(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】金属含有膜を選択的に形成するための化合物および方法
(51)【国際特許分類】
C07C 333/16 20060101AFI20250127BHJP
C07C 211/08 20060101ALI20250127BHJP
C01B 21/086 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
C07C333/16 CSP
C07C211/08
C01B21/086
(21)【出願番号】P 2022529324
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2020080785
(87)【国際公開番号】W WO2021099104
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-25
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ナナヤッカラ,チャリス
(72)【発明者】
【氏名】エルド,ジョビー
(72)【発明者】
【氏名】ウッドラフ,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】デゼラー,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ショーン ソンウン
(72)【発明者】
【氏名】カンジョリア,ラヴィンドラ
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ポティエン,マーク
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00640158(GB,A)
【文献】特開2017-222928(JP,A)
【文献】特表2009-516078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I
【化1】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立してC
1~C
20アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基
、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;
X
1
はSであり;
X
2
はNR
4R
5
であり;ここで
、R
4、
およびR
5
はそれぞれ独立してC
1~C
20アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基
、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;ここで、R
1およびR
4のうちの少なくとも1つはドデシルである)に対応する、
化合物。
【請求項2】
R
1、R
2
、R
4、
およびR
5
はそれぞれ独立してC
1~C
15アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基
、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されている、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1、R
2
、R
4、
およびR
5
はそれぞれ独立してC
1~C
12アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基
、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されている、
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1はC
1~C
15アルキルであり、R
2はC
1~C
4アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基
、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており
;R
4はC
1~C
15アルキルであり、R
5はC
1~C
4アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基
、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
構造式(I)に対応する前記化合物は、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸N-ドデシル-N-メチルアンモニウム塩である、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
金属含有膜を形成する方法であって、前記方法は、
第1の堆積処理によって第1の基材表面上にブロッキング層を形成する工程であって、前記第1の堆積処理は、
下記構造式I
【化2】
(式中、R
1
およびR
2
はそれぞれ独立してC
1
~C
20
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトリル基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;
X
1
はSであり;
X
2
はNR
4
R
5
であり;ここで、R
4
、およびR
5
はそれぞれ独立してC
1
~C
20
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトリル基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;ここで、R
1
およびR
4
のうちの少なくとも1つはドデシルである)に対応する化合物を気化させることを含む、工程と;
第2の堆積処理によって第2の基材表面上に前記金属含有膜を形成する工程であって、前記第2の堆積処理は、少なくとも1つの金属錯体を気化させることを含む、工程と;
を含み、
前記第1の基材表面は金属材料を含み、前記第2の基材表面は誘電体材料または金属酸化物を含む、
方法。
【請求項7】
金属含有膜を形成する方法であって、前記方法は、
第1の堆積処理によって基材の第1の部分上にブロッキング層を形成する工程であって、前記第1の堆積処理は、
構造式I
【化3】
(式中、R
1
およびR
2
はそれぞれ独立してC
1
~C
20
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトリル基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;
X
1
はSであり;
X
2
はNR
4
R
5
であり;ここで、R
4
、およびR
5
はそれぞれ独立してC
1
~C
20
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトリル基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;ここで、R
1
およびR
4
のうちの少なくとも1つはドデシルである)に対応する化合物に前記基材を曝露することを含む、工程と;
第2の堆積処理によって前記基材の第2の部分上に前記金属含有膜を形成する工程であって、前記第2の堆積処理は、少なくとも1つの金属錯体に前記基材を曝露することを含む、工程と;
を含み、
前記基材の前記第1の部分は金属材料を含み、前記基材の前記第2の部分は誘電体材料または金属酸化物を含む、
方法。
【請求項8】
前記金属錯体は、構造式III
【化4】
(式中、MはHfであり;
L
1、L
2、L
3およびL
4はそれぞれ独立してC
1~C
8アルキル基、C
1~C
8アルコキシ基、および、任意に少なくとも1つのC
1~C
8アルキルで置換されたC
p基からなる群から選択される)に対応する、
請求項
6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属錯体は、(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)である、
請求項
6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属含有膜の金属が、前記ブロッキング層上
に15原子%未満の量で存在する、
請求項
6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の基材表面および前記第2の基材表面は、同一の基材上または異なる基材上に存在する、
請求項
6、および8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属材料は、W、Co、Cuまたはそれらの組み合わせを含む、
請求項
6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記誘電体材料が、SiO
2、SiN、またはそれらの組み合わせを含む、または、
