与の疾患の発病に影響され易い対象への)を意味し、そして再発したAML患者の処置を包含する。
【0065】
本明細書中で用いられる用語、多機能性結合タンパク質またはその医薬組成物の「治療的に有効な量」は、あらゆる医療処置に応用できる合理的な利益/リスク比にて、前記癌疾患を処置するのに十分な量の抗体様多機能性結合タンパク質を意味する。しかしながら、本開示のポリペプチドおよび組成物の総1日使用量は、主治医によって、健全な医療判断の範囲内で決定されることとなることが理解されよう。特定のあらゆる患者にとっての具体的な治療的に有効な用量レベルは、処置されることとなる障害、および障害の重症度;使用される特定のポリペプチドの活性;使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別、および食事;投与時間、投与経路、および使用される特定のポリペプチドの排泄の速度;処置の継続;使用される特定のポリペプチドと組み合わせて用いられる、または同時的な薬物;ならびに医療技術において周知の類似の因子が挙げられる種々の因子に依存することとなる。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルにて化合物の投与を開始させること、そして所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増大させることは、当該技術の範囲内で周知である。
【0066】
本明細書中で用いられる用語「対象」または「個体」または「患者」は、互換的に用いられており、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、齧歯類または非齧歯類を包含し得る。当該用語は、以下に限定されないが、哺乳動物、例えば、男性、女性、および小児が挙げられるヒト、他の霊長類(サル)、ブタ、齧歯類、例えばマウスおよびラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ならびにヤギを含む。
【0067】
本明細書中で用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないと明らかに指図しない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「薬学的に許容される担体」は、複数の薬学的に許容される担体を包含し、それらの混合物を含む。
【0068】
ゆえに、本明細書中で用いられる、「複数の」は、「2つ」または「2つ以上」を含み得る。
【0069】
本明細書中で用いられる「抗体」または「免疫グロブリン」は、2本の重鎖がジスルフィド結合によって互いに連結されており、かつ各重鎖がジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている天然の、または従来の抗体を指し得る。2つの種類の軽鎖、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEが存在する。各鎖は、異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、2つのドメインまたは領域、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は一般に、4つのドメイン、可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3、まとめてCHと称される)を含む。特に、クラスIgG、IgA、およびIgDは、3つの重鎖定常領域ドメインを有し、これらはCH1、CH2、およびCH3と指定され;そしてIgMおよびIgEクラスは、4つの重鎖定常領域ドメイン、CH1、CH2、CH3、およびCH4を有する。軽(VL)鎖および重(VH)鎖の双方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽(CL)鎖および重(CH)鎖の定常領域ドメインは、重要な生物学的特性、例えば、抗体鎖結合、分泌、経胎盤移動性、補体結合、およびFc受容体(FcR)への結合を付与する。Fv断片は、免疫グロブリンの抗原結合断片(Fab)のN末端部分であり、1本の軽鎖および1本の重鎖の可変部分からなる。
【0070】
本明細書中で用いられる、一般に「IgG」または「免疫グロブリンG」を指す場合には、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が、そうでないと定められない限り、含まれる。特に、IgGはIgG1である。
【0071】
また、本明細書中で用いられる用語「抗体様」または「免疫グロブリン様」ポリペプチドは、非従来の、または合成抗原結合ポリペプチドまたは結合タンパク質を指し得、単一のドメイン抗体およびその断片、特に、単一のドメイン抗体の可変重鎖、およびキメラ、ヒト化、二重特異性、または多量体抗体が挙げられる。
【0072】
本明細書中で用いられる用語「多機能性結合タンパク質」は、多鎖タンパク質を包含し、以下に限定されないが、ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの第1の可変領域(例えば、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および/または免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL))、およびヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの第2の可変領域(例えば、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および/または免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL))を含む抗体様ポリペプチドまたはタンパク質フォーマットが挙げられる。特定の種類の構築体に特に限定されないが、1つの一般的な実施形態が、本明細書の全体を通して特に考慮される:国際公開第2015197593号および国際公開第2017114694号(それぞれが参照によって本明細書に組み込まれる)に報告されているポリペプチド構築体。特に、例えば国際公開第2015197593号および国際公開第2017114694号に報告されている多機能性結合タンパク質は、1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖を含むあらゆる構築体を包含し得る。
【0073】
本明細書中で用いられる、「ヒト化抗体」における用語「ヒト化」は、完全に、または部分的に非ヒト起源のものであり、かつ、特に重鎖および軽鎖のフレームワーク領域内の、特定のアミノ酸を置換して、ヒトにおける免疫応答を回避するか、または最小にするように修飾されているポリペプチド(すなわち、抗体または抗体様ポリペプチド)を指す。ヒト化抗体の定常ドメインは、ほとんどの場合、ヒトCHおよびCLドメインである。抗体配列のヒト化のための多数の方法が、当該技術において知られている;例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)Front Biosci.13巻:1619~1633頁によるレビュー参照。1つの一般的に用いられる方法は、CDR移植または抗体再構築であり、これは、ドナー抗体、一般にマウス抗体のCDR配列の、異なる特異性のヒト抗体のフレームワークスカフォールド中への移植を包含する。
【0074】
キメラ抗体について、ヒト化は典型的に、可変領域配列のフレームワーク領域の修飾を包含する。特定の場合には、個々のCDRアミノ酸残基を変更すること、例えば、グリコシル化部位、脱アミド化部位、または不所望のシステイン残基を取り除くことが所望されるが、CDRの一部であるアミノ酸残基は典型的に、ヒト化と関連して変更されない。N結合グリコシル化は、トリペプチド配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr内のアスパラギン残基へのオリゴ糖鎖の取付けによって起こり、式中、Xは、Pro以外のあらゆるアミノ酸であってよい。N-グリコシル化部位の除去は、特に保存的置換によって、AsnまたはSer/Thr残基を、異なる残基に変異させることによって達成することができる。アスパラギンおよびグルタミン残基の脱アミド化は、pHおよび表面曝露等の因子に応じて起こり得る。アスパラギン残基は特に、主に配列Asn-Gly内に、そしてそれほどではないにせよAsn-Ala等の他のジペプチド配列内に存在する場合、脱アミド化に影響され易い。したがって、そのような脱アミド化部位、特にAsn-GlyがCDR配列内に存在する場合、典型的には関係する残基の1つを除去する保存的置換によって、当該部位を除去することが所望される。また、関係する残基の1つを除去するCDR配列の置換は、特許請求される多機能性結合タンパク質によって包含されることが意図される。
【0075】
本明細書中で用いられる用語「保存的アミノ酸置換」は、物理化学的特性が類似した側鎖を有するアミノ酸残基によりアミノ酸残基が置換されている置換を指す。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該技術において知られており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)を有するアミノ酸が挙げられる。アミノ酸が2つの異なるクラスに属している場合(すなわち、チロシンおよびフェニルアラニン)、双方とも受け入れることができる。参照として、特に明記しない限り、本明細書の全体を通して、以下の分類に従うこととなる。
【0076】
【0077】
本明細書中で用いられる用語「ドメイン」は、配列相同性または同一性に基づいて通常定められる、タンパク質のあらゆる領域であってよく、これは、特定の構造または機能的実体に関連する。したがって、本開示の文脈において用いられる用語「領域」は、対応するドメインを越えて追加の領域を含み得る点で、より広い。
【0078】
本明細書中で用いられる用語「リンカー領域」、「リンカーペプチド」、「リンカーポリペプチド」、「アミノ酸リンカー」、または「リンカー」は、2つのポリペプチドドメイン、例えば2つの抗原結合ドメインを互いに、かつ/またはFc領域を、1つもしくは複数の可変領域、例えば1つもしくは複数の抗原結合ドメインに共有結合的に連結するのに適したあらゆるアミノ酸配列を指す。当該用語は、特定のサイズまたはポリペプチド長に限定されないが、そのようなアミノ酸リンカーは、一般に、50アミノ酸長未満、好ましくは30アミノ酸長未満、例えば20アミノ酸長以下、例えば15アミノ酸長以下である。そのようなアミノ酸リンカーは、場合により、免疫グロブリンポリペプチド鎖の全てまたは一部、例えば免疫グロブリンのヒンジ領域の全てまたは一部を含み得る。これ以外にも、アミノ酸リンカーは、免疫グロブリンのヒンジ領域に由来しない、または免疫グロブリン重ポリペプチド鎖もしくは軽ポリペプチド鎖に由来しないポリペプチド配列を含んでもよい。
【0079】
ゆえに、本明細書中で用いられる免疫グロブリンヒンジ領域またはその断片は、特定の種類のリンカーと考えられ、これは、免疫グロブリンポリペプチド鎖に由来する。
【0080】
本明細書中で用いられる用語「ヒンジ領域」または「ヒンジ」は、一般に、フレキシブル領域を指し、対応する重鎖ポリペプチドが有し、免疫グロブリンの、より詳細にはIgG、IgA、またはIgDアイソタイプの特定のアイソタイプのFcおよびFab部分を分けている。そのようなヒンジ領域は、考慮される免疫グロブリンのアイソタイプに依存することが当該技術において知られている。ゆえに、天然のIgG、IgA、およびIgDアイソタイプについて、ヒンジ領域は、CH1ドメインおよびCH2ドメインを分けており、そして通常、パパイン消化により切断される。他方では、IgMおよびIgE重鎖内のヒンジに対応する領域は、通常、フレキシビリティがより低い追加の定常ドメインによって形成される。加えて、ヒンジ領域は、鎖間ジスルフィド結合に関与する1つまたはそれ以上のシステインを含み得る。また、ヒンジ領域は、当て嵌まる場合には、CH2ドメインが有するFcγR結合部位に加えて、Fcγ受容体への1つまたはそれ以上の結合部位を含み得る。加えて、ヒンジ領域は、考慮されるアイソタイプに応じて、1つまたはそれ以上の翻訳後修飾、例えば1つまたはそれ以上のグリコシル化残基を含み得る。ゆえに、本明細書の全体を通した用語「ヒンジ」への言及は、特定のセットのヒンジ配列に、または構造上の特定の位置に限定されないことが容易に理解されよう。そうでないと指図されない限り、さらに詳細に考慮されるヒンジ領域は:IgGアイソタイプ、IgAアイソタイプ、およびIgDアイソタイプから選択される1つのアイソタイプ;特に、IgGアイソタイプに属する免疫グロブリン由来のヒンジの全てまたは一部を含む。
【0081】
本明細書中で用いられる用語「CHドメイン」または「CHドメイン」または「定常ドメイン」は、互換的に用いることができ、1つまたはそれ以上のあらゆる重鎖免疫グロブリン定常ドメインを指し得る。そのようなCHドメインは、単離された形態で部分的に不規則であり得る(例えば、軽鎖(CL)の定常ドメインと関連しない場合のCH1ドメイン)が、免疫グロブリン様ドメインとして本来的に(natively)折り畳まれている。ゆえに、そうでないと指図されない限り、当該用語は、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン;またはそれらのあらゆる組合せを指し得る。
【0082】
本明細書中で用いられる用語「CH1ドメイン」または「CH1ドメイン」または「定常ドメイン1」は、互換的に用いることができ、対応する重鎖免疫グロブリン定常ドメイン1を指し得る。
【0083】
本明細書中で用いられる用語「CH2ドメイン」または「CH2ドメイン」または「定常ドメイン2」は、互換的に用いることができ、対応する重鎖免疫グロブリン定常ドメイン2を指し得る。
【0084】
本明細書中で用いられる用語「CH3ドメイン」または「CH3ドメイン」または「定常ドメイン3」は、互換的に用いることができ、対応する重鎖免疫グロブリン定常ドメイン3を指し得る。
【0085】
ゆえに、本明細書中で用いられる、(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bにおける用語「CH2-CH3」は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含むポリペプチド配列を指す。
【0086】
本明細書中で用いられる用語「CLドメイン」または「CLドメイン」は、互換的に用いることができ、対応する軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを指し得る。ゆえに、そうでないと指図されない限り、当該用語は、全ての知られているサブタイプ(例えば、λ1、λ2、λ3、およびλ7)を含めて、免疫グロブリン軽鎖のカッパ(κまたはK)またはラムダ(λ)クラスのCLドメインを包含し得る。特に、CLドメインは、カッパクラスのものである場合、本明細書中でCκまたはCKまたはCkドメインとも称される。
【0087】
本明細書中で用いられる用語、「対C(CH1/CL)」または「対形成されたC(CH1/CL)」は、共有結合または非共有結合性の結合、好ましくは非共有結合性の結合によって互いに結合し;然るにヘテロ二量体を形成する1つの定常重鎖ドメイン1および1つの定常軽鎖ドメイン(例えば、免疫グロブリン軽鎖のカッパ(κまたはK)またはラムダ(λ)クラス)を指す。ゆえに、特に明記しない限り、対を形成する定常鎖ドメインが、同じポリペプチド鎖上に存在しない場合、当該用語は、全ての考えられる組合せを包含し得る。ゆえに、好ましくは、対応するCH1およびCLドメインは、安定した対C(CH1/CL)を形成するように互いに相補的であるように選択されることとなる。
【0088】
有利には、結合タンパク質が、複数の対形成されたCドメイン、例えば1つの「対C1(CH1/CL)」および1つの「対C2(CH1/CL)」)を含む場合、対を形成する各CH1およびCLドメインが、相補的なCH1ドメインとCLドメインとの間に形成されるように選択されることとなる。相補的なCH1およびCLドメインの例が、国際公開第2006064136号または国際公開第2012089814号または国際公開第2015197593A1号において以前に記載されている。
【0089】
そうでないと指図されない限り、用語「対C1(CH1/CL)」または「対C2(CH1/CL)」は、同一であるか、または異なる定常重1ドメイン(CH1)、および同一であるか、または異なる定常軽鎖ドメイン(CL)によって形成される異なる定常対ドメイン(C1およびC2)を指し得る。好ましくは、用語「対C1(CH1/CL)」または「対C2(CH1/CL)」は、同一の定常重1ドメイン(CH1)および同一の定常軽鎖ドメイン(CL)によって形成される異なる定常対ドメイン(C1およびC2)を指し得る。
【0090】
本明細書中で用いられる用語「Fc領域」もしくは「断片結晶化可能領域」、またはこれ以外にも「Fc部分」は、「Fcドメイン」の全てまたは一部を包含し、これは然るに、免疫グロブリンヒンジ領域(FcγRへの第1の結合部位を本来的に有する)、CH2ドメイン(FcγRへの第2の結合部位を本来的に有する)、および免疫グロブリンの(例えば、IgG、IgA、またはIgD免疫グロブリンの)CH3ドメインの、かつ/または当て嵌まる場合には、免疫グロブリン(例えば、IgMおよびIgEについて)のCH4ドメインの全てまたは一部を含み得る。好ましくは、Fc領域は、少なくとも、CH2ドメインおよびCH3ドメインの全てまたは一部、ならびに場合により免疫グロブリンヒンジ領域の全てまたは一部を含む。ゆえに、当該用語は、単量体形態であるか多量体形態であるかに拘わらず、抗体の消化に由来するか、または他の手段によって生成される非抗原結合断片の配列を含み、そしてヒンジ領域を含有することができる分子を指し得る。天然のFcの元々の免疫グロブリン源は、特に、ヒト起源のものであり、いずれの免疫グロブリンのものであってもよいが、IgG1が好ましい。天然のFc分子は、共有結合(すなわちジスルフィド結合)によって、そして非共有結合性の結合によって二量体または多量体の形態に連結される単量体ポリペプチドで構成される。天然のFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、およびIgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、lgG3、IgGA1、およびIgGA2)に応じて、1から13に及ぶ。天然のFcの一例が、IgGのパパイン消化に由来するジスルフィド結合二量体である。本明細書中で用いられる用語「天然のFc」は、単量体、二量体、そして多量体の形態の一般名である。ゆえに、当該専門用語の下で、「Fc領域」は、CH2-CH3(例えば、(CH2-CH3)Aもしくは(CH2-CH3)B、またはそれらの結合対)、および場合により、ヒトFcγRへの結合部位を含む免疫グロブリンヒンジ領域の全てまたは一部を含んでもよいし、それからなってもよい。特に明記しない限り、用語「Fc領域」は、天然のFc領域またはバリアントFc領域を指し得る。
【0091】
本明細書中で用いられる用語「Fcバリアント」は、天然のFcから修飾されているが、受容体、FcRn(新生児Fc受容体)用の結合部位を依然として含む分子または配列を指す。例示的なFcバリアント、およびその、受容体との相互作用が、当該技術において知られている。ゆえに、用語「Fcバリアント」は、天然の非ヒトFcからヒト化されている分子または配列を含み得る。さらに、天然のFcは、除去することができる領域を含む。なぜなら、本発明の抗体様結合タンパク質に必要とされない構造的特徴または生物活性を提供するからである。ゆえに、用語「Fcバリアント」は、1つもしくはそれ以上の天然のFc部位もしくは残基を欠いているか、または:(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択される宿主細胞との不和合性、(3)選択される宿主細胞における発現時のN末端異質性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、もしくは(7)抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に影響を与えるか、もしくは関与する1つもしくはそれ以上のFc部位もしくは残基が修飾されている分子または配列を含む。
【0092】
本開示に従う断片結晶化可能(Fc)領域(例えば、天然またはバリアント)は、抗体Fcヒンジ領域の結合により天然のFc領域上に一般に存在するヒトFc-γ受容体ポリペプチド(Fcγ)に結合する能力を保持する。参照として、IgG1、IgG2、およびIgG4の構造全体は類似しており、配列相同性が90%を超え、主要な差異が、FcγRへの一次結合部位を形成するヒンジ領域およびCH2ドメイン内に存在する。また、ヒンジ領域は、FabとFc部分との間で、フレキシブルリンカーとして機能する。
【0093】
1つまたはそれ以上の部分において1つまたはそれ以上のアミノ酸の修飾(例えば、置換、欠失、挿入)を有するFc領域(当該修飾は、FcγR(活性化FcγRおよび阻害FcγRが挙げられる)についてのバリアントFc領域の親和性および結合力を増大させる)はさらに、Fc領域と考えられる。一部の実施形態において、前記1つまたはそれ以上のアミノ酸の修飾は、FcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAに対するFc領域の親和性を増大させる。別の実施形態において、バリアントFc領域はさらに、FcγRIIBに特異的に結合し、親和性は、リファレンス親抗体(例えば、Fc領域における1つまたはそれ以上のアミノ酸の修飾以外、同じアミノ酸配列を有する抗体)のFc領域に結合するよりも低い。それゆえに、本明細書中で考慮される天然のFc領域およびバリアントFc領域は一般に、ヒトCD16に結合することができるドメイン(すなわち、CH2ドメイン)、例えば、アミノ酸残基N297(EUナンバリングに従う)にてN結合グリコシル化を含むヒトFcドメインを含む。
【0094】
ゆえに、本明細書中で用いられる用語「Fcコンピテント」は、特に活性化FcγRの、FcγRに、特に、FcγRI(CD64a)、FcγRIIa(CD32a)、およびFcγRIIIa(CD16a)から選択されるものに、より詳細にはFcγRIIIa(CD16a)に特異的に結合することができる結合タンパク質を指す。
【0095】
これ以外にも、FcγRへの結合に直接的に影響を与えるいくつかの修飾が報告されており、残基297(EUナンバリングに従う)上、またはこれ以外にもより低いヒンジ領域における残基234および235(EUナンバリングシステムに従う)上の変異が挙げられる。
【0096】
本明細書中で用いられる用語「Fcサイレント」は、Fc領域を有する結合タンパク質を指し、Fc領域は、FcγR;特に、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIa、より詳細にはFcγRIIIa(CD16a)への結合部位を欠いている(例えば、Fc領域は、前記結合部位を有するCH2ドメインおよび前記結合部位を有するヒンジ領域を欠いている)。
【0097】
本明細書中で用いられる、「可変ドメイン」における用語「可変」は、抗体間で配列が広範囲にわたって異なる関連する結合タンパク質の特定の部分を指し、その特定の標的についての特定の抗体の特異的な認識および結合に用いられる。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体を通して、均一に分配されていない。可変性は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの双方において、相補性決定領域と呼ばれる3つの部分(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、およびCDR3)(超可変領域としても知られている)に集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク(FR)領域または配列と呼ばれる。
【0098】
本明細書中で用いられる用語「VHドメイン」または「VHドメイン」は、互換的に用いることができ、対応する重鎖免疫グロブリン可変ドメインを指し得る。
【0099】
本明細書中で用いられる用語「VLドメイン」または「VLドメイン」は、互換的に用いることができ、対応する軽鎖免疫グロブリン可変ドメインを指し得る。
【0100】
VHドメインまたはVLドメインは、第1の抗原結合ドメイン(ABD)に、または第2の抗原結合ドメインに結合する場合、本明細書中でそれぞれ「VH1」および「VL1」または「VH2」および「VL2」とも称される。
【0101】
用語「結合対V(VH/VL)」、「VH/VL対」、「(VH/VL)対」、「VL/VH対」、または「(VL/VH)対」は、互換的に用いることができる。重鎖および軽鎖可変ドメインは、並列に対形成して、抗原結合ドメイン(ABD)を形成することができる。各結合対は、VHおよびVL領域の双方を含む。そうでないと指図されない限り、これらの用語は、どの免疫グロブリン可変領域がVH領域であるかVL領域であるか、そしてどのABDが、免疫エフェクタ細胞または標的細胞の表面上で発現されるタンパク質(例えば、NKp46およびCD123)に特異的に結合することとなるかを特定化しない。
【0102】
本明細書中で用いられる用語「超可変領域」は、本明細書中で用いられる場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。当該用語は、用語「相補性決定領域」または「CDR」によって置換することができる。
【0103】
