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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 10/40 20250101AFI20250123BHJP
【FI】
H01L29/72 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021555142
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2020041633
(87)【国際公開番号】W WO2021090944
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019203395
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 誠
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】清水 尚博
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-079631(JP,A)
【文献】特開2004-063507(JP,A)
【文献】特開2001-196602(JP,A)
【文献】特開2013-175728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0260799(US,A1)
【文献】THEOLIER, L. et al.,BJT Application Expansion by Insertion of Superjunction,2010 22nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & IC's (ISPSD),2010年,pp. 157-160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 29/73
H01L 29/78
H01L 29/80
H01L 29/812
IEEE Xplore
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の第1のカラム領域と、
前記第1のカラム領域に隣接して配置される第2の導電型の第2のカラム領域と、によるスーパージャンクション構造を有し、
前記スーパージャンクション構造の一方側に配置され、トランジスタを構成するとともに前記トランジスタを流れる電流を制御する第1および第2の電極と、
前記スーパージャンクション構造を挟んで前記第1の電極および前記第2の電極の反対側に配置され、前記トランジスタを構成する第3の電極と、を更に有する半導体装置であって、
前記第1のカラム領域および前記第2のカラム領域上に配置される前記第2の導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に配置される前記第1の導電型の第2の半導体層と、
前記第1の電極と電気的に接続される半導体領域であって、前記第1の半導体層から離間して、前記第2の半導体層の表層部に配置される前記第1の導電型の第1の半導体領域と、
前記第2の電極と電気的に接続される半導体領域であって、前記第1の半導体領域から離間して、前記第2の半導体層の少なくとも表層部に配置され、前記第1の半導体層と電気的に接続する前記第2の導電型の第2の半導体領域と、を備える、
半導体装置。
【請求項2】
前記第2の半導体領域は前記第1の半導体層と接触していない、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の半導体領域と電気的に接続する前記第1の半導体層の領域に、前記第2の導電型の第3の半導体領域が配置されている、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3の半導体領域は、前記第1の半導体層に沿う第1の方向に延在し、
前記第1のカラム領域および前記第2のカラム領域は、前記第1の方向に配列され、前記第1の方向と交わる第2の方向に延在している、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の半導体領域上に、前記第1の半導体領域と前記第1の電極とが接続するコンタクトを備え、
前記第1の半導体領域は前記第1の半導体層に沿う第3の方向に延在し、
前記コンタクトは前記第3の方向に点在して配列される、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧および大電流に適用される電力用半導体装置がある。電力用半導体装置として、オン状態において伝導度変調効果によりドリフト層あるいはコレクタ層が低抵抗化することを利用した半導体装置が知られている。
【0003】
伝導度変調効果を利用した半導体装置には、例えばサイリスタ、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ(BJT:Bipolar Junction Transistor)等がある。
【0004】
