IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽ホールディングス株式会社の特許一覧

特許7627320透明樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】透明樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20250129BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20250129BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20250129BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250129BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20250129BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20250129BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20250129BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C08L101/08
C08L75/04
C08K5/1515
C08L63/00 A
C08J7/043 Z CES
B32B27/40
H01L23/30 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023187236
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木之瀬 葵
(72)【発明者】
【氏名】米田 一善
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大地
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/141124(WO,A1)
【文献】特開2021-138916(JP,A)
【文献】特開2012-219232(JP,A)
【文献】特開2016-089172(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096206(WO,A1)
【文献】特開2011-164270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有し、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性ポリマー(A)と、
芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)と、
エチレンオキサイド骨格および不飽和二重結合を有する重合性化合物(C)と、
を含み、
前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、前記アルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量が45~75質量部であり、
前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、固形分換算で、前記重合性化合物(C)の含有量が20質量部以上である、透明樹脂組成物。
【請求項2】
重合開始剤を含む、請求項1に記載の透明樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂を含む、請求項1または2に記載の透明樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の透明樹脂組成物を第一のフィルムに塗布して得られるドライフィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の透明樹脂組成物または請求項に記載のドライフィルムを用いて得られる硬化物。
【請求項6】
下記条件で測定される透過率が85%以上である、請求項に記載の硬化物。
(条件)
透明樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が8μmになるように第一のフィルム上に塗布し、80℃の熱風乾燥機で30分加熱乾燥して樹脂層を形成する。前記樹脂層の露出面に膜厚50μmのCOPを貼り合わせ、ラミネートを行う。
平行光露光機を用いてベタ露光した後、第一のフィルムを剥がし、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行う。
その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの硬化物を形成した透過率測定用の基板を得る。
得られた硬化物の380~780nmにおける透過率を紫外可視分光光度計を用いて測定する。
【請求項7】
透明電子部品用の絶縁保護膜として用いられる、請求項に記載の硬化物を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
透明アンテナ、透明ディスプレイなどの透明電子部品向けの保護膜として、透明の絶縁保護膜が求められている。従来、この種の絶縁保護膜を形成するための材料としては、熱硬化型の樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
また、透明電子部品は、薄型化、軽量化、およびフレキシブル化が進んでおり、透明有機基材として樹脂フィルムの利用が検討されている。樹脂フィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられるが、これらのうち、光学特性や寸法安定性に優れるCOPが好ましく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-18893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透明電子部品向けの保護膜に求められる特性として、透明性、現像性および下地に対する密着性(以下、単に密着性とよぶ)が挙げられる。近年、透明電子部品の小型化および薄型化に伴い、透明電子部品向けの保護膜には開口径のさらなる微細化や高精度化が求められる。しかし、従来の熱硬化型の樹脂組成物を用いて得られる保護膜は、現像性に限界があり、開口径のさらなる微細化や高精度化が困難であるという問題があった。
特に、パターニング工程により微細加工が施される場合、有機基材の透明性を担保するために、有機基材に対して表面粗化などの物理的処理を行うことにより、アンカー効果の発現を図ることができない。他方、有機基材と保護膜との親和性が高すぎると、未露光部を現像により洗い流すことが困難になる。このため、有機基材に対して適度な密着性を有する保護膜を選定する必要がある。
【0005】
本発明は上述のような課題を鑑みたものであり、透明性、現像性および有機基材との密着性(特にCOP基材に対する密着性)に優れた透明樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該樹脂組成物を用いて得られる樹脂層を備えたドライフィルム、当該透明樹脂組成物または当該樹脂層の硬化物、および当該硬化物を備えた電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、透明樹脂組成物である。当該透明樹脂組成物は、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A)と、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)と、エチレンオキサイド骨格を有する重合性化合物(C)と、を含み、前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、前記アルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量が45~75質量部である。
上記態様の透明樹脂組成物において、前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、固形分換算で、前記重合性化合物(C)の含有量が20質量部以上であってもよい。
上記いずれかの態様の透明樹脂組成物は、重合開始剤を含んでもよい。また、上記いずれかの態様の透明樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0007】
