(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】インク組成物、これを利用した膜およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/033 20140101AFI20250131BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20250131BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20250131BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20250131BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20250131BHJP
B82Y 40/00 20110101ALN20250131BHJP
【FI】
C09D11/033
C09D11/037
G02B5/20
B82Y20/00
G09F9/33
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2023536948
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2022002124
(87)【国際公開番号】W WO2022177238
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0023411
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミスン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ドン ワン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チュルジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ウン スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジンソプ
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0074589(US,A1)
【文献】国際公開第2010/055845(WO,A1)
【文献】特開2015-201510(JP,A)
【文献】特開2007-254735(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069737(WO,A1)
【文献】特開2017-037761(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1919942(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0050000(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/033
G02B 5/20
B82Y 20/00
G09F 9/33
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)半導体ナノロッド;および
(B)少なくとも一つ以上のジオール(diol)系化合物を含む溶媒
を含み、
20℃~25℃
の温度範囲の全てにおいて50cps以上、35℃~65℃
の温度範囲の全てにおいて20cps以下の粘度を有
し、
前記ジオール(diol)系化合物は、下記化学式1で表される、インク組成物。
【化1】
(前記化学式1で、
R
1
およびR
2
は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
L
1
は、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基である。)
【請求項2】
前記溶媒は、前記インク組成物総量に対して15重量%~99.9重量%で含まれる、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記ジオール(diol)系化合物は、下記化学式1-1~化学式1-5で表される化合物のうちの少なくとも一つ以上を含む、請求項1に記載のインク組成物。
【化2】
【請求項4】
前記溶媒は、下記化学式2または化学式3で表される化合物をさらに含む、請求項1に記載のインク組成物。
【化3】
(前記化学式2および化学式3で、
R
3~R
5は、それぞれ独立して、
C2~C10アルケニル基で置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり、
R
6~R
8は、それぞれ独立して、
C2~C10アルケニル基で置換もしくは非置換のC1~C20アルコキシ基である。)
【請求項5】
前記化学式2または化学式3で表される化合物は、下記化学式2-1、化学式2-2、化学式3-1および化学式3-2で表される化合物から選択された少なくとも一つ以上を含む、請求項4に記載のインク組成物。
【化4】
【化5】
【請求項6】
前記化学式2または化学式3で表される化合物は、前記ジオール(diol)系化合物よりも少ない含有量で含まれる、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記溶媒は、下記化学式4で表される化合物をさらに含む、請求項1に記載のインク組成物。
【化6】
(前記化学式4で、
R
9~R
11は、それぞれ独立して、水素原子またはC1~C10アルキル基であり、
R
12は、水素原子または*-C(=O)R
13(R
13はC1~C10アルキル基である)であり、
L
16およびL
17は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基または置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基であり、
L
18は、*-O-*、*-S-*または*-NH-*である。)
【請求項8】
