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特許7629602作業支援システム、作業支援方法、及び作業支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】作業支援システム、作業支援方法、及び作業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/00 20060101AFI20250206BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20250206BHJP
   B64U 10/14 20230101ALI20250206BHJP
   B64U 10/60 20230101ALI20250206BHJP
   B66D 1/50 20060101ALI20250206BHJP
   B64U 101/26 20230101ALN20250206BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C13/20 Z
B64U10/14
B64U10/60
B66D1/50 A
B64U101:26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024187818
(22)【出願日】2024-10-24
(62)【分割の表示】P 2023151652の分割
【原出願日】2023-09-19
【審査請求日】2024-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501267357
【氏名又は名称】国立研究開発法人建築研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二村 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 考
(72)【発明者】
【氏名】川前 勝三郎
(72)【発明者】
【氏名】古藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 紘太朗
(72)【発明者】
【氏名】兼松 学
(72)【発明者】
【氏名】宮内 博之
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/058329(WO,A1)
【文献】特許第7007678(JP,B1)
【文献】特開2019-167044(JP,A)
【文献】特開2018-188034(JP,A)
【文献】特開2021-167152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/00
B64U 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場において移動体を支持する作業支援システムであって、
前記作業支援システムは、記憶部と、受付部と、算出部と、送信部と、を備え、
前記記憶部は、ガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置の位置情報を格納し、
前記ワイヤー制御装置は、前記ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御し、
前記受付部は、前記複数のガイドワイヤーに支持される移動体の位置情報を受け付け、
前記算出部は、前記ワイヤー制御装置の位置情報、及び、前記移動体の位置情報、を用いて、前記ワイヤー制御装置と前記移動体との距離を算出することによって、前記移動体を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出し、更に、前記移動体が実行している作業の情報である作業情報を用いて、前記移動体を支持するガイドワイヤーにかける実行作業張力を算出し、
前記送信部は、前記巻き取り量及び/又は送り出し量を前記ワイヤー制御装置に送信し、更に、前記実行作業張力を前記ワイヤー制御装置に送信する、
作業支援システム。
【請求項2】
前記ワイヤー制御装置は、第1ワイヤー制御装置、及び、第2ワイヤー制御装置、を含み、
前記受付部は、更に、前記第1ワイヤー制御装置から前記ガイドワイヤーの送り出し量を受け付け、
前記算出部は、更に、前記第1ワイヤー制御装置から受け付けた送り出し量を用いて、前記第2ワイヤー制御装置の巻き取り量を算出し、
前記送信部は、更に、前記巻き取り量を前記第2ワイヤー制御装置に送信する、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記算出部は、更に、前記移動体と前記ガイドワイヤーが接触する接触点、及び、前記移動体の重心点、を用いて、前記距離を算出する、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記算出部は、更に、前記ガイドワイヤーの長さ、太さ、及び、前記ガイドワイヤーにかかる風速、を用いて、前記ガイドワイヤーにかかる風荷重を算出し、更に、前記風荷重を用いて、前記ガイドワイヤーにかける張力を算出し、
前記送信部は、更に、前記ガイドワイヤーにかける張力を前記ワイヤー制御装置に送信する、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記ワイヤー制御装置は、前記移動体が移動可能な範囲よりも上方に設置される上方ワイヤー制御装置、を含む、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記送信部は、更に、前記移動体から通信が途絶えた場合、前記移動体の位置を固定するための前記ガイドワイヤーにかける緊急固定張力を前記ワイヤー制御装置に送信する、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項7】
前記記憶部は、更に、前記ワイヤー制御装置のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量の限界、又は、前記ガイドワイヤーの長さの限界、を格納し、
前記算出部は、更に、前記限界を用いて、前記巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項8】
作業現場において移動体を支持する作業支援システムが実行する作業支援方法であって、
ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置の位置情報を格納する記憶工程と、
前記複数のガイドワイヤーに支持される移動体の位置情報を受け付ける受付工程と、