本発明の他の態様は、ドライフィルムである。当該ドライフィルムは、上述したいずれかの態様の透明樹脂組成物を第一のフィルムに塗布して得られる。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、硬化物である。当該硬化物は、上述したいずれかの態様の透明樹脂組成物、または、上述した態様のドライフィルムを用いて得られる。
上記態様の硬化物は、下記条件で測定される透過率が85%以上であってもよい。
(条件)
透明樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が8μmになるように第一のフィルム上に塗布し、80℃の熱風乾燥機で30分加熱乾燥して樹脂層を形成する。前記樹脂層の露出面に膜厚50μmのCOPを貼り合わせ、ラミネートを行う。
平行光露光機を用いてベタ露光した後、第一のフィルムを剥がし、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行う。
その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの硬化物を形成した透過率測定用の基板を得る。
得られた硬化物の380~780nmにおける透過率を紫外可視分光光度計を用いて測定する。
上記いずれかの態様の硬化物は、透明電子部品用の絶縁保護膜として用いられてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明性、現像性および密着性に優れた透明樹脂組成物に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」と記載されている場合、「メタクリル」、及び「アクリル」の両方を含むものとする。
【0011】
実施形態に係る透明樹脂組成物は、アルカリ可溶性ポリマー(A)と、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)と、重合性化合物(C)と、を含む。
実施形態に係る透明樹脂組成物は、大気の条件下で測定される、透過率85%以上、ヘイズ4.0未満を満たす。なお、透明樹脂組成物の透過率およびヘイズは以下のようにして測定したものとする。
まず透明樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が8μmになるように大きさ75mm×14mm、厚さ40μmのテフロン(登録商標)上に塗布し、80℃の熱風乾燥機で30分加熱乾燥して樹脂層を形成する。
その後、2cm×4cm、3cm×3cmの大きさに切り出してからテフロン(登録商標)を剥離し試験片とする。
透過率は2cm×4cmの試験片を用いて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V-570)を使用し、波長380~780nmにおいて透過法で測定する。
ヘイズは3cm×3cmの試験片を用いて、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH7000II)を使用し、測定する。
【0012】
(アルカリ可溶性ポリマー(A))
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有する。アルカリ可溶性ポリマー(A)がカルボキシル基を含有することにより、下地との密着性および現像性を向上させることができる。アルカリ可溶性ポリマー(A)は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂でも、エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有樹脂でもよい。
【0013】
アルカリ可溶性ポリマー(A)としては、シクロヘキシル基を含有するモノマーと、カルボキシル基を含有するモノマーの共重合体、シクロヘキシル基を有するポリマーの末端部分をカルボキシル基含有官能基で置換した変性物、カルボキシル基を有するポリマーの末端部分をシクロヘキシル基含有官能基で置換した変性物等が挙げられる。アルカリ可溶性ポリマー(A)は、シクロヘキシル基を有するモノマーと、カルボキシル基を含有するモノマーの共重合体であることが好ましい。
【0014】
シクロヘキシル基を有するモノマーとしては、特に限定されず、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロヘキシル基と(メタ)アクロイル基とを含有する化合物等が挙げられる。
【0015】
カルボキシル基を含有するモノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基と(メタ)アクロイル基とを含有する化合物等が挙げられる。
【0016】
これらのモノマーを従来公知の条件で共重合させることで、アルカリ可溶性ポリマー(A)を製造することができる。シクロヘキシル基を有するモノマーと、カルボキシル基を含有するモノマーと、の割合は任意の条件とすることができるが、質量基準で30:70~70:30の割合であることが密着性の点で好ましい。
【0017】
またこの場合、アルカリ可溶性ポリマー(A)のモノマーは、シクロヘキシル基を有するモノマー及びカルボキシル基を含有するモノマー以外のモノマーを含んでいてもよい。換言すると、アルカリ可溶性ポリマー(A)は、シクロヘキシル基を有するモノマーと、カルボキシル基を含有するモノマーと、これら以外のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0018】
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、エチレン性不飽和基(不飽和二重結合を有する炭化水素基)を有することが好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0019】
エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性ポリマー(A)は、例えば、前述のようなシクロヘキシル基を有するモノマーとカルボキシル基を含有するモノマーとの共重合体に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上のエチレン性不飽和基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)を有する化合物を付加して製造することができる。
【0020】
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0021】
アルカリ可溶性ポリマー(A)の酸価は、20~300(mgKOH/g)であることが好ましく、40~250(mgKOH/g)であることがより好ましく、50~200(mgKOH/g)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)の酸価が、かかる範囲にある場合には、露光後における塗膜や樹脂層をアルカリ水溶液によって現像することが容易となり、より正常な硬化物パターンの描画が容易となる。
【0022】
アルカリ可溶性ポリマー(A)のカルボン酸当量は、100~1000(g/eq)であることが好ましく、200~800(g/eq)であることがより好ましく、300~600(g/eq)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)のカルボン酸当量をこのような範囲とすることで、密着性および耐環境性に優れた硬化物を得易くなる。
【0023】
アルカリ可溶性ポリマー(A)のシクロヘキシル基当量は、100~1000(g/eq)であることが好ましく、200~800(g/eq)であることがより好ましく、300~600(g/eq)であることが特に好ましいであることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)のシクロヘキシル基当量をこのような範囲とすることで、密着性および耐環境性に優れた硬化物を得易くなる。
【0024】
アルカリ可溶性ポリマー(A)が(メタ)アクリロイル基を含む場合、アルカリ可溶性ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量は、100~2000(g/eq)であることが好ましく、200~1800(g/eq)であることがより好ましく、300~1500(g/eq)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)のカルボン酸当量をこのような範囲とすることで、解像性、密着性、耐環境性に優れた硬化物を得易くなる。
【0025】
