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特許7628861塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造装置、セメントクリンカの製造方法、塩素バイパス設備の運転方法、および塩素含有廃棄物処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造装置、セメントクリンカの製造方法、塩素バイパス設備の運転方法、および塩素含有廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/43 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
C04B7/43
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021057722
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154608
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】末益 猛
(72)【発明者】
【氏名】藤永 祐太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥介
(72)【発明者】
【氏名】大場 康太
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055900(JP,A)
【文献】特開2010-126410(JP,A)
【文献】特開2013-159534(JP,A)
【文献】特開2014-159342(JP,A)
【文献】特開2013-147401(JP,A)
【文献】特開平11-035355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00 - 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルンの窯尻、ライジングダクト又はこれらの間からキルン排ガスを抽気する抽気口と、
前記抽気口から抽気された抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級部と、
前記抽気口と前記分級部との間を接続し、断熱部材によって断熱され、その延在方向に直交する前記抽気ガスの流路の断面が円形である抽気管と、
記抽気管の内部へ高圧気体を吐出する吐出口を有し、当該吐出口から前記高圧気体を前記抽気管の内壁の周方向に沿って間欠的に噴射するように構成され、前記抽気管の内部の温度低下を抑制しながら前記抽気管内に堆積するダストを除去する高圧気体噴射部と、
を有する、塩素バイパス設備。
【請求項2】
セメントキルンの窯尻、ライジングダクト又はこれらの間からキルン排ガスを抽気する抽気口と、
前記抽気口から抽気された抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級部と、
前記抽気口と前記分級部との間を接続し、断熱部材によって断熱され、内壁に平坦面を有する抽気管と
前記抽気管の内部へ高圧気体を吐出する吐出口を有し、当該吐出口から前記高圧気体を前記抽気管の前記平坦面に沿って間欠的に噴射するように構成され、前記抽気管の内部の温度低下を抑制しながら前記抽気管内に堆積するダストを除去する高圧気体噴射部と
を有する、塩素バイパス設備。
【請求項3】
前記高圧気体噴射における、前記抽気管の内部への前記高圧気体の前記吐出口は、長尺状であるか、または、所定の方向に並んだ複数のピンホールである、請求項1又は2に記載の塩素バイパス設備。
【請求項4】
前記抽気管の内部に堆積するダストの堆積量を測定するダスト測定部
記ダスト測定部により測定された前記ダストの堆積量に基づいて、前記高圧気体噴射部による前記抽気管内への前記高圧気体の噴射の有無を制御する制御部と
をさらに有する、請求項1~のいずれか一項に記載の塩素バイパス設備。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の塩素バイパス設備を有するセメントクリンカ製造装置。
【請求項6】
請求項に記載のセメントクリンカ製造装置を用いてセメントクリンカを製造するセメントクリンカの製造方法。
【請求項7】
セメントキルンの窯尻、ライジングダクトまたはこれらの間の抽気口からキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、
前記抽気口に接続された抽気管の内部の温度低下を抑制しながら、前記抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去工程と、
前記ダストを記抽気ガスとともに、断熱部材によって断熱された前記抽気管を介して分級部に導入し、前記抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級工程と
を含む、塩素バイパス設備の運転方法。
【請求項8】
セメントクリンカ製造装置によって塩素含有廃棄物を処理する方法であって、
前記塩素含有廃棄物を、セメント原料および/またはセメント焼成の熱エネルギーとしてセメントキルンへ投入する投入工程と、
前記セメントキルンの窯尻、ライジングダクトまたはこれらの間の抽気口からキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、
前記抽気口に接続された抽気管の内部の温度低下を抑制しながら、前記抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去工程と、
前記ダストを記抽気ガスとともに、断熱部材によって断熱された前記抽気管を介して分級部に導入し、前記抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級工程と
を含む、塩素含有廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造装置、セメントクリンカの製造方法、塩素バイパス設備の運転方法、および塩素含有廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカの製造装置では、各種廃棄物を原料および熱エネルギーとして用いることの取り組みが進められている。このような事情から、セメントキルンに持ち込まれる塩素量は増加する傾向にある。多くのセメントクリンカ製造装置にはセメントキルン内の塩素を低減するために塩素バイパス設備が設置されており、この塩素バイパス設備で抽気された抽気ガスから効率的に塩素を除去する技術が検討されている。特許文献1では、キルン排ガス流路から抽気した抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で抽気ガスから粗粉を分級装置において分離し、その後、600℃以下に冷却して塩素バイパスダストを分離する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-55900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、抽気した抽気ガスの温度を770℃以上に維持して分級装置に導入するため、分級装置までの抽気管を断熱する必要がある。