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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ナトリウムチタンリン酸塩及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20250123BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250123BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250123BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20250123BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20250123BHJP
   H01M 10/36 20100101ALI20250123BHJP
【FI】
C01B25/45 H
H01M4/36 C
H01M4/58
H01M10/054
H01M10/0566
H01M10/36 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023505338
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008829
(87)【国際公開番号】W WO2022190985
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2021039890
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】喜多條 鮎子
(72)【発明者】
【氏名】山下 真歩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 渉
(72)【発明者】
【氏名】高原 俊也
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/026228(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108091921(CN,A)
【文献】特開2012-054208(JP,A)
【文献】特開2011-241138(JP,A)
【文献】特開2019-175830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
H01M 4/00 - 4/62
H01M 4/58
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NaTi(POを含む表面層を有することを特徴とする一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表され
前記表面層が、一般式Na 1+x Ti (PO (但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩に対して0質量%を超え5質量%未満であるナトリウムチタンリン酸塩。
【請求項2】
前記ナトリウムチタンリン酸塩の結晶構造がナシコン型結晶構造である請求項1に記載のナトリウムチタンリン酸塩。
【請求項3】
前記表面層が、結晶構造がナシコン型結晶構造であるNa Ti(PO からなる請求項1又は2に記載のナトリウムチタンリン酸塩。
【請求項4】
前記表面層の厚みが、0nmを超え50nm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナトリウムチタンリン酸塩。
【請求項5】
結晶子径が10nm以上、100nm以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナトリウムチタンリン酸塩。
【請求項6】
ナトリウム源、リン酸源及びチタン源を含む混合物を150℃以上400℃以下で焼成して一次焼成物を得、該一次焼成物を解砕後、400℃以上900℃以下で焼成する工程、を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のナトリウムチタンリン酸塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のナトリウムチタンリン酸塩を含む負極活物質。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のナトリウムチタンリン酸塩を含む負極と、正極及び電解液を備えるナトリウム二次電池。
【請求項9】
前記電解液が水系電解液である請求項8に記載のナトリウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナトリウムチタンリン酸塩及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