アルカリ可溶性ポリマー(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、1,500~150,000とすることができ、1,500~100,000が好ましく、1,500~50,000がより好ましく、1,500~40,000が特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)の重量平均分子量がかかる範囲にある場合には、タックフリー性能、貯蔵安定性、露光後の塗膜や樹脂層の耐湿性、現像性に優れ、現像時の膜減り、及び解像度の低下を抑制することができる透明樹脂組成物、及びドライフィルムを得ることができる。
【0026】
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0027】
(カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B))
カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)は、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られる。本実施形態の透明樹脂組成物は、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)を含むことで、下地との密着性および現像性が向上する。カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基ウレタン含有樹脂でも、エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有ウレタン樹脂でもよい。中でも、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂が、光硬化性や耐現像性に優れるため好ましい。なお、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)はシクロへキシル基を有することが好ましい。これによれば、下地との密着性をより一層向上させることができる。
【0028】
具体的には、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)は、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、反応停止剤としても機能する前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)との反応により、末端に導入されたフェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂であることが好ましいが、これ以外にも、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)との反応により得られ、該化合物(b)として、フェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いて分子側鎖にフェノール性ヒドロキシル基を導入したウレタン樹脂、あるいはさらに1分子中にカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いて分子側鎖にカルボキシル基を導入したウレタン樹脂などを含む。後者のウレタン樹脂においては、末端封止剤(反応停止剤)として、上記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)を用いることができるほか、脂肪族アルコールやモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物等のモノヒドロキシル化合物や、アルコール性ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基等のイソシアネート基と付加反応又は縮合反応し得る官能基を有するモノカルボン酸など、従来公知の各種反応停止剤を用いることができる。
【0029】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)は、例えば、前記好適なウレタン樹脂の場合、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)とを一括混合して反応させてもよく、あるいは上記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)とを反応させ、続いて反応停止剤としても機能する上記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)を反応させてもよい。また、前記した他のウレタン樹脂の場合、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中にフェノール性ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、反応停止剤とを一括混合して反応させてもよいが、分子量調整の点からは、上記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と上記化合物(b)とを反応させ、続いて反応停止剤を反応させてもよい。
【0030】
前記反応は、室温~100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために70~100℃に加熱することが好ましい。また、上記(a)~(c)成分の反応比率(モル比)としては、(a):(b)=1:1~2:1が好ましく、より好ましくは1:1~1.5:1、(a+b):(c)=1:0.01~0.5が好ましく、より好ましくは1:0.02~0.3の割合が適当である。
【0031】
前記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)としては、従来公知の各種の芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を使用でき、特定の化合物に限定されない。芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の分岐脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(o,m,又はp)-(水添)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン-1,3-ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジメチレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネートであるトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。これらの芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのジイソシアネート化合物を使用した場合、低着色性、耐環境性、低反り性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ジイソシアネートを用いることもできる。
【0032】
次に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)としては、従来公知の各種ポリオールを使用でき、特定の化合物に限定されないが、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、水素化ポリブタジエン系ポリオール、水素化イソプレンポリオール、リン含有ジオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、カルボキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、リン含有ポリオール等を好適に用いることができる。ポリカーボネートジオールとしては、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-1)、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-2)、又は直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-3)が挙げられる。また、カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-4)、さらにフェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-5)等を用いた場合、分子側鎖に官能基(フェノール性ヒドロキシル基やカルボキシル基)を持たせることができる。リン含有ポリオール(b-6)を用いた場合、ウレタン樹脂に難燃性を付与することができる。これらの化合物(b-1)~(b-6)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