このような抽気管内では、抽気管内へ冷却風を導入することによって原料ダストの堆積を抑制することができないため、抽気管が閉塞しやすいという問題があった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、抽気管の閉塞の発生を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る塩素バイパス設備は、セメントキルンの窯尻、ライジングダクト又はこれらの間からキルン排ガスを抽気する抽気口と、前記抽気口から抽気された抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級部と、前記抽気口と前記分級部との間を接続し、断熱部材によって断熱された抽気管と、前記抽気管の内部の温度低下を抑制しながら、前記抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去部と、を有する。
【0007】
上記の塩素バイパス設備では、断熱部材によって断熱された抽気管の内部へ堆積ダスト除去部によって気体が吐出されることで、抽気管内のダストが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。
【0008】
前記堆積ダスト除去部は、前記抽気管の内部に間欠的に高圧気体を噴射する態様であってもよい。抽気管の内部に間欠的に高圧気体を噴射することで、抽気管内の温度低下を防ぎながら、堆積ダストの除去ができる。
【0009】
前記堆積ダスト除去部は、前記抽気管の内壁に沿うように、前記高圧気体を噴射する態様であってもよい。上記のように抽気管の内壁に沿うように高圧気体を噴射することで、内壁に対してダストが付着することが効果的に防がれる。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生がさらに抑制される。
【0010】
前記抽気管は、その延在方向に直交する前記抽気ガスの流路の断面が円形であって、前記堆積ダスト除去部は、前記抽気管の前記内壁の周方向に沿って、前記高圧気体を噴射する態様であってもよい。抽気ガスの流路の断面が円形である場合に、周方向に沿って高圧気体を噴射する構成とすることで、流路の内壁に滞留するダストを効果的に除去することができる。
【0011】
前記抽気管は平坦面を有し、前記堆積ダスト除去部は、前記抽気管の前記平坦面に沿って前記高圧気体を噴射する態様であってもよい。抽気管の平坦面に沿って高圧気体を噴射する構成とすることで、抽気管の平坦面周辺に滞留するダストを効果的に除去することができる。
【0012】
前記堆積ダスト除去部は、前記抽気管の内部への前記高圧気体の吐出口が、長尺状であるか、または、所定の方向に並んだ複数のピンホールである、態様であってもよい。上記の構成とすることで、抽気管の内部のより広範囲に向けて高圧気体を噴射することが可能となり、ダストの除去をより効率よく行うことができる。
【0013】
前記抽気管の内部に堆積するダストの堆積量を測定するダスト測定部をさらに有し、前記堆積ダスト除去部は、前記ダスト測定部により測定された前記ダストの堆積量に基づいて、前記堆積ダスト除去部の運転状況を調整する態様であってもよい。この場合、ダストの堆積量に応じて、堆積ダスト除去部の運転状況を調整することが可能となり、堆積したダストの除去を効率良く行うことができる。
【0014】
本開示の一側面に係るセメントクリンカ製造装置は、上述のいずれかの塩素バイパス設備を有する。上記のセメントクリンカ製造装置は、上述の塩素バイパス設備を含むため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。
【0015】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、上記のセメントクリンカ製造装置を用いてセメントクリンカを製造する。上記のセメントクリンカの製造方法は、上述の塩素バイパス設備を用いてセメントクリンカを製造するため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。
【0016】
本開示の一態様に係る塩素バイパス設備の運転方法は、セメント原料をセメントキルンで焼成する際に発生するキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、前記抽気工程で得られた抽気ガスを、断熱部材によって断熱された抽気管を介して導入し、前記抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級工程と、前記抽気管の内部の温度低下を抑制しながら、前記抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去するダスト除去工程と、を含む。
【0017】
上記の塩素バイパス設備の運転方法によれば、断熱部材によって断熱された抽気管の内部へ堆積ダスト除去部によって気体が吐出されることで、抽気管内のダストが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。
【0018】
本開示の一態様に係る塩素含有廃棄物処理方法は、セメントクリンカ製造装置によって塩素含有廃棄物を処理する方法であって、前記塩素含有廃棄物を、セメント原料および/またはセメント焼成の熱エネルギーとしてセメントキルンへ投入する投入工程と、前記セメントキルンの窯尻、ライジングダクトまたはこれらの間からキルン排ガスを得る抽気工程と、前記抽気工程で得られた抽気ガスを、断熱部材によって断熱された抽気管を介して導入し、前記抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級工程と、前記抽気管の内部の温度低下を抑制しながら、前記抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去するダスト除去工程と、を含む。
【0019】
上記の塩素含有廃棄物処理方法によれば、断熱部材によって断熱された抽気管の内部へ堆積ダスト除去部によって気体が吐出されることで、抽気管内のダストが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。さらに、上記のセメントクリンカ製造装置で塩素含有廃棄物を処理することで、塩素バイパス設備を安定的に運転できるため、塩素を効率よく大量に処理することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、抽気管の閉塞の発生を抑制することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る塩素バイパス設備とこれを備えるセメントクリンカ製造装置を示す図である。
