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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びインナーチャンバ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20250123BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021175381
(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公開番号】P2023064923
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功英
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-243379(JP,A)
【文献】特開平8-148295(JP,A)
【文献】特開2004-040017(JP,A)
【文献】特開平11-317397(JP,A)
【文献】特表2017-503340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチャンバと、
下部電極を含み、前記アウターチャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記基板支持部の上方に設けられた上部電極と、
前記基板支持部と共に、前記アウターチャンバ内で前記基板支持部上に基板処理空間を画成するインナーチャンバと、
前記アウターチャンバの底部に設けられた排気口を介して、前記アウターチャンバの中且つ前記インナーチャンバの外に提供された空間に接続する排気装置と、
を備え、
前記インナーチャンバは、前記上部電極に脱着可能であり、
前記基板処理空間上で延在し、複数のガス孔を提供し、前記上部電極と共にシャワーヘッドを構成する天部と、
前記基板処理空間を囲むように周方向に延在する側壁部と、
を含み、
前記側壁部は、複数の貫通孔を提供し、その下端から上端に向かう方向に沿って段階的又は連続的に増加する開口面積を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記側壁部は、上側部分と下側部分を含み、
前記上側部分の開口面積が、前記下側部分の開口面積よりも大きい、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記上側部分は、前記側壁部において、前記上端と下端との間の中央から前記上端までの部分であり、
前記下側部分は、前記側壁部において、前記中央から前記下端までの部分である、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記複数の貫通孔は、円形又は長円形状を有する、請求項2又は3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記複数の貫通孔のうち前記上側部分に設けられた複数の第1の貫通孔の各々の最大幅は、前記複数の貫通孔のうち前記下側部分に設けられた複数の第2の貫通孔の各々の最大幅よりも大きい、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記上側部分における前記複数の貫通孔の密度は、前記下側部分における前記複数の貫通孔の密度よりも高い、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記複数の貫通孔は、円形又は長円形状を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記複数の貫通孔の各々は、該複数の貫通孔のうちそれよりも前記下端の近くに設けられた貫通孔の最大幅よりも大きい最大幅を有する、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記複数の貫通孔の密度が、前記下端から前記上端に向かう方向に沿って増加している、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記側壁部は、前記上端と前記下端との間で膨らんだ形状を有する、請求項1~9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
プラズマ処理装置のアウターチャンバ内で用いられるインナーチャンバであって、
基板処理空間上で延在し、複数のガス孔を提供する天部と、
前記基板処理空間を囲むように該基板処理空間の側方で周方向に延びる側壁部と、
を備え、
前記側壁部は、複数の貫通孔を提供し、その下端から上端に向かう方向に沿って段階的又は連続的に増加する開口面積を有する、
インナーチャンバ。
【請求項12】
前記側壁部は、上側部分と下側部分を含み、
前記上側部分の開口面積が、前記下側部分の開口面積よりも大きい、
請求項11に記載のインナーチャンバ。
