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特許7627092射出成形用金型及び熱硬化性組成物の射出成形方法
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  • 特許-射出成形用金型及び熱硬化性組成物の射出成形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】射出成形用金型及び熱硬化性組成物の射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20250129BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20250129BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20250129BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20250129BHJP
   C08F 230/02 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/00
C08F290/06
C08F220/20
C08F230/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020098752
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191820
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 保也
(72)【発明者】
【氏名】小幡 寛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克樹
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-172969(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105441(WO,A1)
【文献】特開2018-070820(JP,A)
【文献】特開2016-029134(JP,A)
【文献】特開2015-054953(JP,A)
【文献】特開2014-196429(JP,A)
【文献】特開2010-031152(JP,A)
【文献】特開昭63-234010(JP,A)
【文献】特開2002-080511(JP,A)
【文献】特開2003-335983(JP,A)
【文献】特開平11-279486(JP,A)
【文献】特開平11-100419(JP,A)
【文献】特開平04-309568(JP,A)
【文献】特開昭61-195110(JP,A)
【文献】特開2016-093945(JP,A)
【文献】特開昭62-181119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0225039(US,A1)
【文献】国際公開第2019/235465(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 45/00
C08F 290/06
C08F 220/20
C08F 230/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形体との対向面の少なくとも一部に、硬化性組成物の硬化膜を備える、射出成形用金型であって、
前記硬化性組成物は、
(A)リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、
(B)分子量が800未満であり、3官能化合物又は4官能化合物である多官能(メタ)アクリレート化合物と、
(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(D)ポリエステル(メタ)アクリレート化合物から選択される一以上と、を含み、
(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、前記(B)成分の含有量が、30~70質量部である、
射出成形用金型(但し、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有し、かつリン酸基を有する化合物は、前記(B)多官能(メタ)アクリレート化合物には含めず、前記(A)リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物に含め、
1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、前記(B)多官能(メタ)アクリレート化合物には含めず、前記(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物に含め、
1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有するポリエステル(メタ)アクリレート化合物は、前記(B)多官能(メタ)アクリレート化合物には含めず、前記(D)ポリエステル(メタ)アクリレート化合物に含める。)。
【請求項2】
前記硬化性組成物は、さらに、(E)重合開始剤を含む、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記硬化性組成物は、さらに、(F)前記(A)成分~(D)成分以外の(メタ)アクリレート化合物として、25℃における粘度が100mPa・s以下である(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1又は2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の射出成形用金型を用いる、熱硬化性組成物の射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、射出成形用金型及び熱硬化性組成物の射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及が進む発光ダイオード(LED)等の光半導体を利用した発光装置は、通常、凹形状のリードフレームに、反射材(リフレクター)として合成樹脂を一体成形し、得られたリードフレームの成形体上に光半導体(LED)を固定し、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の封止材料で封止することにより製造されている。
