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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】無線通信方法、及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/563 20230101AFI20250128BHJP
   H04W 72/54 20230101ALI20250128BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20250128BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20250128BHJP
【FI】
H04W72/563
H04W72/54
H04W72/0446
H04W28/06 130
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023528923
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2021023229
(87)【国際公開番号】W WO2022264412
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 章太
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-014238(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD方式の無線通信システムが、
通信エリアが重複し得る他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する取得ステップと、
取得した前記TDDコンフィグレーションに基づいて、前記他の無線通信システムと、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なる第1のスロットのうち、前記無線通信システムの上りスロットと前記他の無線通信システムの下りスロットのタイミングが重なる第3のスロットの優先度、及び前記無線通信システムの下りスロットと前記他の無線通信システムの上りスロットのタイミングが重なる第4のスロットの優先度が、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならない第2のスロットの優先度より低くなるように、前記無線通信システムのスロットの優先度を決定する決定ステップと、
前記スロットの優先度に従って、前記無線通信システムのスロットにリソースを割り当てる割当ステップと、
を実行する、無線通信方法。
【請求項2】
記決定ステップは、前記第3のスロットの優先度と前記第4のスロットの優先度を異なる優先度に決定する、
請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記割当ステップは、パケットの優先度が高いリソースから順に、前記スロットの優先度がより高いスロットに割り当てる、請求項1又は2に記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記取得ステップは、前記他の無線通信システムが送信する電波をスヌーピングすることにより、前記他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記取得ステップは、前記他の無線通信システムとリソースの割当情報を共有し、
前記無線通信システムは、前記他の無線通信システムが高優先パケットを送信するスロットと、前記無線通信システムが前記高優先パケットより優先度が低い低優先パケットを送信するスロットのタイミングが重なる場合、前記低優先パケットの送信をキャンセルする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記他の無線通信システムは、前記無線通信システムと同期し、同一の周波数帯を使用する無線通信システムである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項7】
TDD方式の無線通信システムであって、
通信エリアが重複し得る他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する取得部と、
取得した前記TDDコンフィグレーションに基づいて、前記他の無線通信システムと上りスロットと下りスロットのタイミングが重なる第1のスロットのうち、前記無線通信システムの上りスロットと前記他の無線通信システムの下りスロットのタイミングが重なる第3のスロットの優先度、及び前記無線通信システムの下りスロットと前記他の無線通信システムの上りスロットのタイミングが重なる第4のスロットの優先度が、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならない第2のスロットの優先度より低くなるように、前記無線通信システムのスロットの優先度を決定する優先度決定部と、
前記スロットの優先度に従って、前記無線通信システムのスロットにリソースを割り当てるリソース割当部と、
を有する、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方法、及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
