(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20250127BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250127BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/304 601Z
B24B27/06 M
(21)【出願番号】P 2021046146
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】古場 光彦
(72)【発明者】
【氏名】増永 真
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121653(JP,A)
【文献】特開2011-124260(JP,A)
【文献】特開2015-032770(JP,A)
【文献】特開2019-145558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0013154(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に、格子状に設定された複数の切削予定ラインによって区画された複数の領域の各々にデバイスが設けられているデバイス領域と、該表面側において該デバイス領域を囲む外周領域と、を有する被加工物を切削する切削方法であって、
該被加工物の裏面側にダイシングテープを貼り付ける貼り付けステップと、
該貼り付けステップの後、該ダイシングテープを介して該被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持ステップの後、第1の切削ブレードの下端が該ダイシングテープに至る深さまで該第1の切削ブレードを該被加工物の該外周領域に切り込ませた状態で該保持テーブルを回転させることにより、該外周領域の外周縁から所定長さの端材チップ含有領域を除去する第1の切削ステップと、
該第1の切削ステップの後、第2の切削ブレードの下端が該ダイシングテープに至る深さまで該第2の切削ブレードを該被加工物に切り込ませた状態で、各切削予定ラインに沿って該被加工物を切削する第2の切削ステップと、
を備えることを特徴とする切削方法。
【請求項2】
該第1の切削ステップでは、第1のスピンドルを有し、該第1の切削ブレードが該第1のスピンドルに装着された第1の切削ユニットを用いて、該端材チップ含有領域を除去し、
該第2の切削ステップでは、第2のスピンドルを有し、該第1の切削ブレードの切り刃よりも薄い刃厚を有する該第2の切削ブレードが該第2のスピンドルに装着された第2の切削ユニットを用いて、各切削予定ラインに沿って該被加工物を切削することを特徴とする請求項1に記載の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが設けられたデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周領域と、を有する被加工物を切削ブレードで切削する切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面側に格子状に分割予定ライン(ストリート)が設定され各ストリートで区画される領域の各々にデバイスが形成された半導体ウェーハ等の、円板状の被加工物が知られている。当該被加工物の表面側には、複数のデバイスを有するデバイス領域と、デバイス領域の周囲を囲み、デバイスを有しない外周領域と、が存在する。
【0003】
被加工物を切削してデバイスチップに分割する際には、例えば、まず、被加工物の裏面側に樹脂製のダイシングテープを貼り付けて、ダイシングテープを介してこの裏面側をチャックテーブルの保持面で吸引保持する。このとき、被加工物の表面が上方に露出する。次いで、一の方向に沿うストリートが加工送り方向と略平行になる様に、チャックテーブルの向きを調整する。
【0004】
そして、回転する切削ブレードの下端を、被加工物の裏面と、保持面との、間の高さに位置付けた状態で、チャックテーブルを加工送り方向に移動させることにより、被加工物の表面から裏面までを切削する(即ち、フルカットする)。
【0005】
各ストリートに沿って被加工物をフルカットすることにより、デバイス領域を、それぞれ矩形状の複数のデバイスチップに分割する。しかし、外周領域には、矩形状ではなく、三角形状又は台形状の複数の端材チップが形成される。
【0006】
