(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ドライフィルムレジスト及び回路パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20250205BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/00 F
(21)【出願番号】P 2024048541
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-05-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】宮本 宣明
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188378(WO,A1)
【文献】特開2017-134246(JP,A)
【文献】国際公開第2008/023712(WO,A1)
【文献】特開2004-198444(JP,A)
【文献】特開2011-215366(JP,A)
【文献】特開2022-000683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体フィルム、感光性樹脂層及び保護フィルムがこの順で積層されたドライフィルムレジストであって、
前記保護フィルムを剥がして前記感光性樹脂層が銅箔と接触するようにラミネートし、露光及び現像
してレジストパターン層を形成した後に前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成
し、次いで前記レジストパターン層を除去するために用いられ、
前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するときに用いられるエッチング液に対するエッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子が前記感光性樹脂層中に分散されている、ドライフィルムレジスト。
【請求項2】
前記感光性樹脂層中の前記粒子の含有量が1~50体積%である、請求項1に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項3】
支持体フィルム、感光性樹脂層及び保護フィルムがこの順で積層されたドライフィルムレジストであって、
前記保護フィルムを剥がして前記感光性樹脂層が銅箔と接触するようにラミネートし、露光及び現像後に前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するために用いられ、
前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するときに用いられるエッチング液に対するエッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子が前記感光性樹脂層中に分散されており、
前記感光性樹脂層は、前記粒子が分散されている領域と、前記粒子が分散されていない領域とを有し、
前記粒子が分散されている領域が前記保護フィルムと接している
、ドライフィルムレジスト。
【請求項4】
前記粒子が分散されている領域中の前記粒子の含有量が1~50体積%である、請求項3に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項5】
前記金属が、ニッケル、コバルト、白金族金属
及び金から選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項6】
前記金属がニッケルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項7】
前記粒子の平均粒径が0.1~1.0μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項8】
前記感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である、請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項9】
前記エッチング液は、塩化第二鉄及び塩化第二銅から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載のドライフィルムレジストの前記保護フィルムを剥がし、前記感光性樹脂層が銅箔と接触するように前記ドライフィルムレジストを積層するラミネート工程と、
前記ドライフィルムレジストに対して所定のパターンで露光する露光工程と、
前記ドライフィルムレジストを現像してレジストパターン層を形成する現像工程と、
前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するエッチング工程と、
前記レジストパターン層を除去するレジストパターン層除去工程と、
を含む回路パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライフィルムレジスト及び回路パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板における回路パターンは、銅箔と樹脂基板とが積層された銅張積層板をリソグラフィ技術により加工することで形成されている。最も一般的な方法としては、フォトリソグラフィによってパターン形成された感光性レジスト層(例えば、ドライフィルム)をマスクとして銅箔をエッチングするサブトラクティブ法が挙げられる。この方法は、銅箔をエッチングすることによって回路パターンが形成されるため、回路パターンの厚み方向断面において、回路パターンの上部よりも底部の幅が大きい台形状となる。したがって、この方法は、プロセスが簡易であるものの、微細な回路パターンを形成するのには適していない。
【0003】
