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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20250123BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20250123BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/38
H01Q23/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021033266
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2021158663
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020056121
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 朋治
(72)【発明者】
【氏名】池田 巧
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏之
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050349(WO,A1)
【文献】特表2005-535497(JP,A)
【文献】特開平09-148840(JP,A)
【文献】国際公開第2020/209206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 1/38
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する金属部材と、
前記凹部の内部に埋め込まれる樹脂部と、
前記樹脂部の内部に設けられ、電波を放射する放射部と、
前記樹脂部の内部に設けられ、前記放射部に接続される無線通信部と、
前記無線通信部に接続されるセンサと
を含み、
前記金属部材は、前記放射部とは前記樹脂部によって絶縁されており、無給電素子として機能し、
前記金属部材は、平面視で円環状、矩形環状、又は多角形環状のスリットをさらに有し、
前記凹部は、前記スリットに連通する、センサモジュール。
【請求項2】
前記金属部材及び前記樹脂部は、平面視における中央を貫通する貫通孔を有する、請求項記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記金属部材は、
前記凹部を有する第1金属部材と、
前記第1金属部材の内部に設けられる前記樹脂部に保持され、前記第1金属部材の前記凹部の開口との間に前記円環状、矩形環状、又は多角形環状のスリットを構築する第2金属部材と
を有する、請求項記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記第2金属部材及び前記樹脂部は、平面視における中央を貫通する貫通孔を有する、請求項記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記第1金属部材は、円盤状であり、
前記凹部は、円環状であり、
前記第2金属部材は、円環状であり、前記円環状の凹部の外周側又は内周側に円環状のスリットを構築する、請求項又は記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記放射部は、前記樹脂部の内部で前記スリットに向けて設けられる、請求項及び乃至のいずれか一項記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記放射部は、前記スリットの近傍に設けられる、請求項及び乃至のいずれか一項記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記樹脂部の内部に設けられる基板をさらに含み、
前記放射部、前記無線通信部、及び前記センサは、前記基板に実装される、請求項1乃至のいずれか一項記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、誘電体基板を放射導体のパッチ面とグランド面とで挟んで成るマイクロストリップアンテナにおいて、前記グランド面の少なくとも一部をその先端がパッチ面と概略等しい高さとなるように折り曲げ、折り曲げ部で前記誘電体基板の側面を被覆し、前記パッチ面を含む面を、該パッチ面の周端と該グランド面の折り曲げ端との間隔が該グランド面の折り曲げ部の高さよりも長くなるように構成したことを特徴とするマイクロストリップアンテナがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-148840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のマイクロストリップアンテナは、センサを組み込んでセンサモジュールにすることを想定して設計されたものではない。
【0005】