これらのうち、サイリスタ及びIGBTは、大電流領域において電流を多く流すことができる。一方、BJTは、拡散電位以下の領域において電流を多く流すことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】L. Theolier, C. Benboujema, A. Schellmanns, N. Batut, Y. Raingeaud, J. B. Quoirin, ”BJT Application Expansion by Insertion of Superjunction”, 22nd ISPSD, pp 157-160, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、BJTは、立ち上がりにおける電流特性に優れるものの、ベース/エミッタ間の耐圧が低く、ターンオフ時のように過渡的に大電流が流れた場合に破壊しやすいという欠点がある。
【0007】
本発明の実施形態は、高耐圧特性を有し、かつ、過渡的な大電流による破壊を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の半導体装置は、第1の導電型の第1のカラム領域と、前記第1のカラム領域に隣接して配置される第2の導電型の第2のカラム領域と、によるスーパージャンクション構造を有し、前記スーパージャンクション構造の一方側に配置され、トランジスタを構成するとともに前記トランジスタを流れる電流を制御する第1および第2の電極と、前記スーパージャンクション構造を挟んで前記第1の電極および前記第2の電極の反対側に配置され、前記トランジスタを構成する第3の電極と、を更に有する半導体装置であって、前記第1のカラム領域および前記第2のカラム領域上に配置される前記第2の導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に配置される前記第1の導電型の第2の半導体層と、前記第1の電極と電気的に接続される半導体領域であって、前記第1の半導体層から離間して、前記第2の半導体層の表層部に配置される前記第1の導電型の第1の半導体領域と、前記第2の電極と電気的に接続される半導体領域であって、前記第1の半導体領域から離間して、前記第2の半導体層の少なくとも表層部に配置され、前記第1の半導体層と電気的に接続する前記第2の導電型の第2の半導体領域と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高耐圧特性を有し、かつ、過渡的な大電流による破壊を抑制することができる半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1にかかる半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、実施形態1にかかる半導体装置がオフ状態のときの空乏層の様子を模式的に示す図である。
図3図3は、比較例にかかる半導体装置の構成を示す断面図である。
図4図4は、実施形態2にかかる半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、実施形態3にかかる半導体装置の構成の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態3の変形例1にかかる半導体装置の構成の一例を示す横断面図である。
図7図7は、実施形態3の変形例2にかかる半導体装置の構成の一例を示す図である。
図8図8は、実施例1にかかる半導体装置の電流ベクトルをプロットした図である。
図9図9は、実施例2にかかる半導体装置の電子密度コンタープロット及び電流ラインプロットである。
図10図10は、実施例2にかかる半導体装置のドナー不純物の濃度、アクセプタ不純物の濃度、及び電子密度を示すグラフである。
図11図11は、実施例3にかかる半導体装置の電気的特性を示すグラフである。
図12図12は、実施例4および比較例にかかる半導体装置の耐圧特性を示すグラフである。
図13図13は、実施例5にかかる半導体装置におけるオン抵抗のトランジスタピッチに対する依存性を示すグラフである。
図14図14は、実施例6にかかる半導体装置におけるオン抵抗および電流増幅率のnソース領域端からソースコンタクト端までの距離に対する依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態1]
以下、図面を参照して、実施形態1について詳細に説明する。
【0013】
(半導体装置の構成例)
図1は、実施形態1にかかる半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。図1に示すように、実施形態1の半導体装置1は、n型半導体層11、n型カラム領域12、p型カラム領域13およびp型チャネル層14からなる半導体基板10、n型半導体層15、p型ゲート領域16、n型ソース領域17、ソース電極21、ゲート電極22、並びにドレイン電極23を備える。なお、ソース電極21、ゲート電極22、及びドレイン電極23等の呼称は便宜的なものであって、必ずしもこれらの機能を特定するものではない。
【0014】