図2図2(a)、図2(b)は、抽気管の周辺の構成を説明する模式図である。
図3図3(a)、図3(b)は、抽気管の周辺の別の構成を説明する模式図である。
図4図4は、冷却ガス導入部が接続される導出ガスの流路の径方向断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
[セメントクリンカ製造装置]
図1は、一実施形態に係る塩素バイパス設備とこれを備えるセメントクリンカ製造装置を示す図である。塩素バイパス設備90は、セメントクリンカ製造装置100の予熱仮焼部40のライジングダクト42に接続される。塩素バイパス設備90は、セメントクリンカ製造装置100内の塩素分等の揮発分をクリンカダストとして回収し、セメントクリンカ製造装置100内の塩素分を低減する。なお、セメントクリンカ製造装置100は、制御部10を含んで構成されていてもよい。
【0024】
塩素バイパス設備90は、ライジングダクト42からガスを抽気する抽気口21Aと、抽気口21Aから抽気された、原料ダストを含む抽気ガスが流通する抽気管21とを有する。また、塩素バイパス設備90は、抽気管21から接続され、導入した抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離して、当該粗粉よりも小さい原料ダストの微粉を含む導出を得る分級部22と、導出ガスが流通する流路24と、流路24に旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入部80と、を備える。
【0025】
抽気管21は、抽気口21Aから抽気された抽気ガスを分級部22に供給する機能を有する。
【0026】
抽気口21Aから抽気された抽気ガスは、原料ダストおよびガス状の塩素分を含む。抽気ガスは抽気管21を流通し分級部22に導入される。抽気管21は、抽気プローブと称されるものであってもよい。分級部22に導入される際の抽気ガスの温度は、KClおよびNaCl等の揮発した塩素分が単独で析出し、または原料ダストの表面に析出し、クリンカダストとして分級部22に付着することを抑制する観点から、好ましくは770℃を超え、より好ましくは820℃以上であり、さらに好ましくは860℃以上である。
【0027】
抽気管21には、その抽気管21の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去部が設けられる。図1では、堆積ダスト除去部の一例として、高圧気体を間欠的に抽気管21内に導入する高圧気体噴射部30が設けられる。さらに、抽気管21には、その内部のダストの堆積量を測定するためのダスト測定部35が設けられる。
【0028】
図2を参照しながら、抽気管21および高圧気体噴射部30について説明する。図2は、抽気管21およびその周辺の構成を説明する図である。図2(a)は、高圧気体噴射部30が抽気管21に対して取り付けられた状態を示す断面図であり、図2(b)は、抽気管21の内部を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、抽気管21の一部として、高圧気体噴射部30が存在する近傍を切り出した図であり、抽気管21の内部(管壁211の内側)の空間のみを模式的に示している。また、抽気管21内での抽気ガスの流れを矢印F1で示し、高圧気体の流れを矢印F2で示している。
【0029】
図2(a)に示すように、抽気管21は、流路の断面(抽気管21の延在方向に対して直交する断面)の形状が例えば円形状である、円筒状の配管とされる。また、抽気管21は、高い断熱性能を有する部材によって管壁211が構成され得る。抽気管21を構成する断熱性能を有する部材としては、例えば、耐火レンガ等が用いられる。また、抽気管21の周囲を囲うように、さらに別の断熱部材やヒーター等の保温装置が配置されていてもよい。
【0030】
また、抽気管21には、管の内外を連通する開口212が設けられる。開口212は、図2(b)に示すように、管壁211(およびその周囲に断熱部材が設けられている場合には断熱部材)を貫通するように設けられる。この開口212は、抽気管21の内部へ高圧気体を吐出する際の吐出口として機能し得る。開口212は、例えば、図2(b)に示すように長尺状とすることができる。開口212が長尺状である場合、その長手方向の延在方向は特に限定されないが、図2(b)に示すように、抽気管21の延在方向に沿って延びるように開口212が形成されていてもよい。
【0031】
高圧気体噴射部30は、開口212から抽気管21内に高圧気体を噴射する。高圧気体噴射部30としては、例えば、エアーブラスタとコンプレッサとを組み合わせたエアー噴射装置等を用いることができる。図2(a)では、高圧気体噴射部30として、エアーブラスタ31を例示している。エアーブラスタ31の先端を開口212内に挿入した状態で、エアーブラスタ31から高圧気体を噴射すると、開口212から抽気管21内へ高圧気体が吐出される。
【0032】
開口212は、上述のように管壁211を貫通するように形成されるので、高圧気体噴射部30を構成するエアーブラスタ31の吐出口31aは、例えば、開口212の内部へ挿入されてもよい。ただし、抽気ガスF1の流れを阻害しない観点から、管壁211から吐出口31aが突出しないほうが好ましい。この状態で、エアーブラスタ31から高圧気体を噴射すると、開口212の延在方向に沿って高圧気体が移動し、そのまま抽気管21内に高圧気体が噴射される。
【0033】
一例として、高圧気体の噴射方向は、図2(a)に示すように、抽気管21の管壁211の内壁の周方向に沿って、且つ、抽気ガスF1の流路の下方へ向かう方向としてもよい。
【0034】
図2(b)に示すように、高圧気体F2は、抽気ガスF1の影響により断面が円形の抽気管21の内部を内壁に沿って螺旋状に移動し得る。抽気ガスF1の進行方向に沿った成分を有するように、高圧気体の噴射方向を調整した場合、より下流側まで螺旋状を維持できるため、下流のダストDを飛散させることができる。また、図2に示すように、開口212を長尺状(扁平形状)にした場合、開口212からより広範囲に高圧気体を噴射することができる。
【0035】
高圧気体を流路の下方へ向けて噴射することで、抽気管21の底部に堆積したダストDを飛散させることができる。高温の抽気ガスを導入する抽気管21内は、断熱部材による断熱の結果、高温(例えば、770℃以上)に維持されている。そのため、抽気管21内に存在するダストDは、付着性が低い。そのため、高圧気体を噴射すると、高圧気体を噴射された領域のダストDは飛散し得る。飛散したダストDは、抽気ガスF1の流れに沿って下流側(分級部22側)へ移動し得る。この結果、抽気管21内でのダストDの滞留・堆積を減らすことができる。
【0036】
