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特許7627321樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、発光素子実装基板
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  • 特許-樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、発光素子実装基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、発光素子実装基板
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20250129BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20250129BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20250129BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20250129BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20250129BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20250129BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20250129BHJP
   C08K 5/37 20060101ALN20250129BHJP
   C08K 3/22 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
C08L101/08
C08L75/04
C08K13/02
C08J7/04 Z CFG
B32B27/40
B32B27/20 A
H05K3/28 C
H05K3/28 F
C08K5/37
C08K3/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023187237
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
(72)【発明者】
【氏名】木之瀬 葵
(72)【発明者】
【氏名】米田 一善
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/141124(WO,A1)
【文献】特開2012-219232(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096206(WO,A1)
【文献】特開2011-164270(JP,A)
【文献】特開2016-089172(JP,A)
【文献】特開2021-138916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有し、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性ポリマー(A)と、
ウレタンポリマー(B)と、
チオール基を含有する化合物(C)と、
白色顔料(D)と
を含有し、
前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記ウレタンポリマー(B)と前記化合物(C)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、前記白色顔料(D)の含有量が、100~600質量部である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記白色顔料(D)が、酸化チタンを含有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタンポリマー(B)が、カルボキシル基を含有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記ウレタンポリマー(B)と前記化合物(C)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、前記白色顔料(D)の含有量が、200~500質量部である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項5】
重合開始剤を含む、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1記載の樹脂組成物を第一のフィルムに塗布して得られるドライフィルム。
【請求項7】
請求項1記載の樹脂組成物又は請求項6記載のドライフィルムを用いて得られる硬化物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物を有する、発光素子実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、発光素子実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ向けとして、白色ソルダーレジストが使用されることがある。ソルダーレジストとして白色ソルダーレジストを用いることで、通常のソルダーレジストに求められる回路の永久保護膜としての機能と共に、LED等が実装された際の反射率が高まり、輝度を高めることが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、共重合体の原料としてシクロヘキシルメタクリレートを含有し、酸化チタン等が併用された樹脂組成物を用いて白色ソルダーレジストを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-087927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に係る白色ソルダーレジストは、高い反射率を達成しようとした場合、不良品が生じ易いことが判った。
【0006】
そこで本発明は、高い反射率を有しつつも、不良品が生じ難い白色ソルダーレジストを製造可能な樹脂組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の成分を組み合わせることで、前記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
本発明のある形態は、樹脂組成物である。
前記樹脂組成物は、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A)と、ウレタンポリマー(B)と、チオール基を含有する化合物(C)と、白色顔料(D)とを含有する。
【0009】
前記白色顔料(D)が、酸化チタンを含有することが好ましい。
前記ウレタンポリマー(B)が、カルボキシル基を含有することが好ましい。 前記アルカリ可溶性ポリマー(A)と前記ウレタンポリマー(B)と前記化合物(C)との合計を100質量部とした場合に、固形分換算で、前記白色顔料(D)の含有量が、200~500質量部であることが好ましい。
前記樹脂組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の別の形態は、前記樹脂組成物を第一のフィルムに塗布して得られるドライフィルムである。
【0011】
本発明の更に別の形態は、前記樹脂組成物又は前記ドライフィルムを用いて得られる硬化物である。
【0012】
本発明の更に別の形態は、前記硬化物を有する、発光素子実装基板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い反射率を有しつつも、不良品が生じ難い白色ソルダーレジストを製造可能な樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、発光素子実装基板の一部の領域を抜出した上面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0016】
本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
【0017】
本明細書において、特に断らない限り、各種測定は、環境温度を室温(25℃)として実施する。
【0018】
