(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】二次電子および後方散乱電子を検出するためのスルーホールを備えた分割型マルチチャンネル裏面照射型ソリッドステート検出器
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
H01J37/244
(21)【出願番号】P 2023557255
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022032033
(87)【国際公開番号】W WO2022260930
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-11-05
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーリング ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ムレイ ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ブロディ アラン
(72)【発明者】
【氏名】スパラス ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】トリンプル マルセル
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-525153(JP,A)
【文献】特表2014-527690(JP,A)
【文献】特開平07-065775(JP,A)
【文献】国際公開第2021/176513(WO,A1)
【文献】特開2009-224055(JP,A)
【文献】特許第7304461(JP,B2)
【文献】特表2021-526714(JP,A)
【文献】特表2023-535192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッドステートデバイスであって、
前記デバイスの厚さを通して空乏化する垂直構造であって、N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造を含み、前記N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造は、前記デバイスの表側に形成されたN+またはP+接合と、前記デバイスの中間部に形成されたP-またはN-真性層と、前記デバイスの裏側に形成されたP+またはN+層を含む垂直構造と、
二次電子(SEという)および後方散乱電子(BSEという)を収集するための活性領域であって、二次電子および後方散乱電子の検出を分離するために複数のチャネルにセグメント化された活性領域と、
一次ビームを通過させるために
前記デバイスの中央に配置された貫通孔であって、前記一次ビームは前記デバイスの前面側で貫通孔に入射する、貫通孔と、
を含む、
ソリッドステートデバイス。
【請求項2】
前記セグメント化が
前記デバイスの表側に現れ、前記SEおよび前記BSEが前記デバイスの裏側に収集される、請求項1に記載のソリッドステートデバイス。
【請求項3】
請求項1記載のソリッドステートデバイスであって、
前記デバイスの前面は、前記SEおよび前記BSEの収集のために利用可能な領域を最大化するために、金属接点を含む、
ソリッドステートデバイス。
【請求項4】
前記P+層は、ボロンまたは他のアクセプタドーパントを含む、請求項1に記載のソリッドステートデバイス。
【請求項5】
前記P+層が追加の導電性コーティングを含む、請求項1に記載のソリッドステートデバイス。
【請求項6】
前記デバイス上のSE信号およびBSE信号を制御するためのポストレンズ素子をさらに含む、請求項1に記載のソリッドステートデバイス。
【請求項7】
前記セグメント化されたチャネルは、等しい面積の4つの象限で囲まれた円形の中心チャネルを含み、前記4つの象限の各々は、前記円形の中心チャネルと同じ面積を有する、請求項1に記載のソリッドステートデバイス。
【請求項8】
電子源と、
セラミック基板と、
前記セラミック基板に結合されたデバイスと、
を含み、
前記デバイスは、
N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造を含み、前記デバイスの厚さを通して空乏化する垂直構造であって、前記N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造は、前記デバイスの表側に形成されたN+またはP+接合と、中間部のP-またはN-真性層と、
前記デバイスの裏側に形成されたP+またはN+層とを含む垂直構造と、
二次電子(SEという)および後方散乱電子(BSEという)を収集するための活性領域であって、前記S
Eおよび前記BSEの検出を分離するために複数のチャネルにセグメント化された活性領域と、
一次ビームを通過させるために
前記デバイスの中央に配置された貫通孔であって、前記一次ビームは
前記デバイスの前面側で貫通孔に入射する、貫通孔と、
を含む、
システム。
【請求項9】
前記セグメント化が
前記デバイスの表側に現れ、前記SEおよび前記BSEが
前記デバイスの裏側に収集される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記デバイスの前面側は、前記SEおよび前記BSEの収集に利用可能な領域を最大化するために、金属接点を含む、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
前記P+層がホウ素または他のアクセプタドーパントを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記P+層が追加の導電性コーティングを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記デバイスは、前記デバイス上のSE信号及びBSE信号を制御するためのポストレンズ素子をさらに備える、請求項8記載のシステム。