前記ジオール(diol)系化合物および前記化学式4で表される化合物は、3:7~8:2の重量比で含まれる、請求項7に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記半導体ナノロッドは、300nm~900nmの直径を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記半導体ナノロッドは、3.5μm~5μmの長さを有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記半導体ナノロッドは、GaN系化合物、InGaN系化合物またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記半導体ナノロッドは、その表面が金属酸化物でコーティングされた、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項13】
前記金属酸化物は、アルミナ、シリカまたはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載のインク組成物。
【請求項14】
前記半導体ナノロッドは、前記インク組成物総量に対して0.01重量%~10重量%で含まれる、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項15】
前記インク組成物は、重合抑制剤;マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項16】
前記インク組成物は、電気泳動装置用インク組成物である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のインク組成物を利用して
、膜を製造する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の膜を製造する方法の工程を含む
、ディスプレイ装置
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、インク組成物、これを利用した膜およびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは、1992年に日本の日亜化学社の中村などが低温のGaN化合物緩衝層を適用して良質の単結晶GaN窒化物半導体の融合に成功することによって開発が活発に行われてきた。LEDは、化合物半導体の特性を利用して多数のキャリアが電子であるn型半導体結晶と多数のキャリアが正孔であるp型半導体結晶とが互いに接合された構造を有する半導体であって、電気信号を所望する領域の波長帯域を有する光に変換させて表出される半導体素子である。
【0003】
このようなLED半導体は、光変換効率が高いためエネルギー消費量が極めて少なく、寿命が半永久的であり、環境にやさしいため、グリーン素材として光の革命とも呼ばれる。最近は化合物半導体技術の発達により高輝度の赤色、橙色、緑色、青色および白色LEDが開発されており、これを活用して信号灯、携帯電話、自動車の前照灯、屋外電光板、LCD BLU(back light unit)、そして室内外照明など多くの分野で応用されており、国内外で活発な研究が続いている。特に広いバンドギャップを有するGaN系化合物半導体は、緑色、青色そして紫外線領域の光を放出するLED半導体の製造に利用される物質であり、青色LED素子を利用して白色LED素子の製作が可能であるため、これに関する多くの研究が行われている。
【0004】
このような一連の研究の中で、LEDのサイズをナノまたはマイクロ単位で製作した超小型LED素子を利用した研究が活発に行われており、このような超小型LED素子を照明、ディスプレイになどに活用するための研究が続いている。このような研究で持続的に注目されている部分は、超小型LED素子に電源を印加できる電極、活用目的および電極が占める空間の減少などのための電極配置、配置された電極に超小型LEDの実装方法などに関するものである。
【0005】
この中でも、配置された電極に超小型LED素子を実装させる方法に関する部分は、超小型LED素子のサイズ制約により電極上に超小型LED素子を目的のとおり配置および実装させることか非常に難しいという難点が依然として存在している。これは超小型LED素子がナノスケールまたはマイクロスケールであることから、手作業でいちいち目的の電極領域に配置させ、実装させることができないためである。
【0006】
最近、ナノスケールの超小型LED素子に対する要求が次第に増大しており、このためにナノスケールのGaN系化合物半導体またはInGaN系化合物半導体をロッドで製造しようとする試みがあるが、ナノロッド自体の大きい粒子サイズにより溶液内での分散安定性が大きく低下する。そして現在まで半導体ナノロッドの溶液内の分散安定性を向上させることができる技術に対する紹介は全くない状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態の目的は、常温では高粘度を有して半導体ナノロッドに沈降安定性を付与し、同時に高温では低粘度を有してインクジェッティング性にも優れたインク組成物を提供することにある。
【0008】
他の一実施形態の目的は、前記インク組成物を利用して製造された膜を提供することにある。
【0009】
また他の一実施形態の目的は、前記膜を含むディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態は、(A)半導体ナノロッド;および(B)少なくとも一つ以上のジオール(diol)系化合物を含む溶媒を含み、20℃~25℃では50cps以上、35℃~65℃では20cps以下の粘度を有するインク組成物を提供する。
【0011】
前記ジオール(diol)系化合物は、下記化学式1で表され得る。
【0012】
【0013】
前記化学式1で、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
L1は、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基である。
【0014】
前記ジオール(diol)系化合物は、下記化学式1-1~化学式1-5で表される化合物のうちの少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0015】
【0016】
前記溶媒は、下記化学式2または化学式3で表される化合物をさらに含むことができる。
【0017】
【0018】
前記化学式2および化学式3で、
R3~R5は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり、
