(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】鉱物バインダー組成物の粘度低下のための添加剤としての分岐コポリマー
(51)【国際特許分類】
C04B 24/32 20060101AFI20250130BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20250130BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20250130BHJP
C04B 24/18 20060101ALI20250130BHJP
C04B 24/30 20060101ALI20250130BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20250130BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20250130BHJP
C08G 65/08 20060101ALI20250130BHJP
C04B 103/30 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
C04B24/32 A
C04B24/26 B
C04B24/12 A
C04B24/18 B
C04B24/30 C
C04B24/22 B
C04B28/02
C08G65/08
C04B103:30
(21)【出願番号】P 2022524265
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2020083325
(87)【国際公開番号】W WO2021105187
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-02
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ユルグ バイトマン
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ツィンマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フルンツ
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510689(JP,A)
【文献】特表2016-510081(JP,A)
【文献】米国特許第04857218(US,A)
【文献】特表2012-532975(JP,A)
【文献】特開昭59-159830(JP,A)
【文献】特表2002-533495(JP,A)
【文献】特開2007-153641(JP,A)
【文献】特表2023-503538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C08G 65/00
C08G 65/08
C08G 65/329
C04B 103/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物バインダー組成物の流速を増加させるための及び/又は粘度を低下させるための添加剤としてのコポリマーの使用であって、前記コポリマーが以下の工程を含む多段操作で調製される、コポリマーの使用:
(1)任意選択で、一般式R
1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸、又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R
2-XHと反応させること、ここで、R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br、又はI、及びR
2=C1~C16アルキルである、
(2)一般式R
1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸、又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール
、又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合
物と反応させること、ここで、R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【請求項2】
前記コポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマーの使用:
【化1】
(式中、
R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニ
ルであり、
X=O又はNHであり、
Aは、それぞれ独立して、C1~C10アルキレ
ンであり、
R
2=C1~C16アルキルであり、
Bは、それぞれ独立して、C1~C10アルキレ
ンであり、
R
3=H、C1~C16アルキル、又はC(O)R
1であり、R
1は上記で定義され
、
mは、それぞれ独立して、0~350の範囲の整数であり、
nは、0~100の範囲の整数であり、
pは、0又は1であり、
qは、1~10の範囲の整数であり、かつ
q=1の場合、oは、1~10の範囲の整数であり、q>1の場合、それぞれのoは、独立して1~50の範囲の整数である)。
【請求項3】
前記コポリマーが、一般構造(II)、(III)、又は(V)のコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマーの使用:
【化2】
(式中、
R
1は、C1~C18アルキルか
ら選択され、
Aは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレン
、エチレンであり、
Bは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレン
、エチレンであり、
mは、それぞれ独立して、0~35
0の範囲の整数であり、
nは、1~10
0の範囲の整数であり、
oは、それぞれ独立して、1~5
0の範囲の整数であり、
qは、1~10の範囲の整数であり、かつ
xは、1~9の範囲の整数であるが、x<oであることを条件とする)。
【請求項4】
前記コポリマーの平均モル質量Mwは、200~75,00
0の範囲にあることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマーの使用。
【請求項5】
R
1は、C1~C18アルキル単
位であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコポリマーの使用。
【請求項6】
前記鉱物バインダー組成物は、それぞれ前記鉱物バインダー組成物の乾燥質量に基づいて、少なくとも5重量
%で少なくとも1つの水硬性バインダ
ーを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記コポリマーは、それぞれ鉱物バインダーの総重量に基づいて、0.01~10重量
%の量で存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
鉱物バインダーに対する水の比が、0.18~0.
6の範囲となる量で、前記鉱物バインダー組成物が水を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記鉱物バインダー組成物は、高性能コンクリート、超高性能コンクリート、又は自己充填コンクリートであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記鉱物バインダー組成物は、リグノスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリメラミンスルホン酸塩、及び/又はポリカルボン酸エーテルの群から選択される少なくとも1つの高性能流動化剤を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
多段操作
で少なくとも1つのコポリマーを
調製する、以下の工程:
(1)任意選択で、一般式R
1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸、又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R
2-XHと反応させること、ここで、R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br、又はI、及びR
2=C1~C16アルキルである、
(2)一般式R
1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸、又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール
、又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合
物と反応させること、ここで、R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること
を含む、鉱物バインダー組成物のための添加剤の製造方法。
【請求項12】
前記
コポリマーに、少なくとも1つのポリカルボン酸エーテルを
添加する工程を含み、ポリカルボン酸エーテルに対するコポリマーの比が、0.05:5~1:
1の範囲にあることを特徴とする、請求項11に記載の添加剤
の製造方法。
【請求項13】
請求項11及び/又は請求項12に記載の添加剤を、前記鉱物バインダー組成物の乾燥混合物に添加し、かつ/又は混合水と一緒に添加し、かつ/又は前記混合水の添加直後に添加することを特徴とする、鉱物バインダー組成物のレオロジーを制御する方法。
【請求項14】
多段操作
で少なくとも1つのコポリマー
を調製する、以下の工程:
(1)任意選択で、一般式R
1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸、又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R
2-XHと反応させること、ここで、R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br、又はI、及びR
2=C1~C16アルキルである、
(2)一般式R
1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸、又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール
、又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合
物と反応させること、ここで、R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル、又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること
、
を含み、かつ
前記コポリマーを少なくとも1つの鉱物バインダーに添加することを含む、鉱物バインダー組成物の製造方法。
【請求項15】
水を添加した後、請求項14に記載の鉱物バインダー組成物を硬化させる
ことで、成形体を製造する工程を含む、成形体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物バインダー組成物の流速を増加させ粘度を低下させるための添加剤としての分岐コポリマーの使用に関する。本発明の更なる態様は、鉱物バインダー組成物、及び分岐コポリマーを含む硬化した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
分散剤又は流動剤は、例えば、コンクリート、モルタル、セメント、石膏、及び石灰などのバインダー組成物の流動化剤(plasticizer)又は減水剤(water-reducing agent)として建築業界で使用されている。使用される分散剤は、一般に、固体形態で混合水に添加される又はバインダー組成物と混合される有機ポリマーである。このようにして、処理中のバインダー組成物の稠度と硬化状態における特性の両方を変更することが可能であることが有利である。
【0003】
適切な分散剤の選択及び投与量は、特に、特定の組成物、処理方法、又はバインダー組成物の最終用途に依存する。特に、例えば、特殊なコンクリート又は特殊なモルタルなどの特定のバインダー組成物の場合、これは要求の厳しい課題である。
【0004】
特殊コンクリートには、特に、水/鉱物バインダーの比(w/b比)が低く生成された、即ち、鉱物バインダーに基づいて水がほとんど含まれていないコンクリートが含まれる。このようなコンクリートは、特に、高性能コンクリート(HPC)、超高性能コンクリート(UHPC)、及び/又は自己充填コンクリート(SCC)である。
【0005】
SCCの重要な利点は、単に重力下で分離することなく急速に流動し、圧縮エネルギーを適用せずに自動的に空洞を満たし、空気を失うことである。従って、従来のコンクリートの場合のように振動させる必要はない。従って、自己充填コンクリートは、高い設置性能が必要な場合に、要求の厳しい幾何学的形状において、密なメッシュ補強の場合に、部品の厚さが薄い場合に、又は、あったとしても、困難な場合でのみ追加の圧縮エネルギーの適用が可能である状況で特に有利である。
【0006】
低いw/b比のコンクリートの更なる利点は、特に硬化状態での多孔性が低く、これにより特に高い強度が可能になることである。
【0007】
しかしながら、水で構成された後、低いw/b比のこのようなコンクリートはまた、望ましくないほど高い粘度及び粘着性を有する。従って、このようなコンクリートの製造、取り扱い、及び導入は、高い頻度で特に時間とエネルギーを消費する。
【0008】
実際には、ポリカルボン酸エーテル(PCE)の形態の高性能流動化剤(superplasticizer)は、典型的には、鉱物バインダー組成物の流動特性を向上させるために使用される。従来のPCEは、通常、水のレベルの大幅な低下を示し、鉱物バインダー組成物の降伏点を低下させるが、もしあったとしても、粘度に与える影響はわずかに過ぎない。更に、PCEは、典型的には、水和に遅延効果をもたらし、従って鉱物バインダーの強度を進展させる。
【0009】
それゆえ、欧州特許第2986580号明細書は、鉱物バインダー組成物の流速を増加させるため及び/又は粘度を低下させるための特定のPCEの使用を記載している。櫛形ポリマーは、側鎖のモル質量が低く、ポリマー主鎖において酸基に対する側鎖のモル比が低いことを特徴としている。しかしながら、これらのPCEは、同様に、鉱物バインダーの水の需要を減少させ、それに遅延効果をもたらす。
【0010】
国際公開第2010/112775号パンフレットは、ホスホン酸末端基を有する分岐ポリエーテルを記載しており、この場合、分岐は、ポリマー構造への窒素基の組み込みによって行われる。記載されているポリエーテルは、フレッシュコンクリートの粘度を低下させる。しかしながら、不利な点は、特にw/b比が低いコンクリートの場合、これらのポリエーテルは、典型的には、高い投与量で使用する必要があるにもかかわらず、降伏点又はスランプにほとんど影響を与えず、多くの場合、高い遅延特性及び減水特性を有する。
【0011】
最後に、欧州特許第2964586号明細書は、鉱物バインダーのための分散剤としてのコポリマーについて記載しており、この場合、コポリマーは、(i)エチレン性不飽和酸及び(ii)エチレン性不飽和分岐ポリエーテルマクロモノマーに由来する単位を含む。これらの分散剤には、取り扱いが難しいエピクロロヒドリンを使用して製造されるという不利な点がある。更に、これらのコポリマーは、多くの場合、望ましくない追加の空気の投入をもたらし、同様に、鉱物バインダーの水の需要の減少をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、鉱物バインダー組成物のための、特に低いw/b比のコンクリート又はモルタルのための添加剤が依然として必要であり、これは、これらの鉱物バインダー組成物の最適なレオロジー、従ってこれらの加工特性を保証し、これは、容易に入手可能である。より具体的には、鉱物バインダー組成物の流速を増加させ粘度を低下させるための添加剤が必要である。同時に、これらの添加剤は、あったとしても、非常に低い減水能力しか有さないならば、有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、鉱物バインダー組成物(無機バインダー組成物)のための、特に低いw/b比のコンクリート又はモルタルのための添加剤を提供することであり、これにより、鉱物バインダー組成物の流速の制御された増加及び粘度の低下が可能になる。可能ならば、これにより、鉱物バインダー組成物の更なる特性、特に、スプレッド(spread)、スランプ、又は降伏点が変化しない状態になるはずである。好ましくは更に、添加剤は、他の添加剤、特にPCEなどの流動化剤と一緒に使用できるはずである。
【0014】
驚くべきことに、この目的は、請求項1に記載されているように添加剤としてコポリマーを使用することによって達成されることが見出された。
【0015】
従って、本発明は、鉱物バインダー組成物の流速を増加させるための及び/又は粘度を低下させるための添加剤としてのコポリマーの使用に関し、この場合、コポリマーは、以下の工程を含む多段操作で調製することができる:
(1)任意選択で、一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させる工程であって、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである工程と、
(2)一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はエピクロロヒドリン又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物又はエピクロロヒドリンとアルコキシル化剤の混合物と反応させる工程であって、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである工程と、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させる工程。