ゆえに、本明細書中で用いられる「相補性決定領域」または「CDR」は、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒に定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は各々、3つのCDRを有し、それぞれCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3と指定される。したがって、従来の抗体抗原結合ドメインは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の各々に由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含む。また、本明細書中で用いられる「フレームワーク領域」(FR)は、CDRの間に挿入されるアミノ酸配列を、すなわち、単一の種内で異なる免疫グロブリン間で比較的保存されている免疫グロブリン軽鎖可変領域および重鎖可変領域の部分を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は各々、4つのFRを有し、それぞれ、FR-L1、FR-L2、FR-L3、FR-L4、およびFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4と指定される。したがって、軽鎖可変ドメインは、(FR-L1)-(CDR-L1)-(FR-L2)-(CDR-L2)-(FR-L3)-(CDR-L3)-(FR-L4)と指定され、重鎖可変ドメインは、(FR-H1)-(CDR-H1)-(FR-H2)-(CDR-H2)-(FR-H3)-(CDR-H)-(FR4-H3)と指定される。
【0104】
超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおいて、残基24~34(L1)、50~56(L2)、および89~97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおいて、31~35(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3);Kabatら 1991年)および/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおいて、残基26~32(L1)、50~52(L2)、および91~96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおいて、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3);ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol 1987年;196巻:901~917頁)を含む。この領域内のアミノ酸残基のナンバリングは、前掲のKabatらに記載される方法によって実行される。したがって、本明細書中の「Kabat位置」、「Kabatによる可変ドメイン残基ナンバリング」、および「Kabatに従って」等のフレーズは、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについてのナンバリングシステムを指す。Kabatナンバリングシステムを用いて、ペプチドの実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮、またはこの中への挿入に対応するより少しの、または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後ろに単一のアミノ酸挿入(Kabatに従って、残基52a)、および重鎖FR残基82の後ろに挿入された残基(例えば、Kabatに従って、残基82a、82b、および82c、その他)を含んでもよい。残基のKabatナンバリングは、「標準的な」Kabat付番配列による抗体の配列の相同性の領域でのアラインメントによって、所与の抗体について決定される。
【0105】
場合により、CDRは、EU、Kabat、Chotia、またはIMGTナンバリングによって定められる通りである。それらの分類間の対応は、IMGT(登録商標)、または国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)(CNRSおよびMontpellier University)を参照することによって、そしてLefranc(Biomolecules;2014年;4巻、1102~1139頁)およびDondelinger(Frontiers in Immunology;2018年;9巻、2278頁)においてさらに詳述されるように、当該技術において知られている。
【0106】
そうでないと指図されない限り、残基のナンバリングは、EU、Kabat、Chotia、またはIMGTナンバリング慣例の参照によって本明細書中で考慮されることとなる。リファレンス配列内の超可変領域の正確な位置に関する不一致の場合、Kabatナンバリング慣例が勝ることとなる。リファレンス配列内の定常領域の正確な位置に関する不一致の場合、EUナンバリング慣例が勝ることとなる。
【0107】
本明細書中で用いられる用語「細胞傷害性」は、化合物の質、例えば、腫瘍細胞に毒性である、本開示に従う多機能性結合タンパク質を指す。細胞傷害性は、様々な作用機序によって誘導されるので、細胞媒介細胞傷害性、アポトーシス、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)、または補体依存性細胞傷害性(CDC)に分けることができる。
【0108】
本明細書中で用いられる用語「抗体依存性細胞媒介細胞傷害性」または「ADCC」は、細胞媒介免疫防御の機構を指し、これによって、免疫系のエフェクタ細胞は、膜表面抗原が特異抗体または本開示の多機能性結合タンパク質の結合を受けている標的細胞をアクティブに溶解させる。
【0109】
本明細書中で用いられる用語「増殖性障害」、「高増殖性障害」、および/または「癌」は、固形腫瘍、例えば乳癌、気道癌、脳癌、生殖器癌、消化管癌、尿路癌、眼癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、およびそれらの遠隔転移を指すだけでなく、造血組織およびリンパ組織の腫瘍、例えば、リンパ腫、骨髄腫、および白血病が挙げられる血液癌が挙げられる。白血病として、以下に限定されないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病が挙げられる。
【0110】
本明細書中で用いられる「急性骨髄性白血病(AML)」は、異種の、そして未分化の骨髄ブラストの増殖の増大として臨床的に現れるクローン障害である。理論によって拘束されることを望むものではないが、白血病の階層構造は、LSC(白血病幹細胞)(AML-LSC)の小集団によって維持されており、これは、自己再生のための異なった能力を有しており、白血病前駆体に分化することができる。当該前駆体は、診断時に患者において容易に検出可能な多数の白血病ブラストを生成し、そして再発して、最終的に死亡に至る。AML-LSCは、迅速に分裂するクローン原性前駆体と対照的に、静止細胞として一般的に報告されている。
【0111】
AMLの文脈の範囲内で、用語「再発する」は、特に、完全緩解後のAMLの再発と定められる。その意味で、「完全緩解」または「CR」は、以下のように定められる:好中球(1.0×109個/Lより多い)、ヘモグロビンレベル10g/dl、および血小板数(100×109個/Lより多い)の正常な値、ならびに赤血球輸血からの独立;ブラスト細胞5%未満、ブラストのクラスターもコレクションもなし、そして骨髄試験でのアウエル小体の不在;ならびに血球の正常な成熟(形態学;骨髄像(myelogramme))および延髄外白血病の不在。
【0112】
本明細書中で用いられる「骨髄異形成症候群」(「MDS」)(以前に前白血病として知られている)は、血球の骨髄クラスの効果のない産生(または形成異常)に関与する血液学的症状の集まりである。これは、進行性の骨髄不全、および急性骨髄性白血病(「AML」)への進行のリスク増大によって特徴付けられるクローン造血幹細胞障害のスペクトルを表す。International Prognostic Scoring System(「IPSS」)は、その血球減少、骨髄芽球パーセンテージ、および細胞遺伝学的異常の重症度に基づくリスクの大きい特徴のある患者を特定するのに広く用いられる。
【0113】
本明細書中で用いられる「薬学的に許容される担体」は、あらゆる全ての担体(例えば、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等)を含むことが意図される。これは、薬学的投与、特に非経口投与と和合性である。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用が知られている。従来のあらゆる媒体または剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、そのような媒体を、本開示の組成物に用いることができる。例えば、非経口投与用の調製物として、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルがある。水性担体として、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝化媒体が挙げられる。非包括的ではあるが、薬学的に許容される担体として、0.01~0.1M(例えば0.05M)リン酸バッファまたは0.8%生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。他の共通の非経口ビヒクルとして、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈ビヒクルとして、流体および栄養補充液、電解質補充液、例えばリンゲルデキストロースに基づくもの等が挙げられる。また、防腐剤、ならびに、例えば、抗菌物質、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスといった他の添加物が存在してもよい。より詳細には、注射可能な使用に適した医薬組成物として、滅菌水溶液(水溶性の場合)、または滅菌注射可能な溶液もしくは分散系の即座の調製用の分散系および滅菌粉末が挙げられる。そのような場合、組成物は滅菌されていなければならず、かつ平易な注射針通過能(syringeability)が存在する程度の流体であるべきである。組成物は、製造および保存の条件下で安定しているべきであり、実施形態において、微生物、例えば細菌および菌類の汚染作用から保護されることとなる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合液を含有する溶媒または分散系媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングを用いて、分散系の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、そして界面活性剤を用いて、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサー等によって達成することができる。特定の実施形態において、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムが組成物中に含まれる。注射可能な組成物の長期間にわたる吸収を、組成物中に、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらすことができる。
【0114】
本明細書中で用いられており、そしてそうでないと指図されない限り、用語「少なくとも1つ」は、「1つまたはそれ以上」またはさらに「2つまたはそれ以上」(または「複数」)を包含し得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、または100超を包含し得る。
【0115】
本明細書中で用いられており、そしてそうでないと指図されない限り、用語「未満」は、0から対応する閾値までの全ての値を包含し得、例えば、当て嵌まる場合には、1未満、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、または100未満を包含し得る。
【0116】
本明細書中で用いられる用語「細胞」は、あらゆる原核細胞または真核細胞を包含し得る。特に考慮される細胞型は、組換え抗体、またはその断片もしくはポリペプチド鎖の生成および/または操作に適したものである。非包括的ではあるが、そのような細胞は:細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、昆虫細胞、および植物細胞からなる群から選択される。
【0117】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養体」は、互換的に用いられており、外来核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の後代が挙げられる。宿主細胞として、「形質転換体」および「形質転換細胞」が挙げられ、これには、継代数を無視して、そこに由来する初代形質転換細胞および後代が挙げられる。後代は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含有してもよい。元々形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する変異後代が、本明細書中に含まれる。宿主細胞は、本開示の結合タンパク質を生成するのに用いることができるあらゆる種類の細胞系である。ゆえに、宿主細胞として、ほんの少し例を挙げれば、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、CHO細胞、HEK細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、またはハイブリドーマ細胞、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞が挙げられる。
【0118】
「単離」核酸分子またはポリヌクレオチドによって、その天然の環境から取り出された核酸分子、DNA、またはRNAが意図される。例えば、ベクター内に含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドが、本開示のために単離されていると考えられる。単離ポリヌクレオチドの更なる例として、異種宿主細胞内に維持される組換えポリヌクレオチド、または溶液中の(部分的に、または実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離ポリヌクレオチドとして、ポリヌクレオチド分子を通常含有する細胞内に含有されるポリヌクレオチド分子が挙げられるが、ポリヌクレオチド分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する。単離RNA分子として、本開示のインビボまたはインビトロRNA転写産物、ならびにプラス鎖形態およびマイナス鎖形態、ならびに二本鎖形態が挙げられる。本開示に従う単離ポリヌクレオチドまたは核酸としてさらに、合成的に生成されるような分子が挙げられる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸として、調節要素、例えば、プロモータ、リボソーム結合部位、または転写ターミネータがあり得るか、またはこれらが挙げられる。
【0119】
用語「ベクター」または「発現ベクター」は、核酸、特にDNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)が宿主細胞中に導入されて、宿主を形質転換して、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進することができるビヒクルを意味することが意図される。
【0120】
II.結合タンパク質
一実施形態において、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体に結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする結合タンパク質に関する。
【0121】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号1~配列番号12から選択される少なくとも1つのCDRを含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、またはその、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有するバリアント;
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0122】
一部の実施形態において、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号13~配列番号40から選択される少なくとも1つのCDRを含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、またはその、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有するバリアント;および
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする結合タンパク質に関する。
【0123】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号1~配列番号12から選択される少なくとも1つのCDRを含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、またはその、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有するバリアント;
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号13~配列番号40から選択される少なくとも1つのCDRを含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、またはその、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有するバリアント;および
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0124】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号1~配列番号12から選択される3つのCDRを含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、またはその、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有するバリアント、
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号13~配列番号40から選択される3つのCDRを含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、またはその、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有するバリアント、および
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0125】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(それぞれCDR-1~CDR-3)を含む、第1の抗原結合ドメイン(ABD)、
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(それぞれCDR-1~CDR-3)を含む、第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0126】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ、少なくとも1つが配列番号1~配列番号6から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、および少なくとも1つが配列番号7~配列番号12から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD);
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ、少なくとも1つが配列番号13~配列番号26から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、および少なくとも1つが配列番号27~配列番号40から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD);ならびに
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0127】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ、少なくとも2つが配列番号1~配列番号6から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、および少なくとも2つが配列番号7~配列番号12から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD);
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ、少なくとも2つが配列番号13~配列番号26から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、および少なくとも2つが配列番号27~配列番号40から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD);ならびに
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0128】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号1~配列番号6から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、および配列番号7~配列番号12から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD);
(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含み、かつ配列番号13~配列番号26から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、および配列番号27~配列番号40から選択される3つの相補性決定領域を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD);ならびに
(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含むことを特徴とする。
【0129】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、第1のABDが、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ配列番号1~配列番号3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~配列番号6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含むことを特徴とする。
【0130】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第1のABDが、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことを特徴とする。
【0131】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号13~配列番号15のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含むことを特徴とする。
【0132】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号16~配列番号18のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含むことを特徴とする。
【0133】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号19~配列番号21のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含むことを特徴とする。
【0134】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号22~配列番号24のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含むことを特徴とする。
【0135】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号16、配列番号25、および配列番号26のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含むことを特徴とする。