半導体基板10は、最下層にn型の半導体層であるn型半導体層11を有する。n型半導体層11上には、n型の半導体領域である第1のカラム領域としてのn型カラム領域12と、p型の半導体領域である第2のカラム領域としてのp型カラム領域13とが互いに隣接して交互に配置されている。これらのn型カラム領域12とp型カラム領域13とにより、スーパージャンクション構造が構成される。n型カラム領域12とp型カラム領域13との上にはp型の半導体層である第1の半導体層としてのp型チャネル層14が配置されている。
【0015】
p型チャネル層14上には、例えばエピタキシャル成長等により形成されたn型の半導体層である第2の半導体層としてのn型半導体層15が配置されている。n型半導体層15には、n型半導体層15の表層部からp型チャネル層14に達するp型の拡散領域である第2の半導体領域としてのp型ゲート領域16が配置されている。また、p型ゲート領域16に挟まれたn型半導体層15の表層部には、n型の拡散領域である第1の半導体領域としてのn型ソース領域17が配置されている。n型ソース領域17は、n型半導体層15により、p型チャネル層14及びp型ゲート領域16から隔絶されている。このとき、n型ソース領域17とp型ゲート領域16との距離を、例えば3μm以上とすることが好ましい。
【0016】
n型カラム領域12の不純物総量とp型カラム領域13の不純物総量とは略同じに設定されている。n型半導体層15の不純物濃度はn型カラム領域12の不純物濃度よりも低く、例えば1×1015cm-3以下に設定されている。p型ゲート領域16の不純物濃度は、p型チャネル層14の不純物濃度よりも高く設定されている。
【0017】
第2の電極としてのゲート電極22は、p型ゲート領域16上に配置され、ゲートコンタクト22cを介してp型ゲート領域16に接続されている。第1の電極としてのソース電極21は、全体を覆うように配置され、ソースコンタクト21cを介してn型ソース領域17に接続されている。ゲート電極22とソース電極21との間には絶縁層31が配置され、ゲート電極22とソース電極21とは絶縁されている。第3の電極としてのドレイン電極23は、半導体基板10のn型半導体層11側の下面の全体を覆って配置される。
【0018】
以上のように構成される半導体装置1の動作について以下に述べる。
【0019】
半導体装置1をオン状態にするときは、ドレイン側がソース側に対して正の電位になるようドレイン電極23に正の電圧を印加するとともに、ゲート電極22に正の電圧を印加する。これにより、p型ゲート領域16からn型ソース領域17へと正孔が注入される。
【0020】
また、正孔はp型ゲート領域16からp型チャネル層14へと注入される。p型チャネル層14に注入された正孔は、p型チャネル層14を通してp型カラム領域13及びn型カラム領域12へ流入する。これにより、スーパージャンクション構造の少なくとも上部構造が、伝導度変調によって低抵抗化する。
【0021】
一方、電子は、n型ソース領域17からp型チャネル層14へと注入される。p型チャネル層14に注入された電子は、p型チャネル層14を通して、低抵抗化したp型カラム領域13及びn型カラム領域12へと流入し、最終的にドレイン電極23へ到達する。これにより、ソース電極21とドレイン電極23との間に電流が流れる。
【0022】
半導体装置1がオフ状態のときはゲート電極22にゲート電圧を印加しない。この状態において、ドレイン電極23に正の電圧が印加されると、p型カラム領域13とn型カラム領域12との間の複数のpn接合のそれぞれから、空乏層がp型カラム領域13とn型カラム領域12との両側に広がる。これにより、スーパージャンクション構造が低い電界強度で空乏化され、半導体装置1を高耐圧化することができる。
【0023】
実施形態1の半導体装置1において、n型ソース領域17とp型チャネル層14との間には不純物濃度の低いn型半導体層15が配置されている。また、n型ソース領域17とp型ゲート領域16とも、n型半導体層15により隔てられている。上述のように、n型半導体層15の不純物濃度を例えば1×1015cm-3以下とし、n型ソース領域17とp型ゲート領域16との距離を例えば3μm以上とすることで、n型ソース領域17とp型ゲート領域16との耐圧が、例えば50V以上となる。
【0024】
(トランジスタのピッチ)
引き続き、図1を用いて、実施形態1の半導体装置1の好ましい構成について説明する。
【0025】
実施形態1の半導体装置1では、スーパージャンクション構造のピッチW2が小さいほど、n型カラム領域12の不純物濃度を高めることができ、したがって、オン抵抗を下げることができる。
【0026】
一方、トランジスタのピッチW1はn型ソース領域17の幅に依存し、n型ソース領域17の幅には最適値が存在する。n型ソース領域17の幅が増加すると、n型ソース領域17からp型チャネル層14へと注入される電子が増加する一方で、n型ソース領域17及びp型チャネル層14における正孔の移動距離が長くなり、ソース抵抗およびチャネル抵抗が上昇するためである。
【0027】
したがって、半導体装置1においては、スーパージャンクション構造のピッチW2を固定したうえで、半導体装置1のオン抵抗が極力小さくなるようn型ソース領域17の幅を設定し、トランジスタのピッチW1を、n型ソース領域17の幅に基づき設定することが好ましい。
【0028】
(チャネル層の厚さ)
