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特許7626199顕微鏡対物レンズ、顕微鏡光学系、および顕微鏡装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズ、顕微鏡光学系、および顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20250128BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B13/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023510675
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007908
(87)【国際公開番号】W WO2022209483
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021057545
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 英嗣
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-014215(JP,A)
【文献】特開2013-156579(JP,A)
【文献】特開2017-016066(JP,A)
【文献】特開2016-085335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、像側に凹面を向けた第2レンズ群と、物体側に凹面を向けた第3レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群は、正の屈折力を有する1つのレンズ成分からなり、
前記第3レンズ群は、2つの負レンズと、1つの正レンズつのレンズからなり、
前記2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズは、以下の条件式を満足し、
νdA<40
但し、νdA:前記第3レンズ群の前記所定の負レンズのアッベ数
さらに以下の条件式を満足する顕微鏡対物レンズ。
0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.007)
但し、θA:前記第3レンズ群の前記所定の負レンズの部分分散比であり、前記所定の負レンズのg線に対する屈折率をngAとし、前記所定の負レンズのF線に対する屈折率をnFAとし、前記所定の負レンズのC線に対する屈折率をnCAとしたとき、次式で定義される
θA=(ngA-nFA)/(nFA-nCA)
【請求項2】
以下の条件式を満足する請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.017)
【請求項3】
前記第3レンズ群の前記所定の負レンズは、前記第3レンズ群の前記2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、
以下の条件式を満足する請求項1または2に記載の顕微鏡対物レンズ。
0<νdX-νdA
0<(θA-θX)/(νdA-νdX)×(νdP-νdX)+θX-θP
但し、νdX:前記第3レンズ群の前記2つの負レンズのうち他方の負レンズのアッベ数
νdP:前記第3レンズ群の前記正レンズのアッベ数
θX:前記第3レンズ群の前記他方の負レンズの部分分散比であり、前記他方の負レンズのg線に対する屈折率をngXとし、前記他方の負レンズのF線に対する屈折率をnFXとし、前記他方の負レンズのC線に対する屈折率をnCXとしたとき、次式で定
義される
θX=(ngX-nFX)/(nFX-nCX)
θP:前記第3レンズ群の前記正レンズの部分分散比であり、前記正レンズのg線に対する屈折率をngPとし、前記正レンズのF線に対する屈折率をnFPとし、前記正レンズのC線に対する屈折率をnCPとしたとき、次式で定義される
θP=(ngP-nFP)/(nFP-nCP)
【請求項4】
前記第3レンズ群の前記所定の負レンズは、前記第3レンズ群の前記2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、
以下の条件式を満足する請求項3に記載の顕微鏡対物レンズ。
0<(θA-θX)/(νdA-νdX)×(νdP-νdX)+θX-θP-0.015
【請求項5】
前記第3レンズ群の前記所定の負レンズは、前記第3レンズ群の前記2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、
前記2つの負レンズのうち他方の負レンズは、前記所定の負レンズよりも物体側で前記第3レンズ群の最も物体側に配置される請求項1~4のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項5に記載の顕微鏡対物レンズ。
1.68<ndX
但し、ndX:前記第3レンズ群の前記他方の負レンズのd線に対する屈折率
【請求項7】
前記第2レンズ群は、正の屈折力を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項8】
前記第2レンズ群は、以下の条件式を満足する所定の正レンズを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
νd2P<35
但し、νd2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズのアッベ数
【請求項9】
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群のうち最も光軸から離れた光線が通り、以下の条件式を満足する所定の正レンズを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
νd2P<35
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008)
但し、νd2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズのアッベ数
θ2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズの部分分散比であり、前記所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、前記所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、前記所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【請求項10】
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群のうち最も光軸から離れた光線が通る正レンズと、
前記最も光軸から離れた光線が通る正レンズよりも物体側に配置され、以下の条件式を満足する所定の正レンズとを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
νd2P<35
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008)
但し、νd2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズのアッベ数
θ2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズの部分分散比であり、前記所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、前記所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、前記所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【請求項11】
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群のうち最も光軸から離れた光線が通る正レンズと、
前記最も光軸から離れた光線が通る正レンズよりも像側に配置され、以下の条件式を満足する所定の正レンズとを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
νd2P<35
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008)
但し、νd2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズのアッベ数
θ2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズの部分分散比であり、前記所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、前記所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、前記所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【請求項12】
前記第1レンズ群の前記レンズ成分は、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズを含む接合レンズである請求項1~11のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項13】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、像側に凹面を向けた第2レンズ群と、物体側に凹面を向けた第3レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群は、正の屈折力を有する1つのレンズ成分からなり、
前記第2レンズ群は、以下の条件式を満足する所定の正レンズを有する顕微鏡対物レンズ。