【請求項14】
前記セグメント化されたチャネルが、等しい面積の4つの象限で囲まれた円形の中心チャネルを含み、前記4つの象限の各々が円形の中心チャネルと同じ面積を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
電子検出システムであって、
二次電子および後方散乱電子を収集する検出器を含む電子ビームカラムを含み、
前記検出器は、
N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造を含み
、デバイスの厚さを通して空乏化する垂直構造であって、前記N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造は、前記デバイスの表側に形成されたN+またはP+接合と、中間部のP-またはN-真性層と、前記デバイスの裏側に形成されたP+またはN+層を含む垂直構造と、
二次電子(SEという)および後方散乱電子(BSEという)を収集するための活性領域であって、前記SEおよび前記BSEの検出を分離するために複数のチャネルにセグメント化された活性領域と、
一次ビームを通過させるために
前記デバイスの中央に配置された貫通孔であって、前記一次ビームは前記デバイスの前面側で貫通孔に入射する、貫通孔と、
を含む、
電子検出システム。
【請求項16】
前記セグメント化が前記デバイスの表側に現れ、前記SEおよび前記BSEが
前記デバイスの裏側に収集される、請求項15に記載の電子検出システム。
【請求項17】
前記デバイスの前面は、前記SEおよび前記BSEの収集に利用可能な領域を最大化するために金属接点を含む、請求項15に記載の電子検出システム。
【請求項18】
前記P+層がホウ素または他のアクセプタドーパントを含む、請求項15に記載の電子検出システム。
【請求項19】
前記P+層が追加の導電性コーティングを含む、請求項15に記載の電子検出システム。
【請求項20】
前記デバイスは、前記デバイス上のSE信号およびBSE信号を制御するためのポストレンズ素子をさらに備える請求項15に記載の電子検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願との相互参照」
本出願は、John Gerlingらによる2021年6月9日出願の米国仮出願第63/208,508号の利益を主張するものであり、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
「技術分野」
【0002】
本開示は一般にウエハ検査システムの分野に関する。より詳細には、本開示は小型電子ビームカラム検出器に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、半導体製造業界では、シリコンのような基板上に層状にパターニングされた半導体材料を用いて集積回路を製造する非常に複雑な技術が用いられている。回路集積の大規模化と半導体デバイスの小型化により、製造されたデバイスは欠陥に対してますます敏感になっている。つまり、デバイスの欠陥の原因となる欠陥はますます小さくなっている。デバイスは、エンドユーザーや顧客に出荷される前に、一般的に欠陥がない必要がある。
【0004】
そのため、より小さな欠陥を検出できることがますます重要になってきている。検査システム(または検査員)によって発見された欠陥の種類、欠陥の数、およびシグネチャは、半導体製造において、研究開発段階で確立された製造プロセスが立ち上がることに寄与する。また、立ち上がり段階で確認されたプロセスウィンドウが大量生産(HVM)に移行できること、およびHVMにおける日々のオペレーションが安定し、管理されていることを保証するための貴重な情報を提供する。
【0005】
欠陥を検出する方法のひとつに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる方法がある。SEMは、検出器を内蔵した複数の電子ビームカラムを含むことができる。半導体デバイスが微細化するにつれて、検出可能な欠陥サイズは小さくなっており、光の波長が制限要因となるため、従来の光学的方法では検出が極めて困難となる。このような欠陥を検出する方法のひとつに、電子ビームの波長を光の波長よりもはるかに小さくできる電子ビームを用いる方法がある。しかし、スループットという点では遅々として進まず、ウエハのシングル・カラム電子ビーム検査には数日から数週間を要することもある。この問題を解決するために、小型化されたマルチコラムまたはマルチビームSEMは、ウエハの超並列検査を可能にする。現在、最先端の技術では、高さ1インチの小型電子ビームカラムを実現することができる。しかし、カラム自体が非常に小さいため、標準的な検出器を設置するスペースがあまりない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,698,094B1号公報
【文献】米国特許第8,455,838B2号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0088245号公報
【文献】米国特許第8,997,258B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、二次電子(SE)と後方散乱電子(BSE)を検出するために別々の検出器が使用される。しかし、小型電子ビームカラムのスペースが限られていることから、新しい改良型検出器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、本開示の特定の実施形態の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された要約を示す。この要約は、本開示の広範な概要ではなく、本開示の重要な/重要な要素を特定するものでも、本開示の範囲を画定するものでもない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前段階として、簡略化された形態で本明細書に開示されるいくつかの概念を提示することである。