【0003】
反射材用の材料として、特許文献1には、アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化チタン等の白色顔料を配合した組成物が開示されている。特許文献1によれば、当該組成物を用いることで、耐熱性及び耐候性に優れ、かつ周辺部材との密着性に優れる硬化物を得られるとされている。
特許文献2には、リフレクターを形成する際のバリの発生を抑制することを目的として、(メタ)アクリレート化合物を含有しかつ所定のせん断粘度を有する熱硬化性組成物を、光半導体用の反射材(リフレクター)として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/056972号
【文献】特開2016-8230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射材用の材料は、一般に、金型内に射出注入等により充填された後、所定の温度で加熱され熱硬化することで反射材となる。このようにして得られる反射材は、金型内で熱硬化する際にバリが発生することがある。反射材にバリが発生した場合、バリ取り作業が発生するため作業効率が低下する問題や、製品の外観不良の問題等がある。
本発明の目的は、熱硬化性組成物の射出成形におけるバリの発生を抑制する技術を提供することである。
【0006】
本発明者らは、成形体のバリは、金型による押圧時に被成形体と金型との間に隙間が生じることによって生じ易くなることを見出した。そして、金型の被成形体と対向する面に樹脂皮膜を形成することが、バリの抑制に効果があることを発見した。
上記の知見に基づき鋭意研究した結果、所定の硬化性組成物を硬化させて得られる皮膜が、バリの抑制に効果があり、且つ、耐久性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の硬化性組成物等が提供される。
1.(A)リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、
(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物と、
(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(D)ポリエステル(メタ)アクリレート化合物から選択される一以上と、を含み、
(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、前記(B)成分の含有量が、30~70質量部である、硬化性組成物。
2.前記(B)成分の分子量が800未満である、1に記載の硬化性組成物。
3.さらに、(E)重合開始剤を含む、1又は2に記載の硬化性組成物。
4.さらに、(F)前記(A)成分~(D)成分以外の(メタ)アクリレート化合物として、25℃における粘度が100mPa・s以下である(メタ)アクリレート化合物を含む、1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
5.被成形体との対向面の少なくとも一部に、1~4のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化膜を備える、射出成形用金型。
6.5に記載の射出成形用金型を用いる、熱硬化性組成物の射出成形方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱硬化性組成物の射出成形におけるバリの発生を抑制する技術を提供できる。具体的に、金型への密着性に優れ、バリの発生を抑制できる硬化膜が得られる硬化性組成物を提供できる。また、成形体のバリの発生を抑制できる射出成形用金型、及び当該射出成形用金型を用いた熱硬化性組成物の射出成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形用金型を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[硬化性組成物]
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物と、(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(D)ポリエステル(メタ)アクリレート化合物から選択される一以上と、を含む。そして、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部(%)に対して、(B)成分の含有量が30~70質量部(%)であることを特徴とする。
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基を含む成分」とは、分子構造に(メタ)アクリロイル基を1つ以上含む化合物を意味する。具体的には、上述した(A)成分~(D)成分及び後述する(F)成分を意味する。
また、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。同様に、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
本実施形態の硬化性組成物は、例えば、樹脂の成形に用いる金型の表面を被覆する硬化膜の形成に用いられる。硬化膜を形成した金型を使用して熱硬化性組成物を射出成形することによって、バリの発生を抑制できる。また、金型と硬化膜の密着性がよく、硬化膜の硬度も高いためキズが付き難い。
以下、本実施形態の硬化性組成物(以下、組成物ということがある。)の各成分について説明する。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物である。本実施形態の硬化性組成物では、(A)成分を用いることで、硬化膜の金型表面からの剥離や、これに伴う成形体のバリの発生を抑制することができる。
【0014】