そこで、放射特性の良好なセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態のセンサモジュールは、凹部を有する金属部材と、前記凹部の内部に埋め込まれる樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられ、電波を放射する放射部と、前記樹脂部の内部に設けられ、前記放射部に接続される無線通信部と、前記無線通信部に接続されるセンサとを含み、前記金属部材は、前記放射部とは前記樹脂部によって絶縁されており、無給電素子として機能する。
【発明の効果】
【0007】
放射特性の良好なセンサモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態のセンサモジュール100を示す図である。
図2図1のA-A矢視断面を示す図である。
図3】マルチモジュール130を示す図である。
図4】センサモジュール100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図5】センサモジュール100の指向性のシミュレーション結果を示す図である。
図6】実施の形態の変形例のセンサモジュール100Aを示す図である。
図7】実施の形態の変形例のセンサモジュール100B1を示す図である。
図8】実施の形態の変形例のセンサモジュール100B2を示す図である。
図9】実施の形態の変形例のセンサモジュール100B3を示す図である。
図10】実施の形態の変形例のセンサモジュール100C1の一部分を示す平面図である。
図11】実施の形態の変形例のセンサモジュール100C2の一部分を示す平面図である。
図12】実施の形態の変形例のセンサモジュール100C3の一部分を示す平面図である。
図13】実施の形態の変形例のセンサモジュール100C4の一部分を示す平面図である。
図14】実施の形態の変形例のセンサモジュール100Dの断面と一部分を示す図である。
図15図14に示すマルチモジュール130Dの変形例である。
図16図15に示すマルチモジュール130Dの変形例である。
図17】実施の形態の変形例のセンサモジュール100Eの断面と一部分を示す図である。
図18】実施の形態の変形例のセンサモジュール100Fを示す図である。
図19】マルチモジュール130Fを示す図である。
図20】センサモジュール100FのS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のセンサモジュールを適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態のセンサモジュール100を示す図である。図2は、図1のA-A矢視断面を示す図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明し、XY面視を平面視と称する。また、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0011】
センサモジュール100は、金属部材110(110A、110B)と、樹脂部120と、マルチモジュール130と、樹脂部140とを含む。センサモジュール100は、円盤状の部材である。
【0012】
金属部材110は、第1金属部材の一例であり、金属部材110Aと、金属部材110Bとを有する。以下では、金属部材110Aと金属部材110Bとを合わせたものを指すときは、金属部材110と称す。
【0013】
金属部材110Aは、金属製の円環状の部材であり、上面から円環状に凹んだ溝部111Aと、平面視における中央部において上下方向に貫通した貫通孔112Aとを有する。溝部111Aは、凹部の一例であり、外側の内周面111A1と、内側の内周面111A2と、底面111A3とを有する。金属部材110Aは、一例として、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、タングステン等の金属製である。
【0014】
金属部材110Bは、第2金属部材の一例であり、薄板状の円環状の部材である。金属部材110Bの外径は、金属部材110Aの溝部111Aの外側の円筒状の内周面111A1の内径よりも小さい。金属部材110Bは、中央部において上下方向に貫通した貫通孔111Bを有する。貫通孔111Bの開口の大きさは、貫通孔112Aの開口の大きさと等しく、平面視における中心の位置が合わせられている。
【0015】
金属部材110Bの内周側の端部は、金属部材110Aの内周部の上端113Aに固定され、金属部材110Aの溝部111Aの内部に設けられる樹脂部120の上に配置されている。金属部材110Bは、溝部111Aの内周側の部分に蓋をしてツバを付けたような構成になっている。金属部材110Bで実現されるツバは、図2に示すように、溝部111Aの径方向内側から外側を向き、金属部材110Aの溝部111Aの外側の内周面111A1の上端と、金属部材110Bの外周端との間が円環状のスリット115を構築している。金属部材110Bは、一例として、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、タングステン等の金属製である。