引き続き、図1及び図2を用いて、実施形態1の半導体装置1の好ましい構成について説明する。図2は、実施形態1にかかる半導体装置1がオフ状態のときの空乏層Dの様子を模式的に示す図である。
【0029】
オン状態において、n型ソース領域17からp型チャネル層14に注入される多数キャリア(電子)のp型チャネル層14中の輸送効率は、p型チャネル層14の厚さWPが小さいほど1に近づき、半導体装置1の電流駆動能力が向上する。
【0030】
一方で、p型チャネル層14の厚さWPが減少すると、オフ状態において、p型チャネル層14が完全空乏化してしまいやすくなる。
【0031】
そこで、p型チャネル層14の厚さWPを極力薄くしたうえで、p型チャネル層14の不純物濃度Ichを高めることが望ましい。目安としては、p型チャネル層14の厚さWPを例えばp型カラム領域13の幅W3より薄くし、不純物濃度Ichを例えばp型カラム領域13の不純物濃度Icoより高めればよい。
【0032】
図2に示すように、上記のように構成することで、オフ状態において、スーパージャンクション構造の空乏層Dがソース/ドレイン間で繋がってしまうことが抑制され、高耐圧を維持することができる。
【0033】
(ソース領域/ソースコンタクト間距離)
引き続き、図1を用いて、実施形態1の半導体装置1の好ましい構成について説明する。
【0034】
実施形態1の半導体装置1においては、n型ソース領域17の端部からソースコンタクト21cの端部までの距離W4が所定距離以上であることが好ましい。これにより、p型ゲート領域16からn型ソース領域17に注入される少数キャリア(正孔)による電流を低減でき、ゲート電流が減少して半導体装置1の電流増幅率を高めることができる。ここで、半導体装置1の電流増幅率はドレイン電流/ゲート電流のことである。
【0035】
上記のp型ゲート領域16からn型ソース領域17に注入される正孔による電流値は、n型ソース領域17における正孔の拡散長に依存する。よって、n型ソース領域17の端部からソースコンタクト21cの端部までの距離W4は、n型ソース領域17における正孔の拡散長以上であることが好ましく、距離W4は正孔の拡散長の3倍以上であることがより好ましい。
【0036】
(比較例)
次に、図3を用いて、比較例の半導体装置について説明するとともに、比較例の半導体装置に対する実施形態1の半導体装置1の効果について述べる。
【0037】
図3は、比較例にかかる半導体装置の構成を示す断面図である。図3に示すように、比較例の半導体装置は、コレクタ領域にスーパージャンクション構造を用いたスーパージャンクションバイポーラトランジスタ(SJ-BJT)として構成されている。
【0038】
比較例の半導体装置が備える半導体基板50は、最下層から順に、n型コレクタ層51、n型バッファ層52b、n型カラム領域52及びp型カラム領域53、並びにp型ベース層56を有する。n型カラム領域52上のp型ベース層56の表層部には、n型エミッタ領域57が選択的に形成されている。n型エミッタ領域57上には、n型エミッタ領域57と接続されるエミッタ電極61が配置される。p型ベース層56上には、p型ベース層56と接続されるベース電極62が配置される。エミッタ電極61とベース電極62とは絶縁層71により隔絶されている。半導体基板50のn型コレクタ層51側の下面には、コレクタ電極63が配置されている。
【0039】
比較例の半導体装置は、オフ状態では、p型カラム領域53とn型カラム領域52との間の複数のpn接合のそれぞれから、空乏層がp型カラム領域53とn型カラム領域52との両側に広がって、p型カラム領域53とn型カラム領域52とのスーパージャンクション構造を低い電界強度で空乏化することで高耐圧化している。また、オフ状態ではスーパージャンクション構造で逆バイアスを保持しているため、p型ベース層56への空乏層の広がりが少なく、p型ベース層56を薄くすることができる。このため、オン状態において、エミッタ領域からコレクタ領域への電子の注入効率を増大させることができる。
【0040】
比較例の半導体装置をオン状態にするときは、ベース電極62に正の電圧を印加する。これにより、p型ベース層56からn型エミッタ領域57に正孔が注入され、コレクタ/エミッタ間にコレクタ電流が流れる。SJ-BJTである比較例の半導体装置においては、n型カラム領域52の不純物濃度を、従来の高耐圧縦型バイポーラトランジスタのコレクタ層の不純物濃度よりも高くすることができる。このため、高コレクタ電流密度の領域において、コレクタ抵抗による電流増幅率低下を抑制することができる。
【0041】
p型ベース層56からの正孔の一部は、p型カラム領域53及びn型カラム領域52へと流入し、伝導度変調によりスーパージャンクション構造およびn型バッファ層52bを低抵抗化する。このため、比較例の半導体装置においては、例えばIGBTのように拡散電位差以上の電圧を印加する必要は無く、コレクタ電圧の印加に伴ってコレクタ電流が流れる。
【0042】
上述のように、比較例の半導体装置はSJ-BJTとして構成され、電流の立ち上がり特性に優れる。しかしながら、比較例の半導体装置では、高濃度のp型ベース層56と高濃度のn型エミッタ領域57とが接触しており、ベース/エミッタ間の耐圧は10V~20V程度と低い。また、比較例の半導体装置では、ターンオフ時のように過渡的に大電流が流れた場合、p型ベース層56が破壊されてしまうことがある。