νd2P<35
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008)
但し、νd2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズのアッベ数
θ2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズの部分分散比であり、前記所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、前記所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、前記所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【請求項14】
前記第3レンズ群は、2つの負レンズを有し、
前記2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズは、以下の条件式を満足する請求項13に記載の顕微鏡対物レンズ。
νdA<40
但し、νdA:前記第3レンズ群の前記所定の負レンズのアッベ数
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズと、前記顕微鏡対物レンズからの光を集光する第2対物レンズとを備える顕微鏡光学系。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズを備える顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡対物レンズ、顕微鏡光学系、および顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、倍率が高くて開口数が大きい顕微鏡用の対物レンズが種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような対物レンズでは、倍率色収差をはじめとする諸収差を良好に補正することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8988780号明細書
【発明の概要】
【0004】
第1の本発明に係る顕微鏡対物レンズは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、像側に凹面を向けた第2レンズ群と、物体側に凹面を向けた第3レンズ群とからなり、前記第1レンズ群は、正の屈折力を有する1つのレンズ成分からなり、前記第3レンズ群は、2つの負レンズと、1つの正レンズつのレンズからなり、前記2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズは、以下の条件式を満足し、
νdA<40
但し、νdA:前記第3レンズ群の前記所定の負レンズのアッベ数
さらに以下の条件式を満足する。
0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.007)
但し、θA:前記第3レンズ群の前記所定の負レンズの部分分散比であり、前記所定の負レンズのg線に対する屈折率をngAとし、前記所定の負レンズのF線に対する屈折率をnFAとし、前記所定の負レンズのC線に対する屈折率をnCAとしたとき、次式で定義される
θA=(ngA-nFA)/(nFA-nCA)
【0005】
第2の本発明に係る顕微鏡対物レンズは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、像側に凹面を向けた第2レンズ群と、物体側に凹面を向けた第3レンズ群とからなり、前記第1レンズ群は、正の屈折力を有する1つのレンズ成分からなり、前記第2レンズ群は、以下の条件式を満足する所定の正レンズを有する。
νd2P<35
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008)
但し、νd2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズのアッベ数
θ2P:前記第2レンズ群の前記所定の正レンズの部分分散比であり、前記所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、前記所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、前記所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【0006】
本発明に係る顕微鏡光学系は、上述の顕微鏡対物レンズと、前記顕微鏡対物レンズからの光を集光する第2対物レンズとを備える。
【0007】
本発明に係る顕微鏡装置は、上述の顕微鏡対物レンズを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
図2】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図3】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの色収差図である。
図4】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図5】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
図6】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図7】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの色収差図である。
図8】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図9】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
図10】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図11】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの色収差図である。
図12】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図13】第2対物レンズの構成を示す断面図である。
図14】顕微鏡装置の一例である共焦点蛍光顕微鏡を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る好ましい実施形態について説明する。まず、各実施形態に係る顕微鏡対物レンズを備えた顕微鏡光学系および共焦点蛍光顕微鏡(顕微鏡装置)を図14に基づいて説明する。図14に示すように、共焦点蛍光顕微鏡1は、ステージ10と、光源20と、照明光学系30と、顕微鏡光学系40と、検出部50とを有して構成される。以降の説明において、共焦点蛍光顕微鏡1の顕微鏡対物レンズの光軸方向に延びる座標軸をz軸とする。また、このz軸と垂直な面内において互いに直交する方向に延びる座標軸をそれぞれx軸およびy軸とする。
【0010】
ステージ10上には、例えば、スライドガラス(図示せず)とカバーガラス(図示せず)との間に保持された試料SAが載置される。また、ステージ10上には、浸液とともに試料容器(図示せず)に収容された試料SAが載置されてもよい。試料SAは、蛍光色素などの蛍光物質を含む。試料SAは、例えば、予め蛍光染色された細胞等である。ステージ10の近傍に、ステージ駆動部11が設けられる。ステージ駆動部11は、ステージ10をz軸に沿って移動させる。
【0011】
光源20は、所定の波長帯の励起光を発生させる。光源20として、例えば、所定の波長帯のレーザー光(励起光)を出射させることが可能なレーザー光源等が用いられる。所定の波長帯は、蛍光物質を含む試料SAを励起させることが可能な波長帯に設定される。光源20から出射した励起光は、照明光学系30に入射する。
【0012】
照明光学系30は、光源20から出射した励起光によって、ステージ10上の試料SAを照明する。照明光学系30は、光源20側から試料SA側へ向かう順に、コリメータレンズ31と、ビームスプリッタ33と、スキャナ34とを備える。また、照明光学系30は、顕微鏡光学系40の顕微鏡対物レンズOLを含む。コリメータレンズ31は、光源20から出射した励起光を平行光にする。
【0013】
ビームスプリッタ33は、光源20からの励起光が反射し、かつ試料SAからの蛍光が透過する特性を有する。ビームスプリッタ33は、光源20からの励起光をステージ10上の試料SAに向けて反射させる。ビームスプリッタ33は、試料SAで発生した蛍光を検出部50に向けて透過させる。ビームスプリッタ33とコリメータレンズ31との間に、光源20からの励起光を透過させる励起フィルター32が配設される。ビームスプリッタ33と顕微鏡光学系40の第2対物レンズILとの間に、試料SAからの蛍光を透過させる蛍光フィルター35が配設される。
【0014】
スキャナ34は、x方向とy方向との2方向において、光源20からの励起光で試料SAを走査する。スキャナ34として、例えば、ガルバノスキャナや、レゾナントスキャナ等が用いられる。
【0015】
顕微鏡光学系40は、試料SAで発生した蛍光を集光する。顕微鏡光学系40は、試料SA側から検出部50側へ向かう順に、顕微鏡対物レンズOLと、第2対物レンズILとを備える。また、顕微鏡光学系40は、顕微鏡対物レンズOLと第2対物レンズILとの間に配置された、スキャナ34と、ビームスプリッタ33とを含む。顕微鏡対物レンズOLは、試料SAが載置されるステージ10の上方に対向して配置される。顕微鏡対物レンズOLは、光源20からの励起光を集光してステージ10上の試料SAに照射する。また、顕微鏡対物レンズOLは、試料SAで発生した蛍光を受光して平行光にする。第2対物レンズILは、顕微鏡対物レンズOLからの蛍光(平行光)を集光する。
【0016】
