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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20250206BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018121921
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020002042
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一宏
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】野田 定文
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-175972(JP,A)
【文献】特開平5-4927(JP,A)
【文献】特開2013-35792(JP,A)
【文献】特開2015-127305(JP,A)
【文献】特開2012-214402(JP,A)
【文献】特開2010-235565(JP,A)
【文献】特開2006-306844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を含む、口腔用組成物(但し、デキストラナーゼを含む場合及び硝酸カリウムを含む場合を除く)。
【請求項2】
前記(B)成分100重量部当たり、前記(C)成分が15~150重量部含まれ、且つ前記(B)成分と前記(C)成分の総量が2~3.5重量%である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
更に(E)1価低級アルコールを含む、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
更に(F)多価アルコールを含む、請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
脂溶性香料を含む口腔用組成物(但し、デキストラナーゼを含む場合及び硝酸カリウムを含む場合を除く)の白濁を抑制する方法であって、
口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合する、白濁抑制方法。
【請求項6】
油溶性香料を含む口腔用組成物(但し、デキストラナーゼを含む場合及び硝酸カリウムを含む場合を除く)の安定化方法であって、
口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合する、安定化方法。
【請求項7】
界面活性剤を含む口腔用組成物(但し、デキストラナーゼを含む場合及び硝酸カリウムを含む場合を除く)において、界面活性剤の異味を低減する方法であって、
口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合する、異味低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油溶性香料が十分に可溶化されて白濁が抑制されており、優れた保存安定性を有し、しかも界面活性剤に由来する異味が低減されている口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口中清涼剤、マウスウォッシュ、液体歯磨等の液体口腔用組成物において、使用時に香味を呈させて良好な使用感を付与するために、油溶性香料が配合されている。液体口腔用組成物において、使用時に十分な香味を呈させるには油溶性香料の配合量を増加させることが必要になるが、口腔用組成物は、水等の水性基剤を含んでいるため、油溶性香料の配合量が増えると、油溶性香料が可溶化し難くなり、白濁が生じるという問題点がある。
【0003】
そこで、従来、油溶性香料を安定化に可溶化させるための製剤技術について、種々検討されている。例えば、特許文献1には、油溶性香料を含み、透明な性状で優れた安定性を有する口腔用組成物として、(A)ミリストイルグルタミン酸塩0.01~0.5質量%、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル及び糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種又は2種以上の非イオン界面活性剤、(C)油溶性香料、及び(D)水90質量%以上を含有し、成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が5~50である液体口腔用組成物が開示されている。
【0004】
一方、近年、口腔用組成物に対する要望が多様化しており、香り立ちが強く、良好な香味を呈する口腔用組成物についての要望がある。油溶性香料の配合量を増大させることにより香り立ちが強くなるが、油溶性香料の配合量の増大には、油溶性香料を可溶化させるために界面活性剤の配合が必要になる。しかしながら、界面活性剤には、苦味等の特有の異味があり、界面活性剤の配合は、却って香味の低下を招く結果になる。そのため、油溶性香料を界面活性剤によって十分可溶化させ、油溶性香料に起因する白濁を抑制して保存安定性高めつつ、一方で界面活性剤に由来する異味を低減することが求められるが、そのような製剤技術については確立できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-181011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、油溶性香料が十分に可溶化されて白濁が抑制されており、優れた保存安定性を有し、しかも界面活性剤に由来する異味が低減されている口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、口腔用組成物において、油溶性香料と共にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを配合して可溶化することによって、油溶性香料を十分に可溶化でき、白濁を抑制できると共に、優れた保存安定性を付与でき、更に界面活性剤に由来する異味を低減できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を含む、口腔用組成物。
項2. 前記(B)成分100重量部当たり、前記(C)成分が15~150重量部含まれ、且つ前記(B)成分と前記(C)成分の総量が2~3.5重量%である、項1に記載の口腔用組成物。
項3. 更に(E)1価低級アルコールを含む、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4. 更に(F)多価アルコールを含む、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5. 脂溶性香料を含む口腔用組成物の白濁を抑制する方法であって、
口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合する、白濁抑制方法。
項6. 油溶性香料を含む口腔用組成物の安定化方法であって、
口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合する、安定化方法。
項7. 界面活性剤を含む口腔用組成物において、界面活性剤の異味を低減する方法であって、