【0016】
樹脂部120は、金属部材110Aの溝部111Aの内部の全体に埋め込まれている。また、樹脂部120は、マルチモジュール130を覆い包んでおり、マルチモジュール130が金属部材110A及び110Bに直接触れないようにしている。樹脂部120は、溝部111A内に充填可能な樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂を含む封止樹脂であってもよい。
【0017】
マルチモジュール130は、複数の機能を持つモジュールであり、一例として、通信機能とセンサ機能を有する。通信機能は、マルチモジュール130の放射部と無線通信部とによって実現される。センサ機能は、一例として、歪みセンサ(歪みゲージ)、加速度計、温度計等によって実現される。
【0018】
マルチモジュール130は、一例として、薄板状であり、樹脂部120の内部に埋め込まれている。マルチモジュール130は、一例として、金属部材110Aの溝部111Aの外側の円筒状の内周面111A1の近傍に、放射部を上にして立てた状態で配置される。マルチモジュール130の詳細については、図3を用いて後述する。
【0019】
樹脂部140は、金属部材110Aの貫通孔112Aの内部の全体に埋め込まれる。樹脂部140は、貫通孔112A内に充填可能な樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂を含む封止樹脂であってもよい。
【0020】
このような構成を有するセンサモジュール100は、金属部材110Aの溝部111Aの外側の内周面111A1の上端と、金属部材110Bの外周端との間が円環状のスリット115を構築している。スリット115の1周の長さは、マルチモジュール130の放射部から放射される電波の周波数(通信周波数)における1波長の電気長に設定されている。より具体的には、スリット115のうちの径方向における最も外側に位置する内周面111A1の上端で、1周の長さが、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長に設定されている。
【0021】
なお、スリット115のうちの径方向における最も内側に位置する金属部材110Bの外周端における1周の長さが、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長に設定されていてもよい。また、スリット115のうちの径方向における最も外側に位置する内周面111A1の上端と、スリット115のうちの径方向における最も内側に位置する金属部材110Bの外周端との間において、スリット115の1周の長さが、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長に設定されていてもよい。
【0022】
センサモジュール100では、上述のようなスリット115を有することにより、マルチモジュール130の放射部から放射された電波が金属部材110A及び110Bで共振し、センサモジュール100の外に放射される。このときに、金属部材110A及び110Bは、無給電素子として機能する。
【0023】
なお、上述したようなスリット115の1周の長さは、厳密にマルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長ではなくてもよい。例えば、金属部材110Aの溝部111A内には樹脂部120が配置されるとともに、貫通孔112A内には樹脂部140が配置される。また、樹脂部120の内部には、マルチモジュール130が配置される。このように、樹脂部120、マルチモジュール130、樹脂部140が金属部材110に配置されることによってインピーダンス特性が変動する場合には、スリット115のインピーダンスが整合するように、スリット115の1周の長さをマルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長よりも少し短く、又は、少し長く調整すればよい。スリット115の1周の長さをマルチモジュール130の放射部から放射される電波の周波数(通信周波数)における1波長の電気長に設定することは、このようにスリット115の長さを調整することも含む趣旨である。
【0024】
また、センサモジュール100は、樹脂部140を含まなくてもよい。この場合には、センサモジュール100は、円盤状ではなく、円環状のモジュールになる。また、センサモジュール100は、樹脂部140を含まずに、金属部材110が貫通孔112Aの部分を埋め尽くしている構成であってもよい。
【0025】
図3は,マルチモジュール130を示す図である。図3に示すXYZ座標系は、図1及び図2に示すXYZ系に対応する。
【0026】
一例として、マルチモジュール130は、図3(A)、(B)に示すように、基板131、グランド層132A、132B、アンテナエレメント133、整合回路134A、134B、及びチップ135を有する。
【0027】