【0009】
本開示の一態様は、ソリッドステート(固体)デバイスに向けられている。ソリッドステートデバイスは垂直構造を含む。垂直構造は、デバイスの厚さを通して完全に空乏化するためのN+/P-/P+またはP+/N-/N+構造を含む。N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造は、デバイスの表側に形成されたN+またはP+接合、中間部のP-またはN-真性層、およびデバイスの裏側に形成されたP+またはN+層を含む。デバイスはまた、二次電子(SE)および後方散乱電子(BSE)を収集するための活性領域を含む。二次電子と後方散乱電子の検出を分離するため、活性領域は複数のチャンネルに分割されている。一次ビームがデバイスを通過できるように、デバイスの中心には貫通孔(スルーホール)が設けられている。一次ビームはデバイス前面の貫通孔に入射する。
【0010】
本開示の別の側面は、システムに向けられている。このシステムは、電子源と、セラミック基板と、セラミック基板に結合されたデバイスとを含む。デバイスは垂直構造を含む。垂直構造は、デバイスの厚さを通して完全に空乏化するためのN+/P-/P+またはP+/N-/N+構造を含む。N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造は、デバイスの表側に形成されたN+またはP+接合、中間部のP-またはN-真性(intrinsic)層、およびデバイスの裏側に形成されたP+またはN+層を含む。デバイスはまた、二次電子(SE)および後方散乱電子(BSE)を収集するための活性領域を含む。二次電子と後方散乱電子の検出を分離するため、活性領域は複数のチャンネルに分割されている。一次ビームがデバイスを通過できるように、デバイスの中心には貫通孔が設けられている。一次ビームはデバイス前面の貫通孔に入射する。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、ウエハ上の欠陥を決定するための方法に向けられている。この方法は、ウエハに一次電子ビームを照射することを含む。次に、本方法は、ソリッドステートデバイス上の二次電子(SE)および後方散乱電子(BSE)を収集する。デバイスは垂直構造を含む。垂直構造は、デバイスの厚さを通して完全に空乏化するためのN+/P-/P+またはP+/N-/N+構造を含む。N+/P-/P+またはP+/N-/N+構造は、デバイスの表側に形成されたN+またはP+接合、中間部のP-またはN-真性層、およびデバイスの裏側に形成されたP+またはN+層を含む。デバイスはまた、二次電子(SE)および後方散乱電子(BSE)を収集するための活性領域を含む。二次電子と後方散乱電子の検出を分離するため、活性領域は複数のチャンネルに分割されている。一次ビームがデバイスを通過できるように、デバイスの中心には貫通孔が設けられている。一次ビームはデバイス前面の貫通孔に入射する。
【0012】
一部の実施形態では、セグメンテーション(セグメント化したこと)はデバイスの表側に現れ、SEおよびBSEはデバイスの裏側で収集される。一部の実施形態では、デバイスの表側には、SEおよびBSEの収集に利用可能な領域を最大化するための金属コンタクトも含まれる。いくつかの実施形態では、P+層は、ボロンまたは別のアクセプタドーパントを含む。いくつかの実施形態では、P+層は、追加の導電性コーティングを含む。デバイスは、デバイス上のSE信号およびBSE信号を制御するためのポストレンズ素子をさらに含む。いくつかの実施形態では、セグメント化されたチャネルは、等しい面積の4つの象限に囲まれた円形の中心チャネルからなり、4つの象限の各々は、円形の中心チャネルと同じ面積を有する。
【0013】
本開示のこれらおよび他の側面については、図を参照して以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による検出器デバイスの断面を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に従った、デバイスの活性領域のレイアウト例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態に従った、セグメント化された検出器を使用するBSE収集の例示的なスポット図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の実施形態による、セグメント化された検出器を使用したSE収集の例示的なスポット図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の実施形態による例示的なデバイスアセンブリを示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の実施形態による例示的なデバイスアセンブリを示す。
【
図4C】
図4Cは、本開示の実施形態による例示的なデバイスアセンブリを示す。
【
図5A】
図5Aは、本開示の実施形態に従った、小型カラムを有する例示的な検出システムの例を示す。
【
図5B】
図5Bは、本開示の実施形態に従った、小型カラムを有する例示的な検出システムの例を示す。
【
図5C】
図5Cは、本開示の実施形態に従った、小型カラムを有する例示的な検出システムの例を示す。
【
図6A】本開示の実施形態に従った、信号混合/差分を使用する欠陥キャプチャの例を示す。
【
図6B】本開示の実施形態に従った、信号混合/差分を使用する欠陥キャプチャの例を示す。
【
図6C】本開示の実施形態に従った、信号混合/差分を使用する欠陥キャプチャの例を示す。
【
図6D】本開示の実施形態に従った、信号混合/差分を使用する欠陥キャプチャの例を示す。
【
