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特許7629140水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20250204BHJP
   F04B 27/18 20060101ALI20250204BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
F17C5/06
F04B27/18 Z
F17C13/00 301Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024181253
(22)【出願日】2024-10-16
【審査請求日】2024-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2024065632
(32)【優先日】2024-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-173332(JP,A)
【文献】特開2006-283886(JP,A)
【文献】特開2005-315139(JP,A)
【文献】特開2015-183766(JP,A)
【文献】特開2023-082226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0364680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを圧縮する低圧圧縮機と高圧圧縮機を備え、
供給先の必要圧力が、低圧領域と高圧領域との領域を有し、該必要圧力に応じて該供給先に供給する水素ガスの供給方法であり、
前記低圧圧縮機は、ピストンクランク式圧縮機であり、
前記高圧圧縮機は、油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機であり、
前記供給先の必要圧力が低圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを前記供給先に供給し、
前記供給先の必要圧力が、前記高圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって水素ガスを圧縮し、該圧縮された前記水素ガスを、前記高圧圧縮機に導入し、前記高圧圧縮機によって圧縮した水素ガスを前記供給先に供給することを特徴とする水素ガスの供給方法。
【請求項2】
前記水素ガスの供給先は、水素ステーションにおける、蓄圧器又は移動体の水素貯蔵タンクであることを特徴とする請求項1記載の水素ガスの供給方法。
【請求項3】
前記水素貯蔵タンクへの充填方式は、前記低圧圧縮機と高圧圧縮機からの直充填方式又は前記蓄圧器からの差圧充填方式、あるいは前記直充填方式及び前記差圧充填方式の併用であることを特徴とする請求項記載の水素ガスの供給方法。
【請求項4】
前記供給先の必要圧力の前記低圧領域は、上限値が40~50MPaの任意の値となる領域であり、前記高圧領域は、前記低圧領域の上限値の任意の値より大きく100MPa以下の領域であることを特徴とする請求項1記載の水素ガスの供給方法。
【請求項5】
前記ピストンクランク式圧縮機と前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の電動機を共用することを特徴とする請求項1記載の水素ガスの供給方法。
【請求項6】
前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の駆動をON-OFF制御するクラッチを設けることを特徴とする請求項記載の水素ガスの供給方法。
【請求項7】
前記ピストンクランク式圧縮機と、前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機とを一体搭載すると共に、共通する補機類を共有化して同一のスキッド上に収まるサイズのユニットに構成することを特徴とする請求項1記載の水素ガスの供給方法。
【請求項8】
前記供給先に供給可能な水素ガス流量は、400Nm/Hr~1200Nm/Hrであることを特徴とする請求項1記載の水素ガスの供給方法。
【請求項9】
水素ガスを圧縮する低圧圧縮機と高圧圧縮機を備え、
供給先の必要圧力が、低圧領域と高圧領域との領域を有し、該必要圧力に応じて該供給先に供給する水素ガスの供給システムであり、
前記低圧圧縮機は、ピストンクランク式圧縮機であり、
前記高圧圧縮機は、油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機であり、
前記供給先の必要圧力が前記低圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを前記供給先に供給し、
前記供給先の必要圧力が、前記高圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって水素ガスを圧縮し、該圧縮された水素ガスを、前記高圧圧縮機に導入し、該高圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを、前記供給先に供給することを特徴とする水素ガスの供給システム。
【請求項10】
前記水素ガスの供給先は、水素ステーションにおける、蓄圧器又は移動体の水素貯蔵タンクであることを特徴とする請求項9記載の水素ガスの供給システム。
【請求項11】
前記水素貯蔵タンクへの充填方式は、前記低圧圧縮機と高圧圧縮機からの直充填方式又は前記蓄圧器を介した差圧充填方式、あるいは前記直充填方式及び前記差圧充填方式の併用であることを特徴とする請求項10記載の水素ガスの供給システム。
【請求項12】
前記供給先の必要圧力の前記低圧領域は、上限値が40~50MPaの任意の値となる領域であり、前記高圧領域は、前記低圧領域の上限値の任意の値より大きく100MPa以下の領域であることを特徴とする請求項9記載の水素ガスの供給システム。
【請求項13】
前記ピストンクランク式圧縮機と前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の電動機を共用することを特徴とする請求項9載の水素ガスの供給システム。
【請求項14】
前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の駆動をON-OFFを制御するクラッチを設けることを特徴とする請求項13記載の水素ガスの供給システム。
【請求項15】
前記ピストンクランク式圧縮機と前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機とを一体搭載すると共に共通する補機類を共有化して、同一スキッド上に収まるサイズの圧縮機ユニットに構成することを特徴とする請求項9記載の水素ガスの供給システム。
【請求項16】
前記供給先に供給可能な水素ガス流量は、400Nm/Hr~1200Nm/Hrであることを特徴とする請求項9記載の水素ガスの供給システム。
【請求項17】
電動機(100)の駆動軸(101)に設けられた電動機用プーリ(102)と、