基板131は、一例として、FR-4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板である。また、基板131は、ポリイミド製のフィルム等で実現されるフレキシブル基板であってもよい。基板131は、YZ平面に平行に配置される。
【0028】
図3(A)に示すように、基板131の-X方向側の面のうちの-Z方向側の約2/3の部分には、グランド層132Aが設けられる。また、基板131の-X方向側の面のうちの+Z方向側の約1/3の部分には、アンテナエレメント133が設けられる。グランド層132Aとアンテナエレメント133との間は、離間している。基板131の+X方向側の面の全体には、図3(B)に示すように、グランド層132Bが設けられる。
【0029】
グランド層132A及び132Bは、一例として銅箔である。グランド層132Aの上(-X方向側)には、チップ135が実装される。グランド層132A及び132Bは、基板131を厚さ方向(X方向)に貫通するビア等によって接続されている。
【0030】
アンテナエレメント133は、放射部の一例であり、基板131の-X方向側の面のうちの+Z方向側の約1/3の部分のY方向の中央でZ方向に延在する。アンテナエレメント133は、一例として銅箔をパターニングすることによって作製される。アンテナエレメント133は、基板131の裏面にグランド層132Bがあるため、マイクロストリップ線路型の放射素子である。アンテナエレメント133は、グランド層132Aの近傍に給電点133A1を有する。
【0031】
整合回路134A、134Bは、一例として、インダクタ又はキャパシタである。整合回路134A、134Bは、一端がアンテナエレメント133に接続され、他端は、図示しないビアを介して基板131の反対側のグランド層132Bに接続されている。整合回路134A、134Bは、アンテナエレメント133のインピーダンス整合を取るために設けられている。整合回路134A、134Bを用いることにより、波長の短縮効果が得られる。
【0032】
チップ135は、無線通信部135A、センサ135B、及びバッテリ135Cを有する。無線通信部135Aとアンテナエレメント133の給電点133Aとは、一例として図示しない同軸ケーブルの芯線によって接続されており、アンテナエレメント133は、芯線を介して給電される。同軸ケーブルのシールド線は、グランド層132A及び132Bに接続されている。
【0033】
センサ135Bは、一例として、歪みセンサ(歪みゲージ)、加速度計、温度計等である。センサ135Bは、金属部材110の歪み、加速度、温度等を表す検出データを無線通信部135Aに出力する。検出データは、無線通信部135Aから出力される電波に搬送され、アンテナエレメント133から放射され、無給電素子として機能する金属部材110によってセンサモジュール100の外部に放射される。
【0034】
バッテリ135Cは、無線通信部135A及びセンサ135Bに電力を供給する。バッテリ135Cは、ワイヤレス給電によって充電可能な二次電池であってもよいし、交換可能なボタン電池であってもよい。また、バッテリ135Cの代わりに、有線ケーブルを用いて外部の電源装置から無線通信部135A及びセンサ135B電力を供給してもよい。
【0035】
また、マルチモジュール130は、図3(C)及び(D)に示す構成であってもよい。例えば、図3(C)に示すように、整合回路134A、134Bの他端は、アンテナエレメント133の両側に設けられたグランドエレメント132C、132Dに接続されていてもよい。グランドエレメント132C、132Dは、アンテナエレメント133の両側において、グランド層132Aの+Z方向側の端辺から延在する線路である。また、この場合に、図3(D)に示すように、グランド層132Bは、グランド層132Aと同様に、基板131の+X方向側の面のうちの-Z方向側の約2/3の部分に設けられていてもよい。すなわち、グランド層132Bは、アンテナエレメント133と重なっていなくてもよい。
【0036】
以上のようなマルチモジュール130は、スリット115の真下において、アンテナエレメント133がスリット115の方(+Z方向)を向いて設けられており、アンテナエレメント133には+Z方向に電流が流れる。アンテナエレメント133は、スリット115の近傍に設けられている。スリット115の近傍とは、アンテナエレメント133と、スリット115との電磁界結合が生じるほど、アンテナエレメント133がスリット115に近いことをいう。アンテナエレメント133と、スリット115との電磁界結合が得られることにより、スリット115を有する金属部材110は、無給電素子として機能する。
【0037】
そして、スリット115の1周の長さは、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長に設定されている。また、基板131は、アンテナエレメント133が設けられている-X方向が、溝部111Aの内側を向くように設けられている。
【0038】
このため、アンテナエレメント133から放射される電波は、スリット115で共振し、金属部材110の外部に放射される。
【0039】