【請求項13】
前記上側部分は、前記側壁部において、前記上端と下端との間の中央から前記上端までの部分であり、
前記下側部分は、前記側壁部において、前記中央から前記下端までの部分である、
請求項12に記載のインナーチャンバ。
【請求項14】
前記複数の貫通孔は、円形又は長円形状を有する、請求項12又は13に記載のインナーチャンバ。
【請求項15】
前記複数の貫通孔のうち前記上側部分に設けられた複数の第1の貫通孔の各々の最大幅は、前記複数の貫通孔のうち前記下側部分に設けられた複数の第2の貫通孔の各々の最大幅よりも大きい、請求項14に記載のインナーチャンバ。
【請求項16】
前記上側部分における前記複数の貫通孔の密度は、前記下側部分における前記複数の貫通孔の密度よりも高い、請求項14に記載のインナーチャンバ。
【請求項17】
前記複数の貫通孔は、円形又は長円形状を有する、請求項11に記載のインナーチャンバ。
【請求項18】
前記複数の貫通孔の各々は、該複数の貫通孔のうちそれよりも前記下端の近くに設けられた貫通孔の最大幅よりも大きい最大幅を有する、請求項17に記載のインナーチャンバ。
【請求項19】
前記複数の貫通孔の密度が、前記下端から前記上端に向かう方向に沿って増加している、請求項17に記載のインナーチャンバ。
【請求項20】
前記側壁部は、前記上端と前記下端との間で膨らんだ形状を有する、請求項11~19の何れか一項に記載のインナーチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及びインナーチャンバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置の一種として、容量結合型のプラズマ処理装置が用いられている。特許文献1及び特許文献2に記載された容量結合型のプラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、上部電極、及びバッフル板を有する。基板支持部は、下部電極を含み、チャンバ内に設けられている。基板支持部は、その上面の上に載置される基板を支持する。上部電極は、基板支持部上に設けられており、シャワーヘッドを構成している。バッフル板は、基板支持部の上面よりも下方で基板支持部を囲むように設けられている。バッフル板は、複数の貫通孔を提供している。チャンバの底部は、バッフル板の下方で排気口を提供しており、当該排気口には排気装置が接続されている。バッフル板は、その内周部から外周部に向けて開口面積が広くなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-200460号公報
【文献】特開平11-317397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理空間内での径方向におけるガスの流速のバラツキを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、アウターチャンバ、基板支持部、上部電極、インナーチャンバ、及び排気装置を備える。アウターチャンバは、その底部において排気口を提供している。基板支持部は、下部電極を含み、アウターチャンバ内に設けられている。上部電極は、基板支持部の上方に設けられている。インナーチャンバは、基板支持部と共に、アウターチャンバ内で基板支持部上に基板処理空間を画成する。排気装置は、アウターチャンバの排気口を介して、アウターチャンバの中且つインナーチャンバの外に提供された空間に接続する。インナーチャンバは、上部電極に脱着可能である。インナーチャンバは、天部及び側壁部を含む。天部は、基板処理空間上で延在し、複数のガス孔を提供する。天部は、上部電極と共にシャワーヘッドを構成する。側壁部は、基板処理空間を囲むように周方向に延在する。側壁部は、複数の貫通孔を提供する。側壁部は、その下端から上端に向かう方向に沿って段階的又は連続的に増加する開口面積を有する。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、基板処理空間内での径方向におけるガスの流速のバラツキを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2図2の(a)、図2の(b)、及び図2の(c)の各々は、インナーチャンバの上側部分及び下側部分の各々の例示的な平面図である。
図3図3の(a)、図3の(b)、及び図3の(c)の各々は、インナーチャンバの上側部分及び下側部分の各々の例示的な平面図である。