検出部50は、顕微鏡光学系40を介して、試料SAで発生した蛍光を検出する。検出部50として、例えば、光電子増倍管が用いられる。顕微鏡光学系40と検出部50との間に、ピンホール45が設けられる。ピンホール45は、顕微鏡対物レンズOLの試料SA側の焦点位置と共役な位置に配置される。ピンホール45は、顕微鏡対物レンズOLの焦点面(顕微鏡対物レンズOLの焦点位置を通る顕微鏡対物レンズOLの光軸と垂直な面)または、当該焦点面から所定のずれ許容範囲内で光軸方向にずれた面からの光のみを通過させ、他の光を遮光する。
【0017】
以上のように構成される共焦点蛍光顕微鏡1において、光源20から出射した励起光は、コリメータレンズ31を透過して平行光となる。コリメータレンズ31を透過した励起光は、励起フィルター32を通ってビームスプリッタ33に入射する。ビームスプリッタ33に入射した励起光は、当該ビームスプリッタ33で反射してスキャナ34に入射する。スキャナ34は、x方向とy方向との2方向において、スキャナ34に入射した励起光で試料SAを走査する。スキャナ34に入射した励起光は、スキャナ34を通って顕微鏡対物レンズOLを透過し、顕微鏡対物レンズOLの焦点面に集光される。試料SAにおいて励起光が集光される部分(すなわち、顕微鏡対物レンズOLの焦点面と重なる部分)は、スキャナ34によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。これにより、照明光学系30は、光源20から出射した励起光によって、ステージ10上の試料SAを照明する。
【0018】
励起光の照射によって、試料SAに含まれる蛍光物質が励起されて蛍光が出射する。試料SAからの蛍光は、顕微鏡対物レンズOLを透過して平行光となる。顕微鏡対物レンズOLを透過した蛍光は、スキャナ34を通ってビームスプリッタ33に入射する。ビームスプリッタ33に入射した蛍光は、当該ビームスプリッタ33を透過して蛍光フィルター35に達する。蛍光フィルター35に達した蛍光は、蛍光フィルター35を通って第2対物レンズILを透過し、顕微鏡対物レンズOLの焦点位置と共役な位置に集光される。顕微鏡対物レンズOLの焦点位置と共役な位置に集光された蛍光は、ピンホール45を通過して検出部50に入射する。
【0019】
検出部50は、検出部50に入射した光(蛍光)の光電変換を行い、光の検出信号として、その光の光量(明るさ)に対応するデータを生成する。検出部50は、生成したデータを不図示の制御部へ出力する。なお、制御部は、検出部50から入力されたデータを1画素分のデータとして、これをスキャナ34による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、複数画素分のデータが2次元で(2方向で)並ぶ1つの画像データを生成する。このようにして、制御部は、試料SAの画像を取得することが可能である。
【0020】
本実施形態に係る顕微鏡装置の一例として、共焦点蛍光顕微鏡1について説明したが、これに限られるものではない。例えば、本実施形態に係る顕微鏡装置は、共焦点顕微鏡や、多光子励起顕微鏡、超解像顕微鏡等であってもよい。また、共焦点蛍光顕微鏡1は、正立顕微鏡であってもよく、倒立顕微鏡であってもよい。
【0021】
次に、第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズについて説明する。第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの一例として、図1に示す顕微鏡対物レンズOL(1)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、像側に凹面を向けた第2レンズ群G2と、物体側に凹面を向けた第3レンズ群G3とから構成される。第1レンズ群G1は、正の屈折力を有する1つのレンズ成分から構成される。第3レンズ群G3は、2つの負レンズと、1つの正レンズとを含む3つ以上のレンズから構成される。なお、各実施形態において、レンズ成分は、単レンズ又は接合レンズを示すものである。また、図1等において、物体OBは物体面を示す。
【0022】
上記構成の下、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズ(L302)は、以下の条件式(1)を満足する。
νdA<40 ・・・(1)
但し、νdA:第3レンズ群G3の所定の負レンズのアッベ数
【0023】
第1実施形態によれば、倍率色収差をはじめとする諸収差が良好に補正された顕微鏡対物レンズ、並びにこの顕微鏡対物レンズを備えた顕微鏡光学系および顕微鏡装置を得ることが可能になる。第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、図5に示す光学系OL(2)でも良く、図9に示す光学系OL(3)でも良い。
【0024】
条件式(1)は、第3レンズ群G3の所定の負レンズのアッベ数について、適切な範囲を規定するものである。条件式(1)を満足することで、倍率色収差の補正において、1次の色消しを良好に行うことができる。
【0025】
条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(1)の上限値を、35、33、32、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0026】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3の所定の負レンズは、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、以下の条件式(2)および条件式(3)を満足することが望ましい。
0<νdX-νdA ・・・(2)
0<(θA-θX)/(νdA-νdX)×(νdP-νdX)+θX-θP ・・・(3)
但し、νdX:第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち他方の負レンズのアッベ数
νdP:第3レンズ群G3の正レンズのアッベ数
θA:第3レンズ群G3の所定の負レンズの部分分散比であり、所定の負レンズのg線に対する屈折率をngAとし、所定の負レンズのF線に対する屈折率をnFAとし、所定の負レンズのC線に対する屈折率をnCAとしたとき、次式で定義される
θA=(ngA-nFA)/(nFA-nCA)
θX:第3レンズ群G3の他方の負レンズの部分分散比であり、他方の負レンズのg線に対する屈折率をngXとし、他方の負レンズのF線に対する屈折率をnFXとし、他方の負レンズのC線に対する屈折率をnCXとしたとき、次式で定義される
θX=(ngX-nFX)/(nFX-nCX)
θP:第3レンズ群G3の正レンズの部分分散比であり、正レンズのg線に対する屈折率をngPとし、正レンズのF線に対する屈折率をnFPとし、正レンズのC線に対する屈折率をnCPとしたとき、次式で定義される
θP=(ngP-nFP)/(nFP-nCP)
【0027】
条件式(2)は、第3レンズ群G3における、所定の負レンズのアッベ数と、他方の負レンズのアッベ数との適切な関係を規定するものである。条件式(3)は、第3レンズ群G3における、所定の負レンズの部分分散比およびアッベ数と、他方の負レンズの部分分散比およびアッベ数と、正レンズの部分分散比およびアッベ数との適切な関係を規定するものである。条件式(2)および条件式(3)を満足することで、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0028】
条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(2)の下限値を、3、5、8、さらに10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0029】
条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(3)の下限値を0.01に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0030】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3の所定の負レンズは、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、以下の条件式(2)および条件式(4)を満足するようにしてもよい。
0<νdX-νdA ・・・(2)
0<(θA-θX)/(νdA-νdX)×(νdP-νdX)+θX-θP-0.015 ・・・(4)
但し、νdX:第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち他方の負レンズのアッベ数
νdP:第3レンズ群G3の正レンズのアッベ数
θA:第3レンズ群G3の所定の負レンズの部分分散比であり、所定の負レンズのg線に対する屈折率をngAとし、所定の負レンズのF線に対する屈折率をnFAとし、所定の負レンズのC線に対する屈折率をnCAとしたとき、次式で定義される
θA=(ngA-nFA)/(nFA-nCA)
θX:第3レンズ群G3の他方の負レンズの部分分散比であり、他方の負レンズのg線に対する屈折率をngXとし、他方の負レンズのF線に対する屈折率をnFXとし、他方の負レンズのC線に対する屈折率をnCXとしたとき、次式で定義される
θX=(ngX-nFX)/(nFX-nCX)
θP:第3レンズ群G3の正レンズの部分分散比であり、正レンズのg線に対する屈折率をngPとし、正レンズのF線に対する屈折率をnFPとし、正レンズのC線に対する屈折率をnCPとしたとき、次式で定義される
θP=(ngP-nFP)/(nFP-nCP)
【0031】
条件式(2)は、前述したように、第3レンズ群G3における、所定の負レンズのアッベ数と、他方の負レンズのアッベ数との適切な関係を規定するものである。条件式(4)は、第3レンズ群G3における、所定の負レンズの部分分散比およびアッベ数と、他方の負レンズの部分分散比およびアッベ数と、正レンズの部分分散比およびアッベ数との適切な関係を規定するものである。条件式(2)および条件式(4)を満足することで、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0032】