前記ワイヤー制御装置の位置情報、及び、前記移動体の位置情報、を用いて、前記ワイヤー制御装置と前記移動体との距離を算出することによって、前記移動体を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出し、更に、前記移動体が実行している作業の情報である作業情報を用いて、前記移動体を支持するガイドワイヤーにかける実行作業張力を算出する算出工程と、
前記巻き取り量及び/又は送り出し量を前記ワイヤー制御装置に送信し、更に、前記実行作業張力を前記ワイヤー制御装置に送信する送信工程と、をコンピュータが実行する、
作業支援方法。
【請求項9】
作業現場において移動体を支持する作業支援プログラムであって、
記憶部を有するコンピュータを、受付部と、算出部と、送信部と、として機能させ、
前記記憶部は、ガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置の位置情報を格納し、
前記ワイヤー制御装置は、前記ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御し、
前記受付部は、前記複数のガイドワイヤーに支持される移動体の位置情報を受け付け、
前記算出部は、前記ワイヤー制御装置の位置情報、及び、前記移動体の位置情報、を用いて、前記ワイヤー制御装置と前記移動体との距離を算出することによって、前記移動体を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出し、更に、前記移動体が実行している作業の情報である作業情報を用いて、前記移動体を支持するガイドワイヤーにかける実行作業張力を算出し、
前記送信部は、前記巻き取り量及び/又は送り出し量を前記ワイヤー制御装置に送信し、更に、前記実行作業張力を前記ワイヤー制御装置に送信する、
作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援システム、作業支援方法、及び作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人飛行体にケーブルを接続し、無人飛行体の飛行を安定させつつ構造物の点検を行う技術が存在する。
【0003】
例えば特許文献1には、1本のケーブルが接続された無人飛行体を制御する技術が開示されている。また、特許文献1には、無人飛行体の飛行位置を利用してケーブルを制御する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6790932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在無人飛行体を含む移動体による作業をより安定させる技術の開発が進められている。移動体による作業をより安定させるには、複数のケーブルに接続させる必要がある。しかしながら特許文献1の技術では、接続された1本のケーブルを制御することはできる一方、相互の関係が複雑な複数のケーブルを制御することは困難である。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、複数のケーブルを適切に制御することによって、移動体による作業を支援する新たな技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、作業現場において移動体を支持する作業支援システムであって、
前記作業支援システムは、記憶部と、受付部と、算出部と、送信部と、を備え、
前記記憶部は、ガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置の位置情報を格納し、
前記ワイヤー制御装置は、前記ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御し、
前記受付部は、前記複数のガイドワイヤーに支持される移動体の位置情報を受け付け、
前記算出部は、前記ワイヤー制御装置の位置情報、及び、前記移動体の位置情報、を用いて、前記ワイヤー制御装置と前記移動体との距離を算出することによって、前記移動体を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出し、
前記送信部は、前記巻き取り量及び/又は送り出し量を前記ワイヤー制御装置に送信する。
【0008】
また、本発明は、作業現場において移動体を支持する作業支援システムが実行する作業支援方法であって、
ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置の位置情報を格納する記憶工程と、
前記複数のガイドワイヤーに支持される移動体の位置情報を受け付ける受付工程と、
前記ワイヤー制御装置の位置情報、及び、前記移動体の位置情報、を用いて、前記ワイヤー制御装置と前記移動体との距離を算出することによって、前記移動体を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する算出工程と、
前記巻き取り量及び/又は送り出し量を前記ワイヤー制御装置に送信する送信工程と、をコンピュータが実行する。
【0009】
また、本発明は、作業現場において移動体を支持する作業支援プログラムであって、
記憶部を有するコンピュータを、受付部と、算出部と、送信部と、として機能させ、
前記記憶部は、ガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置の位置情報を格納し、
前記ワイヤー制御装置は、前記ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御し、
前記受付部は、前記複数のガイドワイヤーに支持される移動体の位置情報を受け付け、
前記算出部は、前記ワイヤー制御装置の位置情報、及び、前記移動体の位置情報、を用いて、前記ワイヤー制御装置と前記移動体との距離を算出することによって、前記移動体を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出し、
前記送信部は、前記巻き取り量及び/又は送り出し量を前記ワイヤー制御装置に送信する。
【0010】
このような構成とすることで、移動体の位置情報を用いて複数のガイドワイヤーを制御することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記ワイヤー制御装置は、第1ワイヤー制御装置、及び、第2ワイヤー制御装置、を含み、
前記受付部は、更に、前記第1ワイヤー制御装置から前記ガイドワイヤーの送り出し量を受け付け、
前記算出部は、更に、前記第1ワイヤー制御装置から受け付けた送り出し量を用いて、前記第2ワイヤー制御装置の巻き取り量を算出し、
