(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】照明光学系、露光装置、照明方法、デバイス製造方法及びフラットパネルディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2023517539
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2022018810
(87)【国際公開番号】W WO2022230847
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2021075408
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021075409
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021075410
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 恭志
(72)【発明者】
【氏名】川戸 聡
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-523905(JP,A)
【文献】特開2004-157219(JP,A)
【文献】特開2006-053240(JP,A)
【文献】特開2008-182115(JP,A)
【文献】特開2009-300543(JP,A)
【文献】特表2017-535821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え
、
前記合成分割部は、合成した前記パルス光を少なくとも2つに分割して出射し、
前記照明系は、分割された前記パルス光をそれぞれ互いに異なる前記マスクへ導くことにより、少なくとも2つの前記マスクを照明する照明光学系。
【請求項2】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え
、
前記合成分割部は、合成した前記パルス光を少なくとも2つに分割して出射し、
前記照明系は、分割された前記パルス光をそれぞれ互いに異なる前記マスクへ導くことにより、少なくとも2つの前記マスクを照明する照明光学系。
【請求項3】
前記合成分割部は、合成した前記パルス光を分割して前記光源の数を上限とする数にし
て出射する、請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項4】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系は、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光の光路どうしを前記光学系に入射しうる範囲内に互いに近接させて、前記パルス光を前記光学系に導光する導光部
を備え
、
前記導光部は、前記照明系が備える導光部材のうち、同一の前記導光部材に複数の前記パルス光が入射しうる範囲内に、前記パルス光どうしを近接させる請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項5】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系は、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光の光路どうしを前記光学系に入射しうる範囲内に互いに近接させて、前記パルス光を前記光学系に導光する導光部
を備え、
前記導光部は、前記照明系が備える導光部材のうち、同一の前記導光部材に複数の前記パルス光が入射しうる範囲内に、前記パルス光どうしを近接させ
る
照明光学系。
【請求項6】
前記導光部は、前記パルス光どうしを近接させ、前記導光部材の直径よりも複数の前記パルス光の射出位置の間隔が狭くさせる請求項
4または5に記載の照明光学系。
【請求項7】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系は、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光の光路どうしを前記光学系に入射しうる範囲内に互いに近接させて、前記パルス光を前記光学系に導光する導光部
を備え、
前記導光部は、入射する前記パルス光を反射して光路の方向を変化させることにより、
前記パルス光の光路どうしを近接させる反射部材を備え
る
照明光学系。
【請求項8】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系は、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光の光路どうしを前記光学系に入射しうる範囲内に互いに近接させて、前記パルス光を前記光学系に導光する導光部
を備え、
前記導光部は、入射する前記パルス光を反射して光路の方向を変化させることにより、前記パルス光の光路どうしを近接させる反射部材を備える
照明光学系。
【請求項9】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系は、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光の光路どうしを前記光学系に入射しうる範囲内に互いに近接させて、前記パルス光を前記光学系に導光する導光部
を備え、
前記導光部は、複数の前記光源から出射される前記パルス光の偏光特性に基づいて前記パルス光の光路どうしを近接させる偏光部材を備え
る
照明光学系。
【請求項10】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系は、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光の光路どうしを前記光学系に入射しうる範囲内に互いに近接させて、前記パルス光を前記光学系に導光する導光部
を備え、
前記導光部は、複数の前記光源から出射される前記パルス光の偏光特性に基づいて前記パルス光の光路どうしを近接させる偏光部材を備える
照明光学系。
【請求項11】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記照明系は、前記光学系から出射される前記パルス光の光路を切り替えて、複数設けられた前記マスクへ順に導く光路切替部を有し、
前記光源の前記パルス光の出射位置と、前記光路切替部に前記パルス光が入射する入射位置とが光学的にほぼ共役となる位置に、前記光源と前記光路切替部とを設け
る
照明光学系。
【請求項12】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記照明系は、前記光学系から出射される前記パルス光の光路を切り替えて、複数設けられた前記マスクへ順に導く光路切替部を有し、
前記光源の前記パルス光の出射位置と、前記光路切替部に前記パルス光が入射する入射位置とが光学的にほぼ共役となる位置に、前記光源と前記光路切替部とを設ける
照明光学系。
【請求項13】
前記照明系は、前記光路切替部から出射される前記パルス光を前記マスクに導光する導光部を有し、
前記光路切替部から前記パルス光が出射する出射位置と、前記導光部の前記パルス光の入射位置とが光学的にほぼ共役となる位置に、前記光路切替部と前記導光部とを設ける
請求項
11または12に記載の照明光学系。
【請求項14】
前記照明系は、前記光路切替部と、前記導光部との間に、前記光路切替部から前記パルス光が出射する出射位置と、前記導光部の前記パルス光の入射位置とを光学的にほぼ共役とするリレーレンズを備える
請求項
13に記載の照明光学系。
【請求項15】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系が、複数段の前記合成分割部を備える場合において、前段の前記合成分割部によって分割された前記遅延光路上の所定位置と、後段の前記合成分割部においてパルス光が合成される合成面とが光学的にほぼ共役となる位置に、前段および後段の前記合成分割部を設け
る
照明光学系。
【請求項16】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系が、複数段の前記合成分割部を備える場合において、前段の前記合成分割部によって分割された前記遅延光路上の所定位置と、後段の前記合成分割部においてパルス光が合成される合成面とが光学的にほぼ共役となる位置に、前段および後段の前記合成分割部を設ける照明光学系。
【請求項17】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系が、複数段の前記合成分割部を備える場合において、前段の前記合成分割部によって分割された前記遅延光路上の所定位置と、後段の前記合成分割部においてパルス光が合成される合成面とを光学的にほぼ共役とするリレーレンズを前記遅延光路上に備え
る
照明光学系。
【請求項18】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記光学系が、複数段の前記合成分割部を備える場合において、前段の前記合成分割部によって分割された前記遅延光路上の所定位置と、後段の前記合成分割部においてパルス光が合成される合成面とを光学的にほぼ共役とするリレーレンズを前記遅延光路上に備える
照明光学系。
【請求項19】
複数の前記光源から前記光学系に入射する前記パルス光の各光路の光路長が互いにほぼ等しい
請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項20】
複数の前記光源から前記光学系に入射する前記パルス光の各光路の光路長が互いに異なる
請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項21】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備える照明光学系と、
前記パルス光によって照明された前記マスクから出射される光を露光対象に照射することにより、前記露光対象を分割露光する投影光学系と、
前記露光対象を載置可能なステージと、
を備え
、
前記光学系の遅延光学系による遅延させた前記パルス光が合成された群パルス光のパルス幅が、露光装置の走査速度による像の流れの積が解像度の1/3以下となるように設定される露光装置。
【請求項22】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する複数の光源と、
複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、
前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備える照明光学系と、
前記パルス光によって照明された前記マスクから出射される光を露光対象に照射することにより、前記露光対象を分割露光する投影光学系と、
前記露光対象を載置可能なステージと、
を備え
前記光学系の遅延光学系による遅延させた前記パルス光が合成された群パルス光のパルス幅が、露光装置の走査速度による像の流れの積が解像度の1/3以下となるように設定される露光装置。
【請求項23】
前記光源は、出射される光の波長が360nm以下であるレーザ光源であり、
前記投影光学系は、単一もしくは2種の硝材により構成される、
請求項
21または22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記硝材は、石英もしくは蛍石である、
請求項
23に記載の露光装置。
【請求項25】
露光対象は、少なくとも一辺の長さ、または対角長が500mm以上であり、フラットパネルディスプレイ用の基板である
請求項
22または23に記載の露光装置。
【請求項26】
前記マスクが空間光変調器である
請求項
22または23に記載の露光装置。
【請求項27】
請求項
22または23に記載の露光装置を用いて露光対象を露光することと、
前記露光された露光対象を現像することと、
を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項28】
複数の素子を所定時間間隔で個別に制御される空間光変調器を照明する照明光学系において、
第1時間に第1パルス光を射出する第1光源と、
前記第1時間とは異なる第2時間に第2パルス光を射出する第2光源と、
前記第1および第2パルス光をそれぞれ前記空間光変調器へ導き、前記空間光変調器を照明する照明系と、を備え、
前記第2光源は、前記第1時間からの時間間隔が前記所定時間間隔よりも短くなる前記第2時間に前記第2パルス光を射出する、照明光学系。
【請求項29】
前記第1光源は、所定周期により前記第1パルス光を連続的に射出し、
前記第2光源は、前記所定周期により前記第2パルス光を連続的に射出する、請求項
28に記載の照明光学系。
【請求項30】
前記第2光源は、連続する前記第1パルス光が前記第1光源から射出される間の時間に、前記第2パルス光を射出する、請求項
29に記載の照明光学系。
【請求項31】
前記第1および第2光源は、前記素子が制御される前記所定時間間隔よりも短い時間間隔となる前記所定周期により、前記第1パルス光と前記第2パルス光とをそれぞれ連続的に射出する、請求項
29または
30に記載の照明光学系。
【請求項32】
前記第1光源は、第1種光源を有し、
前記第2光源は、前記第1種光源とは異なる第2種光源を有し、前記第2種光源を制御し、前記第2時間に前記第2パルス光を射出する、請求項
28~
30の何れか一項に記載の照明光学系。
【請求項33】
前記第1光源は、前記第2光源から射出される前記第2パルス光の波長が異なる前記第1パルス光を射出する、請求項
28~
30の何れか一項に記載の照明光学系。
【請求項34】
前記照明系は、前記第1パルス光および前記第2パルス光の少なくとも一方の位相状態を時間的に変化させる位相変化部を有する、請求項
28~
30の何れか一項に記載の照明光学系。
【請求項35】
前記照明系は、前記第1パルス光と前記第2パルス光とを前記空間光変調器へ導く光伝送部を備え、
前記位相変化部は、前記光伝送部へ入射される前記第1および第2パルス光の入射角度もしくは入射位置の少なくとも一方を調整する、請求項
34に記載の照明光学系。
【請求項36】
前記照明系は、前記第1及び第2光源から順次発振された前記第1および第2パルス光の光路を切り替えて、複数設けられた前記光伝送部に順に導く光路切替え機を有する、請求項
35に記載の照明光学系。
【請求項37】
前記光路切替え機は、前記第1および第2パルス光を反射する反射面を有し、前記第1および第2パルス光に対する前記反射面の入射角度を変更し前記光路を切り替え、
前記位相変化部は、前記光伝送部へ入射される前記第1および第2パルス光の入射角度を調整するよう、前記光路切替え機を制御する、請求項
36に記載の照明光学系。
【請求項38】
複数の前記光伝送部は、1つの前記空間光変調器へ前記第1パルス光と前記第2パルス光とを導く、請求項
35に記載の照明光学系。
【請求項39】
複数の前記光伝送部のうち第1光伝送部は、複数設けられた前記空間光変調器のうち第1空間光変調器へ前記第1パルス光と前記第2パルス光とを導き、
複数の前記光伝送部のうち第2光伝送部は、複数設けられた前記空間光変調器のうち第2空間光変調器へ前記第1パルス光と前記第2パルス光とを導く、請求項