上述した1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-1)の具体例としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,9-ノナンジオールと2-メチル-1,8-オクタンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0034】
上述した1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-2)の具体例としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0035】
上述した直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-3)の具体例としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0036】
上述したカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-4)の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を導入することができる。
【0037】
上述したフェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-5)の具体例としては、6-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゼンジメタノール、2,4-ジ(ヒドロキシメチル)-6-シクロヘキシルフェノール、3,3’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンメタノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)ビス[2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール]、2-ヒドロキシ-5-フルオロ-1,3-ベンゼンジメタノール、4,4’-メチレンビス(2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,5-ジメチル-3-ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’-シクロヘキシリデンビス(2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’-シクロヘキシリデンビス(2-シクロヘキシル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2-ヒドロキシ-5-エチル-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタノール、4-(1,1-ジメチルエチル)-2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-シクロヘキシル-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-2,5-ジメチルフェニル)メチル]-3,4-ジメチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-2,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-シクロヘキシルフェノール、2-ヒドロキシ-1,3,5-ベンゼントリメタノール、3,5-ジメチル-2,4,6-トリヒドロキシメチルフェノール、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、2,3,5,6-テトラ(ヒドロキシメチル)-1,4-ベンゼンジオール、4,4’-メチレンビス[2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]等が挙げられる。これらのフェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にフェノール性ヒドロキシル基を導入することができる。
【0038】
前記ポリカーボネートジオールは、数平均分子量200~5,000のものが好ましいが、ポリカーボネートジオールが構成単位として直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を含み、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7~7:3である場合は、数平均分子量が400~2,000のものが好ましい。
【0039】
上述したビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0040】
上述したリン含有ポリオールの具体例としてはFC-450(旭電化工業(株)製)、M-Ester(三光(株)製)、M-Ester-HP(三光(株)製)等が挙げられる。このリン含有ポリオールを用いることによりウレタン樹脂中にリン化合物を導入することができる。
【0041】
次に、1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)としては、従来公知の各種モノヒドロキシ化合物を使用でき、特定の化合物に限定されないが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸等があるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
フェノール性ヒドロキシル基を有する、前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)は、ポリウレタンにフェノール性ヒドロキシル基を導入させる目的で用いられ、ポリウレタンの末端封止剤としても機能し、特に分子中にイソシアネートと反応し得る1つのアルコール性ヒドロキシル基及びフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物であれば反応停止剤として機能する。このような化合物(c)の具体例としては、例えばヒドロキシメチルフェノール、ヒドロキシメチルクレゾール、ヒドロキシメチル-ジ-t-ブチルフェノール、p-ヒドロキシフェニル-2-メタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,4-ジメチル-6-ヒドロキシメチルフェノール、2,3,6-トリメチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2-シクロヘキシル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルフェノール、4-メチル-6-ヒドロキシメチルベンゼン-1,2-ジオール、4-(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシメチルベンゼン-1,2-ジオール等のヒドロキシアルキルフェノール又はヒドロキシアルキルクレゾール;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、あるいはヒドロキシフェノキシ安息香酸等のカルボキシル基含有置換基を有するフェノールと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等とのエステル化物;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物(c)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は500~100,000であることが好ましく、8,000~50,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が500以上であることで、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度が向上し、100,000未満であることで現像可能であり、また溶解性が向上し、かつ溶解後の粘度も高くなりすぎない。