口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合する、異味低減方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物によれば、油溶性香料を十分に可溶化させることができるので、油溶性香料による白濁を抑制し、良好な外観を呈することができる。また、本発明の口腔用組成物は、保存しても油溶性香料の可溶化状態を安定に維持できるので、優れた保存安定性も有している。更に、本発明の口腔用組成物では、油溶性香料を可溶化させるために界面活性剤を含んでいるものの、界面活性剤に由来する異味を低減できているので、油溶性香料の香味を損なうことなく、良好な使用感を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を含むことを特徴とする。本発明の口腔用組成物では、(A)油溶性香料及び(D)水と共に、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを併用することによって、油溶性香料を十分に可溶化して白濁を抑制し、優れた保存安定性を具備させ、しかも界面活性剤に由来する異味(苦味等)を低減することが可能になっている。以下、本発明の口腔用組成物について詳述する。
【0011】
[(A)油溶性香料及び含有量]
本発明の口腔用組成物は、油溶性香料(「(A)成分と表記することもある」を含有する。本発明で使用される油溶性香料の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、単品香料、精油等が挙げられる。
【0012】
単品香料として、具体的には、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、シネオール、チモール、ゲラニオール、シトロネロール、バニリン、サリチル酸メチル、メントン、イソメントン、リモネン、ピネン、プレゴン、乳酸メンチル、酢酸テルピニル、ターピネオール、リナロール、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、オシメン、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、エチルリナロール、ワニリン等が挙げられる。これらの単品香料は、合成されたものであってもよく、また天然から精製されたものであってもよい。
【0013】
精油としては、具体的には、スペアミント油、ペパーミント油、ハッカ油等のミント油;レモン油、ミカン油、ライム油、ユズ油、グレープフルーツ油、オレンジ油等の柑橘油;セージ油、ユーカリ油、クローブ油、ローズマリー油、タイム油、ナツメグ油、ローレル油、バジル油、シソ油、エストラゴン油、パセリ油、セロリ油、コリアンダー油、フェンネル油、シナモン油、ペッパー油、ナツメグ油、メース油、クローブ油、ジンジャー油、カルダモン油、ウイキョウ油、アニス油、珪皮油、冬緑油、丁子油、ピメント油、パセリ油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油等のハーブ・スパイス油等が挙げられる。
【0014】
これらの脂溶性香料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、脂溶性香料として、2種以上の単品香料、1種以上の単品香料と1種以上の精油、又は2種以上の精油を組み合わせて、所望のフルーツフレーバーを呈するように調香したものを使用してもよい。
【0015】
これらの脂溶性香料の中でも、好ましくは、メントール、ゲラニオール、シトロネロール、リモネン、リナロール、柑橘油、ハーブ・スパイス油等が挙げられる。
【0016】
本発明の口腔用組成物における(A)成分の含有量については、特に制限されないが例えば、0.01~5.0重量%、好ましくは0.1~2.5重量%、更に好ましくは0.5~1.5重量%が挙げられる。
【0017】
[(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油]
本発明の口腔用組成物は、界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(「(B)成分」と表記することもある)を含有する。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とは、硬化ヒマシ油をポリオキシエチレン鎖でエーテル化した化合物である。
【0018】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油におけるポリオキシエチレン鎖のエチレンオキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、5~100、好ましくは10~80、更に好ましくは20~60が挙げられる。
【0019】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油として、具体的には、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-70水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-90水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0020】
これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の中でも、白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはエチレンオキサイドの付加モル数が20~60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、更に好ましくはPEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油が挙げられる。
【0022】
本発明の口腔用組成物における(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.5~5.0重量%が挙げられる。白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、本発明の口腔用組成物における(B)成分の含有量として、好ましくは0.75.0~4.0重量%、更に好ましくは1.0~3.5重量%が挙げられる。
【0023】
[(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル]
本発明の口腔用組成物は、界面活性剤として、更にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(「(C)成分」と表記することもある)を含有する。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖がアルキル基とエーテル結合している化合物である。
【0024】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖のエチレンオキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、2~100、好ましくは10~80、更に好ましくは12~40が挙げられる。
【0025】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖のプロピレンオキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、1~40、好ましくは1~20、更に好ましくは1~10が挙げられる。
【0026】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、6~24、好ましくは8~22、更に好ましくは12~20が挙げられる。
【0027】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、具体的には、PPG-4セテス-1、PPG-4セテス-10、PPG-4セテス-20、PPG-8セテス-20、PPG-6デシルテトラデセス-12、PPG-6デシルテトラデセス-20、PPG-6デシルテトラデセス-30等が挙げられる。