条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(2)の下限値を、3、5、8、さらに10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0033】
条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(4)の下限値を0.001に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0034】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.007) ・・・(5)
但し、θA:第3レンズ群G3の所定の負レンズの部分分散比であり、所定の負レンズのg線に対する屈折率をngAとし、所定の負レンズのF線に対する屈折率をnFAとし、所定の負レンズのC線に対する屈折率をnCAとしたとき、次式で定義される
θA=(ngA-nFA)/(nFA-nCA)
【0035】
条件式(5)は、第3レンズ群G3における、所定の負レンズのアッベ数と部分分散比との適切な関係を規定するものである。条件式(5)を満足することで、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0036】
条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(5)の下限値を0.01に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0037】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、以下の条件式(6)を満足するようにしてもよい。
0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.017) ・・・(6)
但し、θA:第3レンズ群G3の所定の負レンズの部分分散比であり、所定の負レンズのg線に対する屈折率をngAとし、所定の負レンズのF線に対する屈折率をnFAとし、所定の負レンズのC線に対する屈折率をnCAとしたとき、次式で定義される
θA=(ngA-nFA)/(nFA-nCA)
【0038】
条件式(6)は、第3レンズ群G3における、所定の負レンズのアッベ数と部分分散比との適切な関係を規定するものである。条件式(6)を満足することで、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0039】
条件式(6)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差を補正することが困難になる。条件式(6)の下限値を0.005に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0040】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3の所定の負レンズは、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、2つの負レンズのうち他方の負レンズは、所定の負レンズよりも物体側で第3レンズ群G3の最も物体側に配置されることが望ましい。これにより、軸外のコマ収差を良好に補正することができる。
【0041】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
1.68<ndX ・・・(7)
但し、ndX:第3レンズ群G3の他方の負レンズのd線に対する屈折率
【0042】
条件式(7)は、第3レンズ群G3の他方の負レンズのd線に対する屈折率について、適切な範囲を規定するものである。条件式(7)を満足することで、軸外のコマ収差を良好に補正することができる。
【0043】
条件式(7)の対応値が下限値を下回ると、軸外のコマ収差を補正することが困難になる。条件式(7)の下限値を1.69に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0044】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、正の屈折力を有することが望ましい。これにより、球面収差と軸上色収差を良好に補正することができる。
【0045】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、以下の条件式(8)を満足する所定の正レンズを有することが望ましい。
νd2P<35 ・・・(8)
但し、νd2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数
【0046】
条件式(8)は、第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数について、適切な範囲を規定するものである。なお、各実施形態において、所定の正レンズは、ガラスレンズであることが望ましい。条件式(8)を満足することで、軸上色収差を良好に補正することができる。
【0047】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(8)の上限値を33、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0048】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2のうち最も光軸から離れた光線が通り、以下の条件式(8)および条件式(9)を満足する所定の正レンズを有することが望ましい。
νd2P<35 ・・・(8)
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008) ・・・(9)
但し、νd2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数
θ2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズの部分分散比であり、所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【0049】
条件式(8)は、前述したように、第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数について、適切な範囲を規定するものである。条件式(9)は、第2レンズ群G2における、所定の正レンズのアッベ数と部分分散比との適切な関係を規定するものである。条件式(8)および条件式(9)を満足することで、軸上色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0050】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(8)の上限値を33、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0051】
条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(9)の下限値を0.001に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0052】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2のうち最も光軸から離れた光線が通る正レンズと、当該最も光軸から離れた光線が通る正レンズよりも物体側に配置され、以下の条件式(8)および条件式(9)を満足する所定の正レンズとを有してもよい。
νd2P<35 ・・・(8)
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008) ・・・(9)
但し、νd2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数
θ2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズの部分分散比であり、所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【0053】
条件式(8)は、前述したように、第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数について、適切な範囲を規定するものである。条件式(9)は、前述したように、第2レンズ群G2における、所定の正レンズのアッベ数と部分分散比との適切な関係を規定するものである。条件式(8)および条件式(9)を満足することで、軸上色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0054】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(8)の上限値を33、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0055】
条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(9)の下限値を0.001に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0056】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2のうち最も光軸から離れた光線が通る正レンズと、当該最も光軸から離れた光線が通る正レンズよりも像側に配置され、以下の条件式(8)および条件式(9)を満足する所定の正レンズとを有してもよい。
νd2P<35 ・・・(8)
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008) ・・・(9)