【0016】
鉱物バインダー組成物における添加剤としての本発明のコポリマーの使用の特定の利点は、本発明のコポリマーを含まないが同じ組成物の鉱物バインダー組成物と比較して、実質的に変化しないスプレッド又はスランプでの組成物の流速の増加又は粘度の低下にある。より具体的には、流速の増加又は粘度の低下は、低いw/b比の鉱物バインダー組成物における実質的に変化しないスプレッド及び/又はスランプで達成することができる。
【0017】
鉱物バインダー組成物における分散剤としての本発明のコポリマーの使用の更なる利点は、鉱物バインダー組成物の成分のより少ない偏析又は分離、より少ない望ましくない空気の投入、及びコポリマーの著しい本質的な減水能力がないことである。具体的には、本発明のコポリマーは、こうして、減水剤の投与量を調整する必要なしに、既存の製剤において、既知の減水剤、例えば、リグノスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリメラミンスルホン酸塩及び/又はポリカルボン酸エーテルなどの高性能流動化剤と組み合わせることができることから、後者は重要である。
【0018】
最後に、本発明のコポリマーは、好ましくはエピクロロヒドリンの使用を必要としない簡易な合成の点で注目に値する。エピクロロヒドリンは、その毒性と発癌性のために問題があるため、これは有利である。
【0019】
本発明の更なる態様は、他の独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の態様は、鉱物バインダー組成物の流速を増加させるための及び/又は粘度を低下させるための添加剤としてのコポリマーの使用に関し、この場合、コポリマーは、以下の工程を含む多段操作で調製することができる:
(1)任意選択で、一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させる工程であって、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである工程と、
(2)一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はエピクロロヒドリン又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物又はエピクロロヒドリンとアルコキシル化剤の混合物と反応させる工程であって、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである工程と、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させる工程。
【0021】
より具体的には、本発明のコポリマーの使用は、鉱物バインダー組成物の流速を増加させ、その粘度を低下させる。更に、本発明のコポリマーは、鉱物バインダー組成物の水の需要の減少に、たとえあったとしても、少なくとも著しく寄与しないことが特に有利である。
【0022】
本文脈において粘度の低下に使用される尺度は、DIN EN 12350-9による流動時間又は漏斗流動時間(funnel flow time)の減少、及び/又はJSCE-F 541-1999による実行時間の減少である。流動時間/漏斗流動時間及び/又は実行時間が短いほど、鉱物バインダー組成物の粘度は低くなる。本文脈において粘度の低下の更なる尺度は、スイス規格SIA 262.238に従って測定される、又は日本規格JIS A1150に従ってt500として測定される流速の増加である。従って、上昇した流速は、鉱物バインダー組成物のより低い粘度を意味する。
【0023】
本文脈における「水の需要」という用語は、所与のバインダー組成物において、規格DIN EN 12350-5に従って測定される、特定のスプレッドを確立するために必要とされる水の量を意味すると理解される。
【0024】
鉱物バインダー組成物に対する添加剤としてのコポリマーの本発明の使用の場合、従って、これらのコポリマーを含む水で構成される鉱物バインダー組成物は、各場合で同じ量の水で構成されているが、いかなるコポリマーをも含まない同じ鉱物バインダー組成物と比較して、高い流速及び低い粘度を示すが、スプレッドの更なる増加はない。これは、本発明のコポリマーの添加後、組成物が、コポリマーを含まない類似の組成物、又は非本発明のコポリマー、例えばポリカルボン酸エーテル(PCE)を含む類似の組成物よりも速く流動し、粘度がより低いことを意味する。
【0025】
本発明の使用の場合、コポリマーは、それぞれ鉱物バインダーの総重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~7重量%又は0.2~5重量%の投与量が、好ましくは、鉱物バインダー組成物のDIN EN 12350-5によるスプレッド及び/又はDIN EN 12350-2によるスランプに、15%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満、特に3%未満又は2%未満の影響を与える。これは、それぞれ鉱物バインダーの総重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~7重量%又は0.2~5重量%の本発明のコポリマーの添加後の、鉱物バインダー組成物のスプレッド及び/又はスランプは、本発明のコポリマーを含まない類似の組成物のスプレッド及び/又はスランプから、15%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満、特に3%未満又は2%未満変動することを意味する。
【0026】
本発明のコポリマーは、以下の工程を含む多段操作で調製することができる:
(1)任意選択で、一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させる工程であって、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである工程と、
(2)一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はエピクロロヒドリン又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物又はエピクロロヒドリンとアルコキシル化剤の混合物と反応させる工程であって、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである工程と、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させる工程。
【0027】
中間体を単離又は精製することなく、プロセス(操作)の個々の工程を連続して実施することが好ましい。
【0028】
工程(1)~(3)の反応条件は、変動し得る。例えば、工程(1)~(3)で使用される反応温度、圧力、及び/又は触媒の種類及び量は、様々であり得る。しかしながら、一般に、工程(1)~(3)で使用される反応温度、圧力、及び触媒の種類及び量は、同じであることが好ましい。
【0029】
反応温度は、80℃~180℃、特に100℃~140℃の範囲内で変動し得る。圧力は、好ましくは1~5バールの範囲、特に1~3バールの範囲にある。
【0030】
プロセスの個々の工程は、好ましくは触媒作用下で実施される。工程(1)~(3)のアルコキシル化に適した触媒は、それ自体、当業者に知られている。好ましい実施形態では、反応工程(1)~(3)が触媒される。工程(1)~(3)において、その中間体の除去又は失活なしに同じ触媒を利用することが特に好ましい。特に適切な触媒は、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属アルコキシドであることが見出されている。好ましい実施形態では、使用される触媒は、出発物質Sとしても使用されるそのアルコールのアルカリ金属アルコキシドである。触媒として、ナトリウムアルコキシド、具体的にはナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドを使用することもまた好ましくあり得る。
【0031】
本発明のコポリマーを調製するための適切なプロセスは、例えば、欧州特許出願公開第0116978号明細書で特定されている。
【0032】
本文脈における出発物質Sは、一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される化合物であり、式中、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである。出発物質Sは、XH基を除いて、いかなる更なる求核基をも含まないことが特に好ましい。出発物質Sがアルコールの場合、それは、モノオール、即ちOH基が1つしかないアルコールである。出発物質Sがアミンである場合、それは、1級アミン、即ちNH2基を有するアミンである。出発物質Sは、2級又は3級アミンではない。出発物質Sがカルボン酸の場合、それは、モノカルボン酸である。