ところで、表面及び裏面の外周領域には、通常、面取り部が形成されているので、外周領域は、ダイシングテープとの密着性が低い(つまり、粘着力が弱い)。特に、三角形状の端材チップは、矩形状のデバイスチップに比べて面積が小さいので、切削中にダイシングテープから剥がれて飛散しやすい(即ち、チップ飛びが発生しやすい)。
【0007】
飛散した端材チップが切削ブレードに衝突すると、切削ブレードが破損するという問題がある。この様な端材チップの飛散を防止するために、被加工物の切り終り側を切削せずに、未切削領域を形成する切削方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、一の方向に略平行な全てのストリートにおいて未切削領域を形成すると、切削工程後におけるデバイスチップのピックアップ工程で、未切削領域を含む端材チップを誤ってピックアップするリスクが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
未切削領域を含む端材チップを誤ってピックアップしてしまった場合、端材チップの落下等により、デバイスチップの破損や、切削装置や他の加工装置への悪影響が懸念される。
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、未切削領域を形成することなく端材チップの飛散を抑制すると共に、被加工物を複数のデバイスチップに個片化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、表面側に、格子状に設定された複数の切削予定ラインによって区画された複数の領域の各々にデバイスが設けられているデバイス領域と、該表面側において該デバイス領域を囲む外周領域と、を有する被加工物を切削する切削方法であって、該被加工物の裏面側にダイシングテープを貼り付ける貼り付けステップと、該貼り付けステップの後、該ダイシングテープを介して該被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、該保持ステップの後、第1の切削ブレードの下端が該ダイシングテープに至る深さまで該第1の切削ブレードを該被加工物の該外周領域に切り込ませた状態で該保持テーブルを回転させることにより、該外周領域の外周縁から所定長さの端材チップ含有領域を除去する第1の切削ステップと、該第1の切削ステップの後、第2の切削ブレードの下端が該ダイシングテープに至る深さまで該第2の切削ブレードを該被加工物に切り込ませた状態で、各切削予定ラインに沿って該被加工物を切削する第2の切削ステップと、を備える切削方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該第1の切削ステップでは、第1のスピンドルを有し、該第1の切削ブレードが該第1のスピンドルに装着された第1の切削ユニットを用いて、該端材チップ含有領域を除去し、該第2の切削ステップでは、第2のスピンドルを有し、該第1の切削ブレードの切り刃よりも薄い刃厚を有する該第2の切削ブレードが該第2のスピンドルに装着された第2の切削ユニットを用いて、各切削予定ラインに沿って該被加工物を切削する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る切削方法では、第1の切削ブレードの下端がダイシングテープに至る深さまで第1の切削ブレードを被加工物の外周領域に切り込ませた状態で保持テーブルを回転させることにより、外周領域の外周縁から所定幅の領域を除去する(第1の切削ステップ)。これにより、ダイシングテープとの粘着力が弱い所定幅の領域が、被加工物から除去される。
【0015】
そして、第1の切削ステップの後、第2の切削ブレードの下端がダイシングテープに至る深さまで第2の切削ブレードを被加工物に切り込ませた状態で、各切削予定ラインに沿って被加工物を切削する(第2の切削ステップ)。
【0016】
この様に、第1の切削ステップで、ダイシングテープとの粘着力が弱い所定幅の領域を除去するので、第2の切削ステップで飛散し易い端材チップが予め除去される。それゆえ、未切削領域を形成することなく端材チップの飛散を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】端材チップ含有領域特定ステップを示す図である。
【
図7】
図7(A)は第2の切削ステップの前半部を示す図であり、
図7(B)は第2の切削ステップの後半部を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る被加工物の外周領域の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、第1の実施形態に係る切削方法が実行される切削装置2の斜視図である。