【0028】
これらのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの中でも白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはエチレンオキサイドの付加モル数が12~40、プロピレンオキサイドの付加モル数が1~10、且つアルキル基の炭素数が12~20であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;更に好ましくはPPG-4セテス-20、PPG-6デシルテトラデセス-12、PPG-6デシルテトラデセス-20、PPG-6デシルテトラデセス-30が挙げられる。
【0030】
本発明の口腔用組成物における(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~3.0重量%が挙げられる。白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、本発明の口腔用組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは0.5~2.0重量%、更に好ましくは0.5~1.5重量%が挙げられる。
【0031】
また、本発明の口腔用組成物において、(B)成分と(C)成分の総量((B)成分と(C)成分の合計量)の含有量については、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよく、特に制限されないが、例えば、(B)成分と(C)成分の総量が1.0~5.0重量%が挙げられる。白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、(B)成分と(C)成分の総量が、好ましくは1.5~4.0重量%、更に好ましくは2.0~3.0重量%が挙げられる。
【0032】
また、本発明の口腔用組成物において、(B)成分と(C)成分の比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよく、特に制限されないが、例えば、(B)成分100重量部に対して、(C)成分が、15~150重量部が挙げられる。白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、(B)成分100重量部に対して、(C)成分が、好ましくは20~100重量部、更に好ましくは25~100重量部挙げられる。
【0033】
また、本発明の口腔用組成物において、(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の総量との比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよく、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部に対して、(B)成分及び(C)成分の総量が、100~500重量部が挙げられる。白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させるという観点から、(A)成分100重量部に対して、(B)成分及び(C)成分の総量が、好ましくは150~400重量部、更に好ましくは200~300重量部が挙げられる。
【0034】
[(D)水]
本発明の口腔用組成物は、基剤として水(「(D)成分」と表記することがある)を含有する。本発明の口腔用組成物における(D)成分の含有量については、その製剤形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、30~85重量%、好ましくは40~75重量%、更に好ましくは50~70重量%が挙げられる。
【0035】
[(E)1価低級アルコール]
本発明の口腔用組成物は、更に1価低級アルコール(「(E)成分」と表記することがある)を含んでいることが望ましい。1価低級アルコールを含むことによって、油溶性香料を安定に可溶化させ、白濁抑制効果及び保存安定性をより一層向上させることが可能になる。
【0036】
1価低級アルコールとしては、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、炭素数2~5の1価アルコール、好ましくはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、更に好ましくはエタノールが挙げられる。
【0037】
これらの1価低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本発明の口腔用組成物に(E)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、5~35重量%、好ましくは7.5~25重量%、更に好ましくは10~15重量%が挙げられる。
【0039】
また、本発明の口腔用組成物に(E)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(E)成分の比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよく、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部に対して、(E)成分が、250~3500重量部、好ましくは250~2500重量部、更に好ましくは500~1500重量部が挙げられる。
【0040】
[(F)多価アルコール]
本発明の口腔用組成物は、更に多価アルコール(「(F)成分」と表記することがある)を含んでいることが望ましい。多価アルコールを含むことによって、油溶性香料を安定に可溶化させ、白濁抑制効果及び保存安定性をより一層向上させることが可能になる。
【0041】
本発明で使用される多価アルコールについては、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0042】
これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
これらの多価アルコールの中でも、白濁抑制効果及び保存安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくはグリセリンが挙げられる。
【0044】
本発明の口腔用組成物に(F)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、5~35重量%、好ましくは7.5~35重量%、更に好ましくは10~25重量%が挙げられる。
【0045】
また、本発明の口腔用組成物に(F)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(F)成分の比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよく、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部に対して、(F)成分が、250~3500重量部、好ましくは250~3500重量部、更に好ましくは500~2500重量部が挙げられる。
【0046】
[(G)極性油]
本発明の口腔用組成物は、極性油(「(G)成分」と表記することもある)を含有していてもよい。極性油を含むことによって、白濁抑制効果、保存安定性、及び界面活性剤に由来する異味の低減効果をより一層向上させることが可能になる。
【0047】
極性油とは、IOB(無機性/有機性のバランス)が0.05~1.1の範囲にある油分を意味する。本発明で使用される極性油のIOBとして、好ましくは0.1~0.9、更に好ましくは0.15~0.5、特に好ましくは0.3~0.4が挙げられる。
【0048】