前記金属酸化物材料が、HfO
2、ZrO
2、SiO
2、Al
2O
3、またはそれらの組み合わせを含む、
請求項
6~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
構造式(I)に対応する前記化合
物は、150℃未満の温度で送達される、
請求項
6~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第1の堆積処理および前記第2の堆積処理は独立して、化学蒸着または原子層堆積である、
請求項
6~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記化学蒸着は、パルス化学蒸着、連続流化学蒸着、または液体注入化学蒸着である、
請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記原子層堆積は、液体注入原子層堆積またはプラズマ増強原子層堆積である、
請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記金属錯体は、酸素源のパルスと交互のパルスで基材に送達される、
請求項
6~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸素源は、H
2O、H
2O
2、O
2、オゾン、空気、i-PrOH、t-BuOH、およびN
2Oからなる群から選択される、
請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
水素、水素プラズマ、酸素、空気、水、アンモニア、ヒドラジン、ボラン、シラン、オゾン、およびそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの共反応物を気化させることをさらに含む、
請求項
6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、DRAMまたはCMOS用途に使用される、
請求項
6~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
R
1
、R
2
、R
4
、およびR
5
はそれぞれ独立してC
1
~C
15
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されている、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項23】
R
1
、R
2
、R
4
、およびR
5
はそれぞれ独立してC
1
~C
12
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されている、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項24】
R
1
はC
1
~C
15
アルキルであり、R
2
はC
1
~C
4
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;R
4
はC
1
~C
15
アルキルであり、R
5
はC
1
~C
4
アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されている、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項25】
構造式(I)に対応する前記化合物は、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸N-ドデシル-N-メチルアンモニウム塩である、
請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の分野〕
本技術は概ね、化合物および堆積方法に関しており、特に、基材表面上での選択的な金属含有膜成長のための化合物および方法に関するものである。
【0002】
〔背景〕
薄膜、特に金属含有薄膜は、ナノテクノロジーおよび半導体デバイスの製造など、様々な重要な用途を有する。このような用途の例には、高屈折率光学コーティング、防食コーティング、光触媒自己洗浄ガラスコーティング、生物適合性コーティング、電界効果トランジスタ(FET)における誘電体キャパシタ層およびゲート誘電絶縁膜、キャパシタ電極、ゲート電極、接着剤拡散バリア、ならびに集積回路が含まれる。金属薄膜および誘電体薄膜は、マイクロエレクトロニクス用途にも使用され、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)用途のための高κ誘電体酸化物、ならびに赤外検出器および不揮発性強誘電体ランダムアクセスメモリ(NV-FeRAM)に使用される強誘電体ペロブスカイトなどである。
【0003】
金属含有薄膜を形成するために様々な前駆体を使用することができ、様々な堆積技術を使用することができる。このような技術には、反応性スパッタリング、イオンアシスト堆積、ゾルゲル堆積、化学蒸着(CVD)(有機金属CVDまたはMOCVDとしても知られている)、および原子層堆積(ALD)(原子層エピタキシとしても知られている)が含まれる。CVDおよびALD処理は、組成制御が強化され、膜の均一性が高く、ドーピングが効果的に制御されるという利点を有するため、ますます使用されるようになっている。
【0004】
CVDは、基材表面上に薄膜を形成するために前駆体が使用される化学的処理である。典型的なCVD法では、前駆体が低圧または大気圧の反応チャンバ内で基材(例えば、ウェハ)の表面上を通過する。前駆体は、基材表面上で反応および/または分解し、堆積材料の薄膜を生成する。揮発性副生成物は、反応チャンバを通るガス流によって除去される。堆積した膜の厚さは、温度、圧力、ガス流の体積および均一性、化学的枯渇効果、ならびに時間などの多くのパラメータの調整に依存するため、制御することが困難であることがある。
【0005】
ALDもまた、薄膜の堆積のための方法である。ALDは、表面反応に基づく自己制限的な、逐次的な、独特の膜成長技術であり、正確な厚さ制御を提供し、前駆体によって提供される材料のコンフォーマルな薄膜を様々な組成の表面基材上に堆積させることができる。ALDでは、前駆体は反応中に分離される。第1の前駆体は基材表面上を通過し、基材表面上に単層を生成する。過剰の未反応前駆体はどれも、反応チャンバから排出される。次に、第2の前駆体は、基材表面上を通過し、第1の前駆体と反応し、基材表面上の第1の形成された膜の単層上に第2の単層の膜を形成する。このサイクルを繰り返して、所望の厚さの膜を生成する。
【0006】
しかしながら、半導体デバイスなどのマイクロエレクトロニクス部品のサイズの継続的な減少に伴い、いくつかの技術的課題が依然として存在しており、それによって、改良された薄膜技術の必要性が増大している。特に、マイクロエレクトロニクス部品は、例えば導電性経路を形成するため、または相互接続を形成するためのパターニングを含むことがある。典型的には、パターニングはエッチングおよびリソグラフィー技術を介して達成されるが、そのような技術はパターニングの複雑さに対する要求が増すにつれて、難題になり得つつある。したがって、1つ以上の基材上で膜を選択的に成長させ、基材上での改善されたパターニングを達成することができる化合物および薄膜堆積方法を開発することに、著しい関心が存在する。
【0007】
〔概要〕
一態様によれば、金属含有膜を選択的に形成するための化合物が提供される。当該化合物は、構造式I
【0008】
【0009】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。X1はOまたはSであり得、X2はR3、NR4R5、-SR6、および-OR7からなる群から選択され得、ここで、R3、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る)に対応する。
【0010】
別の一態様によれば、金属含有膜を形成する方法が提供される。当該方法は、第1の堆積処理によって第1の基材表面上にブロッキング層を形成する工程と、第2の堆積処理によって第2の基材表面上に金属含有膜を形成する工程とを含む。第1の堆積処理は、本明細書に記載の構造式(I)に対応する化合物を気化させることを含む。第2の堆積処理は、少なくとも1つの金属錯体を気化させることを含む。第1の基材表面は金属材料を含み得、第2の基材表面は誘電体材料または金属酸化物を含み得る。
【0011】
別の一態様によれば、金属含有膜を形成する別の方法が提供される。当該方法は、第1の堆積処理によって基材の第1の部分上にブロッキング層を形成する工程と、第2の堆積処理によって基材の第2の部分上に金属含有膜を形成する工程とを含む。第1の堆積処理は、本明細書に記載の構造式(I)に対応する化合物に基材を曝露することを含む。第2の堆積処理は、少なくとも1つの金属錯体に基材を曝露することを含む。基材の第1の部分は金属材料を含み得、基材の第2の部分は誘電体材料または金属酸化物を含み得る。
【0012】
別の一態様によれば、金属含有膜を形成する別の方法が提供される。当該方法は、第1の堆積処理によって第1の基材表面上にブロッキング層を形成する工程を含む。第1の堆積処理は、構造式II