35に記載の照明光学系。
【請求項40】
前記位相変化部は、前記空間光変調器へ入射される光を拡散する拡散板を有する、請求項
35に記載の照明光学系。
【請求項41】
前記照明系は、前記第1パルス光および前記第2パルス光のそれぞれを、2つのパルス光に分割する分割部材と、前記分割部材を経た一方のパルス光を第1光路に沿って導くとともに前記分割部材を経た他方のパルス光を前記第1光路よりも長い第2光路に沿って導く導光光学系と、を有する遅延光学系を有する、請求項
28~
30の何れか一項に記載の照明光学系。
【請求項42】
前記第1光路、第2光路の少なくとも一方の光路を可変にすることを特徴とする請求項
41に記載の照明光学系。
【請求項43】
請求項
28~
30の何れか一項に記載の照明光学系と、
前記第1及び第2パルス光によって照明された複数の前記空間光変調器からそれぞれ出射される光を基板に照射することにより、前記基板を分割露光する投影光学系と、を備える露光装置。
【請求項44】
任意の露光位置では実質的な照明光による瞳の輝度状態を変化させて露光を行う、請求項
43に記載の露光装置。
【請求項45】
請求項
28~
30の何れか一項に記載の照明光学系と、
前記照明光学系により照明された前記空間光変調器の像を基板上に投影する投影光学系と、
前記空間光変調器の像を前記基板に露光する際に、前記基板を支持し、前記投影光学系に対して所定速度で相対移動する基板ステージと、を備え、
前記第1時間と前記第2時間との時間差をδ、前記所定速度をV、前記像の解像度をRとするとして、
R/3<V・δ
を満たす、露光装置。
【請求項46】
請求項
33に記載の照明光学系と、
前記照明光学系により照明された前記空間光変調器の像を基板上に投影する投影光学系と、を備え
前記第1及び第2光源は、前記第1パルス光と前記第2パルス光との波長差をλ、前記第1パルス光と前記第2パルス光との前記波長差によって発生する前記投影光学系の色収差Δと、前記投影光学系の開口数NAとするとき、
λ>Δ×(NA^2)
を満たす、前記第1パルス光と前記第2パルス光とをそれぞれ射出する、露光装置。
【請求項47】
前記第1光源と前記第2光源とは、出射される光の波長が360nm以下であるレーザ光源であり、
前記投影光学系は、単一もしくは2種の硝材により構成される、請求項
43に記載の露光装置。
【請求項48】
前記硝材は、石英もしくは蛍石である、請求項
47に記載の露光装置。
【請求項49】
請求項
43に記載の露光装置を用いて前記基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項50】
請求項
43に記載の露光装置を用いてフラットパネルディスプレイ用の基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項51】
複数の素子を所定時間間隔で個別に制御される空間光変調器を照明する照明光学系において、
第1光源が、第1時間に第1パルス光を射出することと、
第2光源が、前記第1時間からの時間間隔が前記所定時間間隔よりも短く前記第1時間とは異なる第2時間に第2パルス光を射出することと、
照明系が、前記第1および第2パルス光をそれぞれ前記空間光変調器へ導き、前記空間光変調器を照明することと、
を含む照明方法。
【請求項52】
請求項
51に記載の照明方法により照明された前記空間光変調器の像を基板上に露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項53】
請求項
51に記載の照明方法により照明された前記空間光変調器の像を基板上に露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項54】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する光源と、
前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成する合成部と、を有する光学系と、
前記合成部で合成された前記第1および第2パルス光を前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記遅延光学系は、前記第2パルス光を反射する反射部と、反射された前記第2パルス光を再び前記反射部に入射する光学部材と、を有する照明光学系。
【請求項55】
前記光学部材は、前記反射部に反射された前記第2パルス光を反射し、前記第2パルス光を前記反射部に入射する反射部材を有する、請求項
54に記載の照明光学系。
【請求項56】
前記遅延光学系は、前記分割部をとおった前記第2パルス光を前記反射部に集光するレンズを有し、
前記レンズは、前記反射部で反射された前記第2パルス光を、前記反射部材へ導く、請求項
55に記載の照明光学系。
【請求項57】
前記光学部材は、前記反射部で反射された前記第2パルス光を前記反射部材に集光するレンズ部を有し、
前記レンズ部は、前記反射部材で反射された前記第2パルス光を、前記反射部へ導く、請求項
56に記載の照明光学系。
【請求項58】
前記レンズは、その光軸が前記レンズ部の光軸と離間するように配置される、請求項
57に記載の照明光学系。
【請求項59】
前記光学部材は、前記反射部で反射された前記第2パルス光を前記反射部材に集光するレンズ部を有し、
前記レンズ部は、前記反射部材で反射された前記第2パルス光を、前記反射部へ導く、請求項
55に記載の照明光学系。
【請求項60】
所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、
パルス光を出射する光源と、
前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成する合成部と、を有する光学系と、
前記合成部で合成された前記第1および第2パルス光を前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、
前記遅延光学系は、前記第2パルス光を反射し前記合成部に導光する反射部と、前記分割部と前記反射部との間、且つ、前記反射部と前記合成部の間に配置され、前記第2パルス光を前記反射部に入射させ、前記反射部によって反射された前記第2パルス光を前記合成部に入射させる光学部材と、を有し、
前記遅延光学系は、前記パルス光を前記第1パルス光と前記第2パルス光とに分割する前記分割部の分割面と、前記第1光路をとおった前記第1パルス光と前記第2光路をとおった前記第2パルス光とを合成する前記合成部の合成面とが、光学的にほぼ共役となる位置に、前記分割部と前記合成部とを設ける、照明光学系。
【請求項61】
前記反射部は、第1反射部と第2反射部とを有し、
前記光学部材は、前記分割部で分割された前記第2パルス光を前記第1反射部に入射する第1光学部材と、前記第1反射部に反射された前記第2パルス光を前記第2反射部に入射する第2光学部材と、を有し、
前記第1及び第2光学部材は、互いの光軸が離間して配置される、請求項
60に記載の照明光学系。
【請求項62】
前記第2反射部は、前記第2パルス光を反射させ、前記第2光学部材を介して、前記第2パルス光を再び前記第1反射部へ導光する、請求項
61に記載の照明光学系。
【請求項63】
前記反射部は、第3反射部を有し、
前記光学部材は、第3光学部材を有し、
前記第2反射部は、前記第2パルス光を反射させ、前記第2光学部材および前記第3光学部材を介して、前記第3反射部へ前記第2パルス光を導光する、請求項
61に記載の照明光学系。
【請求項64】
前記反射部は、前記光学部材の焦点位置で前記第2パルス光を反射する、請求項
60~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項65】
前記反射部は、前記反射部に入射する前記第2パルス光がとおる前記光学部材内の位置とは異なる位置に、前記第2パルス光が入射するよう前記第2パルス光を反射させる、請求項
60~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項66】
前記合成部は、前記第1パルス光を第3パルス光と第4パルス光とに分割し、前記第2パルス光を第5パルス光と第6パルス光とに分割し、前記第3パルス光と前記第5パルス光とを合成し、前記第4パルス光と前記第6パルス光とを合成する、請求項
60~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項67】
前記照明系は、合成された前記パルス光の光路を切り替えて、複数設けられた前記マスクに順に導く光路切替部を有する、請求項
60~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項68】
前記遅延光学系は、前記パルス光の一部を透過し、他の一部を反射することによって、前記パルス光を合成または分割する
請求項
54~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項69】
前記遅延光学系は、前記パルス光の偏光の状態に基づいて、前記パルス光を合成または分割する
請求項
54~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項70】
前記空間光変調素子上における前記パルス光の状態を互いに異ならせる状態変更部
をさらに備える請求項
54~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項71】
前記状態変更部は、複数の前記パルス光の波長を互いに異ならせることにより、前記空間光変調素子上における前記パルス光の状態を互いに異ならせる
請求項
70に記載の照明光学系。
【請求項72】
前記状態変更部は、複数の前記パルス光の発光タイミングを互いに異ならせることにより、前記空間光変調素子上における前記パルス光の状態を互いに異ならせる
請求項
71に記載の照明光学系。
【請求項73】
前記照明系が、合成された前記パルス光の光路を切り替えて、複数設けられた前記マスクへ順に導く光路切替部を有する場合において、
前記状態変更部は、前記光路切替部による前記パルス光の分配タイミングをそれぞれ異ならせることにより、前記空間光変調素子上における前記パルス光の状態を互いに異ならせる
請求項
70に記載の照明光学系。
【請求項74】
前記マスクが空間光変調器である
請求項
54~
63のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項75】
請求項
54~
63のいずれか一項に記載の照明光学系と、
前記パルス光によって照明された前記マスクから出射される光を露光対象に照射することにより、露光対象を分割露光する投影光学系と、
露光対象を載置可能なステージと、
を備える露光装置。
【請求項76】
前記光源は、出射される光の波長が360nm以下であるレーザ光源であり、
前記投影光学系は、単一もしくは2種の硝材により構成される、
請求項
75に記載の露光装置。
【請求項77】
前記硝材は、石英もしくは蛍石である、
請求項
76に記載の露光装置。
【請求項78】
前記遅延光学系による遅延させた前記パルス光が合成された群パルス光のパルス幅が、前記露光装置の走査速度による像の流れの積が解像度の1/3以下となるように設定される
請求項
75に記載の露光装置。
【請求項79】
露光対象は、少なくとも一辺の長さ、または対角長が500mm以上であり、フラットパネルディスプレイ用の基板である
請求項
75に記載の露光装置。
【請求項80】
前記マスクが空間光変調器である
請求項
75に記載の露光装置。
【請求項81】
請求項
75に記載の露光装置を用いて露光対象を露光することと、
前記露光された露光対象を現像することと、
を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系、露光装置及びフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
本願は、2021年4月27日に出願された日本国特願2021-075408号、2021年4月27日に出願された日本国特願2021-075409号及び2021年4月27日に出願された日本国特願2021-075410号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、露光対象物として表面に感光剤が塗布されたガラスプレート、あるいはウエハなどの基板(以下、基板と総称する)は、基板ステージ装置上に載置される。そして、回路パターンが形成された空間光変調素子にパルス光を照射し、該空間光変調素子を介したパルス光を投影レンズ等の光学系を介して基板に照射することで、回路パターンが基板上に転写される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、パルス光を出射する複数の光源と、複数の前記光源からそれぞれ出射される前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成し、合成した前記パルス光を分割して出射する合成分割部と、を有する光学系と、前記光学系から出射された前記パルス光のそれぞれを前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備える照明光学系が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、上述の照明光学系と、照明光学系と、前記パルス光によって照明された前記マスクから出射される光を露光対象に照射することにより、露光対象を分割露光する投影光学系と、露光対象を載置可能なステージと、を備える露光装置が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、上述の露光装置を用いて露光対象を露光することと、前記露光された露光対象を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、複数の素子を所定時間間隔で個別に制御される空間光変調器を照明する照明光学系において、第1時間に第1パルス光を射出する第1光源と、前記第1時間とは異なる第2時間に第2パルス光を射出する第2光源と、前記第1および第2パルス光をそれぞれ前記空間光変調器へ導き、前記空間光変調器を照明する照明系と、を備え、前記第2光源は、前記第1時間からの時間間隔が前記所定時間間隔よりも短くなる前記第2時間に前記第2パルス光を射出する、照明光学系が提供される。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、上述の照明光学系と、前記第1及び第2パルス光によって照明された複数の前記空間光変調器からそれぞれ出射される光を基板に照射することにより、前記基板を分割露光する投影光学系と、を備える露光装置が提供される。
【0010】
本発明の第6の態様によれば、上述の露光装置を用いてフラットパネルディスプレイ用の基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第7の態様によれば、複数の素子を所定時間間隔で個別に制御される空間光変調器を照明する照明光学系において、第1光源が、第1時間に第1パルス光を射出することと、第2光源が、前記第1時間からの時間間隔が前記所定時間間隔よりも短く前記第1時間とは異なる第2時間に第2パルス光を射出することと、照明系が、前記第1および第2パルス光をそれぞれ前記空間光変調器へ導き、前記空間光変調器を照明することと、を含む照明方法が提供される。