TDD(Time Division Duplex)方式の無線通信システムにおいて、チャネル間の干渉を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ローカル5G(5th. Generation)システムにおいて、無線フレームの開始タイミング、又は上下リンクの通信パターンが一致していない場合に、基地局と移動局間で干渉を生じて通信品質が低下することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-202428号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】クアルコムジャパン合同会社、"ローカル5Gの非同期運用について"、2020年03月16日、総務省、[平成3年06月03日検索]、インターネット<URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000676472.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TDD方式の無線通信システムにおいて、上りスロットと下りスロットと間の干渉は、上りスロット同士、又は下りスロット同士の干渉と比較して、SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)特性等の通信品質が大きく劣化するという問題がある。
【0007】
本発明の実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、TDD方式の無線通信システムにおいて、上りスロットと下りスロットとの間で干渉が発生して、通信品質が劣化することを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の実施形態に係る無線通信方法は、TDD方式の無線通信システムが、通信エリアが重複し得る他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する取得ステップと、取得した前記TDDコンフィグレーションに基づいて、前記他の無線通信システムと、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なる第1のスロットのうち、前記無線通信システムの上りスロットと前記他の無線通信システムの下りスロットのタイミングが重なる第3のスロットの優先度、及び前記無線通信システムの下りスロットと前記他の無線通信システムの上りスロットのタイミングが重なる第4のスロットの優先度が、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならない第2のスロットの優先度より低くなるように、前記無線通信システムのスロットの優先度を決定する決定ステップと、前記スロットの優先度に従って、前記無線通信システムのスロットにリソースを割り当てる割当ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、TDD方式の無線通信システムにおいて、上りスロットと下りスロットとの間で干渉が発生して、通信品質が劣化することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る無線通信システムのシステム構成の例を示す図である。
図2A】本実施形態の課題について説明するための図(1)である。
図2B】本実施形態の課題について説明するための図(2)である。
図3】本実施形態の概要について説明するための図である。
図4】本実施形態に係る無線通信システムの機能構成の例を示す図である。
図5】実施例1に係る無線通信システムの処理の例を示すフローチャートである。
図6】実施例2に係る無線通信システムの処理の例を示すフローチャートである。
図7】実施例3に係る優先度の決定処理の例を示すフローチャートである。
図8】コンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施形態)を説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
【0012】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る無線通信システムのシステム構成の例を示す図である。無線通信システム1は、例えば、5G(5th. Generation)等のTDD(Time Division Duplex)方式の無線通信システムであり、制御装置10、無線リソース制御部100、基地局110、及び移動局112等を含む。
【0013】
制御装置10は、1つ以上の基地局110を制御する装置、又は複数の装置を含むシステムである。無線リソース制御部100は、例えば、制御装置10に含まれ、1つ以上の基地局110の無線リソースの割当を集中制御する役割を担う。基地局110は、例えば、5G等のTDD方式の無線通信で、1つ以上の移動局112と通信を行う。移動局112は、例えば、ユーザ等が所持する移動可能な無線局である。
【0014】
制御装置10、及び無線リソース制御部100は、基地局110の近傍に配置しても良いし、ネットワークを介して、遠方に配置しても良い。基地局110と制御装置10は、例えば、光伝送ネットワーク等の有線通信により通信可能に接続することが望ましい。ただし、これに限られず、基地局110と制御装置10は、例えば、IAB(Integrated Access Backhaul)、又はWigig等の無線通信により通信可能に接続されているものであっても良い。
【0015】
他の無線通信システム2は、無線通信システム1と通信エリアが重複し得る他の無線通信システムの一例である。図1の例では、無線通信システム1の基地局110の通信エリア111の一部と、他の無線通信システム2の基地局120の通信エリア121の一部とが重複していることを示している。
【0016】
(課題について)
図2A、2Bは、本実施形態の課題について説明するための図である。非特許文献1には、ローカル5Gにおいて、通信エリアが重複し得る2つの無線通信システムにおいて、無線フレームの開始タイミング、又は上下リンクの通信パターンが不一致である場合に、基地局と移動局との間で干渉を生じることが示されている。
【0017】
図2Aは、無線通信システム1の無線フレームの開始タイミングと、他の無線通信システム2の無線フレームの開始タイミングとが異なる場合のTDDのUplink-Downlink configuration(以下、TDDコンフィグレーションと呼ぶ)の一例を示している。