一方、樹脂基板上に、フォトリソグラフィによってパターン形成された感光性レジスト層を設け、銅めっきを施すことにより回路パターンを形成するセミアディティブ法も知られている。この方法は、回路パターンの形状がレジストパターンの精度によって決まるため、微細な回路パターンを形成し易い。しかしながら、この方法は、回路パターンをめっきによって形成する必要があるため、コストがかかるという問題がある。
【0004】
そこで、低コストのサブトラクティブ法であっても、セミアディティブ法のように微細な回路パターンを形成できる方法の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、銅箔のエッチング面側に、銅箔よりエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設けることでエッチングによるダレ(すなわち、銅箔の表面から樹脂基板に向かって末広がりにエッチングされること)を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、銅箔の表面にニッケルなどの異種金属の層を設ける必要があるため、回路パターン形成時に工程数が増加し、手間やコストがかかるという問題がある。
本発明の実施形態は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、回路パターン形成時に工程数を低減でき、しかもエッチングによるダレを抑制することが可能なドライフィルムレジスト及び回路パターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべくドライフィルムレジストに着目して鋭意研究を行った。その結果、エッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子を感光性樹脂層に分散させたドライフィルムレジストを用いることにより、エッチングによるダレを簡易に抑制し得ることを見出し、本発明の実施形態を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の実施形態は、支持体フィルム、感光性樹脂層及び保護フィルムがこの順で積層されたドライフィルムレジストであって、
前記保護フィルムを剥がして前記感光性樹脂層が銅箔と接触するようにラミネートし、露光及び現像してレジストパターン層を形成した後に前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成し、次いで前記レジストパターン層を除去するために用いられ、
前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するときに用いられるエッチング液に対するエッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子が前記感光性樹脂層中に分散されている、ドライフィルムレジストに関する。
【0009】
また、本発明の実施形態は、前記ドライフィルムレジストの前記保護フィルムを剥がし、前記感光性樹脂層が銅箔と接触するように前記ドライフィルムレジストを積層するラミネート工程と、
前記ドライフィルムレジストに対して所定のパターンで露光する露光工程と、
前記ドライフィルムレジストを現像してレジストパターン層を形成する現像工程と、
前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するエッチング工程と、
前記レジストパターン層を除去するレジストパターン層除去工程と、
を含む回路パターン形成方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、回路パターン形成時に工程数を低減でき、しかもエッチングによるダレを抑制することが可能なドライフィルムレジスト及び回路パターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係るドライフィルムレジストの厚み方向断面の模式図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係るドライフィルムレジストの厚み方向断面の模式図である。
【
図3】ソフトエッチング工程、ラミネート工程、露光工程、現像工程、エッチング工程及びレジストパターン層除去工程を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良などを行うことができる。以下の実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、以下の実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
<実施形態1>
(1.ドライフィルムレジスト)
図1は、本発明の実施形態1に係るドライフィルムレジストの厚み方向断面の模式図である。
図1に示されるように、ドライフィルムレジストは、支持体フィルム10、感光性樹脂層20及び保護フィルム30がこの順で積層された構造を有する。
【0014】
(1-1.支持体フィルム10)
支持体フィルム10は、感光性樹脂層20を支持するフィルムである。特に、支持体フィルム10は、回路パターンの形成工程において、銅箔表面に積層されてから現像工程で除去されるまでの感光性樹脂層20の保護や、露光工程時の露光マスクと感光性樹脂層20との接着防止、さらには空気中の酸素侵入拡散による光重合の阻害などを抑制する。
【0015】
支持体フィルム10としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。また、支持体フィルム10は、露光光源から放射される光を透過することが可能な透明なフィルムであることが好ましい。このような支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム、シクロオレフィンポリマー含有ポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムは、単独で用いてもよいし、2種以上を積層した積層フィルムであってもよい。