前記送信部は、更に、前記巻き取り量を前記第2ワイヤー制御装置に送信する。
【0012】
このような構成とすることで、ガイドワイヤーが緩みすぎることを防ぐことができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記算出部は、更に、前記移動体と前記ガイドワイヤーが接触する接触点、及び、前記移動体の重心点、を用いて、前記距離を算出する。
【0014】
このような構成とすることで、より精度の良い巻き取り量及び/又は送り出し量を算出することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記算出部は、更に、前記ガイドワイヤーの長さ、太さ、及び、前記ガイドワイヤーにかかる風速、を用いて、前記ガイドワイヤーにかかる風荷重を算出し、更に、前記風荷重を用いて、前記ガイドワイヤーにかける張力を算出し、
前記送信部は、更に、前記ガイドワイヤーにかける張力を前記ワイヤー制御装置に送信する。
【0016】
このような構成とすることで、ガイドワイヤーが受ける風の影響を考慮した移動体の制御を行うことができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記ワイヤー制御装置は、前記移動体が移動可能な範囲よりも上方に設置される上方ワイヤー制御装置、を含む。
【0018】
このような構成とすることで、移動体の駆動部(例えば、ドローンのプロペラ等)がガイドワイヤーを巻き込むことを抑制することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記算出部は、更に、前記移動体が実行している作業の情報である作業情報を用いて、前記移動体を支持するガイドワイヤーにかける実行作業張力を算出し、
前記送信部は、更に、前記実行作業張力を前記ワイヤー制御装置に送信する。
【0020】
このような構成とすることで、移動体が実行している作業の内容を考慮した移動体の制御を行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記送信部は、更に、前記移動体から通信が途絶えた場合、前記移動体の位置を固定するための前記ガイドワイヤーにかける緊急固定張力を前記ワイヤー制御装置に送信する。
【0022】
このような構成とすることで、移動体に対する異常を検知した場合、移動体を固定することができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記記憶部は、更に、前記ワイヤー制御装置のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量の限界、又は、前記ガイドワイヤーの長さの限界、を格納し、
前記算出部は、更に、前記限界を用いて、前記巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。
【0024】
このような構成とすることで、ガイドワイヤーの制御によって、移動体が侵入できない範囲を設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数のケーブルを適切に制御することによって、移動体による作業を支援する新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る作業支援システムのシステム構成図を示す。
図2】本発明の実施形態に係る作業支援装置のハードウェア構成図を示す。
図3】本発明の実施形態に係るデータベースの一例を示す。
図4】本発明の実施形態に係る作業支援の処理フローチャートを示す。
図5】本発明の実施形態1に係る作業支援の正面図を示す。
図6】本発明の実施形態1に係る作業支援の側面図を示す。
図7】本発明の実施形態2に係る作業支援の正面図を示す。
図8】本発明の実施形態2に係る作業支援の拡大図を示す。
図9】本発明の実施形態3に係る作業支援の正面図を示す。
図10】本発明の実施形態4に係る作業支援の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書は、一実施形態に係る作業支援システム、作業支援装置及び作業支援方法について、図面を交えて、説明する。本発明は、以下の一実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用し得る。
【0028】
本明細書は、作業支援システム及び作業支援方法の構成や作用効果等について説明するが、同様の構成の方法、コンピュータのプログラム、当該プログラムを記録したプログラム記録媒体等も同様の作用効果を奏する。プログラム記録媒体を用いれば、既知のコンピュータ装置に当該プログラムをインストールすることができる。以下で説明する一実施形態にかかる一連の処理は、コンピュータで実行可能なプログラムとして提供され、CD-ROMやフレキシブルディスクなどの非一過性コンピュータ可読媒体、更には通信回線を経て提供可能である。
【0029】
作業支援システムの各機能構成部と、作業支援方法の各工程と、は同様の作用効果を実現する。作業支援システム、作業支援プログラム及びプログラム記録媒体のそれぞれにおける各機能構成部は、CPU等の演算装置により実現される。また、作業支援方法の各工程は同様に演算装置により実現される。
【0030】
本発明は、作業現場において移動体が作業を行う場合、複数のガイドワイヤーを適切に制御することによって、移動体による作業を支援することを目的とする。また、移動体の種類、移動体が行う作業、移動体が作業を行う対象には、様々なものが含まれる。例えば、移動体の種類としては飛行体、ゴンドラ等、移動体が行う作業としては構造物の点検のための作業等、移動体が作業を行う対象としては構造物等、が挙げられる。
【0031】
本実施形態では、一例として、移動体がドローン等の小型自律飛行体である形態を示す。しかしながら、本発明はこれに限定されず、大型の移動体であっても良い。また、移動体は有人でも無人でも良く、自律飛行ができないゴンドラ等であっても良い。
【0032】
本実施形態では、一例として、ドローンがドリル法と呼ばれる、中性化深さ試験の作業を行う形態を示す。ドリル法とは、ドリル装置を用いて対象の建設物の外壁(コンクリート)を削孔し、この際に生じた削孔粉にフェノールフタレイン等の試薬をかけ、削孔粉の色を観察することで、対象の建設物の耐久性を評価する方法である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ドローンが行う作業は、打診検査、左官工事、カメラによる外壁の撮影等の工事現場等で行われる作業等が含まれる。