図4図4の(a)及び図4の(b)の各々は、第1のシミュレーション及び第2のシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、アウターチャンバ、基板支持部、上部電極、インナーチャンバ、及び排気装置を備える。アウターチャンバは、その底部において排気口を提供している。基板支持部は、下部電極を含み、アウターチャンバ内に設けられている。上部電極は、基板支持部の上方に設けられている。インナーチャンバは、基板支持部と共に、アウターチャンバ内で基板支持部上に基板処理空間を画成する。排気装置は、アウターチャンバの排気口を介して、アウターチャンバの中且つインナーチャンバの外に提供された空間に接続する。インナーチャンバは、上部電極に脱着可能である。インナーチャンバは、天部及び側壁部を含む。天部は、基板処理空間上で延在し、複数のガス孔を提供する。天部は、上部電極と共にシャワーヘッド(ガスシャワーヘッド)を構成する。側壁部は、基板処理空間を囲むように周方向に延在する。側壁部は、複数の貫通孔を提供する。側壁部は、その下端から上端に向かう方向に沿って段階的又は連続的に増加する開口面積を有する。
【0010】
別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置のアウターチャンバ内で用いられるインナーチャンバが提供される。インナーチャンバは、天部及び側壁部を備える。天部は、基板処理空間上で延在し、複数のガス孔を提供する。側壁部は、基板処理空間を囲むように基板処理空間の側方で周方向に延びる。側壁部は、複数の貫通孔を提供し、その下端から上端に向かう方向に沿って段階的又は連続的に増加する開口面積を有する。
【0011】
上記実施形態によれば、基板処理空間内で径方向におけるガスの圧力のバラツキが低減される。したがって、基板処理空間内での径方向におけるガスの流速のバラツキが低減される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、側壁部は、上側部分と下側部分を含んでいてもよい。上側部分の開口面積が、下側部分の開口面積よりも大きくてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、上側部分は、側壁部において、上端と下端との間の中央から上端までの部分であってもよい。即ち、上側部分は、側壁部の上側半分の部分であってもよい。下側部分は、側壁部において、当該中央から下端までの部分であってもよい。即ち、下側部分は、側壁部の下側半分の部分であってもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、複数の貫通孔は、円形又は長円形状を有していてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、複数の貫通孔のうち上側部分に設けられた複数の第1の貫通孔の各々の最大幅(直径又は長軸の幅)は、複数の貫通孔のうち下側部分に設けられた複数の第2の貫通孔の各々の最大幅(直径又は長軸の幅)よりも大きくてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、上側部分における複数の貫通孔の密度は、下側部分における複数の貫通孔の密度よりも高くてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、複数の貫通孔の各々は、複数の貫通孔のうちそれよりも下端の近くに設けられた貫通孔の最大幅(直径又は長軸の幅)よりも大きい最大幅(直径又は長軸の幅)を有していてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、複数の貫通孔の密度が、下端から上端に向かう方向に沿って増加していてもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、側壁部は、上端と下端との間で膨らんだ形状を有していてもよい。或いは、側壁部は、円筒形状を有していてもよい。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、アウターチャンバ10、基板支持部12、上部電極14、インナーチャンバ16、及び排気装置11を備えている。
【0022】
アウターチャンバ10は、その内部において内部空間を提供している。アウターチャンバ10は、アルミニウムといった金属から形成されている。アウターチャンバ10は、電気的に接地されている。アウターチャンバ10の表面上には、耐腐食性の膜が形成されていてもよい。耐腐食性の膜は、例えば、酸化アルミニウム又は酸化イットリウムといった材料から形成される。
【0023】
アウターチャンバ10は、側壁10sを含んでいる。側壁10sは、略円筒形状を有している。側壁10sの中心軸線は、鉛直方向に延びており、図1においては軸線AXとして示されている。側壁10sは、通路10pを提供している。通路10pは、ゲートバルブ10gによって開閉可能である。基板Wは、アウターチャンバ10の内部空間とアウターチャンバ10の外部との間で搬送装置によって搬送されるときに、通路10pを通過する。
【0024】
側壁10sは、開口10oを更に提供している。開口10oは、インナーチャンバ16が通過可能なサイズを有している。開口10oは、ゲートバルブ10vによって開閉可能である。インナーチャンバ16は、アウターチャンバ10の内部空間とアウターチャンバ10の外部との間で搬送装置によって搬送されるときに、開口10oを通過する。
