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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】シリコーンゴム組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20250204BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20250204BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250204BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L33/02
C08K3/36
C08J3/22 CFH
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021209350
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094090
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】轟 大地
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-140316(JP,A)
【文献】特開昭61-236856(JP,A)
【文献】特開平09-188780(JP,A)
【文献】特開2014-105309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08L 33/00-33/26
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する、平均重合度が100以上の下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン;100質量部、
SiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは独立して炭素数1~12の1価炭化水素基であり、aは1.95~2.05の正数である。)
(B)BET法による比表面積が50m/g以上の補強性シリカ;10~100質量部、
(C)ポリアクリル酸ナトリウム;前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.3~質量部、
(D)硬化剤;有効量
を含有するものであることを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記(C)成分の分子量が10,000~7,000,000であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記シリコーンゴム組成物が有機過酸化物硬化型であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記シリコーンゴム組成物が付加反応硬化型であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシリコーンゴム組成物の製造方法であって、
前記(C)成分と前記(A)成分の一部を混合してポリアクリル酸ナトリウムペーストを得る工程と、
前記ポリアクリル酸ナトリウムペーストを残りの前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(D)成分と混合して前記シリコーンゴム組成物を得る工程と、
を含むことを特徴とするシリコーンゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラブル型シリコーンゴム組成物及びその製造方法並びにその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品を始めとして様々な分野で広く使用されている。例えば、リモートコントローラ、タイプライター、ワードプロセッサ、コンピュータ端末、楽器等のゴム接点として使用されるラバーコンタクト;建築用ガスケット;複写機用ロール、現像ロール、転写ロール、帯電ロール、給紙ロール等の各種ロール;オーディオ装置等の防振ゴム;コンピュータに使用されるコンパクトディスク用パッキンなどの用途が挙げられる。現在、シリコーンゴムの需要は益々高まっており、優れた特性を有するシリコーンゴムの開発が望まれている。
【0003】
通常、シリコーンゴムは、摩擦係数が高く、すべり止め防止用の部材として様々な製品に使用されている。一方で、表面のすべり性が良いシリコーンゴムの要求も高い。シリコーンゴムの表面の摩擦係数を低下させる方法としては、相溶性の低いオイルを添加する方法が知られている。例えば、シリコーンゴムがジメチルシリコーンの場合、フェニル基を導入した低粘度のオイルを添加することにより、成形後に相溶性が悪いフェニルオイルが成形物内から、表面に滲み出し、表面の摩擦係数が低くなる。これらの材料は自動車用のオイルブリード材料等で広く使用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これらのオイルブリード材料は、表面にオイル成分が滲みだすことから、このオイルが他の材料に移行し、汚れの原因となることがある。フェニルオイルを添加しないで、すべり性を出す方法としては、アルケニル基を含有しないポリマーを添加する方法(特許文献3)があるが、更なる改善が望まれていた。
【0005】
2液型付加硬化性シリコーン組成物とポリアクリル酸ナトリウムベースの高吸水性ポリマーを含む組成物が、湿潤組織用の接着剤として例示されているが(特許文献4)、接着剤であり、すべり性に関する記載はない。
【0006】
ベースエラストマーにポリアクリル酸ナトリウムなどの親水性ポリマーと無機塩を添加したエラストマー組成物に関する記載がある(特許文献5)。エラストマー組成物を加硫させた後、2~6時間水と接触させることで、無機塩が親水性ポリマーを介して吸収された水と反応し、結晶化する。そのため、高い引張強度及び高い硬度を発現するとの記載があるが、すべり性に関する記載はなく、シリコーンゴムに関する実施例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2006/070947号
【文献】特開2009-185254号公報
【文献】特開2008-195939号公報
【文献】特表2018-510675号公報
【文献】特開2017-222848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水に濡らすと優れたすべり性を発現し、乾燥するとすべり性が消滅するシリコーンゴム(硬化物)となるシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する、平均重合度が100以上の下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン;100質量部、
SiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは独立して炭素数1~12の1価炭化水素基であり、aは1.95~2.05の正数である。)
(B)BET法による比表面積が50m/g以上の補強性シリカ;10~100質量部、
(C)ポリアクリル酸ナトリウム;前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.3~15質量部、
(D)硬化剤;有効量
を含有するものであるシリコーンゴム組成物を提供する。
【0010】
このようなシリコーンゴム組成物であれば、水に濡らすと優れたすべり性を発現し、乾燥するとすべり性が消滅するシリコーンゴム(硬化物)を得ることができる。
【0011】
また、前記(C)成分の分子量が10,000~7,000,000であることが好ましい。
【0012】
このようなシリコーンゴム組成物であれば、動摩擦係数が十分に低下し、高いすべり性が発現し、硬化物の物性が低下しない。
【0013】
また、前記シリコーンゴム組成物が有機過酸化物硬化型であるシリコーンゴム組成物であることが好ましい。
【0014】
本発明のシリコーンゴム組成物は、このような硬化型とすることができる。
【0015】
また、前記シリコーンゴム組成物が付加反応硬化型であるシリコーンゴム組成物であることが好ましい。
【0016】
本発明のシリコーンゴム組成物は、このような硬化型とすることができる。
【0017】
また、本発明では、上記のシリコーンゴム組成物の製造方法であって、
前記(C)成分と前記(A)成分の一部を混合してポリアクリル酸ナトリウムペーストを得る工程と、
前記ポリアクリル酸ナトリウムペーストを残りの前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(D)成分と混合して前記シリコーンゴム組成物を得る工程と、
を含むシリコーンゴム組成物の製造方法を提供する。
【0018】
このようなシリコーンゴム組成物の製造方法であれば、(C)成分と他の成分を混合しやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリコーンゴム組成物(ミラブル型シリコーンゴム組成物)の硬化物(成形物)を水で濡らすことで、表面摩擦係数が有効に低下されたシリコーンゴムを与えられるシリコーンゴム組成物及びその製造方法並びにその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、水に濡らすと優れたすべり性を発現し、乾燥するとすべり性が消滅するシリコーンゴム(硬化物)となるシリコーンゴム組成物が求められていた。
【0021】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、熱硬化型シリコーンゴム組成物に、ポリアクリル酸ナトリウムを特定量加えると、硬化物表面を水に濡らした際、十分なすべり性に優れたシリコーンゴム組成物が得られることを見出した。
【0022】
即ち、本発明は、
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する、平均重合度が100以上の下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン;100質量部、
SiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは独立して炭素数1~12の1価炭化水素基であり、aは1.95~2.05の正数である。)
(B)BET法による比表面積が50m/g以上の補強性シリカ;10~100質量部、
(C)ポリアクリル酸ナトリウム;前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.3~15質量部、
(D)硬化剤;有効量
を含有するものであるシリコーンゴム組成物である。
【0023】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
なお、本明細書中において、比表面積は、BET法により測定された値である。なお、ミラブル型組成物とは、通常、室温(25℃)において自己流動性のない高粘度で非液状の組成物であって、ロールミル(例えば、二本ロールや三本ロール)などの混練機で剪断応力下で均一に混練することが可能な組成物を意味する。また、オルガノポリシロキサン生ゴムとは、高重合度(高粘度)であって、通常、室温(25℃)において自己流動性のない非液状のオルガノポリシロキサン成分であることを意味する。
【0024】
[シリコーンゴム組成物]
[(A)オルガノポリシロキサン]
本発明において、(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する、平均重合度が100以上の下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
SiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは独立して炭素数1~12の1価炭化水素基であり、aは1.95~2.05の正数である。)
【0025】
上記平均組成式(1)中、Rは独立して炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換した、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。上記の中では、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。
【0026】
特に、(A)成分としてのオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基を有することを特徴とし、好ましくは2~50個、特に好ましくは2~20個のアルケニル基を有する。なお、アルケニル基としては、シクロアルケニル基等環状の脂肪族不飽和基であってもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0027】
また、全R中0.01~20モル%、特に0.02~10モル%がアルケニル基であることが好ましい。なお、このアルケニル基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、1個以上は分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0028】
また、全R中80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくはアルケニル基を除く全てのRがアルキル基、特にはメチル基であることが望ましい。
【0029】
aは1.95~2.05であり、好ましくは1.98~2.02、より好ましくは1.99~2.01の正数である。
【0030】