ピストンクランク式圧縮機(1)のピストンクランク式圧縮機側駆動軸(107)に設けられたピストンクランク式圧縮機用プーリ(103)と、
油圧式圧縮機(2)の油圧式圧縮機側駆動軸(108)に設けられた油圧式圧縮機用プーリ(105)とを備え、
前記電動機用プ―リ(102)と、ピストンクランク式圧縮機用プーリ(103)とが、ピストンクランク式圧縮機用ベルト(104)を介して、回転可能に接続され、
前記電動機用プ―リ(102)と、油圧式圧縮機用プーリ(105)とが、油圧式圧縮機用ベルト(106)を介して回転可能に接続されており、
ピストンクランク式圧縮機(1)は、電動機の駆動により駆動軸が回転することによって、クランクシャフトを介してピストンの直線往復動に変換され、シリンダ内のピストン上方に充填された水素ガスを圧縮する構造を備えると共に、
油圧式圧縮機(2)は、電動機の駆動により駆動軸が回転することによって、油圧ポンプを駆動して生じた油圧によるピストンの往復動に変換され、ピストンの往復動により、シリンダ内に充填された水素ガスを圧縮する構造を備えることを特徴とする請求項9記載の水素ガスの供給システム。
【請求項18】
前記ピストンクランク式圧縮機(1)の低圧圧縮を経由して高圧水素圧縮を行う前記油圧式圧縮機(2)の吸込側に至り、前記油圧式圧縮機(2)に至る配管系統(110)と、前記ピストンクランク式圧縮機(1)を経由して前記油圧式圧縮機(2)の吸込側に入ることなく、前記油圧式圧縮機(2)を迂回して油圧式圧縮機(2)の吐出側に至る分岐配管系統(111)をそれぞれ設け、
前記分岐配管系統(111)に開閉を制御する制御弁(112)を設け、
前記油圧式圧縮機(2)の駆動軸(108)に前記油圧式圧縮機(2)の電動機(105)の駆動力の切り離しを可能とするクラッチ(109)を設け、
前記供給先の必要圧力が設定値以下の場合には、前記クラッチ(109)を切り離し、制御弁(112)を開け、
前記供給先の必要圧力が前記設定値よりも大きくなったら、前記クラッチ(109)を繋ぎ、前記制御弁(112)を閉じることを特徴とする請求項記載の水素ガスの供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システムに関し、詳しくは、低圧であっても高圧であっても安定して水素圧縮でき、顧客の迅速な水素充填の要望を満足できる水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素ガスを動力源とする燃料電池自動車(FCV :Fuel Cell Vehicle)の開発が進み、実用化の段階に至ろうとしている。燃料電池自動車の水素タンクへの水素ガスの供給は、ガソリン自動車へのガソリンの供給をガソリンスタンドで行うのと同様に、水素を充填する水素ステーションにおいて行われる。
【0003】
この水素ステーションには、水素製造装置を備えてその装置で製造した水素を供給するオンサイト型水素ステーションもあるが、設備コストを安くする上では、外部で製造した水素を複数のガス容器(赤色)を組み込んだカードルを水素供給源とするオフサイト型水素ステーションがある。
【0004】
特許文献1には、高圧の水素ガスを製造する場合には油圧ブースター型圧縮機を用いて例えば82MPaを超える圧力に昇圧して蓄圧器に蓄圧し、また中圧の水素ガスを製造する場合には油圧ブースター型圧縮機を用いて例えば40MPaに昇圧して蓄圧器に蓄圧して使用する手法が開示されている。
しかし、油圧式圧縮機は、作動油の油圧力によりピストンを駆動する機構であり、油圧作動油のシーリング等の制限から、クランク機構を持つピストンクランク式圧縮機に比べ最大サイクル数が小さい。そのためピストンクランク式に比べ、低圧から高圧への昇圧においては圧縮機1台あたりの流量が少なくなる欠点がある。
【0005】
特許文献2には、クランク式圧縮機を用いて5段圧縮する手法が開示され、具体的には、クランク式回転駆動部の周りに半径方向に放射状に延びるシリンダを有し、そのシリンダ内に各々ピストンを備えており、5段圧縮により、0.6MPaから145.8MPaまで昇圧している。
ピストンクランク式は、サイクル数を多くとれることから低圧からの圧縮において大流量を圧縮できる。水素ステーションにおいては、80MPa以上の超高圧圧縮が実施されている。
【0006】
特許文献3においても50MPa以上の高圧においてクランク式圧縮機が用いられており、この種の水素ステーションにおいては、50MPa以上の高圧にもクランク式圧縮機を用いることがあるが、本発明者の検討によれば、超高圧圧縮化により、低圧圧縮に比べ摩耗部品の寿命低下や信頼性低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-139378号公報
【文献】特開2016-183684号公報
【文献】特開2023-67967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、低圧であっても高圧であっても安定して水素圧縮でき、信頼性に優れる水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システムを提供することを課題とする。
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0010】
1.
水素ガスを圧縮する低圧圧縮機と高圧圧縮機を備え、
供給先の必要圧力が、低圧領域と高圧領域との領域を有し、該必要圧力に応じて該供給先に供給する水素ガスの供給方法であり、
前記低圧圧縮機は、ピストンクランク式圧縮機であり、
前記高圧圧縮機は、油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機であり、
前記供給先の必要圧力が低圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを前記供給先に供給し、
前記供給先の必要圧力が、前記高圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって水素ガスを圧縮し、該圧縮された前記水素ガスを、前記高圧圧縮機に導入し、前記高圧圧縮機によって圧縮した水素ガスを前記供給先に供給することを特徴とする水素ガスの供給方法。
2.
前記水素ガスの供給先は、水素ステーションにおける、蓄圧器又は移動体の水素貯蔵タンクであることを特徴とする前記1記載の水素ガスの供給方法。
3.
前記水素貯蔵タンクへの充填方式は、前記低圧圧縮機と高圧圧縮機からの直充填方式又は前記蓄圧器からの差圧充填方式、あるいは前記直充填方式及び前記差圧充填方式の併用であることを特徴とする前記記載の水素ガスの供給方法。
4.
前記供給先の必要圧力の前記低圧領域は、上限値が40~50MPaの任意の値となる領域であり、前記高圧領域は、前記低圧領域の上限値の任意の値より大きく100MPa以下の領域であることを特徴とする前記1記載の水素ガスの供給方法。
5.
前記ピストンクランク式圧縮機と前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の電動機を共用することを特徴とする前記1記載の水素ガスの供給方法。
6.