R6~R8は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルコキシ基である。
【0019】
前記化学式2で、R3~R5は、それぞれ独立して、C2~C10アルケニル基で置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり得る。
【0020】
前記化学式3で、R6~R8は、それぞれ独立して、C2~C10アルケニル基で置換もしくは非置換のC1~C20アルコキシ基であり得る。
【0021】
前記化学式2で表される化合物は、下記化学式2-1および化学式2-2からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0022】
【0023】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式3-1および化学式3-2で表される化合物からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0024】
【0025】
前記化学式2または化学式3で表される化合物は、前記ジオール(diol)構造を有する化合物よりも少ない含有量で含まれ得る。
【0026】
前記溶媒は、下記化学式4で表される化合物をさらに含むことができる。
【0027】
【0028】
前記化学式4で、
R9~R11は、それぞれ独立して、水素原子またはC1~C10アルキル基であり、
R12は、水素原子または*-C(=O)R13(R13はC1~C10アルキル基である)であり、
L16およびL17は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基または置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基であり、
L18は、*-O-*、*-S-*または*-NH-*である。
【0029】
前記ジオール(diol)系化合物および前記化学式4で表される化合物は、3:7~8:2の重量比で含まれ得る。
【0030】
前記半導体ナノロッドは、300nm~900nmの直径を有することができる。
【0031】
前記半導体ナノロッドは、3.5μm~5μmの長さを有することができる。
【0032】
前記半導体ナノロッドは、GaN系化合物、InGaN系化合物またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0033】
前記半導体ナノロッドは、その表面が金属酸化物でコーティングされたものであり得る。
【0034】
前記金属酸化物は、アルミナ、シリカまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0035】
前記半導体ナノロッドは、前記インク組成物総量に対して0.01重量%~10重量%で含まれ得る。
【0036】
前記インク組成物は、重合抑制剤;マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0037】
前記インク組成物は、電気泳動装置用インク組成物であり得る。
【0038】
他の一実施形態は、前記インク組成物を利用して製造された膜を提供する。
【0039】
また他の一実施形態は、前記膜を含むディスプレイ装置を提供する。
【0040】
その他本発明の側面の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0041】
一実施形態によれば、誘電泳動特性および半導体ナノロッドの分散安定性が同時に優れたインク組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】一実施形態によるインク組成物に使用される半導体ナノロッドの断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0044】
本明細書で特別な言及がない限り、「アルキル基」とは、C1~C20アルキル基を意味し、「アルケニル基」とは、C2~C20アルケニル基を意味し、「シクロアルケニル基」とは、C3~C20シクロアルケニル基を意味し、「ヘテロシクロアルケニル基」とは、C3~C20ヘテロシクロアルケニル基を意味し、「アリール基」とは、C6~C20アリール基を意味し、「アリールアルキル基」とは、C6~C20アリールアルキル基を意味し、「アルキレン基」とは、C1~C20アルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは、C6~C20アリーレン基を意味し、「アルキルアリーレン基」とは、C6~C20アルキルアリーレン基を意味し、「ヘテロアリーレン基」とは、C3~C20ヘテロアリーレン基を意味し、「アルコキシレン基」とは、C1~C20アルコキシレン基を意味する。
【0045】
本明細書で特別な言及がない限り、「置換」とは、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、C1~C20アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミン基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸やその塩、C1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C6~C20アリール基、C3~C20シクロアルキル基、C3~C20シクロアルケニル基、C3~C20シクロアルキニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキル基、C2~C20ヘテロシクロアルケニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキニル基、C3~C20ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせの置換基で置換されたことを意味する。
【0046】
また本明細書で特別な言及がない限り、「ヘテロ」とは、化学式内にN、O、SおよびPのうちの少なくとも一つのヘテロ原子が少なくとも一つ含まれたことを意味する。
【0047】
また本明細書で特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方共に可能であることを意味し、「(メタ)アクリル系」は、「アクリル系」と「メタクリル系」の両方共に可能であることを意味する。
【0048】