【0012】
本発明の第8の態様によれば、上述の照明方法により照明された前記空間光変調器の像を基板上に露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第9の態様によれば、上述の照明方法により照明された前記空間光変調器の像を基板上に露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【0014】
本発明の第10の態様によれば、所定パターンが形成されたマスクを照明する照明光学系において、パルス光を出射する光源と、前記パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、前記第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ前記第2パルス光を導く遅延光学系と、前記第1パルス光と前記遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成する合成部と、を有する光学系と、前記合成部で合成された前記第1および第2パルス光を前記マスクへ導き、前記マスクを照明する照明系と、を備え、前記遅延光学系は、前記第2パルス光を反射する反射部と、反射された前記第2パルス光を再び前記反射部に入射する光学部材と、を有する照明光学系が提供される。
【0015】
本発明の第11の態様によれば、上述の照明光学系と、前記パルス光によって照明された前記マスクから出射される光を露光対象に照射することにより、露光対象を分割露光する投影光学系と、露光対象を載置可能なステージと、を備える露光装置が提供される。
【0016】
本発明の第12の態様によれば、上述の露光装置を用いて露光対象を露光することと、前記露光された露光対象を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の露光装置の外観構成の概要を示す図である。
【
図2】本実施形態の照明モジュール及び投影モジュールの構成の概要を示す図である。
【
図3】本実施形態の照明モジュールの構成の概要を示す図である。
【
図4】本実施形態の光変調部の構成の概要を示す図である。
【
図5】本実施形態の光源ユニットの構成の概要を示す図である。
【
図6】本実施形態の光源ユニットの構成の詳細を示す図である。
【
図7】本実施形態の偏光ビームスプリッタの一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の分配部の構成の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態の光源部が出射するパルス光の状態の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態のパルス光が光ファイバに入射する位置の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態のリターダの構成の概要を示す図である。
【
図12】本実施形態のリターダの構成の第1変形例を示す図である。
【
図13】本実施形態のリターダの構成の第2変形例を示す図である。
【
図14】本実施形態のリターダの構成の第3変形例を示す図である。
【
図15】本実施形態のリターダの構成の第4変形例を示す図である。
【
図16】本実施形態のリターダの構成の第5変形例を示す図である。
【
図17】本実施形態のリターダの構成の第6変形例を示す図である。
【
図18】本実施形態の分配部の変形例を示す図である。
【
図19】本実施形態の光源ユニットと照明モジュールとの対応関係の変形例を示す図である。
【
図20】本実施形態の光源ユニットの第1変形例を示す図である。
【
図21】本実施形態の光源ユニットの第2変形例を示す図である。
【
図22】本実施形態の光源ユニットの第3変形例を示す図である。
【
図23】本実施形態の光源ユニットの第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明の以下の詳細な説明は、例示的なものに過ぎず、限定するものではない。図面及び以下の詳細な説明の全体にわたって、同じ又は同様の参照符号が使用される。
【0019】
[露光装置の構成]
図1は、本実施形態の露光装置1の外観構成の概要を示す図である。露光装置1は、露光対象物に変調光を照射する装置である。特定の実施形態において、露光装置1は、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。露光対象物であるガラス基板は、少なくとも一辺の長さ、または対角長が500mm以上であり、フラットパネルディスプレイ用の基板であってもよい。露光装置1によって露光された露光対象物(例えば、フラットパネルディスプレイ用の基板)は、現像されることによって製品に供される。
露光装置1の装置本体は、例えば、米国特許出願公開第2008/0030702号明細書に開示される装置本体と同様に構成されている。
【0020】
露光装置1は、ベース11、防振台12、メインコラム13、ステージ14、光学定盤15、照明モジュール16、投影モジュール17、光源ユニット18、光ファイバ19、及び光変調部20(不図示)を備える。
以下において、光変調部20で変調された光を露光対象物に照射する投影モジュール17の光軸方向に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸に直交する所定平面の方向をX軸方向、Y軸方向とする三次元直交座標系を必要に応じて用いて説明する。X軸方向とY軸方向とは互いに直交(交差)する方向である。
【0021】
ベース11は、露光装置1の基台であり、防振台12の上に設置される。ベース11は、露光対象物が載置されるステージ14を、X軸方向及びY軸方向に移動可能に支持する。
【0022】
ステージ14は、露光対象物を支持するものであり、走査露光において、投影モジュール17を介して投影される回路パターンの複数の部分像に対して露光対象物を高精度に位置決めするためのものであり、露光対象物を6自由度方向(上述のX軸、Y軸及びZ軸方向およびそれぞれの軸に対する回転方向であるθx、θy及びθz方向)に駆動する。なお、ステージ14は、走査露光時にX軸方向に移動され、露光対象物上の露光対象領域を変更する際にY軸方向に移動される。なお、露光対象物は、複数の露光対象領域が形成される。露光装置1は、1枚の露光対象物上で、複数の露光対象領域をそれぞれ露光することが可能である。ステージ14の構成は、特に限定されないが、米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるような、ガントリタイプの2次元粗動ステージと、該2次元粗動ステージに対して微少駆動される微動ステージとを含む、いわゆる粗微動構成のステージ装置を用いることができる。この場合、粗動ステージによって露光対象物が水平面内の3自由度方向に移動可能、かつ微動ステージによって露光対象物が6自由度方向に微動可能となっている。
【0023】
メインコラム13は、ステージ14の上部(Z軸の正方向)に光学定盤15を支持する。光学定盤15は、照明モジュール16と投影モジュール17と光変調部20とを支持する。
【0024】
図2は、本実施形態の照明モジュール16と投影モジュール17と光変調部20との構成の概要を示す図である。
照明モジュール16は、光学定盤15の上部に配置され、光ファイバ19を介して光源ユニット18に接続される。本実施形態の一例において、照明モジュール16には、第1照明モジュール16A、第2照明モジュール16B、第3照明モジュール16C及び第4照明モジュール16Dが含まれる。以下の説明において、第1照明モジュール16A~第4照明モジュール16Dを区別しない場合には、これらを総称して照明モジュール16と記載する。
第1照明モジュール16A~第4照明モジュール16Dの各々は、ファイバ19を介した光源ユニット18から出射される光を、第1光変調部20A、第2光変調部20B、第3光変調部20C及び第4光変調部20Dの各々へ導光する。照明モジュール16は、光変調部20を照明する。
【0025】
光変調部20は、後段でさらに詳述するが、露光対象物に転写すべき回路パターンに基づいて制御され、照明モジュールからの照明光を変調する。光変調部20により変調された変調光は、投影モジュール17に導かれる。第1光変調部20A~第4光変調部20Dは、XY平面上内で互いに異なる位置に配置される。以下の説明において、第1光変調部20A~第4光変調部20Dを区別しない場合には、これらを総称して光変調部20と記載する。
【0026】
投影モジュール17は、光学定盤15の下部に配置され、空間光変調器201により変調された変調光をステージ14上に載置された露光対象物に照射する。投影モジュールは、光変調部20で変調された光を、露光対象物上で結像させ、露光対象物を露光する。換言すると、投影モジュールは、光変調部20上のパターンを露光対象物に投影する。本実施形態の一例において、投影モジュール17には、上述した第1照明モジュール16A~第4照明モジュール16Dおよび第1光変調部20A~第4光変調部20Dに対応する、第1投影モジュール17A~第4投影モジュール17Dが含まれる。以下の説明において、第1投影モジュール17A~第4投影モジュール17Dを区別しない場合には、これらを総称して投影モジュール17と記載する。
【0027】
第1照明モジュール16Aと、第1光変調部20Aと、第1投影モジュール17Aとより構成されるユニットを、第1露光モジュールと呼ぶ。同様に、第2照明モジュール16Bと、第2光変調部20Bと、第2投影モジュール17Bとより構成されるユニットを、第2露光モジュールと呼ぶ。各露光モジュールは、XY平面上で互いに異なる位置に設けられ、ステージ14に載置された露光対象物の異なる位置に、パターンを露光することができる。ステージ14は、露光モジュールに対して走査方向であるX軸方向へ、相対的に移動することで、露光対象物の全面もしくは露光対象領域の全面を走査露光することができる。
【0028】
なお、投影モジュール17は、投影部ともいう。投影モジュール17(投影部)は、光変調部20上のパターンの像を等倍で投影する等倍系であってもよく、拡大系または縮小系であってもよい。また、投影モジュール17は、単一もしくは2種の硝材(特に石英もしくは蛍石)により構成されることが好ましい。
【0029】
露光装置1は、上述した各部に加えて、干渉計やエンコーダなどで構成される位置計測部(不図示)を備えており、光学定盤15に対するステージ14の相対位置を計測する。露光装置1は、上述した各部に加えて、ステージ14もしくはステージ14上の露光対象物のZ軸方向の位置を計測するAF(Auto Focus)部(不図示)を備えている。さらに露光装置1は、露光対象物上に既に露光されたパターンに対して別のパターンを重ねて露光する際に、それぞれのパターンの相対位置を計測するアライメント部(不図示)を備える。AF部および/またはアライメント部は、投影モジュールを介して計測するTTL(Through the lens)の構成であってもよい。
【0030】
図3は、本実施形態の露光モジュールの構成の概要を示す図である。第1露光モジュールを一例にして、照明モジュール16と光変調部20と投影モジュール17との具体的な構成の一例について説明する。
【0031】
照明モジュール16は、モジュールシャッタ161と、照明光学系162とを備える。 モジュールシャッタ161は、光ファイバ19から供給されるパルス光を、照明光学系162に導光するか否かを切り替える。
【0032】
照明光学系162は、光ファイバ19から供給されるパルス光を、コリメータレンズ、フライアイレンズ、コンデンサーレンズなどを介して、光変調部20に出射することにより、光変調部20をほぼ均一に照明する。フライアイレンズは、フライアイレンズに入射されるパルス光を波面分割し、コンデンサーレンズは、波面分割された光を光変調部上に重畳させる。なお、照明光学系162は、フライアイレンズに代わり、ロッドインテグレータを備えていてもよい。
【0033】
光変調部20は、マスクを備える。マスクはフォトマスクであってもよいし、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)であってもよい。
以下、マスクが空間光変調器である場合について説明する。
【0034】
光変調部20は、空間光変調器201とオフ光吸収板202を備える。空間光変調器201は、液晶素子、デジタルミラーデバイス(デジタルマイクロミラーデバイス、DMD)、磁気光学空間光変調器(Magneto Optic Spatial Light Modulator、MOSLM)等を含む。空間光変調器201は、照明光学系162からの照明光を反射する反射型でも良いし、照明光を透過する透過型でも良いし、照明光を回折する回折型でも良い。空間光変調器201は、照明光を空間的に、且つ、時間的に変調することができる。
以下、空間光変調器201が、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)によって構成されている場合を一例にして説明する。
【0035】
図4は、本実施形態の空間光変調器201の構成の概要を示す図である。同図においてXm軸・Ym軸・Zm軸の三次元直交座標系を用いて説明する。空間光変調器201は、XmYm平面に配列された複数のマイクロミラーを備える。マイクロミラーは、空間光変調器201の素子(画素)を構成する。空間光変調器201は、Xm軸周り及びYm軸周りに傾斜角をそれぞれ変更可能である。空間光変調器201は、例えば、Ym軸周りに傾斜することでオン状態になり、Xm軸周りに傾斜することでオフ状態になる。
【0036】
空間光変調器201は、マイクロミラーの傾斜方向をマイクロミラーごとに切り替えることにより、入射光が反射される方向を素子ごとに制御する。一例として、空間光変調器201のデジタルマイクロミラーデバイスは、4Mpixel程度の画素数を有しており、10kHz程度の周期でマイクロミラーのオン状態とオフ状態とを切り替え可能である。
空間光変調器201は、複数の素子が所定時間間隔で個別に制御される。空間光変調器201がDMDである場合、素子とは、マイクロミラーであり、所定時間間隔とは、マイクロミラーのオン状態とオフ状態とを切り替える周期(例えば、周期10kHz)である。
【0037】
図3に戻り、オフ光吸収板202は、空間光変調器201のオフ状態にされた素子から出射(反射)される光(オフ光)を吸収する。空間光変調器201のオン状態にされた素子から出射される光は、投影モジュール17に導光される。
【0038】
投影モジュール17は、空間光変調器201のオン状態にされた素子から射出された光を、露光対象物上に投影する。投影モジュールは、倍率調整部171とフォーカス調整部172とを備える。倍率調整部171には、空間光変調器201によって変調された光(変調光)が入射する。
倍率調整部171は、一部のレンズを光軸方向に駆動することで、空間光変調器201から出射された変調光の焦点面163、つまり露光対象物の表面における像の倍率を調整する。
フォーカス調整部172は、レンズ群全体を光軸方向に駆動することで、空間光変調器201から出射された変調光が、先述したAF部により計測された露光対象物の表面に結像するように、結像位置、つまりフォーカスを調整する。