(A)成分であるオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、又は一部分岐構造を有する直鎖状であることが好ましい。具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位(R SiO2/2、Rは上記と同じ、以下同様)の繰り返し構造が、ジメチルシロキサン単位のみの繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部として、フェニル基、ビニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等を置換基として有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルシロキサン単位等のジオルガノシロキサン単位を導入したもの等が好適である。
【0031】
また、分子鎖両末端は、例えば、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基(R SiO1/2)などで封鎖されていることが好ましい。
【0032】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を共加水分解縮合又は加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。
【0033】
なお、上記オルガノポリシロキサンの平均重合度は100以上(通常、100~100,000)であり、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、特に好ましくは3,000~20,000であり、室温(25℃)において自己流動性のない、いわゆる生ゴム状(非液状)であることが好ましい。平均重合度が100未満であるとコンパウンドとした際に、ロール粘着等の問題が生じ、ロール作業性が悪化する。なお、この平均重合度は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量から、平均重合度として求められる。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0034】
(A)成分は、1種を単独で用いても、分子量や重合度、分子構造の異なる2種以上の混合物であってもよい。
【0035】
[(B)補強性シリカ]
(B)成分の補強性シリカは、得られるシリコーンゴム組成物に対して優れた機械的特性を付与する成分として作用する。該補強性シリカは、沈降シリカ(湿式シリカ)でもヒュームドシリカ(乾式シリカ)でもよく、表面に多数のシラノール基(SiOH)が存在しているものである。本発明において(B)成分の補強性シリカのBET法による比表面積は、50m/g以上であることが必要であり、好ましくは100~400m/gである。この比表面積が50m/g未満であると、(B)成分による補強効果が不十分となる。
【0036】
(B)成分の補強性シリカは、未処理の状態で使用しても、必要に応じて、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の有機ケイ素化合物で表面処理されたものを用いてもよい。これらの補強性シリカは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(B)成分の補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10~100質量部であり、好ましくは10~80質量部、より好ましくは20~70質量部である。(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して(B)成分が10質量部未満であると、該シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物の引張り強度や引き裂き強度等の機械的特性が不十分なものとなり、(B)成分が100質量部を超えると、得られるシリコーンゴム組成物の加工性が低下する。
【0038】
[(C)ポリアクリル酸ナトリウム]
(C)成分のポリアクリル酸ナトリウムは、水に触れることで、水を吸収し膨張する。そして、シリコーンゴム硬化物表面に滲出し、すべり性が発現される。分子量が10,000~7,000,000であると、シリコーンゴム硬化物を水に濡らした際のすべり性が良好になるので好ましく、100,000~7,000,000がより好ましく、1,000,000~6,600,000が更に好ましい。分子量が10,000以上であると、動摩擦係数が十分に低下し、高いすべり性が発現する。7,000,000以下ならば、硬化物の物性が低下しない。
なお、用いるポリアクリル酸ナトリウムの分子量が分布を有する場合、その上下限値がいずれも上記範囲内に入っていることが好ましい。
【0039】
(C)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.3~15質量部であり、0.3~10質量部が好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。0.3質量部未満だと良好なすべり性が得られず、15質量部を超えると硬化物の物性が低下するおそれがある。
【0040】
[(D)硬化剤]
(D)成分の硬化剤としては、シリコーンゴム組成物を硬化させ得るものであれば特に限定されないが、下記の(D-1)有機過酸化物硬化剤及び/又は(D-2)付加反応硬化剤を用いることができる。
【0041】
(D-1)有機過酸化物硬化剤
(D-1)有機過酸化物硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-t-ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0042】
有機過酸化物硬化剤を、(A)成分、(B)成分、(C)成分を含有する組成物であるシリコーンゴムコンパウンドに添加することにより、有機過酸化物硬化型のシリコーンゴム組成物を得ることができる。有機過酸化物硬化剤の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。配合量が0.1質量部以上であれば硬化が不十分となることがなく、10質量部以下であれば有機過酸化物硬化剤の分解残渣によりシリコーンゴム硬化物が黄変することがない。
【0043】
(D-2)付加反応硬化剤
(D-2)付加反応硬化剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒とを組み合せて用いることができる。付加反応硬化剤を、シリコーンゴムコンパウンドに添加することにより、付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物を得ることができる。
【0044】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは3~200個、更により好ましくは4~100個程度のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、ヒドロシリル基)を含有すれば、直鎖状、環状、分枝状、三次元網状構造のいずれであってもよく、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