但し、νd2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数
θ2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズの部分分散比であり、所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【0057】
条件式(8)は、前述したように、第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数について、適切な範囲を規定するものである。条件式(9)は、前述したように、第2レンズ群G2における、所定の正レンズのアッベ数と部分分散比との適切な関係を規定するものである。条件式(8)および条件式(9)を満足することで、軸上色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0058】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(8)の上限値を33、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0059】
条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(9)の下限値を0.001に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0060】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1のレンズ成分は、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズを含む接合レンズであることが望ましい。これにより、像面湾曲を良好に補正することができる。なお、第1レンズ群G1のレンズ成分は、接合レンズに限らず、単レンズであってもよい。
【0061】
次に、第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズについて説明する。第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズは、第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLと同様の構成であるため、第1実施形態と同一の符号を付して説明する。第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの一例として、図1に示す顕微鏡対物レンズOL(1)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、像側に凹面を向けた第2レンズ群G2と、物体側に凹面を向けた第3レンズ群G3とから構成される。第1レンズ群G1は、正の屈折力を有する1つのレンズ成分から構成される。
【0062】
上記構成の下、第2レンズ群G2は、以下の条件式(8)および条件式(9)を満足する所定の正レンズを有する。
νd2P<35 ・・・(8)
0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008) ・・・(9)
但し、νd2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数
θ2P:第2レンズ群G2の所定の正レンズの部分分散比であり、所定の正レンズのg線に対する屈折率をng2Pとし、所定の正レンズのF線に対する屈折率をnF2Pとし、所定の正レンズのC線に対する屈折率をnC2Pとしたとき、次式で定義される
θ2P=(ng2P-nF2P)/(nF2P-nC2P)
【0063】
第2実施形態によれば、倍率色収差をはじめとする諸収差が良好に補正された顕微鏡対物レンズ、並びにこの顕微鏡対物レンズを備えた顕微鏡光学系および顕微鏡装置を得ることが可能になる。第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、図5に示す光学系OL(2)でも良く、図9に示す光学系OL(3)でも良い。
【0064】
条件式(8)は、前述したように、第2レンズ群G2の所定の正レンズのアッベ数について、適切な範囲を規定するものである。条件式(9)は、前述したように、第2レンズ群G2における、所定の正レンズのアッベ数と部分分散比との適切な関係を規定するものである。条件式(8)および条件式(9)を満足することで、軸上色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0065】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(8)の上限値を33、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0066】
条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、軸上色収差を補正することが困難になる。条件式(9)の下限値を0.001に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0067】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、2つの負レンズを有し、2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズは、前述の条件式(1)を満足することが望ましい。条件式(1)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、倍率色収差の補正において、1次の色消しを良好に行うことができる。また、条件式(1)の上限値を、35、33、32、さらに30に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0068】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、2つの負レンズと、1つの正レンズとを含む3つ以上のレンズから構成され、前述の条件式(1)等を満足する所定の負レンズは、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、前述の条件式(2)および条件式(3)を満足することが望ましい。条件式(2)および条件式(3)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。また、条件式(2)の下限値を、3、5、8、さらに10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。条件式(3)の下限値を0.01に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0069】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、2つの負レンズと、1つの正レンズとを含む3つ以上のレンズから構成され、前述の条件式(1)等を満足する所定の負レンズは、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、前述の条件式(2)および条件式(4)を満足するようにしてもよい。条件式(2)および条件式(4)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。また、条件式(2)の下限値を3、5、8、さらに10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。条件式(4)の下限値を0.01に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0070】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、2つの負レンズを有し、2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズは、前述の条件式(5)を満足することが望ましい。条件式(5)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。また、条件式(5)の下限値を0.01に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0071】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、2つの負レンズを有し、2つの負レンズのうち少なくとも1つの所定の負レンズは、前述の条件式(6)を満足するようにしてもよい。条件式(6)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、倍率色収差の補正において、1次の色消しに加え、2次スペクトルを良好に補正することができる。また、条件式(6)の下限値を0.005に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0072】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、2つの負レンズを有し、前述の条件式(1)等を満足する所定の負レンズは、第3レンズ群G3の2つの負レンズのうち一方の負レンズであり、2つの負レンズのうち他方の負レンズは、所定の負レンズよりも物体側で第3レンズ群G3の最も物体側に配置されることが望ましい。これにより、軸外のコマ収差を良好に補正することができる。