ダストDは、抽気管21の底部に堆積し得る。したがって、高圧気体を抽気管21の底部に沿った方向に噴射すると、高圧気体は直進せずに底部に沿った方向で流通するため、高圧気体による気流の影響を受けるダストDの量が増大すると考えられる。高圧気体による気流の通る領域に堆積するダストDが存在するように、高圧気体の噴射方向を調整することで、高圧気体によるダストDの飛散を促進することができる。なお、高圧気体噴射部30による高圧気体の噴射方向を制御する方法としては、開口212の延在方向を調整する方法のほか、例えば、エアーブラスタ31の吐出口31aの方向を調整する方法を用いることもできる。高圧気体噴射部30の構成等に応じても、噴射方向を調整する手法は適宜変更され得る。
【0037】
高圧気体噴射部30によって抽気管21内に噴射される高圧気体の圧力は、ダストDが飛散可能な程度に調整されていればよい。また、高圧気体は、間欠的に供給されていてもよい。上述のように、ダストDを飛散可能な程度に高圧気体が噴射されればよい。この観点で、例えば、高圧気体の噴射時間を0.1秒~1秒程度とし、この高圧気体の噴射を1回行うか、または、数秒ごとに数回繰り返すことで、ダストDを飛散させることとしてもよい。高圧気体の噴射時間を短時間とし、さらに噴射回数も減らすことで、高圧気体の噴射による抽気管21内の温度低下を抑制することができる。
【0038】
高圧気体噴射部30は、抽気管21内の複数の場所に設置してもよい。高圧気体の噴射は、ダストDの飛散を目的として実施され得る。したがって、ダストDが堆積しやすいと予想される場所に、開口212を形成し、高圧気体噴射部30による高圧気体の噴射を行うことが可能な構成とする。これにより、ダストDの堆積によって管内が閉塞する可能性を低減することができる。ダストDが堆積しやすい場所とは、例えば、抽気管21のうち、抽気口21Aの近傍、流路が曲がる部分(曲がり部)、分級部22の近傍等、抽気ガスF1の流れが変化し得る場所が挙げられる。このような場所に、高圧気体噴射部30を設けて、高圧気体を噴射する構成とすることで、ダストDによる流路の閉塞リスクを低減することができる。
【0039】
また、高圧気体の噴射がダストDの飛散のために実施され得るということは、換言すると、ダストDが滞留していない状態では、高圧気体の噴射を省略してもよいということを意味する。したがって、抽気管21内のダストDの滞留状況に応じて高圧気体の噴射を行う構成としてもよい。例えば、抽気管21内を抽気ガスが流れている期間は、所定の間隔(例えば、1分~数時間毎)で、定期的に高圧気体の噴射を行うこととしてもよい。
【0040】
また、ダスト測定部35(図1参照)を用いて、ダストの堆積量を検出し、その結果に応じて、高圧気体の噴射を行うこととしてもよい。ダストの堆積量を検出する方法としては、例えば、抽気管21の内部または外部の温度を測定する方法が挙げられる。ダストDが抽気管21内に堆積していると、ダストDの存在によってその領域の温度が低下する。したがって、ダスト測定部35として、抽気管21の管壁211の内表面または外面等に温度センサを取り付けて、温度測定を行うことによって、ダストDの堆積量を検出する構成としてもよい。
【0041】
なお、ダスト測定部35によるダストDの堆積量の検出結果に基づいて、高圧気体の噴射を自動的に行う構成としてもよい。その場合、制御部10によって、ダスト測定部35による測定結果を収集し、高圧気体の噴射要否を判断し、高圧気体の噴射が必要な場合には、高圧気体噴射部30に対して高圧気体の噴射を行うための制御信号を送信する構成としてもよい。また、ダスト測定部35は、ダストDの堆積量を正確に把握する必要はない。すなわち、ダスト測定部35によるダストの堆積量の測定精度とは、例えば、ダストの堆積量が高圧気体の噴射が必要な程度であるか否かを判定可能な程度の精度であればよい。また、ダスト測定部35の検出結果を用いて、オペレーターが手動で高圧気体の噴射要否を判断してもよい。なお、ダスト測定部35は温度センサに限られない。例えば、超音波(エコー)、X線等を用いた抽気管21内のダストDの堆積状況を測定可能な装置、または、圧力センサ等のダストDの堆積状況によって変化する数値を測定可能な装置等をダスト測定部35として用いてもよい。
【0042】
なお、抽気管21および高圧気体噴射部30の構成は上記の例に限られない。図3を参照しながら,変形例に係る抽気管21Xおよび抽気管21Xの内部への高圧気体噴射部30による高圧気体の噴射について説明する。図3(a)は、抽気管21Xの底面を模式的に示す断面図であり、図3(b)は、高圧気体の噴射方向の一例を示す図である。図3(b)は、抽気管21Xの一部を切り出した図であり、抽気管21の内部(管壁211の内側)の空間のみを模式的に示している。また、抽気管21内での抽気ガスの流れを矢印F1で示し、高圧気体の流れを矢印F2で示している。
【0043】
図3(b)に示すように、変形例に係る抽気管21Xは、流路の断面(抽気管21Xの延在方向に対して直交する断面)の形状が例えば矩形である、四角筒状の配管とされる。また、抽気管21Xの底面213は平坦面とされている。
【0044】
抽気管21Xでは、ダストDは平坦面である底面213に堆積し得る。この場合、ダストDを除去するためには、高圧気体を噴射するための開口214を底面213に設けてもよい。この場合、底面213に設けられた開口214からダストDを巻き上げるように高圧気体F2を噴射することができる。
【0045】
なお、開口214は、図2で示した長尺状であってもよいが、図3(a)、図3(b)で示すように、複数のピンホール214a(小さな開口)が所定の方向に複数配列した構成であってもよい。図3(a)、図3(b)で示す例では、抽気ガスF1の流れる方向(流路の延在方向)に対して直交する方向に4つのピンホール214aが並んでいる。また、ピンホール214aそれぞれから高圧気体F2が内部に噴射されているが、その噴射方向は、底面213に対して垂直な方向ではなく、抽気ガスF1の流れる方向に沿って傾斜した方向になっていてもよい。すなわち、抽気管21Xの底面213に沿って、高圧気体を噴射するように構成されていてもよい。この場合、高圧気体がより広範囲のダストDを飛散させ、除去させることができる。抽気管21X内での抽気ガスF1の流れる方向と高圧気体を噴射する方向とのなす角度を例えば45°以下とした場合、高圧気体がより広範囲のダストDを飛散させることができる。ダストDの堆積が多い箇所では、抽気管21Xの抽気ガスF1の流れる方向と高圧気体を噴射する方向とのなす角度を45°~90°とすることで、高圧噴射した箇所のダストDを精度よく除去することができる。また、開口214内にダストDが大量に流入し、高圧噴射不可になることを抑制するため、抽気管21Xの抽気ガスF1の流れる方向と高圧気体を噴射する方向とのなす角度は90°以下であることが好ましい。
【0046】
なお、図3に示すように複数のピンホール214aが一列に並んでいる場合、それぞれからの高圧気体の噴射方向は、図3に示すように互いに平行であってもよい。この場合、各ピンホール214aから噴射される高圧気体が互いに干渉することを抑制することができ、より広範囲のダストDを飛散させることができる。
【0047】