【0136】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号27~配列番号29のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことを特徴とする。
【0137】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号30~配列番号32のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことを特徴とする。
【0138】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号33~配列番号35のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことを特徴とする。
【0139】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号36~配列番号38のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことを特徴とする。
【0140】
この第1の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、第2のABDが、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ配列番号39、配列番号31、および配列番号40のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことを特徴とする。
【0141】
一実施形態に従えば、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み:
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~配列番号3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~配列番号6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み;
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
配列番号13~配列番号15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~配列番号18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~配列番号21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~配列番号24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、配列番号25、および配列番号26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
配列番号27~配列番号29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~配列番号32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~配列番号35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~配列番号38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、配列番号31、および配列番号40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み:
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する。
【0142】
当業者であれば、上述の結合タンパク質が、1つの単一のポリペプチド鎖からなり得、または多量体の結合タンパク質であり得、よって複数(2つ以上)のポリペプチド鎖を含み得ることが容易に理解されるであろう。
【0143】
一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、多量体の結合タンパク質であり、2つの抗原結合ドメインは、少なくとも部分的に、異なるポリペプチド鎖が有する。
【0144】
場合により、結合タンパク質が複数のポリペプチド鎖(例えば、2または3つのポリペプチド鎖)を含む場合、これらのポリペプチド鎖の一部は、共有結合的に連結されている。2つのポリペプチド鎖が共有結合的に連結されている場合、共有結合リンカーは有利には、ジスルフィド架橋または他のあらゆる共有結合リンカーから選択され、あるポリペプチド鎖を別のポリペプチド鎖と架橋するペプチド結合、および/またはあるポリペプチド鎖を別のポリペプチド鎖と架橋するリンカーペプチドが挙げられる。
【0145】
一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、2つのABDを形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を含むことを特徴とし:
V1A-C1A-L3-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-L4-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-L2 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1、L2、L3、L4は、オプションの独立アミノ酸リンカーであり、これらは同一であっても異なってもよい。
【0146】
一部の実施形態において、(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、各々、少なくとも1つの同一のCH2ドメイン、例えば配列番号71のアミノ酸配列に相当するCH2ドメインを含む。
【0147】
一部の実施形態において、(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なっており、配列番号69または配列番号70のアミノ酸配列から選択されるポリペプチド配列を含み得る。
【0148】
一部の実施形態において、L1、L2、L3、およびL4の一部は、同一であっても異なってもよく、配列番号74~配列番号79から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部;例えば、配列番号74~配列番号79から選択されるアミノ酸配列の1つ、または4つを超える連続アミノ酸を含み得る。
【0149】
一部の特定の実施形態に従えば、L1、L2、L3、およびL4の一部は、同一であっても異なってもよく、免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、アミノ酸配列配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号78、および/または配列番号79から選択されるものの全てまたは一部;例えば、免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、アミノ酸配列配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号78、および/または配列番号79から選択されるものの4つ、または4つを超える連続アミノ酸を含み得る。
【0150】
一部のより特定の実施形態に従えば、L2、L3、およびL4は、同一であって異なってもよく、免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、配列配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号78、および/または配列番号79から選択されるものの全てまたは一部;例えば、免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、配列配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号78、および/または配列番号79から選択されるものの4つ、または4つを超える連続アミノ酸を含み得る。
【0151】
一部のより特定の実施形態に従えば、L2、L3、およびL4は、同一であっても異なってもよく、免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、配列配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号78、および/または配列番号79から選択されるものの全てまたは一部(例えば、免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、配列配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号78、および/または配列番号79から選択されるものの4つ、または4つを超える連続アミノ酸)を含み得、L1は、配列番号76のアミノ酸配列に相当するリンカーの全てまたは一部を含み得る。
【0152】
一部の特定の実施形態に従えば、結合タンパク質は、以下で定められる2つのABDを形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を含むことを特徴とし:
V1A-C1A-L3-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-L4-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-L2 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1、L2、L3、L4は、オプションの独立アミノ酸リンカーであり、これらは同一であっても異なってもよい。
【0153】
一実施形態において、結合タンパク質は、以下で定められる2つのABDを形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を含むことを特徴とし:
V1A-C1A-ヒンジ1-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-ヒンジ2-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-ヒンジ3 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
ヒンジ1、ヒンジ2、およびヒンジ3は、同一であるか、または異なり、免疫グロブリンヒンジ領域の全てまたは一部に相当し;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1は、アミノ酸リンカーである。
【0154】
一実施形態において、結合タンパク質は、以下で定められる2つのABDを形成する3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を含むことを特徴とし:
V1A-C1A-ヒンジ1-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-ヒンジ2-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-ヒンジ3 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
ヒンジ1、ヒンジ2、およびヒンジ3は、同一であるか、または異なり、免疫グロブリンヒンジ領域の全てまたは一部に相当し;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1は、アミノ酸リンカーである。
【0155】
結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
C1AがCLドメインを含み;
C1BがCH1ドメインを含み;
C2AがCH1ドメインを含み;
C2BがCLドメインを含む
ことを特徴とする。
【0156】
結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
C1AがCH1ドメインを含み;
C1BがCLドメインを含み;
C2AがCLドメインを含み;
C2BがCH1ドメインを含む
ことを特徴とする。
【0157】
結合タンパク質のそれらの特定の実施形態の一部に従えば、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
C1AがCH1ドメインを含み;
C1BがCLドメインを含み;
C2AがCH1ドメインを含み;
C2BがCLドメインを含む
ことを特徴とする。
【0158】
結合タンパク質のそれらの特定の実施形態の一部に従えば、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
C1AがCLドメインを含み;
C1BがCH1ドメインを含み;
C2AがCLドメインを含み;
C2BがCH1ドメインを含む
ことを特徴とする。
【0159】
一部の実施形態において、C1A、C1B、C2A、およびC2Bを形成するCLおよびCH1ドメインは、同一であっても異なってもよい。それゆえに、結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
- C1AおよびC2Aが同一であり、かつCLドメインを含むか;
- C1AおよびC2Bが同一であり、かつCLドメインを含むか;
- C1BおよびC2Aが同一であり、かつCLドメインを含むか;または
- C1BおよびC2Bが同一であり、かつCLドメインを含む
ことを特徴とする。
【0160】
結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
- C1AおよびC2Aが同一であり、かつCH1ドメインを含むか;
- C1AおよびC2Bが同一であり、かつCH1ドメインを含むか;
- C1BおよびC2Aが同一であり、かつCH1ドメインを含むか;または
- C1BおよびC2Bが同一であり、かつCH1ドメインを含む
ことを特徴とする。
【0161】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V1AはVHであり、V1BはVLである。
【0162】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V1AはVLであり、V1BはVHである。
【0163】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V2AはVHであり、V2BはVLである。
【0164】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V2AはVLであり、V2BはVHである。
【0165】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V1AはVHであり、V1BはVLであり;V2AはVHであり、V2BはVLである。
【0166】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V1AはVLであり、V1BはVHであり;V2AはVHであり、V2BはVLである。
【0167】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V1AはVHであり、V1BはVLであり;V2AはVLであり、V2BはVHである。
【0168】
ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)の一部の実施形態において:V1AはVLであり、V1BはVHであり;V2AはVLであり、V2BはVHである。
【0169】
結合タンパク質の一部の実施形態において、V1AはVL1であり、V1BはVH1であり;V2AはVH2であり、V2BはVL2である。
【0170】
結合タンパク質の一部の実施形態において、V1AはVL1であり、V1BはVH1である。
【0171】
結合タンパク質の一部の実施形態において、V2AはVH2であり、V2BはVL2である。
【0172】
結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
C1Bが免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)であり;
C2Aが免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)であり;
CLが免疫グロブリンカッパ軽鎖定常ドメイン(Cκ)に相当し;
(CH2-CH3)Aが、配列番号69のアミノ酸配列に相当し;
(CH2-CH3)Bが、配列番号70のアミノ酸配列に相当し;
L2またはヒンジ1が、配列番号74のアミノ酸配列に相当し;
L3またはヒンジ2が、配列番号75のアミノ酸配列に相当し;
L4またはヒンジ3が、配列番号77のアミノ酸配列に相当する
ことを特徴とする。
【0173】
L1は、配列番号76のアミノ酸配列に相当する。
【0174】
結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:
C1Bが免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)であり;
C2Aが免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)であり;
CLが免疫グロブリンカッパ軽鎖定常ドメイン(Cκ)に相当し;
(CH2-CH3)Aが、配列番号69のアミノ酸配列に相当し;
(CH2-CH3)Bが、配列番号70のアミノ酸配列に相当し;
ヒンジ1が、配列番号74のアミノ酸配列に相当し;
ヒンジ2が、配列番号75のアミノ酸配列に相当し;
ヒンジ3が、配列番号77のアミノ酸配列に相当し;
L1が、配列番号76のアミノ酸配列に相当する
ことを特徴とする。
【0175】
結合タンパク質の一部の実施形態において:
(a)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(b)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(c)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(d)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(e)VH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(f)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(g)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(h)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(i)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;
(j)VH1は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み;VH2は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2;配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;VL2は、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2;配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0176】
結合タンパク質の一部の実施形態において:
(a)VH1およびVL1は、配列番号41および43のアミノ酸配列にそれぞれ相当するか、もしくは配列番号42および44のアミノ酸配列にそれぞれ相当し;かつ/または
(b)VH2およびVL2は、
配列番号45および53のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号46および54のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号47および55のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号48および56のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号49および57のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号50および58のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号51および59のアミノ酸配列にそれぞれ;もしくは
配列番号52および60のアミノ酸配列にそれぞれ
相当する。
【0177】
結合タンパク質の一部の実施形態において:
(a)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号45のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号53のアミノ酸配列を含み;
(b)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み;
(c)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(d)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号48のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号56のアミノ酸配列を含み;
(e)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号49のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号57のアミノ酸配列を含み;
(f)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号50のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号58のアミノ酸配列を含み;
(g)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号51のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号59のアミノ酸配列を含み;
(h)VH1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号52のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号60のアミノ酸配列を含み;
(i)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号45のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号53のアミノ酸配列を含み;
(j)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み;
(k)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(l)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号48のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号56のアミノ酸配列を含み;
(m)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号49のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号57のアミノ酸配列を含み;
(n)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号50のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号58のアミノ酸配列を含む。
(o)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号51のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号59のアミノ酸配列を含み;
(p)VH1は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;VL1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;VH2は、配列番号52のアミノ酸配列を含み;VL2は、配列番号60のアミノ酸配列を含む。
【0178】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、少なくとも1つのジスルフィド架橋によって連結された少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む。
【0179】
結合タンパク質の一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:ポリペプチド鎖(I)が、ポリペプチド鎖(II)に共有結合的に連結されており、特に1つまたはそれ以上のジスルフィド結合によってポリペプチド(II)に共有結合的に連結されていることを特徴とする。
【0180】