【0073】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、前述の条件式(7)を満足することが望ましい。条件式(7)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、軸外のコマ収差を良好に補正することができる。また、条件式(7)の下限値を1.69に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0074】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、正の屈折力を有することが望ましい。これにより、球面収差と軸上色収差を良好に補正することができる。
【0075】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1のレンズ成分は、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズを含む接合レンズであることが望ましい。これにより、像面湾曲を良好に補正することができる。なお、第1レンズ群G1のレンズ成分は、接合レンズに限らず、単レンズであってもよい。
【実施例
【0076】
以下、各実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの実施例を図面に基づいて説明する。図1図5図9は、第1~第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL{OL(1)~OL(3)}の構成を示す光路図である。これら図1図5図9において、各レンズ群を符号Gと数字(もしくはアルファベット)の組み合わせにより、各レンズを符号Lと数字(もしくはアルファベット)の組み合わせにより、それぞれ表している。この場合において、符号、数字の種類および数が大きくなって煩雑化するのを防止するため、実施例毎にそれぞれ独立して符号と数字の組み合わせを用いてレンズ等を表している。このため、実施例間で同一の符号と数字の組み合わせが用いられていても、同一の構成であることを意味するものでは無い。
【0077】
以下に表1~表3を示すが、この内、表1は第1実施例、表2は第2実施例、表3は第3実施例における各諸元データを示す表である。各実施例では収差特性の算出対象として、d線(波長λ=587.6nm)、C線(波長λ=656.3nm)、F線(波長λ=486.1nm)を選んでいる。
【0078】
[全体諸元]の表において、βは、顕微鏡対物レンズの倍率を示す。fは、顕微鏡対物レンズの焦点距離を示す。NAは、顕微鏡対物レンズの物体側開口数を示す。WDは、作動距離(ワーキングディスタンス)であり、(カバーガラスの厚さの分を除いた)物体から顕微鏡対物レンズにおける最も物体側のレンズ面(後述の第1面)までの光軸上の距離を示す。νdAは、第3レンズ群の所定の負レンズのアッベ数を示す。θAは、第3レンズ群の所定の負レンズの部分分散比を示す。νdXは、第3レンズ群の他方の負レンズのアッベ数を示す。θXは、第3レンズ群の他方の負レンズの部分分散比を示す。νdPは、第3レンズ群の正レンズのアッベ数を示す。θPは、第3レンズ群の正レンズの部分分散比を示す。νd2Pは、第2レンズ群の所定の正レンズのアッベ数を示す。θ2Pは、第2レンズ群の所定の正レンズの部分分散比を示す。
【0079】
[レンズデータ]の表において、面番号は物体側からのレンズ面の順序を示し、Rは各面番号に対応する曲率半径(物体側に凸のレンズ面の場合を正の値としている)、Dは各面番号に対応する光軸上のレンズ厚もしくは空気間隔、ndは各面番号に対応する光学材料のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdは各面番号に対応する光学材料のd線を基準とするアッベ数、Hは各面番号に対応するレンズ面における最も光軸から離れた光線と光軸との間の距離、θgFは各面番号に対応する光学部材の材料の部分分散比をそれぞれ示す。曲率半径の「∞」は平面又は開口を示す。また、空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。
【0080】
光学部材の材料のg線(波長λ=435.8nm)に対する屈折率をngとし、光学部材の材料のF線(波長λ=486.1nm)に対する屈折率をnFとし、光学部材の材料のC線(波長λ=656.3nm)に対する屈折率をnCとする。このとき、光学部材の材料の部分分散比θgFは次式(A)で定義される。
【0081】
θgF=(ng-nF)/(nF-nC) …(A)
【0082】
[レンズ群データ]の表には、各レンズ群のそれぞれの始面(最も物体側の面)と焦点距離を示す。
【0083】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0084】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での重複する説明は省略する。
【0085】
(第1実施例)
第1実施例について、図1図4および表1を用いて説明する。図1は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成される。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)の先端部と物体OBを覆うカバーガラスCVとの間は、浸液(オイル)で満たされている。カバーガラスCVと物体OBとの間も、浸液(オイル)で満たされている。なお、浸液のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.39847とする。カバーガラスCVのd線に対する屈折率は1.52439とする。
【0086】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL101と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL102とが接合された正の屈折力を有する接合レンズから構成される。
【0087】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL201と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL202と両凸形状の正レンズL203とが接合された接合レンズと、両凹形状の負レンズL204と両凸形状の正レンズL205とが接合された接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL206と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL207と両凸形状の正レンズL208とが接合された接合レンズと、両凸形状の正レンズL209と両凹形状の負レンズL210とが接合された接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL211と物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL212とが接合された接合レンズと、から構成される。第2レンズ群G2の正メニスカスレンズL206は、第2レンズ群G2のうち最も光軸から離れた光線が通る、前述の所定の正レンズに該当する。
【0088】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に、両凹形状の負レンズL301と物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL302と両凸形状の正レンズL303とが接合された接合レンズから構成される。第3レンズ群G3の負メニスカスレンズL302は、前述の所定の負レンズに該当する。第3レンズ群G3の負レンズL301は、前述の他の負レンズに該当する。第3レンズ群G3の正レンズL303は、前述の正レンズに該当する。
【0089】
なお、第2レンズ群G2における少なくとも3つのレンズ成分(単レンズ又は接合レンズ)を光軸に沿って移動させることで、カバーガラスCVの厚さに応じて第2レンズ群G2における各レンズ成分同士の空気間隔を変化させることができるように構成される。第2レンズ群G2において光軸に沿って移動可能なレンズ成分は、所謂補正環として機能し、カバーガラスCVの厚さに応じて変化する収差を補正することができる。
【0090】
以下の表1に、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。
【0091】
(表1)
[全体諸元]
β=60倍
f=3.34
NA=1.30 WD=0.33
νdA=27.35 θA=0.6319
νdX=48.10 θX=0.5603
νdP=29.84 θP=0.6017
νd2P=28.69 θ2P=0.6065
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd H θgF
1 ∞ 0.23 1.39847 51.24
2 ∞ 0.17 1.52439 54.28
3 ∞ 0.10 1.39847 51.24
4 ∞ 0.70 1.45850 67.85
5 -2.033 3.44 1.95375 32.33
6 -3.746 0.15
7 -9.727 3.36 1.49782 82.57 4.92
8 -6.923 0.20 5.96
9 103.938 0.95 1.55298 55.07 7.98
10 16.911 7.11 1.49782 82.57 8.85
11 -14.628 0.20 9.26
12 -50.850 0.60 1.67300 38.26 9.54
13 21.429 8.17 1.43385 95.25 10.09
14 -14.740 0.20 10.45
15 -58.693 2.18 1.79504 28.69 10.41 0.6065
16 -31.348 0.20 10.51
17 27.743 0.85 1.74320 49.26 9.92
18 11.280 7.53 1.43385 95.25 9.03
19 -24.461 0.90 8.96
20 12.668 4.70 1.43425 94.77 7.59
21 -29.055 0.85 1.73211 46.18 7.07