【0043】
実施形態1の半導体装置1によれば、n型ソース領域17は、p型チャネル層14から離間して、n型半導体層15の表層部に配置される。また、p型ゲート領域16は、n型ソース領域17から離間しており、n型半導体層15の表層部からp型チャネル層14に達する。これにより、ゲート/ソース間の逆方向耐圧が増大して破壊が起こり難くなる。
【0044】
実施形態1の半導体装置1によれば、p型ゲート領域16はp型チャネル層14と接触している。これにより、ターンオフ時に過渡的に発生する大電流の通電経路の抵抗が低減し、破壊耐量を増大させることができる。
【0045】
実施形態1の半導体装置1によれば、スーパージャンクション構造のピッチW2を固定したうえで、トランジスタのピッチW1を、n型ソース領域17の幅に基づき設定する。
【0046】
例えば、比較例の半導体装置では、n型カラム領域52上に選択的にn型エミッタ領域57が形成され、p型カラム領域53上にp型ベース層56が形成され、p型ベース層56上にはベース電極62が形成されている。つまり、比較例の半導体装置のように、SJ-BJTの場合、トランジスタのピッチはスーパージャンクションのピッチと同じである。
【0047】
一方、実施形態1の半導体装置1では、スーパージャンクション構造のピッチW2に関係なくn型ソース領域17の幅を適正化できるので、半導体装置1のオン抵抗を抑えることができる。
【0048】
実施形態1の半導体装置1によれば、p型チャネル層14の厚さWPをp型カラム領域13の幅W3より薄くし、不純物濃度Ichをp型カラム領域13の不純物濃度Icoより高めている。これにより、オン状態においては、n型ソース領域17からp型チャネル層14に注入される電子の輸送効率を1に近づけることができる。また、オフ状態においては、p型チャネル層14が完全空乏化するのを抑制して、ドレイン/ソース間がパンチスルーしてしまうのが抑制され、高耐圧を維持することができる。
【0049】
実施形態1の半導体装置1によれば、n型ソース領域17の端部からソースコンタクト21cの端部までの距離W4は正孔の拡散長の3倍以上である。これにより、p型ゲート領域16からn型ソース領域17に注入される正孔を低減して電流増幅率を増大させることができる。
【0050】
[実施形態2]
次に、図4を用いて、実施形態2の半導体装置2について説明する。実施形態2の半導体装置2は、p型ゲート領域18がp型チャネル層14と物理的に接触していない点が、上述の実施形態1とは異なる。
【0051】
図4は、実施形態2にかかる半導体装置2の構成の一例を示す断面図である。図4において、上述の実施形態1の構成と同様の構成には同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0052】
図4に示すように、実施形態2の半導体装置2においては、p型ゲート領域18はp型チャネル層14まで到達していない。ただし、p型ゲート領域18とp型チャネル層14とは静電的に接続している。p型ゲート領域18及びp型チャネル層14間はpnp接合構造を有している。p型ゲート領域18とp型チャネル層14とが静電的に接続した状態とは、このようにn型半導体層15が介在していても、p型ゲート領域18からp型チャネル層14への正孔の注入が可能な状態を意味する。つまり、p型ゲート領域18及びp型チャネル層14間のpnp接合構造における不純物濃度の勾配を調整して、p型ゲート領域18とp型チャネル層14とが離れていても、半導体装置2としての動作を可能にしている。
【0053】
したがって、実施形態2の半導体装置2のオン/オフ動作およびオン/オフ特性は、上述の実施形態1の半導体装置1と同等である。
【0054】
一方で、半導体装置2ではp型ゲート領域18をp型チャネル層14に到達するまで拡散させないので、その製造工程において高温長時間の熱処理が不要となる。これにより、n型カラム領域12とp型カラム領域13との不純物の相互拡散が抑制され、n型カラム領域12中の実効的な不純物量が維持される。n型カラム領域12中の実効的な不純物量はオン状態における特性に寄与する。
【0055】
実施形態2の半導体装置2によれば、p型ゲート領域18はp型チャネル層14と物理的に接触していないが、電気的に接続する。これにより、高温長時間の熱処理が不要となり、半導体装置2の性能低下を抑制することができる。
【0056】
[実施形態3]
次に、図5を用いて、実施形態3の半導体装置3について説明する。実施形態3の半導体装置3は、p型埋め込みゲート領域19を有する点が、上述の実施形態1,2とは異なる。
【0057】
図5は、実施形態3にかかる半導体装置3の構成の一例を示す図である。図5(a)は半導体装置3の縦断面図である。図5(b)は、図5(a)のA-A線における半導体装置3の横断面図である。図5において、上述の実施形態1,2の構成と同様の構成には同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0058】
図5(a)に示すように、実施形態3の半導体装置3は、p型ゲート領域18下方のp型チャネル層14に、p型の拡散領域である第3の半導体領域としてのp型埋め込みゲート領域19を有する。ただし、半導体装置3は、上述の実施形態1のように、p型埋め込みゲート領域19に達するp型ゲート領域16を有していてもよい。