SiO(4-r-s)/2 (2)
【0045】
上記平均組成式(2)中、Rは独立して、1価炭化水素基を示し、脂肪族不飽和結合を除いたものであることが好ましい。Rの上記1価炭化水素基の炭素数は1~12が好ましく、1~8がより好ましい。Rとして、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基、例えば、3,3,3-トリフロロプロピル基等が挙げられる。
【0046】
なお、rは、0<r<3が好ましく、より好ましくは0.5≦r≦2.2、さらに好ましくは1.0≦r≦2.0である。また、sは、0<s≦3が好ましく、より好ましくは0.002≦s≦1.1、さらに好ましくは0.005≦s≦1である。さらに、0<r+s≦3が好ましく、より好ましくは1≦r+s≦3、さらに好ましくは1.002≦r+s≦2.7を満たす正数である。
【0047】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ヒドロシリル基を1分子中に好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上有するが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5~10,000mPa・s、特に1~300mPa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度はJIS K7117-1:1999記載の25℃における回転粘度計により測定した値である。
【0048】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体などや、上記例示化合物において、メチル基の一部又は全部を他のアルキル基や、フェニル基等に置換したものなどが挙げられる。
【0049】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、シリコーンゴムコンパウンド((A)成分、(B)成分、(C)成分を含有)の合計量100質量部に対し0.1~40質量部が好ましい。また、(A)成分中のアルケニル基1個に対し、ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)の割合が0.5~10個の範囲が好ましく、より好ましくは0.7~5個の範囲である。0.5個以上であれば架橋が十分であり、十分な機械的強度が得られ、また10個以下であれば硬化後の物理特性が低下せず、特に耐熱性が悪くなったり、圧縮永久ひずみが大きくなったりすることがない。
【0050】
ヒドロシリル化触媒は、(A)成分のアルケニル基と、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)とをヒドロシリル化付加反応させる触媒である。ヒドロシリル化触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族金属の単体とその化合物があり、これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液等の白金触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物(白金触媒)が好ましい。
【0051】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、付加反応を促進できればよく、通常、(A)成分に対して白金族金属量に換算して1質量ppm~1質量%の範囲で使用されるが、5~500質量ppmの範囲が好ましい。添加量が1質量ppm以上であれば、付加反応が十分促進され、硬化が十分となり、一方、1質量%以下であれば、十分な反応性を有するため、不経済となることがない。
【0052】
また、上記のヒドロシリル化触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、本発明の目的に応じて付加反応制御剤を使用してもよい。その具体例としては、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系制御剤、1,3,5,7-テトラメチル1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビス[(1,1-ジメチル-2-プロピン-1-イル)オキシ]ジメチルシラン等の有機ケイ素化合物系制御剤が挙げられる。付加反応制御剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
なお、シリコーンゴムコンパウンドに、(D-1)成分と(D-2)成分とを、それぞれ上記配合量の範囲内で組み合せて配合し、付加反応硬化と有機過酸化物硬化とを併用した共加硫型のシリコーンゴム組成物(ミラブル型シリコーンゴム組成物)とすることもできる。
【0054】
[その他の成分]
本発明のシリコーンゴム組成物(ミラブル型シリコーンゴム組成物)には、上記成分に加え、必要に応じて、粉砕石英、結晶性シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、引き裂き強度向上剤、受酸剤、アルミナや窒化硼素等の熱伝導率向上剤、離型剤、充填材用分散剤として各種アルコキシシラン、特にフェニル基含有アルコキシシラン及びその加水分解物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基ジメチルポリシロキサン、両末端シラノール基3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンなどの熱硬化型のシリコーンゴム組成物における公知の充填材や添加剤を添加することができる。
【0055】
[シリコーンゴム組成物の製造方法]
本発明のシリコーンゴム組成物は、(A)成分100質量部と(B)成分10~100質量部を含む組成物を混合して熱処理してベースコンパウンドを得、上記ベースコンパウンド100質量部に対して(C)成分0.3~15質量部を添加したシリコーンゴムコンパウンド100質量部に(D)成分を上記配合量の範囲内において有効量を添加することで製造できる。
【0056】
なお、本発明のシリコーンゴム組成物を得る方法としては、上記に限られず、例えば、(A)成分と(B)成分を混合してベースコンパウンドを得る際に熱処理を行わない場合や、得られたベースコンパウンドに(C)成分を添加する代わりにベースコンパウンド配合時に(A)、(B)成分とともに(C)成分を混合する場合もある。
【0057】
また、上記シリコーンゴム組成物の製造方法において、(C)成分を単独で添加する代わりに(C)成分と(A)成分の一部とを混合したポリアクリル酸ナトリウムペーストを用意し、(C)成分が上記範囲内の配合量になるように上記ベースコンパウンドにポリアクリル酸ナトリウムペーストを添加してシリコーンゴムコンパウンドを調製し、さらに(D)成分を上記配合量の範囲内において有効量を添加することでシリコーンゴム組成物を製造することもできる。