前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の駆動をON-OFF制御するクラッチを設けることを特徴とする前記記載の水素ガスの供給方法。
7.
前記ピストンクランク式圧縮機と、前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機とを一体搭載すると共に、共通する補機類を共有化して同一のスキッド上に収まるサイズのユニットに構成することを特徴とする前記1記載の水素ガスの供給方法。
8.
前記供給先に供給可能な水素ガス流量は、400Nm/Hr~1200Nm/Hrであることを特徴とする前記1記載の水素ガスの供給方法。
9.
水素ガスを圧縮する低圧圧縮機と高圧圧縮機を備え、
供給先の必要圧力が、低圧領域と高圧領域との領域を有し、該必要圧力に応じて該供給先に供給する水素ガスの供給システムであり、
前記低圧圧縮機は、ピストンクランク式圧縮機であり、
前記高圧圧縮機は、油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機であり、
前記供給先の必要圧力が前記低圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを前記供給先に供給し、
前記供給先の必要圧力が、前記高圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって水素ガスを圧縮し、該圧縮された水素ガスを、前記高圧圧縮機に導入し、該高圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを、前記供給先に供給することを特徴とする水素ガスの供給システム。
10.
前記水素ガスの供給先は、水素ステーションにおける、蓄圧器又は移動体の水素貯蔵タンクであることを特徴とする前記9記載の水素ガスの供給システム。
11.
前記水素貯蔵タンクへの充填方式は、前記低圧圧縮機と高圧圧縮機からの直充填方式又は前記蓄圧器を介した差圧充填方式、あるいは前記直充填方式及び前記差圧充填方式の併用であることを特徴とする前記10記載の水素ガスの供給システム。
12.
前記供給先の必要圧力の前記低圧領域は、上限値が40~50MPaの任意の値となる領域であり、前記高圧領域は、前記低圧領域の上限値の任意の値より大きく100MPa以下の領域であることを特徴とする前記9記載の水素ガスの供給システム。
13.
前記ピストンクランク式圧縮機と前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の電動機を共用することを特徴とする前記9載の水素ガスの供給システム。
14.
前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機の駆動をON-OFFを制御するクラッチを設けることを特徴とする前記13記載の水素ガスの供給システム。
15.
前記ピストンクランク式圧縮機と前記油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機とを一体搭載すると共に共通する補機類を共有化して、同一スキッド上に収まるサイズの圧縮機ユニットに構成することを特徴とする前記9記載の水素ガスの供給システム。
16.
前記供給先に供給可能な水素ガス流量は、400Nm/Hr~1200Nm/Hrであることを特徴とする前記9記載の水素ガスの供給システム。
17.
電動機(100)の駆動軸(101)に設けられた電動機用プーリ(102)と、
ピストンクランク式圧縮機(1)のピストンクランク式圧縮機側駆動軸(107)に設けられたピストンクランク式圧縮機用プーリ(103)と、
油圧式圧縮機(2)の油圧式圧縮機側駆動軸(108)に設けられた油圧式圧縮機用プーリ(105)とを備え、
前記電動機用プ―リ(102)と、ピストンクランク式圧縮機用プーリ(103)とが、ピストンクランク式圧縮機用ベルト(104)を介して、回転可能に接続され、
前記電動機用プ―リ(102)と、油圧式圧縮機用プーリ(105)とが、油圧式圧縮機用ベルト(106)を介して回転可能に接続されており、
ピストンクランク式圧縮機(1)は、電動機の駆動により駆動軸が回転することによって、クランクシャフトを介してピストンの直線往復動に変換され、シリンダ内のピストン上方に充填された水素ガスを圧縮する構造を備えると共に、
油圧式圧縮機(2)は、電動機の駆動により駆動軸が回転することによって、油圧ポンプを駆動して生じた油圧によるピストンの往復動に変換され、ピストンの往復動により、シリンダ内に充填された水素ガスを圧縮する構造を備えることを特徴とする前記9記載の水素ガスの供給システム。
18.
前記ピストンクランク式圧縮機(1)の低圧圧縮を経由して高圧水素圧縮を行う前記油圧式圧縮機(2)の吸込側に至り、前記油圧式圧縮機(2)に至る配管系統(110)と、前記ピストンクランク式圧縮機(1)を経由して前記油圧式圧縮機(2)の吸込側に入ることなく、前記油圧式圧縮機(2)を迂回して油圧式圧縮機(2)の吐出側に至る分岐配管系統(111)をそれぞれ設け、
前記分岐配管系統(111)に開閉を制御する制御弁(112)を設け、
前記油圧式圧縮機(2)の駆動軸(108)に前記油圧式圧縮機(2)の電動機(105)の駆動力の切り離しを可能とするクラッチ(109)を設け、
前記供給先の必要圧力が設定値以下の場合には、前記クラッチ(109)を切り離し、制御弁(112)を開け、