レアメタルであるリチウムを使用しないナトリウム二次電池は、資源やコスト面で優位であることのみならず、新規材料の適用やハイレート充放電特性に優れる可能性を持つ。
これまでのナトリウム二次電池では、現行のリチウム二次電池と同様な電解液、主として非水系の電解液、を備えたものが検討されてきた。
最近になって、水系電池の最大のウイークポイントであった水の分解に由来する1.23Vの狭い電位窓が、電解質の高濃度化によって2V超えることが報告され(非特許文献1)、水系ナトリウム二次電池の実用化への期待が高まっている。
特に、電池の大型化に対しては、コストや安全確保の点から、水系の電解液を使用する水系ナトリウム二次電池が好適と言える。
水系ナトリウム二次電池実用化のもうひとつの課題である負極材料に関しては、ナシコン型NaTi(POが機能することが見出されているが、サイクル安定性が低くその改善が課題となっている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Ruben-Simon et al, ACS Energy Letters,2,2005(2017)
【文献】Sun Il Park et al, Journal of The Electrochemical Society,158(10)A1067-A1070(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ナトリウムチタンリン酸塩、更には、従来の水系ナトリウム二次電池と比べて、出力特性が優れるナトリウム二次電池を与える負極活物質、及びこれを備えるナトリウム二次電池の少なくともいずれかを提供することを目的とし、特に、ナシコン型NaTi(POを負極活物質として備えた従来の水系ナトリウム二次電池と比べて出力特性が高い水系ナトリウム二次電池を与える負極活物質を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示においては、組成の異なるナトリウムチタンリン酸塩を含む表面層を有するナトリウムチタンリン酸塩組成物が、従来知られているナトリウム二次電池負極材料に比べて出力特性に優れ、これを負極に用いることで、出力特性に優れるナトリウム二次電池が構成できることを見出した。
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載のとおりであり、本開示の要旨は以下のとおりである。
【0006】
[1] NaTi(POを含む表面層を有することを特徴とする一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩。
[2] 前記ナトリウムチタンリン酸塩の結晶構造がナシコン型結晶構造である上記[1]に記載のナトリウムチタンリン酸塩。
[3] 前記表面層が、一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩に対して0質量%を超え5質量%未満である上記[1]又は[2]に記載のナトリウムチタンリン酸塩。
[4] 前記表面層の厚みが、0nmを超え50nm以下である上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のナトリウムチタンリン酸塩。
[5] 結晶子径が10nm以上、100nm以下である上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のナトリウムチタンリン酸塩。
[6] ナトリウム源、リン酸源及びチタン源を含む混合物を150℃以上400℃以下で焼成して一次焼成物を得、該一次焼成物を解砕後、400℃以上900℃以下で焼成する工程、を有する上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のナトリウムチタンリン酸塩の製造方法。
[7] 上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のナトリウムチタンリン酸塩を含む負極活物質。
[8] 上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のナトリウムチタンリン酸塩を含む負極と、正極及び電解液を備えるナトリウム二次電池。
[9] 前記電解液が水系電解液である上記[8]に記載のナトリウム二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、ナトリウムチタンリン酸塩、更には、従来の水系ナトリウム二次電池と比べて、出力特性が優れるナトリウム二次電池を与える負極活物質、及びこれを備えるナトリウム二次電池の少なくともいずれかを提供することができる。さらには、ナシコン型NaTi(POを負極活物質として備えた従来の水系ナトリウム二次電池と比べて、出力特性が高い水系ナトリウム二次電池を与える負極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1~3、比較例のナトリウム遷移金属リン酸塩のXRDパターン(a:比較例1、b:実施例1、c:実施例2、d:実施例3、e:PDFパターン(ICDD:33-1296 NaTi(PO)を示す図である。