本明細書で特別な言及がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。
【0049】
本明細書内の化学式で別途の定義がない限り、化学結合が描かれるべき位置に化学結合が描かれていない場合は、前記位置に水素原子が結合されていることを意味する。
【0050】
本明細書で半導体ナノロッドとは、ナノサイズの直径を有するロッド(rod)模様の半導体を意味する。
【0051】
また本明細書で特別な言及がない限り、「*」は、同じかまたは異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0052】
一実施形態によるインク組成物は、(A)半導体ナノロッド;および(B)少なくとも一つ以上のジオール(diol)系化合物を含む溶媒を含み、20℃~25℃では50cps以上、35℃~65℃では20cps以下の粘度を有する。
【0053】
最近、マイクロLED、ミニLEDなど既存のLEDのエネルギー効率改善および効率低下(efficiency drop)防止効果がある多様なコンセプト(concept)の研究が活発に行われている。そのうち、電場(electric filed)を利用したInGaN系ナノロッドLEDの整列(電気泳動)は、マイクロLED、ミニLEDなどの複雑で高い工程費用を画期的に減らすことができる方法として注目されている。
【0054】
半導体ナノロッド(Nano rod)の電気泳動のための基板へのコーティングのためには、半導体ナノロッド分散液をインクジェッティングまたはスリットコーティング(slit coating)しなければならない。特に大面積のコーティングおよびパネル生産のためには均一に半導体ナノロッドが塗布されなければならず、このためには半導体ナノロッド溶液の分散安定性が必要である。またLEDの発光効率を上げるためには、高い誘電泳動率が必須のパラメータとなる。本発明は、半導体ナノロッドの分散安定性と高い誘電泳動率を同時に達成できる新規なインクジェッティング用インク組成物に関するものである。
【0055】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0056】
(A)半導体ナノロッド
前記半導体ナノロッドは、GaN系化合物、InGaN系化合物またはこれらの組み合わせを含むことができ、その表面が金属酸化物でコーティングされ得る。
【0057】
半導体ナノロッドインク溶液(半導体ナノロッド+溶媒)の分散安定性のためには、通常3時間程度の時間が必要であるが、これは大面積のインクジェット(Inkjet)工程を行うには非常に足りない時間である。そこで、本発明者らは幾多の試行錯誤を重ねた研究の結果、半導体ナノロッド表面をアルミナ、シリカまたはこれらの組み合わせを含む金属酸化物でコーティングさせて絶縁膜(Al2O3あるいはSiOx)を形成させることによって、後述する溶媒との相溶性を極大化させることができた。
【0058】
例えば、前記金属酸化物でコーティングされた絶縁膜は、40nm~60nmの厚さを有することができる。
【0059】
前記半導体ナノロッドは、n型閉じ込め層(n-type confinement layer)およびp型閉じ込め層(p-type confinement layer)を含み、前記n型閉じ込め層およびp型閉じ込め層の間に多重量子井戸活性部(MQW active region;multi quantum well active region)が位置することができる。(
図1参照)
例えば、前記半導体ナノロッドは、300nm~900nm、例えば600nm~700nmの直径を有することができる。
【0060】
例えば、前記半導体ナノロッドは、3.5μm~5μmの長さを有することができる。
【0061】
例えば、前記半導体ナノロッドは、アルミナ絶縁膜を含む場合、5g/cm3~6g/cm3の密度を有することができる。
【0062】
例えば、前記半導体ナノロッドは、1x10-13g~1x10-11gの質量を有することができる。
【0063】
前記半導体ナノロッドが前記直径、長さ、密度および種類である場合、前記金属酸化物の表面コーティングが容易になり、半導体ナノロッドの分散安定性が極大化することができる。
【0064】
前記半導体ナノロッドは、前記インク組成物総量に対して0.01重量%~10重量%、例えば0.02重量%~8重量%、例えば0.03重量%~5重量%で含まれ得る。半導体ナノロッドが前記範囲内に含まれる場合、インク内の分散性が良好であり、製造されたパターンは優れた輝度を有することができる。
【0065】
(B)溶媒
一実施形態によるインク組成物は、溶媒を含む。
【0066】
既存のディスプレイおよび電子材料で使用されていたプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、ポリエチレングリコールメチルエーテル(PGME)、エチルアセテート、イソプロピルアルコール(IPA)などの有機溶媒は、粘度が低いため、密度が高い無機物ナノロッド粒子の沈降が過度に速く、誘電泳動特性が悪い。したがって、NED-Inkの開発のためには、ナノロッドの沈降安定性を付与できる溶媒が使用されることが好ましい。しかし、単に粘度が高い溶媒の場合、インクジェッティングの際に噴射されないという問題が発生する。これを改善するために、本発明者らは、インクジェッティングの際の温度を高めて、常温では高い粘度を有すると同時に、常温より高い温度では低い粘度を有する溶媒を開発して、最終的に前記のような特性を有する溶媒を含むインク組成物を完成するに至った。
【0067】
具体的に、一実施形態は、水素結合を有するジオール(diol)構造を有する化合物を溶媒に導入することによって、インク組成物の常温での粘度を高め、常温より高い温度を有する高温では粘度を低める特性を確保することができた。ただし、前記水素結合を有するがジオール構造でない他の構造、例えばヒドロキシ基が3個以上であるマルチオール構造を有する化合物を溶媒に導入する場合、誘電定数が高すぎて誘電泳動特性が落ちるため、一実施形態によるインク組成物内の溶媒として使用されるに適さない。
【0068】
常温で粘度が高い場合、分散安定性を10時間以上を確保することができ、分散安定性を長時間確保するためには常温ではできる限り高い粘度を有する、具体的に20℃~25℃で50cps以上の粘度を有する(例えば、50cps~2,000cps)ことが好ましい。
【0069】