図4は、センサモジュール100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。図4には、マルチモジュール130の通信周波数を一例として2.62(GHz)に設定した場合の電磁界シミュレーションで得られた結果を示す。
【0040】
図4に示すように、2.62(GHz)でS11パラメータの値が約-30(dB)になり、2.62(GHz)で共振が生じていることが分かった。また、2.62GHzの前後で-10dB以下の極めて反射が少ない広帯域が得られることが分かった。また、ゲインは、2.501(dBi)であった。
【0041】
なお、マルチモジュール130の通信周波数を一例として2.40(GHz)に設定した場合には、同一サイズのセンサモジュール100において、0.971(dBi)のゲインが得られ、S11パラメータの周波数特性において、2.40(GHz)を中心に広帯域が得られた。
【0042】
図5は、センサモジュール100の指向性のシミュレーション結果を示す図である。図5(A)、(B)には、マルチモジュール130の通信周波数を一例として2.41(GHz)に設定した場合におけるXY平面とYZ平面での指向性を示す。図5(A)に示すようにXY平面では略均等な指向性が得られることが分かり、図5(B)に示すようにYZ平面では、上側への放射が少し強いことが分かった。
【0043】
また、図5(C)、(D)には、マルチモジュール130の通信周波数を一例として2.62(GHz)に設定した場合におけるXY平面とYZ平面での指向性を示す。図5(C)に示すようにXY平面では略均等な指向性が得られることが分かり、図5(D)に示すようにYZ平面では、上側への放射が少し強いことが分かった。2.41(GHz)と2.62(GHz)とで略同様の傾向が得られることが分かった。
【0044】
以上のように、センサモジュール100は、金属部材110の溝部111A内の樹脂部120の内部にマルチモジュール130を配置し、スリット115を有する金属部材110を無給電素子として機能させるので、良好な放射特性を有する。
【0045】
したがって、放射特性の良好なセンサモジュール100を提供することができる。
【0046】
また、アンテナエレメント133がスリット115に向けて配置されるので、スリット115で共振が生じやすくなり、放射特性がより良好なセンサモジュール100を提供することができる。
【0047】
また、アンテナエレメント133がスリット115の近傍に配置されるので、アンテナエレメント133とスリット115との電磁界結合が得られ、スリット115で共振が生じやすくなり、放射特性がより良好なセンサモジュール100を提供することができる。
【0048】
また、基板131、グランド層132A、132B、アンテナエレメント133、整合回路134A、134B、及びチップ135を有するマルチモジュール130を樹脂部120の内部に配置する構成であるため、製造が容易である。
【0049】
また、センサモジュール100が樹脂部140を含まずに、樹脂部140の部分が空洞になっている円環状のモジュールである場合には、貫通孔112Aに部材を挿通させることができる。この場合に、貫通孔112Aに挿通させた部材の歪み、加速度、温度等をセンサモジュール100で測定してもよい。
【0050】
なお、以上では、金属部材110が円環状のスリット115を有する形態について説明したが、スリット115は、平面視で矩形環状又は多角形環状であって、溝部111Aも同様に平面視で矩形環状又は多角形環状であってもよい。多角形環状とは、例えば、三角形又は5つ以上の角を有する(五角形以上の)多角形をいう。
【0051】
また、以上では、金属部材110Bで実現されるツバが、図2に示すように、溝部111Aの径方向内側から外側を向き、金属部材110Aの溝部111Aの外側の内周面111A1の上端と、金属部材110Bの外周端との間が円環状のスリット115を構築する形態について説明した。そしてこの場合に、マルチモジュール130は、アンテナエレメント133がスリット115の真下に位置するように配置されている。
【0052】
しかしながら、金属部材110Bの径方向のサイズを大きくして金属部材110Bの外周端を金属部材110Aの溝部111Aの外周側の内周面111A1の上端に取り付けてもよい。この場合には、金属部材110Bで実現されるツバが、溝部111Aの径方向外側から内側を向き、金属部材110Aの溝部111Aの内側の内周面111A2の上端と、金属部材110Bの内周端との間が円環状のスリット115を構築する。この場合に、マルチモジュール130は、アンテナエレメント133がスリット115の真下に位置するように、内周面112A2の近くに配置すればよい。
【0053】
また、以上では、金属部材110が金属部材110A及び110Bを有する形態について説明したが、図6のように変形してもよい。
【0054】