図2図2は、実施例5、6のNaTi(POのXRDパターン(f:実施例5、g:実施例6、h:PDFパターン(NaTi(PO)を示す図である。
図3A図3Aは、実施例2のナトリウム遷移金属リン酸塩の断面TEM観察図を示す図である。
図3B図3Bは、比較例1のナトリウム遷移金属リン酸塩の断面TEM観察図を示す図である。
図4図4は、実施例1~3、比較例1の充放電サイクル試験の結果(a(▲):実施例1、b(■):実施例2、c(◆):実施例3、d(●):比較例1)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のナトリウムチタンリン酸塩について、実施形態の一例を示して説明する。
【0010】
<ナトリウムチタンリン酸塩>
本実施形態はNaTi(POを含む表面層を有することを特徴とする一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩である。NaTi(POを含む表面層を有することで、ナトリウムチタンリン酸塩(以下、「NaTP塩」ともいう。)の表面におけるナトリウムイオン(Na)の拡散がしやすくなる。
本実施形態におけるNaTP塩は、ナトリウム及びチタンを含むリン酸化合物であり、具体的には一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩であり、NaTi(POであること(すなわち、一般式Na1+xTi(PO)においてx=0であること)が更に好ましい。本実施形態において、NaTP塩の組成は、公知の組成分析方法、例えば、誘電結合プラズマ発光分析(ICP分析)、原子吸光分析、TEM-EDSなどから求めることができ、一般的なICP発光分析装置(ICPS-8100、島津製作所社製)を使用したICP分析から求めることができる。
本実施形態のNaTP塩は、結晶構造がナシコン型結晶構造であること(いわゆるナシコン型NaTP塩、であること)が好ましい。ナシコン型結晶構造の同定は、本実施形態のNaTP塩のXRDパターンと、PDFパターン(ICDD:33-1296 NaTi(PO)との対比により行うことができる。
【0011】
本実施形態のNaTP塩は、NaTi(POを含む表面層(以下、単に「表面層」ともいう。)を有する。一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩に比べ、ナトリウムが過剰となる組成の表面層を有することで、当該表面層が高出力放電をした場合のナトリウムバッファ層として機能し、その結果、高い出力特性を示すと考えられる。
表面層は、ナトリウムの拡散を阻害しない状態で、NaTP塩の少なくとも一部にあればよく、NaTP塩の表面の少なくとも一部にあることが好ましい。表面層がNaTP塩の少なくとも一部にある形態としては、少なくとも、NaTP塩とNaTi(POとの界面を介して両者が存在していること、すなわち表面層がNaTP塩と界面を形成していること、が挙げられる。NaTP塩とNaTi(POとが界面を有する結果、表面層を有さないNaTP塩と同等のナトリウムの拡散係数を示すと考えられる。
表面層は、NaTP塩の全面を覆っている必要はなく、海島状であってもよい。すなわち、表面層は、NaTP塩の表面の少なくとも一部に存在するNaTi(PO及びNaTi(PO含有組成物の少なくともいずれか、好ましくはNaTi(PO、であればよい。
表面層は、NaTi(POを含んでいればよく、NaTi(POに加え、TiOを含んでいてもよいが、NaTi(POからなることが好ましく、結晶構造がナシコン型構造のNaTi(POからなることがより好ましい。
本実施形態のNaTP塩は、表面層をその表面の全部又は少なくとも一部に有していればよく、表面層を少なくとも一部に有していればよい。また、NaTP塩粒子の表面の全部又は少なくとも一部、好ましくは表面の少なくとも一部に、NaTi(POを有していればよい。表面層に含まれるNaTi(POの性状には特に制限はなく、結晶質及び非晶質の少なくともいずれかであること、更には緻密性及び多孔性の少なくともいずれかであること、が例示できる。さらに、表面層は、NaTP塩の表面上におけるナトリウム源、リン源及びチタン源の反応により生成した状態のNaTi(POを含むことが好ましい。これにより、充放電サイクルにおける分極(ヒステリシス)が抑制されやすくなる。被覆膜である表面層の存在は、TEM観察(透過型電子顕微鏡観察)により確認できる。TEM観察において、表面層は、NaTP塩と異なる視野像として観察され、表面層はNaTP塩よりも濃い色調の視野像として観察される。
【0012】