より具体的に、インクジェッティング特性を確保するために、高温(35℃~65℃、例えば40℃~50℃)での溶媒の粘度は、20cps以下(例えば1cps~20cps)にならなければならず、常温(例えば、20℃~25℃)と高温での粘度変化が大きい溶媒を確保するために、下記化学式1で表されるジオール(diol)系化合物を単独または混合適用して、誘電率および粘度を制御することができる。
【0070】
【0071】
前記化学式1で、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
L1は、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基である。
【0072】
例えば、前記ジオール(diol)系化合物は、下記化学式1-1~化学式1-5で表される化合物のうちの少なくとも一つ以上を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0073】
【0074】
例えば、前記ジオール(diol)系化合物は、前記インク組成物総量に対して20重量%~85重量%、例えば30重量%~80重量%で含まれ得る。前記ジオール構造を有する化合物の含有量が前記範囲を有する場合、適切な誘電定数を有しながらも半導体ナノロッドの分散安定性を改善させることができる。
【0075】
例えば、前記溶媒は、下記化学式2、化学式3および化学式4で表される化合物のうちの少なくとも一つ以上をさらに含むことができる。
【0076】
【0077】
前記化学式2~化学式4で、
R3~R5は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり、
R6~R8は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルコキシ基である。
【0078】
R9~R11は、それぞれ独立して、水素原子またはC1~C10アルキル基であり、
R12は、水素原子または*-C(=O)R13(R13はC1~C10アルキル基である)であり、
L16およびL17は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基または置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基であり、
L18は、*-O-*、*-S-*または*-NH-*である。
【0079】
例えば、前記化学式2で、R3~R5は、それぞれ独立して、C2~C10アルケニル基で置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり得る。
【0080】
例えば、前記化学式3で、R6~R8は、それぞれ独立して、C2~C10アルケニル基で置換もしくは非置換のC1~C20アルコキシ基であり得る。
【0081】
例えば、前記化学式2で表される化合物は、下記化学式2-1および化学式2-2からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0082】
【0083】
例えば、前記化学式3で表される化合物は、下記化学式3-1および化学式3-2で表される化合物からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0084】
【0085】
例えば、前記化学式4で表される化合物は、クエン酸であり得る。
【0086】
例えば、前記化学式4で表される化合物は、下記化学式4-1~化学式4-6のうちのいずれか一つで表され得るが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0087】
【0088】
【0089】
例えば、前記化学式2または化学式3で表される化合物は、前記ジオール(diol)系化合物よりも少ない含有量で含まれ得る。
【0090】
例えば、前記ジオール(diol)系化合物および前記化学式4で表される化合物は、3:7~8:2の重量比で含まれ得る。
【0091】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、ポリエチレングリコールメチルエーテル(PGME)、エチルアセテート、イソプロピルアルコール(IPA)などの従来の有機溶媒などは、全て粘度が低いため、高い密度の半導体ナノロッドの沈降安定性の改善には限界が存在するしかなかったが、前記ジオール(diol)系化合物と共に、前記化学式2~化学式4で表される化合物のうちの少なくとも一つ以上を追加で使用する場合、インク組成物の常温および前記常温より高い温度での粘度制御がより容易であり、半導体ナノロッドの沈降安定性を画期的に改善させることができ、また適切な誘電定数値を有することができるため、誘電泳動率を大きく向上させることができる。
【0092】
前記溶媒は、前記インク組成物総量に対して15重量%~99.9重量%、例えば15重量%~99.8重量%、例えば20重量%~99.7重量%で含まれ得る。
【0093】
重合性単量体
一実施形態によるインク組成物は、末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性単量体をさらに含むことができる。
【0094】
前記重合性単量体は、従来の硬化性組成物に一般的に使用されるモノマーまたはオリゴマーを混合して使用することができる。
【0095】
例えば、前記重合性単量体は、末端に下記化学式5で表される官能基を少なくとも一つ以上有する重合性単量体であり得る。
【0096】
【0097】
前記化学式5で、
R14は、水素原子または置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基である。
【0098】
前記重合性単量体が末端に炭素-炭素二重結合、具体的に前記化学式5で表される官能基を少なくとも一つ以上含むことによって、前記半導体ナノロッドと架橋構造を形成することで、前記半導体ナノロッドの分散安定性をより向上させることができる。
【0099】
例えば、末端に前記化学式5で表される官能基を一つ以上含む重合性単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ノボラックエポキシアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、日本化学社製のKAYARAD DPCA-20、KAYARAD DPCA-30、KAYARAD DPCA-60、KAYARAD DPCA-120、KAYARAD DPEA-12またはこれらの組み合わせなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0100】