【0016】
支持体フィルム10は、厚みが10~30μmであることが好ましく、厚みは16~25μmであることがより好ましい。このような厚みであれば、感光性樹脂層20の支持と光透過性の低下抑制とを両立できる。
【0017】
(1-2.感光性樹脂層20)
感光性樹脂層20は、エッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子21が分散されている。このような構成を有する感光性樹脂層20とすることにより、銅箔の表面に銅箔よりもエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設ける場合と同様に、エッチングによるダレを抑制できる。銅箔の表面に銅箔よりもエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設ける技術は、銅箔と異種金属との間の接触腐食効果(ガルバニック効果)を利用することで異方性エッチングを実現していると考えられる。このため銅箔の表面にニッケルなどの異種金属の層を設ける工程を除去しつつエッチングによるダレを抑制するためには、銅箔の表面に設けられるドライフィルムレジストに当該機能を付与すればよい。したがって、エッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子21を感光性樹脂層20中に分散させることにより、銅箔と、ドライフィルムレジスト(特に、感光性樹脂層20中のエッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子21)との間の接触腐食効果を利用した異方性エッチングを実現できる。
【0018】
また、銅箔の表面に銅箔よりもエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設けた場合、その上に積層されるドライフィルムレジストとの密着性が低いため、露光工程及び現像工程によって形成される層のL/S(ライン幅及びスペース幅)が大きくなり、微細な回路パターンを形成することが難しくなることがある。これに対して、感光性樹脂層20を備えるドライフィルムレジストを用いれば、銅箔の表面に銅箔よりもエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設けなくてよく、銅箔とドライフィルムレジストとの密着性も良好であるため、微細な回路パターンを形成することが可能となる。
【0019】
また、銅箔の表面に銅箔よりもエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設けた場合、ドライフィルムレジストとの密着性を向上するために、前処理(ソフトエッチング)が一般的に行われるが、この前処理によって異種金属の層が溶解し過ぎてしまうことがある。この場合、銅箔と異種金属との間の接触腐食効果が十分に得られず、エッチングによるダレが抑制できないことがある。これに対して、感光性樹脂層20を備えるドライフィルムレジストを用いれば、銅箔の表面に銅箔よりもエッチングレートの遅いニッケルなどの異種金属の層を設けなくてよいため、当該問題も生じない。
【0020】
ここで、本明細書において、エッチングレートが銅よりも遅い金属とは、銅箔をエッチングして回路パターンを形成するエッチング工程に用いられるエッチング液(すなわち、銅をエッチングするためのエッチング液)に対するエッチングレートが銅よりも遅い金属のことを意味する。当該エッチング液としては、特に限定されないが、例えば、塩化第二鉄などの塩化鉄系のエッチング液、塩化第二銅などの塩化銅系のエッチング液が挙げられる。
【0021】
エッチングレートが銅よりも遅い金属としては、特に限定されないが、例えば、ニッケル、コバルト、白金族金属、金、銀、又はこれらの金属を含む合金をなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもエッチングレートが銅よりも遅い金属は、ニッケル、コバルト、白金族金属、金及び銀から選択される1種以上であることが好ましく、ニッケルであることがより好ましい。
合金の場合、上記の金属を主成分とすることが好ましい。ここで、本明細書において「主成分」とは、全成分中で占める割合が50質量%を超えることを意味する。
また、合金の例としては、Co-P、Ni-P、Co-Ni、Co-Zn、Ni-Zn、Cu-Ni、Pt-Zn、Pt-P、Pt-Mo、Pt-W、Pt-Fe、Pt-Coなどが挙げられる。これらの合金の中でも、銅箔との馴染みが良いという観点から、銅を含む合金であることが好ましい。
【0022】
感光性樹脂層20の厚みは、特に限定されないが、1~20μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましい。この範囲に厚みを制御することにより、露光工程及び現像工程によって所望のレジストパターンが得られ易くなる。
【0023】
感光性樹脂層20中の粒子21の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~50体積%、より好ましくは10~50体積%、更に好ましくは20~50体積%、特に好ましくは30~50体積%である。粒子21の含有量を1体積%以上とすることにより、感光性樹脂層20に導電性を安定して付与し得る。また、粒子21の含有量を50体積%以下とすることにより、露光工程において粒子21による光の散乱を抑制できるため、所望のレジストパターンが得られ易い。
【0024】