また、本発明で使用される極性油の粘度については、特に制限されないが、20℃における粘度として、例えば、5~600mPa・s、好ましくは40~550mPa・s、より好ましくは140~510mPa・sが挙げられる。本明細書において、極性油の粘度は、B型粘度計「TOKI SANGYO VISCOMETER TVB-10」(東機産業株式会社製)において、ローター:NO.1(回転速度:12rpm、時間:30sec、単位:mPa・s)を使用して、20℃の温度条件で測定した値をいう。
【0049】
極性油の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、植物油等が挙げられる。
【0050】
極性油の内、脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸と1価又は多価アルコールとのエステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸1分子が1価又は多価アルコール1分子に結合したモノエステル、脂肪酸2分子が多価アルコール1分子に結合したジエステル、脂肪酸3分子が3価以上の多価アルコール1分子に結合したトリエステル、脂肪酸4分子が4価以上の多価アルコール1分子に結合したテトラエステル、1価アルコール2分子がジカルボン酸1分子に結合したジエステル、脂肪酸1分子が1コレステロール1分子に結合した脂肪酸コレステリル等が挙げられる。
【0051】
脂肪酸1分子が1価又は多価アルコール1分子に結合したモノエステルにおいて、構成脂肪酸の炭素数としては、例えば4~30、好ましくは6~20が挙げられ、構成1価又は多価アルコールの炭素数としては、例えば2~34、好ましくは2~20が挙げられる。当該モノエステルとして、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸イソブチル、セバシン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸パルミチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルチミン酸イソプロピル、パルチミン酸セチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸バチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、リノール酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ラウリル酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル等が挙げられる。
【0052】
脂肪酸2分子が多価アルコール1分子に結合したジエステルにおいて、構成脂肪酸の炭素数としては、例えば4~30、好ましくは6~18が挙げられ、構成多価アルコールの炭素数としては、例えば2~34、好ましくは2~6が挙げられる。当該ジエステルとしては、具体的には、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸グリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジヘプチルウンデカン酸グリセリン、ジ(カプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール等が挙げられる。
【0053】
脂肪酸3分子が3価以上の多価アルコール1分子に結合したトリエステルにおいて、構成脂肪酸の炭素数としては、例えば4~30、好ましくは6~18が挙げられ、構成多価アルコールの炭素数としては、例えば2~34、好ましくは3~6が挙げられる。当該トリエステルとしては、具体的には、トリエチルヘキサノイン(トリエチルヘキサン酸グリセリル)、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド等が挙げられる。
【0054】
脂肪酸4分子が4価以上の多価アルコール1分子に結合したテトラエステルにおいて、構成脂肪酸の炭素数としては、例えば4~30、好ましくは6~10が挙げられ、構成1多価アルコールの炭素数としては、例えば2~34、好ましくは4~8が挙げられる。当該テトラエステルとしては、具体的には、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0055】
1価アルコール2分子がジカルボン酸1分子に結合したジエステルにおいて、構成脂肪酸の炭素数としては、例えば4~30、好ましくは4~12が挙げられ、構成1価又は多価アルコールの炭素数としては、例えば2~34、好ましくは2~20が挙げられる。当該ジエステルとしては、具体的には、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジ2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0056】
脂肪酸コレステリルにおいて、構成脂肪酸の炭素数としては、例えば4~30、好ましくは6~20が挙げられる。脂肪酸コレステリルとしては、具体的には、ラノリン脂肪酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル等が挙げられる。
【0057】
これらの脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
極性油の内、高級脂肪酸としては、例えば、炭素数8~30、好ましくは10~20の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、セバシン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
極性油の内、高級アルコールとしては、例えば、炭素数、好ましくは12~22のアルコールが挙げられ、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
極性油の内、植物油とは、植物に含まれる脂質を抽出した油脂の内、常温で液体のものを指し、脂肪酸とグリセリンがエステル結合したトリグリセリドを主に含んでおり、脂溶性香料として使用される精油(即ち、植物から留出された揮発性成分であって、芳香を呈するもの)とは区別される成分である。植物油としては、例えば、ヒマワリ種子油、ホホバ種子油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、ヒマシ油、アボカド油、ゴマ油、茶油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ククイナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、パーシック油、ティートリー油、トウモロコシ油、ナタネ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、ホホバ油等が挙げられる。これらの植物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
これらの極性油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
これらの極性油の中でも、好ましくは、脂肪酸エステル;更に好ましくは、脂肪酸4分子が4価以上の多価アルコール1分子に結合したテトラエステル;特に好ましくはテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチルが挙げられる。
【0063】
本発明の口腔用組成物に(G)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~1.5重量%、好ましくは0.1~0.5重量%、更に好ましくは0.1~0.3重量%が挙げられる。