結合タンパク質のそれらの特定の実施形態の一部に従えば、ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は:ポリペプチド鎖(II)が、1つまたはそれ以上のジスルフィド結合によって、ポリペプチド鎖(III)に共有結合的に連結されていることを特徴とする。
【0181】
一部の実施形態において、ポリペプチド鎖(I)および(II)は、C1Aとヒンジ2との間の少なくとも1つのジスルフィド架橋によって連結されており、かつ/またはポリペプチド鎖(II)および(III)は、ヒンジ3とC2Bとの間の少なくとも1つのジスルフィド架橋によって連結されている。
【0182】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合するFc領域またはそのバリアント(例えば、(CH2-CH3)Aまたは(CH2-CH3)Bまたはヒンジ1-(CH2-CH3)Aまたはヒンジ2-(CH2-CH3)B)が、EUナンバリングに従って、残基N297にてN結合グリコシル化を有するCH2重鎖定常ドメインを含むことを特徴とする。
【0183】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、EUナンバリングに従って、Fc領域またはそのバリアントの残基N297が、N結合グリコシル化を含むことを特徴とする。
【0184】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、Fc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合することを特徴とする。一部の実施形態において、結合タンパク質は、Fc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトCD16A(FcγRIII)ポリペプチドに結合することを特徴とする。
【0185】
一実施形態において、結合タンパク質は:
- 配列番号61のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号62のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド、もしくはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアント;または
- 配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアント;ならびに/または
- 配列番号61もしくは64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号62もしくは65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号63もしくは66のアミノ酸配列を含むポリペプチド、もしくはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアント
を含む。
【0186】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
- アミノ酸配列配列番号61を含むポリペプチド、アミノ酸配列配列番号62を含むポリペプチド、およびアミノ酸配列配列番号63を含むポリペプチド、もしくはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアント;または
- 配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド、もしくはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアント
を含む。
【0187】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号61のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列配列番号62を含むポリペプチド、および配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアントを含む。
【0188】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも80%のバリアントを含む。
【0189】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号61のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号62のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも90%のバリアントを含む。
【0190】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも90%のバリアントを含む。
【0191】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号61のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号62のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも95%のバリアントを含む。
【0192】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそれらの、配列同一性が少なくとも95%のバリアントを含む。
【0193】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号61のアミノ酸配列を含むポリペプチド(I)、配列番号62のアミノ酸配列を含むポリペプチド(II)、および配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド(III)を含む。
【0194】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
- 配列番号61のアミノ酸配列からなるポリペプチド(I);
- 配列番号62のアミノ酸配列からなるポリペプチド(II);および
- 配列番号63のアミノ酸配列からなるポリペプチド(III)
を含む。
【0195】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド(I)、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド(II)、および配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチド(III)を含む。
【0196】
一部の実施形態において、結合タンパク質は:
- 配列番号64のアミノ酸配列からなるポリペプチド(I);
- 配列番号65のアミノ酸配列からなるポリペプチド(II);および
- 配列番号66のアミノ酸配列からなるポリペプチド(III)
を含む。
【0197】
これらの実施形態の一部のバリアントにおいて、結合タンパク質は、免疫グロブリン鎖(特に、IgG型の免疫グロブリン)に由来するポリペプチド配列、および/または配列番号1~配列番号79のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含み、これらは然るに、保存的置換を有するあらゆるバリアント配列、および/またはリファレンス配列;とりわけ免疫グロブリン鎖に由来するリファレンス配列とのある程度の配列同一性パーセントを有するあらゆるバリアントを含み得る。
【0198】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、IgG型の、特に、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4型の、好ましくはIgG1型の免疫グロブリン鎖に由来するポリペプチド配列を含む。
【0199】
Fcおよび定常領域、ならびに可変領域由来の非CDRポリペプチド配列のバリアントは、本明細書中で考えられる場合、リファレンスポリペプチド配列との配列同一性が少なくとも80%である;より詳細には、リファレンスポリペプチド配列との配列同一性が少なくとも90%である;好ましくはリファレンスポリペプチド配列との配列同一性が少なくとも95%であるFcおよび定常領域、ならびに非CDRポリペプチド配列からなり得る。
【0200】
これ以外にも、ポリペプチド配列のバリアントが、CDRポリペプチド配列(例えば、VHまたはVLドメインのいずれか1つ由来のCDR1、CDR2、およびCDR3)を含む場合、当該バリアントは、そのCDRポリペプチド配列上に修飾を有しないことが本明細書中で理解されよう。
【0201】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号67~73から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも80%であるアミノ酸配列を含む。
【0202】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号67~73から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも90%であるアミノ酸配列を含む。
【0203】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号67~73から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%であるアミノ酸配列を含む。
【0204】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号69~73から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも80%であるFc領域またはそのバリアントを含む。
【0205】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号69~73から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも90%であるFc領域またはそのバリアントを含む。
【0206】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号69~73から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%であるFc領域またはそのバリアントを含む。
【0207】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号69もしくは70から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも80%であるCH2-CH3ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含み;またはこれ以外にも、配列番号71のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも80%であるCH2ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含み;またはこれ以外にも、配列番号72もしくは73のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも80%であるCH3ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含む。
【0208】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号69もしくは70から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも90%であるCH2-CH3ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含み;またはこれ以外にも、配列番号71のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも90%であるCH2ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含み;またはこれ以外にも、配列番号72もしくは73のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも90%であるCH3ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含む。
【0209】
一部の実施形態において、結合タンパク質は、配列番号69もしくは70から選択されるアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%であるCH2-CH3ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含み;またはこれ以外にも、配列番号71のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%であるCH2ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含み;またはこれ以外にも、配列番号72もしくは73のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%であるCH3ドメインを有するFc領域もしくはそのバリアントを含む。
【0210】
好ましくは、本開示の多重特異性結合タンパク質は、二重特異性結合タンパク質である。
【0211】
本開示はさらに、先で定められる結合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0212】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、結合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関し、前記結合タンパク質は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域またはそのバリアントの全てまたは一部
を含む。
【0213】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、先で定められる結合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関し、前記結合タンパク質は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含み、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み;
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部がヒトFc-γ受容体に結合する。
【0214】
好ましくは、本開示に従う結合タンパク質、およびその医薬組成物は、滅菌されており、非経口用途に適している。
【0215】
III.医療用途
開示される結合タンパク質およびその組成物は、薬剤としての使用に特に適している。そのような薬剤の調製のための方法および使用が、本明細書中でさらに開示されている。
【0216】
それゆえに、一実施形態において、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域の全てまたは一部
を含む;薬剤として用いられる結合タンパク質に関する。
【0217】
この第3の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域の全てまたは一部
を含む;癌の処置方法または予防方法に用いられる結合タンパク質に関する。
【0218】
この第3の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域の全てまたは一部
を含む;血液癌の処置方法または予防方法に用いられる結合タンパク質に関する。
【0219】
この第3の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域の全てまたは一部
を含む;骨髄異形成症候群(MDS)の、またはリンパ増殖性障害の処置方法または予防方法に用いられる結合タンパク質に関する。
【0220】
この第3の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域の全てまたは一部
を含む;急性骨髄性白血病(AML)の処置方法または予防方法に用いられる結合タンパク質に関する。
【0221】
この第3の一般的目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は:
(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリン断片結晶化可能(Fc)領域の全てまたは一部
を含む;CD64ポジティブおよびCD64ネガティブ急性骨髄性白血病(AML)の処置方法または予防方法に用いられる結合タンパク質に関する。
【0222】
一部の実施形態において、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み;
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合し;薬剤として用いられる。
【0223】
一部の実施形態において、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み;
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合し;癌の処置方法または予防方法に用いられる。
【0224】
この第3の主要な目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- アミノ酸配列配列番号1~3にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み、
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合し;血液癌の処置方法または予防方法に用いられる。
【0225】
この第3の主要な目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み、
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合し;骨髄異形成症候群(MDS)の、またはリンパ増殖性障害の処置方法または予防方法に用いられる。
【0226】
この第3の主要な目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- アミノ酸配列配列番号7~9にそれぞれ相当する、またはアミノ酸配列配列番号10~12にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み、
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31、および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合し;急性骨髄性白血病(AML)の処置方法または予防方法に用いられる。
【0227】
この第3の主要な目的の一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質に関し、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み、
(ii)第2のABDは、ヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号39、31および40のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合し;CD64ポジティブおよびCD64ネガティブ急性骨髄性白血病(AML)の処置方法または予防方法に用いられる。
【0228】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、薬剤の調製のための使用に関する。
【0229】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、薬剤としての使用に関する。
【0230】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、癌の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0231】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、その表面にてCD123を発現する腫瘍細胞によって特徴付けられる癌の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0232】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、その表面にてCD123およびCD64を発現する腫瘍細胞によって特徴付けられる癌の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0233】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、血液癌の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0234】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、その表面にてCD123を発現する腫瘍細胞によって特徴付けられる血液癌の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0235】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、その表面にてCD123およびCD64を発現する腫瘍細胞によって特徴付けられる血液癌の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0236】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、骨髄異形成症候群(MDS)の、またはリンパ増殖性障害の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0237】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、急性骨髄性白血病(AML)の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0238】
本開示はさらに、上記の結合タンパク質の、CD64ポジティブおよびCD64ネガティブ急性骨髄性白血病(AML)の処置用または予防用の薬剤の調製のための使用に関する。
【0239】
一態様において、提供されるのは、その表面にてCD123およびCD64を発現する腫瘍細胞によって特徴付けられる癌を処置する方法であって、そのような癌を有する個体に:(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を投与することを含む方法である。
【0240】
一態様において、提供されるのは、その表面にてCD64を発現する腫瘍細胞を有することに影響され易い個体においてCD123発現腫瘍(例えば血液悪性腫瘍、AML)を処置する方法であって、個体に:(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を投与することを含む方法である。
【0241】
一態様において、提供されるのは、個体において血液悪性腫瘍(例えばAML)を処置する方法であって、個体に:(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を投与することを含む方法である。
【0242】
別の態様において、提供されるのは、個体において血液悪性腫瘍(例えばAML)を処置する方法であって:(a)個体由来の悪性細胞(例えばAML細胞)がその表面にてCD64を発現するかを評価または判定することと;(b)個体が、その表面にてCD64を(例えば、予め定められたレベルにて)発現する悪性細胞(例えばAML細胞)を有すると判定されれば、個体に:(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を投与することを含む方法である。
【0243】
別の態様において、提供されるのは、個体(例えば、AMLを有する個体)において悪性細胞を枯渇させ、かつ/またはNK細胞媒介細胞傷害性をCD64発現悪性細胞に向ける方法であって、その表面にてCD64を発現する悪性細胞(例えばAML細胞)を有する個体に:(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を投与することを含む方法である。
【0244】
別の態様において、提供されるのは、NK細胞に、CD123およびCD64の双方を発現する悪性細胞を除去させる方法であって、悪性細胞(例えばAML細胞)を、NK細胞の存在下で:(i)ヒトCD123ポリペプチドに結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合するFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質と接触させることを含む方法である。
【0245】