22 15.117 0.20 6.25
23 7.224 4.26 1.43425 94.77 5.98
24 68.128 7.24 1.85026 32.35 5.38
25 3.610 3.01 2.47
26 -4.497 0.90 1.70000 48.10 0.5603
27 74.320 0.85 1.66382 27.35 0.6319
28 12.514 5.00 1.80000 29.84 0.6017
29 -8.336 ―
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 4 8.32
G2 7 4.34
G3 26 159.75
【0092】
図2は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図3は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの倍率色収差(横色収差)を示す図である。図4は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。なお、各収差図は、顕微鏡対物レンズに第2対物レンズを組み合わせた状態での諸収差を示す。図2図4の各収差図において、dはd線(波長λ=587.6nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)に対する諸収差をそれぞれ示す。球面収差図において、縦軸は入射瞳半径の最大値を1として規格化して示した値を示し、横軸は各光線における収差の値[mm]を示す。像面湾曲を示す収差図において、実線は各波長に対するメリジオナル像面を示し、破線は各波長に対するサジタル像面を示す。また、像面湾曲を示す収差図において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の値[mm]を示す。歪曲収差図(ディストーション)において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の割合を百分率(%値)で示す。倍率色収差を示す収差図において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の値[mm]を示す。各コマ収差図は、像高比RFH(Relative Field Height)が0.00~1.00のときの収差の値を示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0093】
各収差図より、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズは、倍率色収差をはじめとする諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0094】
(第2実施例)
第2実施例について、図5図8および表2を用いて説明する。図5は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成される。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)の先端部と物体OBを覆うカバーガラスCVとの間は、浸液(オイル)で満たされている。カバーガラスCVと物体OBとの間も、浸液(オイル)で満たされている。なお、浸液のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.3985とする。カバーガラスCVのd線に対する屈折率は1.5244とする。
【0095】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL101と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL102とが接合された正の屈折力を有する接合レンズから構成される。
【0096】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL201と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL202と両凹形状の負レンズL203と両凸形状の正レンズL204とが接合された接合レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL205と両凸形状の正レンズL206が接合された接合レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL207と両凸形状の正レンズL208とが接合された接合レンズと、両凸形状の正レンズL209と両凹形状の負レンズL210とが接合された接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL211と物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL212とが接合された接合レンズと、から構成される。第2レンズ群G2の正メニスカスレンズL202は、第2レンズ群G2のうち最も光軸から離れた光線が通る正レンズL206よりも物体側に配置された、前述の所定の正レンズに該当する。
【0097】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL301と物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL302と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL303とが接合された接合レンズから構成される。第3レンズ群G3の負メニスカスレンズL303は、前述の所定の負レンズに該当する。第3レンズ群G3の負メニスカスレンズL301は、前述の他の負レンズに該当する。第3レンズ群G3の正メニスカスレンズL302は、前述の正レンズに該当する。
【0098】
なお、第2レンズ群G2における少なくとも3つのレンズ成分(単レンズ又は接合レンズ)を光軸に沿って移動させることで、カバーガラスCVの厚さに応じて第2レンズ群G2における各レンズ成分同士の空気間隔を変化させることができるように構成される。第2レンズ群G2において光軸に沿って移動可能なレンズ成分は、所謂補正環として機能し、カバーガラスCVの厚さに応じて変化する収差を補正することができる。
【0099】
以下の表2に、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。
【0100】
(表2)
[全体諸元]
β=60倍
f=3.35
NA=1.30 WD=0.33
νdA=27.35 θA=0.6319
νdX=40.69 θX=0.5672
νdP=24.80 θP=0.6122
νd2P=27.35 θ2P=0.6319
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd H θgF
1 ∞ 0.23 1.3985 51.24
2 ∞ 0.17 1.5244 54.28
3 ∞ 0.10 1.3985 51.24
4 ∞ 0.71 1.4585 67.85
5 -1.950 4.09 1.9538 32.33
6 -4.018 0.20
7 -17.836 3.19 1.4978 82.57 5.78
8 -9.123 0.20 6.61
9 -74.406 1.60 1.6638 27.35 7.80 0.6319
10 -47.667 1.00 1.6127 44.46 8.19
11 20.763 7.53 1.4978 82.57 9.42
12 -14.741 0.20 9.97
13 94.360 0.60 1.6730 38.26 10.81
14 25.009 8.17 1.4339 95.25 10.96
15 -16.828 0.20 11.18
16 25.329 1.00 1.7432 49.26 10.11
17 10.896 8.10 1.4339 95.25 9.08
18 -22.754 0.65 8.99
19 13.846 6.26 1.4339 95.25 7.55
20 -19.624 1.00 1.7321 46.18 6.36
21 14.492 0.20 5.57
22 6.131 4.44 1.4978 82.57 5.30
23 155.535 3.11 1.8061 33.34 4.53
24 3.579 4.38 2.71
25 -5.941 1.00 1.8830 40.69 0.5672
26 -20.799 4.45 1.8548 24.80 0.6122
27 -4.874 1.00 1.6638 27.35 0.6319
28 -10.618 ―
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 4 9.12
G2 7 5.33
G3 25 541.14
【0101】
図6は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図7は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの倍率色収差(横色収差)を示す図である。図8は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。各収差図より、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズは、倍率色収差をはじめとする諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0102】
(第3実施例)
第3実施例について、図9図12および表3を用いて説明する。図9は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成される。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)の先端部と物体OBを覆うカバーガラスCVとの間は、浸液(オイル)で満たされている。カバーガラスCVと物体OBとの間も、浸液(オイル)で満たされている。なお、浸液のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.3985とする。カバーガラスCVのd線に対する屈折率は1.5244とする。