前記供給先の必要圧力が前記設定値よりも大きくなったら、前記クラッチ(109)を繋ぎ、前記制御弁(112)を閉じることを特徴とする前記記載の水素ガスの供給システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低圧であっても高圧であっても安定して水素圧縮でき、信頼性に優れる水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システムを提供することができる。
【0012】
また本発明によれば、水素ステーションにおける水素充填において、大容量の安定した充填が可能であり、しかも顧客満足度に優れる水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が好ましく適用される水素ステーションの一例を示す概略側面図であり、直充電方式を示す。
図2】本発明が好ましく適用される水素ステーションの他の例を示す概略側面図であり、差圧充填方式を示す。
図3】ピストンクランク式圧縮機の一例を示す概略断面図
図4】油圧式圧縮機の一例を示す概略断面図
図5】ダイアフラム式圧縮機の一例を示す概略断面図
図6】低圧水素圧縮機と高圧水素圧縮機の電動機を共用する態様を説明する図
図7】低圧水素圧縮機と高圧水素圧縮機の電動機を共用する態様を説明する図
図8】本発明の水素ガスの供給システムの圧縮機起動の制御フローの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明が好ましく適用される水素ステーションの一例を示す概略側面図であり、図1の例は直充填方式を示しており、図2の例は差圧充填方式を示している。
【0015】
図1及び図2に基づいて説明すると、圧縮機は低圧水素圧縮機であるピストンクランク式圧縮機1と、高圧水素圧縮機である油圧式圧縮機2を備える。
【0016】
図1には、低圧水素圧縮機1及び高圧水素圧縮機2により圧縮して製造された水素ガスを、ディスペンサ3を介して移動体4の水素貯蔵タンクに充填される直充填方式の一例が示されている。
【0017】
図2には、圧縮機により圧縮して製造された水素ガスを、一旦蓄圧器5に供給し、蓄圧器5から、ディスペンサ3を介して移動体4の水素貯蔵タンクに充填される差圧充填方式の一例が示されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、圧縮機から供給される水素ガスは、水素ステーションにおける蓄圧器5、又は移動体4の水素貯蔵タンクに供給される。
移動体4の水素貯蔵タンクへの充填方式は、図1に示すような圧縮機からディスペンサ3を介して充填する直充填方式、又は図2に示すような圧縮機から蓄圧器5へ供給し、蓄圧器5からディスペンサ3を介して充填する差圧充填方式、あるいは直充填方式及び差圧充填方式の併用により、水素ガスを充填することができる。
【0019】
本実施形態では、水素ステーションにおいて、燃料となる水素ガスを、供給先である蓄圧器5、又は移動体4の水素貯蔵タンクに、圧縮機から供給される例が示されているが、これに限定されず、水素ガスの供給先は、水素ステーション向けに限らず、水素輸送向けの貯留タンクに、水素ガスを圧縮して供給することもできる。
以下、本発明の水素ガスの供給方法及びシステムが、燃料となる水素ガスの供給先が、水素貯蔵タンクである場合を例に挙げて説明する。
【0020】
本発明の水素ガスの供給方法及び供給システムにおいて、供給先である水素貯蔵タンク内の水素ガス圧の要求圧力あるいは必要圧力が、低圧領域(例えば0~50MPa程度)である間は、クランク式圧縮機を駆動して製造した低圧圧縮水素を水素貯蔵タンクに供給する。タンク内に水素ガスを供給し、タンク内にある水素の容量が増えていくほど、タンク内の圧力が高くなり、それに伴い、水素貯蔵タンクの要求圧力も高まっていく。
つまり、タンク内の水素ガスの容量に応じて変動していくタンク内圧力によって、該タンクの必要圧力は変動していき、タンクに水素ガスが供給されればされるほど、タンクの必要圧力は高くなっていく。
【0021】
本発明では、供給先の必要圧力を低圧領域と高圧領域という二つの領域に区分けし、低圧領域の場合には、前記低圧圧縮機により圧縮される水素ガスの圧力でも十分に前記供給先に供給することができる。このため、高圧圧縮機を起動させる必要はない。
【0022】
本明細書において、供給先の必要圧力が低圧領域である場合、前記低圧圧縮機によって圧縮された水素ガスを前記供給先に供給するというのは、低圧圧縮機で圧縮した水素ガスの圧力で十分供給先に供給可能であるため、高圧圧縮機で圧縮処理をする必要がないことを意味している。
【0023】
高圧圧縮機で圧縮処理をする必要がないということは、高圧圧縮機に水素ガスを導入し、実質的に圧力を高めないが高圧圧縮機内を水素ガスが流通することは含まれる。高圧圧縮機に導入された水素ガスは、圧縮処理が行われずに、高圧圧縮機内を流通する流路として活用されることが含まれ、また、高圧圧縮機で圧縮処理をする必要がないということには、後述する制御弁を用いて高圧圧縮機に導入しないで流路を切り替えることも含まれる。
【0024】
本実施形態において、供給先の必要圧力が低圧領域であり、高圧領域に至っていない場合、圧縮機から供給する水素の圧力が、供給先の必要圧力より少しでも高ければ供給可能となるから、高圧圧縮機により水素ガスを圧縮しなくても供給先に供給が可能となる。従って、この場合に、低圧圧縮機だけを稼働し、高圧圧縮機は稼働しない状態にする(後述のクラッチを切って駆動力が伝達しない状態のままにする)。これにより、高圧圧縮機を稼働しない状態となるから、電力コストを大幅に削減できる効果がある。また高圧圧縮機が稼働しないことにより、高圧圧縮機のピストンなどの摺動部分を停止できれば摩耗を減少させることができる効果がある。
【0025】