【0013】
【0014】
(式中、X3はR8、NR9R10、-SR11、および-OR12からなる群から選択され得る。R8、R9、R10、R11、およびR12はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得、X4はOまたはSであり得る)に対応する化合物を気化させることを含む。当該方法は、第2の堆積処理によって第2の基材表面上に金属含有膜を形成する工程をさらに含む。第2の堆積処理は、少なくとも1つの金属錯体を気化させることを含む。第1の基材表面は金属材料を含み得、第2の基材表面は誘電体材料または金属酸化物を含み得る。
【0015】
別の一態様によれば、金属含有膜を形成する別の方法が提供される。当該方法は、第1の堆積処理によって基材の第1の部分上にブロッキング層を形成する工程を含む。第1の堆積処理は、構造式II
【0016】
【0017】
(式中、X
3
は、R8、NR9R10、-SR11、および-OR12からなる群から選択され得る。R8、R9、R10、R11、およびR12はそれぞれ独立して、C1~C20アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得、X4はOまたはSであり得る)に対応する化合物に基材を曝露することを含む。当該方法は、第2の堆積処理によって基材の第2の部分上に金属含有膜を形成する工程をさらに含む。第2の堆積処理は、少なくとも1つの金属錯体に基材を曝露することを含む。基材の第1の部分は金属材料を含み得、基材の第2の部分は誘電体材料または金属酸化物を含み得る。
【0018】
上記に要約された実施形態の特定の態様を含む他の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
図1Aは、本開示の特定の態様に係るブロッキング層および金属含有膜の詳細を示す。
【0020】
図1Bは、本開示の特定の代わりの態様に係るブロッキング層および金属含有膜の詳細を示す。
【0021】
図2は、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材のX線光電子分光法(XPS)分析を示す。
【0022】
図3Aは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材上に存在するHfの原子百分率を示す。
【0023】
図3Bは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露せず、(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材上に存在するHfの原子百分率を示す。
【0024】
図4A~4Dは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材それぞれの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【0025】
図5Aは、熱重量分析(TGA)データのグラフ表示であり、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸N-ドデシル-N-メチルアンモニウム塩(化合物I)の重量損失対温度%を示す。
【0026】
図5Bは、化合物Iの示差走査熱量測定(DSC)分析のグラフ表示である。
【0027】
図6Aは、化合物Iの
1H核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを示す。
【0028】
図6Bは、化合物Iの
13C NMRスペクトルを示す。
【0029】
【0030】
【0031】
〔詳細な説明〕
本技術のいくつかの例示的な実施形態を提示する前に、本技術は、以下の提示に記載される構成または処理工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本技術は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することが可能である。また、金属錯体および他の化学的化合物は、特定の立体化学を有する構造式を使用して本明細書において説明されることがあることも理解されたい。これらの説明は、単なる例として意図されており、開示された構造を特定の立体化学に限定するものであると解釈されるべきではない。むしろ、説明された構造は、示された化学式を有するようなすべての金属錯体および化学的化合物を包含することが意図される。
【0032】
本出願人は、金属含有膜を選択的に形成することができる、堆積を行う化合物および方法を発見した。特に、本明細書に記載される化合物および方法は、第1の堆積処理によって第1の基材表面または表面の第1の部分上にブロッキング層を形成し、第2の堆積処理によって第2の基材表面または表面の第2の部分上に金属含有膜を形成することができる。ブロッキング層は金属含有基材上に堆積することができ、このブロッキング層は、誘電体材料含有基材および/または金属酸化物含有基材上への金属含有膜の堆積を可能にしながら、ブロッキング層上での金属含有膜の成長を実質的にブロックまたは阻害することができることが発見された。有利なことに、本明細書に記載される方法は、誘電体上での誘電体の選択的な堆積を可能にすることができる。さらに、本明細書に記載される方法は、気相法を介してブロッキング層の送達を可能にすることができ、金属錯体の送達に利用される装置と同一の装置を使用することができる。また、ブロッキング層の送達は、より低い、例えば150℃未満の温度源で達成することができる。
【0033】
〔I.定義〕
本発明および特許請求の範囲の目的のために、周期表群の番号付けスキームは、元素のIUPAC周期表に従う。
【0034】
本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」、および「B」を含むことが意図される。
【0035】
用語「置換基」、「ラジカル」、「基」、および「部分」は、互換的に使用され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「金属含有錯体」(または、より単純には「錯体」)および「前駆体」は互換的に使用され、金属含有分子または化合物を指し、これらは、例えば、ALDまたはCVDなどの蒸着法によって、金属含有膜を調製するために使用され得る。金属含有錯体は、金属含有膜を形成するように、基材またはその表面上に堆積、吸着、分解、送達および/または通過されてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「金属含有膜」は、下記でより十分に定義される元素金属膜を含むだけでなく、例えば金属酸化物膜、金属窒化物膜、金属ケイ化物膜、金属炭化物膜などの、1つ以上の元素と共に金属を含む膜も含む。本明細書で使用される場合、用語「元素金属膜」および「純粋金属膜」は、互換的に使用され、純粋な金属からなるか、または実質的に、純粋な金属からなる膜を指す。例えば、元素金属膜としては100%の純度の金属を含んでもよく、または、元素金属膜は、1つ以上の不純物と共に、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、もしくは少なくとも約99.99%の純度の金属を含んでもよい。文脈上別段の指示がない限り、用語「金属膜」は、元素金属膜を意味するものと解釈されるものとする。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「蒸着処理」は、CVDおよびALDを含むがこれらに限定されない任意の種類の蒸着技術を指すために使用される。様々な実施形態では、CVDは従来型の(すなわち、連続流)CVD、液体注入CVD、または光アシストCVDの形態をとることができる。CVDはまた、パルス技術の形態、すなわちパルスCVDの形態をとることもできる。ALDは、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成するために使用される。従来のALD処理については、例えば、George S. M., et al. J. Phys. Chem., 1996, 100, 13121-13131を参照されたい。他の実施形態では、ALDは従来型の(すなわち、パルス注入)ALD、液体注入ALD、光アシストALD、プラズマアシストALD、またはプラズマ増強ALDの形態をとることができる。用語「蒸着処理」は、Chemical Vapour Deposition: Precursors, Processes, and Applications; Jones, A. C.; Hitchman, M. L., Eds. The Royal Society of Chemistry: Cambridge, 2009; Chapter 1, pp 1-36に記載されている種々の蒸着技術をさらに含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、「選択的成長」、「選択的に成長する」、および「選択的に成長させる」という用語は同義語として使用され、第2の基材表面(または基材の第2の部分)のうち一部での膜成長はあり、第1の基材表面(または基材の第1の部分)上、ブロッキング層上、またはそれらの組み合わせ上での膜成長は実質的にないことを指す。「選択的成長」、「選択的に成長する」および「選択的に成長させる」という用語は、第1の基材表面(または基材の第1の部分)、ブロッキング層、またはそれらの組み合わせ上の膜成長と比較して、第2の基材表面(または基材の第2の部分)のうち少なくとも一部よりも膜が成長することも包含する。複数の基材に関して、「選択的成長」、「選択的に成長する」および「選択的に成長させる」という用語は、第1の基材上で膜が成長して、第2の基材(または第3の基材、または第4の基材または第5の基材など)上で膜が実質的に成長しないことを包含するだけでなく、第2の基材(または第3の基材、または第4の基材または第5の基材など)上の膜よりも第1の基材上の膜が成長することも包含する。