図3では、底面213が平坦面である場合について説明したが、平坦面は、抽気管の底面以外の内面を構成する場合がある。例えば、抽気管の側面や上面等が平坦面によって形成され、当該面に対してダストDが堆積し得る。このような場合、平坦面に沿って、高圧気体を噴射するように高圧気体噴射部が設けられていてもよい。さらに、抽気管の形状の内部の形状によっては、平坦ではない側面等にもダストDが堆積する可能性がある。その場合、ダストDの堆積が想定される位置に応じて、高圧気体噴射部の構成を適宜追加・変更してもよい。
【0048】
図1に戻り、分級部22は、抽気ガスを導入して分級を行うことで、原料ダストの粗粉を分離する。分級部22は例えばサイクロンであってよい。分級部22において、上記の温度範囲の抽気ガスの分級を行うことで、塩素分が気相に含まれている状態で、原料ダストの粗粉を抽気ガスから分離することができる。そのため、揮発した塩素分が単独で析出すること、または原料ダストの表面に析出することによりコーチングが発生し、分級部22が閉塞することが抑制される。また、塩素が析出した原料ダストがセメントキルン側に循環流路で戻ることを抑制することができる。
【0049】
分級部22で抽気ガスから分離される原料ダストの粗粉に塩素分が析出することを抑制する観点から、分級部22において原料ダストの粗粉を分離する際の抽気ガスの温度は、770℃以上にされる。抽気ガスの温度は、好ましくは820℃以上、より好ましくは860℃以上とすることができる。分級部22から導出される導出ガスの温度についても、770℃以上でされる。また、導出ガスの温度は、好ましくは820℃以上、より好ましくは860℃以上とすることができる。
【0050】
なお、分級部22において、燃焼炉からの排ガスを抽気ガスと混合してもよい。この場合、分級部22において、抽気ガスと排ガスとを含む混合ガスが得られる。なお、排ガスを生成する燃焼炉としては、例えば、廃プラスチック脱塩設備における燃焼炉が挙げられる。燃焼炉は、廃プラスチックを含む原料を熱処理して生じる熱分解ガスに含まれるタールを燃焼する炉である。燃焼炉の排ガスを分級部22に導入して抽気ガスと混合する場合、抽気ガス単独の場合と比べて、分級部22において混合されたガスの温度を安定的に高くすることができる。また、燃焼炉からの排ガスと抽気ガスとを合流した場合、分級部22において混合したガスの流速を大きくすることができる。そのため、分級部22における分級性能を向上し、原料ダストの粗粉を、より高い精度で混合ガスから分離することができる。
【0051】
なお、塩素バイパス設備90で抽気ガスに合流する排ガスは廃プラスチック脱塩設備の燃焼炉からの排ガスに限定されず、廃プラスチック脱塩設備の燃焼炉とは異なる燃焼炉からの排ガスであってもよい。例えば、排ガスとして、バイオマスペレット炭化設備に備えられる燃焼炉、アンモニアガス化炉、硫黄燃焼炉、或いは、これらとは異なる燃焼炉または溶融炉からの高温排ガスを用いてもよい。これらの一種の排ガスを単独で用いてもよいし、複数の排ガスを組み合わせて用いてもよい。
【0052】
原料ダストの粗粉の粒径は、例えば、18μm以上であってよく、好ましくは16μm以上であってよく、より好ましくは14μm以上であってもよい。原料ダストの粗粉が14μm以上となるように分級を行うことによって、揮発分を十分に低減することができる。
【0053】
分級部22で抽気ガスから分離された原料ダストの粗粉は、セメントクリンカの原料となるものであるため、原料ダストの粗粉は循環流路27を流通してセメントキルン50の窯尻52に導入される。このように、抽気口21Aから抽気された原料ダストの粗粉を窯尻52に戻すことによって、原料ダストの粗粉をセメントクリンカの製造に用いることができる。なお、原料ダストの粗粉は窯尻52ではなく、ライジングダクト42、サイクロンC4と窯尻52を接続するシュート、仮焼炉44、またはキルン本体56に戻してもよい。また、循環流路27を複数設けて原料ダストの粗粉を複数箇所に戻してもよい。
【0054】
分級部22から導出される導出ガスには、分級部22で回収されなかった原料ダストの粗粉および微粉が含まれる。また、分級部22に排ガスを導入する場合、この分級部22で回収されなかった原料ダストに含まれるCa分と、排ガス中のHCl等の塩素分が反応して固体状のCaClが発生する場合がある。このような塩素分も、塩素バイパス設備90においてクリンカダストとして回収することができる。
【0055】
分級部22において抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離することによって得られる、原料ダストの微粉とガス状の塩素分を含む導出ガスは、分級部22に接続された流路24を流通し冷却ガス導入部80で冷却される。冷却ガス導入部80では、円管26で構成される流路24に冷却ガスの流路81が接続され、原料ダストの微粉および塩素分を含む導出ガスが冷却ガスと混合され冷却される。冷却後、導出ガスを含むガスは、流路24を流通し冷却部70に導入される。
【0056】
冷却ガスは、常温の空気でもよいし、また、工場等で発生する200℃以下、好ましくは100℃以下の排気ガスを含むものであってもよい。排気ガスとしては、例えば、セメント製造工場に持ち込まれた下水汚泥等の含水汚泥の受け入れ、貯蔵および発酵時に発生する臭気ガス、後述の吸引部74(図1参照)および他工程の吸引部から排出される排出ガス等が挙げられる。これらの一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。一例として、図1では、上記の冷却ガスの流路81に常温の空気(外気)が導入される構成を示している。
【0057】
冷却ガス導入部80において、導出ガスは冷却ガスと混合され冷却される。冷却後の導出ガスを含むガス(導出ガスと冷却ガスの混合ガス)の温度は、設備の耐熱性の観点から600℃以下であってよく、500℃以下であってもよい。
【0058】
冷却ガス導入部80において、冷却ガスは、原料ダストの微粉および塩素分を含む導出ガスが流通する流路24の内壁面の周方向に沿うように導入される。これによって、流路24に旋回流が生じ、流路24の内壁面にクリンカダストが付着してコーチングが発生することを抑制することができる。このような旋回流は、流路24の外周部にエアーカーテンを形成し、高温の導出ガスから流路24を構成する円管26の内壁面を保護することができる。
【0059】
図4は、冷却ガス導入部が接続される導出ガスの流路24の径方向断面を示す断面図である。原料ダストの粗粉が分離され、塩素分および原料ダストの微粉を含む導出ガスが流通する流路24は円管26によって構成される。図4に示すような流路24(円管26)の径方向断面で見たときに、冷却ガス導入部80の流路81を形成する流路壁28は、円管26の接線方向と平行方向に伸びるように、円管26に接続されている。円管26に接続された冷却ガス導入部80は、流路81内を流通する冷却ガスGを流路24内に導入する。導入された冷却ガスGは、流路24において導出ガスと合流しながら旋回流SFを形成する。旋回流SFの旋回軸は、円管26で構成される流路24の中心軸Pと一致する。
【0060】
導出ガスは中心軸Pの軸方向に沿って流路24の中央部を流通し、冷却ガスGは流路24を構成する円管26の内壁面26Wに沿って旋回流SFとして流通する。このように、流路24では導出ガスと冷却ガスGの流通路が異なるようにガスを流通させる。導出ガスの流通路と冷却ガスGの流通路の境界では微量のクリンカダストができるが、旋回流SFがエアーカーテンとなって、クリンカダストが内壁面26Wに付着しコーチングとなることを抑制することができる。