【0018】
図2Aの例では、無線通信システム1は、時刻t01に無線フレームを開始し、他の無線通信システム2は、時刻t01とは異なる時刻t02に無線フレームを開始している。また、各無線フレーム内の「D」は下りスロット(Downlink)、「U」は上りスロット(Uplink)、「S」は、下りスロットから上りスロットへの切り替え期間を含む特別スロットを示している。また、1~20の番号は、スロット番号を示している。
【0019】
図2Aの例では、無線通信システム1のTDDコンフィグレーション201と、他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション202は、「D」、「U」、「S」で表される通信パターンが一致しているが、開始タイミングが不一致となっている。
【0020】
この場合、例えば、無線通信システム1のスロット番号9、10、19、20の上りスロットのタイミングと、他の無線通信システム2のスロット番号6、7、16、17の下りスロットのタイミングは、少なくとも一部が重なっていることが判る。同様に、無線通信システム1のスロット番号11、12の下りスロットのタイミングと、他の無線通信システム2のスロット番号9、10の上りスロットのタイミングは、少なくとも一部が重なっていることが判る。
【0021】
図2Bは、無線通信システム1の通信パターンと、他の無線通信システム2の無線フレームの通信パターンが異なる場合のTDDコンフィグレーションの一例を示している。
【0022】
図2Bの例では、無線通信システム1は、時刻t01に無線フレームを開始し、他の無線通信システム2は、時刻t01と同じ時刻t02に無線フレームを開始している。つまり、無線通信システム1と他の無線通信システム2は、無線フレームの開始タイミングが一致している。一方、無線通信システム1のTDDコンフィグレーション201と、他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション202は、「D」、「U」、「S」で表される通信パターンが不一致となっている。
【0023】
この場合、例えば、無線通信システム1のスロット番号9、10の上りスロットのタイミングと、他の無線通信システム2のスロット番号9、10の下りスロットのタイミングが重なっていることが判る。同様に、無線通信システム1のスロット番号4、5、12、16の下りスロットのタイミングと、他の無線通信システム2のスロット番号4、5、12、16の上りスロットのタイミングが重なっていることが判る。
【0024】
このように、無線通信システム1と他の無線通信システム2において、無線フレームの開始タイミング、又は上下リンクの通信パターンが不一致である場合に、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なり、干渉が発生する。TDD方式の無線通信システム1において、上りスロットと下りスロットと間の干渉は、上りスロット同士、又は下りスロット同士の干渉と比較して、SINR特性等の通信品質が大きく劣化する。
【0025】
上り信号同士、又は下り信号同士が衝突する場合には、設計時にSINRを考慮して運用すれば、ある程度の分離が可能である。例えば、5Gの無線通信システムでは、上り信号同士、又は下り信号同士は、参照信号、又は同期信号を直交させること等により、衝突した場合のSINRの劣化を低減することができる。
【0026】
一方、上り信号と下り信号が衝突した場合、同様の手法によりSINRの劣化を低減することはができない。特に、移動局112におけるSINRは、移動局112の位置関係により、大きく劣化する場合がある。
【0027】
そこで、本実施形態に係る無線通信システム1は、上りスロットと下りスロットとの間で干渉が発生して、通信品質が劣化することを低減する機能を有している。
【0028】
(本実施形態の概要)
図3は、本実施形態の概要について説明するための図である。ここでは、他の無線通信システム2は、無線通信システム1とクロックが同期し、同一の周波数帯を使用する無線通信システムであるものとする。また、無線通信システム1は、図3に示すようなTDDコンフィグレーション301を有しており、無線フレームの開始時刻t0が、他の無線通信システム2の無線フレームの開始時刻と一致しているものとする。
【0029】
本実施形態に係る無線通信システム1は、例えば、次の手順で無線リソースを割り当てる。
手順1)無線通信システム1は、通信エリアが重複し得る他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション302を取得する。例えば、無線通信システム1は、スヌーピング、又は手入力等により、他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション302を取得する。
【0030】
手順2)無線通信システム1は、取得したTDDコンフィグレーション302に基づいて、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なるスロット(以下、第1のスロットと呼ぶ)を抽出する。また、無線通信システム1は、第1のスロットの優先度が、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならないスロット(以下、第2のスロットと呼ぶ)の優先度より低くなるように、無線通信システム1のスロットの優先度を決定する。
【0031】
例えば、図3の例では、無線通信システム1のスロット番号9、10、19、20の下りスロットのタイミングは、他の無線通信システム2のスロット番号9、10、19、209の上りスロットのタイミングと重なっている。従って、スロット番号9、10、19、20のスロットが第1のスロットとなる。一方、無線通信システム1のスロット番号1-8、11-18のスロットは、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なっていないので、第2のスロットとなる。