【0025】
アウターチャンバ10は、上部10uを更に含んでいてもよい。上部10uは、側壁10sの上端から軸線AXに交差する方向に延在している。上部10uは、軸線AXに交差する領域において開口を提供している。
【0026】
アウターチャンバ10は、その底部において排気口10eを提供している。アウターチャンバ10の底部には、排気管13が、排気口10eに接続するように取り付けられている。排気装置11は、排気管13及び排気口10eを介して、アウターチャンバ10の中且つインナーチャンバ16の外に提供された空間(排気空間)に接続している。排気装置11は、自動圧力制御弁といった圧力調整器及びターボ分子ポンプといった減圧ポンプを含んでいる。
【0027】
基板支持部12は、アウターチャンバ10内に設けられている。基板支持部12は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板支持部12は、下部電極を提供している。基板支持部12は、基台22及び静電チャック24を含んでいてもよい。基台22は、略円盤形状を有している。基台22の中心軸線は、軸線AXに略一致している。基台22は、アルミニウムといった導体から形成されている。基台22は、下部電極を構成し得る。基台22は、その中に流路22fを提供している。流路22fは、例えば渦巻き状に延在している。流路22fは、チラーユニット23に接続されている。チラーユニット23は、アウターチャンバ10の外部に設けられている。チラーユニット23は、熱媒体(例えば冷媒)を流路22fに供給する。流路22fに供給された熱媒体は、流路22fの中を流れてチラーユニット23に戻される。
【0028】
静電チャック24は、基台22上に設けられている。静電チャック24は、本体と電極チャックを含んでいる。静電チャック24の本体は、略円盤形状を有している。静電チャック24の中心軸線は、軸線AXと略一致している。静電チャック24の本体は、セラミックから形成されている。基板Wは、静電チャック24の本体の上面の上に載置される。チャック電極は、導体から形成された膜である。チャック電極は、静電チャック24の本体内に設けられている。チャック電極は、スイッチを介して直流電源に接続されている。直流電源からの電圧がチャック電極に印加されると、静電チャック24と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは静電チャック24に引き付けられ、静電チャック24によって保持される。プラズマ処理装置1は、静電チャック24と基板Wの裏面との間の間隙に、伝熱ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給するガスラインを提供していてもよい。
【0029】
基板支持部12は、その上に配置されるエッジリングERを更に支持していてもよい。基板Wは、エッジリングERによって囲まれた領域内で静電チャック24上に載置される。エッジリングERは、例えばシリコン、石英、又は炭化ケイ素から形成される。
【0030】
プラズマ処理装置1は、絶縁部26を更に備えていてもよい。絶縁部26は、石英といった絶縁体から形成されている。絶縁部26は、略筒形状を有し得る。絶縁部26は、基台22の外周及び静電チャック24の外周に沿って延在している。
【0031】
プラズマ処理装置1は、導体部28を更に備えていてもよい。導体部28は、アルミニウムといった導体から形成されている。導体部28は、略筒形状を有し得る。導体部28は、絶縁部26の外周面に沿って延在している。導体部28は、絶縁部26の径方向外側で周方向に延在している。なお、径方向及び周方向の各々は、軸線AXを基準とする方向である。導体部28は、グランドに接続されている。一例では、導体部28は、アウターチャンバ10を介してグランドに接続されている。導体部28は、アウターチャンバ10の一部であってもよい。
【0032】
プラズマ処理装置1は、高周波電源31及びバイアス電源32を更に備えていてもよい。高周波電源31は、ソース高周波電力を発生する電源である。ソース高周波電力は、プラズマの生成に適した周波数を有する。ソース高周波電力の周波数は、例えば27MHz以上である。高周波電源31は、整合器31mを介して基板支持部12内の下部電極に電気的に接続されている。高周波電源31は、基台22に電気的に接続されていてもよい。整合器31mは、高周波電源31の負荷側のインピーダンスを高周波電源31の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を有している。なお、高周波電源31は、基板支持部12内の別の電極に電気的に接続されていてもよい。或いは、高周波電源31は、上部電極に整合器31mを介して接続されていてもよい。
【0033】