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0019】
本明細書において、樹脂組成物中に含まれる成分と、樹脂組成物の乾燥塗膜である樹脂層等に含まれる成分と、を区別せずに説明することがある。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含することを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を包含することを意味する。
【0021】
本明細書において、酸価は、キシレンとジメチルホルムアミドを1:1の質量比で混合した滴定溶剤に試料を溶かし、電位差滴定法により0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点として、終点までの水酸化カリウム溶液の滴定量から算出した値とする。
【0022】
以下、本開示に係る樹脂組成物の、成分、使用方法/用途について説明する。
【0023】
<<<樹脂組成物の成分>>>
本開示に係る樹脂組成物は、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A)と、ウレタンポリマー(B)と、チオール基を含有する化合物(C)(以下、チオール基含有化合物(C)と表記する。)と、白色顔料(D)とを含むことが好ましい。
本開示に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(E)を含むことが好ましい。
本開示に係る樹脂組成物は、重合開始剤(F)を含むことが好ましい。
本開示に係る樹脂組成物は、その他の成分(G)を含んでいてもよい。
以下、各成分について説明する。
【0024】
<<アルカリ可溶性ポリマー(A)>>
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するポリマーであれば特に限定されない。
【0025】
アルカリ可溶性ポリマー(A)としては、シクロヘキシル基を含有するモノマーとカルボキシル基を含有するモノマーとを含むモノマーの共重合体、シクロヘキシル基を有するポリマーの末端部分をカルボキシル基含有官能基で置換した変性物、カルボキシル基を有するポリマーの末端部分をシクロヘキシル基含有官能基で置換した変性物等が挙げられる。アルカリ可溶性ポリマー(A)は、シクロヘキシル基を有するモノマーとカルボキシル基を含有するモノマーとを含むモノマーの共重合体であることが好ましい。
【0026】
シクロヘキシル基を有するモノマーとしては、特に限定されず、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、シクロヘキシル基と(メタ)アクロイル基とを含有する化合物等が挙げられる。
【0027】
カルボキシル基を含有するモノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の、カルボキシル基と(メタ)アクロイル基とを含有する化合物等が挙げられる。
【0028】
これらのモノマーを従来公知の条件で共重合させることで、アルカリ可溶性ポリマー(A)を製造することができる。シクロヘキシル基を有するモノマーと、カルボキシル基を含有するモノマーと、の割合は任意の条件とすることができるが、質量基準で30:70~70:30の割合であることが解像性および反射率の点で好ましい。
【0029】
またこの場合、アルカリ可溶性ポリマー(A)を共重合させる際に使用されるモノマーは、シクロヘキシル基を有するモノマー及びカルボキシル基を含有するモノマー以外のモノマー(その他のモノマー)を含んでいてもよい。
【0030】
その他のモノマーは特に限定されない。その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等のシクロヘキシル基を有しない(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
アルカリ可溶性ポリマー(A)を構成する全モノマーに対するその他のモノマーの割合は、例えば、50mol%以下、30mol%以下、25mol%以下、又は、20mol%以下でありる。その他のモノマーの割合の下限値は、例えば、1mol%、2mol%、5mol%、又は、10mol%である。
【0032】
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、エチレン性不飽和基(不飽和二重結合を有する炭化水素基)を有することが好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0033】
エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性ポリマー(A)は、例えば、前述のようなシクロヘキシル基を有するモノマーとカルボキシル基を含有するモノマーとの共重合体に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上のエチレン性不飽和基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物を付加して製造することができる。
【0034】
アルカリ可溶性ポリマー(A)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0035】
アルカリ可溶性ポリマー(A)の酸価は、20~300(mgKOH/g)であることが好ましく、40~250(mgKOH/g)であることがより好ましく、50~200(mgKOH/g)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)の酸価をこのような範囲とすることで、現像性に優れつつ、解像性、反射率に優れた硬化物を得易くなる。
【0036】
アルカリ可溶性ポリマー(A)のカルボン酸当量は、100~1000(g/eq)であることが好ましく、200~800(g/eq)であることがより好ましく、300~500(g/eq)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)のカルボン酸当量をこのような範囲とすることで、現像性に優れつつ、解像性、反射率に優れた硬化物を得易くなる。
【0037】
アルカリ可溶性ポリマー(A)のシクロヘキシル基当量は、100~1000(g/eq)であることが好ましく、200~800(g/eq)であることがより好ましく、300~600(g/eq)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)のシクロヘキシル基当量をこのような範囲とすることで、各種性能に優れた硬化物を得易くなる。
【0038】
アルカリ可溶性ポリマー(A)が(メタ)アクリロイル基を含む場合、アルカリ可溶性ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量は、100~2000(g/eq)であることが好ましく、200~1800(g/eq)であることがより好ましく、300~1500(g/eq)であることが特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)のカルボン酸当量をこのような範囲とすることで、各種性能に優れた硬化物を得易くなる。
【0039】
アルカリ可溶性ポリマー(A)の重量平均分子量は、1,500~150,000とすることができ、1,500~100,000が好ましく、1,500~50,000がより好ましく、1,500~40,000が特に好ましい。アルカリ可溶性ポリマー(A)の重量平均分子量をこのような範囲とすることで、各種性能に優れた硬化物を得易くなる。
【0040】
樹脂組成物中のアルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量は、白色顔料を除いた樹脂組成物の固形分全質量を基準として、5質量%以上、8質量%以上、又は、10質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下、45質量%以下、又は、40質量%以下であることが好ましい。
【0041】
<<ウレタンポリマー(B)>>
ウレタンポリマー(B)は、1つの分子に2個以上の水酸基を有するポリオールと、1つの分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとの反応物等である。