【0032】
この場合、無線通信システム1は、第1のスロットの優先度を下げる、又は第2のスロットの優先度を上げることにより、第1のスロットの優先度が、第2のスロットの優先度が低くなるように、各スロットの優先度を決定する。
【0033】
手順3)無線通信システム1は、決定した各スロットの優先度に従って、無線通信システム1のスロットにリソースを割り当てる。例えば、無線通信システム1は、パケットの優先度が高いリソースから順に、スロットの優先度がより高いスロットに割り当てていく。
【0034】
上記の手順により、スロットの優先度が高いスロット(上り信号と下り信号との干渉が発生しないスロット)から順にスロットを使用するので、上りスロットと下りスロットとの間で干渉が発生して、通信品質が劣化することを低減することができる。
【0035】
<無線通信システムの機能構成>
図4は、本実施形態に係る無線通信システムの機能構成の例を示す図である。
【0036】
(制御装置の機能構成)
制御装置10は、例えば、コンピュータの構成を備えており、当該コンピュータが所定のプログラムを実行することにより、無線リソース制御部100を実現している。なお、無線リソース制御部100の機能のうち、少なくとも一部はハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0037】
無線リソース制御部100は、図3で説明した手順1~3を実行することにより、無線通信システム1の無線フレームの各スロットにリソースを割り当てる。無線リソース制御部100は、例えば、図4に示すように、取得部401、優先度決定部402、及びリソース割当部403を含む。
【0038】
取得部401は、通信エリアが重複し得る他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーションを取得する。例えば、取得部401は、基地局110を制御して、他の無線通信システム2の基地局120が送信する電波421をモニタリングして、図3に示すような、他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション302を取得する。
【0039】
或いは、取得部401は、例えば、管理者等が、エアモニタ等を用いて取得した他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション302を、管理者等による手入力、又はエアモニタから出力されるデータ等により取得するものであっても良い。
【0040】
また、無線通信システム1と他の無線通信システム2が、リソース割当情報を共有する場合(基地局間協調ありの場合)、取得部401は、他の無線通信システム2から、リソース割当情報を取得する。このリソース割当情報には、例えば、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なるスロットの使用予定の有無、優先度等、及びTDDコンフィグレーション等の情報が含まれる。
【0041】
優先度決定部402は、取得部401が取得した他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーションに基づいて、第1のスロットの優先度が、第2のスロットの優先度より低くなるように、無線通信システム1の各スロットの優先度を決定する。ここで、第1のスロットは、前述したように、他の無線通信システム2と、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なるスロットであり、第2のスロットは、他の無線通信システム2と、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならないスロットである。
【0042】
例えば、優先度決定部402は、第1のスロットの優先度を、第2のスロットの優先度より1段階下げることにより、第1のスロットの優先度が、第2のスロットの優先度が低くなるように、無線通信システム1の各スロットの優先度を決定しても良い。或いは、優先度決定部402は、第2のスロットの優先度を、第1のスロットの優先度より1段階上げることにより、第1のスロットの優先度が、第2のスロットの優先度が低くなるように、無線通信システム1の各スロットの優先度を決定しても良い。
【0043】
なお、第1のスロットには、無線通信システム1の上りスロットと他の無線通信システム2の下りスロットのタイミングが重なるスロット(以下、第3のスロットと呼ぶ)が含まれ得る。また、第1のスロットには、無線通信システム1の下りスロットと他の無線通信システム2の上りスロットのタイミングが重なるスロット(以下、第4のスロットと呼ぶ)が含まれ得る。
【0044】
優先度決定部402は、第1のスロットに、第3のスロット第4のスロットが含まれる場合、第3のスロットの優先度と第4のスロットの優先度とを異なる優先度に決定しても良い。例えば、優先度決定部402は、第3のスロットの優先度が、第4のスロットの優先度より高くなるように決定しても良い。或いは、優先度決定部402は、第3のスロットの優先度が、第4のスロットの優先度より低くなるように決定しても良い。
【0045】
リソース割当部403は、優先度決定部402が決定したスロットの優先度に従って、無線通信システム1のスロットにリソースを割り当てる。例えば、リソース割当部403は、パケットの優先度が高いリソースから順に、スロットの優先度がより高いスロットに割り当てていく。
【0046】
(基地局の機能構成)
基地局110は、例えば、図4に示すように、無線送受信部411、信号復調部412、及び信号生成部413等を有する。
【0047】
無線送受信部411は、例えば、5G等のTDD方式の無線通信規格に基づいて、1つ以上の移動局112と無線信号の送受信を行う。好ましくは、無線送受信部411は、他の無線通信システム2の基地局120が送信する無線信号の受信、又は基地局120と無線信号の送受信を行う。