図6は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100Aを示す図である。センサモジュール100Aは、図1及び図2に示すセンサモジュール100から金属部材110Bを取り除いた構成を有する。この場合には、マルチモジュール130は、溝部111A内の樹脂部120の中に破線で示すように、内側の内周面111A1の近傍、外側の内周面111A2の近傍、又は、底面111A3の近傍に設けてもよい。底面111A3の近傍に設ける場合には、基板131(図3参照)が底面111A3と平行になり、かつ、アンテナエレメント133が上側(+Z方向側)を向くように配置してもよい。
【0055】
また、以上では、金属部材110Aが円環状であり、円環状の溝部111Aを有する形態について説明したが、図7乃至図9に示すような構成であってもよい。図7乃至図9は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100B1~100B3を示す図である。図7(A)乃至図9(A)は、平面視のセンサモジュール100B1~100B3を示し、図7(B)乃至図9(B)は、図7(A)乃至図9(A)におけるB1-B1矢視断面、B2-B2矢視断面、B3-B3矢視断面をそれぞれ示す。
【0056】
図7(A)、(B)に示すセンサモジュール100B1は、金属部材110A1、110B1と、樹脂部120Bと、マルチモジュール130とを含む。金属部材110A1は、上面を有しない円筒状の部材であり、凹部111Dを有する。凹部111Dは、円筒状である。凹部111Dの内部には、樹脂部120Bが埋め込まれている。樹脂部120Bは円筒状である。金属部材110B1は、円環状の部材であり、樹脂部120の上に配置されている。金属部材110A1の凹部111Dの上端の開口と、金属部材110B1の外周端との間に、スリット115B1が構築されている。マルチモジュール130は、スリット115B1の真下に配置されている。
【0057】
このような構成のセンサモジュール100B1は、図1、2に示すセンサモジュール100と同様に動作する。
【0058】
図8(A)、(B)に示すセンサモジュール100B2は、図7(A)、(B)に示すセンサモジュール100B1の金属部材110B1を同心円状に配置される金属部材110B21、110B22に変更した構成を有する。金属部材110B21は、平面視で中央側に配置される円板状の部材であり、金属部材110B22は、平面視で外側に配置される円環状の部材である。
【0059】
金属部材110A1の凹部111Dの上端の開口と、金属部材110B22の外周端との間に、スリット115B2が構築されている。マルチモジュール130は、実線で示すようにスリット115B2の真下に配置されている。
【0060】
このような構成のセンサモジュール100B2は、図1、2に示すセンサモジュール100と同様に動作する。なお、マルチモジュール130は、破線で示すように金属部材110B21、110B22の間のスリットの下に設けられていてもよい。
【0061】
図9(A)、(B)に示すセンサモジュール100B3は、図8(A)、(B)に示すセンサモジュール100B2の金属部材110B21、110B22を金属部材110B31、110B32に変更した構成を有する。金属部材110B31は、平面視で金属部材110B21よりも小さく、金属部材110B32は、金属部材110B22と同一である。
【0062】
このような構成のセンサモジュール100B3は、図1、2に示すセンサモジュール100と同様に動作する。なお、マルチモジュール130は、破線で示すように金属部材110B31、110B32の間のスリットの下に設けられていてもよい。
【0063】
図10は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100C1の一部分を示す平面図である。図10に示す部分は、図1に示す破線Cで囲んだ部分に対応する。
【0064】
図10に示すセンサモジュール100C1は、マルチモジュール130の基板131がXY平面に平行になるように樹脂部120の内部に配置されている。図10におけるマルチモジュール130の位置は、図6に示す破線でマルチモジュール130の位置を3箇所示すうちの、樹脂部120の中の下方でXY平面に平行になる位置である。
【0065】
このようにマルチモジュール130を樹脂部120内に配置して、かつ、アンテナエレメント133がY方向に平行になるように配置してもよい。この場合は、アンテナエレメント133に-Y方向(スリット115の幅方向と直交する方向)に電流が流れることになる(図10の矢印参照)。
【0066】
図11は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100C2の一部分を示す平面図である。図11に示す部分は、図10と同様に、図1に示す破線Cで囲んだ部分に対応する。
【0067】
センサモジュール100C2のマルチモジュール130は、図10に示すマルチモジュール130の向きを変えたものであり、アンテナエレメント133がX方向に平行である。この場合には、アンテナエレメント133には、矢印で示すように、+X方向(スリット115の幅方向)に電流が流れることになる。
【0068】