【0042】
ウレタンポリマー(B)は、従来公知のものを使用可能であり、特に限定されない。ウレタンポリマー(B)は、カルボキシル基含有ウレタンポリマー(以下、カルボキシル基含有ウレタン樹脂とする。)であることが好ましい。以下、ウレタンポリマー(B)として好ましく用いられる、カルボキシル基含有ウレタン樹脂について詳述する。
【0043】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂は、好ましくは、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られる。樹脂組成物は、カルボキシル基含有ウレタン樹脂を含むことで、下地との密着性および現像性が向上する。カルボキシル基含有ウレタン樹脂は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂でも、エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有ウレタン樹脂でもよい。中でも、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂が、光硬化性や耐現像性に優れるため好ましい。
【0044】
具体的には、カルボキシル基含有ウレタン樹脂は、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、反応停止剤としても機能する前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)との反応により、末端に導入されたフェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂であることが好ましいが、これ以外にも、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)との反応により得られ、該化合物(b)として、フェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いて分子側鎖にフェノール性ヒドロキシル基を導入したウレタン樹脂、あるいはさらに1分子中にカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いて分子側鎖にカルボキシル基を導入したウレタン樹脂等を含む。後者のウレタン樹脂においては、末端封止剤(反応停止剤)として、上記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)を用いることができるほか、脂肪族アルコールやモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物等のモノヒドロキシル化合物や、アルコール性ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基等のイソシアネート基と付加反応又は縮合反応し得る官能基を有するモノカルボン酸等、従来公知の各種反応停止剤を用いることができる。
【0045】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂は、例えば、前記好適なウレタン樹脂の場合、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)とを一括混合して反応させてもよく、あるいは上記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)とを反応させ、続いて反応停止剤としても機能する上記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)を反応させてもよい。また、前記した他のウレタン樹脂の場合、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中にフェノール性ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、反応停止剤とを一括混合して反応させてもよいが、分子量調整の点からは、上記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と上記化合物(b)とを反応させ、続いて反応停止剤を反応させてもよい。
【0046】
前記反応は、室温~100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために70~100℃に加熱することが好ましい。また、上記(a)~(c)成分の反応比率(モル比)としては、(a):(b)=1:1~2:1、好ましくは1:1~1.5:1、(a+b):(c)=1:0.01~0.5、好ましくは1:0.02~0.3の割合が適当である。
【0047】
前記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)としては、従来公知の各種の芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を使用でき、特定の化合物に限定されない。芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の分岐脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(o,m,又はp)-(水添)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン-1,3-ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジメチレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネートであるトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。これらの芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのジイソシアネート化合物を使用した場合、耐環境性、低反り性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ジイソシアネートを用いることもできる。
【0048】
次に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)としては、従来公知の各種ポリオールを使用でき、特定の化合物に限定されないが、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、水素化ポリブタジエン系ポリオール、水素化イソプレンポリオール、リン含有ジオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、カルボキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、リン含有ポリオール等を好適に用いることができる。ポリカーボネートジオールとしては、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-1)、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-2)、又は直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-3)が挙げられる。また、カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-4)、さらにフェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-5)等を用いた場合、分子側鎖に官能基(フェノール性ヒドロキシル基やカルボキシル基)を持たせることができる。リン含有ポリオール(b-6)を用いた場合、ウレタン樹脂に難燃性を付与することができる。これらの化合物(b-1)~(b-6)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
上述した1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-1)の具体例としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,9-ノナンジオールと2-メチル-1,8-オクタンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0050】