図1にそれぞれ示す、X軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)、及び、Z軸方向(高さ方向、鉛直方向)は、互いに直交する。
【0019】
切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前方(Y軸方向の一方)の角部には開口4aが形成されている。開口4a内には昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台8が設けられている。
【0020】
カセット支持台8の上面には、複数の被加工物11を収容するカセット10が搭載される。なお、
図1では説明の便宜上、カセット10の輪郭のみを示している。本実施形態の被加工物11は、Si(シリコン)で形成された円板状の半導体ウェーハである。
【0021】
しかし、被加工物11は、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、その他の半導体材料で形成されてもよい。被加工物11の表面11a側には、格子状に複数の切削予定ライン(ストリート)13(
図3参照)が設定されている。
【0022】
図3に示す様に、複数の切削予定ライン13で区画された矩形状の領域の各々には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。
【0023】
この様に、表面11a側には、複数のデバイス15が形成されているデバイス領域17aが存在する。また、表面11a側には、デバイス領域17aを囲む様に、デバイス15を有しない外周領域17bが存在する。
【0024】
本実施形態の被加工物11は、
図4に示す様に、表面11a及び裏面11bの外周部に、面取り部を有さない。被加工物11は、表面11a側の外周部がエッジトリミングにより除去された後に、裏面11b側が研削されて薄化されている。
【0025】
更に、被加工物11の表面11a側には、パッシベーション膜19(
図4参照)が形成されている。パッシベーション膜19は、PSG(Phosphorus Silicon Glass)膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜等のガラス膜である。
【0026】
パッシベーション膜19は、例えば、静電チャック(不図示)で裏面11b側を保持し表面11a側を露出させた状態で、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成される。但し、
図4に示す様に、パッシベーション膜19は、表面11a側の全体に加えて、被加工物11の側面11cと、裏面11bの外周部と、にも形成される。
【0027】
それゆえ、裏面11bには、パッシベーション膜19で覆われた環状の被覆領域11b1と、パッシベーション膜19で覆われていない略円形の露出領域11b2と、が存在する。被覆領域11b1は、裏面11bの外周縁11dから裏面11bの中心に向かって、1.5mm以下の長さ(即ち、幅)L1を有する。
【0028】
ダイシングテープ21(
図3参照)は、基材層と、基材層の一面に設けられた粘着層(糊層)と、を有する。ダイシングテープ21は、被加工物11の径よりも大きな径を有する。被加工物11は、このダイシングテープ21の略中央部に貼り付けられる。
【0029】
但し、被覆領域11b
1でのダイシングテープ21の粘着力は、露出領域11b
2でのダイシングテープ21の粘着力に比べて弱いので、被覆領域11b
1では、切削予定ライン13に沿う被加工物11の切削時に、端材チップ15a
2(
図5参照)の飛散が生じ易い。
【0030】
図3に戻って、ダイシングテープ21の外周部には、被加工物11を囲む様に金属製のフレーム23の一面が貼り付けられる。被加工物11及びフレーム23へのダイシングテープ21の貼り付けには、例えば、テープ貼り付け装置(不図示)が用いられる。
【0031】
テープ貼り付け装置は、被加工物11の表面11a側を吸引保持するチャックテーブルを有する。チャックテーブルの外周部には、チャックテーブルの保持面よりも下に凹んだ環状の段差部(不図示)が形成されている。
【0032】
段差部の深さは、所定の深さに定められている。例えば、保持面で表面11a側を吸引保持し、フレーム23を段差部に配置した場合に、裏面11bと、フレーム23の上面との、高さが略一致する様に、段差部の所定の深さは定められている。
【0033】