バイアス電源32は、電気バイアスエネルギーを発生する電源である。電気バイアスエネルギーは、プラズマから基板Wにイオンを引き込むために基板支持部12の下部電極に供給される。電気バイアスエネルギーは、バイアス高周波電力であってもよい。バイアス高周波電力の波形は、バイアス周波数を有する正弦波である。バイアス周波数は、例えば13.56MHz以下である。この場合に、バイアス電源32は、整合器32mを介して基板支持部12の下部電極に電気的に接続されている。バイアス電源32は、基台22に電気的に接続されていてもよい。整合器32mは、バイアス電源32の負荷側のインピーダンスをバイアス電源32の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を有している。なお、バイアス電源32は、基板支持部12内の別の電極に電気的に接続されていてもよい。
【0034】
或いは、電気バイアスエネルギーは、上述のバイアス周波数の逆数の時間間隔で周期的に発生される電圧のパルスであってもよい。電圧のパルスは、負の極性を有していてもよい。電圧のパルスは、負の直流電圧から生成されるパルスであってもよい。
【0035】
上部電極14は、基板支持部12の上方に設けられている。上部電極14は、アウターチャンバ10の上部10uの下方、且つ、側壁10sの内側に設けられている。上部電極14は、アウターチャンバ10内で上方及び下方に移動可能であるように構成されている。
【0036】
プラズマ処理装置1は、リフト機構34を更に備えていてもよい。リフト機構34は、上部電極14を上方及び下方に移動させるように構成されている。リフト機構34は、上部電極14を移動させるための動力を発生する駆動装置(例えば、モータ)を含む。リフト機構34は、アウターチャンバ10の外部且つ上部10uの上又は上方に設けられていてもよい。
【0037】
プラズマ処理装置1は、ベローズ36を更に備えていてもよい。ベローズ36は、上部電極14と上部10uとの間に設けられている。ベローズ36は、アウターチャンバ10の内部空間をアウターチャンバ10の外部から分離している。ベローズ36の下端は、上部電極14に固定されている。ベローズ36の上端は、上部10uに固定されている。
【0038】
上部電極14は、略円盤形状を有している。上部電極14の中心軸線は、軸線AXである。上部電極14は、アルミニウムのような導体から形成されている。一実施形態において、上部電極14は、高周波電源31が基板支持部12内の下部電極に電気的に接続されている場合には、接地され得る。この場合において、上部電極14は、接続部材37を介してアウターチャンバ10の内壁面に接触していてもよい。
【0039】
上部電極14は、インナーチャンバ16の後述する天部と共にシャワーヘッドを構成する。シャワーヘッドは、後述する基板処理空間Sにガスを供給するように構成されている。このため、上部電極14は、ガス拡散室14d及び複数のガス孔14hを提供する。
【0040】
ガス拡散室14dは、上部電極14の中に提供されている。ガス拡散室14dには、ガス供給部38が接続されている。ガス供給部38は、アウターチャンバ10の外部に設けられている。ガス供給部38は、プラズマ処理装置1において用いられる一つ以上のガスのソース、一つ以上の流量制御器、及び一つ以上のバルブを含む。一つ以上のガスのソースの各々は、対応の流量制御器及び対応のバルブを介して、ガス拡散室14dに接続されている。複数のガス孔14hは、ガス拡散室14dから下方に延びている。
【0041】
一実施形態において、上部電極14は、その中に流路14fを提供していてもよい。流路14fは、チラーユニット40に接続されている。チラーユニット40は、アウターチャンバ10の外部に設けられている。チラーユニット40は、熱媒体(例えば冷媒)を流路14fに供給する。流路14fに供給された熱媒体は、流路14fの中を流れてチラーユニット40に戻される。
【0042】
インナーチャンバ16は、基板支持部12と共に、アウターチャンバ10内で基板支持部12上に基板処理空間Sを画成する。インナーチャンバ16は、アルミニウムのような金属から形成されていてもよい。インナーチャンバ16の表面上には、耐腐食性の膜が形成されていてもよい。耐腐食性の膜は、例えば、酸化アルミニウム又は酸化イットリウムといった材料から形成される。
【0043】
インナーチャンバ16は、上部電極14に着脱可能である。インナーチャンバ16又はその天部16cは、一つ以上のコンタクト部材18により、上部電極14に着脱可能に固定される。インナーチャンバ16は、アウターチャンバ10の内部と外部との間で搬送可能であるように構成されている。
【0044】
プラズマ処理装置1は、上部電極14に対するインナーチャンバ16の固定を解除するために、アクチュエータ20を更に備えていてもよい。アクチュエータ20は、インナーチャンバ16を下方に移動させるように構成されている。一実施形態において、アクチュエータ20は、駆動装置20dを含む。アクチュエータ20は、複数のロッド20rを含んでいてもよい。
【0045】