【0033】
特に好ましい実施形態では、出発物質Sは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、プレノール、イソプレノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、4-メチルベンジルアルコール、アニスアルコール、バニリン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、オレイルアミン、アニリン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、アクリルアミド、メタクリルアミドからなる群から選択される。
【0034】
本発明の文脈におけるアルコキシル化剤は、重合によってポリエーテルに変換することができる化合物である。従って、アルコキシル化剤は、アルコキシル化、即ち、アルキレンオキシド又はポリアルキレンオキシド単位の形成をもたらす。特に、本発明の文脈におけるアルコキシル化剤は、オキシラン、オキセタン又はオキソラン構造体を含む。特に好ましいアルコキシル化剤は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド及び/又はテトラヒドロフランから選択されるアルキレンオキシドである。具体的には、アルコキシル化剤は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである。工程(1)~(3)の1つで、アルコキシル化剤を1つだけ使用することが好ましくあり得る。非常に好ましい実施形態では、ただ1つのアルコキシル化剤、特にエチレンオキシドが、工程(1)~(3)で使用される。或いは、工程(1)~(3)のいずれか1つにおいて、混合物として、又はそれぞれ個別に、工程(1)~(3)において2つ以上のアルコキシル化剤を使用することが可能である。
【0035】
出発物質Sは、エトキシル化メタノール、エトキシル化エタノール、エトキシル化ビニルアルコール、エトキシル化アリルアルコール、エトキシル化メタリルアルコール、エトキシル化イソプレノール、エトキシル化アクリル酸及びエトキシル化メタクリル酸から選択されることが特に好ましい。最も好ましくは、出発物質Sは、エトキシル化メタノール及びエトキシル化メタリルアルコールから選択される。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、エピクロロヒドリンを使用せずに調製される。従って、調製プロセスは、エピクロロヒドリンを含まない。従って、本発明のコポリマーは、好ましくは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)任意選択で、一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである、
(2)一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物と反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【0037】
特に好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、エピクロロヒドリンを使用せずに、出発物質Sとしてアルコールを使用して調製される。従って、調製のプロセスは、エピクロロヒドリンを含まない。従って、本発明のコポリマーは、より好ましくは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)任意選択で、アルコールR1-OHをアルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、又はC7~C30アラルキル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである、
(2)アルコールR1-OH、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物と反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、又はC7~C30アラルキルである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【0038】
更に特に好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、エピクロロヒドリンを使用せずに、出発物質Sとしてアミンを使用して調製される。従って、調製のプロセスは、エピクロロヒドリンを含まない。従ってまた、本発明のコポリマーは、より好ましくは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)任意選択で、アミンR1-NH2をアルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、又はC7~C30アラルキル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである、
(2)アミンR1-NH2、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物と反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、又はC7~C30アラルキルである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【0039】
更に特に好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、エピクロロヒドリンを使用せずに、出発物質Sとしてカルボン酸を使用して調製される。従って、調製のプロセスは、エピクロロヒドリンを含まない。従って、本発明のコポリマーはまた、より好ましくは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)任意選択で、カルボン酸R1-OHを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させること、ここで、R1=C1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである、
(2)カルボン酸R1-OH、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物と反応させること、ここで、式中、R1=C1~C18カルボニルである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【0040】
非常に特に好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、エピクロロヒドリンを使用せずに、出発物質Sとしてアルコールを使用して調製され、この場合、出発物質アルコールは、最初にアルコキシル化剤と反応する。従って、調製プロセスは、エピクロロヒドリンを含まない。従って、本発明のコポリマーは、更により好ましくは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)アルコールR1-OHをアルコキシル化剤と反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、又はC7~C30アラルキルである、
(2)工程(1)の反応生成物をグリシドール又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物と反応させること、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【0041】
本発明のコポリマーを調製するためのプロセスが上記の工程(3)を含む場合、本明細書において特に好ましい。
【0042】
従って、上記のプロセスで得られることができる本発明のコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり得る:
【化1】
式中、
R
1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、好ましくはメチル、エチル、ビニル、アリル、メタリル、イソプレニル、シクロヘキシル、フェニル、アクリロイル又はメタクリロイルであり、
X=O又はNHであり、
Aは、それぞれ独立して、C1~C10アルキレン、好ましくはエチレン、プロピレン及び/又はブチレンであり、
R
2=C1~C16アルキルであり、
Bは、それぞれ独立して、C1~C10アルキレン、好ましくはエチレン、プロピレン及び/又はブチレンであり、
R
3=H、C1~C16アルキル、又はC(O)R
1であり、R
1は上記で定義され、好ましくはHであり、
mは、それぞれ独立して、0~350の範囲の整数であり、
nは、0~100の範囲の整数であり、