【0040】
用語「アルキル」(単独で、または別の用語と組み合わせて用いられる)は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシルなどであるがこれらに限定されない、長さが1個~約25個の炭素原子の飽和炭化水素鎖を指す。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「アルキル」は、アルキル基のすべての構造異性体の形態を包含することが意図される。例えば、本明細書で使用される場合、プロピルはn-プロピルおよびイソプロピルの両方を包含し;ブチルはn-ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルを包含し;ペンチルはn-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチルおよび3-ペンチルを包含する。さらに、本明細書で使用される場合、「Me」はメチルを指し、「Et」はエチルを指し、「Pr」はプロピルを指し、「i-Pr」はイソプロピルを指し、「Bu」はブチルを指し、「t-Bu」はtert-ブチルを指し、「Np」はネオペンチルを指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C1~C5またはC1~C4アルキル基である。
【0041】
用語「アルコキシ」は、1個~約8個の炭素原子を含有する-O-アルキルを指す。アルコキシは、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシおよびヘキソキシが挙げられる。
【0042】
本明細書中の用語「アミノ」は、任意に置換されている一価の窒素原子(すなわち、-NRcRd、ここで、RcおよびRdは、同じであっても異なっていてもよい)を指す。例えば、RCおよびRdについて、それぞれは独立してC1~C10アルキルであり得る。本発明に包含されるアミノ基の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
【0044】
〔II.ブロッキング層を形成するための化合物〕
様々な態様によれば、構造式I
【0045】
【0046】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されており;X1はOまたはSであり;X2はR3、NR4R5、-SR6、および-OR7からなる群から選択され;ここで、R3、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る)に対応する、化合物が提供される。
【0047】
いくつかの実施形態において、X2はR3であり得、ここで、R3はC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、X2はNR4R5であり得、ここで、R4およびR5はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、X2は-SR6であり得、ここで、R6はC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、X2は-OR7であり得、ここで、R7はC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0051】
上述した任意の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、C1~C20アルキル、C1~C15アルキル、C1~C12アルキル、C1~C10アルキル、C1~C8アルキル、C1~C4アルキル、またはC1~C2アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。いくつかの実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7のうち1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはすべて)は、メチル基であり得る。加えて、または代替的に、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7のうち1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはすべて)はドデシル基であり得る。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。特には、アルキルは直鎖である。
【0052】
いくつかの実施形態において、X1はSであり得、X2はNR4R5であり得、ここで、R4はC1~C15アルキルまたはC1~C12アルキルであり得、R5はC1~C4アルキルまたはC1~C2アルキルであり得、ここで、R4およびR5はそれぞれ任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。加えて、または代替的に、R1はC1~C15アルキルまたはC1~C12アルキルであり得、R2はC1~C4アルキルまたはC1~C2アルキルであり得、ここで、R1およびR2はそれぞれ任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されていてもよい。
【0053】
任意の実施形態において、構造式(I)に対応する化合物は、付加錯体または塩錯体として記載することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、構造式(I)に対応する化合物は、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸N-ドデシル-N-メチルアンモニウム塩(化合物I)である。
【0055】
〔III.金属含有膜の形成方法〕
金属含有膜、例えば、選択的に成長した金属含有膜を形成する方法が本明細書において提供される。様々な態様において、
図1Aに示すように、この方法は、第1の堆積処理によって第1の基材表面15上にブロッキング層20を形成することを含み得る。この方法は、第2の堆積処理によって第2の基材表面17上に金属含有膜23を形成することをさらに含み得る。
図1Aに示すように、第1の基材表面15および第2の基材表面17は、単一の基材19、すなわち同じ基材上に存在してもよい。例えば、単一の基材19が使用される場合、第1の基材表面15は基材19の第1の部分15と考えることができ、第2の基材表面17は基材19の第2の部分17と考えることができる。代替的には、
図1Bに示すように、第1の基材表面15および第2の基材表面17はそれぞれ、異なる基材、例えば、第1の基材25および第2の基材30上に存在してもよい。
【0056】
第1の基材表面15(または第1の部分15)は、金属材料を含み得る。好適な金属材料の例には、タングステン(W)、コバルト(Co)、銅(Cu)、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、金属材料は、Co、Cu、またはこれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、金属材料はCuを含み得る。第2の基材表面17(または第2の部分17)は、誘電体材料、金属酸化物材料、またはこれらの組み合わせを含み得る。誘電体材料は、低κ誘電体または高κ誘電体であり得る。好適な誘電体材料の例には、SiO2、SiN、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好適な金属酸化物材料の例には、HfO2、ZrO2、SiO2、Al2O3、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
任意の実施形態では、第1の堆積処理は、基材(例えば、第1の基材表面15、第2の基材表面17、基材19、第1の基材25、第2の基材30)を、本明細書に記載される構造式Iに対応する化合物および/または式IIの化合物に曝露することを含み得る
【0058】
【0059】
(式中、X3はR8、NR9R10、-SR11、および-OR12からなる群から選択され得;ここで、R8、R9、R10、R11、およびR12はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されていてもよく;X4はOまたはSであり得る)。