図7】本開示の実施形態に従った、異なったタイプの電子がどのように試料から反射されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細を示す。本開示は、これらの具体的な詳細の一部または全部がなくても実施することができる。他の例では、本開示を不必要に不明瞭にしないために、よく知られたプロセス操作は詳細に記載されていない。本開示を特定の実施形態と併せて説明するが、本開示を実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0016】
ウエハの欠陥は、複数の分散型小型カラムを有するSEM、複数の原子間力顕微鏡(atomic force microscope:AFM)プローブ、複数のプローブを有する近接場マイクロ波ツール、イオンビームプローブ、または複数の近接型光学プローブの形態の高分解能分散型プローブ検査ツールを使用して検出することができる。適切な小型化電子ビームカラム技術は、米国特許第8,698,094B1号および米国特許第8,455,838B2号にさらに記載されており、これらの特許は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。有効な高分解能近接場マイクロ波プローブ技術は、米国特許出願公開第2013/0088245号に記載されており、この出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。高分解能AFMプローブの構成例は、米国特許第8,997,258B2号に記載されており、この特許は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。小型電子ビームカラムでは、従来の電子ビーム検出器では動作するのに十分なスペースがない。したがって、小型電子ビームカラムでは、改良された検出器を使用しなければならない。
【0017】
従来の電子ビーム検出器では、アノードおよびカソードの接点(コンタクト)がデバイスの活性領域側または照射側に配置されている。しかし、これにはいくつかの欠点がある。例えば、アノードおよびカソードのコンタクトがデバイスの活性領域側または照射側に配置されている場合、電荷キャリアは横方向に流れるため、コンタクトやアイソレーション(分離)領域がデバイスの活性領域を占めることによる収集効率の低下が生じる。
【0018】
また、従来の分割型検出器では、アクティブエリア(活性領域)側または照射側で分割(セグメント化)を行っていた。しかし、これではセグメント間に絶縁体が加わるため、検出器の収集効率が低下してしまう。
【0019】
また、従来の電子ビーム検出デバイスでは、特別に設計された金属シールドを使用して、活性領域の露出した絶縁体を覆い隠すか、単に絶縁体を露出させたままにしていました。しかし、活性領域側や照射側に露出した絶縁体が帯電し、デバイスに損傷を与えたり、デバイスを通過する電子ビームに影響を与えたりする可能性があった。そのため、従来の検出器デバイスでは、帯電の懸念を軽減するためにシールドを追加する必要があった。シールドの詳細については、米国特許9,418,819をご参照されたい。
【0020】
さらに、従来の検出器デバイスでは、二次電子(SE)と後方散乱電子(BSE)の検出機能を、SE検出用の検出器とBSE検出用の検出器といったように、物理的に異なる別々の検出器に分割するのが一般的であった。これは、電子ビームカラムが小型化するにつれて、スペースが制限され、電子フィルタリング光学系を追加することが困難になるため、問題となる可能性がある。
【0021】
従来の検出器デバイスの問題点(そのいくつかは上記で提示された)を考慮すると、小型のフォーム(形態)ファクタでSEおよびBSE信号の同時収集および区別を可能にする改良された検出器デバイスの必要性が存在する。本開示に記載の技術および機構は、単一の検出器においてSE信号およびBSE信号の同時収集および弁別を提供する。さらに、本明細書に記載の技術および機構は、例示的なパッケージングアプローチ、および例示的なシステム実装を提供し、その詳細は以下の図を参照して後述する。
【0022】
図1は、本開示の実施形態による検出器デバイスの断面を示す図である。いくつかの実施形態において、デバイス100は、二次および後方散乱電子信号122を同時に検出するためのスルーホール130を有する、セグメント化されたマルチチャネル、裏面照射型、ソリッドステートデバイスである。
【0023】
いくつかの実施形態では、デバイス100は、デバイスの厚さを通して完全空乏化するためのN+/P-/P+構造を含む垂直構造112を含む。一部の実施形態では、デバイス100は裏面照射用に設計されており、これは、一次電子ビーム108が電子源から放出され、スルーホール130を通過して試料(例えば、ウエハ)に当たることを意味する。一次電子ビーム108が試料に当たった後、SEおよびBSE122はデバイス100に向かって反射し、デバイス100の裏面に当たり、最初にP+層106に当たる。
【0024】
他の実施形態では、デバイス100は、異なる電気的性能を有するフロントサイド照明用のP+/N-/N+構造を含む垂直構造112を含む。主な違いは、カソード領域がセグメントを分離するパターン化された絶縁体特徴を有するため、収集効率が低下する可能性があることである。一般に、Nチャネル・デバイスは電子が多数キャリアであるためキャリア移動度が高く、Pチャネル・デバイスは正孔が多数キャリアであるためキャリア移動度が低い。Nチャネル・デバイスとPチャネル・デバイスの間には、キャリア移動度による応答時間、バイアス電圧、空乏幅、放射硬度などのトレードオフがあるが、デバイス100ではどちらのタイプでも機能する。
【0025】
いくつかの実施形態では、P+層106は、デバイス100の裏面、すなわち照明される側の金属コンタクト110とも接触している。いくつかの実施形態において、P+層106は、ホウ素または別のアクセプタドーパントを含み、傾斜した(徐々に変化する)ドーピングレベルを有し得、表面は、底部に向かってよりはるかに重くドープされる。いくつかの実施形態では、P+層106は、例えば原子層堆積などの蒸着によって形成され、連続的な熱アニールによって、感応面上にネイティブ(もともとの)な酸化物を残すことなく浅いインプラントを形成することができる。