一方で、高圧領域の場合、低圧圧縮機で圧縮される水素ガスの圧力では、供給先に供給できる圧力が不足するため、供給先に水素ガスが充填されていかない。このため、低圧圧縮機で圧縮された水素ガスを、高圧圧縮機に導入し、高圧圧縮機で、圧縮することで、高圧領域の場合でも、供給先に水素ガスを供給できる圧力にすることができる。
【0026】
供給先である水素貯蔵タンク内の水素ガス圧が、高圧領域(例えば50~100MPa程度)である場合には、水素ガスを、低圧圧縮機を稼働して圧力50MPaまで圧縮し、次いで、高圧圧縮機の電動機を稼働させるか、クラッチを入れるかの手法を用いて、高圧圧縮機を稼働し、低圧圧縮機で圧力50MPaまで達した水素ガスを、更に高圧圧縮して、供給先の水素貯蔵タンクに供給する。
【0027】
本発明では、水素貯蔵タンクの必要圧力に応じて、必要圧力が低圧領域である場合には、ピストンクランク式圧縮機を駆動して圧縮し、油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機を駆動しないで供給先である水素貯蔵タンクに水素ガスの充填を行う。
次いで、要求圧力が低圧領域を超えて、高圧領域に至った場合には、高圧圧縮機の電動機を稼働し(クラッチを入れ高圧圧縮機に駆動力を伝達する)、低圧圧縮機で水素ガスを圧縮し、低圧圧縮機で圧縮された水素ガスを、高圧圧縮機に導入し、高圧圧縮機で、水素ガスの圧力を供給先の要求圧力を超えるように圧縮して充填する。
【0028】
低圧圧縮機に用いられるピストンクランク式圧縮機1は圧縮段数を複数有していてもよく、例えば3段又は4段が好ましい。
高圧圧縮機に用いられる油圧式圧縮機2は単数段でもよいし2段であってもよい。
低圧圧縮機と高圧圧縮機とを含めた圧縮機の全段数は5段であっても6~8段程度であってもよい。
【0029】
本発明において、水素貯蔵タンクの水素ガス圧の低圧領域は、その上限値は40~50MPa以下の領域であることが好ましい。この上限値は、低圧圧縮機の圧縮能力の設計値に応じて変動する。本発明における低圧領域の上限値は、低圧圧縮機で加圧できる水素ガスの圧力の上限とほぼ等しい。
一方、水素貯蔵タンクの水素ガス圧の高圧領域は、低圧領域の上限値より大きく100MPa以下の領域であることが好ましい。
本実施形態において、低圧領域は、上限値が40~50MPa以下の範囲における任意の値となり、高圧領域は、低圧領域の上限の任意の値より大きい値を下限値として、その上限が最大100MPaの領域となる。
【0030】
低圧水素圧縮機1における低圧圧縮のガス圧は0.6~50MPaの範囲のであり、高圧水素圧縮機2における高圧圧縮のガス圧は、上限が100MPaの範囲である。低圧水素圧縮機1は、前述のように複数段でガス圧を昇圧させていくので、段数に応じて、昇圧比を設計することで、任意のガス圧まで昇圧することができる。本実施形態において、高圧水素圧縮機2は、低圧水素圧縮機1で供給するための圧力が不足した場合、例えば供給先の必要圧力(要求圧力)が高圧領域になった場合、更に昇圧して供給するための圧縮機である。したがって、高圧水素圧縮機2の高圧圧縮のガス圧の下限は、低圧水素圧縮機1の上限に応じて変動する。
【0031】
水素貯蔵タンクに供給できる水素ガス流量は、圧縮機全体において標準状態で400~1200Nm/Hrである。本発明によると、自動車のような移動体が、同時間に3~8台が水素ステーションに入ってきて水素充填を希望した場合でも、充填可能な水素ガス流量が大きいので混雑することなくスムーズに充填でき、実用性に極めて優れるシステムを提供できる。
【0032】
圧縮対象の水素は、通常カードル(外部で製造した水素を複数のガス容器(赤色)を組み込んだもの)で水素ステーションに持ち込まれる。またカードル以外にも、パイプラインによって水素ステーションに供給されてもよい。
【0033】
水素は、外部で製造してガス状で水素ステーションに持ち込まれるが、液化水素であってもよい。
また水素ステーションに、水素製造装置を設けて、その装置で製造した水素を用いることもできる。水素製造装置としては、水電解槽を設置し外部電源を用いることで水素ガスを製造する装置、炭化水素燃料分解装置、液化水素を充填した液化水素保管容器を設置し、気化器により水素ガスを製造する装置等が例示できる。
【0034】
本発明の水素ガスの供給方法及びシステムにおいて、移動体4は、水素を燃料とする燃料電池自動車や船舶などが挙げられる。
本発明は、供給できる水素ガスが大流量であるため、バスやトラックの大容量タンクにも適する効果がある。
【0035】
また、本発明の水素ガスの供給方法を実現する水素ガスの供給システムは、同一スキッド上に収まるサイズである。
同一のスキッド上に収まるサイズは、例えば、20ftコンテナに収まるサイズであり、具体的には、20ftコンテナの内寸の床面積が例示されるが、これに限定されない。
本発明を設置する水素ステーションは、陸上用に限らず、海上用でもよく、設置式でも、移動式であってもよい。
【0036】
図3はピストンクランク式圧縮機の一例を示す概略断面図である。
図3において、シリンダ10の内部にピストン11が設けられ、ピストン11の外周からの漏洩をある程度防止するためにピストンリング12が設けられる。ピストンリング12は複数本設けることができる。図示の例では2本設けている。ピストン11の下部はピストン棒13で支持されている。ピストン棒13は接合棒14を介してクランクシャフト15に接続されている。
【0037】
クランクシャフト15は図示しない圧縮機用電動機(モータ)に回転可能に接続され、そのモータの回転駆動によってクランクシャフト15が回転し、直線往復動に変換されたピストン棒13が上下動する。
【0038】
ピストン11の上方に充填された水素ガスは、クランクシャフト15が回転すると、ピストン棒13が上下動し、それに応じてピストン11が上下動するので圧縮される。
【0039】