【0033】
本実施形態では、一例として、ドローンがビルに対して外壁を削孔する形態を示す。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ドローンが作業を行う対象は、家屋、ダム等のような複数の材料や部材等から構成された構造物等が含まれる。
【0034】
本実施形態では、一例として、移動体を支持するものをガイドワイヤーと称し、ガイドワイヤーがピアノ線等のような高強度な金属線である形態を示す。しかしながら、本発明はこれに限定されず、移動体を支持するものは、ある一定の強度であれば良く、ケーブル等であっても良い。さらに、ワイヤー、ケーブル等は、釣り糸のようなナイロン等のような合成繊維であっても良い。また、移動体を支持するガイドワイヤーは複数であれば何本でも良く、移動体とガイドワイヤーが接触する接触点は1点でも複数でも良い。
【0035】
<システム構成>
図1は、本発明の実施形態に係る作業支援システムのシステム構成図を示す。図1に示すように、作業支援システム1は、作業支援装置2と、移動体(ドローン)3と、ワイヤー制御装置4と、を備える。さらに、作業支援装置2と、ドローン3と、ワイヤー制御装置4と、はネットワークNWを介して通信可能に接続されている。また、作業支援装置2は、有線又は無線で記憶部DBに接続される。作業支援装置2としては、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。さらに、後述の機能構成要素を複数のコンピュータに実現させ、作業支援システム1を構成することも可能である。
【0036】
<ハードウェア構成>
図2は、本発明の実施形態に係る作業支援装置のハードウェア構成図を示す。作業支援装置2は、図2に例示するように、ハードウェア及び機能の構成要素を含んでいる。すなわち、作業支援装置2は、ハードウェア構成要素として、演算装置(CPU(Central Processing Unit))201と、作業用メモリとしての主記憶装置(RAM(Random Access Memory))202と、を備える。
【0037】
作業支援装置2は、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、及び各種情報(データを含む)を書き換え可能に格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置203と、通信制御部204と、NIC(Network Interface Card)等の通信インタフェース(IF)部205等と、を更に備える。
【0038】
<機能構成>
図1に示すように、作業支援装置2は、機能構成要素として、受付部21と、算出部22と、送信部23と、を備える。これら機能構成要素の配置は一例であり、作業支援装置2の備えた機能構成の一部が、作業支援装置2と通信可能に構成された1又は複数の装置に配置されても良い。また、作業支援装置2は、記憶部DBと接続される。記憶部DBに格納された情報の一部が、作業支援装置2と通信可能に構成された1又は複数の装置に格納されても良い。
【0039】
移動体(ドローン)3は、操縦者端末を介して、操縦の指示等を受け付ける指示受付部を有する。また、ドローン3が取得した情報等を作業支援装置2に送信する移動体情報送信部を有しても良い。
【0040】
ワイヤー制御装置4は、ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うウィンチ装置、を有する。ウィンチ装置を制御することによって、ガイドワイヤーの制御を行うことができる。さらに、ワイヤー制御装置4は、ガイドワイヤーにかかる張力を制御するガイドワイヤー張力制御装置を備えても良い。また、ウィンチ装置がガイドワイヤーの張力を制御しても良い。
【0041】
ワイヤー制御装置4は、更に、ガイドワイヤーにかかる張力を測定するガイドワイヤー張力測定装置、ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しの速度を測定するガイドワイヤー速度測定装置、張力、速度等のガイドワイヤーに関する情報を作業支援装置2に送信するガイドワイヤー情報送信部、等を有しても良い。また、図1において、ワイヤー制御装置4は、ワイヤー制御装置4A~4Dの4つを有するが、その数に限定はない。
【0042】
<データベース>
図3は、本発明の実施形態に係るデータベースの一例を示す。記憶部DBは、ガイドワイヤーの制御に用いる情報を格納する。例えば、図3(a)のように、それぞれのワイヤー制御装置の位置情報を格納することによって、その位置情報と、ドローンの位置情報と、を用いて、複数のワイヤー制御装置とドローンとのそれぞれの距離を算出することができる。さらに、図3(b)のように、ドローンの重心点からドローンとガイドワイヤーの接触点までの距離を格納することによって、より正確な距離を算出することができる。また、図3(c)のように、ガイドワイヤーの長さの限界を格納することによって、ドローンの移動範囲を設定することができる。
【0043】
<フローチャート>
図4は、本発明の実施形態に係る作業支援の処理フローチャートを示す。ステップS41において、受付部21は、ドローンの位置情報を受け付ける。
【0044】
ステップS42において、算出部22は、S41で受け付けたドローンの位置情報を用いて、ワイヤー制御装置とドローンの距離を算出する。
【0045】
ステップS43において、算出部22は、S42で算出した距離を用いて、巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。
【0046】
ステップS44において、算出部22は、S43で算出した巻き取り量及び/又は送り出し量に対して、ガイドワイヤーにかかる風荷重、等を用いて補正を行い、巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。
【0047】
ステップS45において、送信部23は、算出部22が算出した巻き取り量及び/又は送り出し量をワイヤー制御装置に送信する。本発明の作業支援システムがこのような処理を行うことによって、ガイドワイヤーを制御し、移動体の作業を支援することができる。以下に実施形態を用いて、具体的な処理を説明する。
【0048】
<実施形態1>
図5は、本発明の実施形態1に係る作業支援の正面図を示す。実施形態1では、ウィンチ装置を有するワイヤー制御装置が4つ存在し、ドローン3は4本のガイドワイヤーW1~W4によって支持される。ドローン3が支持される状態とは、ドローン3が移動可能な程度の張力がガイドワイヤーにかかる状態及び/又はドローン3が移動可能な程度にガイドワイヤーの長さに余裕がある状態(ガイドワイヤーの長さと、ワイヤー制御装置4からドローン3までの距離と、に差がある状態)及び類する状態を指す。外壁Sの横(図5の左右)方向をx座標、縦(図5の上下)方向をz座標とする。