高さが揃えられた、裏面11bと、フレーム23の上面と、に対して、フレーム23よりも大きな面積を有する矩形のダイシングテープ21の粘着層を貼り付けた後、カッター(不図示)でダイシングテープ21を円形に切り取る。この様にして、ダイシングテープ21を介して被加工物11がフレーム23で支持された被加工物ユニット25が形成される。
【0034】
図1に戻って、開口4aの後方(Y軸方向の他方)には、長手方向がX軸方向に略平行な矩形の開口4bが形成されている。開口4b内には、矩形状のテーブルカバー12が設けられている。テーブルカバー12のX軸方向の両側には、蛇腹状カバー14が配置されている。
【0035】
テーブルカバー12上には、円板状のチャックテーブル(保持テーブル)16が設けられている。チャックテーブル16は、金属で形成された円板状の枠体を有する。枠体の上部には、円板状の凹部が形成されている。
【0036】
この凹部には、ポーラスセラミックスで形成された円板状の多孔質板が固定されている。枠体及び多孔質板の上面は、略面一な保持面16aを構成する。枠体に形成されている所定の流路を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)から多孔質板に負圧を伝達させると、保持面16aには、負圧が生じる。
【0037】
枠体の周囲には、フレーム23を四方から固定するための4個のクランプ16bが設けられている。また、チャックテーブル16の下部には、Z軸方向に略平行な回転軸の周りにチャックテーブル16を回転させるための、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0038】
回転駆動源は、X軸移動板(不図示)で支持されている。X軸移動板は、X軸方向と略平行に配置された一対のX軸ガイドレール(不図示)にスライド可能に取り付けられている。X軸移動板の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、X軸方向と略平行に配置されたボールねじ(不図示)が回転可能に連結されている。
【0039】
ボールねじの一端部には、パルスモーター等の駆動源(不図示)が連結されている。駆動源、ボールねじ、一対のX軸ガイドレール、X軸移動板等は、X軸移動機構を構成する。X軸移動機構により、テーブルカバー12、チャックテーブル16、回転駆動源等は、X軸方向に共に移動する。
【0040】
開口4bの上方には、Y軸方向に沿う様に一対のガイドレール18が設けられている。カセット10中の被加工物ユニット25は、第1搬送ユニット(不図示)により、カセット10から一対のガイドレール18へ引き出された後、保持面16aへ搬送される。
【0041】
開口4bの上方には、門型の支持構造20が、開口4bを跨ぐように配置されている。支持構造20におけるX軸方向の一方側の側面には、Y軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール22が固定されている。
【0042】
一対のガイドレール22には、2つのY軸移動板24a、24bが互いに独立にスライド可能な態様で取り付けられている。Y軸移動板24a、24の各々の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0043】
Y軸移動板24aのナット部には、Y軸方向に略平行に配置されたボールねじ26aが回転可能に連結されている。ボールねじ26aの一端部には、パルスモーター等の駆動源28aが連結されている。
【0044】
駆動源28aを動作させると、Y軸移動板24aはY軸方向に沿って移動する。一対のガイドレール22、Y軸移動板24a、ボールねじ26a等は、第1のY軸移動機構を構成する。
【0045】
同様に、Y軸移動板24bのナット部には、Y軸方向に略平行に配置されたボールねじ26bが回転可能に連結されている。ボールねじ26bの一端部には、パルスモーター等の駆動源(不図示)が連結されている。
【0046】
駆動源(不図示)を動作させると、Y軸移動板24bはY軸方向に沿って移動する。一対のガイドレール22、Y軸移動板24b、ボールねじ26b等は、第2のY軸移動機構を構成する。
【0047】
Y軸移動板24aの表面には、Z軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール30aが固定されている。一対のガイドレール30aには、Z軸移動板32aがZ軸方向にスライド可能に取り付けられている。
【0048】
Z軸移動板32aの裏面側には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、Z軸方向に略平行に配置されたボールねじ34aが回転可能に連結されている。ボールねじ34aの上端部には、パルスモーター等の駆動源36aが連結されている。