悪性細胞(例えばAML細胞)による、例えばその表面での、CD64の発現を評価することは、適切なあらゆる方法によって実行することができる。通常、個体由来の、例えば血液サンプルまたは適切な生検由来の生体サンプルを得て評価することができ、そして腫瘍細胞におけるCD64の発現は、免疫組織化学(IHC)アッセイ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイ、例えば、定量的FACS、ELISA、イムノブロッティング(例えば、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、またはin-cellウェスタンブロッティング)、および他の免疫アッセイ等のアッセイを用いて判定することができる。そのようなアッセイに用いられる抗CD64抗体が、当該技術において入手可能である。
【0246】
IV.結合タンパク質を製造する手段
本開示の結合タンパク質をインビトロで製造する手段が、本明細書中でさらに開示される。本明細書中で用いられる「本開示の結合タンパク質」は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む多機能性結合タンパク質を指し、第1のABDはヒトCD123に特異的に結合し、第2のABDはヒトNKp46に特異的に結合し、免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する。また、これは、本開示の全体を通して記載される結合タンパク質の全ての特定の実施形態を指す。
【0247】
より詳細には、提供される手段は、第1および第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質の製造を指し得、前記ABDは各々、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLは各々、3つの相補性決定領域(CDR-1~CDR-3)を含み;
(i)第1のABDは、ヒトCD123に特異的に結合し、ならびに:
- 配列番号1~3のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号4~6のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-H1、H2、およびH3を含むVH1、ならびに
- 配列番号7~9のアミノ酸配列にそれぞれ相当する、または配列番号10~12のアミノ酸配列にそれぞれ相当するCDR-L1、L2、およびL3を含むVL1
を含み、
(ii)第2のABDはヒトNKp46に特異的に結合し、かつ:
- 配列番号13~15のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号16~18のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号19~21のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号22~24のアミノ酸配列にそれぞれ;または
配列番号16、25、および26のアミノ酸配列にそれぞれ;
相当するCDR-H1、2、および3を含むVH2、ならびに
- 配列番号27~29のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号30~32のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号33~35のアミノ酸配列にそれぞれ;
配列番号36~38のアミノ酸配列にそれぞれ;または
アミノ酸配列配列番号39、31、および40にそれぞれ;
相当するCDR-L1、2、および3を含むVL2
を含み、
免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、ヒトFc-γ受容体に結合する。
【0248】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、本開示の結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に関する。
【0249】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、本開示の結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む発現ベクターに関する。
【0250】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、本開示の核酸分子を含む単離細胞に関する。
【0251】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、本開示の発現ベクターを含む単離細胞に関する。
【0252】
特定の実施形態に従えば、細胞は、真核生物細胞、特に昆虫細胞または哺乳動物細胞である。一実施形態において、細胞は哺乳動物細胞であり、発現ベクターは哺乳動物発現ベクターである。
【0253】
それゆえに、一実施形態において、本開示は、本開示の結合タンパク質を製造する方法であって、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む結合タンパク質を製造するステップを含む方法に関する。
【0254】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、および/または(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および/または(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域もしくはそのバリアントの全てもしくは一部を含む1つまたはそれ以上の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0255】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む1つまたはそれ以上の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0256】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を含む複数の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0257】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号61または64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(ii)配列番号62または65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(iii)配列番号63または66のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む複数の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0258】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む複数の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0259】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号61または64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(ii)配列番号62または65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(iii)配列番号63または66のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む複数の組換えポリペプチドを同時発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、同時発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0260】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む複数の組換えポリペプチドを同時発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0261】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、2つの抗原結合ドメイン(ABD)である、ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する一方のABD、およびヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する他方のABDを形成する、(i)第1のポリペプチド鎖(I)、(ii)第2のポリペプチド鎖(II)、および(iii)第3のポリペプチド(III)を含む複数の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップであって、3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は、以下からなることを特徴とし:
V1A-C1A-L3-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-L4-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-L2 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1、L2、L3、L4は、オプションの独立アミノ酸リンカーであり、これらは同一であっても異なってもよい、ステップと;
(b)場合により、発現されたポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を回収するステップと
を含む方法に関する。
【0262】
一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、2つの抗原結合ドメイン(ABD)である、ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する一方のABD、およびヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する他方のABDを形成する、(i)第1のポリペプチド鎖(I)、(ii)第2のポリペプチド鎖(II)、および(iii)第3のポリペプチド(III)を含む複数の組換えポリペプチドを同時発現するのに適した条件の下で培養するステップであって、3つのポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)は、以下からなることを特徴とし:
V1A-C1A-L3-(CH2-CH3)A (I)
V1B-C1B-L4-(CH2-CH3)B-L1-V2A-C2A-L2 (II)
V2B-C2B (III)
式中:
V1AおよびV1Bは、結合対V1(VH1/VL1)を形成し;
V2AおよびV2Bは、結合対V2(VH2/VL2)を形成し;
C1AおよびC1Bは、対C1(CH1/CL)を形成し、C2AおよびC2Bは、対C2(CH1/CL)を形成し、CH1は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1であり、CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
(CH2-CH3)Aおよび(CH2-CH3)Bは、同一であるか、または異なり、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)および免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)を含み;
L1、L2、L3、L4は、オプションの独立アミノ酸リンカーであり、これらは同一であっても異なってもよい、ステップと;
(b)場合により、同時発現されたポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を回収するステップと
を含む方法に関する。
【0263】
それゆえに、一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号61または64のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖(I)、(ii)配列番号62または65のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(II)、および(iii)配列番号63または66のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド(III)を含む複数の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、発現されたポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を回収するステップと
を含む方法に関する。
【0264】
それゆえに、一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)宿主細胞を、(i)配列番号61または64のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖(I)、(ii)配列番号62または65のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(II)、および(iii)配列番号63または66のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド(III)を含む複数の組換えポリペプチドを同時発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(b)場合により、同時発現されたポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を回収するステップと
を含む方法に関する。
【0265】
本開示の結合タンパク質、例えば先で定められるものを製造する方法はさらに、前記結合タンパク質の全てまたは一部をコードする核酸、特に単離核酸(すなわち組換え核酸)を有する宿主細胞を用意する事前のステップを含んでもよい。特に、そのようなステップは、前記宿主細胞を、前記結合タンパク質の全てまたは一部をコードする核酸、特に単離核酸で形質移入することを含み得、またはこれからなり得る。
【0266】
それゆえに、一部の特定の実施形態に従えば、本開示は、結合タンパク質を製造する方法であって:
(a)前記結合タンパク質の全てまたは一部をコードする核酸を有する宿主細胞を用意するステップと;
(b)前記宿主細胞を、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、および/または(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および/または(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域もしくはそのバリアントの全てもしくは一部を含む1つまたはそれ以上の組換えポリペプチドを発現するのに適した条件の下で培養するステップと;
(c)場合により、発現された組換えポリペプチドを回収するステップと
を含む方法に関する。
【0267】
一実施形態において、本開示の結合タンパク質を製造する方法は、
(a)第1のポリペプチド鎖(I)、第2のポリペプチド鎖(II)、および第3のポリペプチド鎖(III)をコードする1つまたはそれ以上の核酸を用意するステップと;
(b)宿主細胞を、1つまたはそれ以上の核酸で形質移入するステップと;
(c)宿主細胞を、前記ポリペプチド鎖を発現する(または同時発現する)のに適した条件の下で培養するステップと;
(d)場合により、発現された(または同時発現された)ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を回収するステップと
を含む。
【0268】
一実施形態において、本開示の結合タンパク質を製造する方法は、
(a)配列番号61または64のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖(I)、配列番号62または65のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖(II)、および配列番号63または66のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖(III)をコードする1つまたはそれ以上の核酸を用意するステップと;
(b)宿主細胞を、1つまたはそれ以上の核酸で形質移入するステップと;
(c)前記ポリペプチド鎖を発現する(または同時発現する)のに適した条件の下で宿主細胞を培養するステップと;
(d)場合により、発現された(または同時発現された)ポリペプチド鎖(I)、(II)、および(III)を回収するステップと
を含む。
【0269】
一部の特定の実施形態において、本開示の結合タンパク質を製造する方法が:
(a)配列番号61または64のアミノ酸配列のいずれかに従う第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸、配列番号62または65のアミノ酸配列のいずれかに従う第2のポリペプチドをコードする第2の核酸、および配列番号63または66のアミノ酸配列のいずれかに従う第3のポリペプチド鎖をコードする第3の核酸を用意することと;
(b)1つまたはそれ以上の宿主細胞において前記第1、第2、および第3の核酸を発現させて、前記第1、第2、および第3のポリペプチド鎖を含む結合タンパク質をそれぞれ産生させることと;
(c)場合により、産生されたタンパク質をアフィニティ精製担持体、場合によりプロテインA担持体上にロードして、結合タンパク質を回収することと
を含む。
【0270】
ゆえに、本開示の結合タンパク質を製造するそのような方法は、インビトロ生成方法の一部として、1つまたはそれ以上の宿主細胞内での、上記のポリペプチド、ポリペプチド鎖、および/または領域(例えば、可変領域およびFc領域またはそのバリアント)の一部もしくは全ての生成およびアセンブリを包含し得ることが当業者によって容易に理解されよう。
【0271】
これ以外にも、本方法は、1つまたはそれ以上の宿主細胞内での上記のポリペプチド、ポリペプチド鎖、および/または領域の一部もしくは全ての生成、ならびにそれらの、宿主細胞の外側でのアセンブリを包含し得る。ゆえに、前記ポリペプチド、ポリペプチド鎖、および/または領域の接触をもたらすステップは、同時に、または順次達成することができる。
【0272】
一部の実施形態に従えば、前記領域の1つまたはそれ以上が、異なるポリペプチド鎖またはその断片内に存在し得る。
【0273】
参照として、本明細書中で実施例の節に記載される結合タンパク質の「F25」フォーマットは、4つの予測される鎖間ジスルフィド架橋を有する:
- ポリペプチド(I)のCLドメイン内のシステインを、ポリペプチド鎖(II)のヒンジ領域内の第1のシステインに連結する1つのジスルフィド架橋;
- ポリペプチド鎖(I)および(II)のヒンジ領域内の2つのシステインを連結する2つのジスルフィド架橋;
- ポリペプチド鎖(III)のCLドメインのC末端システインを、ポリペプチド鎖(II)上のC末端システインに連結する1つのジスルフィド架橋。
【0274】
一部の実施形態において、本開示は、本開示の結合タンパク質を製造する方法であって、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号1~12からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号13~40からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する、とりわけヒトCD16a Fc-γ受容体ポリペプチドに結合するFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部の接触をもたらすステップを含む方法に関する。
【0275】
一部の実施形態において、本開示は、本開示の結合タンパク質を製造する方法であって、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号1~6からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、および配列番号7~12からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する適切な可変領域であって、配列番号13~26からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、および配列番号27~40からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する、とりわけヒトCD16a Fc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部の接触をもたらすステップを含む方法に関する。
【0276】
一部の実施形態において、本開示は、本開示の結合タンパク質を製造する方法であって、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号1~6からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)、および配列番号7~12からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号13~26からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)、および配列番号27~40からなるアミノ酸配列の群から選択される少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する、とりわけヒトCD16 Fc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部の接触をもたらすステップを含む方法に関する。
【0277】
一部の実施形態において、本開示は、本開示に関連する結合タンパク質を製造する方法であって、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号1~6からなるアミノ酸配列の群から選択される3つの相補性決定領域(CDR)、および配列番号7~12からなるアミノ酸配列の群から選択される3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する可変領域であって、配列番号13~26からなるアミノ酸配列の群から選択される3つの相補性決定領域(CDR)、および配列番号27~40からなるアミノ酸配列の群から選択される3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、ならびに(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する、とりわけヒトCD16 Fc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部の接触をもたらすステップを含む方法に関する。
【0278】
一部の実施形態において、本開示は、本開示に関連する結合タンパク質を製造する方法であって、(i)ヒトCD123ポリペプチドに特異的に結合する可変領域を含む第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(ii)ヒトNKp46ポリペプチドに特異的に結合する適切な可変領域を含む第2の抗原結合ドメイン(ABD)、および(iii)ヒトFc-γ受容体ポリペプチドに結合する、とりわけヒトCD16 Fc-γ受容体ポリペプチドに結合する免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部の接触をもたらすステップを含み;前記領域の接触をもたらすステップは、アミノ酸配列配列番号61~66から選択される複数のポリペプチド鎖の接触をもたらすことを含むことを特徴とする方法に関する。
【0279】
上記の抗原結合ドメインおよび免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部が、組換え手段によって、単離細胞または細胞集団において、特に真核生物細胞において、好ましくは哺乳動物細胞または昆虫細胞において、インビトロで発現される。最も好ましくは、発現系は、哺乳動物細胞に関する。
【0280】
代替の実施形態に従えば、上記の抗原結合ドメインおよびFc領域またはそのバリアントの部分が、単離細胞の第1の集団において発現されるが、上記の抗原結合ドメインおよびFc領域またはそのバリアントの他の部分が、単離細胞の第2の集団において発現される。
【0281】
代替の実施形態に従えば、上記の抗原結合ドメインおよび免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの全ての部分が、単離細胞の同じ集団において発現されてから回収されることによって、回収ステップの間に、またはその終了後に接触がもたらされる。
【0282】
それゆえに、結合タンパク質を製造する方法は:
(a)前記第1の抗原結合ドメインおよび/または前記第2の抗原結合ドメインおよび/または免疫グロブリンFc領域もしくはそのバリアントの前記全てもしくは一部の少なくとも1つを、単離細胞または細胞集団において、最も好ましくは哺乳動物細胞において発現させるステップと;