【0060】
いくつかの実施形態において、X3はR8であり得、ここで、R8はC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、X3はNR9R10であり得、ここで、R9およびR10はそれぞれ独立してC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、X3は-SR11であり得、ここで、R11はC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、X3は-OR12であり得、ここで、R12はC1~C20アルキルであり得、任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。
【0064】
上述した任意の実施形態において、R8、R9、R10、R11、およびR12はそれぞれ独立して、C1~C20アルキル、C1~C15アルキル、C1~C10アルキル、C1~C8アルキル、C1~C4アルキル、またはC1~C2アルキルであり得、それぞれは任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換され得る。いくつかの実施形態において、R8、R9、R10、R11、およびR12のうち1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、またはすべて)は、メチル基であり得る。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。特には、アルキルは直鎖である。
【0065】
いくつかの実施形態において、X3はNR9R10であり得、X4はSであり得、ここで、R9はC1~C4アルキルまたはC1~C2アルキルであり得、R10はC1~C15アルキルまたはC1~C12アルキルであり得、R9およびR10は任意にトリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルコキシ基、およびアミノ基のうちの1つ以上で置換されていてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、構造式(II)に対応する化合物は、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸(化合物II)である。
【0067】
任意の実施形態では、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはその両方を、より低温で、基材(例えば、第1の基材表面15、第2の基材表面17、基材19、第1の基材25、第2の基材30)に送達または曝露することができる。例えば、このような温度は、約175℃以下、約150℃以下、約140℃以下、約130℃以下、約120℃以下、約110℃以下、または約100℃;約100℃~約175℃、約100℃~約150℃、または約100℃~約130℃であり得る。
【0068】
任意の実施形態では、第2の堆積処理は、基材(例えば、第1の基材表面15、第2の基材表面17、基材19、第1の基材25、第2の基材30)を少なくとも1つの金属錯体に曝露することを含み得る。
【0069】
金属錯体は、好適な金属中心と共に、またはより好適なリガンドとを含み得る。好適な金属中心の例としてはチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なリガンドの例には、C1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシ基、任意に1つ以上のC1~C10アルキル基で置換されているシクロペンタジエニル基(Cp)、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。例えば、それぞれのリガンドは、独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、Cp基、メチル置換Cp(MeCp)基、エチル置換Cp(EtCp)基、およびこれらの組み合わせであり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、金属錯体は、構造式III
【0071】
【0072】
(式中、MはTi、ZrまたはHfであり得、特にHfであり得る;L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立してC1~C8アルキル基、C1~C8アルコキシ基、および少なくとも1つのC1~C8アルキルで任意に置換されているCp基から選択され得る。いくつかの実施形態では、L1、L2、L3およびL4はすべて同じであり得る)に対応し得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、MはHfであり得、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立してC1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、および少なくとも1つのC1~C4アルキルで任意に置換されているCp基からなる群から選択され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、MはHfであり得、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立してC1~C2アルキル基、C1~C2アルコキシ基、および少なくとも1つのC1~C2アルキルで任意に置換されているCp基からなる群から選択され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、金属錯体は(MeCp)2Hf(OMe)(Me)であり得る。
【0076】
有利なことに、金属含有膜の金属が、ブロッキング層上に少量で実質的に存在してもよく、実質的に存在しなくてもよい。例えば、金属含有膜の金属は、約25原子%以下、約20原子%以下、約15原子%以下、約10原子%以下、約5原子%以下、約1原子%以下、約0.5原子%以下もしくは約0原子%、または約0原子%~約25原子%、約0.5原子%~約25原子%、約0.5原子%~約20原子%、約0.5原子%~約15原子%、約0.5原子%~約10原子%もしくは約1原子%~約5原子%の量でブロッキング層上に存在し得る。
【0077】
加えて、または代替的に、ブロッキング層は、第2の基材表面(または100:1の選択性で基材の第2の部分)上に少量で存在してもよく、実質的に存在しなくてもよい。
【0078】
任意の実施形態において、基材は、任意の好適な堆積技術によって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、本明細書に記載される金属錯体、またはこれらの組み合わせに曝露され得る。例えば、第1の堆積処理は、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはその両方を気化させることを含み得る。代替的に、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはその両方を含む溶液に基材を浸すか、または沈めることを含み得る。加えて、または代替的に、第2の堆積処理は、本明細書に記載される少なくとも1つの金属錯体を気化させることを含み得る。
【0079】
例えば、これは、以下を含み得る:(1)構造式(I)に対応する化合物を気化させること、構造式(II)に対応する化合物を気化させること、少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を気化させること、もしくはこれらの組み合わせ;および、(2)基材表面(例えば、第1の基材表面15、第2の基材表面17、基材19、第1の基材25、第2の基材30)に、構造式(I)に対応する化合物を送達すること、構造式(II)に対応する化合物を送達すること、少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を送達すること、もしくはこれらの組み合わせ、または、基材上に、構造式(I)に対応する化合物を通過させること、構造式(II)に対応する化合物を通過させること、少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を通過させること、もしくはこれらの組み合わせ(ならびに/または、基材表面上で、構造式(I)に対応する化合物を分解すること、構造式(II)に対応する化合物を分解すること、および/もしくは少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を分解すること、もしくはこれらの組み合わせ)。
【0080】
任意の実施形態において、第1の堆積処理および第2の堆積処理は独立して、化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)であり得る。