【0049】
ウィンチ装置を有するワイヤー制御装置4A~4DがガイドワイヤーW1~W4をそれぞれ制御する。具体的には、ワイヤー制御装置4A~4Dが有するウィンチ装置が、ガイドワイヤーW1~W4の巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、ガイドワイヤーW1~W4を制御する。つまり、実施形態1では、複数のワイヤー制御装置がそれぞれ1本のガイドワイヤーを制御する。
【0050】
図6は、本発明の実施形態1に係る作業支援の側面図を示す。図6の横(図6の左右)方向(外壁Sとドローン3の距離方向)をy座標とする。
【0051】
受付部21は、複数のガイドワイヤーに支持されるドローンの位置情報を受け付ける。具体的には、ドローン3が自身の位置情報を取得し、ドローン3が有する送信部が、取得した位置情報を受付部21に送信する。また、受付部21が、ドローン3の位置情報を直接取得しても良い。位置情報は、GNSS(Global Navigation Satellite System)、GPS(Global Positioning System)等によって取得することができる。この他にも、位置情報は、距離を測定するセンサによって取得されても良い。例えば、センサは、光学(LiDAR(Light Detection and Ranging))、電波(ミリ波等)、超音波等を用いて、ドローン3の位置情報を取得する。また、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて、ドローン3の位置情報を取得しても良い。例えば、ドローン3にカメラを搭載し、Visual SLAM技術によって、ドローン3の位置情報を取得する。
【0052】
算出部22は、ワイヤー制御装置の位置情報、及び、ドローンの位置情報、を用いて、ワイヤー制御装置とドローンとの距離を算出することによって、ドローンを支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。
【0053】
記憶部DBは、図3(a)のように、ワイヤー制御装置4A~4Dの位置情報を記憶する。記憶部DBがワイヤー制御装置の位置情報を記憶することによって、算出部22は、受付部21が受け付けたドローン3の位置情報を用いて、ワイヤー制御装置4A~4Dとドローン3との距離を算出することができる。また、記憶部DBがワイヤー制御装置の位置情報を記憶しないで、受付部21がワイヤー制御装置の位置情報を受け付けても良い。ワイヤー制御装置の位置情報は、ドローンの位置情報と同様にして取得することが考えられる。ドローンの作業中にワイヤー制御装置も移動する場合、受付部21がドローンの位置情報と同様に、ワイヤー制御装置の位置情報を受け付ける。
【0054】
本実施形態では、ドローン及び/又はワイヤー制御装置の位置情報は、一般的には緯度、経度、標高(高さ)で表される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ローカルに設定された座標等で表されても良い。
【0055】
算出部22は、例えば、式(1)を用いて、ワイヤー制御装置とドローンとの距離Fを算出する。点p1の座標を(x1,y1,z1)、点p2の座標を(x2,y2,z2)とすると、点p1と点p2の2点間の距離Fは、式(1)のように算出される。
【0056】
【数1】
【0057】
ワイヤー制御装置4AとガイドワイヤーW1が接する点を点A(xA,yA,zA)とし、ワイヤー制御装置4Aの位置情報とする。さらに、位置情報から取得した時刻tにおけるドローン3の位置を点P(t)とし、その位置の座標を(x(t),y(t),z(t))とする。
【0058】
時刻tにおけるドローン3の位置からワイヤー制御装置4Aの距離F(P(t),A)は、式(2)によって算出される。また、時刻t+Δt(時刻tからΔt後)におけるドローン3の位置からワイヤー制御装置4Aの距離F(P(t+Δt),A)は、式(3)によって算出される。よって、時刻tから時刻t+Δtのドローン3の位置からワイヤー制御装置4Aの距離の変化ΔFは、式(4)によって算出される。この距離の変化ΔFが、ワイヤー制御装置4Aによるガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量となる。
【0059】
【数2】
【数3】
【数4】
【0060】
ワイヤー制御装置4B~4Dによるガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量は、式(2)~(4)と同様の式で算出される。
【0061】
送信部23は、算出部22が算出した巻き取り量及び/又は送り出し量をワイヤー制御装置に送信する。具体的には、送信部23は、ワイヤー制御装置4A~4Dのそれぞれに対して、それぞれの距離の変化ΔFを送信する。ΔFが正の場合、ワイヤー制御装置4はガイドワイヤーの送り出しを行い、ΔFが負の場合、ワイヤー制御装置4はガイドワイヤーの巻き取りを行う。
【0062】
このような処理を行うことにより、複数のワイヤー制御装置による複数のガイドワイヤーの制御を行うことができる。
【0063】
<実施形態2>
図7は、本発明の実施形態2に係る作業支援の正面図を示す。実施形態2では、実施形態1と同様にウィンチ装置を有するワイヤー制御装置が4つ存在し、ドローン3は4本のガイドワイヤーW1~W4によって支持される。また、実施形態1と同様に、ウィンチ装置を有するワイヤー制御装置4A~4DがガイドワイヤーW1~W4をそれぞれ制御する。具体的には、ワイヤー制御装置4A~4Dが有するウィンチ装置が、ガイドワイヤーW1~W4の巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、ガイドワイヤーW1~W4を制御する。
【0064】
ガイドワイヤーは、ドローンのプロペラガード又は本体に設置される。ガイドワイヤーは、ドローン3の位置情報の点に設置されることが好ましいが、若干のズレが生じる。例えば、ドローン3の位置情報を重心点とした場合、ガイドワイヤーは、ドローン3の重心に近い位置に設置するのが好ましいが、実施形態2のように若干のズレが生じてしまう。ドローン3とガイドワイヤーの接触点、及び、ドローン3の重心点、にズレが生じている際にガイドワイヤーにかかる張力を対角方向(AD方向、又は、BC方向)に強めた場合、ドローン3が斜めになり危険な状態になる可能性がある。算出部22は、ドローン3とガイドワイヤーが接触する接触点、及び、ドローン3の重心点、を用いて、ワイヤー制御装置とドローン3との距離を算出する。