感光性樹脂層20中の粒子21の含有量は、感光性樹脂層20の断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察し、得られた画像から算出する。より具体的には、画像処理ソフトウェア(ImageJ:オープンソース、開発元:アメリカ国立衛生研究所)を用いて粒子21が占める面積、及び粒子21を含む感光性樹脂層20の面積を算出し、粒子21が占める面積の感光性樹脂層20の面積に対する割合を感光性樹脂層20中の粒子21の含有量(体積%)として算出する。
【0025】
感光性樹脂層20中の粒子21は、必ずしも表面に露出している必要はないが、保護フィルム30側の表面(回路パターン形成方法において、保護フィルム30を剥がして銅箔と接触させる表面)から粒子21までの距離が0.1nm以下であることが好ましく、保護フィルム30側の表面に粒子21が露出していることが好ましい。このような構成とすることにより、銅箔とドライフィルムレジストとの間の接触腐食効果を利用した異方性エッチングを安定して得ることができる。
また、感光性樹脂層20中の粒子21は、露光不良を抑制する観点から均一に分散されていることが好ましい。
【0026】
粒子21の形状としては、特に限定されず、球状、立方体状、板状、薄片状、柱状、棒状、針状などの各種形状であり得るが、球状であることが好ましい。球状の粒子21とすることにより、感光性樹脂層20中に均一に分散させ易くなるとともに、露光時に光が散乱しづらくなるため、所望のレジストパターンが得られ易くなる。
【0027】
粒子21の平均粒径は、特に限定されないが、0.1~1.0μmであることが好ましい。粒子21の平均粒径を0.1μm以上とすることにより、粒子間の凝集を抑制し、感光性樹脂層20に粒子21を均一に分散させ易くなる。また、粒子21の平均粒径を1.0μm以下に制御することにより、粒子21の表面積を大きくできるため、粒子21の割合を少なくしても導電性を効率良く発現できる。
ここで、本明細書において、粒子21の平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒子径ヒストグラムで累積頻度が50%になるときの50%粒子径D50(メディアン径)を意味する。
【0028】
粒子21は、感光性樹脂層20との親和性を高めるために、換言すれば、感光性樹脂層20における粒子21の均一分散のために、有機物による表面処理がなされていてもよい。例えば、粒子21が分散した分散液中に一般式:(M)A-(CH2)n-Si(OR1)3で表されるメタアクリロイル基を有する化合物と一般式:R2-Si(OR3)3で表されるアルキル基を有するトリアルコキシシラン化合物とからなるシランカップリング剤を添加・攪拌・乾燥させる表面処理を行なうことができる。なお、上記の一般式中、(M)Aは(メタ)アクリロイル基、R1は炭素数1~4のアルキル基、nは1~4の整数、R2は炭素数10以下のアルキル基、R3は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0029】
感光性樹脂層20を構成する感光性樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。感光性樹脂は、露光(感光)した部分が現像液に溶解し且つ露光していない部分が現像液に溶解しないポジ型、露光した部分が現像液に対して溶解せず且つ露光していない部分が現像液に溶解するネガ型のいずれも用いることができるが、プリント配線板の製造プロセスで用いられる感光性レジストはネガ型が用いられることが多い。
ネガ型感光性樹脂は、特に限定されないが、バインダーポリマー、(メタ)アクリル系化合物、光重合開始剤を一般的に含む。
バインダーポリマーは、フィルム形成能を付与するために配合されるポリマー成分である。ポリマー成分とは、重量平均分子量が5,000以上のオリゴマー、ポリマー成分を指す。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー株式会社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
本発明で用いるバインダーポリマーとしては、特に限定されないが、アルカリ水溶液に可溶又は膨潤可能であることが好ましいため、ポリマー鎖中にカルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性官能基を含有することが好ましい。酸性官能基を有するバインダーポリマーとしては、カルボキシル基含有ビニル系ポリマー、ポリアミド酸、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを挙げることができ、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。その中でも、カルボキシル基含有ビニルポリマーは、柔軟性、アルカリ溶解性に優れた感光性樹脂層20を形成することができる。
【0030】
カルボキシル基含有ビニル系ポリマーは、カルボキシル基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマーを公知の方法によって共重合させることによって得ることができる。
カルボキシル基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、ビニル安息香酸、桂皮酸、プロピオール酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸無水物、フタル酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、コスト、重合性などの観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコール類、スチレン、スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、重合性、可撓性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、スチレン誘導体を用いることが好ましい。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