【0044】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)の酸価は10~120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、20~80mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が10mgKOH/g以上であることで、熱硬化性成分との反応性がより向上し、耐熱性がより向上する。一方、酸価が120mgKOH/g以下であることで、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性がより向上する。なお、樹脂の酸価はJIS K5601―1-2-1:1999に準拠して測定した値である。
【0045】
これらのカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、アルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量が45~75質量部、好ましくは50~70質量部であり、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)の含有量が25~55質量部、好ましくは30~50質量部である。アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との配合比(含有比)を上記範囲とすることにより、現像性および透明性をより高めるとともに、下地に対する密着性を向上させることができる。
【0047】
(重合性化合物(C))
重合性化合物(C)は、エチレンオキサイド骨格を有する。重合性化合物(C)は、たとえば、下記式(1)で表される。
-(CCO)n-R・・・(1)
式(1)において、R、Rは、それぞれ独立に、(メタ)アクリレート基、ビニル基などの不飽和二重結合を有する1価の有機基である。nは、エチレンオキサイド基の繰り返し数を表し、1以上の整数である。nは好ましくは2~30である。
【0048】
重合性化合物(C)の具体例としては、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ポリエーテル変性(EO変性)アクリレートオリゴマー、エトキシ化グリセリントリアクリレートなどが挙げられる。
【0049】
アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、重合性化合物(C)の含有量は15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、35質量部以上が特に好ましい。重合性化合物(C)の含有量の上限は本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、たとえば、アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、60質量部以下、55質量部以下、50質量部以下、または45質量部以下である。
【0050】
(他の成分)
本実施形態の透明樹脂組成物は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれでもよいが、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン等のアミノアルキルフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノンO-アセチルオキシム等のオキシムエステル類;各種パーオキサイド類、チタノセン系開始剤などが挙げられる。これらは、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤等と併用してもよい。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
オキシムエステル類以外の光重合開始剤の配合量は、本実施形態の透明樹脂組成物中、アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、0.01~30質量部が好ましく、0.5~28質量部がより好ましく、1.0~25質量部がさらに好ましい。また、オキシムエステル類の光重合開始剤の配合量は本実施形態の透明樹脂組成物中、アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、0.01~10質量部が好ましく、0.01~7.0質量部がより好ましく、0.01~5.0質量部がさらに好ましい。
【0052】
本実施形態の透明樹脂組成物は、熱硬化性成分として、エポキシ樹脂を含んでもよい。
エポキシ樹脂としては、たとえば、2官能エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられ、多官能エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N-グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。さらに好ましい高透明性の硬化物を得られ易いエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などがあげられ、具体的には、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂であるNC-3000(日本化薬(株)製)、ビフェニル型エポキシ樹脂YX-4000(三菱ケミカル(株)製)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂YX-8034(三菱ケミカル(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER-828(三菱ケミカル(株)製)、ビスフェノールA型エポキシと水添ビスフェノールA型エポキシの混合樹脂ST6100(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製)、トリスフェノール型エポキシ樹脂VG-3101L((株)プリンテック製)が挙げられる。
エポキシ樹脂は2官能または3官能であることが好ましい。これによれば、透明樹脂組成物より得られる硬化物の透明性をより一層高めることができる。
なお、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたエポキシ樹脂を使用してもよい。
【0053】
エポキシ樹脂の配合量は、アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、5~150質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、20~70質量部がさらに好ましい。エポキシ樹脂の配合量を5質量部以上とすることにより、硬化膜の強度を高めることができる。があり、一方、エポキシ樹脂の配合量を150質量部以下とすることにより、可撓性、透明性、耐環境性、密着性および電気特性を高めることができる。
【0054】
本実施形態の透明樹脂組成物は効果を阻害しない範囲でフィラーを含んでもよい。フィラーは、透明樹脂組成物の硬化物の機械強度向上のため、あるいは透明樹脂組成物の塗工性を向上させるために使用されうる。
【0055】
フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;タルク、マイカ等の粘土鉱物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等のフェロブスカイト型結晶構造を有するフィラー;窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを用いてもよく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンの共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィラー;シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等の炭化水素系樹脂フィラー等の有機フィラーを用いてもよい。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記したフィラーの中でも、透明樹脂組成物の塗工性を向上させる観点から、シリカを含むことが好ましい。用いるシリカとしては、透明性の観点から平均粒径が1~100nmであることが好ましく、平均粒径が1~50nmであることがより好ましい。このようなシリカとしては、例えば、AEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 150、AEROSIL 200、AEROSIL 225、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL OX50、AEROSIL TT600、AEROSIL R104、AEROSIL R106、AEROSIL R202、AEROSIL R711、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL R816、AEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R7200、AEROSIL R8200、AEROSIL R9200(日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