上述した1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-2)の具体例としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0051】
上述した直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b-3)の具体例としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0052】
上述したカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-4)の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を導入することができる。
【0053】
上述したフェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-5)の具体例としては、6-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゼンジメタノール、2,4-ジ(ヒドロキシメチル)-6-シクロヘキシルフェノール、3,3’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンメタノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)ビス[2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール]、2-ヒドロキシ-5-フルオロ-1,3-ベンゼンジメタノール、4,4’-メチレンビス(2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,5-ジメチル-3-ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’-シクロヘキシリデンビス(2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’-シクロヘキシリデンビス(2-シクロヘキシル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2-ヒドロキシ-5-エチル-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタノール、4-(1,1-ジメチルエチル)-2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-シクロヘキシル-1,3-ベンゼンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-2,5-ジメチルフェニル)メチル]-3,4-ジメチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-2,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-シクロヘキシルフェノール、2-ヒドロキシ-1,3,5-ベンゼントリメタノール、3,5-ジメチル-2,4,6-トリヒドロキシメチルフェノール、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチル-6-ヒドロキシメチルフェノール)、2,3,5,6-テトラ(ヒドロキシメチル)-1,4-ベンゼンジオール、4,4’-メチレンビス[2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]等が挙げられる。これらのフェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にフェノール性ヒドロキシル基を導入することができる。
【0054】
前記ポリカーボネートジオールは、数平均分子量200~5,000のものが好ましいが、ポリカーボネートジオールが構成単位として直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を含み、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7~7:3である場合は、数平均分子量が400~2,000のものが好ましい。
【0055】
上述したビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0056】
上述したリン含有ポリオールの具体例としてはFC-450(旭電化工業(株)製)、M-Ester(三光(株)製)、M-Ester-HP(三光(株)製)等が挙げられる。このリン含有ポリオールを用いることによりウレタン樹脂中にリン化合物を導入することができ、難燃性を付与することができる。
【0057】
次に、1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)としては、従来公知の各種モノヒドロキシ化合物を使用でき、特定の化合物に限定されないが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸等があるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
フェノール性ヒドロキシル基を有する、前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)は、ポリウレタンにフェノール性ヒドロキシル基を導入させる目的で用いられ、ポリウレタンの末端封止剤としても機能し、特に分子中にイソシアネートと反応し得る1つのアルコール性ヒドロキシル基及びフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物であれば反応停止剤として機能する。このような化合物(c)の具体例としては、例えばヒドロキシメチルフェノール、ヒドロキシメチルクレゾール、ヒドロキシメチル-ジ-t-ブチルフェノール、p-ヒドロキシフェニル-2-メタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,4-ジメチル-6-ヒドロキシメチルフェノール、2,3,6-トリメチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2-シクロヘキシル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルフェノール、4-メチル-6-ヒドロキシメチルベンゼン-1,2-ジオール、4-(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシメチルベンゼン-1,2-ジオール等のヒドロキシアルキルフェノール又はヒドロキシアルキルクレゾール;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、あるいはヒドロキシフェノキシ安息香酸等のカルボキシル基含有置換基を有するフェノールと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等とのエステル化物;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物(c)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量は500~100,000であることが好ましく、8,000~50,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。カルボキシル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量が500以上であることで、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度が向上し、100,000未満であることで現像可能であり、また溶解性が向上し、かつ溶解後の粘度も高くなりすぎない。