(b)前記第1の抗原結合ドメインおよび/または前記第2の抗原結合ドメインおよび/またはFc領域もしくはそのバリアントの前記全てもしくは一部を回収するステップと
を含み得る。
【0283】
前記好ましい実施形態の1つに従えば、本開示は、本開示に関連する結合タンパク質を製造する方法に関し、これは:
(a)前記第1の抗原結合ドメインおよび/または前記第2の抗原結合ドメインおよび/またはFc領域もしくはそのバリアントの前記全てもしくは一部の少なくとも1つを、単離細胞または細胞集団において、最も好ましくは哺乳動物細胞において発現させるステップと;
(b)前記第1の抗原結合ドメインおよび/または前記第2の抗原結合ドメインおよび/またはFc領域もしくはそのバリアントの前記全てもしくは一部を回収するステップと;
(c)前記第1の抗原結合ドメインおよび/または前記第2の抗原結合ドメインおよび/またはFc領域もしくはそのバリアントの前記全てもしくは一部の接触をもたらすステップと
を含み、ステップ(b)およびステップ(c)は、同時に、または順次達成される。
【0284】
好ましくは、結合タンパク質を製造する方法は:
(a)前記第1の抗原結合ドメインおよび前記第2の抗原結合ドメインおよび免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの前記全てまたは一部を、単離細胞において発現させるステップと;
(b)前記第1の抗原結合ドメインおよび前記第2の抗原結合ドメインおよび免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの前記全てまたは一部を回収するステップと;
(c)前記第1の抗原結合ドメインおよび前記第2の抗原結合ドメインおよび免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの前記全てまたは一部の接触をもたらすステップと
を含み、ステップ(b)およびステップ(c)は同時に、または順次達成される。
【0285】
有利には、前記第1の抗原結合ドメインおよび前記第2の抗原結合ドメインおよび免疫グロブリンFc領域またはそのバリアントの前記全てまたは一部は、同じ単離細胞または細胞集団および/またはその同じ細胞培養体において発現される場合、回収ステップの間に接触がもたらされることによって、結合タンパク質が製造される。
【0286】
これ以外にも、前記第1の抗原結合ドメインおよび/または前記第2の抗原結合ドメインおよび/または免疫グロブリンFc領域もしくはそのバリアントの前記全てもしくは一部は、異なる単離細胞または細胞集団において発現される場合、回収ステップの後に接触がもたらされる。
【0287】
回収ステップは、当該技術において知られているあらゆる方法からなり得る。非包括的ではあるが、抗原結合ドメインおよびFc領域またはそのバリアントの全てまたは一部を有する発現されたポリペプチド(例えば、発現された1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖)の回収は、以下のステップ:
(b1)単離細胞またはその細胞培養体を回収するステップ、
(b2)場合により、単離細胞またはその細胞培養体を遠心分離、デプス濾過、膜濾過、限外濾過、および/またはダイアフィルトレーションするステップ
を含み得る。
【配列表フリーテキスト】
【0288】
本明細書中で用いられるタンパク質配列の表記において、左側方向は、標準的な使用および慣例に従って、アミノ末端方向(「N末端」)であり、右側方向はカルボキシル末端方向(「C末端」)である。
【0289】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【実施例】
【0290】
材料および方法
A.1.EXPI-293F(商標)細胞の一過性形質移入によるNKp46-CD123 NKCE発現。
本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質の各ポリペプチド鎖をコードする配列を、pTT-5ベクター中に、HindIII制限部位とBamHI制限部位との間に挿入した。3つのベクター(エンドトキシンフリーのmidiprepsとして製造)を用いて、PEI(37℃、5%CO2、150rpm)の存在下で、EXPI-293F細胞(Life Technologies)に同時形質移入した。細胞を用いて、培養フラスコに1ml(EXPI293培地、Gibco)あたり1×106個の細胞密度にて播種した。参照として、NKp46-CD123_F25結合タンパク質について、発明者らは、0.1μg/ml(ポリペプチド鎖I)、0.4μg/ml(ポリペプチド鎖II)、または0.8μg/ml(ポリペプチド鎖III)のDNA比率を用いた。バルプロ酸(最終濃度0.5mM)、グルコース(4g/L)、およびトリプトンN1(0.5%)を加えた。上清を、6日後に収集して、0.22μmの孔を有するStericupフィルターに通した。
【0291】
A.2.NKCEの精製。
本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質を、収集後の上清から、rProtein A Sepharose Fast Flow(GE Healthcare、リファレンス17-1279-03)を用いて精製した。続いて、Cation Ion Exchange Chromatography(CIEX)精製を、Na2HPO4/KH2PO4 50mM pH6.2リン酸バッファによるサンプルの透析後に実行した。GE Healthcareの2本の「直列」カラムHiTrap SP-HP 1mL(リファレンス17-1151-01)への注入の前に、サンプルを0.22μmデバイスにより濾過した。開始バッファおよび溶出バッファは、それぞれNa2HPO4/KH2PO4 50mM pH6.2およびNa2HPO4/KH2PO4 25mM pH6.2;1M NaClであった。溶出を、100CVでの0%~50%の線形勾配(溶出バッファ)を用いて実行した。注目するピークを、最終的に、撹拌下で4℃にて一晩、PBS1Xに対して透析した。
【0292】
A.3.生体サンプル
健康なヒトバフィコートが、Etablissement Francais du Sang(EFS、Marseille;AC-2019-3428)によって提供された。末梢単核細胞(PBMC)を、Ficoll密度勾配遠心分離を用いることによって、バフィコートから単離した。ヒトNK細胞を、StemCellまたはMiltenyiのビーズベースのネガティブ選択キットを用いることによって、PBMCから精製した。
【0293】
患者由来の急性骨髄性白血病(AML)サンプルが、Institut Paoli-Calmettes(Marseille、SA-IPH-MImAbs Contract)によって提供された。
【0294】
A.4.細胞株
急性骨髄性白血病(AML)細胞株を発現するCD123:MOLM-13およびTHP-1を、ATCCにて購入した。細胞を、完全RPMI培地(10%FBS、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、および非必須アミノ酸1×を含有するRPMI-1640)中で培養した。25mM HEPESを、THP-1細胞用の培地中に加えた。
【0295】
THP-1 CD64KO細胞およびTHP-1 CD32KO細胞を、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼにより生成した。THP-1細胞を、RPMI-1640、10%SVF、2mM L-Glu、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸中で培養した。CD64欠損THP-1細胞を生成するために、2,5.106個の細胞を、1:9のCAS9:sgRNA比にて2つのsgRNA(CD64.1:CUUGAGGUGUCAUGCGUGGA(配列番号80);CD64.2:AAGCAUCGCUACACAUCAGC(配列番号81);Synthego)でヌクレオフェクトした(Neon Transfection System、100ulチップ、1700V、20ms、1パルス)(Alt-R(商標)S.p.Cas9 Nuclease 3NLS、Integrated DNA Technology)。CD64発現の欠如を、フローサイトメトリによって監視して、細胞をソートまたはサブクローニングした。
【0296】
CD32ノックアウト(KO)THP-1細胞を生成するために、2.5.106個の細胞を、1:9のCAS9:sgRNAの比にて1組のsgRNA(CD32A:AUGUAUGUCCCAGAAACCUG;CD32B:AAGCAUAUGACCCCAAGGCU(Integrated DNA Technologies))でヌクレオフェクトした(Neon Transfection System、100μLチップ、1700V、20ms、1パルス)(Alt-R(商標)S.p.Cas9 Nuclease 3NLS、Integrated DNA Technology)。THP-1 CD32KO細胞のみセルソートした。セルソートの後に、CD32発現の不在を、フローサイトメトリによって監視した。
【0297】
A.5.NK細胞ベースの細胞傷害性アッセイ
患者サンプル由来のAMLブラストのために、標的細胞に、51Cr(MOLM-13、THP-1またはTHP-1 CD64KO、THP-1 CD32KO細胞について)を、またはCalceinAM(Life technologies、ref:C3100MPまたは均等物)をロードした。健康なドナー由来の試験抗体、標識化標的細胞、およびフレッシュな、または一晩静置したヒトNK細胞を、10:1(E:T)の比率を得るように、丸底96ウェルプレートの各ウェル内に連続して加えた。4hの同時インキュベーションの後に、上清を、Lumaplate(51Crについて)中に、または平底培養プレート(CalceinAMについて)中に移した。
【0298】
51Crベースの細胞傷害性アッセイについて、死んだ標的細胞から放出される51Crを、TopCount NXT(商標)を用いてドーズした(Microplate ScintillationおよびLuminescence Counter;Perkin Elmer)。放射活性を、ウェル毎に60s間のγ-放射をカウントすることによって測定して、これら結果を、cpm=カウント毎分で表した。
【0299】
Calceinベースの細胞傷害性アッセイについて、死んだ標的細胞から放出されるCalceinAMを、相対蛍光ユニット(RFU)をLuminoter(EnSpire(登録商標)Multimode Plate Reader(Perkinelmer):λ=495nmでの励起後のλ=516nmでの蛍光放射)により測定することによってドーズした。
【0300】
分析のために、比溶解パーセントを、以下の式を用いて算出した:
【数1】
ER=実験上の放出、SR=自然発生的放出、MR=最大放出
【0301】
各抗体のEC50を、Graphpad Prism Softwareを用いることによって、適切な非線形回帰曲線(「log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4パラメータ)」モデルの選択)を描くことにより求めた。
【0302】
AML細胞のフェノタイピング
患者血液に由来するAMLサンプル上での、そしてAML細胞株上でのCD32、CD64、およびCD123の発現を、抗ヒトCD33-BB515(BD Biosciences 564588 Clone WM53)、抗ヒトCD45-Viogreen(Miltenyi 130-096-906 Clone 5B1)、抗ヒトCD123-AF647(BD Biosciences 563599 Clone 9F5)、抗ヒトCD32-PE(Beckman Coulter IM1935 Clone 2E1)、抗ヒトCD64-PE(Beckman Coulter IM3601U Clone 22)、抗ヒトCD123-PE(Biolegend 306006 Clone 6H6)、同族アイソタイプ対照抗体mIgG1-PE(IC-1;BD Biosciences 555749 Clone MOPC-21)、およびmIgG2a-PE(IC-2a;Beckman Coulter A09142 Clone 7T4-1F5)を用いて、フローサイトメトリによって制御した。標的細胞を、染色バッファ(SB)内に1/10eにて希釈した正常なマウス血清で飽和させてから、色素にカップリングした抗体と混合した。細胞を、染色後30分の間にH2O中に1/10eにて希釈したBD Cellfix中で固定して、FACS Canto IIによるフローサイトメトリによって分析した。FSC-A、FSC-H、SSC-A、SSC-H、FL2-A、FL4-AおよびFL7-AまたはFSC-A、FSC-H、SSC-A、SSC-H、FL1-A、FL2-A、FL3-A、FL5-A、およびFL8-A(患者の血液に由来するAMLサンプルについて)パラメータを記録して、分析をFlowJoソフトウェアにより行った。フェノタイピング結果を、
図6A、
図6B、および
図14Bに示す。
【0303】
A.6.AMLサンプルによるNK細胞脱顆粒アッセイ
図7にあるようにNK細胞活性化を試験するために、AML患者に由来する試験抗体、AMLブラスト、および自己由来NK細胞を、丸底96ウェルプレートの各ウェル内に連続して加えた。本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質との一晩の同時インキュベーションの後に、抗ヒトCD107aおよびCD107b抗体を、各ウェル内に加え4時間おいた。続いて、細胞を洗浄して、以下の混合物:生存能力、APCカップリング抗ヒトCD45、BB515カップリング抗ヒトCD33、PeCy7カップリング抗ヒトCD56、BV510カップリング抗ヒトCD3抗体のマーカーにより染色した。続いて、細胞を洗浄して、固定して、フローサイトメトリによって分析した。得られたデータを、Flowjoソフトウェアを用いて、生きているCD45
+CD33
-CD56
+CD3
-細胞として特定したNK細胞上でのCD107の発現によりNK細胞脱顆粒を分析することによって分析した。
【0304】
図17にあるようにNKp46-CD123_F25結合タンパク質を介してMOLM-13細胞に向かうNK細胞活性化およびサイトカイン/ケモカイン生成を試験するために、フローサイトメトリ分析を、以下の抗体マーカー:CD69、CD107a/b、IFNα、TNFα、MIP1βを用いて実行した。
【0305】
最初に、3つの別々のドナー由来の精製初代ヒトNK細胞を、1:1の比率でMOLM-13細胞あり、またはなしで、37℃にて4時間、NKp46-CD123_F25または対照(NKp46-IC_F25、および抗体なし)の濃度上昇の存在下で同時インキュベートした(50,000個の細胞/ウェルにて播種;U底96ウェルプレート)。付随して、BD GolgiSTOP(商標)を、実験上のサンプルおよび対照サンプルに、各ウェル内に1/6000の最終希釈にて加えた。NK細胞活性化のポジティブ対照を、ウェル単位で50,000個の静止NK細胞に加えたPMAの最終125ng/mLおよびIONOの最終1μg/mLを用いることによって実行した(データ示さず)。
【0306】
4hrのインキュベーション後に、細胞を染色バッファ(0.2%BSA、2mM EDTA、および0.02%アジ化ナトリウム入りPBS)中で洗浄して、以下の細胞外抗体混合物:抗ヒトCD3-Pacific Blue、抗ヒトCD56-Pe-Vio770、抗ヒトCD69-FITC、抗ヒトCD107a(LAMP-1)-APC、抗ヒトCD107b-APCにより、メーカーの推奨インキュベーションおよび希釈率に従って染色した。固定および透過化処理ステップの後に、細胞内染色を、以下の細胞内抗体混合物:抗ヒトIFNγ-BV605、抗ヒトTNFα-BUV395、および抗ヒトMIP1β-PEを用いて実行した。凝集体を除去するために、抗体混合物を、16,000gにて4℃にて10分間遠心分離して、洗浄して、サンプルバッファ中に再懸濁させた。
【0307】
フローサイトメトリを、FSC-A、FSC-H、SSC-A、SSC-H、FL-1、FL-3、FL-6、FL-7、FL-9、FL-13、およびFL-16パラメータを測定するBD FACSDiva取得ソフトウェアを備えるLSR Fortessa(商標)X-20により実行した。全てのデータを、FlowJoソフトウェアにより分析した。
【0308】
NK細胞サンプルのマーカーパーセントを、GraphPadプリズムを用いて行った。活性化値のトップは、観察最大活性化に相当した。半数効果濃度(EC
50)値を、以下の式に対応する4パラメータロジスティック非線形回帰モデルを用いて算出した:
【数2】
【0309】
活性化の算出ボトム、活性化の算出トップ、勾配、および95%信頼区間(CI)値を、同じモデルを用いてEC50として算出した。
【0310】
これらのパラメータを、活性化マーカー(CD69、CD107a/b)、サイトカイン(IFNα、TNFα)、およびケモカイン(MIP1β)毎に算出した。
【0311】
A.7.ヒト組換えタンパク質、クローニング、生成、および精製(SPR)
ヒトNKp46(Gln22-Asn255、NCBIリファレンス:NM_004829.5)の細胞外ドメイン(ECD)をコードする配列を、SLX192ベクター(Selexis)中に、HindIII制限部位とXbaI制限部位との間に挿入した。C末端6xHisタグを、精製用に加えた。以下のプライマーを、ヒトPBMCのPCRに用いた:5’TACGACTCACAAGCTTGCCGCCACCATGTCTTCCACACTCCCTGC 3’および5’CCGCCCCGACTCTAGATCAATGGTGATGGTGGTGATGATTCTGGGCAGTGTGATCCC 3’。アンプリコンの配列をチェックした。続いて、ベクターを用いて、CHO細胞株に形質移入して、タンパク質を生成するクローンを選択した。タンパク質を、培養上清からNi-NTAビーズ(Qiagen、#1018244)により精製して、S200サイズ排除クロマトグラフィを実行して、表面プラスモン共鳴(SPR)による結合動力学の特性評価の前に、凝集体の除去を確実にした。組換えヒトNKp46由来のポリペプチド配列は、本明細書中で配列番号84として報告されている;これは、NKp46の細胞外ドメインの一部を含む。
【0312】
カニクイザルNKp46(Gln17-Asn254、NP_001271509.1)のECDをコードする配列を、SLX192ベクター中に、HindIII制限部位とXbaI制限部位との間にクローニングした。C末端Flag-M2タグを、精製用に加えた。カニクイザルPBMC由来の予想配列を増幅するのに用いたプライマーは:5’TACGACTCACAAGCTTGCCGCCACCATGTCTTCCACACTCCGTGC 3’および5’CCGCCCCGACTCTAGATCACTTGTCATCGTCATCTTTGTAATCATTCTGGGCAGTGTGGTCC 3’であった。配列確認の後に、ベクターを用いて、CHO-K1SV細胞株に形質移入して、生成細胞クローンを選択した。組換えカニクイザルNKp46-FlagM2タンパク質配列は、本明細書中で配列番号85として報告されている;これは、NKp46(GenBankナンバー:CAC41080.1)の細胞外ドメインの一部を含む。第1の3つのバッチ(150602CCeバッチ1、150618CCeバッチ2、および150715CCeバッチ3)を、M2アフィニティクロマトグラフィによって精製した。ビーズを、組換えタンパク質を含有する上清と一晩インキュベートした。続いて、ビーズをPBS1×で洗浄して、溶出を、PBS1×中150ng/μlの溶出ペプチドにより実行した。続いて、タンパク質を、PBS1×に対して透析した。次のバッチ(161003CDeバッチ1および161116CDeバッチ2)を、抗NKp46抗体HUX1-M-H46-17E1をAminoLink Coupling Resinに、メーカーの説明書(GE Healthcare、#20381、バッチQB213815)に従ってカップリングすることによって、アフィニティクロマトグラフィによって精製した。続いて、ビーズを、組換えタンパク質を含有する上清と一晩インキュベートした。続いて、ビーズを、PBS1×で洗浄して、溶出を、グリシン0.1M pH2.5を用いて実行した。続いて、タンパク質を、TBSバッファpH7.5に対して透析して、濃縮して、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラムにより分取サイズ排除クロマトグラフィを実行した。
【0313】
ACRO Biosystems(カタログno.ILA-H52H6)、組換えヒトFcガンマRIIIA/CD16a(V176)(Biotechne、カタログno.4325-FC)、および組換えヒトFcガンマRIIIA/CD16a(V176F)(Biotechne、カタログno.8894-FC)由来の組換えヒトCD123を、さらに用いた。
【0314】
A.8.表面プラスモン共鳴による多重特異性結合タンパク質の抗原結合特性の決定のための分析手順。
Biacore T200機器(Cytiva、Uppsala、カタログNo.28975001)を、Series S CM5センサーチップ(Cytiva、Uppsala、カタログNo.29149603)と共に用いた。
【0315】
NKp46およびCD123による結合動力学測定のために、HBS-EP+バッファ(Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR1006-69)を、100mL 10×HBS-EP+バッファを精製水900mLと混合することによって調製した。二重特異性Abサンプルの親和性捕捉を、ヒト抗体捕捉キット(Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR1008-39)を用いて達成した。抗Fc捕捉抗体を、ランニングバッファ中に1:20にて希釈して、CM5チップ(Cytiva、Uppsala、カタログNo.29149603)に、アミンカップリングキット(Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR-100-50)を用いて、およそ8000応答ユニット(RU)を産出するための標準的なアミンカップリングを用いてカップリングした。HBS-EP+アッセイバッファ中のヒトNKp46(Innate Pharma)またはヒトCD123(ACRO Biosystems)の7つの段階1:1希釈を、1.56nmol/L、3.13nmol/L、6.25nmol/L、12.5nmol/L、25nmol/L、50nmol/L、および100nmol/Lの濃度に調製した。二重特異性抗体を、HBS-EP+バッファにより0.06μg/mLの濃度に希釈して、この濃度にて実験に用いた。抗体を、10μL/分の流量にて90秒間捕捉して、およそ30RUの最大応答(Rmax)値を得た。測定を、双方の抗原についてのマルチサイクル動力学実験において実行した。各マルチサイクル実験において、抗体を、シリーズS CM5センサーチップ(ヒト抗体捕捉キット、Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR1008-39)上に固定した抗ヒトFc抗体を介して捕捉した。HBS-EP+バッファ中に希釈した、ヒトおよびカニクイザルNKp46(Innate Pharma)またはヒトCD123(ACRO Biosystems)を、1.56nmol/Lから100nmol/Lまで1:1の希釈系列で、30μL/分の流量にて240秒間、続いて1200秒の解離相を注入した。全ての分析物濃度を、ダブルリファレンシングのために、複数のバッファブランクと共に二反復で走らせた。捕捉表面の再生を、再生溶液(3mol/L MgCl2)により、30μL/分にて60秒間実行した。結合動力学データを、他の全ての抗体について、質量輸送制限のある1:1の結合モデルを用いて、Biacore T200 Evaluation Softwareバージョン3.0(Cytiva、Uppsala)により評価した。
【0316】
結合親和性について、CD16a、HBS-EP+バッファ(Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR1006-69)による測定を、100mL 10×HBS-EP+バッファを精製水900mLと混合することによって準備した。ヒトCD16aタンパク質の親和性捕捉を、His捕捉キット(Cytiva、Uppsala、カタログNo.28995056)を用いて達成した。抗His捕捉抗体を、ランニングバッファ中で1:20に希釈して、CM5チップ(Cytiva、Uppsala、カタログNo.29149603)に、標準的なアミンカップリングを用いてカップリングして、およそ8000の応答ユニット(RU)を、アミンカップリングキット(Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR-100-50)を用いて得た。HBS-EP+アッセイバッファ中での二重特異性抗体の10段階1:1希釈を、5.8nmol/L、11.7nmol/L、23.4nmol/L、46.8nmol/L、93.75nmol/L、187.5nmol/L、375nmol/L、750nmol/L、1500nmol/L、および3000nmol/Lの濃度に調製した。CD16a(V/F)タンパク質を、HBS-EP+バッファにより0.1ng/mLの濃度に希釈して、実験においてこの濃度にて用いた。CD16a(V176)およびCD16a(V176F)を、それぞれフローセル2および4上に30秒間、10μL/分の流量にて捕捉して、およそ30RUの最大応答(Rmax)値を得た。測定を、マルチサイクル動力学実験により実行した。各マルチサイクル実験では、CD16aを、シリーズS CM5センサーチップ上に固定した抗His抗体を介して捕捉した(ヒト抗体捕捉キット、Cytiva、Uppsala、カタログNo.BR1008-39)。HBS-EP+バッファ中に希釈した二重特異性抗体を、5.8nmol/Lから3000nmol/Lまで1:1の希釈系列で、流量30μL/分にて120秒間、続いて120秒の解離相を注入した。全ての分析物濃度を、ダブルリファレンシングのために、複数のバッファブランクと共に二反復で走らせた。捕捉表面の再生を、再生溶液(10mmol/Lグリシン、pH1.5)の2回の連続注入により、30μL/分にて30秒間実行した。ヒトCD16aに対する二重特異性抗体の結合親和性(KD値)を、測定した抗体濃度について、SPR応答の定常状態適合を用いて、Biacore T200 Evaluation Softwareバージョン3.0(Cytiva、Uppsala)により評価した。