ナトリウムイオン(Na)が拡散しやすくなる傾向があるため、本実施形態における表面層の割合(以下、「被覆量」ともいう。)としては、下限値が、NaTP塩に対して0質量%を超え、更には0.01質量%以上、また更には0.1質量%以上であることが好ましい。また、上限値が、NaTP塩に対して20質量%以下、更には15質量%以下、また更には5質量%以下であることが好ましい。これらの上限値と下限値はいかなる組合せでもよい。したがって、本実施形態における表面層の割合は、例えば、NaTP塩に対して0質量%を超え20質量%以下、更には0.01質量%以上15質量%以下、また更には0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。被覆量の測定方法は任意であるが、例えば、TEM-EDSによる定量分析が挙げられる。被覆量が20質量%を超えると、ナトリウムの拡散を阻害しない状態の表面層が形成されず、ナトリウムイオンの拡散係数が著しく低下する。
表面層の厚みは任意であるが、ナトリウムの拡散を阻害しない程度の厚みであればよい。
表面層の厚みとしては、下限値が、0nmを超え、また更には0.1nm以上が好ましい。また、上限値が、50nm以下、更には40nm以下、また更には5nm以下であることが好ましい。これらの上限値と下限値はいかなる組合せでもよい。したがって、本実施形態における表面層の厚みは、例えば、0nmを超え50nm以下、更には0.1nm以上5nm以下であることが好ましい。表面層の厚みはTEM観察により求めることができ、TEM観察図において観察される表面層の厚み(すなわち、TEM観察図において表面層が確認でき、なおかつ、該TEM観察図で観察される表面層の最大厚み)は0nm超又は0.1nm以上であり、かつ、50nm以下、40nm以下、5nm以下又は3nm以下、であることが挙げられる。
本実施形態のNaTP塩の結晶子径としては、下限値が、10nm以上、更には20nm以上、また更には30nm以上であることが好ましい。また、上限値としては、100nm以下、更には50nm以下、また更には40nm以下であることが好ましい。これらの上限値と下限値はいかなる組合せでもよい。したがって、本実施形態のNaTP塩の結晶子径は、例えば、10nm以上、100nm以下、また20nm以上、50nm以下、更には20nm以上、40nm以下、また更には30nm以上、40nm以下であることが好ましい。結晶子径がこの範囲であることで、本実施形態のNaTP塩は、ナトリウムの挿入及び脱離がより効率的に進行しやすくなり、ナトリウム二次電池の負極活物質として高い出力特性が期待できる。
本実施形態において「結晶子径」は、一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩のXRDパターンに帰属される2以上のXRDピークから、Williamson-Hall法により求まる径(以下、「WH径」ともいう。)である。具体的には、一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)に帰属できる2以上のXRDピーク、好ましくは一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)に帰属できる全てのXRDピーク、について、それぞれ、以下のプロットを行う。得られる複数点のプロットの最小二乗法により以下の一次近似式を求め、該一次近似式のy切片の逆数が結晶子径である。
<プロット>
Y=(β・sinθ)/λ
X=sinθ/λ
<一次近似式>
Y=2η・X+(1/ε) ・・・(1式)
これらの式において、βは半値幅(°)、θは回折角(°)、λは線源の波長(nm)、ηは不均一歪及びεは結晶子径(Å)であり、なおかつ、一次近似式における1/εがy切片である。なお、本実施形態におけるWH径の算出に当たり、使用するXRDピークには特に制限はなく、例えば、NaTPに帰属される全てのXRDピークを使用すればよい。
本実施形態のNaTP塩は、これを負極活物質として備えるナトリウム二次電池とした場合に、高い出力特性を示す。以下、ナトリウム二次電池の構成及び充放電試験の条件を示す。
(ナトリウム二次電池)
電解液 :17mol/kg NaClO水溶液
負極 :NaTP塩70質量%、アセチレンブラック25質量%、及び、
ポリテトラフルオロエチレン5質量%からなる負極
正極 :NaNi[Fe(CN)]70質量%、アセチレンブラック25質量%、及び、
ポリテトラフルオロエチレン5質量%からなる正極
(充放電試験条件)
電流密度 :(1~5サイクル)2mA/cm
(6~10サイクル)5mA/cm
(11~15サイクル)10mA/cm
(16~20サイクル)15mA/cm
(21~25サイクル)20mA/cm
(25~30サイクル)25mA/cm
(31~35サイクル)2mA/cm
電圧 :-0.9V~-0.3V(vs Ag/AgCl参照極)
充放電温度:25℃
【0013】