【0059】
p型埋め込みゲート領域19は、例えば半導体基板10にp型チャネル層14を形成した後、更に所定領域にp型不純物を高濃度拡散させることで形成される。エピタキシャル層であるn型半導体層15の形成後、高濃度拡散させたp型不純物の一部はn型半導体層15にも拡散し、p型チャネル層14よりも厚いp型埋め込みゲート領域19となる。
【0060】
このp型埋め込みゲート領域19が配置される領域は、p型ゲート領域18がp型チャネル層14と静電的に接続している領域にあたり、例えば、ターンオフ時に過渡的に発生する大電流の通電経路となる。高濃度のp型不純物を有するp型埋め込みゲート領域19は、この通電経路の抵抗を低減する。
【0061】
図5(b)に示すように、半導体装置3のn型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型埋め込みゲート領域19は、p型チャネル層14に沿う方向に延在する。p型チャネル層14に沿う方向は、p型チャネル層14に平行な方向およびp型チャネル層14に略平行な方向を含む。
【0062】
また、n型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型埋め込みゲート領域19のそれぞれは、延在方向と交わる方向において複数配列される。つまり、n型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型埋め込みゲート領域19のそれぞれは、延在方向と交わる方向において周期的なパターンを有して配置される。延在方向と交わる方向は、延在方向と直交する方向および延在方向と略直交する方向を含む。
【0063】
また、半導体装置3のn型カラム領域12とp型カラム領域13とは、n型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型埋め込みゲート領域19の延在方向に沿う方向に延在する。延在方向に沿う方向は、延在方向に平行な方向および延在方向に略平行な方向を含む。また、n型カラム領域12及びp型カラム領域13のそれぞれは、自身の延在方向と交わる方向において複数配列される。つまり、n型カラム領域12及びp型カラム領域13のそれぞれは、延在方向と交わる方向において周期的なパターンを有して配置される。
【0064】
なお、図5(b)において斜線で示す領域は、p型埋め込みゲート領域19とp型カラム領域13とが上面視で重なる領域である。
【0065】
実施形態3の半導体装置3によれば、p型埋め込みゲート領域19は、p型ゲート領域18と電気的に接続するp型チャネル層14の領域に配置される。これにより、ターンオフ時に過渡的に発生する大電流の通電経路の抵抗が低減され、寄生素子の動作を抑制して破壊耐量を増大させることができる。
【0066】
(変形例1)
次に、図6を用いて、実施形態3の変形例1の半導体装置について説明する。変形例1の半導体装置は、n型カラム領域12a及びp型カラム領域13aの延在方向が、上述の実施形態1~3とは異なる。
【0067】
図6は、実施形態3の変形例1にかかる半導体装置の構成の一例を示す横断面図である。より具体的には、図6は、図5(a)のA-A線と同じ位置における変形例1の半導体装置の横断面図である。
【0068】
図6に示すように、変形例1の半導体装置のn型カラム領域12aとp型カラム領域13aとは、n型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型埋め込みゲート領域19の延在方向と交わる方向に延在する。また、n型カラム領域12及びp型カラム領域13のそれぞれは、自身の延在方向と交わる方向において複数配列される。図6において斜線で示す領域は、p型埋め込みゲート領域19とp型カラム領域13aとが上面視で重なる領域である。
【0069】
p型埋め込みゲート領域19とp型カラム領域13aとが重なる領域は、オン状態において、n型ソース領域17からドレイン側へ向けて注入される電子の流れを阻止する領域となる。変形例1の半導体装置においてp型埋め込みゲート領域19とp型カラム領域13aとが重なる領域は、上述の実施形態3の半導体装置3においてp型埋め込みゲート領域19とp型カラム領域13とが重なる領域と比較して略半減している。
【0070】
変形例1の半導体装置によれば、p型埋め込みゲート領域19はp型チャネル層14に沿う方向に延在し、p型カラム領域13aはp型埋め込みゲート領域19の延在方向と交わる方向に延在している。これにより、p型埋め込みゲート領域19とp型カラム領域13aとが重なる領域の割合を低減することができ、オン状態においてドレイン電流を増加させることができる。
【0071】
(変形例2)
次に、図7を用いて、実施形態3の変形例2の半導体装置4について説明する。変形例2の半導体装置4は、ソースコンタクト21caが島状に配置されている点が、上述の実施形態1~3とは異なる。
【0072】
図7は、実施形態3の変形例2にかかる半導体装置4の構成の一例を示す図である。図7(a)は半導体装置4の縦断面図である。図7(b)は、図7(a)のB-B線における半導体装置4の横断面図である。
【0073】
図7(b)に示すように、ソースコンタクト21caは、島状に分離され、n型ソース領域17の延在方向に点在して配列される。
