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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】湿気硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20250124BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20250124BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20250124BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K5/29
C08K5/544
C09K3/10 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024073523
(22)【出願日】2024-04-30
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】神田 彩香
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-124093(JP,A)
【文献】特開2022-077120(JP,A)
【文献】特開2020-172621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(P)と、
潜在性アミノ基を有し、架橋性シリル基を有しない潜在性アミン(A)と、
架橋性シリル基と1分子中に1個のみのアミノ基を有するモノアミノシラン(S)と、を含有し、
前記モノアミノシラン(S)は、前記重合体(P)100質量部に対して10.4~15質量部の含有量で存在する、湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記モノアミノシラン(S)は、前記潜在性アミン(A)100質量部に対して25~400質量部の含有量で存在する、請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
シーリング材を形成するための組成物として用いられる、請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物を準備するステップと、
前記湿気硬化型樹脂組成物を硬化させるステップと、を備えるシーリング材の生産方法。
【請求項5】
請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物を硬化させて得られるシーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーリング材用の湿気硬化型樹脂組成物として、架橋性シリル基を有する重合体と、異なる融点を有する2種の異なるケチミンとを含有する組成物が知られている(例えば、特許文献1)。この組成物は、2種の異なるケチミンを含有させることにより、該組成物を硬化して得られる硬化物の表面の均一性と耐汚染性を改善することを意図したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-077120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が特許文献1に記載の湿気硬化型樹脂組成物について検討したところ、組成及び保存条件によっては貯蔵安定性が必ずしも充分でなく、時間経過に伴って作業性が低下したり、貯蔵可能期間が短くなったりする等のデメリットがあり、貯蔵安定性を更に高める余地があることを見いだした。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、従来よりも更に優れた貯蔵安定性を有する湿気硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、湿気硬化型樹脂組成物にモノアミノシランを配合することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
[1]
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(P)と、
潜在性アミノ基を有し、架橋性シリル基を有しない潜在性アミン(A)と、
架橋性シリル基と1分子中に1個のみのアミノ基を有するモノアミノシラン(S)と、を含有し、
前記モノアミノシラン(S)は、前記重合体(P)100質量部に対して10.4~30質量部の含有量で存在する湿気硬化型樹脂組成物。

前記モノアミノシラン(S)は、前記アミン(A)100質量に対して25~400質量の含有量で存在する、[1]又は[2]に記載の湿気硬化型樹脂組成物。

シーリング材を形成するための組成物として用いられる、[1]又は[2]に記載の湿気硬化型樹脂組成物。

[1]~[]に記載の湿気硬化型樹脂組成物を準備するステップと、
前記湿気硬化型樹脂組成物を硬化させるステップと、を備えるシーリング材の生産方法。

[1]~[]に記載の湿気硬化型樹脂組成物を硬化させて得られるシーリング材。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、従来よりも貯蔵安定性に優れた湿気硬化型樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の湿気硬化型樹脂組成物について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0010】
[湿気硬化型樹脂組成物]
本発明の湿気硬化型樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(P)と、アミノ基及び/又は潜在性アミノ基を有し、架橋性シリル基を有しないアミン(A)と、架橋性シリル基と1分子中に1個のみのアミノ基を有するモノアミノシラン(S)と、を含有する、湿気硬化型樹脂組成物である。