【0060】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂の酸価は10~120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、20~80mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が10mgKOH/g以上であることで、熱硬化性成分との反応性がより向上し、耐熱性がより向上する。一方、酸価が120mgKOH/g以下であることで、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性がより向上する。なお、樹脂の酸価はJIS K5601―1-2-1:1999に準拠して測定した値である。
【0061】
これらのカルボキシル基含有ウレタン樹脂は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
ウレタンポリマー(B)は、カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b-4)を用いないでウレタン樹脂の合成を行うこと等によって得られる、カルボキシル基を含有しないウレタン樹脂であってもよい。ウレタンポリマー(B)は、芳香環に直結するイソシアネート基を有する化合物(例えば、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート等)を用いて得られたものであってもよい。
【0063】
ウレタンポリマー(B)の合成において、前述した1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)として(メタ)アクリロイル基等の反応性基を有する化合物を用いた場合、末端に反応性基が導入されたウレタンプレポリマー(B)を容易に得ることができる。
【0064】
ウレタンポリマー(B)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0065】
ウレタンポリマー(B)がカルボキシル基を含む場合、ウレタンポリマー(B)の酸価は、10~300(mgKOH/g)であることが好ましく、20~200(mgKOH/g)であることがより好ましく、30~100(mgKOH/g)であることが特に好ましい。ウレタンポリマー(B)の酸価をこのような範囲とすることで、各種性能に優れた硬化物を得易くなる。
【0066】
ウレタンポリマー(B)がカルボキシル基を含む場合、ウレタンポリマー(B)のカルボン酸当量は、100~2500(g/eq)であることが好ましく、200~2000(g/eq)であることがより好ましく、500~1500(g/eq)であることが特に好ましい。ウレタンポリマー(B)のカルボン酸当量をこのような範囲とすることで、各種性能に優れた硬化物を得易くなる。
【0067】
ウレタンポリマー(B)の重量平均分子量は、2000~150000であることが好ましく、3000~100000であることがより好ましく、4000~50000であることが特に好ましい。ウレタンポリマー(B)の重量平均分子量をこのような範囲とすることで、各種性能に優れた硬化物を得易くなる。
【0068】
樹脂組成物中のウレタンポリマー(B)の含有量は、白色顔料を除いた樹脂組成物の固形分全質量を基準として、5質量%以上、8質量%以上、又は、10質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下、45質量%以下、又は、40質量%以下であることが好ましい。
【0069】
ここで、樹脂組成物中の、アルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量に対するウレタンポリマー(B)の含有量の比(B/A)は、0.1以上、0.2以上、又は、0.5以上であることが好ましく、また、10.0以下、5.0以下、又は、4.0以下であることが好ましい。
【0070】
アルカリ可溶性ポリマー(A)の含有量とチオール基含有化合物(C)の含有量との比(C/A)は、0.10以上、又は、0.20以上であることが好ましく、また、2.00以下、1.50以下、1.00以下、又は、0.60以下であることが好ましい。
【0071】
ウレタンポリマー(B)の含有量とチオール基含有化合物(C)の含有量との比(C/B)は、0.10以上、又は、0.20以上であることが好ましく、また、2.00以下、1.50以下、1.00以下、又は、0.60以下であることが好ましい。
【0072】
<<チオール基含有化合物(C)>>
チオール基含有化合物(C)は、一分子中に少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)のチオール基を有する化合物である。
【0073】
チオール基含有化合物(C)としては、例えば、アルキルチオール化合物;末端チオール基を有するポリエーテル;末端チオール基を有するポリチオエーテル;エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物;ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物;ポリオールとメルカプト有機酸のエステル化合物;メルカプト変性(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0074】
単官能のチオール基含有化合物(C)の具体例としては、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
多官能のチオール基含有化合物(C)の具体例としては、1,4-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0075】
チオール基含有化合物(C)は、メルカプト変性(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。メルカプト変性(メタ)アクリレートは、ポリチオール化合物と、多官能の(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物である。メルカプト変性(メタ)アクリレートとしては、特開2023-097118号公報に開示されたもの等が挙げられる。
【0076】
チオール基含有化合物(C)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0077】
樹脂組成物中のチオール基含有化合物(C)の含有量は、白色顔料を除いた樹脂組成物の固形分全質量を基準として、2質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、又は、15質量%以上であることが好ましく、また、40質量%以下、30質量%以下、又は、20質量%以下であることが好ましい。
【0078】
<<白色顔料(D)>>
白色顔料(D)は、従来公知の白色顔料を使用可能である。
【0079】
白色顔料(D)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の酸化物;硫化亜鉛等の硫化物;水酸化鉛、水酸化アルミニウム等の水酸化物;硫酸バリウム等の硫酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;等の無機白色顔料が挙げられる。また、白色顔料は、粒子の表面を白色材料で被覆した被覆粒子であってもよい。白色顔料は、反射率等を高めるために表面処理が施されていてもよい。
【0080】
白色顔料(D)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0081】
白色顔料(D)は、酸化チタンを含むことが好ましい。
【0082】
酸化チタンの結晶形は特に限定されない。酸化チタンは、例えば、ルチル型酸化チタンであってもアナターゼ型酸化チタンであってもよい。
【0083】
酸化チタンの平均粒子径は特に限定されない。酸化チタンの体積平均粒子径(D50)は、例えば、100~1000nm、120~500nm、又は、150~400nmである。
【0084】
アルカリ可溶性ポリマー(A)とウレタンポリマー(B)とチオール基含有化合物(C)との合計を100質量部とした場合に、白色顔料(D)の含有量(或いは酸化チタンの含有量)は、固形分換算で、100質量部以上、150質量部以上、200質量部以上、又は、250質量部以上であることが好ましく、また、600質量部以下、550質量部以下、500質量部以下、450質量部以下、又は、400質量部以下であることが好ましい。より具体的には、この白色顔料(D)の含有量(或いは酸化チタンの含有量)は、200~500質量部、又は、250~400質量部であることが好ましい。