【0103】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL101と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL102とが接合された正の屈折力を有する接合レンズから構成される。
【0104】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL201と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL202と両凸形状の正レンズL203とが接合された接合レンズと、両凹形状の負レンズL204と両凸形状の正レンズL205とが接合された接合レンズと、両凸形状の正レンズL206と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL207と両凸形状の正レンズL208とが接合された接合レンズと、両凸形状の正レンズL209と両凹形状の負レンズL210とが接合された接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL211と物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL212とが接合された接合レンズと、から構成される。第2レンズ群G2の正レンズL206は、第2レンズ群G2のうち最も光軸から離れた光線が通る正レンズL205よりも像側に配置された、前述の所定の正レンズに該当する。
【0105】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL301と、両凹形状の負レンズL302と両凸形状の正レンズL303とが接合された接合レンズと、から構成される。第3レンズ群G3の負レンズL302は、前述の所定の負レンズに該当する。第3レンズ群G3の負メニスカスレンズL301は、前述の他の負レンズに該当する。第3レンズ群G3の正レンズL303は、前述の正レンズに該当する。
【0106】
なお、第2レンズ群G2における少なくとも3つのレンズ成分(単レンズ又は接合レンズ)を光軸に沿って移動させることで、カバーガラスCVの厚さに応じて第2レンズ群G2における各レンズ成分同士の空気間隔を変化させることができるように構成される。第2レンズ群G2において光軸に沿って移動可能なレンズ成分は、所謂補正環として機能し、カバーガラスCVの厚さに応じて変化する収差を補正することができる。
【0107】
以下の表3に、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。
【0108】
(表3)
[全体諸元]
β=60倍
f=3.33
NA=1.30 WD=0.33
νdA=24.71 θA=0.6291
νdX=48.10 θX=0.5603
νdP=24.80 θP=0.6122
νd2P=28.69 θ2P=0.6065
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd H θgF
1 ∞ 0.23 1.3985 51.24
2 ∞ 0.17 1.5244 54.28
3 ∞ 0.10 1.3985 51.24
4 ∞ 0.70 1.4585 67.85
5 -1.981 3.57 1.9538 32.33
6 -3.764 0.15
7 -9.331 3.35 1.4978 82.57 4.93
8 -6.865 0.20 5.96
9 52.128 0.95 1.5530 55.07 8.08
10 14.586 7.56 1.4978 82.57 8.83
11 -14.801 0.20 9.21
12 -42.665 0.60 1.6730 38.26 9.32
13 20.427 7.79 1.4339 95.25 9.80
14 -14.842 0.20 10.12
15 150.000 2.24 1.7950 28.69 10.01 0.6065
16 -82.523 0.20 9.96
17 32.209 1.00 1.7432 49.26 9.55
18 10.837 7.56 1.4339 95.25 8.65
19 -19.992 0.90 8.61
20 19.684 4.11 1.4343 94.77 7.40
21 -18.502 1.00 1.7321 46.18 6.98
22 31.936 0.20 6.45
23 7.227 4.32 1.4343 94.77 6.03
24 50.673 6.84 1.8503 32.35 5.39
25 3.661 2.82 2.50
26 -5.314 0.90 1.7000 48.10 0.5603
27 -20.000 0.40
28 -9.741 1.00 1.7558 24.71 0.6291
29 11.123 5.00 1.8548 24.80 0.6122
30 -8.575 ―
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 4 8.32
G2 7 4.73
G3 26 -305.23
【0109】
図10は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図11は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの倍率色収差(横色収差)を示す図である。図12は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。各収差図より、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズは、倍率色収差をはじめとする諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0110】
各実施例に係る顕微鏡対物レンズは、無限遠補正型のレンズであるため、顕微鏡対物レンズからの光を集光する第2対物レンズと組み合わせて使用される。そこで、顕微鏡対物レンズと組み合わせて使用される第2対物レンズの一例について、図13および表4を用いて説明する。図13は、各実施例に係る顕微鏡対物レンズと組み合わせて使用される第2対物レンズの構成を示す光路図である。各実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図は、この第2対物レンズと組み合わせて使用したときのものである。図13に示す第2対物レンズILは、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52とが接合された接合レンズと、両凸形状の正レンズL53と両凹形状の負レンズL54とが接合された接合レンズと、から構成される。第2対物レンズILは、各実施例に係る顕微鏡対物レンズの像側に配置される。また、図13に、第2対物レンズILの入射瞳面Puを示す。
【0111】
以下の表4に、第2対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、[全体諸元]の表において、f´は、第2対物レンズの焦点距離を示す。[レンズデータ]の表において、面番号、R、D、nd、およびνdは、前述の表1~表3の説明で示したものと同じである。
【0112】
(表4)
[全体諸元]
f´=200
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd
1 75.043 5.100 1.62280 57.03
2 -75.043 2.000 1.74950 35.19
3 1600.580 7.500
4 50.256 5.100 1.66755 41.96
5 -84.541 1.800 1.61266 44.40
6 36.911 ―
【0113】
次に、[条件式対応値]の表を下記に示す。この表には、各条件式(1)~(9)に対応する値を、全実施例(第1~第3実施例)について纏めて示す。
条件式(1) νdA<40
条件式(2) 0<νdX-νdA
条件式(3) 0<(θA-θX)/(νdA-νdX)×(νdP-νdX)+θX-θP
条件式(4) 0<(θA-θX)/(νdA-νdX)×(νdP-νdX)+θX-θP-0.015
条件式(5) 0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.007)
条件式(6) 0<θA-(0.6438-0.001682×νdA+0.017)
条件式(7) 1.68<ndX
条件式(8) νd2P<35
条件式(9) 0<θ2P-(0.6438-0.001682×νd2P+0.008)
【0114】
[条件式対応値]
条件式 第1実施例 第2実施例 第3実施例
(1) 27.35 27.35 24.71
(2) 20.75 13.34 23.39
(3) 0.0216 0.0321 0.0166
(4) 0.0066 0.0171 0.0016
(5) 0.0271 0.0271 0.0199
(6) 0.0171 0.0171 0.0099
(7) 1.7000 1.8830 1.7000
(8) 28.69 27.35 28.69
(9) 0.0030 0.0261 0.0030
【0115】
上記各実施例によれば、倍率色収差をはじめとする諸収差が良好に補正された顕微鏡対物レンズを実現することができる。
【0116】
ここで、上記各実施例は本実施形態の一具体例を示しているものであり、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0117】
G1 第1レンズ群 G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14