【0049】
駆動源36aを動作させると、Z軸移動板32aはZ軸方向に沿って移動する。一対のガイドレール30a、Z軸移動板32a、ボールねじ34a等は、第1のZ軸移動機構を構成する。
【0050】
同様に、Y軸移動板24bの表面には、Z軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール30bが固定されている。一対のガイドレール30bには、Z軸移動板32bがZ軸方向にスライド可能に取り付けられている。
【0051】
Z軸移動板32bの裏面側には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、Z軸方向に略平行に配置されたボールねじ34bが回転可能に連結されている。ボールねじ34bの上端部には、パルスモーター等の駆動源36bが連結されている。
【0052】
駆動源36bを動作させると、Z軸移動板32bはZ軸方向に沿って移動する。一対のガイドレール30b、Z軸移動板32b、ボールねじ34b等は、第2のZ軸移動機構を構成する。
【0053】
Z軸移動板32aの下端部には、第1の切削ユニット38aが固定されている。第1の切削ユニット38aは、筒状のスピンドルハウジング40aを有する(
図6参照)。
図6に示す様に、スピンドルハウジング40aには、円柱状の第1のスピンドル42aが回転可能に収容されている。
【0054】
第1のスピンドル42aの基端部側には、モーター等の回転駆動源が設けられている。第1のスピンドル42aの先端部には、円環状の切り刃を有する第1の切削ブレード44aが装着されている。
【0055】
第1の切削ブレード44aは、後述する第1の切削ステップS40において、被加工物11の外周部を切削して除去する。第1の切削ブレード44aの切り刃の刃厚は、比較的厚い。第1の切削ブレード44aの切り刃の刃厚は、1mm以上4mm以下、例えば、2mmである。
【0056】
Z軸移動板32bの下端部には、第2の切削ユニット38bが固定されている。第2の切削ユニット38bは、筒状のスピンドルハウジング40bを有する(
図7参照)。
図7に示す様に、スピンドルハウジング40bには、円柱状の第2のスピンドル42bが回転可能に収容されている。
【0057】
第2のスピンドル42bの基端部側には、モーター等の回転駆動源が設けられている。第2のスピンドル42bの先端部には、円環状の切り刃を有する第2の切削ブレード44bが装着されている。
【0058】
第2の切削ブレード44bは、後述する第2の切削ステップS50において、各切削予定ライン13に沿って被加工物11を切削する。第2の切削ブレード44bの切り刃の刃厚は、第1の切削ブレード44aの切り刃に比べて薄い。第2の切削ブレード44bの切り刃の刃厚は、15μm以上110μmm以下、例えば、45μmである。
【0059】
再び
図1に戻る。第1の切削ユニット38aに隣接して、スピンドルハウジング40aには、カメラユニット46aが固定されている。同様に、第2の切削ユニット38bに隣接して、スピンドルハウジング40bには、カメラユニット46bが固定されている。
【0060】
カメラユニット46a、46bは、それぞれ、集光レンズ等の所定の光学系と、撮像素子と、を含む。開口4bの後方には、円形の開口4cが形成されている。開口4cにはスピンナ洗浄ユニット48が設けられている。
【0061】
切削後の被加工物11は、第2の搬送ユニット(不図示)により、チャックテーブル16からスピンナ洗浄ユニット48へ搬送されて、洗浄される。洗浄後の被加工物11は、第1の搬送ユニットにより一対のガイドレール18を経てカセット10へ搬入される。
【0062】
昇降機構、X軸移動機構、チャックテーブル16、一対のガイドレール18、第1及び第2のY軸移動機構、第1及び第2のZ軸移動機構、第1及び第2の搬送ユニット、スピンナ洗浄ユニット48等は、不図示の制御部により制御される。
【0063】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0064】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部の機能が実現される。補助記憶装置には、カメラユニット46a、46bで取得した画像に対して画像処理を行うプログラム等が記憶されている。
【0065】
次に、
図2から
図7(B)を参照して、切削装置2を用いた切削方法について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る切削方法のフロー図である。
【0066】
まず、上述のテープ貼り付け装置(不図示)を用いて、パッシベーション膜19(