図4は油圧式圧縮機の一例を示す概略断面図である。
図4において、シリンダ10内に設けたピストンシール16を備えたピストン11の下方より、油作動流体16の圧力が印加されている。
油作動流体16は油圧ポンプ170から送られ、油圧ポンプ170のポンプ圧により、ピストン11を上方に押圧し、シリンダ10内のピストン11の上方に充填された水素ガスを圧縮する。
【0040】
油圧ポンプ170は、ケーシング171内で2つの歯車172と173が互いに外面が接するように外接状態で噛み合っている。歯車172は駆動歯車であり、歯車173は従動歯車である。
【0041】
回転によって噛み合い部が離れる時に空間が生じ、油を吸い込むようになっている。このようにして空間には油が充填される。ケーシング171の内面175に沿って油が吐出側176に導かれる。噛み合い部により、吸込側177と吐出側176は遮断されている。
【0042】
駆動歯車172は、図示しない電動機に連結された回転軸によって回転可能に構成されている。
図示のギアポンプ170の駆動歯車172が回転すると、ギアポンプ172から押し出される油は図4に示す作動流体17を押圧する。
【0043】
シリンダ10内に設けたピストンシール16を備えたピストン11の下方より、油作動流体17に圧力が印加される。このように油作動流体17は油圧ポンプであるギアポンプ172のポンプ圧により、ピストン11を上方に押圧し、シリンダ10内のピストン11の上方に充填された水素ガスを圧縮する。
【0044】
油作動流体がない機械式駆動の場合には、シリンダ10内への漏れる対象がないため、図3に示したピストンリング12から漏れのおそれがない。この結果、負荷は油圧式に比べて大きくないため、ピストンスピードを上げることができる。
これに対して、油圧式の場合、油作動流体17のプロセス側への漏れを防ぐ必要があるため、ピストンシール16は密閉性が強いものが選ばれることが好ましい。その結果、ピストンシール16の摩耗、損傷を防ぐため、ピストンスピードは低く抑えられることが好ましい。
【0045】
図示の例では、油作動流体を、ギアポンプを用いて加圧し、加圧された油作動流体がピストンを上方に押圧することにより、水素ガスを圧縮する例が示されているが、電動機の動力を、駆動軸を介して、油作動流体に圧力を印加できる形態であればよく、図示の例のようなギアポンプに限定されない。
【0046】
また、油作動流体を直接印加する油圧ポンプを用いないような、ブースター式油圧圧縮機を用いることもできる。
このブースター式油圧圧縮機は、例えばピストンの下方より圧力空気により加圧された油作動流体の圧力を印加して、前記ピストンを往復動させて、シリンダ内のピストンの上方に充填された水素ガスを圧縮する。この場合、油作動流体を圧縮するための空気を、電動機の動力を、駆動軸を介して伝達して圧縮することができる。
【0047】
図5はダイアフラム式圧縮機の一例を示す概略断面図である。
図5において、ダイアフラム18を支持するピストン棒13を往復動(上下動)させてダイアフラム18を往復動(上下動)させ、シリンダ10内のダイアフラム18の上方に充填された水素ガスを圧縮する。
この圧縮機はダイアフラムと呼ばれる金属膜を上下させて容積変化を起こし圧縮する態様である。ピストンのような摺動部品が無く、摩耗による寿命はない利点がある、一方で、ダイアフラム式圧縮機は、ダイアフラム18の弾性変形により容積変化を起こすため、疲労寿命に限りがある。
【0048】
本発明では、低圧圧縮と高圧圧縮を異なったタイプの圧縮機で圧縮する。
油圧式圧縮機は、作動油の油圧力によりピストンを駆動する機構を備えており、油圧作動油のシーリング等の制限から、クランク機構を持つピストンクランク式圧縮機に比べ最大サイクル数が小さい。そのためピストンクランク式に比べ、低圧から高圧への昇圧においては圧縮機1台あたりの流量が少なくなる特性がある。
【0049】
しかしながらピストンクランク式は、サイクル数を多くとれることから、低圧からの圧縮において大流量を圧縮できる。
水素ステーションにおいて、ピストンクランク式圧縮機により、80MPa以上の超高圧圧縮は実施されている。
ピストンクランク式圧縮機は、50MPa以下の低圧圧縮の場合と比べ、50MPa以上の高圧対応においては摩耗部品の寿命低下や信頼性低下が懸念される。
これに対して、油圧式圧縮機は高圧領域、超高圧領域において、上記の問題点を含まない点で優れている。
そこで、本発明は、両者の特徴を活かし、前段にクランク式圧縮機、後段に油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機を配置して、高流量で信頼性や実用化に優れる水素ガスの供給方法及びシステムを提供した。
【0050】
次に、図6及び図7に基づき、低圧水素圧縮機(ピストンクランク式圧縮機)と高圧水素圧縮機(油圧式圧縮機)の電動機を共用する態様を説明する。
電動機の共用は、低圧水素圧縮機と高圧水素圧縮の各々に個別の電動機を設けずに、1台の電動機だけを設けるだけで、低圧水素圧縮機と高圧水素圧縮機の双方を駆動し、低圧水素圧縮と高圧水素圧縮を行うことを意味する。
低圧水素圧縮機はピストンクランク式圧縮機であり、高圧水素圧縮機は油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機であるから、電動機の共用という場合には、ピストンクランク式圧縮機と油圧式圧縮機の各々に個別の電動機を設けずに、1台の電動機だけを設けるだけで、ピストンクランク式圧縮機と油圧式圧縮機の双方を駆動し、低圧水素圧縮と高圧水素圧縮を行うことを意味する。
また電動機の共用という場合には、ピストンクランク式圧縮機とダイアフラム式圧縮機の各々に個別の電動機を設けずに、1台の電動機だけを設けるだけで、ピストンクランク式圧縮機とダイアフラム式圧縮機の双方を駆動し、低圧水素圧縮と高圧水素圧縮を行うことを意味する。