本実施形態の透明樹脂組成物がフィラーを含む場合、当該フィラーの含有量は透明樹脂組成物のアルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部としたとき、1~20質量部であることが好ましく、3~20質量部であることがより好ましい。フィラーの含有量が上記範囲内にあることで、透明樹脂組成物およびその硬化物の透明性を維持しつつ塗工性に優れる透明樹脂組成物とすることができる。
【0058】
本実施形態の透明樹脂組成物は有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は、透明樹脂組成物中の各成分を容易に溶解または分散させるため、あるいは塗工に適した粘度に調整するために使用されうる。
【0059】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。有機溶剤の配合量は、所望の粘度に応じて適宜設定されうる。
【0060】
本実施形態の透明樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の成分として、消泡剤、密着性付与剤またはレベリング剤などの各種添加剤類、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ターシャリーブチルカテコール、フェノチアジンなどの公知慣用の重合禁止剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。
【0061】
(ドライフィルム)
実施形態に係るドライフィルムは、上述した形態の透明樹脂組成物を第1のフィルム(基材フィルム)の少なくとも一方の面に塗布後、乾燥して得られる樹脂層を有する。使用時に、この樹脂層が、基材または基板に接するようにラミネートされる。
【0062】
第1のフィルム(基材フィルム)に上述した形態の透明樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、上記した樹脂層を形成し、好ましくはその上に第2のフィルム(いわゆるカバーフィルム(保護フィルム))を積層することにより、実施形態に係るドライフィルムを製造することができる。第2のフィルムと第1のフィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムであってもよい。
【0063】
第1のフィルムおよび第2のフィルムに用いられるフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。第1のフィルムとしては、たとえば2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。第2のフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができる。ただし、第2のフィルムに用いられるフィルムは、樹脂層との接着力が第1のフィルムよりも小さいことが好ましい。
【0064】
実施形態に係るドライフィルムにおける樹脂層の膜厚は、200μm以下が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0065】
(硬化物)
実施形態に係る硬化物は、上記した態様の透明樹脂組成物またはドライフィルムを用い、所定のステップにて硬化させることで得られる。その硬化物であるパターン硬化膜は、公知慣用の製法で製造すればよく、たとえば、下記のようにして製造することができる。
【0066】
ステップ1として、透明樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥することにより、樹脂層を得る。また、ドライフィルムを用いる場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせることにより基材上に樹脂層を形成する。
透明樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から透明樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。
また、ドライフィルムを基材上に貼り合わせる方法は真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを用いることにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は40~120℃であることが好ましい。
透明樹脂組成物を塗布した後に行う乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥、IR乾燥機等の方法が用いられる。乾燥条件は、特に限定されないが、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、60~130℃で1~30分の条件で行うことができる。
樹脂層が形成される基材に特に制限はなく、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0067】
次に、ステップ2として、上記樹脂層に対して、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接パターン状に、光照射(露光)する。なお、ドライフィルムをラミネートする方法においては、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離する。なお、特性を損なわない範囲であれば露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して露出した樹脂層を露光してもよい。露光では、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も 用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~900mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0068】
次いで、ステップ3として、上記露光後の樹脂層を現像液で処理する。これにより、樹脂中の未露光部分を除去して、実施形態に係る透明樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
【0069】
現像に用いる方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等の中から任意の方法を選択することができる。
現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0070】
また、必要に応じて、ステップ4として、さらにパターン膜に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)してもよい。加熱温度は、特に限定されないが、例えば、100~220℃で30~120分程度の加熱等である。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0071】
実施形態に係る硬化物は、下記条件で測定される透過率が85%以上であることが好ましい。これにより、当該硬化物を透明電子部品用の絶縁保護膜として好適に使用することができる。
(条件)
透明樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が8μmになるように第一のフィルム上に塗布し、80℃の熱風乾燥機で30分加熱乾燥して樹脂層を形成する。前記樹脂層の露出面に膜厚50μmのCOPフィルムに接触するように貼り合わせ、ラミネートを行う。