【0026】
一部の実施形態では、P+層106は、層106を保護しつつも電子を通すために、導電性コーティング、例えば、酸化物1~4nm(酸化アルミニウムなど)または他の薄膜も含む。一部の実施形態では、この導電性コーティングは、小型電子ビームカラムのための最適化である。なぜなら、小型電子ビームカラム内の電子は低エネルギーであり、これはSEおよびBSEも低エネルギーであることを意味するからである。検出器がSEおよびBSE信号をピックアップするためには、電子がP+層106を通って空乏領域、すなわち真性P-層114に侵入し、そこで電子-正孔対が収集されて信号として読み取られる必要がある。十分なエネルギーの電子がダイオードに衝突すると、電子正孔対が形成される。空乏領域で吸収が起こると、これらの電子正孔は空乏領域の内蔵(ビルトイン)電界によって接合から掃き出される。正孔はアノードへ、電子はカソードへと移動し、電流信号が生成される。低エネルギーのSEやBSEの中には、P+層106を透過せず、トラップされるものもある。電離放射線によるトラップされた電荷は、正孔または電子である。これらは、金属接点110への輸送のための導電性経路、例えば導電性経路やコーティングを提供することによって除去することができる。しかしながら、P+層106の表面が絶縁体である場合、トラップされた電子は絶縁体を充電し始め、デバイスを損傷したり、適切な電子収集に影響を及ぼしたりする可能性がある。いくつかの実施形態では、導電性コーティングは、ホウ素の薄い層、例えば2nmとすることができ、これはデバイスを不動態化し、また導電性表面を提供することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、酸化物パッシベーションの場合、P+層106に対する金属接触スキームは、薄い格子状層として形成されるか、または導電性表面の場合、デバイスの周辺部に金属接触110として既に存在する。
【0028】
一部の実施形態では、デバイス100のデバイス活性領域は、SE信号とBSE信号を区別するために異なるチャネルに分割されることがある。いくつかの実施形態では、各チャンネルは、等しい静電容量に対して等しい面積を有するように構成される。そのような実施形態では、等しいキャパシタンスを確保することにより、チャネル読み出し116および118を介した電子読み出しを最適化するために、すべてのチャネルが他のチャネルと等しいか、または非常に類似した応答を有することが可能になる。いくつかの実施形態では、これは、信号読み出しが、ノイズを最小化するために検出器デバイスに直接隣接して配置された増幅器回路を介して実行されるためである。
【0029】
いくつかの実施形態では、エネルギーフィルタ(例えば、格子状電極)を検出デバイスの前に配置することができる。このような実施形態では、エネルギーフィルタも、BSE信号からSEを分離するのを補助することができる。
【0030】
様々な実施形態によれば、P+層106の隣には、完全空乏化のためにデバイスのバルクを形成する、軽くドープされたP-真性層114がある。上述したように、デバイス100は、入射する高エネルギー電子がP+層106を貫通すると、P-真性層114の格子原子をさらに1つイオン化し、それによって複数の電子-正孔対が生成され、デバイス利得につながるように構成される。その後、電子-正孔対が収集され、それによって信号が検出される。いくつかの実施形態では、P-真性層114の厚さは、平坦性とハンドリング要件を維持しながら、キャリア通過時間またはデバイス応答(信号の立ち上がり時間と帯域幅)を最適化するために薄くされる。
【0031】
一部の実施形態では、デバイス100は、空乏層すなわちP真性層114がデバイスの裏面まで延びる完全空乏モードをサポートし、そのモードで動作させることができる。いくつかの実施形態では、この状態を達成するために必要なバイアス電圧(Vbias)120は、デバイスの他のどこにも絶縁破壊を引き起こしてはならない。
【0032】
様々な実施形態によれば、デバイス100はまた、デバイス100の表側に形成されたN+接合126および128ならびに金属接点106および108を含む。いくつかの実施形態では、前面側にN+接合126および128ならびに金属接点106および108を形成することにより、収集効率が向上するため、裏面、すなわち照明される側のSEおよびBSE収集に利用可能な面積を最大化することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、N+接合126と128は、セグメント間のデッドエリアである絶縁体102によって分離されている。いくつかの実施形態では、絶縁体104がN+接合128とスルーホール130を分離している。いくつかの実施形態では、絶縁体104はスルーホールの不感帯を表す。いくつかの実施形態では、デッドゾーンは効率のために最小化されるべきである。一部の実施形態では、絶縁体102および104はフィールド酸化物である。
【0034】
いくつかの実施形態では、一次ビーム108はスルーホール130を通るので、スルーホール130の側壁124は、側壁124が一次電子ビーム108に影響を与えるのを防ぐために、コーティングされ、接地される必要がある。いくつかの実施形態では、側壁124は、側壁に挿入された金属を含む。いくつかの実施形態では、サイドウォールの金属は、白金のような酸化しない金属である。これは、金属が絶縁表面層を形成せず、一次ビーム108がスルーホール108を通過する際に帯電して一次ビーム108に影響を及ぼさないようにするためである。
【0035】