【0061】
さらに、塩素バイパス設備90は、冷却ガス導入部80の下流に導出ガスを含むガスを冷却する冷却部70と、導出ガスを含むガスに含まれるダスト(クリンカダスト)を導出ガスを含むガスから回収する回収部72と、導出ガスを吸引する吸引部74とを備える。冷却部70は水冷式または空冷式の熱交換器であってよい。吸引部74としては、シロッコファンおよびターボファンなどの通常の吸引ファンが挙げられる。
【0062】
冷却部70は、冷却ガスGと導出ガスが合流して得られる導出ガスを含むガスを、例えば260℃未満、好ましくは200℃未満に冷却する。この導出ガスを含むガスはクリンカダストを含んでいるため、回収部72に導入される。回収部72は、バグフィルタであってよく、湿式スクラバ等の湿式集塵器であってもよい。回収部72で回収されたクリンカダストは、水洗処理がなされた後、セメント組成物に配合してもよいし、セメント原料として用いてもよい。
【0063】
図1のセメントクリンカ製造装置100は、塩素バイパス設備90と、セメント原料を予熱および仮焼する予熱仮焼部40と、予熱および仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを得るセメントキルン50と、セメントキルン50で得られたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ60とを備える。予熱仮焼部40は、4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と仮焼炉44とを有する。
【0064】
セメントキルン50の窯尻52と予熱仮焼部40の仮焼炉44とは、ライジングダクト42で接続されている。ライジングダクト42と窯尻52の接続部近傍には、セメントキルン50で発生するキルン排ガスを抽気して、キルン排ガスに含まれるダストを回収する塩素バイパス設備90の抽気口21Aが設けられている。抽気口21Aには、抽気管21が接続されている。セメントクリンカ製造装置100は、塩素バイパス設備90を備えることによって、セメントクリンカ製造装置100内の塩素分を低減することができる。
【0065】
サイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入されるセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト42、仮焼炉44、およびサイクロンC4を流通してセメントキルン50の窯尻52に導入される。セメントキルン50では、予熱および仮焼されたセメント原料が、窯尻52とは反対側に設けられたバーナ54の燃焼によって加熱されセメントクリンカとなる。得られたセメントクリンカは、クリンカクーラ60で冷却される。クリンカクーラ60によって冷却された後、セメントクリンカが得られる。
【0066】
制御部10は、上述のように、ダスト測定部35による測定結果に基づいて、抽気管21のダストの堆積状況(堆積量)を把握し、これに基づいて、高圧気体噴射部30による抽気管21内への高圧気体の噴射を制御する機能を有していてもよい。制御部10による高圧気体の噴射の制御としては、例えば、高圧気体噴射部30の運転及び停止、高圧気体の噴射時間、高圧気体の噴射量等を調整することが挙げられる。
【0067】
また、制御部10は、高圧気体噴射部30に限らず上記のセメントクリンカ製造装置100の各部を制御してもよい。制御部10は、セメントクリンカ製造装置100の各部に設けられた計測部において計測された情報に基づいて、セメントクリンカ製造装置100を制御してもよい。計測部が計測する運転情報としては、温度、圧力、ガスの成分、ガスの流速、ダスト濃度および画像等が挙げられる。塩素バイパスを例として挙げると、具体的には、抽気管21、分級部22および流路24の内部または表面の温度、ライジングダクト42および窯尻52におけるキルン排ガスの温度、抽気口21Aから抽気管21内に流入するキルン排ガスの温度、キルン排ガスおよび抽気ガスの圧力、キルン排ガスおよび抽気ガスのガス成分、キルン排ガスおよび抽気ガスに含まれるダスト濃度、並びに、抽気管21および分級部22内部の画像等が挙げられる。計測部としては、例えば、温度センサ、圧力センサ、ガス成分センサ、流速センサ、およびカメラ等が挙げられる。
【0068】
制御部10は、上記の計測部で計測された運転情報に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力してもよい。制御部は、通常のコンピュータシステムであってよく、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力インターフェイスなどを備えてよい。
【0069】
なお、制御部10は、燃焼炉からの排ガスの流量についても自動で制御する機能を有してもよい。例えば、分級部22から導出される導出ガスの温度を計測部で計測し、その計測結果に応じて抽気ガスに合流する排ガスの流量が増加するように制御してもよい。これによって、分級部22の温度が下がり過ぎることを回避できる。
【0070】
セメントクリンカ製造装置100は、塩素バイパス設備90を備えるため、安定的に運転することが可能であり、安定的にセメントクリンカを製造することができる。また、原料ダストを有効利用して、セメントクリンカの収量を増やすことができる。また、クリンカダストが低減され、クリンカダストの処理コストを低減することができる。
【0071】
[セメントクリンカの製造方法]
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカ製造装置100を用いて行うことができる。これらの方法は、予熱仮焼部40でセメント原料を予熱および仮焼する予熱仮焼工程と、予熱および仮焼されたセメント原料を、窯尻52からキルン本体56に導入し、セメントクリンカを製造する焼成工程(投入工程)と、焼成工程で発生するキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、断熱部材によって断熱された抽気管21を介して抽気ガスを導入し、抽気ガスから分級部22で原料ダストの粗粉を分離する分級工程と、抽気管21の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去工程と、分級部22から導出される、原料ダストの粗粉が低減された導出ガスが流通する流路に旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入工程と、導出ガスを含むガスを冷却する冷却工程と、冷却工程で冷却された導出ガスを含むガスに含まれるクリンカダストを回収するダスト回収工程とを有していてもよい。セメントおよび/またはセメント焼成の熱エネルギーには塩素含有廃棄物が含まれ得る。したがって、焼成工程は、セメント原料および/またはセメント焼成の熱エネルギーをセメントキルンに投入する投入工程ということもできる。また、分級工程で分離された原料ダストの粗粉をセメントキルン50側に戻す循環工程と、を有してもよい。また、焼成工程で得られたセメントクリンカを、クリンカクーラ60で冷却するクリンカ冷却工程を有してもよい。