【0011】
本発明の組成物はこのような成分を含有するため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(P)は、その分子中にエステル結合を有する。そのエステル結合は、組成物中に存在するアミン(A)と副反応してアミド結合を形成することがある。そのような重合体(P)を含む組成物中に架橋性シリル基と1分子中に1個のみのアミノ基を有するモノアミノシラン(S)が存在すると、副反応においてアミン(A)と競合し、重合体(P)がアミン(A)と反応するのを防ぐことができ、貯蔵安定性を向上することができると考えられる。
【0012】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0013】
<重合体(P)>
本発明の組成物は、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(P)を含む。
重合体(P)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルによる繰り返し単位を含む。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、無置換であってもよく、又は、置換基を有してもよい。
重合体(P)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルによる繰り返し単位以外の繰り返し単位を更に含むことができる。
【0014】
(架橋性シリル基)
重合体(P)は、架橋性シリル基を有する。重合体(P)は、1分子中に少なくとも1個の架橋性シリル基を有することが好ましい。重合体(P)は、架橋性シリル基を末端に有するのが好ましい。上記架橋性シリル基は、例えば、湿気等の存在下、硬化触媒等を使用することにより縮合反応できる。
【0015】
架橋性シリル基は、例えば、加水分解性シリル基であってもよい。上記架橋性シリル基は、加水分解性シリル基が加水分解したシラノール基を含んでいてもよい。
上記架橋性シリル基(加水分解性シリル基)は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基がケイ素原子に結合した基であってもよい。
【0016】
(加水分解性基)
上記加水分解性基は、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。上記加水分解性基は、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。
【0017】
上記加水分解性シリル基は、トリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基がより好ましい。
重合体(P)が2種以上の重合体を含む場合、1種類がトリアルコキシシリル基を有する重合体であり、他の1種がジアルコキシシリル基(好ましくは、ジメトキシシリル基)を有する重合体であってもよい。
なお、1つのケイ素原子に上記加水分解性基が1~2個結合する場合、上記加水分解性基以外に上記ケイ素原子に結合できる基は特に制限されない。例えば、炭化水素基が挙げられる。
【0018】
上記架橋性シリル基は、上記加水分解性シリル基以外に、更に、シロキサン結合を有することができる。シロキサン結合は2価以上とすることができる。架橋性シリル基が更にシロキサン結合を有する場合、上記シロキサン結合が、上記主鎖と結合できる。
上記シロキサン結合は、-Si-O-であれば特に制限されない。上記-Si-O-においてケイ素原子に結合する有機基は特に制限されない。
また、上記シロキサン結合はポリシロキサンであってもよい。上記ポリシロキサンは、2価であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0019】
<主鎖と架橋性シリル基との結合>
重合体(P)において、上記架橋性シリル基は、直接又は有機基を介して、上記主鎖と結合できる。上記有機基は特に制限されない。
【0020】
(分子量)
重合体(P)の重量平均分子量は、20,000~100,000が好ましく、40,000~80,000がより好ましい。
上記重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0021】
(含有量)
本発明の組成物において、重合体(P)は、組成物全体に対して、10~90質量%の含有量で存在することが好ましい。上記含有量は、15~80質量%であることがより好ましい。
【0022】
<アミン(A)>
本発明の組成物は、アミノ基及び/又は潜在性アミノ基を有し、架橋性シリル基を有しないアミン(A)を含有する。
【0023】
<アミン(A-1)>
アミン(A)は、アミノ基を有し、架橋性シリル基を有しないアミン(A-1)であってもよい。アミン(A-1)は、1分子中に少なくとも1個の1級アミノ基を有するアルキルアミンであることが好ましい。1級アミノ基は、-NHを意味する。アミン(A)は、1分子中に2個以上の1級アミノ基を有するアルキルアミンであってもよい。
【0024】
(アルキル基)
アミン(A-1)のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。アミン(A-1)は、例えば、環状の直鎖状のアルキル基の末端に1級アミノ基を1個以上有する構造であってもよいし、直鎖状のアルキル基の末端に1級アミノ基を1個以上有する構造であってもよい。
【0025】
(好適な態様)
アミン(A)のアルキル基の炭素数は、3~40であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、10~25であることが更に好ましく、15~20であることが更により好ましい。
アミン(A)は、常温で固体のアミンであってもよい。アミン(A)は、例えば、ステアリルアミン、セチルアミンであってもよい。