駆動装置20dは、アウターチャンバ10の外部に設けられている。駆動装置20dは、その駆動シャフト20mを上下に移動させる動力を発生する。駆動装置20dは、エアシリンダのような動力シリンダ又はモータを含んでいてもよい。駆動装置20dは、アウターチャンバ10の外部において上部電極14に固定されている。
【0046】
複数のロッド20rは、駆動シャフト20mに結合されている。複数のロッド20rは、駆動シャフト20mから下方に延びている。複数のロッド20rは、軸線AXの周りで周方向に沿って配列されている。複数のロッド20rは、等間隔に配列され得る。
【0047】
上部電極14は、鉛直方向に延びる複数の貫通孔を提供している。複数の貫通孔は、上部電極14の上面からガス拡散室14dを通って上部電極14の下面まで上部電極14を貫通している。複数のロッド20rは、上部電極14の複数の貫通孔の中に挿入されている。上部電極14と複数のロッド20rの各々との間には、Oリングのような封止部材48が設けられている。また、複数のロッド20rは、ガス拡散室14d内においては、筒状部材46の内孔の中を通っている。
【0048】
複数のロッド20rは、駆動装置20dによって上下に移動される。複数のロッド20rは、インナーチャンバ16が上部電極14に対して固定されている状態では、それらの下端がインナーチャンバ16の天部16cの上面と同一水平レベル又は当該上面よりも上方に位置するように、配置される。複数のロッド20rは、インナーチャンバ16を上部電極14から取り外す際には、それらの下端をインナーチャンバ16の天部16cの上面に当接させた状態でインナーチャンバ16を下方に移動させるように駆動装置20dによって移動される。
【0049】
インナーチャンバ16は、天部16c及び側壁部16sを含む。天部16cは、基板支持部12の上方且つ上部電極14の下に配置可能である。天部16cは、板状であり、且つ、略円盤形状を有する。天部16cは、アウターチャンバ10内では、その中心軸線が軸線AX上に位置するように配置される。天部16cは、アウターチャンバ10の中では、上部電極14の直下に配置されてもよい。或いは、伝熱シートが、上部電極14の下面とインナーチャンバ16との間で挟持されていてもよい。
【0050】
上述したように、天部16cは、上部電極14と共にシャワーヘッドを構成する。天部16cは、複数のガス孔16gを提供する。複数のガス孔16gは、天部16cを貫通している。天部16cは、複数のガス孔16gがそれぞれ複数のガス孔14hに連通するように、アウターチャンバ10内に配置される。上述したガス供給部38からのガスは、ガス拡散室14d、複数のガス孔14h、及び複数のガス孔16gを介して、基板処理空間Sに供給される。
【0051】
側壁部16sは、基板処理空間Sを囲むように周方向に延在している。側壁部16sは、天部16cの周縁部から下方に延びている。側壁部16sは、アウターチャンバ10内では、その中心軸線が軸線AX上に位置するように配置される。側壁部16sの下端16bは、導体部28に接触するように構成されていてもよい。
【0052】
一実施形態において、側壁部16sは、その上端16uとその下端16bとの間で径方向に膨らんだ形状を有していてもよい。この場合には、基板処理空間S内で生成されるプラズマと側壁部16sとの間の距離がより均一化される。別の実施形態においては、側壁部16sは、円筒形状を有していてもよい。
【0053】
以下、図1と共に、図2の(a)、図2の(b)、図2の(c)、図3の(a)、図3の(b)、及び図3の(c)を参照する。図2の(a)、図2の(b)、図2の(c)、図3の(a)、図3の(b)、及び図3の(c)の各々は、インナーチャンバの上側部分及び下側部分の各々の例示的な平面図である。
【0054】
側壁部16sは、複数の貫通孔16hを提供している。複数の貫通孔16hは、基板処理空間Sと側壁部16sの外側の空間(排気空間)とを互いに連通させている。基板処理空間S内のガスは、複数の貫通孔16h及び側壁部16sの外側の空間(排気空間)を介して排気装置11によって排気される。複数の貫通孔16hは、均等な排気をもたらすように周方向においては均等に分布している。複数の貫通孔16hがもたらす側壁部16sの開口面積は、下端16bから上端16uに向かう方向に沿って段階的又は連続的に増加している。
【0055】
一実施形態において、側壁部16sは、上側部分161及び下側部分162を含む。上側部分161は、上端16uを含み、下側部分162の上で延在している。上側部分161は、側壁部16sにおいて、上端16uと下端16bとの間の中央から上端16uまでの部分であってもよい。即ち、上側部分161は、側壁部16sの上側半分の部分であってもよい。下側部分162は、下端16bを含み、上側部分161の下で延在している。下側部分162は、側壁部16sにおいて、上端16uと下端16bとの間の中央から下端16bまでの部分であってもよい。即ち、下側部分162は、側壁部16sの下側半分の部分であってもよい。一実施形態において、上側部分161の開口面積は、下側部分162の開口面積よりも大きくてもよい。