(A)成分としては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有するリン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(例えば、「ライトアクリレートP-1A(N)」、共栄社化学株式会社製)、エチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート(例えば、「ライトエステルP-1M」、共栄社化学株式会社製)、ビス[(2-(メタ)アクリロイロキシ)エチル]ホスフェート(例えば、「KAYAMER PM-2」、日本化薬株式会社製)、2-(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート(例えば、「KAYAMER PM-21」、日本化薬株式会社製)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート(例えば、「JPA-514」、城北化学工業株式会社製)、10-(メタ)アクリロイロキシデカメチレンアシッドホスフェート(例えば、「MDP」、クラレノリタケデンタル株式会社製)等が挙げられる。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
組成物中の(A)成分の含有量は、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、例えば0.01~30質量部であり、0.1~25質量部であることが好ましく、0.2~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることがさらに好ましい。
(A)成分の含有量が上記範囲であると、得られる硬化膜と金型との密着性が十分に高くなりやすい。
(A)成分の含有量が30質量部を超えると金型との密着性には問題ないが、金型成形により得られる成形体の金型からの離型性が低くなり生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0016】
<(B)成分>
(B)成分は3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物である。本実施形態の組成物が(B)成分を含有することにより、主として、得られる硬化膜の表面硬度が高くなり、当該硬化膜におけるキズの発生を抑制することができる。このため、当該硬化膜を有する金型を用いることで、硬化膜のキズに起因する成形体のバリの発生を抑制することができる。
【0017】
(B)成分は、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有する化合物であり、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能化合物;ペントエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能化合物等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、3官能化合物、4官能化合物は、組成物において、金型に塗布するのに適した粘度を得られやすいため、好適に用いられる。
(B)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
なお、本明細書において、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有し、かつリン酸基を有する化合物は、「3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(B)」には含めず、前述した「リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(A)」に含めるものとする。
【0020】
(B)成分は、得られる硬化膜において適度な表面硬度を得る観点から、分子量は800未満であることが好ましく、200~700であることがより好ましい。
【0021】
組成物中の(B)成分の含有量は、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して30~70質量部である。該範囲とすることにより、得られる硬化膜において適度十分な表面硬度が得られ、キズの発生を抑制できる。また、金型との密着性も高くなる。
(B)成分の含有量は、35~65質量部であることがより好ましく、40~65質量部であることがさらに好ましい。
【0022】
<(C)成分>
(C)成分は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物である。(C)成分を含有することにより、主として得られる硬化膜に適度な強度が付与される。このため、当該硬化膜を有する金型を用いることで、キズの発生を抑制でき、バリの発生も抑制できる。
【0023】
(C)成分は、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0024】
(C)成分としては、例えば市販品として、アートレジンシリーズのUN-333、UN-353、UN-350、UN-7600、UN-7700、UN-9000PEP、UN-9200A、UN-3320HC、UN-904(以上、根上工業株式会社製)、U-2000PA、UA-290TM、U-15HA(以上、新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、UN-7700、UN-9000PEP等2官能ウレタンアクリレートは、得られる硬化膜において優れた強度を得ることができるため好適に用いられる。
(C)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
なお、本明細書において、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、前述した「3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(B)」には含めず、「ウレタン(メタ)アクリレート化合物(C)」に含めるものとする。
【0027】
一実施形態において、得られる硬化膜の強度を付与する観点から、(C)成分の重量平均分子量は2,000以上であることが好ましく、2,000~30,000であることがより好ましい。
本明細書において、重量平均分子量はGPC(Gel permeation Chromatography)法を用いて測定した値とする。
【0028】