<表面層を有するNaTP塩の製造方法>
本実施形態のNaTP塩の製造方法は任意であるが、ナトリウム源、リン酸源及びチタン源を含む混合物を150℃以上400℃以下で焼成して一次焼成物を得、該一次焼成物を解砕後、400℃以上900℃以下で焼成する工程(以下、「焼成工程」ともいう。)、を有する製造方法、が挙げられる。これにより、NaTi(POを含む表面層を有するNaTP塩を得ることができる。
焼成工程に供する混合物は、ナトリウム源、リン酸源及びチタン源(以下、これらをまとめて「前駆体」ともいう。)を含み、前駆体を含む組成物である。
ナトリウム源は、ナトリウム(Na)を含む化合物であればよく、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び塩化ナトリウムの群から選ばれる1以上、更には炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの少なくともいずれか、また更には炭酸ナトリウムであることが好ましい。
リン酸源は、リン酸(PO)を含む化合物であればよく、ピロリン酸、ポリリン酸及びリン酸二水素アンモニウムの群から選ばれる1以上、更にリン酸二水素アンモニウムであることが好ましい。
チタン源は、チタン(Ti)を含む化合物であればよく、チタン酸化物及び有機チタン化合物の少なくともいずれかが挙げられる。好ましいチタン酸化物としてチタニア(TiO)が挙げられ、また、好ましい有機チタン化合物として、チタンを含むアルコキシド、アシレート及びキレート化合物の群から選ばれる1以上、チタンを含むアルコキシド、又は、チタンテトラブトキシド(Ti(OCHCHCHCH)が挙げられる。好ましいチタン源としてチタンテトラブトキシドが挙げられる。
特に好ましい前駆体として、炭酸ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム及びチタンテトラブトキシドが挙げられる。
前記混合物の組成は、NaTP塩の組成に対して、特に一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩に対して、ナトリウムが過剰となる組成であることが好ましい。例えば、混合組成物のTi[mol]に対するNa[mol]の比が1.0超又は1.1以上であり、また、3以下、2以下又は1.5以下であることが挙げられる。このような組成を有することで、後述の予備焼成及び本焼成を経ることにより、NaTP塩の粒子の表面に、表面層が形成されると考えられる。
このような混合物は、目的とする一般式Na1+xTi(PO(但し、0≦x≦2)で表されるナトリウムチタンリン酸塩に対して、ナトリウム過剰となる組成となるように前駆体が混合することで得ればよい。例えば、NaTi(POで表されるNaTP塩を製造する場合、ナトリウム源とチタン源を、Ti[mol]に対するNa[mol]の比として0.5超又は0.55以上であり、また、1.5以下、1以下又は0.75以下として、混合することや、NaTi(POで表されるNaTP塩を製造する場合、ナトリウム源とチタン源を、Ti[mol]に対するNa[mol]の比として1.0超又は1.1以上であり、また、3以下、2以下又は1.5以下として、混合することが挙げられる。
前記混合物は、前駆体が均一になるように混合することで得られる。混合方法は湿式混合及び乾式混合の少なくともいずれか、更には湿式混合が例示できる。特に好ましい混合方法として、前駆体及び溶媒を含む混合溶液を、撹拌した後又は撹拌しながら、乾燥させる方法が挙げられる。溶媒としては水及びアルコールの少なくともいずれか、更には水が例示できる。撹拌は、前駆体が均一に混合される条件であればよく、前記混合溶液を撹拌数100~500rpmで撹拌することが例示でき、混合溶液量が多くなるほど撹拌数を多くすればよい。乾燥は、混合溶液から溶媒が除去できる条件であればよく、大気中、60℃以上又は70℃以上、また、150℃以下、120℃以下又は100℃以下であることが挙げられる。これにより、前駆体が均一な状態で混合した混合物が得られる。
本実施形態の製造方法では、前記混合物を150℃以上400℃以下で焼成する。一次焼成物を得るための焼成(以下、「予備焼成」ともいう。)の方法として、酸化雰囲気中、好ましくは大気中、150℃以上、250℃以上又は300℃以上であり、かつ、400℃以下、400℃未満又は370℃以下による焼成が挙げられる。予備焼成の時間は任意であるが30分以上10時間以下が例示できる。予備焼成により、混合物の粒子の表面及び内部でナトリウム濃度が傾斜組成となり、ナトリウム濃度が粒子内部より粒子表面が高くなると考えられる。
予備焼成後、得られた一次焼成物を解砕する。解砕方法は一次焼成物の緩慢凝集が取り除かれる方法であればよく、例えば、乳鉢を用いた乾式粉砕が挙げられる。