【0058】
<硬化条件>
本発明のシリコーンゴム組成物を、公知の硬化方法により公知の硬化条件下で硬化させることにより、その硬化物を得ることができる。具体的には、好ましくは、25~200℃、より好ましくは80~160℃で加熱することにより、組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分間~5時間が好ましく、1分間~3時間がより好ましい。更に、150~250℃で1~10時間二次加硫することで、有機過酸化物硬化剤の分解残差の除去や物性の安定化が期待できる。
【0059】
本発明のシリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーンゴム硬化物は、シート表面を水に濡らすと優れたすべり性を有するものである。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0061】
物性特性測定法
[測定方法]
本実施例、比較例において、作製した硬化物(試験用シート)の評価は以下のようにして行った。
【0062】
[各種物性]
得られたシリコーンゴム硬化物を、JIS K 6249:2003に準じて、各種物性(硬さ(デュロメーターA硬度計)、引張強さ、切断時伸び)を測定した。
【0063】
[動摩擦係数]
試験用シートの動摩擦係数は、自動摩擦摩耗解析装置TSf-503(協和界面科学(株)製)を用い、荷重1kg、引張速度10mm/s、点接触子(鋼球)の条件で、同じ個所を10回摺動させた際の動摩擦係数を測定した(初期)。また、動摩擦係数測定場所に、水を1滴たらした際の動摩擦係数も測定し(水滴下)、その後、水を室温(25℃)で48時間乾燥させ、動摩擦係数を測定した(乾燥)。なお、実施例8と比較例5は初期の動摩擦係数が他の実施例に比べて大きすぎるため、前記荷重を1kgから500gに変更して測定した。
【0064】
[指触試験]
水に濡らした指で試験用シートを擦った際のすべり性を評価した。
◎:よくすべる(ヌルヌルする)
〇:すべる(ヌルヌルしない)
×:滑らない
【0065】
[ポリアクリル酸ナトリウムペーストの調製]
ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部とポリアクリル酸ナトリウム(1)(和光純薬工業(株)製、重合度:22,000~70,000(分子量:2,069,000~6,583,000))100質量部を2本ロールにて混練りした後、3本ロールで混練りし、ポリアクリル酸ナトリウムペーストを調製した。
【0066】
[実施例1]
(A)成分として、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、(B)成分としてヒュームドシリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル(株)製、BET法による比表面積:200m/g)40質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6質量部を添加した後、ニーダーにて混合し、170℃で2時間熱処理し、ベースコンパウンド(1)を調製した。
【0067】
ベースコンパウンド(1)100質量部にポリアクリル酸ナトリウム(1)(和光純薬工業(株)製、重合度:22,000~70,000(分子量:2,069,000~6,583,000))を0.5質量部添加し、シリコーンゴムコンパウンド(1)を調製した。シリコーンゴムコンパウンド(1)100質量部に、硬化剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.4質量部を混合してシリコーンゴム組成物とし、165℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアーを行い、更にその後、200℃で4時間のポストキュアーを行った試験用シート(1)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0068】
[実施例2]
ポリアクリル酸ナトリウム(1)を5.0質量部にした以外は、実施例1と同様にして試験用シート(2)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0069】
[実施例3]
ポリアクリル酸ナトリウム(1)をポリアクリル酸ナトリウム(2)(商品名:アクアリックFH-S、日本触媒(株)製、分子量:3,000,000~5,000,000)にした以外は、実施例1と同様にして試験用シート(3)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0070】
[実施例4]
ポリアクリル酸ナトリウム(1)をポリアクリル酸ナトリウム(3)(商品名:アクアリックDL-100、日本触媒(株)製、分子量:3,500)にした以外は、実施例1と同様にして試験用シート(4)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0071】
[実施例5]
ポリアクリル酸ナトリウム(1)ではなく、上記で調製したポリアクリル酸ナトリウムペーストを1質量部にした以外は、実施例1と同様にして試験用シート(5)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0072】
[実施例6]
(A)成分として、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、(B)成分としてヒュームドシリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル(株)製、BET法による比表面積:200m/g)60質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン10質量部を添加した後、ニーダーにて混合し、170℃で2時間熱処理し、ベースコンパウンド(2)を調製した。
【0073】
ベースコンパウンド(2)100質量部にポリアクリル酸ナトリウム(2)(商品名:アクアリックFH-S、日本触媒(株)製、分子量:3,000,000~5,000,000)を0.5質量部添加し、シリコーンゴムコンパウンド(2)を調製した。シリコーンゴムコンパウンド(2)100質量部に、硬化剤として側鎖にヒドロシリル基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度38、ヒドロシリル基が0.00725モル/g)0.9質量部、付加反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.04質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.05質量部を混合してシリコーンゴム組成物とし、120℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアーを行い、更にその後、200℃で4時間のポストキュアーを行った試験用シート(6)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0074】