【0317】
A.9.SCIDマウスにおける注射したMOLM-13ヒトAMLに対する抗腫瘍活性。
NKp46-CD123_F25のmuNKp46-huCD123_F25マウス代用バージョンの有効性を、散在性ヒトMOLM-13細胞を移植した重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて評価した。この代用物は、NKp46タンパク質を標的とするアームについて、NKp46-CD123_F25と異なり(ヒトタンパク質の代わりにマウスタンパク質を標的とするからである)、そして他のアーム(全ての活性化マウスFcγRに結合して、マウスエフェクタ細胞を動員し、かつマウスNK細胞によりADCCを誘導することができるヒトCD123結合アームおよびヒトIgG1コンピテントFcドメイン)について、NKp46-CD123_F25に類似する。
【0318】
muNKp46-huCD123_F25活性を、マウスFcγRに結合し、かつマウスエフェクタ細胞を動員することができる抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス-1)と比較した。また、muNKp46-huCD123_F25活性を、muNKp46のアイソタイプ対照結合、およびhuCD123に結合しないマウスFcγR(muNKp46-IC)と比較した。
【0319】
マウスに、0日目に腫瘍細胞(5×106個)を静脈内接種した。処置を、腫瘍移植後1日目に、腹腔内経路によって施した。
【0320】
第1の実験(
図8)において、マウスを、腫瘍移植後1日目に、4つの群(処置群においてn=10頭のマウス、そして対照群において20頭のマウス)にランダム化した。muNKp46-huCD123_F25を、1日目の内部非経口投与の後に、0.5、0.25、および0.05mg/kgにて投与した。
【0321】
第2の実験(
図18)において、muNKp46-ICを、0.5mg/kgにて投与した。muNKp46-huCD123_F25およびリファレンス-1を、5、0.5、0.25、および0.05mg/kgにて投与した。対照群は、未処置のままにした。
【0322】
第3の実験(
図19)において、マウスを4つの群にランダム化した(未処置の対照群;未処置の対照群+抗アシアロGM1;NKCE対照;またはNKCE+抗アシアロGM1)。腫瘍移植の1日前(-1日目)に、そして腫瘍移植後5日目に、実験群は、NK細胞枯渇抗体、抗アシアロGM1を受けた。処置(ビヒクルまたはNKCE)を、腫瘍移植後1日目に、0.5mg/kgの単回用量にて腹膜内に施した。NKCEは、Nkp46-CD123_F25、muNKp46-IC、huCD123に結合するアイソタイプ対照抗体、およびマウスFcγR(マウスNKp46ではない)(IC-huCD123)を含んだ。
【0323】
マウスをチェックして、有害臨床反応に注目した。個々のマウスを毎日、実験の終わり(70日目)まで秤量した。瀕死に至った場合に、動物が苦しむのを回避するための予め定義した基準に従って、マウスを安楽死させた。重要と考えられる、病理に関連する臨床徴候は、四肢麻痺、腹水、触診可能な内部腫瘍塊、病的状態、または20%以上の体重減少である。
【0324】
一次効力エンドポイントは、1日のメジアン生存期間(MST)、寿命延長パーセント(ILS%)、および長期生存者率であった。
【0325】
各マウスの死亡(もしあれば)の個々の日を報告した。MSTを群毎に求めて、比率ILSを算出して、パーセンテージとして表した:
ILS%=100×(T-C)/C
式中、T=処置群のMST、C=対照群のMST。
【0326】
この例の目的で、用量は、ILS%が25%を超える場合には治療的に活性であり、ILS%が50%を超える場合には高度に活性であるとみなした(Johnson JI、Decker S、Zaharevitz D、Rubinstein LV、Venditti JM、Schepartz S、Kalyandrug Sら「Relationships between drug activity in NCI preclinical in vitro and in vivo models and early clinical trials.」Br.J.Cancer.2001年5月;84巻(10号):1424~31頁)。
【0327】
長期生存者率は、群内のマウスの総数に基づいてパーセンテージで表した、生存期間が対照群のMSTの2倍以上のマウスの数と定められる。
【0328】
A.10.非ヒト霊長類(NHP)における抗腫瘍活性
サルにおいて、カニクイザル血液サンプル、好塩基球のフェノタイピングおよび数、ならびに総CD123免疫細胞を評価するのに、有資格のフローサイトメトリーパネルを用いた。パネルを、抗原CD45(クローンD058-1283)、CD14(クローンREA599)、CD203c(クローンNP4D6)、CD193(クローン5E8)、IgE(クローンREA1049)、CD123(クローンCD123)、CD33(クローンAC104.3E3)、および生存能力マーカーZombie Nir(Biolegend 423106)に対する抗体によって構成した。3K-EDTA抗凝固処理真空サンプリング中に収集した全血サンプル100μLを、溶解溶液(Biocytex CP025)と10分間インキュベートしてから、DPBS(Sigma D8537)との室温にて5分間の300gでの遠心分離ステップを続けた。再懸濁した細胞を、抗体および生存能力マーカーにより室温にて10分間染色した。遠心分離の第3のステップを行って、非固定抗体を除去した。細胞を、固定溶液(Biocytex CP026)250μL中に再懸濁させて、室温にて1時間インキュベートした。Flowカウントビーズ(Beckman A91346)100μLを、細胞チューブ中に加えて、3種のレーザーおよび10種の色を備えたGallios Beckman coulter機器により得た。
【0329】
A.11.CD123+正常血球、およびヒト末梢血単核細胞(PBMC)における関連するサイトカイン放出に及ぼすインビトロ効果
健康なヒトドナー(N=10)由来のPBMCを、96ウェルU底プレート(Ultra low binding Costar ref#CLS7007)において190μL完全培養培地内に播種して(1ウェルあたり500,000個の細胞)、CD123-NKCE、IC-NKCE対照、およびCD123-TCE分子の段階希釈液と、5%CO2の存在下で37℃にて20時間インキュベートした。TCRαβネガティブ、CD14ネガティブ、およびIgE受容体ポジティブ生細胞と定義した好塩基球集団をフローサイトメトリによって分析して、上清中に放出されるサイトカインの絶対濃度を、メソスケール発見(MSD)アッセイによって分析した。
【0330】
フローサイトメトリアッセイ
細胞ペレットを、1μL FcRブロッキング試薬、ヒト(Miltenyi Ref#130-059-901)を入れて完成させた低温の50μL Stain Buffer(AutoMACS Running Buffer Miltenyi Ref#130-091-221)中に懸濁させた。PBMCサブセット特異的標識化抗体および生存能力試薬の混合液を、供給会社の推奨に従って、PBMC懸濁液中に加えた。Fluorescence Minus One(FMO)対照として、PBMCを、各標識化抗体がその対応するアイソタイプ対照によって置換されている同じ混合液により標識化することによって、更なるポイントを実行した。混合抗体を有する細胞を、暗所において4℃にて1時間インキュベートした。続いて、細胞懸濁液を、300gで4℃にて5分間、2回遠心分離して、上清を破棄して、Stainバッファ200μLを、各遠心分離の間に加えた。細胞を、MACSQuant(登録商標)Analyser、Miltenyiフローサイトメータを用いて分析した。フローサイトメータからエクスポートされる生データ(fcs-ファイル)の分析を、VenturiOne(登録商標)ソフトウェア(AppliedCytometry inc.)を用いて実行した。集団を、前方散乱/側方散乱ドットプロットからゲーティングして、単一細胞および更なる生細胞を、Iodure Propidium生存ネガティブゲートによりゲーティングした。ゲートは、FMO対照に従ってセットした。
【0331】
サイトカインMSDアッセイ
細胞上清を収集して、購入者推奨に従って、MSDバッファ中に希釈した。希釈したサンプルまたは予め希釈したマルチ分析物キャリブレータサンプルを、キット内に供給される予めコーティングされたプレート内に加えた。電気化学発光標識(MSD SULFO-TAG)とコンジュゲートした検出抗体の溶液を加えた後に、プレートを室温にて2時間インキュベートした。続いて、電気化学発光(ECL)にとって適切な化学環境をもたらすMSDバッファを加えて、プレートをMSD機器中にロードした。そこでは、プレート電極に印加される電圧により、捕捉された標識が発光する。機器は、発光の強度を測定して、サンプル内の各分析物の定量的測定を実現する。
【0332】
MSD機器からエクスポートされる生データの分析を、Excelソフトウェアを用いて実行した。IL-6、IL-1b、IFNγ、およびTNFαの濃度を、ECLシグナルから、1/Y2で重み付けした4-パラメータロジスティックモデルにより確立した較正曲線にバックフィットさせる(back-fitting)ことによって求めた。
【0333】
A.12.非ヒト霊長類(NHP)血漿におけるサイトカイン放出の決定
Mesoscale(MSD)Proinflammatoryパネル1(NHP)キット(ref.K15056D)を用いるECLIA(Electrochemoluminescence Assay)方法を開発して、サルK3-EDTA血漿におけるIL-2、IFN-γ、IL-6、およびIL-10を定量化することを実証した。これは、ワーキング電極表面上に固定された抗ヒトIL-2、IL-6、IL10、およびIFN-γ抗体、ならびにルテニウム抗ヒトIL-2、IL-6、IL-10、およびIFN-γ抗体を用いる定量的サンドイッチ酵素免疫アッセイである。希釈サンプル50.0μLを、ヒト抗ヒトIL-2、IL-6、IL-10、およびIFN-γ抗体でコーティングした96マイクロプレートウェル中に分配した。室温での一晩のインキュベーション期間、および3ステップの洗浄の後に、sulfotagコンジュゲート抗ヒトIL-2、IL-6、IL-10、およびIFN-γ抗体25.0μLを加えた。3ステップの洗浄後、電気化学発光にとって適切な化学環境をもたらすリードバッファ(2×)150μLを加えた。機器は、発光の強度を測定して、サンプルにおける分析物の定量的測定を実現した。分析を、二反復で実行した。
【0334】
非ヒト霊長類における薬物動態学および薬力学研究
投与用のCD123NKCE溶液を、ビヒクル中でのストック溶液の希釈によって即座に調製して、投与の前と間に室温にて維持した。吸着を回避するために、ポリプロピレン、ポリカーボネート、またはPETGコンテナを希釈に用いて、当該コンテナを、使用前に、100ppmのPS80を含有するNaCl 0.9%の溶液でコーティングした。静脈内投与(シリンジ/翼付針)毎に用いる管を、100ppmのPS80を含有するNaCl 0.9%の溶液で、連続フラッシュによってコーティングした。
【0335】
動物を、0.1mg/kg/投与にて投与した雄についてM1およびM2、0.1mg/kg/投与にて投与した雌についてF3およびF4、3mg/kg/投与にて投与した雄についてM5およびM6、そして0.1mg/kg/投与にて投与した雌についてF7およびF8とそれぞれ特定した。投与を、1、8、15、および22日目に実行した。遅発性の潜在的発現毒性および/または潜在的毒性の可逆性を、最後(4回目)の投与後の1週目(29日目)および最長4週目(50日目)に評価した。M2、F4、M6、およびF8を、29日目に安楽死させて、検死を行った。
【0336】
パラメータを、処置した動物毎に評価した:
-血液において
予備試験(投与前)に
注入の開始から1.5、5、24、72時間後の1日目
注入の開始から24時間後の8日目
注入の開始から1.5および24時間後の15日目
注入の開始から24時間後の22日目
29日目(最後の投与の1週後;全ての動物)
50日目(最後の投与の4週後;回復動物)。
-骨髄において
予備試験(投与前)
9日目
29日目(最後の投与の1週後;全ての動物)
50日目(最後の投与の4週後;回復動物)
【0337】
血液サンプル(連続サンプリング)を、上腕静脈または伏在静脈からK3-EDTAポリプロピレンチューブ中に回収した。血液サンプルを、湿った氷上に置いて、遠心分離した。得た血漿サンプルを、その分析まで-80℃にて凍結した。CD123-NKCE濃度を、血漿中で、CD123-NKCEを、ビオチンカップリングCD123組換えタンパク質によって捕捉して、サル吸収alexa-ヤギ抗ヒトIgGによって明らかにする(定量の下限(LLOQ)値が0.250ng/mLである)専用の免疫アッセイ方法を用いて求めた。
【0338】
結果
B.1.NKp46-CD123_F25結合タンパク質
F25フォーマット、またはそのバリアントは、
図1および2において示されており、3つのポリペプチド鎖を含む。NKp46-CD123_F25結合タンパク質は、ヒトCD123結合ドメインおよびヒトNKp46結合ドメインを含む3つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ、ポリペプチド配列配列番号1、2、3、7、8、9および配列番号13、14、15、27、28、29を含む超可変領域を含む。
【0339】
各ポリペプチド鎖(I、II、およびIII)が、アセンブリの前に細胞内で切断されるシグナル(または「リーダー」)配列により発現される。
【0340】
第1のポリペプチド鎖(または「ポリペプチド鎖(I)」もしくは「断片I」もしくは「断片1」)は、N末端からC末端まで、配列番号43のアミノ配列に相当するVL(CD123結合)ドメイン、ヒトIgG1に由来する天然のCK(またはCκ)ドメイン、修飾ヒトIgG1ヒンジ領域(「DKTHTCPPCP」)を含み、残基D(EUナンバリングに従う位置)は、ヒトCKドメインのC末端システインに連結されている。Fc領域またはそのバリアントはさらに、CH2-CH3ドメインを含む天然のヒトIgG1抗体に由来する。ジスルフィド架橋は潜在的に、天然のシステインを有する第2のポリペプチド鎖(「鎖II」)と細胞外で形成される。
【0341】
第2のポリペプチド鎖(「ポリペプチド鎖(II)」または「断片II」または「断片2」)は、N末端からC末端まで、配列番号41のアミノ配列に相当するVH(CD123結合)ドメイン、ヒトIgG1に由来する天然のCH1ドメイン、非修飾ヒトIgG1ヒンジ領域(「EPKSCDKTHTCPPCP」)、およびCH2-CH3ドメインを含むヒトIgG1に由来するFc領域またはそのバリアントを含み、CH3ドメインの最後の残基は除去されて、小さな4つのアミノ酸「STGS」リンカー、配列番号45のアミノ配列に相当するVH(NKp46結合)ドメイン、第1のポリペプチド鎖のCH1ドメインと同一である第2の天然のCH1ドメイン、およびヒトIgG1由来のC末端ヒンジ配列によって置換されている。
【0342】
第3のポリペプチド鎖(「ポリペプチド鎖(III)」または「断片III」または「断片3」)は、配列番号53のアミノ配列に相当するVL(NKp46結合)ドメイン、およびシステインで終了したCKドメインを含む。
【0343】
本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質のFc部分のCH2ドメインは、CD16(FcγR)への結合を確実にするために、位置N297にてグリコシル化されている。
【0344】
全体として、NKp46-CD123_F25結合タンパク質は、4つの予測される鎖間ジスルフィド架橋:
(i)第1のポリペプチド鎖のC末端CKシステインを、第2のポリペプチド鎖の第1のヒンジシステインに連結する1つのジスルフィド架橋;
(ii)第1および第2のポリペプチド鎖のヒンジ領域の2つのシステインにより形成された2つのジスルフィド架橋;
(iii)第2のポリペプチド鎖の最後のC末端システインを、第2のポリペプチド鎖のC末端CH1ドメインに連結する1つのジスルフィド架橋
を含む。
【0345】
B3~B11節に示した、結合、インビトロ活性、エクスビボ活性、およびインビボ活性、ならびに安全性プロファイルに関連する結果を、ポリペプチド(I)、(II)、および(III)を含む本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質により得た;ポリペプチド(I)は、配列番号64のアミノ酸配列からなり、ポリペプチド(II)は、配列番号65のアミノ酸配列からなり、そしてポリペプチド(III)は、配列番号66のアミノ酸配列からなる。
【0346】
B.3.SPRによってヒトFc-γ受容体に結合しているNKp46-CD123_F25結合タンパク質構築体の特性評価
NKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)を、CD64、およびCD16a受容体の2つのバリアントを含む一セットのヒトFcγ受容体に向かう親和性を確認するために、SPRによって試験した。
【0347】
【0348】
ヒトCD16a-V受容体またはCD16aVは、天然の抗体のFc領域に結合するCD16ヒト受容体の断片を含み、抗体依存性細胞傷害性を媒介し、かつ位置158にバリン(V)を有するポリペプチド構築体を指し、これはまた、アロタイプCD16a V158として文献に報告されている。
【0349】
ヒトCD16a-F受容体またはCD16aFは、天然の抗体のFc領域に結合するCD16ヒト受容体の断片を含み、抗体依存性細胞傷害性を媒介し、かつ位置158にフェニルアラニン(F)を有するポリペプチド構築体を指し、これはまた、アロタイプCD16a F158として文献に報告されている。
【0350】
この実験の結びは、NKp46-CD123_F25を構成する定常領域が、ヒトCD16およびヒトCD64が挙げられる複数のヒトFc-γ受容体に向かう親和性を保持することである。
【0351】
B.4.SPRによってNKp46およびCD123に結合しているNKp46-CD123_F25結合タンパク質の特性評価
同じ実験を、NKp46のヒトおよびサルバージョンで実行した。結果を、この後の2つの表に要約する(表1および表2)。
【0352】
【0353】
【0354】
この実験の結びは、本開示(NKp46-CD123_F25)に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質が、NKp46標的およびCD123標的に対する親和性を保持することであり、これは、ヒトおよびサルアイソフォームの双方に当て嵌る。
【0355】
B.5.NKp46-CD123_F25結合タンパク質は、AML細胞傷害性を誘導する
図4は、MOLM-13 AML細胞に対するインビトロ細胞傷害性を報告する(
図4A)。同じ実験を、標的細胞として、エクスビボ患者ブラストサンプルに対して再現した(
図4B)。細胞傷害性を、実験において、試験したNKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)濃度の関数として評価した。
【0356】
全体として、実験は、NKp46-CD123_F25が、インビトロおよびエクスビボ試験サンプルの双方において用量依存性細胞傷害性を担うことを示す。類似した濃度について、観察された細胞傷害性はまた、NKp46に対する特異性のないADCC増強抗CD123抗体(リファレンス-1)により観察されるものよりも高い。逆に言えば、NKp46にのみ結合するフォーマットF25のネガティブ対照バリアント(NKp46-IC_F25)は、試験条件下でほとんど細胞傷害性を示さない。それゆえに、実験は、CD123ポジティブ腫瘍細胞に対する細胞傷害性に至るような、Fcコンピテント構築体(F25)におけるCD123およびNKp46の双方に向かう二重結合の相乗効果を支持する。
【0357】
図5は、MOLM-13細胞株に対するEC
50に基づくデータを提供する。インビトロ細胞傷害性の向上(EC
50の低下への変換)は、NKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)により観察される。対照的に、残基297上でのN-グリコシル化を欠いているF6対照(NKp46-CD123_F6)は、細胞傷害性の低下をもたらす。なぜなら、CD16aではなくNKp46にのみエンゲージすることによってNK細胞を活性化するからである。それゆえに、この第2の実験は、NKp46およびCD16a NK細胞マーカーの結合および活性化を介して観察される相乗効果の証拠を提供する。
【0358】
したがって、比溶解を、CD123ポジティブMOLM-13 AML細胞に対して、ヒトNK細胞の存在下で、NKp46-CD123_F25により、そしてNKp46に対する特異性のないADCC増強抗CD123抗体(リファレンス-1)により説明する。EC50値は、バインダーの濃度の全体にわたって、細胞溶解の変量に基づいて確立される。結果をこの後に示す。
【0359】
【0360】
それゆえに、NKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)が、抗CD123 ADCC増強抗体(リファレンス-1)に少なくとも等しいか、またはこれよりも優れている細胞傷害性活性を示すことが示される。
【0361】
リファレンス-1は、AMLの処置用に示される完全ヒト化モノクローナル抗体であり、これは、インターロイキン3受容体(IL3Rα;CD123としても知られている)のアルファ鎖を標的とし、そしてナチュラルキラー細胞を介して抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)の活性化の増強のために最適化されている。
【0362】
B.6.AML上でのCD64発現は、NKCE細胞傷害性活性に影響を与えない一方、リファレンス-1活性にネガティブに影響を与える
NKp46-CD123_F25およびリファレンス-1抗体の活性をさらに記録して比較するために、細胞傷害性実験を、標的としてCD123を発現する様々なAML細胞株を用いて実行した。驚くべきことに、THP-1およびMOLM-13細胞が、匹敵するレベルのCD123を細胞表面にて発現するのにもかかわらず、リファレンス-1抗体は効率的にMOLM-13細胞を殺滅したが、THP-1細胞に対して活性がなかった(
図6A上部パネル)。リファレンス-1抗体とは逆に、NKp46-CD123_F25は、双方のAML細胞株上に匹敵する殺滅活性を実証した(
図6A上部パネル)。
図6A下部パネルは、MOLM-13およびTHP-1細胞が、フローサイトメトリによって分析される細胞表面でのCD32a/bおよびCD64 FcγRの発現について異なることを示す。MOLM-13細胞は、THP-1細胞よりもCD64レベルがかなり低く、そしてまたCD32a/bのレベルが低い(
図6A下部パネル)。CD64(FcγRI)は、健康な単球およびマクロファージ上で発現されるヒトIgG用の高親和性受容体であり、CD64ポジティブ急性骨髄性白血病と考えられる患者の約3分の1においてAMLブラスト上で発現されることが見出された。ヒト化モノクローナル抗体リファレンス-1と比較して、NK細胞エンゲージャ(NKCE)について細胞傷害性に対するCD64発現の役割を調査するために、CD32a/bおよびCD64の発現を、THP-1細胞において選択的にノックダウンした。
【0363】
CD64ではなくCD32a/bを発現するか、またはCD32a/bではなくCD64を発現するTHP-1サブクローンに実行した殺滅実験(
図6B)は、THP-1でのCD64発現が、リファレンス-1 ADCC活性の阻害を担うことを実証した。というのも、この抗体の殺滅が、CD64発現について不活化されたサブクローンでのみ回復したからである。したがって、これらの結果は、AML細胞の表面でのFcγR、CD64による抗体FCのシス捕捉が、おそらくNK細胞へのCD16aの結合と競合することによって、ADCCに干渉することを示す。
【0364】
興味深いことに、リファレンス-1と比較して、CD64発現状況がどうであれ、NKp46-CD123_F25は、本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質が、AMLブラストのNK細胞媒介細胞傷害性を誘導することに対してより有効であることを強調する全てのAML細胞株および全てのTHP-1サブクローンに対して、一貫した殺滅活性を実証した。
【0365】
図14A~Bは、リファレンス-1活性が、AML細胞上でのCD64の発現によってネガティブに影響されることを確認する。
【0366】
図14Aは、エフェクタとして健康なドナーNK細胞を用いてエクスビボ評価した4人の代表的な患者(AML#1、#2、#5、および#6;N=8)由来の原発性悪性AMLブラストのNKp46-CD123_F25およびリファレンス-1媒介細胞傷害性を報告する。MOLM-13およびTHP-1細胞株により観察されるように、リファレンス-1抗体は、CD64ネガティブ患者サンプル(AML#1および#2;