(メタ)アクリル系化合物は、感光性樹脂に含有させることにより、良好な硬化性を付与するだけでなく、感光性ドライフィルムレジストの熱加工時での粘弾性を下げ、熱ラミネート時の流動性を付与することができる。すなわち、比較的低温での熱ラミネートが可能となり、回路の凹凸を埋め込むことができる。
(メタ)アクリル系化合物としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを指すものとする。
【0032】
(メタ)アクリル系化合物の具体例としては、ビスフェノールF EO変性(n=2~50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2~50)ジアクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2~50)ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β-メタクロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β-メタクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β-アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ1,3ジメタクロキシプロパン、2,2-ビス[4-(メタクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2-ビス[4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2-ヒドロキシ1-アクリロキシ3-メタクロキシプロパン、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1-アクリロイルオキシプロピル-2-フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールメタクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2-ビス[4-(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトレアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリアリル1,3,5-ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3-ジアリロキシ-2-プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’-イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’-イソプロピリデンジフェノールジアクリレートなどを挙げることができる。なお、架橋密度を向上させるためには、特に2官能以上のモノマーを用いることが好ましい。
【0033】
感光性樹脂に含有される(メタ)アクリル系化合物の量は、特に限定されないが、バインダーポリマー100質量部に対して、1~400質量部であることが好ましく、3~300質量部であることがより好ましく、1~200質量部であることが更に好ましく、1~100質量部であることが特に好ましい。
【0034】
光重合開始剤は、露光工程時において活性光線によりラジカルを発生し、重合反応を促進する成分である。これにより、露光領域と未露光領域とで、感光性ドライフィルムレジストの現像液への溶解性が十分に異なるようにすることができ、それゆえに、感光性ドライフィルムレジスト上にパターンを好適に現像することが可能になる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、300~400nmの波長領域で重合反応し、450nm以上の可視光では重合反応しないことが好ましい。露光工程時の光の波長が300nm未満の場合、支持体フィルム10で光が吸収されて感光性樹脂層20まで光が到達しない可能性があるためである。また、光の波長が450nm以上の可視光で感光性樹脂層20が感光してしまうと、紫外線を除く部屋(イエロールーム)で作業を行なう必要があるためである。
【0035】
光重合開始剤の例としては、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、N-アリール-α-アミノ酸化合物、キノン化合物、芳香族ケトン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ジアルキルケタール化合物、チオキサントン化合物、ジアルキルアミノ安息香酸エステル化合物、オキシムエステル化合物、アクリジン化合物、ピラゾリン誘導体、N-アリールアミノ酸のエステル化合物、ハロゲン化合物などが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
感光性樹脂に含有される光重合開始剤の量は、特に限定されないが、バインダーポリマー100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
【0037】
ネガ型感光性樹脂は、上記の成分に加えて、当該技術分野において公知の成分(例えば、染料、密着材、可塑剤、熱重合禁止剤、フィラー、難燃剤、保存安定剤、イオン補足剤など)を更に含むことができる。公知の成分の配合割合は、本発明の効果を阻害しない範囲であればよく特に限定されない。
【0038】
染料は、感光性樹脂層20の露光後のパターン検査を容易にするために、紫外線で発色する染料であることが好ましい。このような染料としては、例えば、ロイコ染料やフルオラン染料が挙げられる。