本実施形態の製造方法では、解砕後の一次焼成物を400℃以上900℃以下で焼成(以下、「本焼成」ともいう。本焼成の方法として、酸化雰囲気中、好ましくは大気中、400℃以上、400℃超又は600℃以上であり、かつ、900℃以下、800℃以下又は750℃以下による焼成が挙げられる。本焼成の時間は任意であるが30分以上10時間以下が例示できる。本焼成により、ナトリウム濃度が傾斜した組成を有する混合物から表面層を有したNaTP塩が生成する。
【0014】
<負極活物質>
次に、本開示のNaTP塩を含む負極活物質について実施形態の一例を示して説明する。
本実施形態において「負極活物質」とは、電気化学デバイスを構成する電極のうち電位の低い極の電極活物質であり、特にナトリウム二次電池の負極の電極活物質である。
本実施形態の負極活物質は、本実施形態のNaTP塩(すなわち、表面層を有するNaTP塩)を含み、本実施形態のNaTP塩のみ(すなわち、表面層を有するNaTP塩のみ)からなっていてもよい。一方、本実施形態の負極活物質は、本実施形態のNaTP塩以外の活物質、例えばナトリウム遷移金属化合物などの活物質、を含んでいてもよい。
本実施形態の負極活物質は、炭素層その他、負極活物質の表面の一部又は全部に被膜層、好ましくは導電性を有する被膜層(すなわち、導電層)、を有していてもよい。この場合において、被膜層は、NaTi(PO含む表面層上に有されていてもよい。しかしながら、被膜層がNaTP塩の表面上に存在していてもよい。
【0015】
<ナトリウム二次電池>
次に、本開示のNaTP塩を含む負極と、正極及び電解液を備えることを特徴とするナトリウム二次電池について、実施形態の一例を示して説明する。
本実施形態において「ナトリウム二次電池」とは、ナトリウムイオン(Na)の挿入脱離により充放電が生じる電気化学デバイスであり、ナトリウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ナトリウムイオン電池、ナトリウム蓄電池、Na二次電池、Naイオン電池又はNa蓄電池等と同義である。
「非水系電解液」は溶媒として非水溶媒を含む電解液であり、「水系電解液」は溶媒として水溶媒を含む電解液である。
「非水系ナトリウム二次電池」は、電解液として非水系電解液を備えるナトリウム二次電池であり、「水系ナトリウム二次電池」は、電解液として水系電解液を備えるナトリウム二次電池である。
【0016】
<負極>
負極は、本実施形態のNaTP塩を含む負極活物質を含む負極合剤と、集電体とを備えていればよい。
負極合剤は、負極活物質、バインダー及び導電材、並びに、必要に応じて添加剤、を含む。バインダー、導電材及び添加剤は、それぞれ、公知のものを使用することができる。
バインダーは、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR材料及びイミド材料の群から選ばれる1以上、更にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)の群から選ばれる1以上が例示できる。
導電材は、炭素材料、金属繊維などの導電性繊維、銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属粉末、ポルフェニレン誘導体等の有機導電性材料から選ばれる1以上が例示できる。好ましい炭素材料として、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、メソポーラスカーボンが例示できる。
負極合剤は公知の方法で製造すればよく、負極活物質、バインダー及び導電材を所望の比率で混合すればよい。
【0017】
<正極>
正極は、正極活物質を含む正極合剤と集電体、必要に応じて添加剤を備えていればよい。
正極合剤は、正極活物質、バインダー及び導電材、並びに、必要に応じて添加剤、を含む。
正極活物質は、負極活物質のナトリウムイオンの挿入脱離を妨げない材料を含んでいればよく、ナトリウム含有遷移金属酸化物及びナトリウム含有ポリアニオン化合物及び炭素系材料の少なくともいずれかが例示できる。
バインダー及び導電材は公知のものであればよく、上記の負極合剤で使用できるバインダー及び導電材と同様であればよい。
正極合剤は公知の方法で製造すればよく、正極活物質、バインダー及び導電材を所望の比率で混合すればよい。
【0018】
<電解液>
電解液は、非水系電解液及び水系電解液のいずれかであり、水系電解液であることが好ましい。
電解質は、ナトリウム塩であり、可溶性のナトリウム塩が好ましい。好ましい電解質として、NaCl、NaSO、NaNO、NaClO、NaOH及びNaSの群から選ばれる1以上が例示できる。取り扱いの容易性から、電解質はNaCl、NaSO、NaNO及びNaClOの群から選ばれる1つ以上が好ましく、NaCl及びNaClOの少なくともいずれかであることがより好ましい。
電解液中の電解質濃度は特に制限はないが、ナトリウム二次電池としてのエネルギー密度を高くする観点から、電解液における電解質濃度(ナトリウム塩濃度)は高いことが好ましく、ナトリウム塩濃度として1mol/kg(1m)以上、飽和溶解度以下の濃度、が例示できる。