組成物中の(C)成分の含有量は、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、例えば1~30質量部であり、3~30質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましく、
5~20質量部であることがさらに好ましい。
【0029】
<(D)成分>
(D)成分はポリエステル(メタ)アクリレート化合物(D)である。(D)成分を含有することにより、主として得られる硬化膜に適度な強度が付与される。このため、当該硬化膜を有する金型を用いることで、キズの発生を抑制でき、バリの発生も抑制できる。
【0030】
(D)成分は、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの両末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0031】
(D)成分としては、例えば市販品として、CN2203、CN2270、CN2271、CN2272、CN2273、CN2274、CN2283(以上アルケマ社製)、EBECRYL810、EBECRYL853、EBECRYL884、EBECRYL885(以上ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
これらの中でも、CN2270、CN2283等2官能ポリエステルアクリレートは、得られる硬化膜において優れた強度を得ることができるため好適に用いられる。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
なお、本明細書において、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有するポリエステル(メタ)アクリレート化合物は、前述した「3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(B)」には含めず、「ポリエステル(メタ)アクリレート化合物(D)」に含めるものとする。
【0033】
組成物中の(D)成分の含有量は、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、例えば1~30質量部であり、3~30質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態では、上記(C)成分及び(D)成分から選択される一以上を含めばよいが、得られる硬化膜において良好な強度を得る観点から、(C)成分及び(D)成分の両方を含むことがよい。
組成物中の(C)成分及び(D)成分の含有量の合計量は、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、例えば1~30質量部であり、3~30質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがさらに好ましい。
また、(C)成分と(D)成分の配合比率(質量比率)は、特に限定されないが、好ましくは、(C)成分:(D)成分=20:80~80:20、より好ましくは30:70~70:30である。
【0035】
<(E)成分>
一実施形態の組成物は、(E)成分として重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤としては、例えば熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
【0036】
熱重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類(パーオキシエステル類)、パーオキシカーボネート類等が挙げられる。
【0037】
ケトンパーオキサイド類の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイド類の具体例としては、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルベンゾイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド類の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3等が挙げられる。
パーオキシケタール類の具体例としては、1,1-ジ-t-ヘキシルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ヘキシルペルオキシシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン、4,4-ビスt-ブチルペルオキシペンタン酸ブチル等が挙げられる。
前述した熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
アルキルパーエステル類(パーオキシエステル類)の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-アミルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジブチルペルオキシトリメチルアジペート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-2-エチルヘキサノイルペルオキシヘキサン、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ベンゾイルペルオキシヘキサン等が挙げられる。
パーオキシカーボネート類の具体例としては、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、ジ-4-t-ブチルシクロヘキシルペルオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシカーボネート、ジ-sec-ブチルペルオキシカーボネート、ジ-3-メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルペルオキシカルボキシロキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0039】