【0048】
信号復調部412は、無線送受信部411が受信した無線信号を復調して、無線信号に含まれるデータを取得する。信号生成部413は、無線リソース制御部100からのリソース割当に従って、送信信号を生成して、無線送受信部411に出力する。
【0049】
上記の構成により、基地局110は、制御装置10からの制御に従って、TDD方式の無線通信を行う。
【0050】
なお、図4に示した無線通信システム1の機能構成は一例である。例えば、図4において、無線リソース制御部100に含まれる取得部401の一部、又は全部は、基地局110に設けられていても良い。また、無線リソース制御部100に含まれる取得部401、優先度決定部402、及びリソース割当部403のうち、少なくとも一部は、無線通信システム1に含まれる、基地局110、及び制御装置10以外の装置が有していても良い。要するに、取得部401、優先度決定部402、及びリソース割当部403は、無線通信システム1が有していれば良く、無線通信システム1内のいずれの装置に設けられていても良い。
【0051】
また、図4に示した機能構成は、無線通信システム1に含まれる様々な機能構成のうち、本実施形態の説明に必要な機能構成を示すものであり、基地局110、及び制御装置10は、一般的な基地局、及び制御装置が備える様々な機能構成をさらに有していても良い。
【0052】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る無線通信方法の処理の流れについて、複数の実施例を例示して説明する。
【0053】
[実施例1]
図5は、実施例1に係る無線通信システムの処理の例を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS501において、無線通信システム1の取得部401は、通信エリアが重複し得る他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーションを取得する。例えば、取得部401は、スヌーピング、又は手入力等により、図3に示すような他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション302を取得する。無線通信システム2のTDDコンフィグレーション302をスヌーピングにより取得する際は、例えば、無線通信システム2のPBCH(Physical Broadcast Channel)に記載のMIB(Master Information Block)およびPDCCH(Physical Downlink Control Channel)に記載のDCI(Downlink Control Information)を解読して、PDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)に記載のSIB1(System Information Block Type1)を解読して、tdd-UL-DL-ConfigurationCommonを取得しても良い。各メッセージの共有用に、専用のUE_ID等を予め定めておき、これを利用してメッセージを解読しても良い。メッセージの解読は、無線通信システム1のUEが行って、無線通信システム1の基地局に通知しても良い。
【0055】
ステップS502において、無線通信システム1の優先度決定部402は、上りと下りが衝突するスロット(第1のスロット)の優先度を、上りと下りが衝突しないスロット(第2のスロット)の優先度より下げて、スロットの優先度を決定する。
【0056】
ここで、第1のスロットは、前述したように、他の無線通信システム2と、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なるスロットであり、第2のスロットは、他の無線通信システム2と、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならないスロットである。
【0057】
図3の例では、優先度決定部402は、例えば、無線通信システム1の下りスロットと、他の無線通信システム2の上りスロットのタイミングが重なるスロット番号9、10、19、20のスロットの優先度を、他のスロットより低く決定する。或いは、優先度決定部402は、他のスロット(スロット番号1-8、11-18のスロット)の優先度を、スロット番号9、10、19、20のスロットの優先度より高く決定しても良い。
【0058】
ステップS503において、無線通信システム1のリソース割当部403は、パケットの優先度が高いリソースから順に、スロットの優先度が高いスロットに割り当てる。
【0059】
図5の処理により、無線通信システム1は、特に下り信号のトラフィックが比較的少なく、回線利用率が低いときに、上り信号と下り信号が衝突する(タイミングが重なる)頻度を効果的に低減することができる。これにより、無線通信システム1は、再送処理が生じる回数を低減し、回線の利用効率を向上することができる。
【0060】
[実施例2]
図6は、実施例2に係る無線通信システムの処理の例を示すフローチャートである。この処理は、無線通信システム1が、他の無線通信システム2とリソース割当状況を共有する場合の処理の一例を示している。なお、ここでは、実施例1と同様の処理に対する詳細な説明は省略する。
【0061】
ステップS601において、無線通信システム1の取得部401は、通信エリアが重複し得る他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーション、及びリソース割当情報を取得する。例えば、取得部401は、基地局110を制御して、リソースの割当情報(例えば、上り下りが衝突するリソースの使用予定の有無等)を、他の無線通信システム2の基地局120と送受信する。このとき、他の無線通信システム2のTDDコンフィグレーションは、リソースの割当情報に含まれていても良い。
【0062】