【0074】
図7(a)は、図7(b)のC-C線における半導体装置4の縦断面図であり、ソースコンタクト21caが存在しない位置での縦断面図である。
【0075】
変形例2の半導体装置4によれば、ソースコンタクト21caはn型ソース領域17の延在方向に点在して配列される。これにより、n型ソース領域17の端部からソースコンタクト21caの端部までの実効的な距離(図1における距離W4に相当)を更に増大させることができ、p型ゲート領域16からn型ソース領域17に注入される少数キャリアを減少させることができる。よって、半導体装置4における電流増幅率を更に増大させることができる。
【0076】
なお、変形例2の半導体装置4の構成は、実施形態3の半導体装置3のみならず、上述の実施形態1,2の半導体装置1,2に適用しても有用である。
【0077】
また、上述の実施形態1~3及びその変形例1,2においては、nチャネルタイプのトランジスタを例に挙げて説明したが、これらの構成を、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトランジスタに対しても適用することができる。
【0078】
[実施例]
以下、図面を参照して、実施例について詳細に説明する。
【0079】
(実施例1)
図8は、実施例1にかかる半導体装置の電流ベクトルをプロットした図である。図8(a)は正孔電流ベクトルをプロットした図であり、図8(b)は電子電流ベクトルをプロットした図である。
【0080】
図8は、実施例1の半導体装置が実施形態2の半導体装置2と同様の構成を備えるものとして、実施例1の半導体装置のオン状態におけるデバイスシミュレーション結果を、n型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型チャネル層14の近傍領域で拡大表示したものである。なお、図8においては、便宜上、実施形態2の半導体装置2の各構成に相当する構成に同様の符号を付してある。
【0081】
図8(a)の正孔電流のベクトル表示においては、ベクトルの向きが正孔の移動方向である。図8(a)に示すように、オン状態では、p型ゲート領域18からn型ソース領域17及びp型チャネル層14に向けて正孔が注入される。p型チャネル層14に注入された正孔は、p型カラム領域13とn型カラム領域12へと流入する。
【0082】
図8(b)の電子電流のベクトル表示においては、ベクトルの逆向きが電子の移動方向である。図8(b)に示すように、オン状態では、n型ソース領域17からp型チャネル層14に向けて電子が注入される。p型チャネル層14に注入された電子は、p型カラム領域13とn型カラム領域12へと流入する。その後、電子はドレイン電極23へ到達し、ソース電極21とドレイン電極23との間に電流が流れる。
【0083】
図8のシミュレーション結果により、n型ソース領域17、p型ゲート領域18、及びp型チャネル層14の近傍領域における正孔および電子の挙動が理解され、上述の実施形態1~3及びその変形例1,2の半導体装置1~3,4等の動作が裏付けられる。
【0084】
(実施例2)
次に、図9及び図10を用いて、実施例2の半導体装置について説明する。
【0085】
図9は、実施例2にかかる半導体装置の電子密度コンタープロット及び電流ラインプロットである。図9においては、電子密度コンタープロット及び電流ラインプロットが重ね合わせて表示されている。図9においては、色が薄くなるほど電子密度が高いことを示す。
【0086】
図9は、実施例2の半導体装置が実施形態2の半導体装置2と同様の構成を備えるものとして、実施例2の半導体装置のオン状態におけるデバイスシミュレーション結果を、n型カラム領域12及びp型カラム領域13の近傍領域で拡大表示したものである。なお、図9においては、便宜上、実施形態2の半導体装置2の各構成に相当する構成に同様の符号を付してある。
【0087】
図10は、実施例2にかかる半導体装置のドナー不純物の濃度、アクセプタ不純物の濃度、及び電子密度を示すグラフである。図10(a)は、図9のD-D線で示す深さ位置におけるグラフであり、図10(b)は、図9のE-E線で示す深さ位置におけるグラフである。図10に示すドナー不純物の濃度、アクセプタ不純物の濃度、及び電子密度もまた、シミュレーションに基づく。
【0088】
図9及び図10に示すように、スーパージャンクション構造の上部において電子密度が増加している。これは、上述したようにp型ゲート領域16からp型チャネル層14を介してn型カラム領域12及びp型カラム領域13へと正孔が注入されることから、電荷中性条件を保持しようとするためである。また、図9の電流ラインプロットで示すように、電子電流は、n型カラム領域12及びp型カラム領域13の両方に広がっている。
【0089】
図9及び図10に示すように、スーパージャンクション構造の下部において、電子密度が低下している。電子密度は、n型カラム領域12においてはドナー不純物濃度と同程度であり、p型カラム領域13においてはアクセプタ不純物濃度未満となっている。これは、n型カラム領域12及びp型カラム領域13へと注入された正孔が、スーパージャンクション構造の下方へ向かうにしたがい、徐々に、減少していくためである。これにより、スーパージャンクション構造の下部においては伝導度変調効果が薄れ、図9の電流ラインプロットで示すように、電子電流は専らn型カラム領域12を流れるようになる。