pは、0又は1であり、
qは、1~10の範囲の整数であり、
q=1の場合、oは、1~50の範囲の整数であり、q>1の場合、それぞれのoは、独立して1~50の範囲の整数である。
【0043】
n>0の場合、p=0であることが特に望ましい。
【0044】
一般構造(I)の直鎖構造単位(BO)mの数は、o及びqに依存する。構造単位(BO)mの数は、o×q+1に等しい。直鎖構造単位(BO)mの数は、分岐のレベルに対応する。q及びoのそれぞれが0を超えるため、本発明のコポリマーの分岐のレベルは、少なくとも2である。言い換えれば、本発明のコポリマーは、直鎖コポリマーではない。より具体的には、本発明のコポリマーは、純粋に直鎖ポリエーテルではない。
【0045】
より良い説明のために以下に示されているのは、o及びqの定義された組み合わせでの一般式(I)から導出されたいくつかの例示的な構造体である。これらの例示的な構造体は、本発明のコポリマーに関して限定的であると決して見なされてはならない。
【0046】
o=2及びq=1の場合、これにより、以下の一般構造(Ia)のコポリマーが得られる。
【化2】
【0047】
o=3及びq=1の場合、これにより、以下の一般構造(Ib)のコポリマーが得られる。
【化3】
【0048】
o=1及びq=2の場合、これにより、以下の一般構造(Ic)のコポリマーが得られる。
【化4】
【0049】
o=2及びq=3の場合、これにより、以下の一般構造(Id)のコポリマーが得られる。
【化5】
【0050】
実施形態によれば、本発明のコポリマーの分岐のレベルは、2~501、好ましくは2~200、より好ましくは2~100、特に好ましくは3~50、特に5~20である。
【0051】
コポリマーを調製するための本発明のプロセスの工程(2)における反応が、様々な位置異性体を生じさせることができることは、当業者には明らかであろう。これらは、以下に示されるように、化学反応式a)又はb)に従って、グリシドールのオキシラン環が様々な炭素原子を介して開かれたときに形成される位置異性体である。
【化6】
【0052】
簡略化するために、本発明では、位置異性体b)のみがこれまでに描かれている。しかしながら、意味するのは、常に位置異性体a)とb)の両方又はそれらの混合物である。
【0053】
本発明の好ましいコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり、式中、
R1は、C1~C18アルキルから、より好ましくはメチル又はエチルから選択され、
X=Oであり、
Aは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
Bは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
R3はHであり、
mは、それぞれ独立して、0~350、より好ましくは2~200、更により好ましくは5~150、特に7~30の範囲の整数であり、
nは、1~100、より好ましくは2~75、最も好ましくは5~55の範囲の整数であり、
p=0であり、
qは1~10、より好ましくは2~8、最も好ましくは4~7の範囲の整数であり、
oは、1~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは6~30、特に8~20の範囲の整数である。
【0054】
一般構造(I)の直鎖構造単位(BO)mの数は、o及びqに依存する。構造単位(BO)mの数は、o×p+1に等しい。
【0055】
一般構造(I)の構造要素(AO)及び(BO)は、ポリアルキレンオキシド鎖である。好ましくは、存在する全てのアルキレンオキシド単位に基づいて、ポリアルキレンオキシド鎖中のエチレンオキシド単位の割合は、90モル%を超え、特に95モル%を超え、好ましくは98モル%を超え、特に100モル%である。特定の実施形態では、ポリアルキレンオキシド鎖は、いかなる疎水性基、特に3以上の炭素原子を有するいかなるアルキレンオキシドをも有さない。エチレンオキシド単位の割合が高い、又は3以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドの含有量が少ないと、空気の不要な投入のリスクが減少する。
【0056】
本文脈における重量平均分子量(Mw)は、標準としてポリエチレングリコール(PEG)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。この技術は、それ自体、当業者に知られている。本発明のコポリマーは、200~40,000g/モルの範囲のモル質量Mwを有し得る。好ましいコポリマーでは、一般構造(I)のパラメータn、m、o及びpは、コポリマーの平均モル質量Mwが、200~75,000、好ましくは500~50,000、特に好ましくは1,000~35,000、更により好ましくは1,500~25,000、特に2,000~15,000の範囲にあるように選択される。
【0057】
R1がメチル又はエチル単位である一般構造(I)のコポリマーが特に好ましい。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、n>0の場合はp=0であり、n=0の場合はp=1である一般構造(I)のコポリマーである。従って、この実施形態では、それぞれのコポリマーには、(AO)m単位又はR2-X単位のいずれかが存在する。
【0059】
更に好ましい実施形態では、全てのmは、o×q+1直鎖構造のそれぞれにおける(BO)単位の平均数が同じであるように選択される。
【0060】
好ましい実施形態によれば、本発明のコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり、式中、
R
1は、C1~C18アルキルから、より好ましくはメチル又はエチルから選択され、
X=Oであり、
Aは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
Bは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
R
3はHであり、
mは、それぞれ独立して、0~350、より好ましくは2~200、更により好ましくは5~150、特に7~30の範囲の整数であり、
nは、1~100、より好ましくは2~75、最も好ましくは5~55の範囲の整数であり、
p=0であり、
oは、1~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは6~30、特に8~20の範囲の整数であり、q=1である。
このようなコポリマーは、一般構造(II)に従う。
【化7】
【0061】
一般構造(II)のコポリマーは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)アルコールR1-OHを、アルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドと反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、好ましくはメチル又はエチルである、
(2)工程(1)の反応生成物をグリシドールと反応させること、
(3)工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドと反応させること。
【0062】
更に好ましい実施形態によれば、本発明のコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり、式中、
R
1は、C1~C18アルキルから、より好ましくはメチル又はエチルから選択され、
X=Oであり、
Aは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
Bは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
R
3はHであり、
mは、それぞれ独立して、0~350、より好ましくは2~200、更により好ましくは5~150、特に7~30の範囲の整数であり、
nは、1~100、より好ましくは2~75、最も好ましくは5~55の範囲の整数であり、
p=0であり、
oは、1~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは6~30、特に8~20の範囲の整数であり、qは少なくとも2である。
このようなコポリマーは、一般構造(III)
【化8】
に従い、式中、xは、1~9の整数であるが、x<oという条件である。
【0063】
一般構造(III)のコポリマーは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)アルコールR1-OHを、アルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドと反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、好ましくはメチル又はエチルである、