光重合開始剤として、例えば、ベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤、α-ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、アミノアセトフェノン系光開始剤等が挙げられる。
ベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤は、例えば2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)等が挙げられる。
α-ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤は、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤は、例えばベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤は、例えば2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン等が挙げられる。
前述した光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(E)成分の含有量は、重合反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0041】
<(F)成分>
一実施形態では、組成物は(F)成分として、上述した(A)成分~(D)成分以外の(メタ)アクリレート化合物を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。(F)成分は、主に組成物全体の粘度を調整する希釈剤として配合される。(F)成分を含有することにより、例えば、組成物の粘性をコーティング剤として適するように調整できる。
【0042】
(F)成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、片末端(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、両末端(メタ)アクリル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
(F)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
一実施形態において、金型表面に塗布するのに適した粘性を得る観点から、(F)成分の25℃における粘度は100mPa・s以下であることが好ましく、1~50mPa・sであることがより好ましい。
【0044】
組成物中の(F)成分の含有量は、(メタ)アクリロイル基を含む成分の合計100質量部に対して、1~50質量部であり、1~40質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましい。
【0045】
<添加剤>
本実施形態の硬化性組成物は、上記(A)成分~(F)成分の他に、添加剤として酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機充填剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、難燃剤、レベリング剤、消泡剤等を含むことができる。これら添加剤は公知のものを使用できる。
【0046】
一実施形態において、組成物全体の90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上又は実質的に100質量%が、(A)成分~(F)成分である。なお、「実質的に100質量%」の場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0047】
本実施形態の組成物は、上記(A)成分と(B)成分と、(C)成分及び(D)成分の少なくとも一方と、任意成分としている(E)成分、(F)成分及び添加剤を、所定の量比で混合して調製することができる。混合方法は特に限定されず、撹拌機(ミキサー)等の任意の公知手段を使用できる。また、常温、冷却下、又は加熱下にて、常圧、減圧下、又は加圧下にて混合することができる。
【0048】
本実施形態の硬化性組成物は、樹脂の成形に用いる金型に形成する硬化膜の形成に使用できる。例えば、射出成形に用いられる金型の表面を被覆する硬化膜の形成に好適な材料である。
本実施形態の硬化性組成物から得られる硬化膜は、金型への密着性に優れ、耐キズ性に優れており、金型からの膜剥がれや膜表面のキズの発生を抑制できる。このため、当該硬化膜を有する金型を用いて熱硬化性組成物等の被成形体を成形することで、金型による押圧時に被成形体と金型との間に隙間が生じるのを抑制し、バリの無い良好な成形体を得ることができる。
【0049】
[射出成形用金型]
本発明の一実施形態に係る射出成形用金型は、被成形体との対向面の少なくとも一部に、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を備える。
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形用金型の概略断面図である。
射出成形用金型10は、被成形体を保持する保持部111を有する固定金型11と、固定金型11に対向させて配設される可動金型12を有する。可動金型12は、被成形体と対向する対向面121を有する押圧部122を有している。可動金型12の対向面121には、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜200が備えられている。
【0050】
次に、本実施形態の射出成形用金型の製造方法について説明する。
まず、可動金型12の対向面121に、硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成する。
塗布方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート、スプレーコート、フローコート、ディップコート等を使用できる。
【0051】
次いで、対向面121に形成された塗布膜を光又は熱により硬化させて硬化膜200を形成する。
塗布膜の硬化方法は、特に制限されず、例えば、紫外線照射による硬化法、加熱硬化法を用いることができる。両者を併用してもよい。
紫外線照射による硬化法としては、紫外線の光量が、通常、50~50000mJ/cm程度、好ましくは100~20000mJ/cmとなるように照射する。紫外線照射後に後加熱処理を行ってもよく、例えば70~200℃で0.1~12時間行うことが好ましい。