【0081】
ALDおよびCVD法は、連続注入処理もしくはパルス注入処理、液体注入処理、光アシスト処理、プラズマアシスト処理、およびプラズマ増強処理などであるがこれらに限定されない、様々なタイプのALDおよびCVD処理を包含する。明確にするために、本技術の方法としては特に、直接液体注入処理が挙げられる。例えば、直接液体注入CVD(「DLI-CVD」)では、構造式(I)に対応する固体もしくは液体化合物、構造式(II)に対応する固体もしくは液体化合物、固体もしくは液体金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、またはそれらの組み合わせを、好適な溶媒に溶解し、そこから形成された溶液を、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、またはそれらの組み合わせを気化させる手段としての気化チャンバに注入することができる。次いで、構造式(I)に対応する気化した化合物、構造式(II)に対応する気化した化合物、気化した金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、またはそれらの組み合わせを基材表面に輸送/送達する。一般に、DLI-CVDは、金属錯体が比較的低い揮発性を示すか、またはそうでなければ気化するのが困難である場合に、特に有用であり得る。
【0082】
一実施形態では、従来型CVDまたはパルスCVDを使用して、少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成する。加えて、または代替的に、従来型CVDまたはパルスCVDを使用して、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを基材表面上に気化および/または通過させることによって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを送達する。従来型のCVD処理については、例えば、Smith, Donald (1995). Thin-Film Deposition: Principles and Practice. McGraw-Hill.を参照されたい。
【0083】
一実施形態では、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、またはそれらの組み合わせについてのCVD成長条件には、
a)基材温度:50~600℃
b)蒸発器温度(金属前駆体温度):0~200℃
c)反応器圧力:0~100Torr
d)アルゴンまたは窒素キャリアガス流量:0~500sccm
e)酸素流量:0~500sccm
f)水素流量:0~500sccm
g)運転時間:所望の膜厚に応じて変わる
が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
別の実施形態では、光アシストCVDを使用して、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成する。加えて、または代替的に、光アシストCVDを使用して、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを基材表面上に気化および/または通過させることによって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを送達する。
【0085】
さらなる実施形態では、従来型の(すなわち、パルス注入)ALDを使用して、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成する。加えて、または代替的に、従来型の(すなわち、パルス注入)ALDを使用して、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを基材表面上に気化および/または通過させることによって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを送達することができる。従来型のALD処理については、例えば、George S. M., et al. J. Phys. Chem., 1996, 100, 13121-13131.を参照されたい。
【0086】
別の実施形態では、液体注入ALDを使用して、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成する。ここで、少なくとも1つの金属錯体は、バブラーによる蒸気引き込みとは対照的に、直接液体注入によって反応チャンバに送達される。加えて、または代替的に、液体注入ALDを使用して、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを基材表面上に気化および/または通過させることによって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを送達する。ここで、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせは、バブラーによる蒸気引き込みとは対照的に、直接液体注入によって反応チャンバに送達される。液体注入ALD処理については、例えば、Potter R. J., et al., Chem. Vap. Deposition, 2005, 11(3), 159-169.を参照されたい。
【0087】
構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、またはそれらの組み合わせについてのALD成長条件の例としては、
a)基材温度:0~400℃
b)蒸発器温度(金属前駆体温度):0~200℃
c)反応器圧力:0~100Torr
d)アルゴンまたは窒素キャリアガス流量:0~500sccm
e)反応性ガス流量:0~500sccm
f)パルスシーケンス(金属錯体/パージ/反応性ガス/パージ):最適化された処理条件およびチャンバサイズに応じて変化する
g)サイクル数:所望の膜厚に応じて異なる
が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
別の実施形態では、光アシストALDを使用して、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成する。加えて、または代替的に、光アシストALDを使用して、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを基材表面上に気化および/または通過させることによって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを送達する。光アシストALD処理については、例えば、米国特許第4,581,249号を参照されたい。
【0089】
別の実施形態では、プラズマアシストまたはプラズマ増強ALDを使用して、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を基材表面上に気化および/または通過させることによって、金属含有膜を形成する。加えて、または代替的に、プラズマアシストまたはプラズマ増強ALDを使用して、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを基材表面上に気化および/または通過させることによって、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを送達する。
【0090】
別の実施形態では、基材表面上に金属含有膜を形成する方法は:ALD処理中に、基材を、本明細書に記載される実施形態のうち1つ以上に記載の気相金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)に曝露して、表面上に、金属中心(例えば、ハフニウム)によって表面に結合した金属錯体を含む層を形成する工程と;ALD処理中に、結合した金属錯体を有する基材を共反応物に曝露し、結合した金属錯体と共反応物との間で交換反応が起こり、それによって、結合した金属錯体を解離させ、基材の表面上に元素金属の第1の層を生成する工程と;当該ALD処理および処置を連続的に繰り返す工程と;を含む。
【0091】
反応時間、温度および圧力は、金属-表面相互作用を生じさせ、基材の表面上に層を達成するように選択される。ALD反応のための反応条件は、金属錯体の特性に基づいて選択され得る。堆積は大気圧で行うことができるが、より一般的には減圧下で行う。金属錯体の蒸気圧は、このような用途において実用的であるように十分に低いはずである。基材温度は、表面の金属原子間の結合を完全な状態に保ち、気体反応物の熱分解を防止するように、十分に低いはずである。しかしながら、基材温度はまた、原材料(すなわち、反応物)を気相中に保ち、表面反応に十分な活性化エネルギーを提供するように、十分に高いはずである。好適な温度は、使用される特定の金属錯体および圧力を含む、様々なパラメータに依存する。本明細書に開示されるALD堆積方法において使用するための特定の金属錯体の特性は、当技術分野において公知の方法を使用して評価され得、反応のための好適な温度および圧力の選択を可能にする。一般に、低分子量と、リガンド球の回転エントロピーを増加させる官能基の存在とは、典型的な送達温度および向上した蒸気圧下で液体を生じる融点をもたらす。