投影モジュール17は、空間光変調器のオン状態にされた素子から射出される光の像のみを、露光対象物の表面に投影する。そのため、投影モジュール17は、空間光変調器201のオン素子により形成されたパターンの像を、露光対象物の表面に投影露光することができる。つまり、投影モジュール17は、空間的に変調された変調光を、露光対象物の表面に形成することができる。また空間光変調器201は、先述のとおり所定の周期(周波数)でマイクロミラーのオン状態とオフ状態とを切り替えることができるため、投影モジュール17は、時間的に変調された変調光を、露光対象物の表面に形成することができる。
すなわち、露光装置1は、任意の露光位置で実質的な瞳の状態を変化させて露光を行う。
【0039】
照明モジュール16を照明系ともいう。照明モジュール16(照明系)は、分配部184が分配したパルス光によって空間光変調器201(空間光変調素子)を照明する。
【0040】
従来、可干渉性の高い単パルスレーザを用いてインテグレータ(例えば、フライアイレンズ)で空間光変調素子を照明するとスペックルが生じてしまい、基板に転写される空間光変調素子による回路パターンの品質に影響が現れる場合があった。なお、可干渉性の高いレーザ光源とは、出射される光、1パルスによる光学的なインテグレータにて空間光変調素子を照明し、空間光変調素子パターンにて露光される場合に、スペックルが問題となる面内もしくは瞳の強度分布として20%を超えるようなばらつきが発生するパルス光をいう。
本実施形態の露光装置1は、スペックルを低減して、基板に転写される回路パターンの品質を向上させることができる光源ユニット18を備えている。以下、本実施形態の光源ユニット18について説明する。
【0041】
[光源ユニットの構成]
図5は、本実施形態の光源ユニット18の構成の概要を示す図である。光源ユニット18は、光源部181、合成部182、リターダ183及び分配部184を備える。
【0042】
光源部181は、所定波長の光を出射する。光源部181が出射する光は連続光であってもよいし、パルス光であってもよい。以下、光源部181がパルス光を出射するものである場合について説明する。
なお、光源部181が連続光を出射するものである場合には、シャッタ(不図示)の切り替え、音響光学変調器(不図示)による変調などにより連続光をパルス光に変換することにより、光源部181から出射される光が、実質的なパルス光であるとされてもよい。
【0043】
光源部181は、第1光源部181A~第8光源部181Hを含む。第1光源部181A~第8光源部181Hは、それぞれが種光源を備えており、所定波長のパルス光を出射する。
一例として、光源部181は、ファイバ、励起レーザダイオード(LD)及び波長変換結晶(いずれも不図示)を備える。光源部181は、ファイバ及び励起LDによって増幅させたレーザを、波長変換結晶に入射させ、3倍高調波のパルス光を発光させる。
【0044】
なお、光源部181が備える光源は、可干渉性の高いレーザ光源(たとえばファイバレーザ)であってもよく、UV-LDであってもよい。また、光源部181は、出射される光の波長が360nm以下であるレーザ光源であってもよい。
【0045】
合成部182は、光源部181に含まれる複数のレーザ光源からそれぞれ出射されるパルス光を合成する。合成部182は、パルス光を合成することにより、強度が強い(エネルギが大きい)パルス光を生成する。合成部182は、合成したパルス光をリターダ183に出射する。
リターダ183は、合成部182から出射されるパルス光の分割と合成とを繰り返し行い、遅延時間の互いに異なるパルス光どうしを組み合わせることにより、パルス光の時間軸の分布を変化させる。リターダ183は、時間軸の分布を変化させたパルス光を分配部184に出射する。
【0046】
なお、リターダ183を遅延光学系ともいう。リターダ183(遅延光学系)は、パルス光の一部を遅延させる。また、リターダ183(遅延光学系)は、パルス光の一部を分割して遅延光路に導光し、遅延光路に導光したパルス光の一部を、分割したパルス光の他の一部と合成することにより、パルス光の時間特性を変化させる。
【0047】
分配部184は、リターダ183から出射されたパルス光を、複数の光ファイバ19のそれぞれに分配する。すなわち、分配部184は、複数の露光モジュールにパルス光を分配する。分配部184は、たとえば、リターダ183から出射された1パルス目のパルス光を第1露光モジュールに導き、2パルス目のパルス光を第2露光モジュールに導く。分配部184は、パルスごとに導く露光モジュールを変更することから、スイッチング部であるともいえる。
【0048】
図6は、本実施形態の光源ユニット18の構成の詳細を示す図である。同図には、第1光源部181A~第8光源部181Hのうち、第1光源部181A~第4光源部181Dの部分を示す。第5光源部181E~第8光源部181Hの部分は、第1光源部181A~第4光源部181Dの部分と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0049】
合成部182は、プリズムミラー1821、偏光ビームスプリッタ1822、波長板1823、波長板1824、プリズムミラー1825、偏光ビームスプリッタ1826及びプリズムミラー1827 を備えている。プリズムミラー1821は、第1光源部181Aが出射するパルス光(s偏光)を偏光ビームスプリッタ1822に導光する。波長板1823は、第2光源部181Bが出射するパルス光(s偏光)の偏光状態を変化させパルス光(p偏光)を偏光ビームスプリッタ1822に導光する。
【0050】
図7は、本実施形態の偏光ビームスプリッタ1822の一例を示す図である。偏光ビームスプリッタ1822は、入射するパルス光がp偏光である場合に、パルス光を透過させる。偏光ビームスプリッタ1822は、入射するパルス光がs偏光である場合に、パルス光を反射する。
【0051】
図6に戻り、偏光ビームスプリッタ1822は、プリズムミラー1821によって反射されたパルス光(s偏光)を反射して、波長板1824に導光する。また、偏光ビームスプリッタ1822は、波長板1823を透過したパルス光(p偏光)を透過させて、波長板1824に導光する。すなわち、波長板1824には、第1光源部181Aが出射するパルス光がs偏光(0度直線偏光)として、第2光源部181Bが出射するパルス光がp偏光(90度直線偏光)としてそれぞれ入射する。つまり、波長板1824には、偏光方向が互いに直交する2種類のパルス光が50%ずつの割合で合成されて、それぞれ入射する。
【0052】
波長板1824は、入射するパルス光の偏光方向を回転させる。波長板1824は、入射するs偏光(0度直線偏光)の偏光方向を回転させて+45度直線偏光にし、入射するp偏光(90度直線偏光)の偏光方向を回転させて-45度直線偏光にする。
波長板1824からは、+45度直線偏光と、-45度直線偏光との2種類のパルス光が出射される。波長板1824から出射された2種類のパルス光は、プリズムミラー1825によって反射されて、偏光ビームスプリッタ1826に導光される。
【0053】
偏光ビームスプリッタ1826は、入射するパルス光をリターダ183に出射する。ここで、偏光ビームスプリッタ1826には、上述した第1光源部181Aからの+45度直線偏光と、第2光源部181Bからの-45度直線偏光とが入射する。偏光ビームスプリッタ1826は、入射したパルス光のうちのs偏光成分、つまり、+45度直線偏光のs偏光と、-45度直線偏光のs偏光とを反射して、リターダ183に出射する。偏光ビームスプリッタ1826は、入射したパルス光のうちのp偏光成分、つまり、+45度直線偏光のp偏光と、-45度直線偏光のp偏光とを透過させて、プリズムミラー1827 を介してリターダ183に出射する。
【0054】
つまり、偏光ビームスプリッタ1822は、第1光源部181Aが出射するパルス光と、第2光源部181Bが出射するパルス光とを同軸上に合成して、リターダ183に出射する。なお、偏光ビームスプリッタ1822は、第1光源部181Aが出射するパルス光と、第2光源部181Bが出射するパルス光とを同軸上に合成するとしたが、それぞれの光軸をわずかにずらした状態、つまり近軸で合成するようにしても良い。偏光ビームスプリッタ1822をプレート型とした場合、p偏光のパルス光が偏光ビームスプリッタ1822を透過すると、その光軸が僅かに平行移動する。これは、PBS内をとおるパルス光がPBSの屈折率によりわずかに屈折することで生じ、入射時の光軸から僅ら平行移動された光軸の光がPBSから射出される。近軸の合成により、光学素子に当たるパルス光の単位面積当たりのエネルギ(パワー)、つまりエネルギ密度を分散することができる。その結果、光学素子の変形等を含めた劣化を抑制することができる。
同様に、合成部182は、第3光源部181Cが出射するパルス光と、第4光源部181Dが出射するパルス光とを同軸上に合成して、リターダ183に出射する。
【0055】
換言すれば、光源ユニット18は、合成装置を備えている。上述した合成部182は、合成装置の一例である。合成装置は、複数の光源からそれぞれ出射されるパルス光を合成する。
【0056】
以下の説明において、偏光ビームスプリッタ1826からリターダ183に出射されるパルス光を、リターダ入射光183LIともいう。リターダ入射光183LIのうち、偏光ビームスプリッタ1826からプリズムミラー1827 を介さずにリターダ183に出射されるパルス光を第1リターダ入射光183LI1ともいい、偏光ビームスプリッタ1826からプリズムミラー1827 を介してリターダ183に出射されるパルス光を第2リターダ入射光183LI2ともいう。
つまり、リターダ183には、互いに異なる光源部181から出射された第1リターダ入射光183LI1及び第2リターダ入射光183LI2の、2種類のパルス光が入射する。上述したように、第1リターダ入射光183LI1及び第2リターダ入射光183LI2はいずれも、第1光源部181Aから第4光源部184Dのそれぞれの光源から出射するパルス光が同軸上(又は、ほぼ同軸上)に合成された光である。
【0057】
なお、リターダ183に、第1リターダ入射光183LI1及び第2リターダ入射光183LI2が入射するとして説明するが、これに限られない。リターダ183に入射するパルス光が第1リターダ入射光183LI1のみであってもよい。
【0058】
リターダ183は、
図11等に示されるように、入力段ビームスプリッタ1834Aを備えている。入力段ビームスプリッタ1834Aは、第1リターダ入射光183LI1と、第2リターダ入射光183LI2とを合成及び分割する。分割されたパルス光はそれぞれ遅延段1832に入射する。
なお、ビームの合成及び分割を、偏光を用いたビームスプリッタによるものとして記載したがこれに限られず、ハーフミラーやハーフプリズム等を用いてもよい。
【0059】
遅延段1832は、遅延光路を備えており、第1リターダ入射光183LI1と、第2リターダ入射光183LI2とについて、それぞれ時間軸の分布を変化させる。遅延段1832は、時間軸の分布を変化させたパルス光を第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2として、分配部184に出射する。
【0060】
換言すれば、リターダ183(遅延光学系)は、第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路を第2パルス光がとおるように導く。リターダ183(遅延光学系)は、合成部182(合成装置)により合成した前記パルス光の一部を分割して第2光路に導光する。
【0061】
図8は、本実施形態の分配部184の構成の一例を示す図である。分配部184は、回転スイッチ1841と、デストリビュータ1842とを備える。なお、同図では、第1リターダ出射光183LO1について説明し、第2リターダ出射光183LO2についての説明は省略している。また、同図では、回転スイッチ1841の図示は省略されている。
【0062】
デストリビュータ1842は、複数の光ファイバ19の中から、パルス光を入射させる光ファイバ19を選択する。具体的には、デストリビュータ1842は、所定の回転数で回転するポリゴンミラーデバイスを備えている。ポリゴンミラーデバイスは、リターダ183から入射するパルス光を、回転角速度に応じた方向に反射させる。
【0063】
ポリゴンミラーデバイスが回転することにより、リターダ183から入射するパルス光に対するポリゴンミラーデバイスの反射面の角度が変化する。したがって、リターダ183から入射してポリゴンミラーデバイスの反射面に反射されたパルス光の行先が、時刻によって変化する。
ポリゴンミラーデバイスの回転角速度は、パルス光の発光タイミングの時間間隔に応じて定められている。例えば、パルス光が第1パルスPL1、第2パルスPL2、第3パルスPL3の順にポリゴンミラーデバイス入射する場合に、第1パルスPL1が第1光ファイバ19Aに入射し、第2パルスPL2が第2光ファイバ19Bに入射し、第3パルスPL3が第3光ファイバ19Cに入射する。
すなわち、分配部184は、リターダ183から出射されたパルス光を、複数の光ファイバ19のそれぞれに分配する。つまり、分配部184は、リターダ183から出射されたパルス光を入射する光ファイバ19を時間ごとに切り替えることができる。
回転スイッチ1841は、
図8では不図示だが、リターダ183とデストリビュータ1842との間に設けられている。回転スイッチ1841は、時間間隔T1(たとえば、時間t1から時間t2の間)にポリゴンミラーデバイスの第1面にリターダ183から射出されたパルス光を導き、時間間隔T2(たとえば、時間t2からt3の間)にポリゴンミラーデバイスの第2面にパルス光を導く。時間間隔T3(たとえば、時間t3からt4の間)においては、回転スイッチ1841は、常に回転をしているため、もともと第1面が位置した場所にポリゴンミラーデバイスの第3面が移動してくる。時間間隔T4(たとえば、時間t4からt5の間)においては、同様に、第2面に位置した場所にポリゴンミラーデバイスの第4面が移動してくる。つまり、時間間隔T1における第1面と時間間隔T3における第3面とは、リターダ183から射出されるパルス光に対する角度が等しくなる。また、時間間隔T2における第2面と時間間隔T4における第4面とは、リターダ183から射出されるパルス光に対する角度が等しくなる。つまり、回転スイッチ1841は、ある時間間隔ごとに、パルス光を導くポリゴンミラー上の面を変更するものである。時間間隔T1における第1面に反射されたパルス光は、たとえば、第1光ファイバ19Aから第5光ファイバ19Eの順番に入射される。時間間隔T2における第2面に反射されたパルス光は、たとえば、不図示の第6光ファイバ19Fから第10光ファイバ19Jの順番に入射される。時間間隔T3における第3面に反射されたパルス光は、第1光ファイバ19Aから第5光ファイバ19Eの順番に入射される。時間間隔T4における第4面に反射されたパルス光は、たとえば、不図示の第6光ファイバ19Fから第10光ファイバ19Jの順番に入射される。このように、回転スイッチ1841は、ある時間間隔ごとに、パルス光を導くポリゴンミラー上の面を変更するものである。
【0064】
なお、分配部184は、光路切替部(例えば、ポリゴンミラーデバイス)からパルス光が出射する出射位置と、導光部(例えば、光ファイバ19)のパルス光の入射位置とが光学的にほぼ共役となる位置に、光路切替部と導光部とを設けていてもよい。