【0085】
<<熱硬化性樹脂()>>
熱硬化性樹脂()としては、例えば、エポキシ樹脂、多官能オキセタン化合物、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂、1分子内に2個以上のイソシアネート基(又はブロック化イソシアネート基)を有するポリイソシアネート化合物(又はブロックイソシアネート化合物)、メラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂等のアミン樹脂(又はその誘導体)、ビスマレイミド、オキサジン、シクロカーボネート化合物、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0086】
熱硬化性樹脂()は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0087】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等)、ノボラック型エポキシ樹脂(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0088】
熱硬化性樹脂()は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0089】
樹脂組成物中の熱硬化性樹脂()の含有量(或いはエポキシ樹脂の含有量)は、白色顔料を除いた樹脂組成物の固形分全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は、15質量%以上であることが好ましく、また、40質量%以下、30質量%以下、又は、25質量%以下であることが好ましい。
【0090】
<<重合開始剤(F)>>
重合開始剤(F)としては、光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。重合開始剤は光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0091】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(たとえば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物等)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体等の従来公知の化合物が挙げられる。
【0092】
重合開始剤(F)は、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0093】
樹脂組成物中の重合開始剤(F)の含有量(好ましくは、光重合開始剤の含有量)は、白色顔料を除いた樹脂組成物の固形分全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は、15質量%以上であることが好ましく、また、30質量%以下、25質量%以下、又は、20質量%以下であることが好ましい。
【0094】
<<その他の成分(G)>>
その他の成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、架橋剤、架橋助剤、消泡剤、防錆剤、触媒(エポキシ樹脂用の反応触媒、熱硬化触媒)、酸化防止剤、レベリング剤、シリカ等の無機充填材、増感剤、接着助剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤、セルロースナノファイバー、分散剤、密着性付与剤等の添加剤が挙げられる。
【0095】
また、樹脂組成物(G)は、その他の成分として、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のその他の有機溶剤;等が挙げられる。
【0096】
その他の成分(G)は、各々、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
なお、樹脂組成物中のその他の成分(G)の合計(有機溶剤を除く)の含有量は、白色顔料を除いた固形分の全質量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、又は、10質量%以上とすることができ、また、40質量%以下、30質量%以下、又は、20質量%以下とすることができる。
【0098】
白色ソルダーレジストにおいては、高反射率を達成するために、酸化チタン等の白色顔料が高充填され得る。その場合、硬化物の表面付近にも白色顔料が多量に存在し得る。このように、硬化物の表面に白色顔料が多量に存在することで、硬化物に接触した物品(クリップや金属コンベア等)を傷付ける場合があること、及び、硬化物側にこのような物品との接触痕が残り易くなり、不良品が発生し易い場合があることが判った。このような接触痕の発生に対する耐性をスクラッチ耐性とする。本開示に係る樹脂組成物によれば、白色顔料(D)を含有する樹脂組成物の成分として、アルカリ可溶性ポリマー(A)、ウレタンポリマー(B)、チオール基含有化合物(C)を組み合わせることで、アルカリ可溶性ポリマー(A)由来のシクロヘキシル基が疎水性や成分同士の相溶等に寄与し、また、現像性を有することとなり得る。また、ウレタンポリマー(B)を併用することで、得られる硬化物に柔軟性が付与され得る。また、チオール基含有化合物(C)を含有することで、他の重合性成分等と速やかに反応し、得られる硬化物の表面に硬化性が付与され得る。また、本開示に係る樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、従来公知の硬化物と比較して、白色顔料(D)が表面付近に位置し難くなることが判った。その理由は定かではないが、光硬化性が向上することにより、耐現像性が高くなり現像時に酸化チタンが露出し難くなることや、ウレタンポリマーを用いることで膨潤現像が生じ酸化チタン表面に膜として残り易い傾向があるためと考えられる。そのため、アルカリ可溶性ポリマー(A)、ウレタンポリマー(B)、チオール基含有化合物(C)を含む樹脂組成物は、白色顔料(D)を含有する(特に、高含有とする)場合であっても、スクラッチ耐性、低反り性、アンダーカット性等に優れた硬化物を得られるものと推測される。また、本開示に係る樹脂組成物によれば、このような成分を含むことで、リフロー時の変色が抑制され得る。また、樹脂組成物が熱硬化性樹脂()や重合開始剤(F)を含むことで、反応性や硬化性が高められ、前述した効果がより高められるものと推測される。本開示に係る樹脂組成物を用いて硬化物を形成する場合、他のソルダーレジスト等と同様に取り扱い可能である。また、当該硬化物と他の物品(クリップや金属コンベア等)とが接触した際の影響が少ない(当該硬化物を有する表面をどのように配置するか等の影響が少ない)ことから、片面に当該硬化物を設けた場合であっても両面に当該硬化物を設けた場合であっても同様に取り扱い可能である。このように、本開示に係る樹脂組成物を用いて形成された硬化物は取り扱いが容易であり、生産性効率を向上可能である。
【0099】
本開示に係る樹脂組成物は、例えば、各原料を同時に乃至は順番に混合し、従来公知の手段を用いて適宜混練することで製造することができる。また、各原料は、混合を行う前に、予め溶液や分散液として調製されていてもよい。
【0100】
<<<樹脂組成物の用途/使用方法>>>
以下、樹脂組成物の用途/使用方法として、樹脂組成物を用いたドライフィルム及び樹脂組成物を用いて得られる硬化物について説明する。
【0101】
<<ドライフィルム>>
ドライフィルムは、第一のフィルム(基材フィルム)の少なくとも一方の面上に本開示の樹脂組成物を塗布後、乾燥して得られる樹脂層を有する。ドライフィルムは、樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
【0102】
ドライフィルムは、第一のフィルム上に樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、前述した樹脂層を形成し、製造することができる。ドライフィルムは、樹脂層の上に第2のフィルム(保護フィルム)を積層されることが好ましい。第一のフィルムと第2のフィルムとは同一のフィルム材料であってもよし、異なるフィルム材料であってもよい。
【0103】
第一のフィルム及び第二のーフィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