【0026】
<ケチミン(K)>
上記アミン(A)は、ケチミン(K)であってもよい。ケチミン(K)は、加水分解したときにアミンを生成する化合物である。ケチミン(K)は、加水分解したときに生成するアミンが、1分子中に少なくとも1個の1級アミノ基を有するアルキルアミンである化合物であることが好ましい。その加水分解により生成されるアルキルアミンは、上記アミン(A-1)と同様であることが好ましい。
【0027】
<カルボニル化合物>
ケチミン(K)が加水分解した場合、通常、アミン(A)とともにカルボニル化合物(C)が生成する。
【0028】
上記カルボニル化合物(C)は、RC(=O)Rで表される化合物であることが好ましい。
ここで、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキル基であることが好ましい。
上記炭化水素基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1~10であることが好ましい。
【0029】
上記カルボニル化合物(C)の具体例としては、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルt-ブチルケトン(MTBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルシクロヘキシルケトン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。なかでも、メチルイソブチルケトン(MIBK)が好ましい。
【0030】
<製造方法>
ケチミン(K)は、例えば、アミン(A)と上記カルボニル化合物(C)とを脱水反応させる方法によって得ることができる。
【0031】
<含有量>
本発明の組成物において、アミン(A)の含有量は、重合体(P)100質量に対して1~50質量の含有量で存在することが好ましい。上記含有量は、2~40質量であることがより好ましく、5~30質量であることが更に好ましい。
【0032】
<シラン(S)>
本発明の組成物は、架橋性シリル基と1分子中に1個のみのアミノ基を有するモノアミノシラン(S)を含有する。モノアミノシラン(S)が有する架橋性シリル基は、加水分解性シリル基であることが好ましい。
【0033】
(加水分解性シリル基)
加水分解性シリル基は、ケイ素原子に加水分解性が結合する基である。
加水分解性基の具体例は上述した架橋性シリル基の加水分解性基と同じである。
加水分解性基は、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。
【0034】
加水分解性シリル基は、例えば、ケイ素原子に1~3個の加水分解性基が結合したものであってもよい。加水分解性シリル基は、ケイ素原子に3個の加水分解性基が結合したものであることが好ましい。
ケイ素原子に1~2個の加水分解性基が結合する場合、ケイ素原子に結合したその他の基は、例えば、アルキル基であってもよい。アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基であることが好ましく、トリメトキシシリル基であることがより好ましい。
【0035】
(有機基)
上記加水分解性シリル基と上記アミノ基とは有機基を介して結合することができる。
上記有機基は、例えば、脂肪族炭化水素基(鎖状、分岐状)、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基のような炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。
【0036】
加水分解性シリル基とアミノ基を有するシラン(S)は、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、及び、4-アミノブチルトリエトキシシランのようなアミノアルキルトリアルコキシシランであってもよい。なかでも、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0037】
(含有量)
本発明の組成物において、モノアミノシラン(S)は、重合体(P)100質量に対して2~30質量の含有量の含有量で存在することが好ましい。上記含有量は、3~25質量であることがより好ましく、4~20質量であることが更に好ましく、5~15質量であることが更により好ましい。
【0038】
(含有量)
本発明の組成物において、モノアミノシラン(S)は、上記アミン(A)100質量に対して25~400質量の含有量で存在することが好ましい。上記含有量は、30~350質量であることがより好ましく、35~300質量であることが更に好ましく、40~250質量であることが更により好ましく、50~200質量であることが最も好ましい。
【0039】
〔任意成分〕
本発明の組成物は上述した成分以外の成分(任意成分)を含有していてもよい。
そのような任意成分としては、例えば、充填剤、可塑剤、溶剤(減粘剤)、触媒(硬化触媒)、チクソ付与剤、脱水剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0040】
<充填剤>
本発明の組成物は、充填剤を含有していてもよい。
充填剤としては、例えば、一般的に湿気硬化型樹脂組成物に使用される充填剤が挙げられ、具体的な例としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カーボンブラックなどが挙げられる。
充填剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムの具体例としては、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0041】
(含有量)