また、分配部184は、ポリゴンミラーデバイスが反射するパルス光を各光ファイバ19の入射端の位置に集光させるレンズ1843を備えていてもよいし、更にリレーレンズを用いてポリゴンミラーデバイスの反射面と光ファイバ19の入射面を共役にしても構わない。換言すれば、光源ユニット18は、光路切替部(例えば、ポリゴンミラーデバイス)と、導光部(例えば、光ファイバ19)との間に、光路切替部からパルス光が出射する出射位置と、導光部の前記パルス光の入射位置とを光学的にほぼ共役とするリレーレンズを備えていてもよい。
また、分配部184は、ポリゴンミラーデバイスに代えて、パルス光の出射方向をわずかに振動させるようなガルバノミラーや音響光学変調器(AOM)による光路変化を利用してもよい。
【0065】
光ファイバ19は、デストリビュータ1842によって分配されたパルス光を、照明モジュール16に供給する。
【0066】
複数の光ファイバ19は、1つの空間光変調器201へ異なる光源部181から射出される第1パルス光と第2パルス光とを導くように構成されていると言える。
複数の光伝送部のうち第1光伝送部は、複数設けられた空間光変調器201のうち第1空間光変調器へ第1パルス光と第2パルス光とを導く。
複数の光伝送部のうち第2光伝送部は、複数設けられた空間光変調器201のうち第2空間光変調器へ第1パルス光と第2パルス光とを導く。
【0067】
また、光源ユニット18は、光源(例えば、光源部181)のパルス光の出射位置と、光路切替部(例えば、デストリビュータ1842)にパルス光が入射する入射位置とが光学的にほぼ共役となる位置に、光源と光路切替部とを設けていてもよい。
このように構成された光源ユニット18によれば、光源部181のパルス光の出射位置と、デストリビュータ1842にパルス光が入射する入射位置とが共役であるため、光源部181のパルス光の出射位置を調整することによって、デストリビュータ1842にパルス光が入射する入射位置を容易に調整することができる。したがって、このように構成された光源ユニット18によれば、光源部181の交換作業や位置調整作業において、デストリビュータ1842にパルス光が入射する入射位置を容易に調整することができる。
【0068】
図6に戻り、制御部21は、光源部181が出射するパルス光の状態を制御する。
図9を参照して光源部181が出射するパルス光の一例について説明する。
【0069】
[光源ユニット18の動作]
図9は、本実施形態の光源部181が出射するパルス光の状態の一例を示す図である。同図[A]には、従来の光源部が出射するパルス光の状態の一例を示す。従来の光源部は、パルス幅20ns、周期200kHzのパルス光を出射する。
【0070】
同図[B]には、本実施形態の光源部181が出射するパルス光の状態の一例を示す。本実施形態の光源部181は、パルス幅2ns、パルス間隔20ns、パルス数10、周期200kHzの群パルス光を出射する。
【0071】
ここで、本実施形態の光源部181は、複数の光源部181が互いに異なるタイミングで群パルス光を出射する。一例として、第1光源部181A及び第2光源部181Bは、いずれも、パルス幅2ns、パルス間隔20ns、パルス数10、周期200kHzの群パルス光を出射する。第2光源部181Bは、第1光源部181Aが出射する群パルス光のパルス間隔20nsの期間において、パルス光を出射する。
つまり、第1光源部181Aのパルス光の出射タイミングと、第2光源部181Bのパルス光の出射タイミングとが互いにずらされている。
一例として、第1光源部181Aと第2光源部181Bとについて説明したが、第1光源部181A~第4光源部181Dの出射タイミングがそれぞれ互いにずらされていてもよい。
【0072】
すなわち、光源ユニット18は、複数のパルス光の発光タイミングを互いに異ならせることにより、分配部184が分配するパルス光の状態を互いに異ならせる。
具体的には、同図[B]に示すように、第1光源部181Aは、第1時間に第1パルス光を射出する。第2光源部181Bは、第1時間とは異なる第2時間に第2パルス光を射出する。
上述したように、照明モジュール16(照明系)は、第1パルス光及び第2パルス光を空間光変調器201へ導き、を空間光変調器201照明する。
第2光源部181Bは、第1時間からの時間間隔が所定時間間隔よりも短くなる第2時間に第2パルス光を射出する。所定時間間隔とは、空間光変調器201がDMDである場合には、マイクロミラーのオン状態とオフ状態とを切り替える周期である。
【0073】
第1光源部181Aは、所定周期により第1パルス光を連続的に射出する。第2光源部181Bは、所定周期により第2パルス光を連続的に射出する。所定周期とは、同図[B]に示す群パルス光の周期(例えば、周期200kHz)である。連続的に射出とは、所定パルス幅(例えば、パルス幅2ns)、所定パルス間隔(例えば、パルス間隔20ns)、所定パルス数(例えば、パルス数10)の群パルス光として射出することである。
【0074】
第2光源部181Bは、連続する第1パルス光が第1光源部181Aから射出される間の時間に、第2パルス光を射出する。連続する第1パルス光が第1光源部181Aから射出される間の時間とは、第1パルス光の1つの群パルス光が射出される間の時間(例えば、200ns)である。
【0075】
第1光源部181A及び第2光源部181Bは、空間光変調器201の素子が制御される所定時間間隔よりも短い時間間隔となる所定周期により、第1パルス光と第2パルス光とをそれぞれ連続的に射出する。すなわち、群パルス光の発振時間間隔(先述の所定周期例えば、周期200kHz)は、空間光変調器201の複数の素子が個別に制御される所定時間間隔(例えば、10kHz)よりも短い時間間隔である。
【0076】
このように構成された光源ユニット18によれば、複数のパルス光の出射タイミングが互いに異なるものとなり、パルス光の可干渉性が低減されるため、スペックルの発生を抑制することができる。
【0077】
なお、上述したパルス光の出射タイミングは、制御部21が光源部181を制御することによって調整されてもよい。先述の第1光源部181A~第8光源部181Hは、それぞれが種光源を備えており、制御部は、この各種光源をそれぞれ制御することに、光源ごとにパルス光の発振タイミングを制御することができる。制御部21は、複数のパルス光の発光タイミングを互いに異ならせることにより、空間光変調器201上におけるパルス光の状態を互いに異ならせる。制御部21は、状態変更部の一例である。
また、上述したパルス光の出射タイミングは、制御部21の制御によらずに、光源部181にあらかじめ発光タイミングが設定されていてもよい。
【0078】
本実施形態の光源部181は、複数の光源部181が出射するパルス光の波長が、互いに異なっていてもよい。一例として、複数の光源部181のパルス光の中心波長を数ピコメートルから数十ピコメートルほど異ならせる。光源部181毎に異ならせる中心波長のずれ量の許容値は、一例としてそのずれ量に起因して投影モジュールで発生する色収差によって決まる。許容値がたとえば100pm、光源の数が5台であれば、光源ごとに20pmずつ均等にずらす。なお、ずらす量は均等でなくてもよい。換言すると、色収差により露光不良が発生しない程度に、光源部181毎に中心波長をずらす。一例として、光源部181は、動作環境温度の変化によって、出射されるパルス光の波長が変化する。複数の光源部181は、互いに動作環境温度を異ならせることにより、互いのパルス光の波長を異ならせる。
なお、第1パルス光と第2パルス光との中心波長の波長差をλとし、波長差λによって発生する投影光学系の色収差をΔと、投影光学系の開口数をNAとするとき、
λ>Δ×(NA^2)
を満たす。
【0079】
なお、光源ユニット18は、光源部181の動作環境温度を変化させる温度制御デバイス(加温デバイスまたは冷却デバイス。いずれも不図示)を備えていてもよい。また、温度制御デバイスは、制御部21の制御に基づいて、光源部181の動作環境温度を変化させる構成であってもよい。この場合、制御部21は、複数の光源部181の動作環境温度をそれぞれ制御することにより、複数の光源部181がそれぞれ出射するパルス光の波長が互いに異なるように制御する。
光源ユニット18は、種光の温度を積極的に周期的に変動させることで波長を周期的に可変し、ある範囲内で、波長を周期的に変更することも可能である。
【0080】
光源ユニット18は、光源部181が出射するパルス光の波長帯域のうち一部の波長帯域を透過可能にする波長フィルタデバイス(不図示)を備えていてもよい。また、波長フィルタデバイスは、制御部21の制御に基づいて、透過させるパルス光の波長を変化させる構成であってもよい。この場合、制御部21は、波長フィルタデバイスが透過させる波長帯域を、複数の光源部181について互いに異なるように制御することにより、複数の光源部181がそれぞれ出射するパルス光の波長が互いに異なるように制御する。
【0081】
光源ユニット18は、状態変更部の一例である。光源ユニット18(状態変更部)は、複数のパルス光の波長を互いに異ならせることにより、分配部184が分配するパルス光の状態を互いに異ならせる。
例えば、第1光源部181Aが射出するパルス光の波長と、第2光源部181Bが射出するパルス光の波長とは互いに異なる。第1光源部181Aは、第2光源部181Bから射出される第2パルス光の波長が異なる第1パルス光を射出する。
【0082】
光源ユニット18は、出射されるパルス光の波長を計測する波長計測デバイス(不図示)を備えていてもよい。制御部21は、波長計測デバイスによるパルス光の波長の測定結果に基づいて、光源部181から出射されるパルス光の波長を制御する。
換言すれば、制御部21は、複数のパルス光の波長を互いに異ならせることにより、空間光変調器201上におけるパルス光の状態を互いに異ならせる。制御部21は、状態変更部の一例である。
【0083】
このように構成された光源ユニット18によれば、複数のパルス光の波長が互いに異なるものとなり、パルス光の可干渉性が低減されるため、スペックルの発生を抑制することができる。
【0084】
第1パルス光の波長と、第2パルス光の波長とが互いに異なる場合について説明したが、これに限られない。第1パルス光の位相状態と、第2パルス光の位相状態とが互いに異なる構成であってもよい。この場合、照明系は、第1パルス光または第2パルス光の少なくとも一方の位相状態を変化させる位相変化部を有していてもよい。
【0085】
図6に戻り、制御部21は、分配部184を制御することにより、パルス光が光ファイバ19に入射する位置を制御する。
図10を参照してパルス光が光ファイバ19に入射する位置の制御の一例について説明する。
【0086】
図10は、本実施形態のパルス光が光ファイバ19に入射する位置の一例を示す図である。
上述したように、デストリビュータ1842(例えば、ポリゴンミラーデバイス)には、リターダ183からパルス光(例えば、第1リターダ出射光183LO1)が入射する。デストリビュータ1842に入射した第1リターダ出射光183LO1は、ポリゴンミラーデバイスへの入射角度と、入射したタイミングにおける反射鏡の角度とに基づく方向に反射される。入射したタイミングにおける反射鏡の角度は、ポリゴンミラーデバイスの回転速度(角速度)が変化することによって変化する。
例えば、デストリビュータ1842の回転速度が所定の角速度であれば、デストリビュータ1842によって反射された第1リターダ出射光183LO1は、光ファイバ19の位置P1に入射する。デストリビュータ1842の回転速度が所定の角速度よりも遅い場合には、デストリビュータ1842によって反射された第1リターダ出射光183LO1は、光ファイバ19の位置P2に入射する。デストリビュータ1842の回転速度が所定の角速度よりも速い場合には、デストリビュータ1842によって反射された第1リターダ出射光183LO1は、光ファイバ19の位置P3に入射する。
【0087】
ここでは、ファイバに入射する位置変化を記載したが、例えば、ポリゴンミラーデバイスの反射面とファイバ入射口をレンズにより共役としてもよい。換言すれば、分配部184は、光路切替部(例えば、ポリゴンミラーデバイス)からパルス光が出射する出射位置と、導光部(例えば、光ファイバ19)のパルス光の入射位置とが光学的にほぼ共役となる位置に、光路切替部と導光部とを設けていてもよい。このように構成された光源ユニット18によれば、ファイバの入射位置はぼぼ変わらないが、ファイバへの入射角度が変化させることもできる。
つまり、ポリゴンミラーデバイスの回転速度(角速度)が変化することによって、パルス光の光ファイバ19への入射位置及び入射角が変化する。
パルス光の光ファイバ19への入射位置及び入射角が変化すると、光ファイバ19内を導光されるパルス光の経路が変化し、パルス光の時間的特性が変化する。
【0088】
制御部21は、ポリゴンミラーデバイスの回転速度を変化させて、光ファイバ19内を導光されるパルス光の経路を変化させることにより、照明モジュール16から出射されるパルス光の時間的特性を変化させる。
すなわち、光源ユニット18は、分配部184によるパルス光の分配タイミングをそれぞれ異ならせることにより、分配部184が分配するパルス光の状態を互いに異ならせる。
【0089】
例えば、照明系は、第1パルス光と第2パルス光とを空間光変調器201へ導く光伝送部を備える。上述した光ファイバ19は、光伝送部の一例である。位相変化部は、光伝送部(例えば、光ファイバ19)へ入射される第1パルス光および第2パルス光の入射角度を調整する。上述した回転速度(角速度)が変化するポリゴンミラーデバイスは、位相変化部の一例である。
【0090】
換言すれば、照明系は、光路切替部を備えている。光路切替部は、合成されたパルス光の光路を切り替えて、複数設けられたマスクに順に導く。ポリゴンミラーデバイスは光路切替部の一例である。なお、上述したように、マスクとは、フォトマスクであってもよいし、空間光変調器であってもよい。
照明系が、合成されたパルス光の光路を切り替えて、複数設けられたマスクへ順に導く光路切替部を有する場合において、制御部21は、光路切替部によるパルス光の分配タイミングをそれぞれ異ならせることにより、空間光変調器201上におけるパルス光の状態を互いに異ならせる。制御部21による光路切替部によるパルス光の分配タイミング制御は、状態変更部の一例である。
【0091】
すなわち、照明系は、第1光源部181A及び第2光源部181Bから順次発振された第1パルス光および第2パルス光の光路を切り替えて、複数設けられた光伝送部(例えば、光ファイバ19)に順に導く光路切替え機を有する。上述したポリゴンミラーデバイスは、光路切替え機の一例である。
【0092】
光路切替え機は、第1パルス光および第2パルス光を反射する反射面を有し、第1パルス光および第2パルス光に対する反射面の入射角度を変更し光路を切り替える。
位相変化部は、光伝送部へ入射される第1パルス光および第2パルス光の入射角度を調整するよう、光路切替え機を制御する。
【0093】
なお、位相変化部は、空間光変調器201へ入射される光を拡散する拡散板を有していてもよい。また、位相変化部は、光ファイバ19自体を揺らすことで、位相変化を起こしてもよい。
【0094】
上述したように、露光装置1は、第1パルス光及び第2パルス光によって照明された複数の空間光変調器201からそれぞれ出射される光を基板に照射することにより、前記基板を分割露光する投影光学系と、を備える。
【0095】
このように構成された光源ユニット18によれば、複数のパルス光の時間的特性が互いに異なるものとなり、パルス光の可干渉性が低減されるため、スペックルの発生を抑制することができる。