可塑剤は、感光性樹脂層20の柔軟性や加熱時の流動性を向上させる成分である。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル化合物、o-トルエンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチルが挙げられる。
密着材は、銅箔との密着性を向上させる成分である。密着材としては、例えば、ビスフェノールAのエポキシ化合物が挙げられる。
【0039】
(1-3.保護フィルム30)
保護フィルム30は、感光性樹脂層20を保護するフィルムである。したがって、回路パターン形成方法で用いる場合には、ドライフィルムレジストから保護フィルム30を剥がして用いられる。
保護フィルム30としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。また、保護フィルム30は、感光性樹脂層20に対して適切な密着力を有することが好ましい。すなわち、保護フィルム30の感光性樹脂層20に対する密着力が、支持体フィルム10の感光性樹脂層20に対する密着力よりも十分小さく、支持体フィルム10が感光性樹脂層20から容易に剥離できることが好ましい。
【0040】
保護フィルム30の例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルム、ポリエステルフィルムなどを用いることができる。
保護フィルム30の厚みは、特に限定されないが、10~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。
なお、保護フィルム30の感光性樹脂層20と接する側には、保護フィルム30を剥がし易くする観点から、必要に応じて公知の離型層を設けてもよい。
【0041】
(2.ドライフィルムレジストの製造方法)
ドライフィルムレジストは、支持体フィルム10上に、感光性樹脂層20及び保護フィルム30を順次積層することによって製造できる。その方法としては、当該技術分野において公知の方法に準じて行うことができる。例えば、次のようにしてドライフィルムレジストを製造できる。まず、バインダーポリマー、(メタ)アクリル系化合物、光重合開始剤などを含む感光性樹脂組成物を有機溶媒と混合した後、粒子21を添加して混合することにより、溶液状の感光性樹脂組成物調合液(塗工液)を作製する。必要に応じて当該塗工液を3本ロールに通すなどの混錬・分散処理を行なってもよい。次に、支持体フィルム10上に、塗工液をバーコータやロールコーターなどを用いて塗布し、次いで乾燥して、支持体フィルム10上に感光性樹脂層20を積層することができる。次に、感光性樹脂層20上に保護フィルム30をラミネートすることにより、ドライフィルムレジストを作製することができる。
【0042】
<実施形態2>
(1.ドライフィルムレジスト)
図2は、本発明の実施形態2に係るドライフィルムレジストの厚み方向断面の模式図である。なお、本発明の実施形態2に係るドライフィルムレジストの説明の中で登場した符号と同一の符号を有する構成要素は、本発明の実施形態2に係るドライフィルムレジストの構成要素と同一であるので、その説明を省略する。
【0043】
図2に示されるように、ドライフィルムレジストは、支持体フィルム10、感光性樹脂層20及び保護フィルム30がこの順で積層された構造を有する。また、感光性樹脂層20は、粒子21が分散されている領域Aと、粒子21が分散されていない領域Bとを有する。これらの領域は、ドライフィルムレジストの厚み方向に直交する層状に形成されていることが好ましい。また、粒子21が分散されている領域Aが保護フィルム30と接している。このように感光性樹脂層20を設けた場合であっても、保護フィルム30を剥がして銅箔の表面に設ける場合に、銅箔側の感光性樹脂層20に粒子21が存在するため、実施形態1のドライフィルムレジストと同様の作用効果が得られる。また、実施形態1のドライフィルムレジストは、感光性樹脂層20の全体に粒子21を分散させているため、露光工程時に粒子21によって光が反射し、所定の部分以外も露光されてしまったり、露光が不十分となったりする恐れがある。しかしながら、上記のような構成とすることにより、感光性樹脂層20の全体に粒子21を分散させる必要がないことに起因して粒子21の使用量を低減できる結果、これらの問題を解決し得る。
なお、粒子21が分散されている領域A及び粒子21が分散されていない領域Bを構成する感光性樹脂は、同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
ここで、
図2では、各領域を理解し易くするために、粒子21が分散されている領域Aと、粒子21が分散されていない領域Bとを区別して記載しているが、実際の感光性樹脂層20では当該領域A,Bの境界が判別し難いことがある点に留意すべきである。例えば、各領域A,Bを構成する樹脂成分が同一又は類似する場合、当該領域A,Bの境界が判別し難い。この場合、感光性樹脂層20の厚み方向断面において、支持体フィルム10の表面と平行な直線が粒子21と接触する部分と、支持体フィルム10の表面と平行な直線が粒子21と接触しない部分との境界を当該領域A,Bの境界とする。
【0045】
粒子21が分散されている領域中の粒子21の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~50体積%、より好ましくは10~50体積%、更に好ましくは20~50体積%、特に好ましくは30~50体積%である。粒子21の含有量を1体積%以上とすることにより、粒子21が分散されている領域に導電性を安定して付与し得る。また、粒子21の含有量を50体積%以下とすることにより、露光工程において粒子21による光の散乱を抑制できるため、所望のレジストパターンが得られ易い。
【0046】