電解液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、特に限定されないが、コハク酸、グルタミン酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルコン酸、イタコン酸、ジグリコール、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、スルホラン、ジメチルスルホン及びN,N-ジメチルメタンスルホンアミドの群から選ばれる1以上が例示できる。添加剤の含有量は、電解液の質量に対する添加剤の質量割合として0.01質量%以上10質量%以下であることが例示できる。
【0019】
<その他の構成>
正極及び負極の集電体、セパレータなどの他の構成要素は、ナトリウム二次電池やリチウム二次電池で使用される公知のものが使用できる。
本実施形態のNaTP塩を含む負極を備えたナトリウム二次電池は、従来のナトリウム二次電池、特に負極活物質としてナシコン型NaTi(POを備えた従来の水系ナトリウム二次電池、と比べ、高いサイクル安定性を示す。
【実施例
【0020】
次に、本開示を実施例によって説明する。しかしながら、本開示はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0021】
<結晶性の評価>
NaTP塩の結晶構造を、デスクトップX線解析装置(装置名:MiniFlex600/ASC-8、リガク社製)で、下記の条件にて同定した。
ターゲット :Cu
出力 :0.6kW(15mA-40kV)
ステップスキャン:0.02°(2θ/θ)
計測時間 :0.05秒
【0022】
<組成分析>
NaTP塩の組成は、試料50mgを、10mLの35%塩酸及び1mLの35%過酸化水素水を含む水溶液に溶解し、これをICP分析することで組成を求めた。ICP分析は、ICP発光分析装置(装置名:ICPS-8100、島津製作所社製)を使用して行った。
【0023】
<表面層の観察>
透過型電子顕微鏡(装置名:JEM-2100、日本電子社製)、及び、サーマル電界放出形走査電子顕微鏡(装置名:JSM-7600F、日本電子社製)で行った。
【0024】
<ナトリウム二次電池>
(正極の作製)
正極活物質として立方体結晶構造のニッケルヘキサシアノフェレートNaNi([Fe(CN)]を使用した。NaNi([Fe(CN)]は以下の方法で合成した。すなわち、10mmolのNi(OCOCH・4HO 2.69gをHO 175mLおよびDMF(N,N-ジメチルホルムアミド。HCON(CH) 25mLに溶解し、第1溶液を得た。一方、10mmolのNa[Fe(CN)]・10HOの4.84gおよびNaClの7gをHO175mLに溶かして、第2溶液を得た。
第1溶液を第2溶液にゆっくり添加した後、室温で72時間、撹拌して反応させ沈殿物を得た。得られた沈殿物は、遠心分離して回収し、メタノールで洗浄した後、空気中で乾燥させて、立方体結晶構造のニッケルヘキサシアノフェレート(NaNi[Fe(CN)])を得た。
得られたNaNi([Fe(CN)]、アセチレンブラック(以下、「AB」ともいう。)及びポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ともいう。)を、質量比70:25:5となるように混合した後、直径3mmのペレット状に成形し、これを正極(正極合剤)とした。
【0025】
(負極の作製)
負極活物質とABを質量比84:16となるように、遊星ボールミルを使用して、400rpm、1時間、Ar雰囲気下で混合を行い混合物を得た。その後、混合物を800℃、1時間、Ar気流下でカーボサーマル処理を行った後、PTFEを、質量比95:5で混合し、直径2mmのペレット状に成形し、これを負極(負極合剤)とした。
【0026】
(水系ナトリウム二次電池の作製)
作用極(正極に相当する極)に正極合剤、対極(負極に相当する極)に負極合剤、参照極に塩化銀電極(Ag/AgCl)、及び、電解液に電解質濃度(NaClO濃度)17mのNaClO水溶液を備えた水系ナトリウム二次電池を作製した。
【0027】
(NaTP塩の合成)
<実施例1>
Ti(OCHCHCHCHを溶解したエタノール溶液40mLに、Ti(OCHCHCHCHに対し、2倍モル量のクエン酸、及び、2倍モル量の過酸化水素水(H)を混合して混合溶液を得た。得られた混合溶液中のTi(OCHCHCHCHに対し、1.05倍モル量のNaCO(Tiに対するNaのモル比として0.525)、1倍モル量のNHPO加えた後、これを500rpmで撹拌しながら60℃で30分、続いて80℃で1~2時間で蒸発乾固させた。その後、大気中、350℃で5時間加熱して得られた固形物を粉砕混合し、大気中、700℃で12時間加熱して、NaTi(POを含む表面層を有するNaTi(POを得、これを本実施例のNaTP塩とした。本実施例のNaTP塩の結晶子径は36nmであり、表面層の質量割合は1質量%であった。