【0096】
なお、各ファイバ19の入射端の直前に拡散板を配置しても良い。拡散板は、パルス光を拡散し、パルス光のファイバへの入射位置、入射角度を変化させることができるため、パルス光の位相や波面を変更することができる。拡散されたパルス光は互いに重なりあい、平均化される。そのため、同じファイバ19に入射されるパルス光ごとに位相、波面、強度等を変更することができる。
なお拡散板は、回転移動および/又は併進移動させる機構を備えていても良い。機構は、拡散板上でパルス光が通過する位置を変更することで、パルス光を拡散される状態を変更し、ファイバへのパルス光の入射位置や入射角度を変更させることができる。機構は、1つ目のパルスが通過した後、2つ目のパルスが通過する前に、拡散板を移動させると、パルス光どうしの位相や波面を変更することができる。このようにパルス光毎に位相や波面拡散板の移動は、1パルス毎に行っても良いし、複数パルス毎に行っても良い。また、拡散板は、ファイバ19毎ではなく、複数のファイバに対して1つ設置するようにしても良い。
【0097】
なお、ポリゴンミラーデバイスの回転速度(角速度)を変化させ、パルス光の光ファイバ19への入射位置を変化させたが、これに限定されない。ポリゴンミラーデバイスの回転速度を一定とし、光ファイバ19の入射端を移動させ、パルス光が入射される位置をずらすようにしても良い。なお、ポリゴンミラーデバイスの回転速度を変化させつつ、光ファイバ19の入射端を移動させるようにしても良い。
【0098】
なお、拡散板は、光ファイバ19の射出端に設けられても良い。また、拡散板は、各光源の射出端に設けられても良い。
【0099】
[リターダ183の構成]
上述したように、リターダ183は、リターダ入射光183LIを分割・合成することにより、パルス光の状態が変化したリターダ出射光183LOを出射する。
具体的には、リターダ183は、入射したパルス光を複数(例えば2つ)に分割し、分割された一方のパルス光の光路長を、他方のパルス光の光路長よりも長くすることにより、パルス幅に相当する遅延をパルス光に生じさせる。リターダ183は、分割されたパルス光どうしを合成することにより、入射したパルス光に対して状態が変化したパルス光を出射する。
図11を参照してリターダ183の具体的な構成について説明する。
【0100】
図11は、本実施形態のリターダ183の構成の概要を示す図である。一例として、同図には、9つのビームスプリッタ(例えば、ハーフプリズム)が直列に配置された、8段構成のリターダ183を示す。リターダ183は、入力段1831と、遅延段1832とを備える。入力段1831は、入力段ビームスプリッタ1834Aを備える。
【0101】
入力段ビームスプリッタ1834Aは、上述した9つのビームスプリッタのうち、合成部182から出射されるパルス光(リターダ入射光183LI)が最初に入射するビームスプリッタである。入力段ビームスプリッタ1834Aは、入射するパルス光を分割し、その一方を入力段ミラー1835に、他方を2段目のビームスプリッタに出射する。入力段ミラー1835によって反射されたパルス光は2段目のビームスプリッタに入射する。 なお、以下の説明において、プリズムミラー(例えば、入力段ミラー1835)を経由する光路を遅延光路と、プリズムミラーを経由しない光路を非遅延光路ともいう。
【0102】
2段目のビームスプリッタには、入力段ビームスプリッタ1834Aから出射されたパルス光(つまり、非遅延光路を経由し、遅延していないパルス光)と、入力段ミラー1835によって反射されたパルス光(つまり、遅延光路を経由し、遅延したパルス光)とがそれぞれ入射する。2段目のビームスプリッタにおいて、遅延していないパルス光と遅延したパルス光とが合成され、さらに遅延光路と非遅延光路とに分割される。
【0103】
上述したように、リターダ183が備えるビームスプリッタは、パルス光の一部を透過し、他の一部を反射することによって、パルス光を合成または分割する。すなわち、リターダ183(遅延光学系)は、パルス光の一部を透過し、他の一部を反射することによって、パルス光を合成または分割する。
また、ビームスプリッタ(例えば、ハーフプリズム)は、パルス光の偏光の状態(例えば、p偏光とs偏光)によらずに、パルス光を透過又は反射する。リターダ183は、ビームスプリッタによって、パルス光を合成または分割する。
【0104】
リターダ183(遅延光学系)は、合成部182が合成したパルス光を分割し、分割したそれぞれのパルス光の一部を遅延させる。すなわち、リターダ183(遅延光学系)は、合成部182が合成したパルス光の一部を遅延させる。
より具体的には、リターダ183(遅延光学系)は、パルス光の一部を分割して遅延光路に導光し、遅延光路に導光したパルス光の一部を、分割したパルス光の他の一部と合成することにより、パルス光の時間特性を変化させる。リターダ183(遅延光学系)は、複数の光源からそれぞれ出射されるパルス光を合成し、合成したパルス光の一部を分割して遅延光路に導光する。
【0105】
リターダ183の8段目まで、パルス光の分割と合成とを繰り返すと、1つのパルス光(同図[B]を参照。)が、2の8乗(つまり、256)個の群パルス光(同図[C]を参照。)に変換される。
【0106】
すなわち、照明系は、第1パルス光および第2パルス光のそれぞれを、2つのパルス光に分割する分割部と、分割部を経た一方のパルス光を第1光路に沿って導くとともに分割部を経た他方のパルス光を第1光路よりも長い第2光路に沿って導く導光光学系と、を有する。
【0107】
光学系は、パルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部と、第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ第2パルス光を導く遅延光学系と、第1パルス光と遅延光学系をとおった第2パルス光とを合成する合成部と、を有する。
照明系は、合成部で合成された第1パルス光および第2パルス光をマスクへ導き、マスクを照明する。なお、上述したように、マスクとは、フォトマスクであってもよいし、空間光変調器であってもよい。
【0108】
このように構成された光源ユニット18によれば、複数のパルス光の時間的特性が互いに異なるものとなり、パルス光の可干渉性が低減されるため、スペックルの発生を抑制することができる。
【0109】
なお、同図[A]には、1段目から3段目までをプリズムミラーによって遅延光路を構成し、4段目から8段目までを透過率が比較的高い光ファイバ1835Aによって遅延光路を構成するリターダ183を例示したが、これに限られない。
【0110】
また、同図[A]には、リターダ183に1種類のパルス光が入射する場合について説明したが、これに限られない。2種類のパルス光が入射するリターダ183について、
図12を参照して説明する。
【0111】
図12は、本実施形態のリターダ183の構成の第1変形例を示す図である。同図には、一例として、6つのビームスプリッタ(例えば、ハーフプリズム)が直列に配置された5段構成のリターダ183を示す。
本変形例のリターダ183は、第1リターダ入射光183LI1と、第2リターダ入射光183LI2との2種類のパルス光が、入力段ビームスプリッタ1834Aに入射する。
最終段ビームスプリッタ1834Bは、第1リターダ出射光183LO1と、第2リターダ出射光183LO2とをそれぞれ出射する。
【0112】
上述したように、リターダ183(遅延光学系)は、例えば、第1リターダ出射光183LO1と、第2リターダ出射光183LO2との複数の経路によってパルス光を出射する。リターダ183(遅延光学系)は、経路に対応する複数の分配部184に対してパルス光をそれぞれ出射する。すなわち、本変形例のリターダ183は、2入力-2出力である。
換言すれば、リターダ183(遅延光学系)が備える最終段ビームスプリッタ1834Bは、複数の経路によってパルス光を出射する。パルス光はそれぞれの経路に対応する複数の分配部184(光路切替部)に導光される。すなわち、遅延光学系は、複数の経路によってパルス光を出射するものであって、経路に対応する複数の光路切替部に対して前記パルス光をそれぞれ出射する。なお、複数の光路切替部は、複数のデストリビュータ1842によって構成されていてもよいし、1つのデストリビュータ1842の互いに異なる反射面によって構成されていてもよい。
【0113】
図13は、本実施形態のリターダ183の構成の第2変形例を示す図である。同図には、6つのビームスプリッタが直列に配置された5段構成のリターダ183を一例として示す。
本変形例のリターダ183は、5段目の遅延光路がミラー間を周回するように構成されている。具体的には、本変形例のリターダ183は、第1周回ミラー1835A、第2周回ミラー1835B、第3周回ミラー1835C及び第4周回ミラー1835Dを備えている。第1周回ミラー1835A~第4周回ミラー1835Dは、5段目の遅延光路を構成する。
【0114】
同図に示すように、リターダ183は、第2パルス光を反射する反射部(例えば、第1周回ミラー1835A)と、反射された第2パルス光を再び反射部に入射する光学部材とを有する。
光学部材は、反射部材(例えば、第2周回ミラー1835B~第4周回ミラー1835D)を有する。反射部材(例えば、第2周回ミラー1835B~第4周回ミラー1835D)は、反射部(例えば、第1周回ミラー1835A)に反射された第2パルス光を反射し、第2パルス光を反射部に入射する。
つまり、リターダ183は、反射部が反射したパルス光を、再び反射部に導光する光学部材を備えている。リターダ183は、これら反射部と光学部材とにより、パルス光の光路を反射部と光学部材との間で周回(例えば、渦巻き状に周回)させる。
【0115】
このように構成されたリターダ183によれば、遅延光路の光路長をより長くしつつ(つまり、スペックル低減性能を向上させつつ)、装置が大型化することを抑制することができる。
【0116】
なお、リターダ183は、ビームスプリッタ1834Cを備えていてもよい。ビームスプリッタ1834Cは、第1周回ミラー1835A~第4周回ミラー1835Dによるパルス光の周回光路に配置され、周回するパルス光の一部を周回光路に、他の一部を最終段ビームスプリッタ1834Bに、それぞれ導光する。
このように構成されたリターダ183によれば、光路長が互いに異なる複数のパルス光の種類をさらに増すことができるため、装置の大型化を抑制しつつ、スペックル低減性能をさらに向上させることができる。
【0117】
図14は、本実施形態のリターダ183の構成の第3変形例を示す図である。同図には、5つのビームスプリッタが直列に配置された4段構成のリターダ183を一例として示す。本変形例のリターダ183は、リレーレンズ1836と集光鏡1837とを備えており、遅延光路がダイソン光学系を用いて構成されている。
より具体的には、第1段リターダ183Aにおいて、入力段ビームスプリッタ1834Aによって反射されたパルス光は、リレーレンズ1836を介して集光鏡1837によって反射され、再びリレーレンズ1836を介して第2段ビームスプリッタ1834-2に入射する。第2段リターダ183B~第5段リターダ183Eにおいても、第1段リターダ183Aと同様に集光と反射とを繰り返すことにより、遅延光路を構成する。
入力段ビームスプリッタ1834Aが、第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部をして機能する。リレーレンズ1836と集光鏡1837とが、第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ第2パルス光を導く遅延光学系として機能する。第2段ビームスプリッタ1834-2が、第1パルス光と遅延光学系(リレーレンズ1836及び集光鏡1837)をとおった第2パルス光とを合成する合成部として機能する。
【0118】
上述したように、リレーレンズ1836は、集光鏡1837の表面の位置を後焦点とする。この後焦点は、第1段リターダ183Aから入射するパルス光の焦点であり、第2段リターダ183Bに出射されるパルス光の焦点でもある。つまり、リレーレンズ1836は、第1段リターダ183Aから入射するパルス光と、第2段リターダ183Bに出射されるパルス光とを、共通の焦点によって導光する。つまり、リレーレンズ1836について、第1段リターダ183Aの分割面と、第2段リターダ183Bの分割面とが共役である。
ここで、第1段リターダ183Aを第1分割合成部ともいう。また、第2段リターダ183Bを第2分割合成部ともいう。
すなわち、リターダ183(遅延光学系)は、複数のビームスプリッタ(分割合成部)のうち、パルス光を第1パルス光と第2パルス光とに分割して第1パルス光を遅延光路に導光する第1段リターダ183A(第1分割合成部)の分割面と、遅延光路から出射される第1パルス光と第2パルス光とを合成する第2段リターダ183B(第2分割合成部)の分割面とが、共役である。
なお、双方のパルス光がほぼ平行な光と見なせる場合には、特に光路長差が短い場合には、第1段リターダ183A(第1分割合成部)の分割面と第2段リターダ183B(第2分割合成部)の分割面とが、厳密に共役関係である必要はない。この場合には、一方のパルス光について所定の距離を遅延させるように配置すればよい。
【0119】
リレーレンズ1836を光学部材ともいう。集光鏡1837を反射部ともいう。
すなわち、リターダ183(遅延光学系)は、リレーレンズ1836(光学部材)と、集光鏡1837(反射部)とを備える。
集光鏡1837(反射部)は、第1段リターダ183A(第1分割合成部)から出射される第1パルス光を第2段リターダ183B(第2分割合成部)の方向に反射する。
リレーレンズ1836(光学部材)は、第1段リターダ183A(第1分割合成部)及び第2段リターダ183B(第2分割合成部)との間の光路上に配置され、第1段リターダ183A(第1分割合成部)から出射される第1パルス光を集光鏡1837(反射部)に入射させ、集光鏡1837(反射部)によって反射される第1パルス光を第2段リターダ183B(第2分割合成部)に入射させる。
【0120】
換言すれば、リターダ183(遅延光学系)は、反射部(例えば、集光鏡1837)と、光学部材(例えば、リレーレンズ1836)とを備えている。反射部は、第2パルス光を反射し合成部(例えば、第2段ビームスプリッタ1834-2)に導光する。光学部材は、分割部(例えば、入力段ビームスプリッタ1834A)と反射部との間、且つ、反射部と合成部の間に配置され、第2パルス光を反射部に入射させ、反射部によって反射された第2パルス光を合成部に入射させる。
リターダ183(遅延光学系)は、パルス光を第1パルス光と第2パルス光とに分割する分割部(例えば、入力段ビームスプリッタ1834A)の分割面と、第1光路をとおった第1パルス光と第2光路をとおった第2パルス光とを合成する合成部(例えば、第2段ビームスプリッタ1834-2)の合成面とが、光学的に共役となる位置に、分割部と合成部とを設ける。
【0121】
上述したように、リターダ183(遅延光学系)は、第1段リターダ183Aと第2段リターダ183Bとの少なくとも2段構成にされている。換言すれば、リターダ183(遅延光学系)は、第2パルス光の進行方向を軸として対向する位置に、リレーレンズ1836(光学部材)が少なくとも2個配置される。これら複数の光学部材のうち、一方の光学部材の光軸と、他方の光学部材の光軸とが、軸方向に離間している。