【0051】
電動機を共用する場合の具体的な構造について、図6及び図7に基づいて説明する。
図6及び図7に示すように、電動機100の駆動軸101には電動機用プーリ102を設けられ、駆動軸の回転に伴い電動機用プーリ102も回転可能になっている。
【0052】
電動機用プーリ102と、低圧水素圧縮機用プーリ(ピストンクランク式圧縮機用プーリ)103とが低圧水素圧縮機用ベルト(ピストンクランク式圧縮機用ベルト)104を介して接続され、低圧水素圧縮機用プーリ103には低圧水素圧縮機側駆動軸(ピストンクランク式圧縮機側駆動軸)107が接続されている。
【0053】
また、電動機用プーリ102と、高圧水素圧縮機用プーリ(油圧式圧縮機用プーリ)105とが高圧水素圧縮機用ベルト(油圧式圧縮機用ベルト)106を介して接続され、高圧水素圧縮機用プーリ105には、高圧水素圧縮機側駆動軸(油圧式圧縮機側駆動軸)108が接続されている。
【0054】
クランクピストン式圧縮機1は、低圧水素圧縮機側駆動軸107が回転駆動することにより、駆動するように構成されている。
【0055】
油圧式圧縮機2は、高圧水素圧縮機側駆動軸108が回転駆動することにより、高圧水素圧縮機側駆動軸108に接続された歯車172(図4参照)が回転駆動し、油作動流体を加圧するように構成されている。
【0056】
本実施形態では、高圧水素圧縮機2を、油圧式圧縮機に代えてダイアフラム式圧縮機を用いることもできるので、この場合には、ピストン棒13(図5参照)と、高圧水素圧縮機側駆動軸108とが接続されており、高圧水素圧縮機側駆動軸108の回転駆動を、該ピストン棒を往復動に変換させることにより、ダイアフラム18(図5参照)を駆動させるように構成されている。
【0057】
図示の例では、低圧水素圧縮機1は4段圧縮を行う態様が示されているが、本実施形態では、図示はしないが、低圧水素圧縮機1の各段から水素ガス流量を調整するための戻し配管を設けることもできる。高圧水素圧縮機2にも、水素ガス流量を調整するために戻し配管を設けてもよい。
【0058】
図示の例では、低圧水素圧縮機1は4段圧縮を行う態様が示されているが、本実施形態では、図示はしないが、低圧水素圧縮機1の各段から水素ガス流量を調整するための戻し配管を設けることもできる。高圧水素圧縮機2にも、水素ガス流量を調整するために戻し配管を設けてもよい。
【0059】
高圧水素圧縮機側駆動軸108には、電動機100の駆動力の切り離しを可能とするクラッチ109が設けられている。つまり、クラッチ109により電動機100の駆動力をON-OFF制御できる。
【0060】
低圧水素圧縮機1の低圧圧縮を経由して高圧水素圧縮機2の吸込側の配管系統110に至る。
本態様では、低圧水素圧縮機1の低圧圧縮を経由して高圧水素圧縮機2の吸込側に入ることなく高圧水素圧縮機2を迂回して高圧水素圧縮機2の吐出側に至る分岐配管系統111が設けられている。分岐配管系統111には、開閉を制御する制御弁112が設けられている。
【0061】
圧縮機の水素ガスの吐出部近傍には、圧力センサ113が設けられ、吐出圧力を検知できるように構成されている。
【0062】
図6は、クラッチ109が繋がれている態様が示されており、電動機100が駆動すると、駆動軸101が回転駆動し、回転軸101の回転駆動が、低圧水素圧縮機側駆動軸107を回転駆動させ、クランクシャフトを介してピストンの直線往復動に変換され、シリンダ内のピストン上方に充填された水素ガスを圧縮する。
この際、分岐配管系統111に設けられた制御弁112が閉じられているので、低圧水素圧縮機1で圧縮された水素ガスは、高圧水素圧縮機2に至る配管系統110に導入される。
高圧水素圧縮機2は、クラッチ109が繋がれているため、電動機100の駆動軸101の回転駆動により、高圧水素圧縮機側駆動軸108を回転駆動させ、高圧水素圧縮機2により圧縮された高圧の水素ガスを吐出することができる。
【0063】
図7は、クラッチ109が切られた状態が示されており、電動機100が駆動すると、駆動軸101が回転駆動し、駆動軸101の回転駆動が、低圧水素圧縮機側駆動軸107を回転駆動させ、クランクシャフトを介してピストンの直線往復動に変換され、シリンダ内のピストン上方に充填された水素ガスを圧縮する。
この際、分岐配管系統111に設けられた制御弁112は開かれているので、低圧水素圧縮機1で圧縮された水素ガスは、高圧水素圧縮機2に至る配管系統110に入ることなく高圧水素圧縮機2を迂回して分岐配管系統111に導入され、高圧水素圧縮機2の吐出側のラインに至る。
このようにして、高圧水素圧縮機2を起動させることなく、低圧水素圧縮機1により圧縮された低圧水素ガスを吐出することができる。
【0064】
以上のように電動機100は、低圧水素圧縮機1と高圧水素圧縮機2で共有して使用することができるため、各圧縮機に設けられていた電動機が不要となる分、設置スペースを削減するだけでなく、制御が簡単になるので、制御盤の削減や、電気・制御配線の削減ができる。
【0065】
また、共有化した電動機100に連結されている高圧水素圧縮機側駆動軸108にクラッチ109が設けられていることにより、高圧水素圧縮機2を駆動させる必要がないときは、クラッチ109により、電動機100との連結を切り離すことができるため、高圧水素圧縮機2を駆動させないようにすることができる。
これによって、高圧水素圧縮機2の実質稼働時間が短くなるので、高圧水素圧縮機2のメンテナンス期間を延ばすこともでき、この結果、高圧水素圧縮機2の耐用期間が延びるので、圧縮機全体の耐用期間を、低圧水素圧縮機1の耐用期間まで引き延ばすことができる。
【0066】