(2)工程(1)の反応生成物を、グリシドールと、アルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドの混合物と反応させること、
(3)工程(2)の反応生成物を、アルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドと反応させること。
【0064】
更に好ましい実施形態によれば、本発明のコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり、式中、
R
1は、C2~C18アルケニル、より好ましくはビニル、アリル、メタリル、又はイソプレニル、特にメタリルから選択され、
X=Oであり、
Bは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
R
2は、C1~C16アルキル、より好ましくはC2~C4アルキル、特にブチルであり、
R
3はHであり、
mは、それぞれ独立して、0~350、より好ましくは2~200、更により好ましくは5~150、特に7~30の範囲の整数であり、
n=0であり、
p=1であり、
oは、1~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは6~30、特に8~20の範囲の整数であり、qは少なくとも2である。
このようなコポリマーは、一般構造(IV)に従う。
【化9】
【0065】
一般構造(IV)のコポリマーは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)アルコールR1-OHを、ハロゲン化アルコールHal-R2-XHと反応させルこと、ここで、R1=C2~C18アルケニルであり、R2は、C1~C16アルキルであり、Halは、Cl、Br又はIであり、XはOである、
(2)工程(1)の反応生成物をグリシドールと反応させること、
(3)工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドと反応させること。
【0066】
更に好ましい実施形態によれば、本発明のコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり、式中、
R
1は、C1~C18アルキル、より好ましくはメチル又はエチルから選択され、
X=Oであり、
Bは、それぞれ独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン、より好ましくはエチレンであり、
R
2は、C1~C16アルキル、より好ましくはC2~C4アルキル、特にブチルであり、
R
3はHであり、
mは、それぞれ独立して、0~350、より好ましくは2~200、更により好ましくは5~150、特に7~30の範囲の整数であり、
n=0であり、
p=0であり、
qは、1~10の範囲の整数であり、
oは、それぞれ独立して、1~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは6~30、特に8~20の範囲の整数である。
このようなコポリマーは、一般構造(V)に従う。
【化10】
【0067】
一般構造(V)のコポリマーは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)アルコールR1-OHをグリシドールと反応させること、
(2)工程(1)の反応生成物を、アルコキシル化剤、好ましくはエチレンオキシドと反応させること。
【0068】
非常に特に好ましい実施形態によれば、本発明のコポリマーは、一般構造(I)のコポリマーであり、式中、
R1は、メチルから選択され、
X=Oであり、
Aはエチレンであり、
Bはエチレンであり、
R3はHであり、
mは、それぞれ独立して、5~20の範囲の整数であり、
n=5であり、
p=0であり、
o=3~10の範囲の整数であり、
q=1である。
【0069】
このようなコポリマーは、一般構造(VI)に従う。
【化11】
【0070】
一般構造(VI)のコポリマーは、以下の工程を含むプロセスで調製することができる:
(1)メタノールをエチレンオキシドと反応させること、
(2)工程(1)の反応生成物をグリシドールと反応させること、
(3)工程(2)の反応生成物をエチレンオキシドと反応させること。
【0071】
鉱物バインダー組成物は、特に、加工できる(workable)且つ/又は水性である(aqueous)鉱物バインダー組成物である。
【0072】
鉱物バインダー組成物は、少なくとも1つの鉱物バインダーを含む。「鉱物バインダー」という表現は、水和反応において水の存在下で反応して固体水和物又は水和物相を与えるバインダーを意味すると特に理解される。これは、例えば、水硬性バインダー(例えば、セメント又は水硬性石灰)、潜在的に水硬性のバインダー(例えば、スラグ)、ポゾラン性バインダー(例えば、フライアッシュ)又は非水硬性バインダー(石膏又は白石灰)であり得る。
【0073】
より具体的には、鉱物バインダー又はバインダー組成物は、水硬性バインダー、好ましくはセメントを含む。セメントクリンカー含有量が35重量%以上のセメントが特に好ましい。より具体的には、セメントは、CEM I、CEM II及び/又はCEM III、CEM IV又はCEM Vのタイプ(規格EN197-1による)のものである。
【0074】
鉱物バインダー組成物は、それぞれ鉱物バインダー組成物の乾燥質量に基づいて、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、更により好ましくは少なくとも65重量%、特に95重量%以上で少なくとも1つの水硬性バインダー、好ましくはセメントを含む。
【0075】
或いは、鉱物バインダー又は鉱物バインダー組成物が他のバインダーを含む、又は本質的にこれからなる場合が有利であり得る。これらは、特に潜在的に水硬性のバインダー及び/又はポゾラン性のバインダーである。適切な潜在的に水硬性の及び/又はポゾラン性のバインダーは、例えば、スラグ、フライアッシュ及び/又はシリカ粉塵である。バインダー組成物は、同様に、不活性物質、例えば、石灰石、石英粉、及び/又は顔料を含み得る。有利な実施形態では、鉱物バインダーは、それぞれ、バインダーの総重量に基づいて、5~95重量%、特に5~65重量%、より好ましくは15~35重量%の潜在的に水硬性の及び/又はポゾラン性のバインダーを含む。有利な潜在的に水硬性の及び/又はポゾラン性のバインダーは、スラグ及び/又はフライアッシュである。
【0076】
特に好ましい実施形態では、鉱物バインダーは、水硬性バインダー、特にセメント又はセメントクリンカー、及び潜在的に水硬性の及び/又はポゾラン性のバインダー、好ましくはスラグ及び/又はフライアッシュを含む。この場合の潜在的に水硬性の及び/又はポゾラン性のバインダーの割合は、より好ましくは5~65重量%、より好ましくは15~35重量%であり、一方、少なくとも35重量%、特に少なくとも65重量%の水硬性バインダーが存在する。
【0077】
鉱物バインダー組成物は、好ましくは、モルタル又はコンクリート組成物、特に、バインダーに対する水の重量比(w/b比)が低いモルタル又はコンクリート組成物である。具体的な例には、高性能コンクリート(HPC)、超高性能コンクリート(UHPC)、又は自己充填コンクリート(SCC)が含まれる。鉱物バインダー組成物は、特に加工できる鉱物バインダー組成物及び/又は水で構成されている鉱物バインダー組成物である。
【0078】
従って、非常に特に好ましい実施形態では、鉱物バインダー組成物は、水を含む。鉱物バインダー組成物におけるバインダーに対する水の重量比(w/b比)は、好ましくは0.18~0.6、より好ましくは0.2~0.5、更により好ましくは0.22~0.4、特に0.22~0.37、特に0.22~0.28又は0.32~0.37の範囲にある。
【0079】
本発明のコポリマーは、それぞれ鉱物バインダーの総重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~7重量%、又は0.2~5重量%の量で有利に存在する。
【0080】
好ましい実施形態では、鉱物バインダー組成物は、好ましくは250kg/m3超、特に350~600kg/m3の割合で微粉を含む。ここでのセメント含有量は、特に200~800kg/m3、好ましくは320~500kg/m3である。
【0081】
微粉には、特にフライアッシュ、メタカオリン、シリカ粉塵、及び/又は不活性岩粉が含まれる。
【0082】
より具体的には、微粉は、セメントの細かさを有する。より具体的には、例えば、レーザー粒度分布測定によって測定される微粉の最大粒子直径は、0.125mm未満である。
【0083】
微粉は、好ましくは、少なくとも1,000cm2/g、特に少なくとも1,500cm2/g、好ましくは少なくとも2,500cm2/g、更に好ましくは少なくとも3,500cm2/g又は少なくとも5,000cm2/gのブレーン粉末度を有する。
【0084】
本発明のコポリマーは、ゼロの又は低い水還元能力しか有さない。従って、高性能流動化剤又は水の量を調整する必要なしに、減水剤、例えば、高性能流動化剤を含む本質的に(per se)知られている鉱物バインダー組成物の粘度を低下させるために使用できるので、このことは有利である。