重合開始剤
一実施形態によるインク組成物は、重合開始剤をさらに含むことができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0101】
前記光重合開始剤は、前記硬化性組成物に一般的に使用される開始剤として、例えばアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、アミノケトン系化合物などを使用することができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0102】
前記アセトフェノン系の化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0103】
前記ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0104】
前記チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0105】
前記ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0106】
前記トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0107】
前記オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用することができる。前記O-アシルオキシム系化合物の具体的な例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテートおよび1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられる。
【0108】
前記アミノケトン系化合物の例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-Benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)などが挙げられる。
【0109】
前記光重合開始剤は、前記化合物以外にも、カルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、非イミダゾール系化合物などを使用することができる。
【0110】
前記光重合開始剤は、光を吸収して浮き立った状態になった後、そのエネルギーを伝達することによって化学反応を起こす光増感剤と共に使用されることもできる。
【0111】
前記光増感剤の例としては、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0112】
前記熱重合開始剤の例としては、ペルオキシド、具体的にベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド(例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、t-ブチルペルベンゾエートなどが挙げられ、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオニトリルなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、当業界に広く知られたものであれば如何なるものでも使用することができる。
【0113】
前記重合開始剤は、前記インク組成物を構成する固形分総量に対して1重量%~5重量%、例えば2重量%~4重量%で含まれ得る。重合開始剤が前記範囲内に含まれる場合、露光または熱硬化時に硬化が十分に起きて優れた信頼性を得ることができる。
【0114】
その他添加剤
一実施形態によるインク組成物は、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせを含む重合抑制剤をさらに含むことができる。一実施形態によるインク組成物が前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせをさらに含むことによって、インク組成物を印刷(コーティング)後、露光する間に常温架橋を防止することができる。
【0115】
例えば、前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせは、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、ピロガロール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-ナフトール、トリス(N-ヒドロキシ-N-ニトロソフェニルアミナト-O,O’)アルミニウム(Tris(N-hydroxy-N-nitrosophenylaminato-O,O’)aluminium)またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0116】
前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせは、分散液の形態で使用することができ、前記分散液形態の重合抑制剤は、インク組成物総量に対して0.001重量%~1重量%、例えば0.01重量%~0.1重量%で含まれ得る。安定剤が前記範囲内に含まれる場合、常温経時の問題を解決すると同時に、感度低下および表面剥離現象を防止することができる。
【0117】
一実施形態によるインク組成物は、前記重合抑制剤以外に、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0118】
例えば、電気泳動装置用インク組成物は、基板との密着性などを改善するためにビニル基、カルボキシル基、メタクリルオキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン系カップリング剤をさらに含むことができる。
【0119】
前記シラン系カップリング剤の例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0120】
前記シラン系カップリング剤は、前記インク組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部で含まれ得る。シラン系カップリング剤が前記範囲内に含まれる場合、密着性、保存性などに優れている。