平行光露光機を用いてベタ露光した後、第一のフィルムを剥がし、30℃の1%Na2CO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行う。
その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの硬化物を形成した透過率測定用の基板を得る。
得られた硬化物の380~780nmにおける透過率を紫外可視分光光度計を用いて測定する。
【0072】
(電子部品)
実施形態に係る電子部品は、上述した態様の硬化物を有する。当該硬化物は、透明性に優れるだけでなく、微細加工に適し、かつ密着性が良好であるため、透明電子部品用の絶縁保護膜として好適に用いられる。透明電子部品としては、透明アンテナ、透明ディスプレイなどが挙げられる。
より具体的には、上述した態様の硬化物は、透明電子部品における表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜に好適に用いられる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0074】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
表1に示す各成分を配合し、撹拌機にて混合しロール又はビーズミルにて分散することで、各実施例および各比較例の透明樹脂組成物を調製した。なお、表中の数値は固形分の質量部を意味する。
【0076】
なお、表1に記載の合成例1~3の詳細は以下のとおりである。
【0077】
(合成例1:シクロヘキシル基と、カルボキシ基とを有するアルカリ可溶性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管および撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸223.8g(2.6mol)、メタクリル酸メチル100.1g(1.0mol)シクロへキシルアクリレート246.7g(1.6mol)、ジプロピレングリコールメチルエーテル1400g、アゾビスイソブチロニトリル16.4g(0.1mol)を加え、窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させた。トリフェニルホスフィンを17.0g(0.07mol)添加した後にグリシジルメチルメタクリレート156.4g(1.1mol)加えて、90~100℃で6時間加熱してアクリル基を付加させた。その後、エアバブリングによってトリフェニルホスフィンを失活させ、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを有するアルカリ可溶性ポリマー溶液(固形分酸価:110mgKOH/g、固形分濃度:35質量%、分子量Mw:15000)を得た。
【0078】
(合成例2:芳香環に直結していないイソシアネート基およびシクロへキシル基を有する、化合物を用いたウレタン樹脂の合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)を360g(0.45mol)、ジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物として、ヒドロキシフェニルエチルアルコール22.1g(0.16mol)を投入した。
次に、芳香環に直結していないイソシアネート基を有し、且つシクロへキシル基を有する化合物としてジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネ-ト283.0g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、芳香環に直結していないイソシアネート基およびシクロへキシル基を有する、化合物を用いたウレタン樹脂を得た。得られた芳香環に直結していないイソシアネート基およびシクロへキシル基を有する、化合物を用いたウレタン樹脂の固形分の酸価は41.3mgKOH/gであった。
【0079】
(合成例3:芳香環に直結していないイソシアネート基を有するがシクロへキシル基を有さない、化合物を用いたウレタン樹脂の合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)を360g(0.45mol)、ジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としてヒドロキシフェニルエチルアルコール22.1g(0.16mol)を投入した。次に、芳香環に直結していないイソシアネート基を有するがシクロへキシル基を有さない、化合物として、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート200.9g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、芳香環に直結していないイソシアネート基を有するがシクロへキシル基を有さない、化合物を用いたウレタン樹脂を得た。得られた芳香環に直結していないイソシアネート基を有するがシクロへキシル基を有さない、化合物を用いたウレタン樹脂ウレタン樹脂の固形分の酸価は48.8mgKOH/gであった。
【0080】
(合成例4:芳香環に直結しているイソシアネート基を有する化合物を用いたウレタン樹脂の合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)を360g(0.45mol)、ジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn-ブタノール11.8g(0.16mol)を投入した。次に、芳香環に直結しているイソシアネートイソシアネート基を有する化合物としてトリレンジイソシアネート187.9g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(ワニスD)を得た。得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂の固形分の酸価は49.5mgKOH/gであった。
【0081】
<評価用ドライフィルムの作製>
各実施例および各比較例の透明樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が8μmになるように大きさ95mm×150mm、厚さ25μmのポリエチレンフィルム(E5041、東洋紡株式会社製)上に塗布し80℃の熱風乾燥機で30分加熱乾燥して樹脂層を形成し、樹脂層上に大きさ95mm×150mm、厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(MA-411、王子エフテックス株式会社製)を貼り合わせて評価用ドライフィルムを得た。実施例13の透明樹脂組成物を用いた場合には、ポリエチレンフィルムへの塗工性が他の実施例に比べて良好であることが確認された。
【0082】
<現像性>
<評価用ドライフィルムの作製>にて作製した各ドライフィルムの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥がし、露出した樹脂層側が大きさ90mm×150mm、厚さ50μmのCOPフィルム(ZEONER ZF14、日本ゼオン株式会社製(ヘイズ値1.8%))に接触するよう貼り合わせて2チャンバー型真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、CVP-300)を用い、第1チャンバーのみを用いて条件を温度70℃、真空引き時間20秒、圧力0.4MPa、加圧時間40秒として基板とドライフィルムとをラミネートし室温まで放冷して、現像性評価用の基板を作製した。
【0083】
上述した方法により作製した現像性評価用の基板に対して、現像液(液温30℃の1質量%NaCO水溶液)を0.1MPaのスプレー圧で30秒間スプレーして現像を行った。現像後のCOP基材のヘイズ値をヘーズメーター(日本電色工業(株)製 NDH-7000II)にて測定し、残渣の有無を確認した。評価結果を表1に示す。なお、COP基材のみのヘイズ値は1.8%であった。
A+(優良):COP基材のヘイズ値が2.5%未満であった。
A(良):COP基材のヘイズ値が2.5%以上3.0%未満であった。
B(可):COP基材のヘイズ値が3.0%以上3.5%未満であった。
C(不可):COP基材のヘイズ値が3.5%以上であった。
【0084】
<透過率測定>