粒子21が分散されている領域中の粒子21は、必ずしも表面に露出している必要はないが、保護フィルム30側の表面(回路パターン形成方法において、保護フィルム30を剥がして銅箔と接触させる表面)から粒子21までの距離が0.1nm以下であることが好ましく、保護フィルム30側の表面に粒子21が露出していることが好ましい。このような構成とすることにより、銅箔とドライフィルムレジストとの間の接触腐食効果を利用した異方性エッチングを安定して得ることができる。
【0047】
(2.ドライフィルムレジストの製造方法)
ドライフィルムレジストは、支持体フィルム10上に、感光性樹脂層20及び保護フィルム30を順次積層することによって製造できる。その方法としては、当該技術分野において公知の方法に準じて行うことができる。例えば、次のようにしてドライフィルムレジストを製造できる。まず、バインダーポリマー、(メタ)アクリル系化合物、光重合開始剤などを含む感光性樹脂組成物を有機溶媒と混合して溶液状の感光性樹脂組成物調合液(第1塗工液)を作製する。次に、バインダーポリマー、(メタ)アクリル系化合物、光重合開始剤などを含む感光性樹脂組成物を有機溶媒と混合した後、粒子21を添加して混合することにより、溶液状の感光性樹脂組成物調合液(第2塗工液)を作製する。次に、支持体フィルム10上に、第1塗工液をバーコータやロールコーターなどを用いて塗布し、次いで乾燥して、支持体フィルム上に粒子21が分散されていない領域を形成する。次に、粒子21が分散されていない領域上に、第2塗工液をバーコータやロールコーターなどを用いて塗布し、次いで乾燥して、粒子21が分散されていない領域上に領域を粒子21が分散されている領域を形成する。このようにして支持体フィルム10上に2つの領域を有する感光性樹脂層20を積層することができる。次に、感光性樹脂層20上に保護フィルム30をラミネートすることにより、ドライフィルムレジストを作製することができる。
【0048】
<実施形態3>
本発明の実施形態に係る回路パターン形成方法は、ラミネート工程と、露光工程と、現像工程と、エッチング工程と、レジストパターン層除去工程とを含む。また、本発明の実施形態に係る回路パターン形成方法は、必要に応じて、ラミネート工程の前にソフトエッチング工程を更に含んでもよい。
図3は、ソフトエッチング工程、ラミネート工程、露光工程、現像工程、エッチング工程及びレジストパターン層除去工程を説明するための概略断面図(厚み方向の概略断面図)である。
以下、各工程について説明する。
【0049】
<ソフトエッチング工程>
ソフトエッチング工程は、
図3(a)に示されるように、銅箔110と銅箔110の一方の面に接着された樹脂基板120とを備える銅張積層板100を準備し、銅張積層板100の銅箔110をソフトエッチングする工程である。銅箔110をソフトエッチングすることにより、銅箔110の表面を粗面化させることができるため、次工程のラミネート工程において、アンカー効果によってドライフィルムレジストとの密着性を高めることができる。なお、
図3(a)は銅箔110をソフトエッチングした後の状態を表している。
【0050】
ソフトエッチングの方法としては、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、パドル法などの公知の方法を用いることができる。例えば、浸漬法を用いる場合、ソフトエッチング液に銅張積層板100を浸漬することによって行うことができる。
ソフトエッチング液としては、銅箔110の表面を粗面化することが可能なものであれば特に限定されない。ソフトエッチング液の例としては、硫酸及び過酸化水素を含む水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液などを用いることができる。また、市販のソフトエッチング液を用いてもよい。
ソフトエッチング液の温度及び処理時間は、使用するソフトエッチング液の種類などに応じて適宜調整すればよく特に限定されない。
【0051】
なお、ソフトエッチングに用いられる銅張積層板100としては、特に限定されず、プレス法、キャスト法、ラミネート法、メタライジング法などの公知の方法によって作製されたものを用いることができる。また、銅張積層板100を構成する銅箔110についても、特に限定されず、圧延銅箔、電解銅箔のいずれであってもよい。さらに、銅張積層板100を構成する樹脂基板120についても、特に限定されず、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂、ガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂などの公知のものを用いることができる。
【0052】
<ラミネート工程>
ラミネート工程は、
図3(b)に示されるように、ドライフィルムレジストの保護フィルム30を剥がし、感光性樹脂層20が銅箔110と接触するようにドライフィルムレジストを積層する工程である。なお、
図3(b)は、ラミネート工程後の状態を表している。また、感光性樹脂層20に分散された粒子21は省略している。
積層方法としては、特に限定されないが、銅箔110上にドライフィルムを配置して圧着すればよい。このときの条件は、特に限定されず、従来公知の条件に準じて行えばよい。
【0053】
<露光工程>
露光工程は、
図3(c)に示されるように、ドライフィルムレジストに対して所定のパターンで露光する工程である。具体的には、ドライフィルムレジストの支持体フィルム10を介して感光性樹脂層20に所定のパターンで露光して露光部50を形成する。
ここで、
図3(c)は、ネガ型の感光性樹脂層20を有するドライフィルムレジストを設けた場合の例であり、所定のパターンで露光することにより、露光部50が光重合反応して現像液に対して溶解しないようになる。
【0054】