【0104】
第一のフィルムとしては、例えば、2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
【0105】
第二のフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、第一のフィルムよりも小さいものが良い。
【0106】
第一のフィルム上の樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0107】
<<硬化物>>
本開示に係る樹脂組成物、又は、本開示に係る樹脂組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルムを用いて、硬化物を得ることができる。以下、硬化物の製造方法及びその用途等について説明する。
【0108】
<硬化物の製造方法>
以下、本開示に係る硬化物の製造方法の一例として、本開示に係る樹脂組成物を感光性樹脂組成物(感光性部位を有する成分を含む樹脂組成物)としつつ、ネガ型のフォトリソグラフィ法に適用し、本開示に係る樹脂組成物の硬化物であるパターン膜を製造する方法を説明する。
【0109】
まず、ステップ1として、基材上に樹脂組成物を塗布、乾燥して樹脂層を形成する。また、ドライフィルムを用いる場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせることにより基材上に樹脂層を形成する。
樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来、樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。
また、ドライフィルムを基材上に貼り合わせる方法は真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを用いることにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は40~120℃であることが好ましい。
【0110】
樹脂組成物を塗布した後に行う乾燥方法としては、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、乾燥条件は、特に限定されないが、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、60~130℃で1~30分の条件で行うことができる。
【0111】
樹脂層が形成される基材については、特に制限はなく、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0112】
次に、ステップ2として、基材上に形成した樹脂層を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接パターン状に、光照射(露光)する。なお、ドライフィルムを用いる場合、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離する。なお、特性を損なわない範囲であれば露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して露出した樹脂層を露光しても良い。露光では、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークラン プ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータ により直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も 用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0113】
次いで、ステップ3として、上記露光後の樹脂層を現像液で処理する。これにより、樹脂層の未露光部分を除去してパターン硬化膜を形成することができる。現像後は、必要に応じて樹脂層をリンス液により洗浄してもよい。
【0114】
現像に用いる方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等の中から任意の方法を選択することができる。
【0115】
現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0116】
また、必要に応じて、ステップ4として、さらにパターン硬化膜に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)してもよい。加熱温度は、特に限定されないが、例えば、100~220℃で30~120分程度の加熱等である。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0117】
<硬化物の用途>
本開示の硬化物は、プリント配線板を含む種々の電子部品に用いることができる。本開示の硬化物は、優れた反射率や不良品が生じ難いことから、発光素子実装基板用とすることが好ましい。
【0118】
図1は、発光素子実装基板100(発光装置)の一例を示す。より具体的には、図1は、発光素子実装基板100の一部の領域を抜出した上面概念図を示す。図1に示されるように、発光素子実装基板100は、基板10と、基板10に設けられた回路(不図示)と、回路を覆うように設けられた反射層11と、基板10上に実装された複数の発光素子12と、を有する。
【0119】
発光素子12は、例えば、発光ダイオードである。
【0120】
反射層11は、本開示に係る樹脂組成物を用いて得られる硬化物によって形成された、白色ソルダーレジストである。反射層11は、回路を保護すると共に、発光素子12から照射された光を効率よく前面(上面)に反射し、発光効率を高める機能を有する。更に、反射層11はスクラッチ耐性に優れることで、当該発光素子実装基板100と接触した物品に対して傷を与え難い。また、本開示に係る樹脂組成物を用いて得られた硬化物である反射層11は、低反り性やアンダーカット性等に優れることから、発光素子実装基板100の信頼性を高めることができる。
【0121】
なお、図1においては、発光素子実装基板100が板状の構造としているが、発光素子実装基板100は、少なくとも一部又は全部が湾曲或いは屈曲した構造を有していてもよいし、フレキシブル配線基板であってもよい。また、発光素子12の密度や発光素子12同士の距離等、発光素子12の配置は適宜自由に変更可能である。
【実施例
【0122】
<<<樹脂組成物の調製>>>
下記に示す原料を用いて、表1に示す配合量となるように、実施例1-4、比較例1-5に係る樹脂組成物を調製した。表1は、各原料の固形分換算の含有量(質量部)を示す。
【0123】
<<シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A)>>
<A1>
以下の条件で、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A1)を製造した。
【0124】
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸223.8質量部(2.6mol)、メタクリル酸メチル100.1g(1.0mol)、シクロへキシルアクリレート246.7質量部(1.6mol)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル1400質量部、アゾビスイソブチロニトリル16.4質量部(0.1mol)を加え、窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させた。トリフェニルホスフィン17.0質量部(0.07mol)を添加した後に、グリシジルメチルメタクリレート156.4質量部(1.1mol)を加えて、90~100℃で6時間加熱して、アクリロイル基の付加を実施させた。その後、エアバブリングによってトリフェニルホスフィンを失活させ、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A1)(固形分酸価:110mgKOH/g、固形分濃度:35質量%、重量平均分子量Mw:15000、アクリル当量:約800、シクロヘキシル基当量:約500)を得た。
【0125】
<<ウレタンポリマー(B)>>
<B1>
以下の条件で、ウレタンポリマー(B1)を製造した。