ステップS602において、無線通信システム1の優先度決定部402は、実施例1と同様に、上りと下りが衝突するスロット(第1のスロット)の優先度を、上りと下りが衝突しないスロット(第2のスロット)の優先度より下げて、スロットの優先度を決定する。
【0063】
ステップS603において、無線通信システム1のリソース割当部403は、実施例1と同様に、パケットの優先度が高いリソースから順に、スロットの優先度が高いスロットに割り当てる。
【0064】
ステップS604において、リソース割当部403は、他の無線通信システム2が高優先パケットを送信するスロットと、無線通信システム1が低優先パケットを送信するスロットのタイミングが重なる場合、低優先パケットの送信をキャンセルする。ここで、低優先パケットは、高優先パケットより低い優先度を有するパケットである。
【0065】
図5の処理により、無線通信システム1は、特に下り信号のトラフィックが比較的少なく、回線利用率が低いときに、上り信号と下り信号が衝突する(タイミングが重なる)頻度を効果的に低減することができる。また、無線通信システム1は、他の無線通信システム2が高優先パケットを送信するスロットと、タイミングが重なる低優先パケットの送信をキャンセルすることにより、他の無線通信システム2の高優先パケットへの干渉を低減することができる。
【0066】
[実施例3]
図7は実施例3に係る優先度の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、図5のステップS502、又は図6のステップS602で、優先度決定部402が実行する優先度の決定処理の別の一例を示している。優先度決定部402は、図5のステップS502、又は図6のステップS602において、図7に示す処理を、例えば、無線通信システム1の各スロットに対して実行する。
【0067】
ステップS701において、優先度決定部402は、処理対象となるスロットが、上りと下りが衝突するスロット(上りスロットのタイミングと下りスロットのタイミングが重なるスロット)であるか否かを判断する。上りと下りが衝突するスロットである場合、優先度決定部402は、処理をステップS702に移行させる。一方、上りと下りが衝突するスロットでない場合、優先度決定部402は、図7の処理を終了させる。
【0068】
ステップS702において、優先度決定部402は、当該スロットが、無線通信システム1の上りスロットであるか、下りスロットであるかを判断する。例えば、図2Bにおいて、スロット番号4、5のスロットは、上りと下りが衝突するスロットであり、かつ無線通信システム1のスロットが「D」なので、優先度決定部402は、当該スロットが、無線通信システム1の下りスロットであると判断する。一方、図2Bにおいて、スロット番号9、10のスロットは、上りと下りが衝突するスロットであり、かつ無線通信システム1のスロットが「U」なので、優先度決定部402は、当該スロットが、無線通信システム1の上りスロットであると判断する。
【0069】
当該スロットが上りスロットである場合、優先度決定部402は、処理をステップS703に移行させる。一方、当該スロットが下りスロットである場合、優先度決定部402は、処理をステップS704に移行させる。
【0070】
ステップS703に移行すると、優先度決定部402は、当該スロットの優先度を、上りと下りが衝突しないスロットより1段階下げる。一方、ステップS704に移行すると、当該スロットの優先度を、上りと下りが衝突しないスロットより2段階下げる。
【0071】
図7の処理により、優先度決定部402は、上りと下りが衝突しないスロットの優先度が最も高く、上りと下りが衝突するスロットのうち、衝突スロットが下りであるスロットの優先度が最も低くなるように、スロットの優先度を3段階に決定することができる。
【0072】
なお、図7に示す処理は一例である。例えば、優先度決定部402は、上りと下りが衝突するスロットのうち、衝突スロットが上りであるスロットの優先度が最も低くなるように、スロットの優先度を3段階に決定しても良い。
【0073】
<ハードウェアの構成>
本実施形態に係る制御装置10、基地局110、及び無線通信システム1等は、例えば、図8に示すようなコンピュータ800のハードウェア構成を備える。また、本実施形態に係る無線通信システム1は、1つ以上のコンピュータ800に、本実施形態の処理内容を記述したプログラムを実行させることにより、取得部401、優先度決定部402、及びリソース割当部403等を実現している。
【0074】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0075】
図8は、コンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。図8の例では、コンピュータ800は、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージデバイス1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、及びバスB等を有する。
【0076】
プロセッサ1001は、例えば、所定のプログラムを実行することにより、様々な機能を実現するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置である。メモリ1002は、コンピュータ800が読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む。ストレージデバイス1003は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、各種の光ディスク、及び光磁気ディスク等を含み得る。
【0077】
通信装置1004は、無線、又は有線のネットワークを介して他の装置と通信を行うための1つ以上のハードウェア(送受信デバイス)を含む。入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサ等)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ、LEDランプ等)である。なお、入力装置1005と出力装置1006とは、一体となった構成(例えば、タッチパネルディスプレイ等の入出力装置)であっても良い。