【0121】
また前記インク組成物は、必要に応じてコーティング性の向上および欠点生成の防止効果のために界面活性剤、例えばフッ素系界面活性剤をさらに含むことができる。
【0122】
前記フッ素系界面活性剤としては、BM Chemie社製のBM-1000(登録商標)、BM-1100(登録商標)など;大日本インキ化学工業株式会社製のメガファックF142D(登録商標)、メガファックF172(登録商標)、メガファックF173(登録商標)、メガファックF183(登録商標)など;住友スリーエム株式会社製のフロラードFC-135(登録商標)、フロラードFC-170C(登録商標)、フロラードFC-430(登録商標)、フロラードFC-431(登録商標)など;旭硝子株式会社製のサーフロンS-112(登録商標)、サーフロンS-113(登録商標)、サーフロンS-131(登録商標)、サーフロンS-141(登録商標)、サーフロンS-145(登録商標)など;東レシリコン株式会社製のSH-28PA(登録商標)、SH-190(登録商標)、SH-193(登録商標)、SZ-6032(登録商標)、SF-8428(登録商標)など;DIC株式会社製のF-482、F-484、F-478、F-554などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0123】
前記フッ素系界面活性剤は、前記インク組成物100重量部に対して0.001重量部~5重量部で使用することができる。前記フッ素系界面活性剤が前記範囲内に含まれる場合、コーティング均一性が確保され、染みが発生せず、ガラス基板に対する湿潤性(wetting)に優れている。
【0124】
また前記インク組成物は、物性を阻害しない範囲内で酸化防止剤、安定剤などのその他添加剤が一定量さらに添加されることもできる。
【0125】
他の一実施形態は、前記インク組成物を利用した膜を提供する。
【0126】
また他の一実施形態は、前記膜を含むディスプレイ装置を提供し、例えば前記ディスプレイ装置は、電気泳動装置であり得る。
【0127】
[実施例]
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明は下記の実施例により限定されるのではない。
【0128】
(インク組成物の製造)
実施例1~実施例6および比較例1~比較例6
ナノロッド(nano rod)パターニングされたGaNウエハ(wafer)(4 inch)にステアリン酸(stearic acid)(1.5mM)40mlを常温で24時間反応させる。反応後、50mlのアセトンに5分間浸漬して過量のステアリン酸(stearic acid)を除去し、追加でアセトン(acetone)40mlを利用してウエハ(wafer)表面を洗浄(rinse)する。洗浄されたウエハ(wafer)を27kWのバス型超音波発生装置(bath type sonicator)に35mlのGBLと共に入れ、5分間超音波発生装置(sonication)を利用してロッドをウエハ(wafer)表面から分離する。分離されたロッドを遠心分離機専用ファルコンチューブ(FALCON tube)に入れて10mlのGBLを追加してバス(bath)表面のロッドを追加洗浄する。4000rpmで10分間遠心分離して上清液は捨てて沈殿物はアセトン(40ml)に再分散して10μmのメッシュフィルター(mesh filter)を利用して異物をろ過する。追加の遠心分離(4000rpm、10分)後、沈殿物は乾燥オーブンで乾燥(100℃で1時間)後に重量を測定して、下記表1および表2による構成を有する組成物に0.05w/w%になるように分散してインク組成物を製造する。
【0129】
【0130】
【0131】
溶媒の種類
(B-1) 2,4-Diethyl-1,5-pentanediol
(B-2) 2-Ethyl-1,3-Hexanediol
(B-3) 3-methyl-1,5-pentanediol
(B-4) 1,5-pentanediol
(B-5) Propanediol
(B-6) Triethyl citrate
(B-7) Triallyl isocyanurate
(B-8) polyethylene glycol
(B-9) propylene glycol
(B-10) 2-Methyl-2,4-pentanediol
(B-11) PGMEA
(B-12) GBL
評価:インク組成物の粘度、誘電定数、分散安定性および誘電泳動特性
実施例1~実施例6および比較例1~比較例6で製造されたインク組成物の粘度(25℃、50℃)、誘電定数、分散安定性および誘電泳動特性を測定して、その結果を下記表3に示した。
【0132】
溶媒の粘度は、レオメーター(rheometer)(haake社)を利用して組成物を2mlローディングして温度25℃および50℃でそれぞれ測定した。
【0133】
誘電定数は、液体の誘電定数測定器(Furuto社、モデル871)でコニカルチューブ(conical tube)に40mlを25℃で測定した。
【0134】
分散安定性は、直径1cm、高さ13cmの試験管に組成物を10mlを入れ、常温で下部沈澱が発生する時間を確認する方法で測定した。
【0135】
誘電泳動特性測定方法は次のとおりである。
【0136】
まず、Thin-film Gold basic interdigitated linear electrodes(ED-cIDE4-Au、Micrux社)でナノロッドインク組成物500μlを塗布後、電場(electric field)(25KHz、±30v)を印加した後1分間待機する。この後、ホットプレート(hot plate)を利用して溶媒を乾燥後、顕微鏡を利用して電極の間の中央に整列した個数(ea)と非整列した個数(ea)を確認して誘電泳動特性を評価した。
【0137】
【0138】
(ND:Not Detected)
前記表3に示すように、実施例1~実施例6の場合、比較例1~比較例6と比較して25℃での粘度が高い反面、50℃での粘度が低いため、適切な範囲の誘電定数を有すると共に、分散安定性および誘電泳動特性の全てに優れており、大面積のコーティングおよびパネルの生産に適することが分かる。
【0139】
本発明は、前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施することができることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことに理解しなければならない。