図12は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100C3の一部分を示す平面図である。図12に示す部分は、図10、11と同様に、図1に示す破線Cで囲んだ部分に対応する。
【0069】
センサモジュール100C3のマルチモジュール130は、図10に示すマルチモジュール130の向きを変えたものであり、基板131がXZ平面に平行で、アンテナエレメント133が+Z方向を向いている。この場合には、アンテナエレメント133には、+Z方向に電流が流れることになる。
【0070】
図13は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100C4の一部分を示す平面図である。図13に示す部分は、図10、11、12と同様に、図1に示す破線Cで囲んだ部分に対応する。
【0071】
センサモジュール100C4のマルチモジュール130は、図13に示すマルチモジュール130の向きを変えたものであり、基板131がYZ平面に平行で、アンテナエレメント133が+Z方向を向いている。この場合には、アンテナエレメント133には、+Z方向に電流が流れることになる。
【0072】
図14は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100Dの断面と一部分を示す図である。図14の左側に示すセンサモジュール100Dの断面は、図2に示すセンサモジュール100と同様である。
【0073】
図14の右側に拡大して示すように、マルチモジュール130Dは、基板131がYZ平面に平行であり、アンテナエレメント133は、Z方向に延在し、先端にピン133Bが追加されている。ピン133Bは、-X方向に起立している。
【0074】
このようなセンサモジュール100Dでは、アンテナエレメント133に+X方向に流れる電流は、先端のピン133Bによって-X方向に励振されることになる。
【0075】
図15は、図14に示すマルチモジュール130Dの変形例である。図15では、ピン133Bは、基板131の+Z方向側の端部において、基板131の側面に沿って+X方向に向けられている。
【0076】
このようなマルチモジュール130Dでは、アンテナエレメント133に+X方向に流れる電流は、先端のピン133Bによって励振されることになる。
【0077】
図16は、図15に示すマルチモジュール130Dの変形例である。図16では、ピン133Bは、基板131の+X方向側の面よりも突出してさらに長くなっている。このようなピン133Bを用いると、スリット115との結合が強くなる。
【0078】
図17は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100Eの断面と一部分を示す図である。図17の左側の断面に示すように、センサモジュール100Eのマルチモジュール130Eは、基板131がXY平面に平行になるように設けられている。
【0079】
図17の右側に拡大して示すように、マルチモジュール130Eのアンテナエレメント133Eは、給電点133E1から屈曲部133E2まで+Y方向に延在し、屈曲部133E2から+X方向に先端部133E3まで延在している。また、先端部133E3は、破線で示すスリット115の真下に設けられている。
【0080】
このようなセンサモジュール100Eでは、アンテナエレメント133Eの先端部133E3から放射される電波は、スリット115から効率的に放射されることになる。また、屈曲したアンテナエレメント133Eを含むため、電流の向きがスリット115に対して変化することによって、屈曲していない場合に比べてインピーダンス特性が変化する。このため、アンテナエレメント133Eが延在する方向を変更することで、マルチモジュール130Eの配置を変更せずにスリット115に対する電流の向きを変更することが可能になり、アンテナエレメント133Eとスリット115とのインピーダンス整合を取るための選択肢を広げることができる。
【0081】
また、マルチモジュール130Eの給電点133E1から屈曲部133E2までの区間が+Z方向を向くように配置してもよい。この場合にもスリット115に対して、給電点133E1から屈曲部133E2までの区間と、屈曲部133E2から先端部133E3までの区間との向きがスリット115に対して変化することになる。このため、電流の向きがスリット115に対して変化することによってインピーダンス特性が変化し、アンテナエレメント133Eとスリット115とのインピーダンス整合を取るための選択肢を広げることができる。
【0082】
図10図13のように、マルチモジュール130の配置を変えることでスリット115に対する電流の向きを変更することが可能になり、アンテナエレメント133とスリット115とのインピーダンス整合を取るための選択肢を広げることができる。
【0083】
さらに、図14図17のように、アンテナエレメント133、133Eの形状を変えることでマルチモジュール130D、130Eの配置を変更することなくスリット115に対する電流の向きを変更することなく可能になり、アンテナエレメント133、133Eとスリット115とのインピーダンス整合を取るための選択肢を広げることができる。