【0065】
例えば、記憶部DBは、図3(b)のように、ドローン3の重心点からドローン3とガイドワイヤーの接触点までの距離をそれぞれ記憶する。これによって、ドローン3の重心点からそれぞれのワイヤー制御装置4A~4Dまでの距離を算出し、記憶部DBが記憶するドローン3の重心点からドローン3とガイドワイヤーの接触点までの距離を引くことによって、ドローン3とガイドワイヤーの接触点からワイヤー制御装置4の距離を算出することができる。つまり、算出部22は、移動体の重心点の位置情報、及び、移動体の重心点から移動体とガイドワイヤーの複数の接触点までの距離を用いて、ワイヤー制御装置と接触点との距離を算出する。
【0066】
この他にも、三角形の(外壁Sの)中央に近い頂点の位置から、重心から(ガイドワイヤーがドローンに)接触した位置までの距離を差し引くことによって、ドローンからそれぞれのワイヤー制御装置までの距離を算出しても良い。図8(a)は、図7の実施形態2のワイヤー制御装置4B及びドローン3の拡大図を示す。ドローン3の重心点Pgをドローン3の位置情報とした場合、ドローン3とワイヤー制御装置4Bとの距離は式(2)より、F(Pg,B)となる。しかし、ドローン3とガイドワイヤーW2の接触点はPbであるため、ガイドワイヤーW2の長さはF(Pb,B)によって算出される必要がある。具体的には、算出部22は、ワイヤー制御装置の位置情報及び移動体の位置情報を用いて、各座標におけるそれぞれの成分の差を算出し、更に、算出した成分の差から、移動体の重心点から移動体とガイドワイヤーの複数の接触点までの距離を差し引くことによって算出した差を用いて、ワイヤー制御装置と接触点との距離を算出する。
【0067】
図8(b)は、ドローンとワイヤー制御装置との距離の算出を説明するための一例の図を示す。図8(b)において、ワイヤー制御装置4BとガイドワイヤーW2が接する点を点B(xB,zB)、ドローンの位置情報を重心点Pg(xg,zg)とする場合、ガイドワイヤーW2の長さは、線分Pg―RA(xB-xg)及び線分B―RA(zB-zg)を用いて、F(Pg,B)で算出される。一方、ドローン3とガイドワイヤーW2の接触点はPb(xb,zb)であるため、ガイドワイヤーW2の長さは、線分Pb―RA及び線分B―RAを用いて、F(Pb,B)で算出される必要がある。算出部22は、点Pg及び点Bの座標から線分Pg―RAを算出し、図3(b)のように記憶されるドローン3の重心点からドローン3とガイドワイヤーの接触点Pbまでの距離10cm(図3(b)を参照)を線分Pg―RAから差し引くことによって、線分Pb―RA(xB-xg-10cm)を算出する。これによって、接触点Pbの位置情報が取得できない場合でも、ドローン3の位置情報、ワイヤー制御装置の位置情報及びドローン3の重心点からドローン3とガイドワイヤーの接触点までの距離を用いて、より正確なドローンとワイヤー制御装置との距離の算出することができる。図8(b)は、2次元であるが、3次元の距離に関しても同様である。また、ドローン3の重心点からドローン3とガイドワイヤーの接触点までの距離に対して、x、y、zのそれぞれの方向に対する角度を考慮した距離の値を算出し、その値を差し引いても良い。
【0068】
この他にも、接触点Pa~Pdの位置情報をそれぞれ取得し、ドローン3とガイドワイヤーの接触点からワイヤー制御装置4の距離を算出することが考えられる。時刻tにおけるドローン3とガイドワイヤーの接触点Paの座標を点Pa(xa(t),ya(t),za(t))とする。時刻tにおける点Aと点Pa間の距離Fは式(2)と同様の式によって算出される。また、時刻t+Δtにおける点Aと点Pa間の距離は式(3)と同様の式によって算出される。よって、ワイヤー制御装置4Aによるガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量は、式(4)と同様の式によって算出することができる。ΔFが正の場合、ワイヤー制御装置4Aはガイドワイヤーの送り出しを行い、ΔFが負の場合、ワイヤー制御装置4Aはガイドワイヤーの巻き取りを行う。ワイヤー制御装置4B~4Dによるガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量は、式(2)~(4)と同様の式で算出される。つまり、算出部22は、移動体と複数のガイドワイヤーが接触する複数の接触点の位置情報、及び、移動体の重心点の位置情報、を用いて、ワイヤー制御装置と接触点との距離を算出する。
【0069】
また、ドローン3の重心点Pgと接触点Pa~Pdの相対的な位置関係を記憶し、ドローン3の位置から取得した重心点Pg(t)の座標を用いて、時刻tにおける接触点Pa~Pdのそれぞれの座標を求めても良い。
【0070】
<実施形態3>
図9は、本発明の実施形態3に係る作業支援の正面図を示す。実施形態3では、ワイヤー制御装置が4つ存在し、ドローン3は2本のガイドワイヤーW1、W2によって支持される。図9では、ガイドワイヤーW1とドローン3が接触する接触点がPa、Peで表されているが、PaとPeの間に図9では図示していない滑車が存在しても良い。接触点PbとPfの間にも同様に滑車が存在しても良い。滑車としては、ガイドワイヤーの力の方向を変えるための定滑車等が考えられる。
【0071】
ウィンチ装置を有するワイヤー制御装置4AがガイドワイヤーW1を制御し、ウィンチ装置を有するワイヤー制御装置4BがガイドワイヤーW2を制御する。具体的には、ワイヤー制御装置4Aが有するウィンチ装置が、ガイドワイヤーW1の巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、ガイドワイヤーW1を制御する。また、ワイヤー制御装置4Bが有するウィンチ装置が、ガイドワイヤーW2の巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、ガイドワイヤーW2を制御する。また、ワイヤー制御装置4E及び4Fは、ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行わず、ガイドワイヤーを固定することによって制御する。
【0072】
時刻tにドローン3がP(t)にある場合、算出部22は、式(2)を用いて、時刻tにおけるドローン3とワイヤー制御装置4A、4Eのそれぞれの距離の合計L1(t)を式(5)によって算出する。同様に、算出部22は、時刻tにおけるドローン3とワイヤー制御装置4B、4Fのそれぞれの距離の合計L2(t)を式(6)によって算出する。時刻tにおけるドローン3の位置情報P(t)は、重心点Pg(t)であっても良い。また、P(t)は、ドローン3とガイドワイヤーの接触点Pa(t)、Pb(t)、Pe(t)、Pf(t)であっても良い。