【0092】
堆積方法で使用するための金属錯体は、十分な蒸気圧、選択された基材温度での十分な熱安定性、および薄膜中に望ましくない不純物を含まずに基材の表面上に反応を生じさせるために十分な反応性についてのすべてを要件とする。十分な蒸気圧は、完全な自己飽和反応を可能にするために十分な濃度で原料化合物の分子が基材表面に存在することを保証する。十分な熱安定性は、薄膜中に不純物を生成する熱分解を原料化合物が受けないことを保証する。
【0093】
したがって、これらの方法において利用される本明細書に開示される金属錯体は、液体、固体、もしくは気体であり得る。典型的には、金属錯体は、処理チャンバへの蒸気の一貫した輸送を可能にするために十分な蒸気圧を有する環境温度では、液体または固体である。
【0094】
特定の実施形態では、蒸着処理を容易にするために、金属含有錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせを、炭化水素溶媒またはアミン溶媒などの好適な溶媒に溶解させてもよい。好適な炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ヘプタンおよびノナンなどの脂肪族炭化水素;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびに、ジグリム、トリグリムおよびテトラグリムなどの脂肪族および環状エーテルが含まれるが、これらに限定されない。好適なアミン溶媒の例としては、オクチルアミンおよびN,N-ジメチルドデシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、金属含有錯体をトルエンに溶解して、濃度約0.05M~約1Mの溶液を得ることができる。
【0095】
別の実施形態では、少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)、構造式(I)に対応する化合物、構造式(II)に対応する化合物、またはそれらの組み合わせは、基材表面に「そのまま(neat)」(キャリアガスによって希釈されない)で送達されてもよい。
【0096】
別の実施形態では、混合金属膜が、本明細書に記載される方法によって形成され得る。当該方法は、本明細書に開示される少なくとも第1の金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を、本明細書に開示される第1の金属錯体の金属以外の金属を含む第2の金属錯体(および/または第3の金属錯体および/または第4の金属錯体など)と組み合わせて(ただし必ずしも同時にではない)、気化させる。例えば、混合金属Hf-Zr膜を形成するために、第1の金属錯体はHfを含むことができ、第2の金属含有錯体はZrを含むことができる。いくつかの実施態様において、混合金属膜は、混合金属酸化物、混合金属窒化物または混合金属酸窒化物であり得る。
【0097】
一実施形態では、元素金属、金属窒化物、金属酸化物、または金属ケイ化物膜は、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を、単独で、または共反応物と組み合わせて堆積のために送達することによって、形成することができる。この点に関して、共反応物は、単独で、または少なくとも1つ以上の金属錯体と組み合わせて、基材表面上に堆積させるか、または基材表面上に送達するか、または基材表面上を通過させることができる。容易に理解されるように、使用される特定の共反応物は、得られる金属含有膜のタイプを決定する。このような共反応物の例には、水素、水素プラズマ、酸素、空気、水、アルコール、H2O2、N2O、アンモニア、ヒドラジン、ボラン、シラン、オゾン、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好適なアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールなどが含まれるが、これらに限定されない。好適なボランの例には、ボラン、ジボラン、トリボランなどのヒドリド性(すなわち、還元性)ボランが含まれるが、これらに限定されない。好適なシランの例には、シラン、ジシラン、トリシランなどのヒドリド性シランが含まれるが、これらに限定されない。好適なヒドラジンの例には、ヒドラジン(N2H4)、メチルヒドラジン、tert-ブチルヒドラジン、N,N-またはN,N’-ジメチルヒドラジンなどの1つ以上のアルキル基で任意に置換されているヒドラジン(すなわち、アルキル置換ヒドラジン)、フェニルヒドラジンなどの1つ以上のアリール基で任意に置換されているヒドラジン(すなわち、アリール置換ヒドラジン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
一実施形態では、金属酸化物膜を提供するために、本明細書に開示される金属錯体は、酸素含有共反応物のパルスと交互のパルスで基材表面に送達される。このような共反応物の例には、H2O、H2O2、O2、オゾン、空気、i-PrOH、t-BuOH、またはN2Oが含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
他の実施形態において、共反応物は、水素などの還元性試薬を含む。このような実施形態では、元素金属膜が得られる。特定の実施形態では、元素金属膜は、純粋な金属からなるか、または実質的に、純粋な金属からなる。このような純粋金属膜は、約80、85、90、95、または98%を超える純度の金属を含んでもよい。さらにより具体的な実施形態では、元素金属膜はハフニウム膜である。
【0100】
他の実施形態では、共反応物を使用して、堆積のために、本明細書に開示される少なくとも1つの金属錯体(例えば、構造式(III)に対応するもの)を単独で、または、アンモニア、ヒドラジン、および/もしくは他の窒素含有化合物(例えば、アミン)などの共反応物と組み合わせて、反応チャンバに送達することによって、金属窒化物膜を形成する。このような共反応物を複数使用することができる。さらなる実施形態では、金属窒化物膜が窒化ハフニウム膜である。
【0101】
特定の実施形態では、本技術の方法は、シリコンチップなどの基材上の、メモリおよびロジック用途のためのダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)および相補型金属酸化物半導体(CMOS)などの用途に利用される。
【0102】
本明細書中に開示される金属錯体はいずれも、元素金属、金属酸化物、金属窒化物、および/または金属ケイ化物の薄膜を調製するために、使用され得る。このような膜は、酸化触媒、アノード材料(例えば、SOFCまたはLIBアノード)、導電層、センサ、拡散バリア/コーティング、超伝導材料および非超伝導材料/コーティング、トライボロジーコーティング、および/または保護コーティングとしての用途を見出すことができる。膜特性(例えば、導電率)は、堆積に使用される金属、共反応物および/または共錯体の有無、生成される膜の厚さ、成長およびその後の処理の間に採用されるパラメータおよび基材などの多くの要因に依存することが、当業者には理解される。
【0103】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、材料、または特性が本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な場所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、または「実施形態において」などの語句の出現は、必ずしも本技術の同一の実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0104】
本明細書で、本技術は特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本技術の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本技術の精神および範囲から逸脱することなく、本技術の方法および装置に様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本技術は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にある修正および変形を含むことが意図される。このように一般的に記載された本技術は、以下の実施例を参考にすることによって、より容易に理解されるが、これは例示のために提供され、限定することを意図しない。
【0105】
〔実施例〕
〔実施例1:種々の基材をN-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露することによるブロッキング層の形成〕