すなわち、反射部は、第1反射部と第2反射部とを有する。光学部材は、分割部で分割された第2パルス光を第1反射部に入射する第1光学部材と、第1反射部に反射された第2パルス光を第2反射部に入射する第2光学部材と、を有する。第1光学部材及び第2光学部材は、互いの光軸が離間して配置される。
【0122】
同図に示すように、反射部(例えば、集光鏡1837)は、光学部材(例えば、リレーレンズ1836)の焦点位置が、第2パルス光を反射する反射面となる位置に設けられる。
反射部(例えば、集光鏡1837)は、反射部に入射する第2パルス光がとおる光学部材内の位置とは異なる位置に、第2パルス光が入射するよう第2パルス光を反射させる。 すなわち、第2反射部は、第2パルス光を反射させ、第2光学系を介して、第2パルス光を再び第1反射部へ導光する。反射部は、第3反射部を有する。光学部材は、第3光学部材を有する。第2反射部は、第2パルス光を反射させ、第2光学系および第3光学系を介して、第3反射部へ第2パルス光を導光する。
【0123】
リターダ183の第2段ビームスプリッタ1834-2は、パルス光の分割部の機能と合成部の機能とを兼ねている。第2段ビームスプリッタ1834-2(合成部)は、第1パルス光を第3パルス光と第4パルス光とに分割し、第2パルス光を第5パルス光と第6パルス光とに分割する。
【0124】
図15は、本実施形態のリターダ183の構成の第4変形例を示す図である。同図には、6つのビームスプリッタが直列に配置された5段構成のリターダ183を一例として示す。本変形例のリターダ183は、第1段リターダ183A~第5段リターダ183Eを含む。第1段リターダ183A~第5段リターダ183Eは、それぞれリレーレンズ1836と集光鏡1837とを備えており、ダイソン光学系を用いて構成されている。
より具体的には、第1段リターダ183Aにおいて、入力段ビームスプリッタ1834Aによって反射されたパルス光は、リレーレンズ1836を介して集光鏡1837によって反射され、再びリレーレンズ1836を介して第2段ビームスプリッタ1834-2に入射する。第2段リターダ183B~第5段リターダ183Eにおいても、第1段リターダ183Aと同様に集光と反射とを繰り返すことにより、遅延光路を構成する。
【0125】
遅延光路の光路長は、リターダ183の段数を経るごとに指数的に増加する。本変形例のリターダ183は、第3段リターダ183C以降の段において、複数のリレーレンズ1836と集光鏡1837とを備え、光路をリターダ幅183Wの方向に折り返す構成を有する。このように構成されたリターダ183によれば、リターダ幅183W方向の寸法の増加を抑えつつ、より長い光路長の遅延光路を構成することができる。
【0126】
同図には、リターダ183の各段がダイソン光学系を用いて構成されている場合について示す。すなわち、リターダ183は、ビームスプリッタ1834(分割部)をとおった第2パルス光を反射部(
図14の集光鏡1837に相当。)に集光するレンズ(
図14のリレーレンズ1836に相当。)を有している。レンズは、集光鏡(反射部材)で反射された第2パルス光を、次段の反射鏡(反射部材)へ導く。
【0127】
なお、リターダ183の各段がダイソン光学系を用いて構成されていなくてもよい。リターダ183は、段ごとに、
図14などに示したダイソン光学系による遅延光路と、
図12などに示したプリズムミラーによる遅延光路と、を交互に用いて構成されていてもよい。
この場合、リターダ183は、ビームスプリッタ(分割部)をとおった第2パルス光を、集光鏡に集光するリレーレンズ(レンズ部)を有している。リレーレンズは、集光鏡で反射された第2パルス光を、次段のビームスプリッタへ導く。次段のビームスプリッタは、第2パルス光をプリズムミラー(反射部)へ導く。
【0128】
また、光路の折り返し数が増加する後段のリターダ183(例えば、第5段リターダ183E)は、
図16に示す構成にすることができる。
【0129】
図16は、本実施形態のリターダ183の構成の第5変形例を示す図である。同図には
図15に示す第5段リターダ183Eに代えて採用される、ダイソン光学系による遅延光路の一例を示す。
本変形例の第5段リターダ183Eは、第1リレーレンズ1836A、第1集光鏡1837A、第2リレーレンズ1836B及び第2集光鏡1837Bを備える。
第1集光鏡1837Aは、第1リレーレンズ1836Aの後焦点位置に配置される。第1リレーレンズ1836Aに入射した第1光L1は、第1集光鏡1837Aによって反射され、第2光L2として再び第1リレーレンズ1836Aに入射する。第1リレーレンズ1836Aに入射した第2光L2は、第2リレーレンズ1836Bに入射する。
第2集光鏡1837Bは、第2リレーレンズ1836Bの後焦点位置に配置される。第2リレーレンズ1836Bに入射した第2光L2は、第2集光鏡1837Bによって反射され、第3光L3として再び第2リレーレンズ1836Bに入射する。第2リレーレンズ1836Bに入射した第3光L3は、第1リレーレンズ1836Aに入射する。
第1リレーレンズ1836Aに入射した第3光L3は、第1集光鏡1837Aによって反射され、第4光L4として再び第1リレーレンズ1836Aに入射する。
【0130】
第2リレーレンズ1836Bの光軸AX2は、第1リレーレンズ1836Aの光軸AX1に対して、ビームスプリッタ1834の配列方向(
図15及び
図16に示す方向D1)にオフセットして配置される。
第3光L3が第1リレーレンズ1836Aに入射する位置は、第1光L1が第1リレーレンズ1836Aに入射する位置に対して、上述したオフセット分、方向D1にずれている。このため、第1光L1が第1集光鏡1837Aに入射する入射角と、第3光L3が第1集光鏡1837Aに入射する入射角とが互いに異なる。したがって、第1集光鏡1837Aによって反射される第2光L2の光路と、第4光L4の光路とが互いに異なることになり、第2光L2と、第4光L4とを幾何学的に分離可能になる。このため、第5段リターダ183Eは、第4光L4をリターダ出射光183LOとして取り出すことができる。
【0131】
換言すれば、リレーレンズ1836は、その光軸がレンズ部の光軸と離間するように配置される。
【0132】
このように構成されたリターダ183によれば、リレーレンズ1836及び集光鏡1837の部品点数の増加を抑えつつ、より長い光路長の遅延光路を構成することができる。 なお、本変形例では、集光と反射とを3回繰り返す構成の遅延光路について説明したが、集光と反射との繰り返し回数はこれに限られず、より多くの回数繰り返すように構成されていてもよい。
【0133】
ここで、方向D1を第2パルス光の進行方向ともいう。リターダ183(遅延光学系)は、第2パルス光の進行方向(方向D1)を軸として対向する位置に、リレーレンズ1836(光学部材)と、集光鏡1837(反射部)との組を遅延光路として備える。リレーレンズ1836と集光鏡1837との組とは、例えば、「第1リレーレンズ1836Aと第1集光鏡1837A」の組、及び「第2リレーレンズ1836Bと第2集光鏡1837B」の組である。
「第1リレーレンズ1836Aと第1集光鏡1837A」の組が構成する遅延光路を第1の遅延光路ともいい、「第2リレーレンズ1836Bと第2集光鏡1837B」の組が構成する遅延光路を第2の遅延光路ともいう。
リターダ183(遅延光学系)の遅延光路のうち、第1の遅延光路を構成する光学部材(例えば、第1リレーレンズ1836A)の光軸と、第2の遅延光路を構成する光学部材(例えば、第2リレーレンズ1836B)の光軸とが、方向D1にオフセット(つまり、軸方向に離間)している。
【0134】
図17は、本実施形態のリターダ183の構成の第6変形例を示す図である。同図には、4つのビームスプリッタが直列に配置された3段構成のリターダ183を一例として示す。本変形例のリターダ183は、ビームスプリッタ1834の配列方向(同図の方向D1)を対象軸として対向配置された2組のダイソン光学系を用いて構成される。
このように構成されたリターダ183によれば、リレーレンズ1836及び集光鏡1837の部品点数の増加を抑えつつ、より長い光路長の遅延光路を構成することができる。 なお、ほぼ入射光が平行と見なせる場合には、凹面鏡(例えば、第1集光鏡1837Aや第2集光鏡)の光束が小さくなりパワーが高いレーザなどではダメージを受ける場合があるが、本実施例のように入射側のハーフプリズムにレンズにより集光させることで凹面鏡上での光束径を大きくすることも可能となる。この場合には、非遅延部と遅延部との光束を同様の径となるようにすることが望ましく、若干プリズムミラー位置同士の共役関係をずらすことが望ましい。
図14、
図15も同様にずらすことが望ましいがレーザのようにほぼ平行な光束と見なせる場合には、特に問題にならない。
なお、遅延光学系はビームスプリッタ(例えば、ハーフプリズム)による光の分割及び合成を行うこととしたが、薄膜の透過率、反射率の特性ばらつきなどを考慮して、波長板と偏光ビームスプリッタの構成とし、波長板の回転により透過・反射光を調整しても構わない。
【0135】
[分配部の変形例]
図18は、分配部184の変形例を示す図である。本変形例の分配部184は、2つのデストリビュータ1842(第1デストリビュータ1842A及び第2デストリビュータ1842B)を備えている。第1デストリビュータ1842Aは、最終段ビームスプリッタ1834Bから出射される第1リターダ出射光183LO1を分配する。第2デストリビュータ1842Bは、最終段ビームスプリッタ1834Bから出射される第2リターダ出射光183LO2を分配する。
【0136】
すなわち、上述した
図6に示す分配部184の構成では、1つのデストリビュータ1842の互いに異なる2つの反射面のうち、第1反射面によって第1リターダ出射光183LO1を分割し、第2反射面によって第2リターダ出射光183LO2を分割する。一方、本変形例の分配部184は、第1リターダ出射光183LO1を分割する第1デストリビュータ1842Aと、第2リターダ出射光183LO2を分割する第2デストリビュータ1842Bとを備える点において、上述した
図6に示す分配部184の構成と異なる。
【0137】
本変形例のように構成された分配部184によれば、2つのデストリビュータ1842の回転速度をそれぞれ制御することができる。このため、本変形例のように構成された分配部184によれば、2つのデストリビュータ1842の回転速度を互いに異ならせることができ、パルス光の可干渉性が低減され、スペックル低減性能をより高めることができる。
【0138】
[デストリビュータと照明モジュールとの対応関係の変形例]
なお、上述した一例では、1つの照明モジュール16にパルス光を導光するデストリビュータ1842が1つである場合について説明したがこれに限られない。1つの照明モジュール16にパルス光を導光するデストリビュータ1842が複数であってもよい。デストリビュータ1842と照明モジュール16との対応関係の変形例について、
図19を参照して説明する。
【0139】
図19は、本実施形態の光源ユニット18と照明モジュール16との対応関係の変形例を示す図である。
本変形例において、デストリビュータ1842は、第1デストリビュータ1842Aと第2デストリビュータ1842Bとを含む。複数の照明モジュール16のそれぞれは、第1光ファイバ19Aを介して第1デストリビュータ1842Aから光が導光され、第2光ファイバ19Bを介して第2デストリビュータ1842Bから光が導光される。
つまり、本変形例においては、デストリビュータ1842と照明モジュール16とが、n対1(nは自然数。この一例では、n=2)で設けられる。
【0140】
本変形例のように構成された露光装置1によれば、n個(例えば、2つ)のデストリビュータ1842から分配される、状態が互いに異なるパルス光を、照明モジュール16に導光することができる。このため、本変形例のように構成された露光装置1によれば、照明モジュール16から出射されるパルス光の状態をより多様にすることができ、パルス光の可干渉性が低減され、スペックル低減性能をより高めることができる。
【0141】
図20は、本実施形態の光源ユニット18の第1変形例を示す図である。
本変形例の光源ユニット18は、一例として4つの光源部181(第1光源部181A~第4光源部181D)を備えている。また、本変形例の光源ユニット18は、リターダ183からデストリビュータ1842に対して2つのリターダ出射光183LO(第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2)を出射する。すなわち、本変形例の光源ユニット18は、4入力-2出力構成である。
【0142】
合成部182は、第1光源部181A及び第2光源部181Bについて、プリズムミラー1821、プリズムミラー1821A、プリズムミラー1821B、偏光ビームスプリッタ1822、波長板1823、プリズムミラー1825、ハーフプリズム1826A及びプリズムミラー1827 を備えている。プリズムミラー1821は、第1光源部181Aが出射するパルス光(s偏光)を偏光ビームスプリッタ1822に導光する。プリズムミラー1821A及びプリズムミラー1821Bは、第2光源部181Bが出射するパルス光(s偏光)を波長板1823に導光する。波長板1823は、第2光源部181Bが出射するパルス光(s偏光)の偏光状態を変化させパルス光(p偏光)を偏光ビームスプリッタ1822に導光する。
【0143】
合成部182は、第3光源部181C及び第4光源部181Dについても、第1光源部181A及び第2光源部181Bの構成に対応する構成を有する。すなわち、合成部182は、第3光源部181C及び第4光源部181Dからのパルス光をそれぞれ偏光ビームスプリッタ1822に導光する。
【0144】
ハーフプリズム1826Aには、第1光源部181A及び第2光源部181Bからの第1光と、第3光源部181C及び第4光源部181Dからの第2光とが入射する。ハーフプリズム1826Aは、第1光の一部を反射させ、第2光の一部を透過させ、それらの光を合成し、第1リターダ入射光183LI1を、リターダ183が備える入力段ビームスプリッタ183へ入射する。また、ハーフプリズム1826Aは、第1光の他部を透過させ、第2光の他部を反射させ、それらの光を合成する。合成された光は、第2リターダ入射光183LI2として、プリズムミラー1827で反射され、入力段ビームスプリッタ183へ入射される。
【0145】
リターダ183は、入力段ビームスプリッタ1834Aと、最終段ビームスプリッタ1834Bとの間の遅延光路によって、パルス光の時間軸の分布を変化させる。リターダ183は、時間軸の分布を変化させたパルス光を第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2として、分配部184に出射する。
【0146】
本変形例の分配部184は、2つのデストリビュータ1842(第1デストリビュータ1842A及び第2デストリビュータ1842B)を備えている。第1デストリビュータ1842Aは、最終段ビームスプリッタ1834Bから出射される第1リターダ出射光183LO1を分配する。第2デストリビュータ1842Bは、最終段ビームスプリッタ1834Bから出射される第2リターダ出射光183LO2を分配する。
【0147】