いくつかの実施形態では、N+接合部126および128は、デバイス100の活性領域を区分するために絶縁体102によって分離される。上述したように、SE信号とBSE信号とを区別するために、活性領域がセグメント化される。いくつかの実施形態では、裏面照明を最大にするために、セグメンテーションは表側に形成される。これは、フィールド分離絶縁体102および104が、表側照明デバイスとは対照的に、反射されたSEおよびBSEに曝されないため、チャージアップしてデバイスに損傷を与えたり、電子ビームに大きな影響を与えたりしないからである。セグメント化検出器に関する詳細は後述する。
【0036】
図2は、本開示の実施形態に従った、デバイスアクティブエリア(活性領域)のレイアウト例を示す図である。より具体的には、
図2は、デバイス100の前面のトップダウン図を示している。いくつかの実施形態では、アクティブエリア200は、フィールド分離絶縁体(isolation insulators)216によってセグメント化された複数のチャネルを含む。いくつかの実施形態では、絶縁体216はデバイス内の不感帯を表す。いくつかの実施形態では、アクティブエリア200の中央には、一次ビームが通過するためのスルーホール214がある。いくつかの実施形態では、スルーホール214はスルーホールデッドゾーン212であり、スルーホール214の側壁を囲むシールドを有しても有さなくてもよい。いくつかの実施形態では、スルーホール214およびスルーホールデッドゾーン212は、チャネル0と表示されたセンター(中央)チャネル210の中央に位置する。いくつかの実施形態では、センターチャネル210を取り囲むのは、それぞれチャネル1、2、3、4と表示された外側チャネル202、204、206、および208である。前述のように、いくつかの実施形態では、各チャンネルは、電界分離のための不感帯(デッドゾーン)絶縁体によって分離されている。
【0037】
上述したように、アクティブエリア200のセグメンテーションは、デバイスの表側(一次ビームに面する側)で行われる。これにより、裏面(サンプルおよび入射SEまたはBSEに面する照明領域)におけるSEおよびBSEの収集効率が向上する。
図3A~3Bは、セグメント化された検出器がSE信号とBSE信号をどのように区別するかを示しています。
【0038】
図3Aは、本開示の実施形態による、セグメント化された検出器を使用したBSE収集の例示的なスポットダイアグラム300を示す。
図3Aに示すように、BSE信号304は、スポットダイアグラム300にわたって均等に広がっている。したがって、BSE信号は、5つのチャネルすべてにわたってかなり均等に広がっている。
【0039】
図3Bは、本開示の実施形態による、セグメント化された検出器を使用するSE収集の例示的なスポットダイアグラムを示す。
図3Bに示すように、SE収集308は、チャネル0であるスポットダイアグラム300の中央チャネルで主に発生する。この違いは、電子ビーム・カラム・システムのオペレータが、試料またはウエハの最適な撮像に最適なセグメント(またはチャネル)を選択することを可能にするため、重要である。
【0040】
いくつかの実施形態では、セグメンテーションとマルチチャンネルの詳細は、互いに排他的である-つまり、複数のセグメントを組み合わせて独立した検出チャンネルを形成することができる。例えば、チャンネルは、最適な撮像画質のために適切な比率で組み合わせ、混合することができる。さらに、チャネルは、SE、例えば、Ch0(物理的検査)、またはBSE、例えば、Ch1、2、3、および4のための生信号とすることができる。いくつかの実施形態では、チャネルは、例えば、(Ch1+Ch2)-(Ch3+Ch4)のように、トポグラフィ撮像のために混合することができる。いくつかの実施形態では、各チャンネルセグメントは、角度情報を達成するためにさらにセグメント化され得る。
【0041】
図4A~4Cは、本開示の実施形態によるデバイスアセンブリ400、450、および470の例を示す。
図4Aは、基板414に取り付けられた裏面照射型検出器402を示すデバイスアセンブリ400を含む。いくつかの実施形態では、基板414はセラミック基板である。セラミック基板のいくつかの例には、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、および石英が含まれる。セラミック基板は、一般に、導体がシルクスクリーン印刷されるか、または他の手段によって堆積およびパターン化される厚膜用途に使用される。様々な実施形態によれば、用途に必要な機械的、熱的、または電気的特性に応じて、異なる基板材料が使用される。いくつかの実施形態では、一般にセラミック粒子(窒化アルミニウム、アルミナ、または窒化ケイ素粉末)をポリマーバインダと混合して低い焼結温度、例えば1000℃未満にした低温同時焼成セラミック(LTCC)は、受動部品、例えば抵抗器、コンデンサ、インダクタ、および導電性トレースを集積する際の多層アプローチを可能にする。一部の実施形態では、高温同時焼成セラミック(HTCC)を、焼結温度がより高い、例えば約1600℃であることを除いて、LTCCと同様の方法で使用することができます。
図4Aに示すように、検出器402の裏面(底面)にはセグメンテーションがない。さらに、カソード接点422および424は表側にもあり、金属であるアノード接点420は裏側に位置している。いくつかの実施形態では、ワイヤボンド408が検出器402の表側の各接点に結合されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、デバイス402は、低ノイズのために、基板穴426を有するセラミック基板414上に実装され、検出器402に隣接し、金属層410を介して接続された読み出し電子回路434を有するベアダイであってもよい。これにより、寄生容量および電子クロストーク(EMI)を最小限に抑えることができる。一部の実施形態では、デバイス402のキャパシタンスと抵抗(直列および並列)は、前置増幅器電子機器の帯域幅と入力キャパシタンス要件に適合するように設計することができる。一部の実施形態では、セラミック基板414は、電子帯電を緩和するために誘電体の露出領域を覆う金属層432を含む。
【0043】