【0085】
更に好ましい実施形態では、従って、鉱物バインダー組成物は、リグノスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリメラミンスルホン酸塩及び/又はポリカルボン酸エーテルの群から選択される少なくとも1つの高性能流動化剤、特に少なくとも1つのポリカルボン酸エーテルを更に含む。
【0086】
ポリカルボン酸エーテルは、ポリカルボン酸系の骨格とポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛形ポリマーである。
【0087】
好ましいポリカルボン酸エーテルは、式VIIの構造単位及び式VIIIの構造単位を含み、
【化12】
式中、
R
4は、それぞれ独立して、-COOM、-SO
2-OM、-O-PO(OM)
2及び/又は-PO(OM)
2、好ましくは-COOMであり、
R
5は、それぞれ独立して、H、-CH
2-COOM、又は1~5の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはH又はCH
3であり、
R
6は、それぞれ独立して、H又は1~5の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはHであり、
R
7は、それぞれ独立して、H、-COOM、又は1~5の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはHであり、
或いはR
4及びR
7は、環を形成して、-CO-O-CO-(無水物)を生成し、
Mは、それぞれ独立して、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価又は三価金属イオン、アンモニウム基又は有機アンモニウム、好ましくはH
+又はアルカリ金属イオンであり、
r=0、1又は2であり、
s=0又は1であり、
t=0、又は1~4の整数であり、
u=2~250、特に10~200であり、
Yは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
8は、それぞれ独立して、H、C
1~C
20アルキル基、シクロヘキシル基又はアルキルアリール基であり、
D=C
2~C
4アルキレン、好ましくはエチレンである。
【0088】
構造単位VIIIに対する構造単位VIIのモル比は、好ましくは0.7~10:1、より好ましくは1~8:1、特に1.5~5:1である。
【0089】
また、ポリカルボン酸エーテルが構造単位IXを更に含む場合が有利であり得る。構造単位IXは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキル又はヒドロキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン及びN-ビニルピロリドンからなる群から選択されるモノマーから誘導される。
【0090】
ポリカルボン酸エーテルは、好ましくは、カルボン酸基及び/又はこれらの塩並びにポリエチレングリコール側鎖を含む。
【0091】
好ましくは、ポリカルボン酸エーテルは、エチレン性不飽和カルボン酸、特に不飽和モノカルボン酸又はその塩から誘導される構造単位VII、及びエチレン性不飽和ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールから誘導される構造単位VIIIから構成される。特に、ポリカルボン酸エーテルは、構造単位VII及び構造単位VIIIを除いて、いかなる他の構造単位をも含まない。
【0092】
高性能流動化剤、特にポリカルボン酸エーテルは、鉱物バインダー組成物に、鉱物バインダー組成物の総重量に基づいて、流動化剤の乾燥重量として計算して、0~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、特に0.25~7重量%で添加することができる。
【0093】
従って、更なる態様において、本発明は、リグノスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリメラミンスルホン酸塩及び/又はポリカルボン酸エーテルの群から選択される高性能流動化剤、特に少なくとも1つのポリカルボン酸エーテルを含む鉱物バインダー組成物における本発明のコポリマーの使用に関する。
【0094】
本発明のコポリマーそれ自体を鉱物バインダー組成物に添加することが可能である。或いは、本発明のコポリマーを水溶液又は水中のエマルジョンとして鉱物バインダー組成物に添加することが可能である。更に、本発明のコポリマーを添加剤、特に水性添加剤に溶解又は分散させることが可能である。
【0095】
従って、本発明の更なる態様は、以下の工程を含む多段操作で調製される少なくとも1つのコポリマーを含む添加剤である:
(1)任意選択で、一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質Sを、アルコキシル化剤及び/又はハロゲン化アルコール又はハロゲン化アミンHal-R2-XHと反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNH、Hal=Cl、Br又はI、及びR2=C1~C16アルキルである、
(2)一般式R1-XHのアルコール、アミン、カルボン酸又はアミドからなる群から選択される出発物質S、又は工程(1)の反応生成物を、グリシドール又はエピクロロヒドリン又はグリシドールとアルコキシル化剤の混合物又はエピクロロヒドリンとアルコキシル化剤の混合物と反応させること、ここで、R1=C1~C18アルキル、C2~C18アルキレン、C3~C10シクロアルキル、C6~C30アリール、C7~C30アラルキル又はC1~C18カルボニル、X=O又はNHである、
(3)任意選択で、工程(2)の反応生成物をアルコキシル化剤と反応させること。
【0096】
更に、添加剤は、少なくとも1つのポリカルボン酸エーテル及び/又は水を含み得る。添加剤は、鉱物バインダーの分散剤として使用でき、この場合、同時に粘度を下げること及び水の需要を減らすことができる。
【0097】
好ましくは、水性添加剤中の本発明のコポリマーのポリカルボン酸エーテルに対する重量比は、0.05:5~1:1、好ましくは0.1:3~1:1、より好ましくは0.1:3~1:3の範囲にある。
【0098】
更なる態様では、本発明は、上記の少なくとも1つのコポリマー及び鉱物バインダーを含む、組成物、特にモルタル組成物、コンクリート組成物又はセメント系組成物に関する。鉱物バインダーは、好ましくは水硬性バインダー、特にセメント、好ましくはポルトランドセメントである。
【0099】
組成物は、特に高性能コンクリート、超高性能コンクリート、又は自己充填コンクリートである。
【0100】
コポリマーは、有利には、鉱物バインダーの重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~7重量%又は0.2~5重量%の割合を有する。
【0101】
特に、組成物は、好ましくは350kg/m3超、特に400~600kg/m3の割合で微粉を含む。ここでのセメント含有量は、特に320~380kg/m3である。
【0102】
更なる態様は、本発明の少なくとも1つのコポリマーが、鉱物バインダー組成物の乾燥混合物に添加され、且つ/又は、特に水溶液又は混合水中のエマルジョンとして、混合水と一緒に鉱物バインダー組成物に添加され、且つ/又は混合水の添加直後に鉱物バインダー組成物に添加されることを特徴とする、鉱物バインダー組成物、特にHPC、UHPC、又はSCCのレオロジーを制御する方法に関する。レオロジーを制御することは、本発明のコポリマーの添加が、特にDIN EN 12350-9による漏斗流動時間及び/又はJSCE F 541-1999による実行時間として測定される、それぞれの鉱物バインダー組成物の粘度を低下させること、或いはDIN EN 12350-5に従って測定されるスプレッド、及び/又はDIN EN 12350-2に従って測定されるスランプを大幅に変更することなく、流動性を増加させることを本文脈において意味すると理解される。言い換えれば、本文脈における「レオロジーを制御すること」という表現は、鉱物バインダー組成物の流速の増加及び粘度の低下を意味する。好ましくは、本文脈における「レオロジーを制御すること」は、鉱物バインダー組成物のスプレッド及び/又はスランプの大幅な変化のない流速の増加及び粘度の低下を意味すると理解される。「乾燥混合物」は、水を除く鉱物バインダー組成物の全ての成分を含む鉱物バインダー組成物を意味すると理解される。
【0103】
より具体的には、それぞれ鉱物バインダーの総重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~7重量%、又は、0.2~5重量%の本発明のコポリマーの投与量で、鉱物バインダー組成物、特にHPC、UHPC又はSCCのレオロジーを制御するための本発明の方法において、本発明のコポリマーを含まない類似の組成物の漏斗流動時間及び/又は実行時間と比較して、DIN EN 12350-9による漏斗流動時間は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%減少し、且つ/又は鉱物バインダー組成物のJSCE-F 541-1999による実行時間は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%、特に少なくとも30%減少する。