加熱硬化法としては、硬化温度を、通常、50~200℃程度、好ましくは100~180℃とする。50℃以上とすることにより硬化不良となることを抑制でき、200℃以下とすることにより着色等を抑制することができる。硬化時間は、組成物が含む成分によって異なるが、通常、0.1~6時間が好ましい。
【0052】
[熱硬化性組成物の射出成形方法]
本発明の一実施形態に係る熱硬化性組成物の射出成形方法では、上述した本発明の射出成形用金型を用いて、熱硬化性組成物を成形する。
本実施形態で使用する熱硬化性組成物は、特に限定されず、例えば、特許文献1及び2に記載されたものを使用できる。射出成形の装置及び成形条件も特に限定はなく、例えば、特許文献2に記載の装置及び条件を採用できる。
【0053】
例えば、図1に示す射出成形用金型10(以下、単に金型10と呼ぶ)を射出成形に用いる場合、当該金型10には、図示しないが、例えばスクリューの回転により、原料組成物である熱硬化性組成物を金型10に充填する充填部が接続されている。
【0054】
不図示の原料タンクから充填部に供給された熱硬化性組成物は、スクリューの回転により撹拌混合されながら前方に送られ、高速かつ高圧で金型10に注入される。
金型10の固定金型11及び可動金型12は、不図示の加熱装置により30~250℃、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~180℃に加熱されている。
充填部から金型10に熱硬化性組成物が注入されると、固定金型11の保持部111には、充填部から注入された熱硬化性組成物(被成形体)が保持される。この状態から、可動金型12を固定金型11に近接させ、型締を行う。可動金型12の硬化膜200が熱硬化性組成物に当接した状態で、可動金型12をさらに固定金型11に近接させることで、熱硬化性組成物が押圧部122により押圧される。熱硬化性組成物への加圧力は、特に限定されないが、例えば0.1~30MPa、より好ましくは1~20MPaである。
次いで、熱硬化性組成物が熱硬化して成形体が形成された時点で、可動金型12を固定金型11から離間させ、固定金型11の保持部111に保持された成形体を取り出す。
【0055】
以上説明した本実施形態の熱硬化性組成物の射出成形方法は、本発明の射出成形用金型を用いているため、金型と被成形体との間に隙間が生じないようにして被成形体を押圧することができる。このため、バリの発生が抑制された成形体を得ることができる。
また、本発明の金型が有する硬化膜は、金型への密着性に優れ、耐キズ性に優れており、膜剥がれや膜表面のキズの発生が抑制されている。このため、当該硬化膜を有する金型を用いて被成形体を押圧することで、硬化膜のキズに起因する被成形体の損傷や、金型からの過度な押圧力に起因する被成形体の損傷を抑制することができ、バリの発生が抑制された成形体を得ることができる。
また、本発明の金型が有する硬化膜は、金型への密着性に優れ、耐キズ性に優れているため、金型による押圧を多数回行った場合や、硬化膜表面の汚れを除去するためにブラスト処理した場合でも、硬化膜の膜剥がれや膜表面におけるキズの発生が抑制されており、硬化膜の交換回数を低減することができる。従って、熱硬化性組成物の射出成形を、効率的に行うことができる。
【0056】
本実施形態の射出成形方法は、例えば、光半導体の反射材(リフレクター)用の熱硬化性組成物の射出成形に好適に用いることができる。
前述した熱硬化性組成物の射出成形方法では、固定金型11の保持部111が熱硬化性組成物のみを保持する場合を例に説明したが、本発明の射出成形方法はこれには限定されない。例えば、固定金型11の保持部111にリードフレームを載置し、その上に、被成形体であるリフレクター用の熱硬化性組成物を注入して、保持部111がリードフレームと熱硬化性組成物とを保持するようにしてもよい。
【実施例
【0057】
以下に本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1
表1に示す(A)成分~(F)成分を室温で表1に示す配合比で混合し撹拌して硬化性組成物を得た。
得られた組成物を、射出成型金型の被成形体と対向する面に、バーコーターを用いて膜厚8μm程度となるように塗布し、UV硬化装置(製品名:PSCC-60048A、CCS株式会社製)を用いて硬化した。その後、硬化膜が形成された金型を150℃のオーブンに30分間静置し、被成形体と対向する面に硬化膜を有する金型を得た。
【0059】
実施例2~実施例15
(A)成分~(F)成分を、表1又は2に示す成分及び配合比に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化膜を有する金型を得た。
【0060】
実施例16
(A)成分~(F)成分を、表1に示す成分及び配合比に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、組成物を得た。その後の操作は、UV硬化を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、硬化膜を有する金型を得た。
【0061】
実施例17
(A)成分~(F)成分を、表2に示す成分及び配合比に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、組成物を得た。その後の操作は、オーブン内での静置を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、硬化膜を有する金型を得た。
【0062】
比較例1~比較例4
(A)成分~(F)成分を、表2に示す成分及び配合比に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化膜を有する金型を得た。
【0063】
比較例5
金型表面に硬化膜を形成せずに金型を評価した。
【0064】
<評価>
実施例1~17及び比較例1~5で得た金型を使用して射出成形し、バリの発生、硬化膜のキズ及び剥がれについて評価した。
被成形体である熱硬化性組成物の配合を以下に示す。
・イソボルニルメタクリレート(ライトエステルIB-X、共栄社化学株式会社製):8質量部
・ラウリルアクリレート(SR355、アルケマ社製):4質量部
・グリシジルメタクリレート(ブレンマーGH、日油株式会社製):2質量部