さらに、2種の圧縮機に使用される水素ガスを冷却するための冷媒を冷却する冷却ファンを含む補機類の共用化ができるため、設置スペースの大幅な削減が可能となる。
【0067】
図6、7の例では、低圧水素圧縮機1は、4段圧縮を行っており、高圧水素圧縮機2は、1段圧縮を行っている例が示されているがこれに限定されない。
図示されていないが、この各段で圧縮された水素ガスを、冷却するための冷媒と熱交換できる仕組みが構築され、この際、冷媒は、図示しない1台の冷却ファンにより冷却されるように、集約される仕組みが構築されている。これにより、冷却ファンが、低圧水素圧縮機1、高圧水素圧縮機2の2種の圧縮機に対して1台の冷却ファンで共有化されるため、設置スペースは大幅に削減される。
【0068】
このように、設置スペースの大幅な削減が可能であるため、20ftコンテナサイズに収まる圧縮機ユニットに形成できる。
【0069】
図8に基づき、本実施形態のシステムの制御フローを説明する。ここでは、図1に示す直充填方式の水素供給の例で説明する。
【0070】
まず、ディスペンサが移動体の水素貯蔵タンクに接続されると、水素貯蔵タンクの要求圧力が検知される(S1)。
【0071】
次に、要求圧力が所定の設定値を上回るか否か判断する(S2)。ここで、所定の設定値は、予め設定された圧力である。
【0072】
本実施形態においては、例えば低圧水素圧縮機を4段、高圧水素圧縮機を1段の計5段で圧縮する場合の例で説明する。
この場合、高圧の吐出圧力を90MPaとし、吸込圧力を3MPaとすると、3MPaを90MPaに昇圧するのに30倍の昇圧を必要とする。30倍を5段で昇圧する場合、各段を等圧で昇圧すると、1段当たり1.98倍となる。
【0073】
吸込圧力が3MPaで、1.98倍の等圧で昇圧すると、第1段吐出圧力は約5.9MPa、第2段吐出圧力は約11.6MPa、第3段吐出圧力は約22.9MPa、第4段吐出圧力は約45.2MPa、第5段吐出圧力は約90MPaとなる。
【0074】
このように、吸込圧力、目標吐出圧力を設計で定めることによって、各段の昇圧する比率を設計で決定できる。
したがって、この決定された複数段における低圧水素圧縮機1の最終段の吐出圧力と同等かその近傍の値を設定圧力として設定とすることにより、圧縮機の供給先の要求圧力(必要圧力)との関係で、後述する高圧水素圧縮機2を用いて圧縮するか否かを判断することができる。
【0075】
要求圧力が所定の設定値以下であった場合(S2のNO)、設定値(設定圧力)より要求圧力が低いことになるので、高圧水素圧縮機2のクラッチ109を切る(クラッチ開)(S3)と共に、制御弁112を開き(S4)、電動機100を起動させ、圧縮機を起動する(S7)。この場合、クラッチ109が切られているため、低圧水素圧縮機1だけが起動し、高圧水素圧縮機2は起動しない。
【0076】
一方、要求圧力が所定の設定値より大きかった場合(S2のYES)、設定値(設定圧力)より要求圧力が高いことになるので、高圧水素圧縮機2のクラッチ109を繋ぐ(クラッチ閉)(S5)と共に、制御弁112を閉じ(S6)、電動機100を起動させ、圧縮機を起動する(S7)。この場合、クラッチ109が繋がれているため、低圧水素圧縮機1、高圧水素圧縮機2が共に起動する。
【0077】
次いで、停止信号を発信する所定の条件を満たしたら、停止信号を発信する停止信号処理がなされる(S8)。
停止信号処理の所定の条件は、例えば、緊急停止ボタンが押される、水素供給の完了等が挙げられる。その他、機械の故障等を検知してもよいし、これらに限定されず、安全性、信頼性を考慮して定められることが好ましい。
【0078】
次いで、停止信号の有無を判断し(S9)、停止信号があった場合には、圧縮機の運転を停止し(S10)、停止信号がなかった場合には、要求圧力を検知(S1)に戻り、停止信号があるまで処理を継続する。
【0079】
なお、上述の実施形態は例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 :低圧水素圧縮機
2 :高圧水素圧縮機
3 :ディスペンサ
4 :移動体
5 :蓄圧器
10 :シリンダ
11 :ピストン
12 :ピストンリング
13 :ピストン棒
14 :接合棒
15 :クランクシャフト
16 :ピストンシール
17 :油作動流体
18 :ダイアフラム
100 :電動機
101 :駆動軸
102 :電動機用プーリ
103 :低圧水素圧縮機用プーリ(ピストンクランク式圧縮機用プーリ)
104 :低圧水素圧縮機用ベルト(ピストンクランク式圧縮機用ベルト)
105 :高圧水素圧縮機用プーリ(油圧式圧縮機用プーリ)
106 :高圧水素圧縮機用ベルト(油圧式圧縮機用ベルト)
107 :低圧水素圧縮機側駆動軸(ピストンクランク式圧縮機側駆動軸)
108 :高圧水素圧縮機側駆動軸(油圧式圧縮機側駆動軸)
109 :クラッチ
110 :配管系統
111 :分岐配管系統
112 :制御弁
113 :圧力センサ
【要約】
【課題】低圧であっても高圧であっても安定して水素圧縮でき、信頼性に優れる水素ガスの供給方法及び水素ガスの供給システムを提供すること。
【解決手段】本発明の水素ガスの供給方法及び供給システムは、水素ガスを圧縮する低圧圧縮機1と高圧圧縮機2を備え、供給先の必要圧力が、低圧領域と高圧領域との領域を有し、該必要圧力に応じて該供給先に供給する水素ガスの供給方法であり、低圧圧縮機1は、ピストンクランク式圧縮機であり、高圧圧縮機2は、油圧式圧縮機又はダイアフラム式圧縮機であり、供給先の必要圧力が低圧領域である場合、低圧圧縮機1によって圧縮された水素ガスを前記供給先に供給することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8