【0104】
更に、それぞれ鉱物バインダーの総重量に基づいて、0.01~10重量%、特に0.1~7重量%、又は0.2~5重量%の本発明のコポリマーの投与量で、鉱物バインダー組成物、特にHPC、UHPC又はSCCのレオロジーを制御するための本発明の方法において、本発明のコポリマーを含まない類似の組成物のスプレッド及び/又はスランプと比較して、鉱物バインダー組成物の、DIN EN 12350-5によるスプレッド、及び/又はDIN EN 12350-2によるスランプは、15未満%、特に10%未満、好ましくは5%未満、特に3%未満又は2%未満変化する。
【0105】
更なる態様は、水を添加した後、本発明の少なくとも1つのコポリマーを含む、上記の鉱物バインダー組成物、特にHPC、UHPC又はSCCを硬化させることによって得られることができる成形体に関する。
【0106】
本明細書にて以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。しかしながら、実施例は、単に例示のために役立つものであり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【実施例】
【0107】
実施例1-使用したコポリマーの調製
C-1の調製
工程1:N2ガスで不活性化された反応器において、4g(0.074モル)のナトリウムメトキシドを、576g(8モル)のメタリルアルコールに溶解し、100℃に加熱する。これに続いて、1760g(40モル)のエチレンオキシドを5時間かけて計量的に添加する。この間、温度は100~140℃、圧力は1~3バールに維持される。計量的な添加が終了した後、反応混合物を140℃で2時間撹拌する。続いて、混合物を30℃に冷却する。
【0108】
工程2:N2ガスで不活性化された反応器において、0.54g(0.01モル)のナトリウムメトキシドを、工程(1)の123g(0.42モル)の混合物に添加し、130℃に加熱する。これに続いて、93g(1.26モル)のグリシドールを30分間かけて計量的に添加する。この間、温度は130~140℃、圧力は1~3バールに維持される。計量的な添加が終了した後、反応混合物を140℃で2時間撹拌する。混合物を50℃に冷却したままにする。
【0109】
工程3:50℃に冷却した後、2.2g(0.04モル)のナトリウムメトキシドを、工程(2)の混合物に添加する。反応器を再びN2ガスで不活性化し、130℃に加熱する。これに続いて、628g(14.27モル)のエチレンオキシドを4時間かけて計量的に添加する。この間、温度は130~140℃、圧力は0~3バールに維持される。計量添加が終了した後、反応混合物を140℃で3時間撹拌する。続いて、混合物を50℃に冷却し、3.2g(0.054モル)の酢酸で中和する。得られた混合物は、本発明のコポリマーC-1である。
【0110】
C-2の調製
C-2の調製は、C-1の調製と同様である。しかしながら、工程(3)でC-2を調製するために、2513gのエチレンオキシド(57モル)を計量する。
【0111】
C-4の調製
C-4の調製は、C-1の調製と同様である。しかしながら、工程(1)でメタリルアルコールの代わりに256gのメタノール(8モル)を使用する。
【0112】
C-5の調製
C-5の調製は、C-4の調製と同様である。しかしながら、工程(3)でC-5を調製するために、2513gのエチレンオキシド(57モル)を計量する。
【0113】
C-6の調製
C-6の調製は、C-5の調製と同様である。しかしながら、工程(2)でC-6を調製するために、186g(2.51モル)のグリシドールを計量する。
【0114】
以下の表1は、添加剤として使用されたPCEとコポリマーの概要を示している。
【0115】
【0116】
【0117】
実施例2-ペースト試験
150gのセメント(Vigier Holding AGのCEM I 42.5N)、5.8gのマイクロシリカ(SikaFume(登録商標)-HR/-TU、Sika Schweiz AGから入手可能)、69.2gの高炉スラグ(Hanson UKのRegen GGBS)、及び41.5gの石灰石(Kalkfabrik Netstal AGのNekafill 15)からなる乾燥混合物を作製した。乾燥混合物を作製するために、成分をホバートミキサーで30秒間乾燥混合した。この乾燥混合物に、表2に指定された添加剤を加え、それぞれを60gの水に溶解した。混合をレベル1で30秒間続け、最後にレベル2で3.5分間続けた。
【0118】
得られたセメントのペーストについて、DIN EN 12350-9による流動時間とDIN EN 12350-5によるスプレッドを測定した。各場合に測定されたのは、210gのそれぞれの混合物V1~V3(非本発明)又はE1~E3(本発明)が完全になくなった後の時間であった。以下の表2に結果の概要を示す。
【0119】
【0120】
実験E1~E3における本発明のコポリマーの使用は、流動性の向上又は粘度の低下に対応する流動時間の減少をもたらすことが表2から明らかになる。ここで、PCEのみを含み、本発明のコポリマーを含まない非本発明の参照V1との比較を行う。更に、表2から、本発明のコポリマーは、いかなる更なる液化をも引き起こさない、即ち、いかなる水の需要の減少をも引き起こさないことが明らかになる。最後に、表2から、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを使用すると、特に流動時間が明確に増加することが明らかになる。これは、粘度の上昇に対応する。
【0121】
実施例3-モルタル試験
735gのセメント(Vigier Holding AGのCEM I 42.5N)、28gのマイクロシリカ(SikaFume(登録商標)-HR/-TU、Sika Schweiz AGから入手可能)、340gの高炉スラグ(Hanson UKのRegen GGBS)、203gの石灰石(Kalkfabrik Netstal AGのNekafill 15)、及び2845gの粒子サイズが0~8mmの凝集体からなる乾燥混合物を作製した。乾燥混合物を作製するために、成分をホバートミキサーで30秒間乾燥混合した。この乾燥混合物に、表3に指定された添加剤を加え、それぞれを表3に指定された量の水に溶解した。混合をレベル1で30秒間続け、最後にレベル2で3.5分間続けた。
【0122】
DIN EN 12350-5によるスプレッドを、混合直後(0分)及び30分後に得られたモルタルについて測定した。更に、漏斗流動時間をDIN EN 12350-9に従って測定した。以下の表3に結果の概要を示す。
【0123】
【0124】
本発明の実験E4及びE5は、非本発明の実験V4と比較して、V漏斗からの流動時間が明確に減少していることを示している。これは、流動性の向上又は粘度の低下に対応する。本発明の実験E6~E11は、水の量を減らすと、流動性の向上又は粘度の低下も達成できることを示している。
【0125】
表3の結果はまた、本発明のコポリマーの使用が、スプレッドにわずかな影響しか及ぼさず、従って、鉱物バインダー組成物の降伏点が、わずかに変動するだけであることを示している。
【0126】
実施例4-コンクリート試験
340gのセメント(Vigier Holding AGのCEM I 42.5N)、851gの石英砂、及び951gの砂利からなる乾燥混合物を作製した。乾燥混合物を作製するために、成分をホバートミキサーで30秒間乾燥混合した。この乾燥混合物に、表4に指定された添加剤を加え、それぞれを170gの水に溶解した。混合をレベル1で30秒間続け、最後にレベル2で3.5分間続けた。
【0127】
得られたコンクリートについて、JIS A1150によるスランプとJSCE-F-514による流速を測定した。下記の表4に結果の概要を示す。
【0128】
【0129】
本発明の実験E13及びE14と非本発明の実験V5との比較から、コポリマーの本発明の使用は、粘度の低下に対応する、明確に流速を増加させることができることが明らかになる。
【0130】
実施例5-モルタル試験
実施例4の乾燥混合物を、メッシュサイズ5mmのふるいに通した。得られた乾燥混合物に、表5に指定された添加剤を加え、それぞれを170gの水に溶解した。ホバートミキサーでレベル1で30秒間混合し、最後にレベル2で3.5分間更に混合した。
【0131】
得られたモルタル混合物について、JIS A1150によるスプレッドとJSCE-F 541-1999による実行時間を決定した。下記の表5に結果の概要を示す。
【0132】
【0133】
本発明の実験E15及びE16と非本発明の実験V6との比較から、コポリマーの本発明の使用は、粘度の低下に対応する、流出時間(outflow time)を明確に減少させることができることが明らかになる。