・1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD-N、新中村化学工業株式会社製):6質量部
・球状シリカ(平均粒子径(D50)15μm、CRS1085-SF630、株式会社龍森製):65質量部
・酸化チタン(平均粒子径0.2μm、PC-3、石原産業株式会社製):10質量部
・タルク(平均粒子径5μm、TP-A25、富士タルク工業株式会社製):5質量部
・紫外線吸収剤(Tinuvin765、BASFジャパン株式会社製):0.5質量部
・ステアリン酸亜鉛(StZn、大日化学工業株式会社製):1.5質量部
・フュームドシリカ(平均粒子径5~50nm、R711、日本アエロジル株式会社製):3質量部
・有機過酸化物(パーヘキサHC、日油株式会社製):1質量部
【0065】
熱硬化性組成物を、実施例及び比較例で得られた金型を用いて、以下に示す条件にて射出成形した。
(射出条件)
成形機:液状熱硬化性樹脂射出成形機LA-40S、(株)ソディック社製
低温部の流路温度:15℃
流路及び熱遮断方法:シャットオフノズル使用
高温部の流路温度及びキャビティ温度:130℃
充填時間:10秒
充填時圧力:2MPa(充填時間優先)
保圧時間:15秒
保圧時圧力:5MPa
硬化時間:90秒
【0066】
各金型を用いた射出成形を、上記条件にてそれぞれ100ショット以上行った。各項目の評価基準を以下に示す。
(射出成形品のバリ)
得られた射出成形品を目視にて観察し、バリの発生の有無を確認した。100ショットを超えても射出成形品にバリの発生が確認されなかった場合を「〇」、100ショット以内に射出成形品にバリが発生した場合を「×」とした。
【0067】
(硬化膜の剥がれ)
ショット毎に、金型及び硬化膜の状態を目視にて観察した。100ショットを超えても硬化膜の剥がれが確認されなかった場合を「〇」、100ショット以内に硬化膜の膜剥がれが発生した場合を「×」とした。
【0068】
(硬化膜のキズ)
ショット毎に、金型の硬化膜の状態を目視にて観察した。100ショットを超えても硬化膜にキズの発生が確認されなかった場合を「〇」、100ショット以内に硬化膜にキズが発生した場合を「×」とした。
評価結果を表1及び2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1及び2に示す(A)成分~(F)成分は、それぞれ以下の通りである。
((A)成分)
A-1:2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(JPA-514、城北化学工業株式会社製)
A-2:2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(ライトアクリレートP-1A(N)、共栄社化学株式会社製)
((B)成分)
B-1:トリメチロールプロパントリアクリレート(SR351S、アルケマ社製)
B-2:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR295、アルケマ社製)
B-3:エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454、アルケマ社製)
B-4:エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499、アルケマ社製)
((C)成分)
C-1:ウレタンアクリレート(アートレジンUN-9000PEP、根上工業株式会社製)
C-2:ウレタンアクリレート(アートレジンUN-7700、根上工業株式会社製)
C-3:ウレタンアクリレート(アートレジンUN-9200A、根上工業株式会社製)
((D)成分)
D-1:ポリエステルアクリレート(CN2283、アルケマ社製)
((E)成分)
E-1:1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン(ルペロックス531M80、アルケマ吉富株式会社製)
E-2:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(Omnirad1173、IGM resins B.V.製)
((F)成分)
F-1:1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD-N、新中村化学工業株式会社製、25℃における粘度10mPa・s)
F-2:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(SR238F、アルケマ社製、25℃における粘度9mPa・s)
F-3:1,9-ノナンジオールジアクリレート(ビスコート#260、大阪有機化学工業株式会社製、25℃における粘度8mPa・s)
【0072】
表1及び2に示すように、実施例では100ショットを超えても硬化膜のキズや膜剥がれが無く、得られた射出成形品は、いずれもバリが無く、良好な外観を有していた。
一方、比較例1の金型の硬化膜は、(A)成分が配合されていないため、金型に対する密着性が不足しており、100ショット以内で膜剥がれが発生し、射出成型品にバリが発生した。
また、比較例2の金型の硬化膜は、(B)成分の配合量が25質量部と少ないため、硬化膜の表面硬度が不足しており、100ショット以内で膜にキズが発生し、射出成型品にバリが発生した。
また、比較例3の金型の硬化膜は、(B)成分の配合量が72質量部と多すぎるため、硬化膜の表面硬度が過度に高くなって金型への密着性が不足し、100ショット以内でキズ、膜剥がれが発生し、射出成型品にバリが発生した。
また、比較例4の金型の硬化膜は、(C)成分、(D)成分のいずれも配合されていないため、硬化膜の強度が不足しており、100ショット以内で射出成型品にバリが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の硬化性組成物は、例えば、樹脂の成型に用いられる金型の表面を被覆する硬化膜の原料として好適に用いられる。
本発明の射出成形用金型及び射出成形方法は、例えば、光半導体の反射材(リフレクター)用の熱硬化性組成物の射出成形に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 射出成形用金型
11 固定金型
111 保持部
12 可動金型
121 対向面
122 押圧部
200 硬化膜
図1