遊星ボールミルを使用し、得られたNaTP塩と、ABとが質量比84:16となるように、アルゴン雰囲気下、400rpmで1時間混合した。得られた混合物を、アルゴン気流中、800℃で1時間焼成して、表面層を有するナシコン型構造のNaTi(PO(ナシコン型NaTi(PO)を含む負極活物質を得た。
【0028】
<実施例2>
NaCOを1.1倍モル量(Tiに対するNaのモル比として0.55)としたこと以外は実施例1と同様な方法により、表面層を有するナシコン型構造のNaTi(PO及び負極活物質を得た。本実施例のNaTP塩の結晶子径は38nmであり、表面層の質量割合は2質量%であった。
【0029】
<実施例3>
NaCOを1.15倍モル量(Tiに対するNaのモル比として0.575)としたこと以外は実施例1と同様な方法により、表面層を有するナシコン型構造のNaTi(PO及び負極活物質を得た。本実施例のNaTP塩の結晶子径は41nmであった。
【0030】
<実施例4>
NaCOを1.2倍モル量(Tiに対するNaのモル比として0.6)としたこと以外は実施例1と同様な方法により、表面層を有するナシコン型構造のNaTi(PO及び負極活物質を得た。本実施例のNaTP塩の結晶子径は49nmであった。
【0031】
<実施例5>
NaCOを1.5倍モル量(Tiに対するNaのモル比として0.75)としたこと以外は実施例1と同様な方法により、表面層を有するナシコン型構造のNaTi(PO及び負極活物質を得た。本実施例のNaTP塩の結晶子径は50nmであった。
【0032】
<実施例6>
NaCOを2倍モル量(Tiに対するNaのモル比として1)としたこと以外は実施例1と同様な方法により、表面層を有するナシコン型構造のNaTi(PO及び負極活物質を得た。本実施例のNaTP塩の結晶子径は50nmであった。
【0033】
<比較例1>
NaCOを1倍モル量(Tiに対するNaのモル比として0.5)としたこと以外は実施例1と同様な方法により、NaTi(POを含む表面層は有していないナシコン型構造のNaTi(PO及び負極活物質を得た。本比較例のNaTP塩の結晶子径は34nmであった。
【0034】
実施例及び比較例で得られた負極活物質のXRDパターンを図1および図2に示す。いずれもNaTi(POのXRDピークが確認された。実施例5および実施例6では、NaTi(POに帰属されるXRDピークも確認され、実施例において、NaTi(POを含む表面層(被覆層)を有するNaMP塩が得られることが分かった。
図3Aに実施例2のNaTi(POの断面TEM観察図を示す。また、図3Bに比較例1のNaTi(POの断面TEM観察図を示す。実施例2のNaTi(POにおいて、NaTi(POが白色、NaTi(POを含む表面層が灰色、及び、粒子外部(背景)が黒色で確認できる(図3A参照)。これより、NaTi(POと粒子の間に2~7nm、更には5nmの表面層を有することが確認できた。これに対し、比較例1のNaTi(POにおいて、NaTi(POが灰色、粒子外部(背景)が黒色で確認できる(図3B参照)。図3A及び図3Bより、実施例2と比較例1とはNaTi(POの粒子の表面構造が異なっていること、及び、実施例2のNaTi(POは、その粒子の表面に、表面層が存在することが確認できた。
【0035】
<測定例1>(充放電サイクル試験)
実施例又は比較例の負極活物質を備えた水系ナトリウム二次電池を使用し、以下の条件で充放電を繰返し、各充放電サイクルの放電容量を測定した。1サイクル目の放電容量に対する、30サイクル目の放電容量の割合(%)を容量維持率とし、これにより出力特性を評価した。
電流密度 :(1~5サイクル)2mA/cm
(6~10サイクル)5mA/cm
(11~15サイクル)10mA/cm
(16~20サイクル)15mA/cm
(21~25サイクル)20mA/cm
(26~30サイクル)25mA/cm
(31~35サイクル)2mA/cm
電圧 :-0.9V~-0.3V(vs Ag/AgCl参照極)
充放電温度:25℃
図4に1~35サイクルの放電容量を示す。また、容量維持率を下記表1に示す。
【0036】
【表1】
図4より、20mA/cmを超える高出力放電では、表面層(被覆層)を有するNaTP塩の充放電容量が大きく、表面層の組成に影響すると考えられるNaCO量が少ない実施例ほどこの傾向が顕著になった。
なお、30サイクル後、放電電流密度を2mA/cmとして充放電した結果、実施例及び比較例とも同様な放電容量であった。これより、表面層はサイクル特性への影響は小さく、高出力放電、すなわち高電流密度における充放電時の容量低下を抑制していることが確認できた。
【0037】
本出願は、2021年3月12日に出願された日本特許出願である特願2021-39890号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。

図1
図2
図3A
図3B
図4