<評価用ドライフィルムの作製>にて作製したドライフィルムの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥がし、露出した樹脂層側が大きさ95mm×150mm、厚さ50μmのCOPフィルム(ZEONER ZF14、日本ゼオン株式会社製(透過率90%以上))に接触するように貼り合わせて2チャンバー型真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、CVP-300)を用い、第1チャンバーのみを用いて条件を温度70℃、真空引き時間20秒、圧力0.4MPa、加圧時間40秒としてCOPフィルムとドライフィルムとをラミネートし、平行光露光機(EXP2960 ORC製作所(株)製)を用いてKodakステップタブレットNo.2を乗せ現像後の段数が5段となるような最適露光量でベタ露光した。ポリエチレンフィルムを剥がした後、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの本硬化物を形成した透過率測定用の基板を得た。
得られた本硬化物の380~780nmにおける透過率を紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V-570)を用いて測定した。
【0085】
得られた透過率について、以下の基準にて評価した。
A+(優良):90%以上
A(良):85%以上90%未満
B(可):70%以上85%未満
C(不可):70%未満
【0086】
<ヘイズ測定>
<評価用ドライフィルムの作製>にて作製したドライフィルムの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥がし、露出した樹脂層側が大きさ95mm×150mm、厚さ50μmのCOPフィルム(ZEONER ZF14、日本ゼオン株式会社製)に接触するよう貼り合わせて2チャンバー型真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、CVP-300)を用い、第1チャンバーのみを用いて条件を温度70℃、真空引き時間20秒、圧力0.4MPa、加圧時間40秒としてCOPフィルムとドライフィルムとをラミネートし、平行光露光機(EXP2960 ORC製作所(株)製)を用いてKodakステップタブレットNo.2を乗せ現像後の段数が5段となるような最適露光量でベタ露光した。ポリエチレンフィルムを剥がした後、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの本硬化物を形成したヘイズ測定用の基板を得た。
ヘイズ測定用の基板について、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製 NDH7000II)を用い、ヘイズ値を測定した。
得られたヘイズ値に基づいて、以下の基準にて評価した。得られた結果を表1に示す。
A+(優良):4.0%未満
A(良):4.0%以上4.5%未満
B(可):4.5%以上7.0%未満
C(不可):7.0%以上
【0087】
<恒温恒湿試験後の透過率測定>
透過率測定に用いた、膜厚8μmの本硬化物を形成したCOPフィルムを85℃、85RH%の条件下で500時間、静置したのち、上述の透過率測定および評価を行った。
【0088】
<恒温恒湿試験後ヘイズ>
ヘイズ測定に用いた、膜厚8μmの本硬化物を形成したCOPフィルムを85℃、85RH%の条件下で500時間、静置したのち、上述のヘイズ測定および評価を行った。
【0089】
<COP密着性>
<評価用ドライフィルムの作製>にて作製したドライフィルムの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥がし、露出した樹脂層側が大きさ95mm×150mm、厚さ50μmのCOPフィルム(ZEONEX ZF14、日本ゼオン株式会社製)に接触するように貼り合わせて2チャンバー型真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、CVP-300)を用い、第1チャンバーのみを用いて条件を温度70℃、真空引き時間20秒、圧力0.4MPa、加圧時間40秒としてCOPフィルムとドライフィルムとをラミネートし、平行光露光機(EXP2960 ORC製作所(株)製)を用いてKodakステップタブレットNo.2を乗せ現像後の段数が5段となるような最適露光量でベタ露光した。ポリエチレンフィルムを剥がした後、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの本硬化物を形成したCOP密着性評価用の基板を得た。
上記で得られた各評価用基板についてJISK5400に準拠して、基板上の本硬化物に、1mmの格子100個(10×10)を作り、全格子上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をCOPフィルムに対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、光学顕微鏡(キーエンス(株)製 VHX-7000)によって測定倍率500倍で観察し、完全に剥がれないで残った格子の数を調べた。以下の基準にて本硬化物の密着性を評価し、評価結果を表1に示した。
A+:格子が100%残存
A:格子が95%以上100%未満残存
B:格子が90%以上95%未満残存
C:格子が90%未満残存
【0090】
<Cu上密着性>
<評価用ドライフィルムの作製>にて作製したドライフィルムの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥がし、露出した樹脂層側を5%硫酸水溶液によって酸化膜除去をした膜厚1.8mmの銅張積層板に接触するように貼り合わせて2チャンバー型真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、CVP-300)を用い、第1チャンバーのみを用いて条件を温度70℃、真空引き時間20秒、圧力0.4MPa、加圧時間40秒として銅張積層板とドライフィルムとをラミネートし、平行光露光機(EXP2960 ORC製作所(株)製)を用いてKodakステップタブレットNo.2を乗せ現像後の段数が5段となるような最適露光量でベタ露光した。ポリエチレンフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO水溶液をスプレー圧0.1MPaの条件で用いて30秒間現像を行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて130℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚8μmの本硬化物を形成したCu上密着性の評価用基板を得た。
得られた各評価用基板についてJISK5400に準拠して、基板上の本硬化物に、1mmの格子100個(10×10)を作り、全格子上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を銅張積層板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、光学顕微鏡(キーエンス(株)製 VHX-7000)によって測定倍率500倍で観察し、完全に剥がれないで残った格子の数を調べた。以下の基準にて硬化物の密着性を評価し、評価結果を表1に示した。
A+:格子が100%残存
A:格子が95%以上100%未満残存
B:格子が90%以上95%未満残存
C:格子が90%未満残存
【0091】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の透明樹脂組成物は、透明性、現像性および密着性に優れるため、透明電子部品向けの保護膜の形成に用いることができる。
【要約】
【課題】 透明性、現像性および密着性に優れた透明樹脂組成物に関する技術を提供する。
【解決手段】 本発明のある態様は、透明樹脂組成物である。当該透明樹脂組成物は、アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)と重合性化合物(C)とを有する。アルカリ可溶性ポリマー(A)はシクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有する。カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)は、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られる。重合性化合物(C)は、エチレンオキサイド骨格を有する。アルカリ可溶性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、アルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量が45~75質量部である。
【選択図】なし