なお、合成部182は、プリズムミラー1827を構成として含まない、つまり第1光源部181A及び第2光源部181Bについて、プリズムミラー1821、プリズムミラー1821A、プリズムミラー1821B、偏光ビームスプリッタ1822、波長板1823、プリズムミラー1825、及びハーフプリズム1826Aを備えていてもよい。合成部がこのような構成の場合、リターダ183は、先述した構成に加えハーフプリズム1826Aとプリズムミラー1827とを構成として含む。そのように考えた場合、ハーフプリズム1826Aは、合成部182の一部であり、リターダ183の入力段ビームスプリッタであると言える。
図20で示された入力段ビームスプリッタ1834Aに入射される第1光と、プリズムミラーで反射された入力段ビームスプリッタ1834Aに入射される第2光とは、入力段ビームスプリッタ1834Aに入射されるまでの光路に差が生じており、ハーフプリズム1826Aとプリズムミラー1827とは、リターダ183の一部であることがわかる。この構成は、本変形例のみに限定されるものではなく、他の実施例、後述する他の変形例においても同様である。
【0148】
すなわち、本変形例の光源ユニット18は、複数の光源と、光学系と、照明系とを備えている。光学系は、分割部と、遅延光学系と、合成分割部(例えば、最終段ビームスプリッタ1834B)とを有している。
分割部は、複数の光源からそれぞれ出射されるパルス光を、第1パルス光と第2パルス光とに分割する。遅延光学系は、第1パルス光がとおる第1光路よりも長い第2光路へ第2パルス光を導く。合成部は、第1パルス光と遅延光学系をとおった前記第2パルス光とを合成する。
光学系は、合成部が合成したパルス光を光源の数(例えば、4つ)を上限とする数(例えば、第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2の2つ)にして出射する。
【0149】
また、光学系は、合成分割部が合成したパルス光を少なくとも2つに分割して出射するように構成されていてもよい。この場合、照明系は、分割されたパルス光をそれぞれ互いに異なるマスクへ導くことにより、少なくとも2つのマスクを照明する。
【0150】
すなわち、合成分割部は、複数の光源から出射されるパルス光の偏光特性に基づいてパルス光を合成する。
【0151】
このように構成された光源ユニット18によれば、複数のパルス光の時間軸の分布が互いに異なるものとなり、パルス光の可干渉性が低減されるため、スペックルの発生を抑制することができる。また、光源部181の数(例えば、4つ)よりも少ない数(例えば、2つ)のパルス光を出射するように構成された光源ユニット18によれば、複数の光源部181を備えることによってパルス光のパワーを強くしつつ、可干渉性が低減されたパルス光を出射することができる。
【0152】
なお、光源ユニット18は、分割部で分割された遅延光路上の所定位置と、合成部においてパルス光が合成される合成面とが光学的にほぼ共役となる位置に、分割部と合成部とを設けていてもよい。より具体的には、光源ユニット18は、ビームスプリッタ1834Cから非遅延側の光路に出射されたパルス光が次段のビームスプリッタ(例えば、最終段ビームスプリッタ1834B)に入射して合成・分割される位置と、ビームスプリッタ1834Cから遅延側の光路に出射されたパルス光の所定の位置(例えば、
図20に示す位置P5)とが、光学的にほぼ共役となる位置に、分割部と合成部とを設けていてもよい。 また、光源ユニット18は、分割部で分割された遅延光路上の所定位置(例えば、
図20に示す位置P5)と、合成部においてパルス光が合成される合成面(例えば、
図20に示す位置P4)とを光学的にほぼ共役とする不図示のリレーレンズを遅延光路上に備えていてもよい。これは、リターダを介すことで遅延光路が長く、たとえばビームスプリッタ1834Cの分割面と最終段ビームスプリッタ1834Bと分割面との間の距離が長くなるため、分割面どうしの間に一回共役点を設けることで、光をリレーしやすくするためである。
このように構成された光源ユニット18によれば、分割部で分割されて遅延光路に導光されるパルス光と、非遅延光路に導光されるパルス光とが、合成面において合成されやすくなり、スペックルをより低減させることができる。
【0153】
また、光源ユニット18は、複数の光源部181からそれぞれ入力段ビームスプリッタ1834Aにパルス光を入射させる各光路の光路長が、互いにほぼ等しくされていてもよい。
このように構成された光源ユニット18によれば、複数の光源部181からそれぞれ出射されるパルス光の時間軸の条件をそろえることができ、スペックル低減のためのパルス光の調整を容易にすることができる。
【0154】
また、光源ユニット18は、複数の光源部181からそれぞれ入力段ビームスプリッタ1834Aにパルス光を入射させる各光路の光路長が、互いに異なっていてもよい。
このように構成された光源ユニット18によれば、複数の光源部181から同時にパルス光が出射された場合であっても、出射されるパルス光どうしの時間軸の条件にばらつきを与えることができ、スペックル低減のためのパルス光の調整を容易にすることができる。
【0155】
図21は、本実施形態の光源ユニット18の第2変形例を示す図である。
本変形例の光源ユニット18は、一例として4つの光源部181(第1光源部181A~第4光源部181D)を備えている。また、本変形例の光源ユニット18は、リターダ183からデストリビュータ1842に対して2つのリターダ出射光183LO(第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2)を出射する。すなわち、本変形例の光源ユニット18は、4入力-2出力構成である。
【0156】
本変形例の光源ユニット18は、上述した第1変形例の偏光ビームスプリッタ1822及び波長板1823に代えて、三角プリズムミラー1828を備える。
合成部182は、第1光源部181A及び第2光源部181Bについて、プリズムミラー1821C、プリズムミラー1821D、三角プリズムミラー1828、プリズムミラー1825、ハーフプリズム1826A及びプリズムミラー1827を備えている。
プリズムミラー1821Cは、第1光源部181Aが出射するパルス光(s偏光)を三角プリズムミラー1828に導光する。プリズムミラー1821Dは、第2光源部181Bが出射するパルス光(s偏光)を三角プリズムミラー1828に導光する。
三角プリズムミラー1828は、第1光源部181Aが出射するパルス光と、第2光源部181Bが出射するパルス光とを、プリズムミラー1825を介してハーフプリズム1826Aに導光する。
【0157】
合成部182は、第3光源部181C及び第4光源部181Dについても、第1光源部181A及び第2光源部181Bの構成に対応する構成を有する。すなわち、合成部182は、第3光源部181C及び第4光源部181Dからのパルス光を、三角プリズムミラーを介してハーフプリズム1826Aに導光する。
【0158】
ハーフプリズム1826Aには、第1光源部181A及び第2光源部181Bからの第1光と、第3光源部181C及び第4光源部181Dからの第2光とが入射する。ハーフプリズム1826Aは、第1光の一部を反射させ、第2光の一部を透過させ、それらの光を合成し、第1リターダ入射光183LI1を、リターダ183が備える入力段ビームスプリッタ183へ入射する。また、ハーフプリズム1826Aは、第1光の他部を透過させ、第2光の他部を反射させ、それらの光を合成する。合成された光は、第2リターダ入射光183LI2として、プリズムミラー1827で反射され、入力段ビームスプリッタ183へ入射される。
すなわち、本変形例では、三角プリズムミラー1828が、複数の光源部181からのパルス光を視野合成して、ハーフプリズム1826Aに入射させる。ここで、視野合成とは、パルス光の各光路どうしを、換言すると光軸を互いに近接させることにより、パルス光を合成することである。また、視野合成とは、パルス光の各光路どうしを単一の光学系によってリレー可能なように近接させることである、ともいえる。
【0159】
すなわち、本変形例の光源ユニット18は、三角プリズムミラー1828を含む導光部を備えている。導光部は、複数の光源(例えば、第1光源部181A及び第2光源部181B)からそれぞれ出射されるパルス光の光路どうしを分割部(例えば、ハーフプリズム1826A)に入射しうる範囲内に互いに近接させて、パルス光を分割部に導光する。
【0160】
このように構成された光源ユニット18によれば、複数のパルス光の時間軸の分布が互いに異なるものとなり、パルス光の可干渉性が低減されるため、スペックルの発生を抑制することができる。また、光源部181の数(例えば、4つ)よりも少ない数(例えば、2つ)のパルス光を出射するように構成された光源ユニット18によれば、複数の光源部181を備えることによってパルス光のパワーを強くしつつ、可干渉性が低減されたパルス光を出射することができる。
また、このように構成された光源ユニット18によれば、光学部品のレーザ耐性や寿命を考慮して、三角プリズムミラー1828によってパルス光の光路どうしを積極的にずらすこともできる。パルス光の光路どうしがずらされる(例えば、パルス光の光路間の距離が大きくされる)ことにより、例えば、ハーフプリズム1826Aなどの光学部品において、複数のパルス光のパワーが集中する程度を低下させることができ、光学部品の寿命を延ばすことができる。
【0161】
図22は、本実施形態の光源ユニット18の第3変形例を示す図である。
本変形例の光源ユニット18は、一例として8つの光源部181(第1光源部181A~第8光源部181H)を備えている。また、本変形例の光源ユニット18は、リターダ183からデストリビュータ1842に対して2つのリターダ出射光183LO(第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2)を出射する。すなわち、本変形例の光源ユニット18は、8入力-2出力構成である。
【0162】
本変形例の光源ユニット18は、上述した第1変形例における偏光ビームスプリッタ1822を用いたパルス光の偏光特性に基づく合成と、第2変形例における三角プリズムミラー1828を用いた視野合成とを組み合わせることによって、パルス光を合成する。
【0163】
このように構成された光源ユニット18によれば、より多く(例えば、8つ)の光源部181からのパルス光を合成することができるため、パルス光の可干渉性がより低減されて、スペックルの発生を抑制することができる。
【0164】
図23は、本実施形態の光源ユニット18の第4変形例を示す図である。
本変形例の光源ユニット18は、一例として8つの光源部181(第1光源部181A~第8光源部181H)を備えている。また、本変形例の光源ユニット18は、リターダ183からデストリビュータ1842に対して2つのリターダ出射光183LO(第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2)を出射する。すなわち、本変形例の光源ユニット18は、8入力-2出力構成である。
本変形例の光源ユニット18は、上述した第2変形例における三角プリズムミラー1828を用いた視野合成によって、8つのパルス光を合成する。
【0165】
本変形例のリターダ183は、上述した第2変形例におけるリターダ183のハーフプリズム1826Bに代えて、偏光ビームスプリッタ1826C、偏光ビームスプリッタ1826D、波長板1823A及び波長板1823Bを備える。
波長板1823Aは、遅延光路から偏光ビームスプリッタ1826Cに入射するパルス光の偏光状態を変化させる。偏光ビームスプリッタ1826Cにおいて、非遅延光路から入射したパルス光と、波長板1823Aから入射したパルス光とが合成され、合成されたパルス光が同図に示す位置P6に出射される。
波長板1823Bは、位置P6から入射するパルス光(つまり、偏光ビームスプリッタ1826Cにおいて合成されたパルス光)の偏光状態を変化させる。
偏光ビームスプリッタ1826Dは、波長板1823Bから入射するパルス光の偏光状態に基づいて、パルス光を第1リターダ出射光183LO1及び第2リターダ出射光183LO2に分割して出射する。
【0166】
なお、本変形例において、波長板1823B及び偏光ビームスプリッタ1826Dを備えずに、位置P6のパルス光(つまり、偏光ビームスプリッタ1826Cにおいて合成されたパルス光)をデストリビュータ1842に出射する構成であってもよい。この構成の場合には、光源ユニット18は、8入力-1出力構成である。
【0167】
なお、上述した実施形態およびその変形例において、三角プリズムミラー1828によって視野合成を実現するものとして説明したが、これに限られない。例えば、上述した偏光ビームスプリッタによって視野合成を実現してもよい。また、例えば、偏光ビームスプリッタや非偏光型のハーフプリズムにおいて、パルス光を分割する分割面へのパルス光の入射位置をずらすことによって視野合成を実現してもよい。
【0168】
なお、上述したパルス光の可干渉性を低減する手法は、スキャン露光する場合の積算像のコントラスト低下を招く場合がある。このスキャン露光する場合の積算像のコントラスト低下は、露光している間に像が進むことによる像の流れとして発生する。その像の流れ量は、解像度のおよそ1/3~1/4程度に収めることが好ましい。
例えば、スキャン露光する場合の積算像のコントラスト低下を招く像の流れ量を解像度の1/4に収めるとした場合の、パルス光の許容遅延時間Δtは、解像度を2μm、スキャン速度を1000mm/sとすると、Δt=2/4/1000=0.5μsecである。ここで、パルス発光幅を4nsとすると、最大125(≒128)パルスに分割可能である。
また、例えば、スキャン露光する場合の積算像のコントラスト低下を解像度の1/3に収めるとした場合の、パルス光の許容遅延時間Δtは、解像度を2μm、スキャン速度を1000mm/sとすると、Δt=2/3/1000=0.67μsecである。
このように、リターダ183の遅延光学系による遅延させたパルス光が合成された群パルス光のパルス幅が、露光装置1の走査速度による像の流れの積が解像度の1/3以下となるように設定されると好ましい。
【0169】
例えば、露光装置1において、投影モジュール17(投影光学系)に対してステージ14が所定速度で相対移動する場合に、第1パルス光の発光タイミングである第1時間と、第2パルス光の発光タイミングである第2時間との時間差をδ、所定速度をV、解像度をRとすると、R/3<V・δを満たす。
【0170】
また、第1光源部181A及び第2光源部181Bは、λ>Δ×(NA^2)を満たす第1パルス光及び第2パルス光を射出する。ここで、λは第1パルス光と第2パルス光との波長差を、Δは第1パルス光と第2パルス光との波長差によって発生する投影光学系の色収差を、NAは投影光学系の開口数を示す。^2は2乗を意味する。
【0171】
なお、上記実施形態で引用した露光装置などに関する全ての米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0172】
以上説明したように、本発明の照明装置、露光装置は、リソグラフィ工程において物体に照明光を照射して露光するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイ製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。
【符号の説明】
【0173】
1…露光装置、16…照明モジュール、1621…光変調部、17…投影モジュール、18…光源ユニット、181…光源部、182…合成部、183…リターダ、184…分配部、19…光ファイバ、21…制御部