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)360g(0.45mol)、ジメチロールブタン酸81.4g(0.55mol)、及び1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としてヒドロキシフェニルエチルアルコール22.1g(0.16mol)を投入した。
次に、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート200.9g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら加熱を行い、60℃に達した段階で加熱を停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続けた。赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。
次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、カルボキシル基含有ウレタンポリマー(B1)を得た。
得られたウレタンポリマー(B1)は、固形分酸価が48.8mgKOH/gであり、カルボン酸当量が1200であり、重量平均分子量Mwが16,000であった。
【0126】
<B2>
ウレタンポリマー
製品名:ART RESIN UN-3320HA(根上工業社製)
【0127】
<<チオール基含有化合物(C)>>
<C1>
チオール基含有メルカプト変性アクリレート
製品名:ADDITOL LED 01(ダイセル社製)
<C2>
2級多官能チオール化合物
製品名:カレンズMT PE1(レゾナック社製)
【0128】
<<白色顔料(D)>>
<D1>
酸化チタン
製品名:タイペークPFC107(石原産業社製、平均粒径D50=250nm)
【0129】
<<熱硬化性樹脂()>>
<E1>
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂
製品名:NC-3000H-CA75(日本化薬社製)
<E2>
ビフェニル骨格2官能エポキシ樹脂
製品名:YX-4000 フンサイヒン(三菱ケミカル社製)
【0130】
<<重合開始剤(F)>>
<F1>
光重合開始剤
製品名:Omnirad TPO H(IGM Resins B.V.社製)
<F2>
オキシム系光重合開始剤
製品名:Irgacure OXE04(BASFジャパン社製)
【0131】
<<その他の成分(G)>>
<G1>
架橋剤
EO9 ビスAメタクリレート
製品名:BPE-900(新中村化学社製)
【0132】
<<<評価>>>
各実施例及び各比較例に係る樹脂組成物について、以下の評価方法に基づき、反射率、スクラッチ耐性、低反り性、アンダーカット性、リフロー変色性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0133】
<<基板作製条件>>
以下の条件で基板を作製した。
厚さ50μm×大きさ150mm×100mmの銅張積層板(エスパネックス(ESPANEX)(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製;銅厚12μm、ポリイミド厚25μmの両面品))を硫酸過水洗浄処理し、100メッシュのスクリーン版で膜厚が20μmとなるように実施例1-4、比較例1-5の各樹脂組成物を塗布し、熱風循環式乾燥炉にて70℃で30分間乾燥した。その後、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて積算露光量が500mJ/cmになるように露光した。その後、熱風循環式乾燥炉にて150℃で60分間加熱し、本硬化させ試験用基板を得た。
【0134】
<<反射率>>
上記手法で得られた試験用基板について、硬化物表面を分光測色計(CM-2600d、コニカミノルタ社製)にて、SCI方式(正反射を含む)で450nmにおけるXYZ表色系のY値(%)を測定し反射率とした。
(評価基準)
A(優) :反射率が87%以上
B(良) :反射率が84%以上87%未満
C(不可):反射率が84%未満
【0135】
<<スクラッチ耐性>>
不良品の生じ難さをスクラッチ耐性により評価を行う。
得られた試験用基板の上に、厚さ18μm、大きさ100mm×100mmのポリイミドフィルムに35μmの銅箔を両面に張り付けた基板(両面銅張フレキ基板)を乗せ、さらにその上に直径12mmの円形で底面が平らな1kgの重り(分銅)をのせた。この状態で両面銅張フレキ基板を平行に10秒間で約10cmひっぱり、塗膜上に黒色痕が出来るかどうかを以下の基準で評価した。
(評価基準)
A(優) :5回以上試験して接触痕(黒い筋)が付かない。
B(良) :2~4回試験して接触痕(黒い筋)が付く。
C(不可):1回の試験で接触痕(黒い筋)が付く。
【0136】
<<低反り性>>
得られた試験用基板を50mm×50mmに切り出し、室温下でカッターマット上に静置し4隅の反りを合計した。試験はn=5で行い、平均値を算出し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
A(優) :反りが1mm未満である。
B(良) :反りが1mm以上4mm未満である。
C(不可):反りが4mm以上である。
【0137】
<<アンダーカット性>>
L/S=20μm/20μm~100μm/100μmの導体回路がL/S=10μm/10μmごとに形成された厚さ50μm×150mm×100mmの銅張積層板(エスパネックス(ESPANEX)(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製;銅厚12μm、ポリイミド厚25μm、両面品))を硫酸過水洗浄処理し、100メッシュのスクリーン版で膜厚が20μmとなるように実施例1-4、比較例1-5の各樹脂組成物を塗布し、熱風循環式乾燥炉にて70℃で30分間乾燥した。その後、L/S=L/S=20μm/20μm~100μm/100μmのパターンがL/S=10μm/10μmごとに形成されるように高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて積算露光量500mJ/cmで露光した。その後、熱風循環式乾燥炉にて150℃で60分間加熱し、本硬化させアンダーカット性試験用基板を得た。
得られたアンダーカット性評価用基板のライン幅を、光学顕微鏡(キーエンス社製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-6000)を用いて測定倍率500倍で計測し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
A(優) :アンダーカット性試験用基板上に50μmのラインが残っている。
B(良) :アンダーカット性試験用基板上に50μmのラインは残っていないが、60μmのラインが残っている。
C(不可):アンダーカット性試験用基板上に60μmのラインが残っていない。
【0138】
<<リフロー変色性>>
得られた試験用基板について、リフロー装置(エイテックテクトロン社製NIS-20-82S)を用い、エアー雰囲気、ピーク温度260℃にて60秒間保持のリフローを1~5回、の処理を行い目視にて変色の評価を行った。
(評価基準)
A(優) :リフロー5回で変色なし。
B(良) :リフロー3回で変色なしだが、リフロー4回で変色する。
C(不可):リフロー1~3回で変色する。
【0139】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の樹脂組成物により、高い反射率を有しつつ、不良品が生じ難い白色ソルダーレジスト(硬化物)を製造可能であり、種々の電子部品に用いることができる。
【符号の説明】
【0141】
10 基板
11 反射層
12 発光素子
100 発光素子実装基板
【要約】      (修正有)
【課題】高い反射率を有しつつも、不良品が生じ難い白色ソルダーレジストを製造可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のある形態は、樹脂組成物である。前記樹脂組成物は、シクロヘキシル基と、カルボキシル基とを含有するアルカリ可溶性ポリマー(A)と、ウレタンポリマー(B)と、チオール基を含有する化合物(C)と、白色顔料(D)とを含有する。
【選択図】なし
図1