露光方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、必要なサイズの光束を所定のパターンが描画されたマスクを介して感光性樹脂層20へ照射するマスク露光方式や、レーザー光をポリゴンミラー又はデジタルミラーデバイス(DMD)を用いて所定のパターンを照射するレーザー直描方式などを用いて露光を行えばよい。
【0055】
<現像工程>
現像工程は、
図3(d)に示されるように、ドライフィルムレジストを現像してレジストパターン層60を形成する工程である。具体的には、ドライフィルムレジストを現像することによって、支持体フィルム10及び感光性樹脂層20の未露光部を除去し、レジストパターン層60を形成する。
【0056】
現像方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ネガ型の感光性樹脂層20を有するドライフィルムレジストを設けた場合、未露光部を溶解させることが可能な現像液で処理することにより、未露光部を溶解させて除去することができる。現像液の種類は、使用したドライフィルムレジストの感光性樹脂層20の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0057】
<エッチング工程>
エッチング工程は、
図3(e)に示されるように、銅箔110をエッチングして回路パターン70を形成する工程である。具体的には、レジストパターン層60が表面に形成されていない部分の銅箔110をエッチングして回路パターン70を形成する。
このエッチング工程では、感光性樹脂層20に粒子21が分散されたドライフィルムレジストを用いているため、銅箔110の表面から樹脂基板120に向かって末広がりにエッチングされることを抑制でき、エッチングファクタが高い回路パターン70を形成することができる。
【0058】
エッチング方法としては、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、パドル法などの公知の方法を用いることができる。
エッチング工程に用いられるエッチング液としては、特に限定されないが、例えば、塩化第二鉄などの塩化鉄系のエッチング液、塩化第二銅などの塩化銅系のエッチング液を用いることができる。
なお、エッチングの条件は、使用するエッチング液の種類などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
【0059】
<レジストパターン層除去工程>
レジストパターン層除去工程は、
図3(f)に示されるように、レジストパターン層60を除去する工程である。
回路パターン70上に残ったレジストパターン層60は不要な層であるため、この工程によってレジストパターン層60を除去する。レジストパターン層60の除去方法としては、特に限定されず、レジストパターン層60を溶解可能な溶液を用いて溶解させればよい。
【0060】
したがって、本発明の実施形態によれば、以下の[1]~[9]の態様とすることにより、回路パターン形成時に工程数を低減でき、しかもエッチングによるダレを抑制することが可能なドライフィルムレジスト及び回路パターン形成方法を提供することができる。
【0061】
[1] 支持体フィルム、感光性樹脂層及び保護フィルムがこの順で積層されたドライフィルムレジストであって、
エッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子が前記感光性樹脂層中に分散されている、ドライフィルムレジスト。
【0062】
[2] 前記感光性樹脂層中の前記粒子の含有量が1~50体積%である、[1]に記載のドライフィルムレジスト。
【0063】
[3] 前記感光性樹脂層は、前記粒子が分散されている領域と、前記粒子が分散されていない領域とを有し、
前記粒子が分散されている領域が前記保護フィルムと接している、[1]に記載のドライフィルムレジスト。
【0064】
[4] 前記粒子が分散されている領域中の前記粒子の含有量が1~50体積%である、[3]に記載のドライフィルムレジスト。
【0065】
[5] 前記金属が、ニッケル、コバルト、白金族金属、金及び銀から選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれか一つに記載のドライフィルムレジスト。
【0066】
[6] 前記金属がニッケルである、[1]~[4]のいずれか一つに記載のドライフィルムレジスト。
【0067】
[7] 前記粒子の平均粒径が0.1~1.0μmである、[1]~[6]のいずれか一つに記載のドライフィルムレジスト。
【0068】
[8] 前記感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である、[1]~[7]のいずれか一つに記載のドライフィルムレジスト。
【0069】
[9] [1]~[8]のいずれか一つに記載の前記ドライフィルムレジストの前記保護フィルムを剥がし、前記感光性樹脂層が銅箔と接触するように前記ドライフィルムレジストを積層するラミネート工程と、
前記ドライフィルムレジストに対して所定のパターンで露光する露光工程と、
前記ドライフィルムレジストを現像してレジストパターン層を形成する現像工程と、
前記銅箔をエッチングして回路パターンを形成するエッチング工程と、
前記レジストパターン層を除去するレジストパターン層除去工程と、
を含む回路パターン形成方法。
【符号の説明】
【0070】
10 支持体フィルム
20 感光性樹脂層
21 粒子
30 保護フィルム
50 露光部
60 レジストパターン層
70 回路パターン
100 銅張積層板
110 銅箔
120 樹脂基板
【要約】
【課題】回路パターン形成時に工程数を低減でき、しかもエッチングによるダレを抑制することが可能なドライフィルムレジストを提供する。
【解決手段】支持体フィルム10、感光性樹脂層20及び保護フィルム30がこの順で積層されたドライフィルムレジストである。エッチングレートが銅よりも遅い金属を含有する粒子21が感光性樹脂層20中に分散されている。
【選択図】
図1