図4参照)が形成されている被加工物11の裏面11b側に、ダイシングテープ21を貼り付けて、被加工物ユニット25(
図3参照)を形成する(貼り付けステップS10)。
【0067】
図3は、被加工物ユニット25の斜視図である。また、
図4は、被加工物11の外周領域17bの拡大断面図である。上述の様に、裏面11bのうち、外周縁11dから所定の長さL
1の範囲は、パッシベーション膜19で覆われた被覆領域11b
1である。
【0068】
貼り付けステップS10の後、被加工物ユニット25(被加工物11)は、カセット10に収容された状態で切削装置2へ運ばれる。そして、被加工物11は、第1搬送ユニット等によりチャックテーブル16へ搬出され、裏面11b側がダイシングテープ21を介して保持面16aで吸引保持される(保持ステップS20)。
【0069】
保持ステップS20の後、例えば、カメラユニット46aで被加工物11の表面11a側を撮像することにより、制御部(不図示)が、被加工物11の外周縁11dと、各切削予定ライン13と、を特定する。
【0070】
図5に示す様に、デバイス領域17aにおける1つの矩形状のデバイス15は、4つの切削予定ライン13により囲まれる。しかし、外周領域17bには、3つの切削予定ライン13により囲まれる略台形状の領域や、2つの切削予定ライン13により囲まれる三角形状の領域が存在する。
【0071】
各切削予定ライン13に沿って被加工物11を切削すると、略台形状の領域は端材チップ15a
1となり、三角形状の領域は端材チップ15a
2となる。なお、
図5では、端材チップ15a
2となる領域を、破線の丸で囲んで示す。
【0072】
特に、三角形状の端材チップ15a
2は、矩形状のデバイス15に比べて面積が小さい。加えて、被覆領域11b
1(
図4参照)は、露出領域11b
2に比べて、粘着層との粘着力が低い。それゆえ、被覆領域11b
1に存在する三角形状の端材チップ15a
2は、切削中にダイシングテープ21から剥がれて飛散しやすい。
【0073】
そこで、本実施形態では、まず、制御部が、被覆領域11b
1において三角形状の端材チップ15a
2が形成される端材チップ含有領域17cを特定する(端材チップ含有領域特定ステップS30)。
図5は、端材チップ含有領域特定ステップS30を示す図である。
【0074】
具体的には、制御部は、画像処理等により、三角形状の端材チップ15a2の角のうち、表面11aの中心に最も近い角に外接する外接円11eを決定する。そして、制御部は、外周領域17bのうち、外周縁11dから外接円11eまでの所定長さの領域を、端材チップ含有領域17cと特定する。
【0075】
本実施形態において、外周縁11dから外接円11eまでの距離は、被覆領域11b1の長さL1以上であり、例えば、1.5mmである。なお、端材チップ含有領域17cが既に特定されている場合には、S30を省略し、オペレーターが制御部に切削領域を入力してもよい。
【0076】
端材チップ含有領域17cは、端材チップ15a
2の飛散を防ぐために、第1の切削ブレード44aを用いて切削し除去される(第1の切削ステップS40)。
図6は、第1の切削ステップS40を示す図である。なお、
図6では、ダイシングテープ21及びフレーム23を省略している。
【0077】
第1の切削ステップS40では、第1の切削ブレード44aの下端がダイシングテープ21に至る深さまで、第1の切削ブレード44aの切り刃を端材チップ含有領域17cに切り込ませる。
【0078】
このとき、第1の切削ブレード44aを下降させて、チョッパーカットにより第1の切削ブレード44aを被加工物11に切り込ませてもよく、第1の切削ブレード44aをX軸方向に沿って移動させて、第1の切削ブレード44aを被加工物11に切り込ませてもよい。
【0079】
この様に第1の切削ブレード44aを被加工物11に切り込ませた状態で、チャックテーブル16を回転させることにより、外周縁11dから外接円11eまでの環状領域(例えば、幅1.5mm)を切削して除去する。なお、このとき、チャックテーブル16を回転させながら、第1の切削ブレード44aのY軸方向の位置を調整してもよい。
【0080】
第1の切削ステップS40の後、第2の切削ブレード44bを用いて、各切削予定ライン13に沿って被加工物11を切削する(第2の切削ステップS50)。これにより、被加工物11を複数のデバイスチップに分割する。
【0081】
図7(A)は、第2の切削ステップS50の前半部を示す図である。前半部では、アライメント、チャックテーブル16の回転角度の調節等を経て、それぞれ一の方向と平行な複数の切削予定ライン13を、X軸方向と略平行に位置付ける。