図4Bに示すように、いくつかの実施形態では、組立450は検出器402を含み、この検出器は、組立を容易にするために、基板414に実装する前にサブキャリア(セラミック、LTCCまたは同様のもの)基板438に実装することができる。一部の実施形態では、これには、最終基板414に実装する前の接点のワイヤボンド、ボールはんだボンド、またはアンダーフィルが含まれる。一部の実施形態では、キャリア438(セラミック、LTCCまたは同様のもの)は、誘電体の電子ビーム帯電を緩和するために、ボア(bore)、下面などの選択された領域にメタライゼーション432を施すこともできる。いくつかの実施形態では、サブキャリア基板438は、組立および集積を分割するために使用され得る。
【0044】
図4Cは、読み出し電子回路434が、サブキャリア基板438の代わりに基板414上に配置されていることを除いて、アセンブリ450と同様のアセンブリ470を示す。いくつかの実施形態では、読み出し電子回路434がサブキャリア438の代わりに基板414上にあるのは、サブキャリア438のサイズ制約のためである可能性がある。
【0045】
いくつかの実施形態では、デバイス402は、ワイヤボンド408のループ高さを最小化するか、またはカソードに接触する代替方法、例えば、機械的クリップ、ばね負荷クランプ、ねじ止めクランプ、または平面もしくはほぼ平面の表面を必要とする他の方法を可能にするために、凹部を有するセラミック基板上に組み立てることができる。
【0046】
一部の実施形態では、パッケージは、検出器の性能またはデバイス全体の性能を向上させるアクティブまたはパッシブの他のデバイス、例えば、差動ポンプ開口部、追加増幅器、電子エネルギーフィルタリング用電極、またはノイズ抑制デバイスを取り付けるために使用することができる。
【0047】
一部の実施形態では、LTCCやAlNなどの多層パッケージングにより、ヒーター、抵抗器、コンデンサなどの埋め込み相互接続やデバイスの配線が可能になり、検出器の機能を強化したり、検出器の設計を簡素化したり、50Ωなどの制御インピーダンスや整合経路長などのデバイス性能を向上させたりすることができます。
【0048】
様々な実施形態によれば、精密な位置合わせを容易にするために、貫通穴432、またはデバイス上のパターン化されたフィデューシャルを光学的登録に使用することができる。いくつかの実施形態では、貫通穴432は、一次ビーム434が通過し、SEおよびBSE428を反射して戻るように、デバイス402の中心に配置されるか、または中心に近接して配置される。いくつかの実施形態では、貫通孔432は中心からずれて配置されてもよい。幾つかの実施形態では、例えば、マルチビーム用途のために、複数の貫通孔432を設けてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、スルーホール432は、直線状、テーパ状、または段差状など、様々な形状またはエッチングプロファイルのいずれか1つを有することができる。いくつかの実施形態では、スルーホール432は、帯電を緩和するための金属または不純物ドーピングなどの導電性コーティングを側壁に有することができる。いくつかの実施形態では、スルーホール432は、保護コーティングの代わりにシールドを挿入してもよい。
【0050】
図5Aは、本開示の実施形態に従った、小型電子ビームカラムを有する例示的な検出システム500を示す。
図5Bは、本開示の実施形態に従った、代替の小型電子ビームカラムを備えた検出システム502の例を示す。
図5Cは、電子ビームカラムのさらに別の例である検出システム540を示す。
【0051】
幾つかの実施形態では、検出器514は、電子ビームカラム内の軸上の一次ビーム532の経路に配置される。いくつかの実施形態では、一次ビーム532は電子源504から放出される。いくつかの実施形態では、ソース504は電子エミッタである。いくつかの実施形態では、陽極506は、電子源504から電子を取り出すために、高電圧が印加され、それによって電界が形成される。いくつかの実施形態では、陽極506の下は、ビーム532を制限開口510に集束させる静電集束レンズ508である。いくつかの実施形態において、制限開口510は、ソースにおける受容角度を規定する。いくつかの実施形態では、制限絞り510は、ビーム532を数十ミクロンのオーダーまでフィルタリングする。
【0052】
一部の実施形態では、一次ビーム532は次に検出器514のスルーホールを通過する。いくつかの実施形態では、一次ビーム532は、その後、試料530、例えばウエハに向かう途中でスキャンコイルまたは偏向器516を通過する。このような実施形態では、これらのスキャンコイルまたは偏向器516は、試料532上で一次ビーム532をラスタースキャンする。いくつかの実施形態では、対物レンズ518が一次ビーム532を試料530上に集光する。いくつかの実施形態では、一次ビーム532が試料530上でラスタースキャンされた後、電子は二次/後方散乱電子534として反射され、拡散しながら一次ビーム経路に沿って検出器514に向かって戻る。
【0053】
いくつかの実施形態では、SEおよびBSE534は、異なる位置で検出器514に衝突し、一次ビーム532が試料をラスタースキャンした場所に応じて、様々な強度の信号が捕捉される。いくつかの実施形態では、検出器514からの試料530の作動距離、およびランディングエネルギーまたは焦点などの他の作動条件に応じて、検出器514上のSEおよびBSE信号の構成を調整することができる。いくつかの実施形態では、検出器信号の読み出しは、ノイズを最小限に抑えるために、検出器に直接隣接する増幅回路を介して行われる。
【0054】