【0078】
バスBは、上記の各構成要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号、及び各種の制御信号等を伝送する。なお、プロセッサ1001は、CPUに加えて(又は代えて)、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むものであっても良い。
【0079】
また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータ800にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。さらに、無線通信システム1の各機能の一部、又は全部は、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであっても良い。
【0080】
<実施形態の効果>
本実施形態に係る無線通信システム1は、スロットの優先度が高い(上り下り信号が衝突しない)スロットから順に使用する。従って、特に下り信号のトラフィックが比較的少なく、回線利用率が低いときに、上りと下りの信号衝突の頻度を低減し、再送処理が生じる回数を低下し、回線利用効率を向上する。
【0081】
例えば、図3において、1つのスロットの期間が1msであり、無線通信システム1の下り回線利用率が5/7以下、かつ下りの遅延、ジッタ要求が2ms以上を許容する場合、上り下り信号の衝突を回避することができる。或いは、他の無線通信システム2の上り回線利用率が1/2以下、かつ遅延、ジッタ要求が8ms以上を許容する場合に、上り下りの信号衝突を回避することができる。また、上記の範囲に収まらず、上り下りの信号が衝突する可能性があるスロットを使用する場合であっても、一部のスロットを使用しないことで衝突の確率を低減することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態によれば、TDD方式の無線通信システムにおいて、上りスロットと下りスロットとの間で干渉が発生して、通信品質が劣化することを低減することができる。
【0083】
<実施形態のまとめ>
本明細書には、少なくとも下記各項の無線通信方法、及び無線通信システムが開示されている。
(第1項)
TDD方式の無線通信システムが、
通信エリアが重複し得る他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する取得ステップと、
取得した前記TDDコンフィグレーションに基づいて、前記他の無線通信システムと、上りスロットと下りスロットのタイミングが重なる第1のスロットの優先度が、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならない第2のスロットの優先度より低くなるように、前記無線通信システムのスロットの優先度を決定する決定ステップと、
前記スロットの優先度に従って、前記無線通信システムのスロットにリソースを割り当てる割当ステップと、
を実行する、無線通信方法。
(第2項)
前記第1のスロットは、前記無線通信システムの上りスロットと前記他の無線通信システムの下りスロットのタイミングが重なる第3のスロットと、前記無線通信システムの下りスロットと前記他の無線通信システムの上りスロットのタイミングが重なる第4のスロットを含み、
前記決定ステップは、前記第3のスロットの優先度と前記第4のスロットの優先度を異なる優先度に決定する、
第1項に記載の無線通信方法。
(第3項)
前記割当ステップは、パケットの優先度が高いリソースから順に、前記スロットの優先度がより高いスロットに割り当てる、第1項又は第2項に記載の無線通信方法。
(第4項)
前記取得ステップは、前記他の無線通信システムが送信する電波をスヌーピングすることにより、前記他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する、第1項乃至第3項のいずれか一項に記載の無線通信方法。
(第5項)
前記取得ステップは、前記他の無線通信システムとリソースの割当情報を共有し、
前記無線通信システムは、前記他の無線通信システムが高優先パケットを送信するスロットと、前記無線通信システムが前記高優先パケットより優先度が低い低優先パケットを送信するスロットのタイミングが重なる場合、前記低優先パケットの送信をキャンセルする、
第1項1乃至第3項のいずれか一項に記載の無線通信方法。
(第6項)
前記他の無線通信システムは、前記無線通信システムと同期し、同一の周波数帯を使用する無線通信システムである、第1項1乃至第5項のいずれか一項に記載の無線通信方法。
(第7項)
TDD方式の無線通信システムであって、
通信エリアが重複し得る他の無線通信システムのTDDコンフィグレーションを取得する取得部と、
取得した前記TDDコンフィグレーションに基づいて、前記他の無線通信システムと上りスロットと下りスロットのタイミングが重なる第1のスロットの優先度が、上りスロットと下りスロットのタイミングが重ならない第2のスロットの優先度より低くなるように、前記無線通信システムのスロットの優先度を決定する優先度決定部と、
前記スロットの優先度に従って、前記無線通信システムのスロットにリソースを割り当てるリソース割当部と、
を有する、無線通信システム。
【0084】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 無線通信システム
2 他の無線通信システム
111、121 通信エリア
302 TDDコンフィグレーション
401 取得部
402 優先度決定部
403 リソース割当部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8