[実施例7]
(A)成分として、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、(B)成分としてヒュームドシリカ(商品名:アエロジルR972、日本アエロジル(株)製、BET法による比表面積:110m/g)20質量部を添加した後、ニーダーにて混合し、ベースコンパウンド(3)を調製した。
【0075】
ベースコンパウンド(3)100質量部にポリアクリル酸ナトリウム(2)(商品名:アクアリックFH-S、日本触媒(株)製、分子量:3,000,000~5,000,000)を0.5質量部添加し、シリコーンゴムコンパウンド(3)を調製した。シリコーンゴムコンパウンド(3)100質量部に、硬化剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.4質量部を混合してシリコーンゴム組成物とし、165℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアーを行い、更にその後、200℃で4時間のポストキュアーを行った試験用シート(7)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0076】
[実施例8]
(A)成分として、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.05モル%からなり、平均重合度が約4,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、(B)成分としてヒュームドシリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル(株)製、BET法による比表面積:200m/g)40質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sである3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン1質量部、ジフェニルシランジオール5質量部を添加した後、ニーダーにて混合し、150℃で2時間熱処理し、ベースコンパウンド(4)を調製した。
【0077】
ベースコンパウンド(4)100質量部にポリアクリル酸ナトリウム(2)(商品名:アクアリックFH-S、日本触媒(株)製、分子量:3,000,000~5,000,000)を0.5質量部添加し、シリコーンゴムコンパウンド(4)を調製した。シリコーンゴムコンパウンド(4)100質量部に、硬化剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.6質量部を混合してシリコーンゴム組成物とし、165℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアーを行い、更にその後、200℃で4時間のポストキュアーを行った試験用シート(8)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0078】
[実施例9]
(A)成分として、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、(B)成分としてヒュームドシリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル(株)製、BET法による比表面積:200m/g)40質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6質量部、(C)成分としてポリアクリル酸ナトリウム(2)(商品名:アクアリックFH-S、日本触媒(株)製、分子量:3,000,000~5,000,000)0.52質量部を添加した後、ニーダーにて混合し、170℃で2時間熱処理し、ベースコンパウンド(5)(シリコーンゴムコンパウンド(5))を調製した。
【0079】
ベースコンパウンド(5)100質量部に、硬化剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.4質量部を混合してシリコーンゴム組成物とし、165℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアーを行い、更にその後、200℃で4時間のポストキュアーを行った試験用シート(9)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0080】
[比較例1]
ポリアクリル酸ナトリウム(1)を添加しない以外は、実施例1と同様にして試験用シート(10)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0081】
[比較例2]
ポリアクリル酸ナトリウム(1)を0.1質量部にした以外は、実施例1と同様にして試験用シート(11)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0082】
[比較例3]
ポリアクリル酸ナトリウム(2)を添加しない以外は、実施例6と同様にして試験用シート(12)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0083】
[比較例4]
ポリアクリル酸ナトリウム(2)を添加しない以外は、実施例7と同様にして試験用シート(13)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0084】
[比較例5]
ポリアクリル酸ナトリウム(2)を添加しない以外は、実施例8と同様にして試験用シート(14)を作製し、各種物性、動摩擦係数、及びすべり性を測定した。
【0085】
以上の結果を表1~5に示す。なお、表中における数値の単位は質量部とする。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
<評価結果>
本発明のシリコーンゴム組成物から作製された試験用シートに水を滴下した際の動摩擦係数について、実施例の試験用シートに水を滴下した際の動摩擦係数は、同じ条件下で測定した比較例よりも大きく低下する傾向にあった。また、指触試験の結果についても、実施例ではどれも◎か〇であったのに対し、比較例はどれも×であったことから、本発明を用いた試験用シートでは、水に濡らすことですべり性が発現することが確認できた。
【0092】
また、実施例の試験用シートに水を滴下した後に48時間乾燥させた際の動摩擦係数はどれも初期の値と同程度であったことから、本発明を用いた試験用シートでは、水に濡れることで発現したすべり性が乾燥によって消滅することが確認できた。
【0093】
なお、作製した試験用シートの硬さ、引張強さ、切断時伸びは、同じ条件下で測定した実施例と比較例において同程度であった。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。