ブロッキング層は、直交流形原子層堆積(ALD)反応器中でN-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸を使用する気相送達法によって調製した。N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸をアンプル中で130℃に保った。150℃に保たれたステンレス鋼シリンダは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸アンプルを送達マニホールドに接続した。最初に、シリンダをN-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸蒸気で満たし、次いで、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸蒸気を60秒間、以下の基材:Si上にW、Co、Cu、およびコントロールとしてSiO
2、を含むALDチャンバに130℃でパルスし、1時間トラップした。X線光電子分光法(XPS)分析を基材上で行い、
図2に示すように、XPSのS2p領域を用いて、基材上のブロッキング層としてのN-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸のグラフトを確認した。
【0106】
〔実施例2:ハフニウム含有膜のブロッキング層阻害〕
Si基材上のW、Co、CuおよびコントロールSiO
2をN-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露することにより形成したブロッキング層の、Hf含有膜の成長を阻害する性能を試験した。Si基材上のW、Co、CuおよびコントロールSiO
2を、実施例1で上述したようにN-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露し、続いて(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)およびH
2Oに350℃で200サイクル曝露した。金属基材を2%クエン酸で1分間、前洗浄した後、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露した。SiO
2試料は前洗浄しなかった。制御のために、Si基材上のW、Co、CuおよびコントロールSiO
2は(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)にのみ曝露した。堆積の条件は以下の通りであった:2秒間パルスHf((MeCp)
2Hf(OMe)(Me)由来)、10秒間パルスN
2パージ、2秒間パルスH
2O、および10秒間パルスN
2パージ。N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露されたSiO
2、W、Co、およびCu基材上のHfの原子百分率は、XPSによって測定され、
図3Aに示す通りであった。また、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露されなかったが、(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露されたコントロールSiO
2、W、Co、およびCu基材上のHfの原子百分率は、XPSによって測定され、
図3Bに示す通りであった。N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材それぞれの走査型電子顕微鏡(SEM)画像をそれぞれ
図4A~4Dに示す。
【0107】
〔実施例3:N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸N-ドデシル-N-メチルアンモニウム塩(化合物I)の合成〕
N-ドデシル-N’-メチルアミン(25mmol)のメタノール(50mL)溶液に、二硫化炭素(188mmol)を0℃で添加した。次いで、反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで室温(15℃~25℃)で一晩(8~12時間)撹拌した。溶媒を窒素下で除去してオフホワイト色の固体物質を得た(収率87%)。粗生成物(オフホワイト色の固形物質)をメタノールからの結晶化によって精製し、1H核磁気共鳴(1H NMR)、13C NMR、熱重量分析(TGA)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)、元素分析、単結晶X線および滴定分析によって、特性付けた。上記の特性付け方法により、化合物Iは以下に示す錯体/塩形態
【0108】
【0109】
で存在することが確認された。
【0110】
TGAを化合物Iについて実施した(4.47mgのサンプルおよび10℃/分の加熱速度)。結果を
図5Aに示す。TGAは、61℃で融解、180℃で0.2%残渣、T
1/2=約171℃を示した。示差走査熱量測定(DSC)を化合物Iについて実施した。結果を
図5Bに示す。
【0111】
1H NMRを化合物Iについて実施した。結果を
図6Aに示す。
13C NMRを化合物Iについて実施した。結果を
図6Bに示す。
1H NMRおよび
13C NMRは、遊離アミン出発物質を示さなかった。
【0112】
化合物Iについて元素分析を測定し、以下のような結果が得られた:炭素、68.3%;窒素、5.8%;硫黄、13.4%。
【0113】
滴定分析を化合物Iについて実施した。結果を以下の表1に示す。
【0114】
【0115】
赤外(IR)分光法を化合物Iについて実施した。結果を
図7に示す。単結晶X線分析を化合物Iについて実施した。結果を
図8に示す。
【0116】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、発行された特許および他の文書は、あたかも個々の刊行物、特許出願、発行された特許または他の文書が、その全体が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれている。参照により組み込まれる文章に含まれる定義は、それらが本開示における定義と矛盾しない程度まで、無視される。
【0117】
用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1A】
図1Aは、本開示の特定の態様に係るブロッキング層および金属含有膜の詳細を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示の特定の代わりの態様に係るブロッキング層および金属含有膜の詳細を示す。
【
図2】
図2は、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材のX線光電子分光法(XPS)分析を示す。
【
図3A】
図3Aは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材上に存在するHfの原子百分率を示す。
【
図3B】
図3Bは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸に曝露せず、(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材上に存在するHfの原子百分率を示す。
【
図4A】
図4A~4Dは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材それぞれの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【
図4B】
図4A~4Dは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材それぞれの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【
図4C】
図4A~4Dは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材それぞれの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【
図4D】
図4A~4Dは、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸および(MeCp)
2Hf(OMe)(Me)に曝露した後のSiO
2、W、Co、およびCu基材それぞれの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【
図5A】
図5Aは、熱重量分析(TGA)データのグラフ表示であり、N-ドデシル-N-メチルカルバモジチオ酸N-ドデシル-N-メチルアンモニウム塩(化合物I)の重量損失対温度%を示す。
【
図5B】
図5Bは、化合物Iの示差走査熱量測定(DSC)分析のグラフ表示である。
【
図6A】
図6Aは、化合物Iの
1H核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを示す。
【
図6B】
図6Bは、化合物Iの
13C NMRスペクトルを示す。
【
図7】
図7は、化合物Iの赤外(IR)スペクトルを示す。