図14A)の殺滅を媒介したが、CD64ポジティブAML患者サンプル(AML#5および#6;
図14A)由来のブラストに対して、ほとんど活性でなかった。したがって、AML#5-AML#6(リファレンス1非レスポンダー)は、CD32およびCD64の染色レベルがAML#1およびAML#2(リファレンス1レスポンダー)よりも高い(
図14B右側パネルは、双方の群における、対照からのCD64およびCD32のピークシフトを比較している)。
【0367】
対照的に、三機能性NKp46-NKCE標的化CD123は、CD64ポジティブおよびCD64ネガティブAML患者サンプル双方に及ぼす強い抗腫瘍効果があった(
図14)。
図6および14は、FcγR発現状況、より詳細には、標的細胞上でのCD64発現に拘らず、CD123-NKp46_F25が、親THP-1細胞株、THP-1サブクローン、およびMOLM-13細胞に対して等しく強力であったことを実証する。さらに、三機能性NKCE分子はまた、全ての原発性悪性AML細胞に対して殺滅活性を提示して、リファレンス1が完全に不活性であったCD64ポジティブAML患者サンプル(AML#5および6)において、有意な抗腫瘍活性を促進した(
図14A)。
【0368】
MOLM-13細胞を用いる実験に関して、三機能性分子(CD123-NKp46_F25)は、NKp46(CD123-NKp46_F6)またはCD16a(CD123-IC_F25)を別々に活性化する二重特異性試薬よりも強力であった(
図15A)。これは、強力な殺滅活性(幾何平均EC
504.2[95%CI:2.7、6.3]pM、平均観察最大比溶解71±5%)、および健康なNK細胞ドナー間の良好な一貫性を実証している(
図15B)。
【0369】
B.7.NK細胞エンゲージャによる自己由来原発性AMLサンプルにおけるNK細胞活性化
原発性CD64(+)またはCD64(-)AMLブラストに対してNK脱顆粒を誘導する本開示(NKp46-CD123_F25)のNKp46-CD123_F25結合タンパク質の特性を、CD107ポジティブNK細胞のパーセンテージの測定により、
図7において確立した。
【0370】
全体として、この実験は、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質が、例えば同じ患者由来の原発性ブラストおよびNK細胞による、自己由来アッセイ(autologous assay)において、AML患者由来の一次サンプル内のNK細胞を活性化することができるという証拠を提供する。
【0371】
これらの結果はさらに、CD64発現なし(サンプル10)、そしてあり(サンプル8および9)の2つの追加のAML患者サンプルによる専用の自己由来NK細胞活性化アッセイによりまとめた(
図16A)。ここでも、NKp46-CD123-NKCEは、ブラストでのCD64発現状況に拘らず、患者の、それ自身の悪性細胞に対するNK細胞の自己由来の活性化(CD107染色のシフト参照)を媒介したが、リファレンス1は、CD64ネガティブサンプル(サンプル10)に対してのみ活性であった(
図16B)。
【0372】
したがって、この実験は、CD64(+)およびCD64(-)AML細胞の双方に関して、NK細胞をエクスビボ活性化する、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質の能力を支持する。
【0373】
その上、この自己由来アッセイにおいて、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質は、リファレンス1の存在下で観察されるものよりも非常に低い濃度でのCD64(+)細胞の存在下でNK細胞にエンゲージすることができる。
【0374】
加えて、平均EC50はまた、6つのNK健康ドナーを4つのAMLサンプル(2つのCD64(+)、および2つのCD64(-))に対して用いるブラスト殺滅アッセイにおいて、NKp46-CD123_F25およびリファレンス1について定量化し、そして結果をここで、以下に再現する。
【0375】
【0376】
全体として、これらの実験は、ここでも、本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質のブラスト殺滅活性が、CD64(-)AMLサンプルについてすら、リファレンス1抗体よりも優れていることを実証しており、リファレンス1は、CD64(+)AMLブラストに対して不活性である。
【0377】
B.8.NKp46-CD123 NK細胞エンゲージャは、SCIDマウスモデルにおいて注射したMOLM-13ヒトAMLに対して、抗腫瘍活性を誘導する
図8は、SCIDマウスモデルを用いた、腫瘍移植の70日後に、0.5mg/kgでの50%マウス生存を誘導するmuNKp46-huCD123_F25結合タンパク質(muNKp46-huCD123_F25)による用量依存性抗腫瘍活性を報告する。より詳細には、処置した対照群は、27.5日のMST、および5%の長期生存者を示した。
【0378】
X軸は、腫瘍移植後の日数を標示しており、ヒトMOLM-13の静脈注射からなり、腹腔内(i.p.)経路による1日目の単一の化合物投与を含む。Y軸は、処置群について10頭のマウスおよび対照群について20頭のマウスに基づく生存のパーセンテージを標示する。***は、対照群に対するp値<0.001を標示する。
【0379】
muNKp46-huCD123_F25により0.5mg/kgにて処置した群は、66日のMST、寿命の140%延長、および50%の長期生存者を示し、0.5mg/kgでのmuNKp46-huCD123_F25は、対照群と比較して、統計学的に有意に活性であった(pは0.0001未満)。0.25mg/kgの用量について、群は、36日のMST、寿命の31%延長、および10%の長期生存者を示し、0.25mg/kgでのmuNKp46-huCD123_F25誘導は、対照群と統計学的に異ならなかった。0.05mg/kgの用量について、群は、33日のMST、寿命の20%延長、および長期生存者なしを示し、0.05mg/kgでのmuNKp46-huCD123_F25は、対照群と統計学的に異ならなかった。
【0380】
本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質は、0.5mg/kgにて活性がロバストな用量依存性抗腫瘍インビトロ活性を示した。それらの結果を、以下の表3に要約する:
【0381】
【0382】
それゆえに、これは、NK細胞エンゲージャが、動物モデルにおいて、増殖性障害のインビボ処置に対して有効であることを確認する。
【0383】
加えて、有効性の更なる評価のために、先に記載し、かつ
図8において報告する実験を、但し、muNKp46-huCD123_F25 NKCEまたは対照5mg/kgを含め、さらにリファレンス1とした追加の投与群を伴って、繰り返した。結果を
図18に示す。
【0384】
図8の研究と一致して、
図18の研究において、代用muNKp46-huCD123_F25は、ヒトMOLM-13散在性モデルにおいて、5、0.5、0.25、および0.05mg/kgの用量にて、統計学的に有意な活性を誘導した。対照と比較したILSは、5、0.5、および0.25mg/kgの用量について100%および60%の長期生存者、そしてILSは、0.05mg/kgの用量について30%および10%の長期生存者であった。
【0385】
リファレンス1は、ヒトMOLM-13散在性モデルにおいて5mg/kgの用量にて統計学的に有意な活性を誘導した。ILSは、70%および40%の長期生存者であった。リファレンス1は、0.5、0.25、および0.05mg/kgの用量にて、活性でなかった。
【0386】
muNKp46-huCD123_F25は、0.5および0.25mg/kgの用量にて、リファレンス1よりも統計学的に有意に活性であった。
【0387】
図18についての表の結果を、以下のように要約する:
【0388】
【0389】
結論として、muNKp46-huCD123_F25代用物は、用量依存性活性を示し、ロバストな活性は0.25mg/kgからであった。これらのデータは、NKp46/FcγRが、抗CD123抗体(リファレンス1)と比較して、インビボ有効性の向上の原因となる、コエンゲージNK細胞の利益を実証した。
【0390】
B.9.NKp46-CD123 NK細胞エンゲージャは、非ヒト霊長類において抗腫瘍活性をインビボ誘導する
ヒトPBMCにおけるNKCEのインビトロ炎症誘発性サイトカイン放出の不在をさらに、NHPに実行した2つの専用の薬物動態学的、薬力学的、および安全性研究において確認した。カニクイザルを、前臨床薬物動態、薬力学、および毒性学の研究用の関連種として、(1)ヒトにおけるものと類似する、NKp46およびCD123の組織分布に基づいて(Walzerら PNAS;2007年;104巻:3384-3398頁およびChiChiliら Sci Transl Med;2015年;7巻:289頁)、そして(2)親和性が、以下の表4に示すヒト分子についてのものに類似するカニクイザル抗原およびFcγRに、CD123-NKCE分子を構成する抗体およびFc断片が結合することを理由に、選択した。具体的には、CD16a(FcγRIIIA)は、その158Vおよび158Fアイソフォームについて、一価KDがそれぞれ0.46±0.01μMおよび2.61±0.09μMであり、抗NKp46および抗CD123抗体部分は、ヒトNKp46およびヒトCD123に結合し、一価KDがそれぞれ16.3±2.9nMおよび0.40±0.04nMである。
【0391】
【0392】
図9はさらに、非ヒト霊長類について、本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)の注入後の3μg/kgにて最長20日間の、そして0.5μg/kgにて最長5時間の、完全かつ持続するCD123ポジティブ好塩基球枯渇を示す。
【0393】
したがって、この結果は、SCIDマウスモデルにおいて観察されるものが挙げられる、以前に得たインビトロ、エクスビボ、およびインビボ結果を、NK細胞エンゲージャ用に非ヒト霊長類に外挿することができることを実証する。
【0394】
全体として、CD123ポジティブ免疫細胞枯渇は、非ヒト霊長類におけるNKp46-CD123_F25結合タンパク質のインビボ活性のホールマークである。CD123ポジティブ好塩基球の迅速かつ持続する枯渇が観察され、これは、注入の開始から約1.5時間にて起こり、そして最長7日目まで維持され、細胞数が28日目にベースラインに戻ることが見出されている。
【0395】
B.10.細胞傷害アッセイにおけるFcコンピテントフォーマットの、それぞれF5対25フォーマットの比較
図10Aおよび10Bは、NKp46-CD123_F25およびNKp46-CD123_F5結合タンパク質が、健康ドナー(D648)由来のNK細胞にエンゲージすることによって、MOLM-13およびTHP-1 AML細胞株の双方に対して同じ細胞傷害性活性を示すことを示している。
【0396】
MOLM-13細胞とTHP-1細胞間の主な差異は、CD64マーカーの発現レベルに関係する。MOLM-13細胞は、CD64(-)を発現しないが、THP-1細胞は、高レベルのCD64(+)を発現する。双方の細胞は、CD32aを発現する。
【0397】
ゆえに、本例は、3つの異なる結合タンパク質:(i)F5フォーマットのNKp46-CD123_F5結合タンパク質(NKp46-CD123_F5)、(ii)F25フォーマットのNKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)、および(iii)CD123のみに結合するフォーマットF5のネガティブアイソタイプ対照バリアント(CD123IC_F5)についての比溶解の変動を報告する。
【0398】
全体として、それらの結果は、細胞傷害性活性が、F5およびF25フォーマットの2つのFcコンピテントNKp46-CD123結合タンパク質により維持されていることを実証する。これに対し、ネガティブ対照は、検出可能な細胞傷害性活性に至らない。
【0399】
B.11.NKp46-CD123 NKCE誘導CD123ポジティブ好塩基球枯渇は、T細胞エンゲージャツールと比較した場合に、低いサイトカイン放出に関連する
強力な細胞傷害性は、患者において毒性と関連し得る。CD123-NKCEによってインビトロで誘導されるヒトPBMCからのサイトカイン放出を調査するために、患者における潜在的サイトカイン放出症候群(CRS)の予知アッセイとして、以下の実験を実行した。
【0400】
ヒトPBMC(N=10サンプル)を、NKp46-CD123_F25(CD123-NKCE;0.1、1、または10μg/mL用量;0.68~68nM)、NKp46のみに結合するフォーマットF25のネガティブアイソタイプ対照バリアント(NKp46-IC_F25;0.1、1、または10μg/mL用量;0.68~68nM)の存在下で、またはCD3に対する特異性があるがNKp46に対する特異性がない抗CD123 T細胞エンゲージャ抗体ツール(CD123-TCE、リファレンス1;0.1μg/mL;1.6nM)を入れて、濃度勾配(10-3~101μg/mL)にわたって20時間培養した。
【0401】
ヒトPBMCのうち、CD123は、循環好塩基球および形質細胞様樹状細胞(pDC)のサブセット上で構成的に発現される。好塩基球はpDCよりもCD123
+発現が高いので、好塩基球の枯渇パーセントを、上述した処置群毎に監視した。
図11は、CD123-NKCEによるヒトPBMCの処置が、CD123
+好塩基球の用量依存性部分枯渇を促進したことを示しており、10個のドナーサンプルのうちの6つで算出して、メジアン最大枯渇が37%[31;50]であり、幾何平均EC
50値が38pM(95%CI[12.9;401])であった。これに対し、好塩基球枯渇は、CD123結合部位を欠いているF25結合分子(NKp46-IC_F25)の存在下で、かなりの量で起こらなかった。上述したヒトPBMC処理群から、上清を収集して、サイトカイン放出の量を定量化した。
図12は、インビトロIL-6、およびIL-1β炎症誘発性サイトカイン、ならびに本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)の投与に関連するTNF-αおよびIFN-γサイトカイン放出が、サイトカイン放出症候群(CRS)を誘導することが知られているポジティブ対照、リファレンス1の、100倍低い用量(0.1μg/ml)での投与と関連する対応するIL-6放出よりも非常に低かったことを実証している。
【0402】
CD123-NKCEは、42倍高い濃度ですら、CD123-TCEよりも非常に低いサイトカイン放出レベルを誘導した。
【0403】
図11および12は、CD123-NKCEによるPBMCの処理が、CD123
+好塩基球の枯渇を促進したが、CD3-CD123抗体分子による処理よりも非常に低いIL-6、IL-1β、TNF-α、およびIFN-γ放出レベルを誘導したことを実証している。
【0404】
結論として、本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)は、一次NK細胞にエンゲージして、微量のサイトカイン放出と関連するCD123+一次正常単核血球を標的として殺滅する能力を示し、そしてAMLの処置について、TCEよりも良好な利益/リスクプロファイルを有し得る。
【0405】
用量レベルに関係なく、そして3mg/kgの高い用量まで、
図13A~
図13Fは、本開示に関連するNKp46-CD123_F25結合タンパク質(NKp46-CD123_F25)の注射開始の後に、処置した全動物(雄カニクイザル)において、関連するいかなる臨床徴候もなく、非常に低いサイトカイン放出(IL6およびIL10)が観察されたことを示す。IL-2サイトカイン放出もIFNγサイトカイン放出も検出されなかった。より詳細には、一過性のIL6およびIL10ピークが、非ヒト霊長類において、3mg/kgでのF25構築体の単回の静脈注射の後に検出される。この一過性のピークは、1時間~5時間存在して、1または2日以内にベースラインに戻る。
【0406】
また、IL-6およびIL-10サイトカイン放出の非常に低いレベルは、3mg/kgの用量まで、臨床徴候と関連しない。これは、そのようなNK細胞エンゲージャが、非ヒト霊長類において良好な安全性プロファイルを有することを示す。
【0407】
B.12.NKp46-CD123 NK細胞エンゲージャは、サイトカイン/ケモカイン生成と同程度であるNK細胞活性化をインビトロで促進する
図17に対応するフローサイトメトリ分析は、CD123発現標的細胞が存在する場合にのみ、NKp46-CD123_F25結合タンパク質が、NK細胞活性化を促進したことを実証する。
【0408】
NKp46-CD123_F25の存在下でインキュベートした一次ドナーNK細胞(N=3)は、MOLM-13標的細胞が存在した場合に、NK細胞活性化マーカー、CD107およびCD69、ならびにサイトカイン、TNF-α、IFN-γ、およびケモカイン、MIP-1βのより高い発現レベルを、用量依存的に示した(
図17、NK単独対NK+MOLM-13条件を比較)。
【0409】
全体として、この実験は、本開示のNKp46-CD123_F25結合タンパク質が、NK細胞のオフターゲット活性化のないCD123+AML細胞に向かって、一次NK細胞におけるサイトカイン/ケモカイン生成を活性化して、それに比例して促進するという証拠を提供する。
【0410】
B.13.NK細胞は、NKp46-CD123_F25の抗腫瘍活性を担うエフェクタリンパ球サブセットである
NKp46-CD123_F25の有効性が、SCIDマウスモデルにおいて注射されるMOLM-13ヒトAMLに対してNK細胞抗腫瘍活性に依存したかを試験するために、マウスは、B.8において概説した実験セットアップの間にNK細胞枯渇レジメンを受けた。
【0411】
結果を、
図18および
図19に示しており、対応する表にした結果を、以下の表5に示す。
【0412】
【0413】
処置した対照群は、29日のメジアン生存期間(MST)を示し、長期生存者を示さなかった。
【0414】
muNKp46-ICアイソタイプ対照は、活性を示さず、ILSが7%であり、長期生存者がいなかった。NK枯渇の影響は、muNKp46-ICアイソタイプ対照により処置した群に観察されず、寿命の延長がなく、10%の長期生存者であった。IC-huCD123アイソタイプ対照は、統計学的に有意に活性であり、ILSが28%であり、20%の長期生存者であった。枯渇の統計学的に有意な影響は、IC-huCD123アイソタイプ対照により処置した群に観察され、寿命の延長がなく、長期生存者がいなかった。
【0415】
muNKp46-huCD123_F25は、統計学的に有意に活性であり、ILSが84%であり、40%の長期生存者であった。枯渇の統計学的に有意な影響が、muNKp46-huCD123_F25により処置した群に観察され、ILSが14%であり、長期生存者がいなかった。
【0416】
結論として、NK枯渇は、muNKp46-huCD123_F25の抗腫瘍活性に影響を与え、muNKp46-huCD123_F25 NKCEインビボ有効性におけるエフェクタ細胞としてのNK関与を確認する。
【0417】
B.14.NKp46-CD123 NK細胞エンゲージャは、NHPにおいて安全かつ有効である
図9および
図13において行ったNHP研究におけるNkp46-CD123細胞エンゲージャの安全性プロファイルを確認するために、雄カニクイザルにおいて、高(3mg/kg)または低(3μg/kgおよび0.5μg/kg)用量の単回i.v.注射によって投与したCD123-NKCEの薬物動態および薬力学を調べた(2頭の動物が各々3mg/kgおよび3μg/kg用量、そして1頭の動物が0.5μg/kg用量)。
【0418】
CD123-NKCEによる処置が、全てのサルの血液中のCD123
+細胞の持続的かつ完全な枯渇を、10日を超える間、3mg/kgおよび3μg/kg用量(
図20Aおよび
図20BにおいてCD123
+好塩基球および総CD123
+細胞について例示される)の双方にて促進し、関連するいかなる臨床徴候もなく、炎症誘発性サイトカインIL-6およびIL-10を非常に少ない量しか(50pg/mL未満)放出しなかった(
図20C)。
【0419】
CD123
+細胞の一過性かつ部分的な枯渇が、最も低い用量(0.5μg/kg、データ示さず)にて処置したサルにおいて観察されたが、3μg/kgが、この種において最も低い有効用量であると考えられた。最も高い用量(3mg/kg)にて処置した2頭のサルのPKプロファイルを、処置の12~14日後に起こり(
図20D)、かつより後の時点での血液からのCD123
+細胞の回収率と関連する抗薬物抗体(ADA)応答(データ示さず)によって標示した。
【0420】
CD123-NKCEの前臨床安全性プロファイルを、4週間、3mg/kg/投与または0.1mg/kg/投与の用量にて、1時間の静注によって投与される、4頭のサル(2/性/用量)を毎週処置する探査繰返し用量毒性研究を通して、さらに調べた(
図21)。全てのサル(サルの1頭、サルM5、雄No.5以外;
図21)において、CD123-NKCEへの曝露を、試験した用量の双方にて、少なくとも2週間続け、抗薬物抗体(ADA)の存在が、第3の投与(15日目)から検出された(データ示さず)(表6)。
【0421】
以下の表6は、カニクイザルへの4週間(1、8、15、および22日目)の0.1および3mg/kg/投与での毎週繰返し1時間静注後の、個々のCD123-NKCE血漿濃度値を示す。
【0422】
【0423】
IL-6濃度の一過性の最小増大が、双方の用量(0.1および3mg/kg/投与の用量について、それぞれ25および160pg/mLの表7の最大レベル)について、毎週の各投与の後に観察された。表7は、カニクイザルへの4週間(1、8、15、および22日目)の0.1および3mg/kg/投与でのCD123-NKCEの毎週繰返し1時間静注後の個々のIL-6血漿濃度値を示す。
【0424】
【0425】
特に、ADA応答を示さず、かつ研究の全体を通してCD123-NKCEに曝した、高い用量(3mg/kg/投与)にて処置したサルM5において、有意なIL-6放出は観察されなかった(
図21Aおよび
図21B)が、CD123
+細胞枯渇の強いPD効果が、このサルの血液および骨髄の双方において観察された(表8および
図21C)。
【0426】
【0427】
全ての他の動物において、CD123発現細胞の持続枯渇が、第1の投与の1.5時間後に、そして第3の投与の24時間後まで、血液中で観察され、22~29日目にリバウンド(ベースラインを上回る)が観察された(表8)。さらに、処置した全てのサルは、双方の用量について、9日目(第2の投与の24時間後)に、骨髄からのCD123ポジティブ細胞の完全な枯渇を示し(表8;ほとんどの動物について、9日目に検出限界を下回る値)、29日目のCD123ポジティブ集団の回復は、最後の投与の1週後であった。
【0428】
用量がどうであれで、臨床徴候が観察されず、体重または体温の変化が観察され、そしてCD123-NKCEによる処置に潜在的に起因するECGに及ぼす影響が観察されなかった。血液学、凝固、臨床化学、または尿パラメータに及ぼす化合物関連悪影響は、いずれも観察されなかった。サンプルをとった組織の顕微鏡試験は、臓器標的化の証拠を明らかにしなかった。注目した全ての観察は、変動のバックグラウンド範囲内にあり、かつCD123-NKCEの投与とは無関係であると考えられた。
【0429】
ゆえに、全体として、これらの結果は、CD123-NKCEのインビボ有効性についての原理実証を、毒性のサインなしで構成する。
【0430】
B.15.健康なドナーNK細胞によるNKp46-CD123 NK細胞エンゲージャ腫瘍細胞の殺滅
NKp46-CD123_F25およびそのアイソタイプ対照IC-CD123_F6を、2つの異なる健康ドナー(HD)からとったNK細胞によるインビトロ腫瘍細胞殺滅アッセイにおいて試験した。
【0431】
NK細胞精製およびAML細胞株
匿名の健康ドナー(HD)由来のヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を、Ficoll密度勾配遠心分離によって単離した。NK細胞を、このPBMCから、MACSxpress(登録商標)Whole Blood NK細胞単離キット(Miltenyi Biotec)により精製した。NK細胞を、10%SVF(BioWest)および1%L-グルタミン(Gibco)を補充したRPMI1640(Gibco)中で一晩静置した。
【0432】
THP1細胞(CD123+.CD64+)を、本研究のために、CD123の発現に基づいて選択した。実験の前に、THP1細胞に、Incucyte(登録商標)Nuclight Green Lentivirus(Sartorius)を感染させて、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させた。
【0433】
経時的なNKp46-CD123_F25の存在下でのNK機能アッセイ
NK細胞およびTHP1 GFP標的細胞を、NKp46-CD123_F25またはそのアイソタイプ対照IC-CD123_F6の存在下で、37℃、0.1、1、10、および100ng/mLにてインキュベートした。エフェクタ:標的細胞比は1:1であった。用いた培地は、NK細胞培養のものと同じであった。標的細胞を、Incucyte Live Cell Analysisシステム(EssenBioscience)を用いて、74hにわたる蛍光イメージングによって監視した。生きている標的細胞の数を、IncucyteS3ソフトウェア(2020Bバージョン)を用いて定量化した。
【0434】
結論
図22に示すように、様々な濃度(1、10、および100ng/mL)でのNKp46-CD123_F25は、エフェクタ:標的細胞比1:1にて、HD NK細胞の、THP1 GFP AML細胞に対する細胞傷害性活性を経時的に増強する。
【配列表】