【0056】
一実施形態において、複数の貫通孔16hは、上側部分161に形成された複数の第1の貫通孔161hを含んでいてもよい。また、複数の貫通孔16hは、下側部分162に形成された複数の第2の貫通孔162hを含んでいてもよい。
【0057】
一実施形態においては、図2の(a)に示すように、複数の貫通孔16hは、円形状を有していてもよい。この場合に、複数の第1の貫通孔161hの各々の直径は、複数の第2の貫通孔162hの各々の直径よりも大きくてもよい。
【0058】
一実施形態においては、図2の(b)に示すように、複数の貫通孔16hは、長円形状を有していてもよい。複数の貫通孔16hの各々の長軸は、鉛直方向及び径方向に直交する方向に延びていてもよい。この場合に、複数の第1の貫通孔161hの各々の最大幅(長軸の幅)は、複数の第2の貫通孔162hの各々の最大幅(長軸の幅)よりも大きくてもよい。
【0059】
一実施形態においては、図2の(c)に示すように、上側部分161における複数の第1の貫通孔161hの密度は、下側部分162における複数の第2の貫通孔162hの密度よりも高くてもよい。この場合に、複数の第1の貫通孔161h及び複数の第2の貫通孔162hは、円形状又は長円形状を有していてもよい。複数の第1の貫通孔161hの各々の最大幅(直径又は長軸の幅)は、複数の第2の貫通孔162hの各々の最大幅(直径又は長軸の幅)と同一であってもよく、異なっていてもよい。複数の第1の貫通孔161hの各々の最大幅(直径又は長軸の幅)は、複数の第2の貫通孔162hの各々の最大幅(直径又は長軸の幅)よりも大きくてもよい。また、上側部分161は、異なる最大幅を有する複数の第1の貫通孔161hを提供していてもよい。なお、図示しないが、複数の貫通孔16hの密度は、下端16bから上端16uに向かう方向に沿って連続的に増加していてもよい。
【0060】
一実施形態においては、図3の(a)に示すように、複数の貫通孔16hは、円形状を有していてもよい。また、一実施形態においては、図3の(b)に示すように、複数の貫通孔16hは、長円形状を有していてもよい。図3の(a)及び図3の(b)に示すように、複数の貫通孔16hの各々は、複数の貫通孔16hのうちそれよりも下端16bの近くに設けられた貫通孔16hの最大幅(直径又は長軸の幅)よりも大きい最大幅(直径又は長軸の幅)を有していてもよい。即ち、複数の貫通孔16hの最大幅(直径又は長軸の幅)は、下端16bから上端16uに向かう方向に沿って連続的に増加していてもよい。
【0061】
一実施形態においては、図3の(c)に示すように、複数の貫通孔16hの各々は、下端16bから上端16uに向かう方向に長く延びていてもよい。この場合に、複数の貫通孔16hの各々の幅は、下端16bから上端16uに向かう方向に沿って連続的に増加している。
【0062】
以上説明したプラズマ処理装置1及びインナーチャンバ16によれば、基板処理空間S内で径方向におけるガスの圧力のバラツキが低減される。したがって、基板処理空間S内での径方向におけるガスの流速のバラツキが低減される。
【0063】
以下、プラズマ処理装置1の評価のために行った第1のシミュレーション#1及び第2のシミュレーション#2について説明する。第1のシミュレーション#1では、側壁部16sは、図2の(a)に示す複数の貫通孔16hを有していた。第1のシミュレーション#1において、上側部分161は側壁部16sの上側半分であり、下側部分162は側壁部16sの下側半分であった。第1のシミュレーション#1において、複数の第1の貫通孔161hの直径は4mmであり、複数の第2の貫通孔162hの直径は3mmであった。第2のシミュレーション#2の条件は、複数の第1の貫通孔161hの直径及び複数の第2の貫通孔162hの直径が共に3mmである点でのみ、第1のシミュレーション#1の条件と異なっていた。第1のシミュレーション#1及び第2のシミュレーション#2では、基板処理空間S内でのガスの圧力の標準偏差及びガスの流速の標準偏差を求めた。
【0064】
図4の(a)及び図4の(b)の各々は、第1のシミュレーション及び第2のシミュレーションの結果を示す図である。図4の(a)及び図4の(b)に示すように、第1のシミュレーション#1では、第2のシミュレーション#2と比較して、基板処理空間S内でのガスの圧力の標準偏差及びガスの流速の標準偏差が小さくなっていた。したがって、プラズマ処理装置1によれば、基板処理空間S内での径方向におけるガスの流速のバラツキを低減可能であることが確認された。
【0065】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0066】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0067】
1…プラズマ処理装置、10…アウターチャンバ、11…排気装置、12…基板支持部、14…上部電極、16…インナーチャンバ、16c…天部、16s…側壁部、16h…貫通孔。
図1
図2
図3
図4