本発明の組成物において、充填剤の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した重合体(P)100質量に対して、50~400質量であることが好ましく、100~300質量であってもよい。
【0042】
<可塑剤>
本発明の組成物は、可塑剤を含有していてもよい。
可塑剤は、重量平均分子量が400~11000のポリマーであることが好ましい。具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド類、及びアクリル系重合体などが挙げられる。なかでも、アクリル系重合体が好ましい。アクリル系重合体は、加水分解性シリル基を含有していないことが好ましい。
【0043】
(含有量)
本発明の組成物において、可塑剤の含有量は、重合体(P)100質量に対して、20~400質量であることが好ましく、30~300質量であることがより好ましく、50~200質量であることが更に好ましい。
<触媒>
本発明の組成物は、触媒(硬化触媒)を含有していてもよい。
硬化触媒は、架橋性シリル基を加水分解及び/又は縮合させ得る化合物である。
【0044】
硬化触媒は、錫触媒を含んでいてもよい。
【0045】
錫触媒は、例えば、オクタン酸錫、ブタン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫のようなカルボン酸金属塩;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジフェニル錫ジアセテート、酸化ジブチル錫、酸化ジブチル錫とフタル酸エステルとの反応生成物、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫(トリエトキシシロキシ)のような有機錫化合物;ジブチル錫ジアセチルアセトナートのような錫キレート化合物;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドのような錫オキサイド、ジイソノニルフタレート(DINP)変性錫等が挙げられる。
【0046】
(含有量)
本発明の組成物において、硬化触媒の含有量は、重合体(P)100質量に対して、0.05~5質量であることが好ましく、0.1~3質量であることがより好ましい。
【0047】
〔製造方法〕
本発明の組成物は、例えば、上述した各成分を混合することによって製造することができる。
【0048】
〔用途〕
本発明の組成物を適用することができる基材は、例えば、ガラス、プラスチック、ゴム、木材、金属、アスファルト、石、多孔質部材であってもよい。
本発明の組成物は、特に、外壁(例えば、サイディングボード)等のシーリング材に有用である。
本発明の組成物は、例えば、空気中の湿気などによって硬化する。
【実施例
【0049】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔ケチミンの合成〕
ステアリルアミン(融点:53℃、CH(CH17NH)とメチルイソブチルケトン(MIBK)とを脱水反応させてケチミン(K-1)を合成した。
【0051】
〔湿気硬化型樹脂組成物の調製〕
下記表1及び表2に記載の各成分を同表に記載の割合(質量)で混合することで、各湿気硬化型樹脂組成物を調製した。
【0052】
〔評価〕
得られた各湿気硬化型樹脂組成物について下記のように粘度を測定した。
【0053】
<粘度>
得られた各湿気硬化型樹脂組成物をガラス容器内に密封し、80℃の環境下で28日間静置した。初期、3日後又は7日後、28日後に各湿気硬化型樹脂組成物の粘度(Pa・S)を測定した。粘度は、E型粘度計(東機産業社製、標準コーンロータ)を使用し、回転速度1rpm又は0.5rpm、23℃の条件下で測定した(単位:Pa・s)。RCは、初期粘度に対する変化率(百分率)を表している。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0057】
・重合体(P-1):両末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン(製品名 SAX220、重合体(P)に該当しないもの、株式会社カネカ製)
・重合体(P-2):メチルジメトキシシリル基を末端に有し、ポリ(メタ)アクリレート骨格を主鎖に有する変性重合体(製品名 SA410S、重合体(P)に該当するもの、株式会社カネカ製)
・重合体(P-3):SB803S(SA410SとSAX220とを70:30の質量比で混合したもの)
・ステアリルアミン-MIBKケチミン:上述した合成物、ケチミン(K)に該当するもの
・ジアミノシラン(製品名 KBM-603 下記式の構造を有するもの 信越化学工業株式会社製)
(CHO)SiCNHCNH
・エポキシシラン:(製品名 KBM-403 下記式の構造を有するもの 信越化学工業株式会社製)
・モノアミノシラン(製品名 KBM-903 下記式の構造を有するもの 信越化学工業株式会社製)
(CHO)SiCNH
・NBDA:ノルボルナンジアミン(「ビス(アミノメチル)ノルボルナン(異性体混合物)下記式の構造を有するもの 東京化成工業社製)
・可塑剤:非官能性アクリル系可塑剤(製品名 ARUFON(登録商標)UP-1110、東亞合成株式会社製)
・水分除去剤:ビニル系のシランカップリング剤(製品名 SILQUEST A-171、日硝産業株式会社製)
【0058】
表1から分かるように、重合体(P)とアミン(A)とモノアミノシラン(S)とを含有する実施例1は、比較例1~9と比較して時間経過に伴う粘度の増加が抑制されており、特に優れた貯蔵安定性を有していた。
【要約】      (修正有)
【課題】従来よりも更に優れた貯蔵安定性を有する湿気硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(P)と、アミノ基及び/又は潜在性アミノ基を有し、架橋性シリル基を有しないアミン(A)と、架橋性シリル基と1分子中に1個のみのアミノ基を有するモノアミノシラン(S)と、を含有する、湿気硬化型樹脂組成物。
【選択図】なし