【0072】
予熱仮焼工程では、セメント原料がサイクロンC1とサイクロンC2の間の流路から導入される。セメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2およびサイクロンC3を流通して予熱される。その後、仮焼炉44に導入され、仮焼される。仮焼炉44には、石炭等の熱エネルギー源を燃焼するバーナや廃プラスチックを投入するバーナが設けられていてよい。仮焼炉44で仮焼されたセメント原料(仮焼原料)は、サイクロンC4に導入され加熱される。
【0073】
焼成工程(投入工程)では、サイクロンC4で加熱された仮焼原料が窯尻52に導入される。その後、キルン本体56において焼成されセメントクリンカとなる。
【0074】
抽気工程では、焼成工程で発生するキルン排ガスを抽気口21Aから抽気する。また、分級工程では、断熱部材によって断熱された抽気管21を介して前記抽気ガスを導入し分級を行う。塩素分が抽気ガスに気相として含まれている状態で、原料ダストの粗粉を分離することができる。したがって、揮発した塩素分が単独で析出して、または原料ダストの表面に析出することによりコーチングが発生し、分級部22が閉塞することを抑制できる。また、塩素が析出した原料ダストをセメントキルン側に循環流路で戻すことを抑制することができる。
【0075】
堆積ダスト除去工程では、抽気管21の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する。抽気管21の内部に堆積し得るダストDを気体によって飛散させることで、管内の閉塞が発生する可能性を低減することができる。
【0076】
循環工程では、分級部22で分級された粗粉をセメントキルン50の窯尻52に戻すことによって、セメントクリンカの生産量を効率よく増やすことができる。また、冷却ガス導入工程では、分級部22から導出される導出ガスに冷却ガスを合流させて導出ガスを冷却する。
【0077】
また、円管26で構成される導出ガスを含むガスの流路24の内壁面の周方向に沿って冷却ガスを導入することによって、旋回流を生じさせてもよい。これによって、流路24にクリンカダストが付着してコーチングが発生することを抑制できる。冷却ガス導入工程で冷却ガスGを混合することによって冷却された導出ガスを含むガスの温度は、設備の耐熱性の観点から600℃以下であってよく、500℃以下であってもよい。導出ガスがこのように冷却されることによって、揮発した塩素分が単独で析出して、または原料ダストの表面に析出してクリンカダストができる。
【0078】
冷却工程では、例えば熱交換器を備える冷却部70において導出ガスを含むガスを例えば260℃未満、好ましくは200℃未満に冷却する。ダスト回収工程では、回収部72において冷却された導出ガスを含むガスに含まれるダストを回収する。このようにして回収されるダストはクリンカダストと称される。この製造方法によって、塩素バイパス設備90およびセメントクリンカ製造装置100を安定的に運転することができる。また、原料ダストを有効利用して、セメントクリンカを効率よく製造することができる。また、分級工程で原料ダストの粗粉を分離したことでクリンカダストの量が低減され、クリンカダストの処理コストを低減することができる。
【0079】
[バイパス設備の運転方法]
一実施形態に係る塩素バイパス設備の運転方法は、上述の抽気工程、分級工程、堆積ダスト除去工程、混合工程、冷却工程およびダスト回収工程を有してよい。また、上述の循環工程を有していてもよいし、上述のセメントクリンカの製造方法のいずれかの工程をさらに有していてもよい。この運転方法はセメントクリンカ製造装置100に備えらえる塩素バイパス設備90を用いて行うことができる。したがって、各工程の内容は、上述のセメントクリンカの製造方法における内容と同様であってよい。
【0080】
[廃棄物処理方法]
上記のセメントクリンカの製造方法は、塩素含有廃棄物の処理方法ということもできる。すなわち、一実施形態に係る塩素含有廃棄物の処理方法は、上述のセメントクリンカ製造装置100において塩素含有廃棄物を処理する方法であり、上述の投入工程、抽気工程、分級工程、堆積ダスト除去工程を含んでいてもよい。さらに、冷却工程、ダスト回収工程を有してよい。また、上述の循環工程を有していてもよいし、上述のセメントクリンカの製造方法のいずれかの工程をさらに有していてもよい。塩素含有廃棄物としては、例えば、セメント原料で用いる焼却灰や、セメント焼成の熱エネルギーとして用いられる廃プラスチックなどが挙げられる。
【0081】
[作用]
以上の例によれば、塩素バイパス設備90においては、断熱部材によって断熱された抽気管21の内部へ、抽気管21の内部の温度低下を抑制しながら、堆積ダスト除去部として機能する高圧気体噴射部30によって気体が吐出される。これにより、抽気管21内のダストDが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管21の閉塞の発生が抑制される。
【0082】
従来から、770℃以上の導出ガスが排出される条件で抽気ガスの分級を行うことが検討されている。このとき、抽気口21Aにおいて抽気された抽気ガスを分級部22まで高温のまま移動させることが求められるため、抽気管21は断熱構造とする必要がある。しかしながら、断熱構造を採用した場合、従来の塩素バイパス設備のように、抽気管内に多量の冷却風を導入してダストを吹き飛ばす構造は、抽気ガスの温度を低下させてしまうため、採用できない。そのため、抽気管21内部がダストDによって閉塞する可能性が生じ得る。これに対して、上記の構成では、抽気管21の内部に、抽気管21の内部の温度低下を抑制しながら、抽気管21の内部に気体を吐出することによって、堆積するダストが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管21の閉塞の発生が抑制される。また、抽気管21内部の温度低下も抑制されつつ気体が吐出される。このため、内部を流れる抽気ガスの温度低下も抑制される。
【0083】
堆積ダスト除去部は、抽気管21の内部に間欠的に高圧気体を噴射する態様であってもよい。抽気管21の内部に間欠的に高圧気体を噴射することで、気体の供給量が少なくともダストDの除去が可能となるため、抽気管21内の温度低下を防ぎながら、堆積ダストの除去ができる。
【0084】
堆積ダスト除去部は、抽気管21の内壁に沿うように、高圧気体を噴射してもよい。このような構成とすることで、内壁に対してダストが付着することが効果的に防がれる。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生がさらに抑制される。
【0085】