【0090】
このように、実施例2の半導体装置では、オン状態において、主にスーパージャンクション構造の上部が伝導度変調により低抵抗化する。
【0091】
(実施例3)
次に、図11を用いて、実施例3の半導体装置について説明する。図11は、実施例3にかかる半導体装置の電気的特性を示すグラフである。
【0092】
図11は、実施例3の半導体装置が実施形態2の半導体装置2と同様の構成を備えるものとして、実施例3の半導体装置のデバイスシミュレーション結果をプロットしたものである。
【0093】
図11に示すように、実施例3の半導体装置は、飽和領域においてドレイン電流の立ち上がりが急峻で、良好な電気的特性を有することが予測される。
【0094】
(実施例4)
次に、図12を用いて、実施例4の半導体装置について説明する。図12は、実施例4および比較例にかかる半導体装置の耐圧特性を示すグラフである。
【0095】
実施例4の半導体装置は、実施形態2の半導体装置2と同様の構成を備えるものとした。比較例の半導体装置は上述の図3に示す半導体装置である。これらの半導体装置のゲート電極とソース電極に逆バイアスを印加したときの耐圧をシミュレーションした。
【0096】
図12に示すように、比較例の半導体装置の耐圧は20V未満であるのに対し、実施例4の半導体装置の耐圧は50V以上であった。
【0097】
(実施例5)
次に、図13を用いて、実施例5の半導体装置について説明する。
【0098】
図13は、実施例5にかかる半導体装置におけるオン抵抗Ronのトランジスタピッチに対する依存性を示すグラフである。図13のグラフの横軸は、トランジスタ間に含まれるp型カラム領域の数でトランジスタピッチを示したものである。つまり、図1に示す実施形態1の半導体装置1の例であれば、トランジスタ間に含まれるp型カラム領域13は2つであり、トランジスタピッチは2となる。
【0099】
図13は、実施例5の半導体装置が実施形態2の半導体装置2と同様の構成を備えるものとして、実施例5の半導体装置のトランジスタピッチを変化させて、デバイスシミュレーション結果をプロットしたものである。より具体的には、図13においては、n型ソース領域の幅を変化させ、それに合わせてトランジスタピッチを変化させている。またこのとき、スーパージャンクション構造のピッチは固定とした。
【0100】
図13に示すように、実施例5の半導体装置においては、トランジスタピッチが大きくなるにしたがってオン抵抗Ronは一旦減少する。これは、上述のように、n型ソース領域の幅が増大することで、n型ソース領域からp型チャネル層へと注入される電子が増加するためである。
【0101】
また、実施例5の半導体装置においては、トランジスタピッチが大きくなるにしたがって、一旦減少したオン抵抗Ronが再び増加している。これは、上述のように、n型ソース領域の幅が増大することで、n型ソース領域およびp型チャネル層における正孔の移動距離が増し、ソース抵抗およびチャネル抵抗が上昇するためである。
【0102】
以上のことから、トランジスタピッチには最適値があり、n型ソース領域の幅を適正化することでオン抵抗を下げることが可能であると判る。
【0103】
(実施例6)
次に、図14を用いて、実施例6の半導体装置について説明する。図14は、実施例6にかかる半導体装置におけるオン抵抗Ronおよび電流増幅率hFEのn型ソース領域端からソースコンタクト端までの距離に対する依存性を示すグラフである。
【0104】
図14は、実施例6の半導体装置が実施形態2の半導体装置2と同様の構成を備えるものとして、実施例6の半導体装置のn型ソース領域の端部からソースコンタクトの端部までの距離(図1の距離W4に相当)を変化させて、デバイスシミュレーション結果をプロットしたものである。
【0105】
図14に示すように、実施例6の半導体装置では、n型ソース領域の端部からソースコンタクトの端部までの距離が増加するのにしたがって、電流増幅率hFE(=ドレイン電流/ゲート電流)が増加している。これは、n型ソース領域の端部からソースコンタクトの端部までの距離の増加に伴い、p型ゲート領域からn型ソース領域に注入される正孔による電流が減少するためゲート電流が低下するからである。一方で、n型ソース領域の端部からソースコンタクトの端部までの距離を変化させてもオン抵抗Ronへの影響は少ない。
【0106】
以上のことから、n型ソース領域の端部からソースコンタクトの端部までの距離を長くすることで、オン抵抗を増大させることなく、電流増幅率を増大させることが可能であると判る。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1~3 半導体装置
11 n型半導体層
12 n型カラム領域
13 p型カラム領域
14 p型チャネル層
15 n型半導体層
16,18 p型ゲート領域
17 n型ソース領域
19 p型埋め込みゲート領域
21 ソース電極
21c ソースコンタクト
22 ゲート電極
22c ゲートコンタクト
23 ドレイン電極
31 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14