【0082】
次いで、チャックテーブル16の外側において、一の切削予定ライン13の延長線上に第2の切削ブレード44bを配置すると共に、第2の切削ブレード44bの下端の高さ位置を、保持面16aと、裏面11bとの、間に位置付ける。
【0083】
そして、X軸移動機構によりチャックテーブル16と第2の切削ブレード44bとを加工送り方向に相対的に移動させる。これにより、第2の切削ブレード44bの下端がダイシングテープ21に至る深さまで第2の切削ブレード44bを該被加工物に切り込ませた状態で、被加工物11を切削する。
【0084】
一の切削予定ライン13に沿って被加工物11を切断した後、第2の切削ユニット38bをY軸方向に沿って所定のインデクス量だけ割り出し送りする。そして、一の切削予定ライン13に対してY軸方向に隣接する他の切削予定ライン13に沿って、被加工物11を切断する。
【0085】
この様にして、一の方向と平行な全ての切削予定ライン13に沿って被加工物11を切断する。次いで、
図7(B)に示す様に、チャックテーブル16を90度回転させて、一の方向と直交する他の方向に平行な全ての切削予定ライン13に沿って被加工物11を切断する。
図7(B)は、第2の切削ステップS50の後半部を示す図である。
【0086】
本実施形態では、第1の切削ステップS40で、ダイシングテープ21との粘着力が弱い端材チップ含有領域17cを除去するので、第2の切削ステップS50で飛散し易い端材チップ15a2が予め除去される。それゆえ、未切削領域を形成することなく端材チップ15a2の飛散を抑制できる。
【0087】
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る被加工物31の外周領域17bの拡大断面図である。第2の実施形態の被加工物31は、裏面11b側が研削される前の半導体ウェーハである。
【0088】
被加工物31は、研削、研磨等により薄化される前の状態であり、表面11a及び裏面11bの各外周部には、面取り部11fが形成されている。上述の様に、面取り部11fは、ダイシングテープ21との密着性が低い領域である。係る点が、上述の被加工物11と異なるが、他の点は、被加工物11と同じである。
【0089】
被加工物31を
図2に示す切削方法に従い切削する場合、端材チップ含有領域特定ステップS30を省略し、外周縁11dから面取り部11fの内周端までの長さL
2(即ち、切削領域)を、オペレーターが制御部に入力する。その他の点は、第1の実施形態と同じである。
【0090】
第2の実施形態においても、第1の切削ステップS40で、ダイシングテープ21との粘着力が弱い端材チップ含有領域17cを除去するので、第2の切削ステップS50で飛散し易い端材チップ15a2が予め除去される。それゆえ、未切削領域を形成することなく端材チップ15a2の飛散を抑制できる。
【0091】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、第1の切削ブレード44aの切り刃の刃厚を、第2の切削ブレード44bの切り刃の刃厚と同じにすることもできる。
【0092】
なお、各ステップを適宜実行できる限り、第1の切削ブレード44a及び第2の切削ブレード44bは、ハブレス型(ワッシャー型)でも、ハブ型でもよい。
【符号の説明】
【0093】
2:切削装置、4:基台、4a,4b,4c:開口
8:カセット支持台、10:カセット
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、11b1:被覆領域、11b2:露出領域
11c:側面、11d:外周縁、11e:外接円、11f:面取り部
12:テーブルカバー、14:蛇腹状カバー
16:チャックテーブル、16a:保持面、16b:クランプ
18:ガイドレール、20:支持構造
13:切削予定ライン、15:デバイス、15a1,15a2:端材チップ
17a:デバイス領域、17b:外周領域、17c:端材チップ含有領域
19:パッシベーション膜、21:ダイシングテープ、23:フレーム
25:被加工物ユニット、31:被加工物
22:ガイドレール、24a,24b:Y軸移動板、26a,26b:ボールねじ
28a:駆動源、30a,30b:ガイドレール、32a,32b:Z軸移動板
34a,34b:ボールねじ、36a,36b:駆動源
38a:第1の切削ユニット、38b:第2の切削ユニット
40a,40b:スピンドルハウジング
42a:第1のスピンドル、42b:第2のスピンドル
44a:第1の切削ブレード、44b:第2の切削ブレード
46a,46b:カメラユニット、48:スピンナ洗浄ユニット、L1,L2:長さ