【0084】
マルチモジュール130D、130Eは、アンテナエレメント133、133Eとスリット115とが近づく程に放射効率が良くなるため、図14図17のようにアンテナエレメント133、133Eの形状を変更することで、マルチモジュール130を縦置き(図12及び図13参照)した場合であってもスリット115に対する電流の向きを変更することが可能になり、アンテナエレメント133、133Eとスリット115とのインピーダンス整合を取るための選択肢を広げることができる。
【0085】
図18は、実施の形態の変形例のセンサモジュール100Fを示す図である。センサモジュール100Fは、金属部材110(110A、110B)と、樹脂部120と、マルチモジュール130Fと、樹脂部140とを含む。センサモジュール100Fは、円盤状の部材である。
【0086】
図19は、マルチモジュール130Fを示す図である。マルチモジュール130Fは、図19に示すように、基板131、グランド層132F、アンテナエレメント133F、整合回路134F1、134F2、給電線路136、パッド137A、137B、137Cを有する。
【0087】
基板131の-X方向側の面には、アンテナエレメント133F、整合回路134F1、134F2、給電線路136、パッド137A、137B、137Cが設けられている。基板131の+X方向側の面にはグランド層132Fが設けられている。
【0088】
グランド層132Fは、一例として銅箔である。グランド層132Fの表面上には、チップ135(図3(A)参照)と同様のチップが実装されるが、図19では図示を省略する。グランド層132Fは、アンテナエレメント133Fの給電点133F1、給電線路136、及びパッド137A、137B、137Cと平面視で重なる部分に設けられている。
【0089】
アンテナエレメント133Fは、放射部の一例であり、給電点133F1から先端133F2までL字型に延在している。アンテナエレメント133Fは、一例として銅箔をパターニングすることによって作製される。アンテナエレメント133Fのうちの給電点133F1は、グランド層132Fと重なっており、給電点133F1の部分はマイクロストリップ線路になっている。給電点133F1は、整合回路134F1を介して給電線路136に接続されるとともに、整合回路134F2を介してパッド137Aに接続されている。
【0090】
整合回路134F1、134F2は、一例として、インダクタ又はキャパシタである。整合回路134F1、134F2は、アンテナエレメント133Fのインピーダンス整合を取るために設けられている。整合回路134F1、134F2を用いることにより、波長の短縮効果が得られる。
【0091】
整合回路134F1が接続される給電線路136は、グランド層132Fと重なっており、マイクロストリップラインを構成している。給電線路136は、図示しない同軸ケーブルの芯線によってチップの無線通信部に接続される。アンテナエレメント133Fは、給電線路136を介して無線通信部から給電される。パッド137A、137B、137Cは、それぞれビア137A1、137B1、137C1を介してグランド層132Fに接続されている。
【0092】
図20は、センサモジュール100FのS11パラメータの周波数特性を示す図である。図20には、マルチモジュール130Fの通信周波数を一例として2.45(GHz)に設定した場合の電磁界シミュレーションで得られた結果を示す。
【0093】
図20に示すように、2.45(GHz)でS11パラメータの値が約-25(dB)になり、2.45(GHz)で共振が生じていることが分かった。また、2.45GHzの前後で-10dB以下の極めて反射が少ない広帯域が得られることが分かった。
【0094】
図18及び図19に示すように、マルチモジュール130Fを配置するとともに、L字型のアンテナエレメント133Fを有することで、スリット115に対する電流の向きを変更することが可能になり、アンテナエレメント133Fとスリット115とのインピーダンス整合を取るための選択肢を広げることができる。
【0095】
以上、本発明の例示的な実施の形態のセンサモジュールについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
100、100A、100B1、100B2、100B3、100C1、100C2、100C3、100D、100E、100F センサモジュール
110、110A、110B、110A1、110B1、110B21、110B22、110B31、110B32 金属部材
120、120B 樹脂部
130、130D、130E、130F マルチモジュール
131 基板
133、133E、133F アンテナエレメント
135 チップ
135A 無線通信部
135B センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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