抽気管21は、その延在方向に直交する抽気ガスの流路の断面が円形であってもよい。この場合、堆積ダスト除去部は、抽気管21の内壁の周方向に沿って、高圧気体を噴射してもよい。流路の断面が円形である場合に、周方向に沿って高圧気体を噴射する構成とすることで、抽気管の内壁に滞留するダストを効果的に除去することができる。
【0086】
抽気管21Xのように、抽気管21Xの抽気ガスの流路の底面213が平坦であって、堆積ダスト除去部は、抽気管21Xの底面213に沿って、高圧気体を噴射する態様であってもよい。平坦な流路の底面に沿って、高圧気体を噴射する構成とすることで、抽気管21Xの底面に滞留するダストの効果的に除去することができる。
【0087】
また、堆積ダスト除去部は、抽気管21の内部への高圧気体の吐出口が、長尺状であるか、または、所定の方向に並んだ複数のピンホールであってもよい。上記の構成とすることで、抽気管21の内部のより広範囲に向けて高圧気体を噴射することが可能となり、ダストの除去をより効率よく行うことができる。
【0088】
また、抽気管21の内部に堆積するダストの堆積量を測定するダスト測定部35をさらに有し、堆積ダスト除去部は、ダスト測定部35により測定されたダストの堆積量に基づいて、堆積ダスト除去部の運転状況を調整してもよい。この場合、ダストの堆積量に応じて、堆積ダスト除去部の運転状況を調整することが可能となり、堆積したダストの除去を効率良く行うことができる。
【0089】
上記の例において、セメントクリンカ製造装置100は、上述のいずれかの塩素バイパス設備90を有する。上記のセメントクリンカ製造装置100は、上述の塩素バイパス設備90を含むため、ダストの堆積による抽気管21の閉塞の発生が抑制される。
【0090】
また、上記のセメントクリンカの製造方法は、上記のセメントクリンカ製造装置100を用いてセメントクリンカを製造する。上記のセメントクリンカの製造方法は、上述の塩素バイパス設備90を用いてセメントクリンカを製造するため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。
【0091】
上記の塩素バイパス設備90の運転方法は、セメント原料をセメントキルンで焼成する際に発生するキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、断熱部材によって断熱された抽気管を介して抽気ガスを導入し、抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、前記原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級工程と、抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去工程と、を含む。この塩素バイパス設備の運転方法によれば、断熱部材によって断熱された抽気管の内部へ気体が吐出されることで、抽気管内のダストが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。
【0092】
また、上記の塩素含有廃棄物処理方法は、セメントクリンカ製造装置100によって塩素含有廃棄物を処理する方法であって、塩素含有廃棄物を、セメント原料および/またはセメント焼成の熱エネルギーとしてセメントキルンへ投入する投入工程と、セメントキルンの窯尻、ライジングダクトまたはこれらの間からキルン排ガスを得る抽気工程と、抽気工程で得られた抽気ガスを、断熱部材によって断熱された抽気管を介して導入し、抽気ガスから原料ダストの粗粉を分離し、原料ダストの微粉を含む770℃以上の温度を有する導出ガスを得る分級工程と、抽気管の内部に気体を吐出することで堆積するダストを除去する堆積ダスト除去工程と、を含む。この塩素含有廃棄物処理方法によれば、断熱部材によって断熱された抽気管の内部へ気体が吐出されることで、抽気管内のダストが除去される。そのため、ダストの堆積による抽気管の閉塞の発生が抑制される。さらに、上記のセメントクリンカ製造装置100で塩素含有廃棄物を処理することで、塩素バイパス設備を安定的に運転できるため、塩素を効率よく大量に処理することができる。
【0093】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0094】
上記実施形態では、抽気口21Aがライジングダクト42に設けられているが、これに限定されない。例えば、抽気口21Aは窯尻52に設けられてもよく、窯尻52とライジングダクト42の間(または境界部)に設けられてもよい。
【0095】
また、燃焼炉から生じる排ガスを用いる場合、抽気ガスとの合流位置は分級部22に限定されない。例えば、分級部22と抽気口21Aの間、例えば、抽気管21内の流路において、抽気ガスと排ガスとが合流して混合ガスとなってもよい。また、別の変形例として、排ガスの流路を分岐して、排ガスを複数箇所に分けて抽気ガスまたは混合ガスと合流するようにしてもよい。この場合、複数の合流部において合流する排ガスの流量を個別に調節可能な構成としてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、図2に示す抽気管21および開口212と、図3に示す抽気管21Xおよび開口214と、について説明した。しかしながら、これらの組み合わせに限定されるわけではない。例えば、抽気管21に対して長尺状の開口212を設けることに代えて、ピンホール214aから構成された開口214を設けてもよい。また、抽気管21に対して、開口212および開口214の両方を設けて、両方の開口212,214から高圧気体を内部に供給する構成としてもよい。
【0097】
上述の塩素バイパス設備90およびセメントクリンカ製造装置100に関する説明内容は、上述のセメントクリンカの製造方法および塩素バイパス設備の運転方法の説明内容にも適用される。また、上記製造方法および運転方法の説明内容も、上述の塩素バイパス設備90およびセメントクリンカ製造装置100の説明内容に適用される。
【0098】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、分級部22で分離された原料ダストの粗粉は循環流路27を介してセメントキルン50側に戻していたがこれに限定されない。例えば、セメント原料のタンクに入れてセメント原料として予熱仮焼部40に供給されてもよい。また、導出ガスの流路24を構成する円管26は水平に配置されずに、水平方向に対して傾斜して配置されてもよい。塩素バイパス設備は、冷却ガス導入部80と冷却部70の間に混合チャンバを有していてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10…制御部、21,21X…抽気管、21A…抽気口、22…分級部、24…流路、26…円管、27…循環流路、30…高圧気体噴射部、31…エアーブラスタ、35…ダスト測定部、40…予熱仮焼部、42…ライジングダクト、44…仮焼炉、50…セメントキルン、52…窯尻、70…冷却部、72…回収部、74…吸引部、80…冷却ガス導入部、81…流路、90…塩素バイパス設備、100…セメントクリンカ製造装置、F1…抽気ガス、F2…高圧気体。
図1
図2
図3
図4