【0073】
【数5】
【数6】
【0074】
算出部22は、式(5)を用いて、時刻t+Δtにおけるドローン3とワイヤー制御装置4A、4Eのそれぞれの距離の合計と、時刻tにおけるドローン3とワイヤー制御装置4A、4Eのそれぞれの距離の合計の差ΔL1を式(7)によって算出する。ワイヤー制御装置4Aが有するウィンチ装置は、ΔL1が正の場合にガイドワイヤーの送り出しを行い、ΔL1が負の場合にガイドワイヤーの巻き取りを行う。また、算出部22は、式(6)を用いて、時刻t+Δtにおけるドローン3と、ワイヤー制御装置4B、4Fのそれぞれの距離の合計と時刻tにおけるドローン3とワイヤー制御装置4B、4Fのそれぞれの距離の合計の差ΔL2を式(8)によって算出する。ワイヤー制御装置4Bが有するウィンチ装置は、ΔL2が正の場合にガイドワイヤーの送り出しを行い、ΔL2が負の場合にガイドワイヤーの巻き取りを行う。
【0075】
【数7】
【数8】
【0076】
時刻tにおけるドローン3の位置情報P(t)を、それぞれPa(t)、Pb(t)、Pe(t)、Pf(t)とした場合、更に、接触点Pa(t)とPe(t)の距離を足した式(9)を、距離の合計L1(t)として算出しても良い。この場合、距離の合計L2(t)は、更に、接触点Pb(t)とPf(t)の距離を足した式(10)として算出される。また、Pa(t)とPe(t)間及びPb(t)とPf(t)間の距離は、時刻によらず一定であっても良いし、時刻によって変化しても良い。
【0077】
【数9】
【数10】
【0078】
ガイドワイヤーの制御は、実施形態1、2のように、ある時刻における2点間の距離の差から算出された巻き取り量及び/又は送り出し量を用いて行われても良く、実施形態3のように、ある時刻における距離の合計の差から算出された巻き取り量及び/又は送り出し量を用いて行われても良い。
【0079】
<実施形態4>
図10は、本発明の実施形態4に係る作業支援の正面図を示す。ドローンは、ドローンの上方からプロペラで空気を吸い、下向きに空気を噴出して飛行を行う。よって、ドローン(プロペラ)の上方に緩んだワイヤーがある場合、ワイヤーをプロペラに巻き込み墜落する可能性がある。特に、上方の2箇所のウィンチ装置を有するワイヤー制御装置とドローンが平行に近くなると、プロペラがワイヤーを巻き込む可能性が高くなる。
【0080】
図10のように、ドローン3が移動可能な範囲又は作業を行う範囲(実施形態4の外壁S)よりも上方(高い位置)に、ウィンチ装置を有するワイヤー制御装置4A及び4Bを設置することによって、上方の2箇所のウィンチ装置とドローンが平行に近くなることを防ぎ、このような巻き込みを抑制することができる。ワイヤー制御装置4A及び4Bは、ドローンが移動可能な範囲又は作業を行う範囲よりも上方に設置されていれば良く、設置される高さに決まりはない。例えば、ワイヤー制御装置をビル1階分(約2メートル以上)高く設置することによって、巻き込みを抑制するための高い効果を得ることができる。
【0081】
また、ウィンチ装置のガイドワイヤーの巻き取りの速度よりもドローンの上昇の速度の方が速い場合も、プロペラがガイドワイヤーに接近するため、プロペラがガイドワイヤーを巻き込む可能性が高くなる。算出部22は、ドローンの上昇の速度を用いて、ガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。例えば、ドローンの上昇の速度がウィンチ装置のガイドワイヤーの巻き取りの速度よりも速くならないように、算出部22は、下方のワイヤー制御装置に対する巻き取り量を算出する。そして、送信部23が下方のワイヤー制御装置に巻き取り量を送信することによって、ドローンの上昇速度がウィンチ装置のガイドワイヤーの巻き取り速度を超えることを防ぐことができる。
【0082】
風荷重の利用について
実施形態1~4を含む様々な形態において、構造物に対してドローンが飛行及び/又は作業を行っている時、ドローンを支持するガイドワイヤー及び/又はドローンは風の影響を受ける。ドローンは風に弱く、特にビル風は乱流であり、制御するのが困難である。ビルでの作業においてドローン及び/又はガイドワイヤーが受ける風速は、例えば、地上及びビルの屋上で風速を測定し、屋上と地上の風速を平均化したものとしても良い。また、風速を測定する風速測定装置をドローンに搭載し、ドローンが受ける風速を測定し、受付部21に送信しても良い。
【0083】
ガイドワイヤーにかかる風荷重(ガイドワイヤーが受ける風の影響)は、ガイドワイヤーの長さ及び太さに比例する。算出部22は、例えば、風荷重を、風圧力(風が物に当たった時にかかる圧力)に受圧面積(圧力がかかる部分の面積)をかけることによって算出する。風圧力は、ガイドワイヤーが受ける風速から算出される速度圧及び風力係数から算出される。受圧面積は、ガイドワイヤーの長さ及び太さから算出される。よって、算出部22は、ガイドワイヤーの長さ、太さ、及び、ガイドワイヤーにかかる風速、を用いて、ガイドワイヤーの風荷重を算出する。同様に、算出部22は、ドローンが圧力を受ける面積、及び、ドローンが受ける風速、を用いて、ドローンにかかる風荷重を算出する。
【0084】
算出部22は、更に、ガイドワイヤー及び/又はドローンにかかる風荷重を用いて、ガイドワイヤーにかける張力を算出する。送信部23は、ガイドワイヤーにかける張力をワイヤー制御装置に送信する。
【0085】
ワイヤー制御装置の送り出しによる巻き取りについて
実施形態1~4を含む様々な形態において、複数のワイヤー制御装置によってウィンチ装置を同時に制御する場合、ガイドワイヤーの長さや支点の形状による誤差によって一定の張力とならない可能性が高い。例えば、ワイヤー制御装置4Aが有するウィンチ装置がガイドワイヤーを巻き取った際に過度な負荷がかかった場合、そのウィンチ装置はガイドワイヤーを緩める必要があり、ガイドワイヤーを送り出す。ウィンチ装置がガイドワイヤーを送り出す際、ワイヤー制御装置4Aは、ガイドワイヤーの送り出し量を受付部21に送信する。そして、受付部21は、更に、ワイヤー制御装置4Aからガイドワイヤーの送り出し量を受け付けても良い。
【0086】
ワイヤー制御装置4Aが有するウィンチ装置がガイドワイヤーを送り出した場合、ガイドワイヤーW1が緩みすぎてしまうため、ワイヤー制御装置4A以外のワイヤー制御装置4B~4Dが有するウィンチ装置の少なくとも1つは、ガイドワイヤーの巻き取りを行う必要がある。よって、算出部22は、更に、ワイヤー制御装置4Aから受け付けた送り出し量を用いて、ワイヤー制御装置4B~4Dの少なくとも1つの巻き取り量を算出しても良い。例えば、受付部21が受け付けたワイヤー制御装置4Aの送り出し量を、ワイヤー制御装置4Cの巻き取り量として算出する。この他にも、算出部22は、ガイドワイヤーにかかる張力等を用いて、巻き取り量を算出しても良い。