図5Bに示すように、いくつかの実施形態では、検出システム502は、検出器514上のSEおよびBSE信号を制御するために、ポストレンズ素子520を含む。いくつかの実施形態では、検出システムの底部までの試料の距離(「作動距離」)およびポストレンズ素子520上の電圧を調整することによって、システムは、SE信号およびBSE信号の比率を制御し、検出器および収集効率に焦点を合わせることができる。これにより、オペレータは、撮像されるサンプルに特有の画質を最適化するために、主にSEである画像、主にBSEである画像、または両方の組み合わせである画像を得ることができる。いくつかの実施形態では、作動距離は、試料530から対物レンズ518までの距離として定義される。他の実施形態では、作動距離は、試料530からポストレンズ素子520までの距離として定義される。いくつかの実施形態では、SE信号およびBSE信号は、やはり作動距離のみを変更することによって調整することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、作動距離の変更と連動して、ポストレンズ素子520は、SEおよびBSE比の操作を容易にする。
【0055】
図5Cは、電子ビームカラムのさらに別の例である検出システム540を示す。いくつかの実施形態では、検出システム540は、検出器が2つの別個の検出器514A及び514Bに分割されていることを除いて、システム500と全て同じ要素を有する。さらに、検出器514A及び514Bは、対物レンズ518の後に配置される。いくつかの実施形態では、検出器514AはBSEを検出し、検出器514BはSEを検出する。いくつかの実施形態では、検出器514Bは、強い電界を使用して、低エネルギーのSEを側方に引き離す。幾つかの実施形態では、検出器を対物レンズの後に配置することは、作動距離が短くなること、及び汚染(例えば、脱ガス、昇華、蒸発)に対する検出器の感受性が高くなることを含む幾つかの欠点を有する。
【0056】
図6Aおよび
図6Bは、本開示の実施形態に従った、信号混合/差分を使用する欠陥キャプチャの例を示す。
図6Aは、BSE信号のみの欠陥キャプチャ622と並置されたSE+BSE信号のミックスの欠陥キャプチャ602を表示する。
図6Aに見られるように、SE+BSE欠陥キャプチャ602は、欠陥604、606、および608を表示する。しかし、BSEのみの欠陥キャプチャ622は、同じ3つの欠陥に加えて、追加の欠陥610、612、614、および616を示している。したがって、
図6Aの特定の例では、BSEのみの画像の方が欠陥を発見するのに適している。いくつかの実施形態では、BSEのみの画像は、ラインオープン(
図6C、654のラインオープン)およびラインブリッジ(
図6D、658のラインブリッジ)の両方に対してより良好である。
【0057】
図6Bは、SEのみの信号の欠陥キャプチャ632を、BSE信号のみの欠陥キャプチャ642と並べて表示している。
図6Bに見られるように、SEのみの欠陥キャプチャ632には欠陥636が表示されている。しかし、BSEのみの欠陥キャプチャ642は、欠陥を示さない。したがって、
図6Bの特定の例では、SEのみの画像の方が欠陥を発見するのに適している。いくつかの実施形態では、SEのみの画像の方がコンタクトオープン(contact open)に適している。
【0058】
図7は、異なる種類の電子が試料からどのように反射されるかを示す図である。
図7は、一次電子ビーム702が試料700に当たっている様子を示している。試料に当たった後、いくつかの異なるタイプの照明光が反射し、異なる情報を提供します。例えば、オージェ電子724は表面の原子組成情報を提供します。特性(characteristic)X線722は厚さの原子組成を与え、カソードルミネッセンス720は電子状態の情報を与える。試料の反対側まで透過した電子の一部は、透過712するか、多方向714(非干渉性(incoherent)弾性散乱)、718(非弾性散乱)、710(弾性散乱)に散乱する。
【0059】
本開示の目的上、上述のシステムは、二次電子(SE)と後方散乱電子(BSE)に焦点を当てている。BSEは、電子ビームと試料との弾性衝突後に反射される。SEは試料の原子から発生する。電子ビームと試料の非弾性衝突の結果です。BSEは試料の深い領域から、SEは表面領域から発生する。
【0060】
BSE画像とSE画像は、異なる種類の情報を伝える。BSE画像は、画像化される物質の原子番号の違いに高い感度を示し、原子番号が高いほど、その物質は画像内で明るく見える。SE画像は、トポロジーなど、より詳細な表面情報を提供する。ラインオープン、ブリッジ、ピンホール、ピンドットなどの欠陥のイメージングにおけるBSEとSEの有効性は、ランディングエネルギー、材料、入射角度、試料のパターン/トポロジーに依存する。
【0061】
いくつかの実施形態では、ソリッドステート検出器は多くの異なる材料とフォーマットから作ることができる。以下の例はすべてシリコンPIN検出器に取って代わる可能性がある。セグメント化されたマイクロチャンネルプレートは、より高い利得信号を与えることができ、また、より低エネルギーの電子をピックアップすることができる。光電子増倍管/シンチレーターとセグメント化されたフォトディテクタは、より高い利得を得ることができる。シリコンドリフト検出器(SDD)は、エネルギー弁別が可能です。電荷結合素子(CCD)は空間分解能を向上させることができる。GaN、ダイヤモンドなど、他のソリッドステート材料タイプもある。--例えばGaN、ダイヤモンドなど)、より高温で動作することができ、シリコンよりも頑丈である。
【0062】
ここに示す本開示の特定の実施形態は、一般に、半導体検査およびプロセス制御の分野に対処するものであり、上に要約したハードウェア、アルゴリズム/ソフトウェアの実装およびアーキテクチャ、ならびに使用例に限定されるものではない。
【0063】
前述の開示は、理解を明瞭にする目的である程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更および修正が実施され得ることは明らかであろう。本開示のプロセス、システム、およびデバイスを実施する多くの代替的な方法が存在することに留意すべきである。従って、本実施形態は、例示的なものであって制限的なものではないと考えられ、本開示は、本明細書で与えられる詳細に限定されるものではない。