【0087】
送信部23は、更に、算出部22が算出した巻き取り量をワイヤー制御装置4B~4Dの少なくとも1つに送信しても良い。
【0088】
このような処理を行うことにより、ワイヤー制御装置の動作を用いたガイドワイヤーの制御を行うことができる。
【0089】
作業情報の利用について
実施形態1~4を含む様々な形態において、ドローンの飛行は、自身の作業による影響を受ける。算出部22は、更に、ドローンが実行している作業の情報である作業情報を用いて、ドローンを支持するガイドワイヤーにかける実行作業張力を算出する。本実施形態におけるドリル法による作業において、電動ドリルでコンクリートに穴をあける際、電動ドリルの回転と逆方向に回転する力が生じる。この力によりドローンが回転するのを制御するため、ウィンチ装置による張力の制御を行う。また、ドローンが実行する作業によって、ドローンを制御するためのウィンチ装置による張力は異なるため、作業情報を用いて、実行作業張力を算出する。作業情報としては、上下方向、左右方向、回転方向に力の生じるもの、例えば、打診や左官等が含まれる。
【0090】
記憶部DBが、ドローンが実行する作業の種類に応じた力の生じる方向を記憶し、算出部22がその方向を用いて、ウィンチ装置による張力を算出しても良い。また、記憶部DBが、ドローンが実行する作業の種類に応じた係数を記憶し、算出部22がその係数を用いて、実行作業張力としてそれぞれのウィンチ装置による張力を算出しても良い。この他にも、記憶部DBが、ドローンが実行する作業の種類に応じた実行作業張力を記憶し、算出部22は、記憶部DBが記憶する実行作業張力をそれぞれのウィンチ装置による張力としても良い。送信部23は、算出部22が算出した実行作業張力をワイヤー制御装置に送信する。
【0091】
移動体の固定について
実施形態1~4を含む様々な形態において、ドローン3の故障等による事故の可能性が存在する。送信部23は、ドローンから通信が途絶えた場合、ドローンの位置を固定するためのガイドワイヤーにかける緊急固定張力をワイヤー制御装置に送信する。ドローン3が固定される状態とは、ドローン3を移動不可能にする張力(ドローン3を支持するための張力よりも強い張力)がガイドワイヤーにかかる状態及び/又はガイドワイヤーの長さに余裕がない状態(ガイドワイヤーの長さと、ワイヤー制御装置4からドローン3までの距離と、に差がない状態)を指す。つまり、ドローンの動作が停止した場合でもガイドワイヤーによってその位置を維持可能にする状態を指す。ドローンの故障、電池切れ等によって、ドローンから受付部21への通信が途絶える可能性がある。地上への被害等の防止のため、ドローンの異常を検知した場合、ウィンチ装置の張力を強めて、ドローンを固定する必要がある。例えば、記憶部DBが緊急固定張力を記憶しておくことによって、受付部21がある一定期間ドローンから通信を受け付けない場合、送信部23は、記憶部DBが記憶する緊急固定張力をワイヤー制御装置に送信しても良い。
【0092】
この他にも、ドローンの速度が予め設定された速度よりも速い場合、ドローンの位置を固定するための緊急固定張力をワイヤー制御装置に送信、又は、ワイヤー制御装置が有するウィンチ装置を緊急停止させる緊急停止指示をワイヤー制御装置に送信する。例えば、記憶部DBが距離の差ΔF、ΔL1、ΔL2の閾値を記憶し、算出部22が算出した距離の差の値がその閾値を超えた場合、送信部23は、緊急固定張力又は緊急停止指示をワイヤー制御装置に送信する。
【0093】
移動体の侵入不可領域の設定について
実施形態1~4を含む様々な形態において、ドローン3が侵入してはいけない場所等が存在する可能性が考えられる。記憶部DBが、ワイヤー制御装置のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量の限界、又は、ガイドワイヤーの長さの限界、を格納することによって、算出部22が、その限界を用いて、巻き取り量及び/又は送り出し量を算出しても良い。巻き取り量の限界とは、1つのワイヤー制御装置が巻き取ることができるガイドワイヤーの長さ(範囲)であり、送り出し量の限界とは、1つのワイヤー制御装置が送り出すことができるガイドワイヤーの長さ(範囲)を指す。また、ガイドワイヤーの長さの限界とは、ウィンチ装置から送り出される1本のガイドワイヤーの長さ(範囲)を指す。
【0094】
ドローンが撮影、接近してはいけない範囲が存在するため、ガイドワイヤーを制御することによって、ドローンが侵入することができない範囲を設定する必要がある。例えば、記憶部DBが図3(c)のように、ガイドワイヤーW1の長さの限界を記憶することによって、算出部22は、その限界よりもガイドワイヤーが長くならないように、巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。例えば、算出部22は、式(9)のL1(t)が15mを超えるような送り出し量を算出しない。これによって、ドローンが侵入することができない範囲を設定することができる。
【0095】
以上のように、本発明に係る作業支援システム1によれば、複数のガイドワイヤーを適切に制御することによって、移動体による作業を支援する新たな技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 作業支援システム
2 作業支援装置
21 受付部
22 算出部
23 送信部
DB 記憶部
3 移動体(ドローン)
4 ワイヤー制御装置
NW ネットワーク
【要約】
【課題】
複数のガイドワイヤーを適切に制御することによって、移動体による作業を支援する新たな技術を提供する。
【解決手段】
作業支援システムは、記憶部DB、受付部21、算出部22、送信部23、を備える。記憶部DBは、ガイドワイヤーを制御するワイヤー制御装置4の位置情報を格納する。ワイヤー制御装置4は、ガイドワイヤーの巻き取り及び/又は送り出しを行うことによって、複数のガイドワイヤーを制御する。受付部21は、複数のガイドワイヤーに支持される移動体3の位置情報を受け付ける。算出部22は、ワイヤー制御装置4の位置情報、及び、移動体3の位置情報、を用いて、ワイヤー制御装置4と移動体3との距離を算出することによって、移動体3を支持する複数のガイドワイヤーの巻き取り量及び/又は送り出し量を算出する。送信部23は、前記巻き取り量及び/又は送り出し量をワイヤー制御装置4に送信する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10