【0064】
また、本発明の口腔用組成物に(G)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(G)成分の比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよく、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部に対して、(G)成分が、0.2~15000重量部、好ましくは4~500重量部、更に好ましくは10~300重量部が挙げられる。
【0065】
[その他の含有成分]
本発明の口腔用組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、局所麻酔剤、血行促進剤、(B)成分及び(C)成分以外の界面活性剤、増粘剤、湿潤剤、甘味剤、色素、消臭剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0066】
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
【0067】
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
【0068】
研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等が挙げられる。
【0069】
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
【0070】
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
【0071】
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0072】
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
【0073】
歯質強化/再石灰化剤としては、例えば、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が挙げられる。
【0074】
局所麻酔剤としては、例えば、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等が挙げられる。
【0075】
血行促進剤としては、例えば、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等が挙げられる。
【0076】
界面活性剤((B)成分及び(C)成分以外)としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、レシチン誘導体等の非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等のアニオン性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム、レシチン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0077】
増粘剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸 n-ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体及びメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
【0078】
湿潤剤としては、例えば、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0079】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
【0080】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
【0081】
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が挙げられる。
【0082】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0083】
本発明の口腔用組成物において、これらの成分を含有させる場合、その含有量については、当該技術分野で通常使用される範囲で適宜設定すればよい。
【0084】
[剤型・製剤形態]
本発明の口腔用組成物の剤型については、口腔内への適用が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
【0085】
本発明の口腔用組成物の製剤形態については、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液状歯磨剤、洗口液等、更に好ましくはマウスリンス、マウススプレー等が挙げられる。
【0086】
[製造方法]
本発明の口腔用組成物は、公知の可溶化製剤の製剤化手法に従って製造することができる。例えば、本発明の口腔用組成物の製造方法としては、(B)成分と(C)成分を混合し、これに(A)成分を添加して混合した後に、(D)成分を添加して混合すればよい。
【0087】
2.白濁抑制方法・安定化方法・異味低減方法
本発明の白濁抑制方法は、脂溶性香料を含む口腔用組成物の白濁を抑制する方法であって、口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合することを特徴とする。本発明の白濁抑制方法によって、油溶性香料が十分に可溶化され、口腔用組成物の白濁を抑制することが可能になる。
【0088】
また、本発明の安定化方法は、油溶性香料を含む口腔用組成物の安定化方法であって、口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合することを特徴とする。本発明の安定化方法によって、油溶性香料が安定に可溶化され、口腔用組成物に保存安定性を付与することが可能になる。
【0089】
また、本発明の異味低減方法は、界面活性剤を含む口腔用組成物において、界面活性剤の異味を低減する方法であって、口腔用組成物に、(A)油溶性香料、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び(D)水を配合することを特徴とする。本発明の異味低減方法によって、界面活性剤の異味(苦味等)が低減され、口腔用組成物の使用感を向上させることが可能になる。
【0090】
本発明の白濁抑制方法、安定化方法、及び異味低減方法において、(A)~(D)成分の種類や含有量、他の成分や含有量、口腔用組成物の剤型や製剤形態等については、前記「1.口腔用組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0091】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
なお、以下に示す実施例、比較例、及び処方例で使用しているテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチルは、IOB値が0.35であり、20℃における粘度140mPa・sである。
【0093】
試験例1
表1~3に示す組成の洗口液を調製した。具体的には、先ずエタノールと界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル)を混合し、これに油溶性香料と極性油を添加して混合した後に、水、グリセリン、及びサッカリンナトリウムを添加して混合することにより、洗口液を調製した。
【0094】
得られた各洗口液について、以下の方法で、外観、保存安定性、及び呈味を評価した。
<外観>
調製直後の洗口液の外観を観察し、下記判定基準に従って評価を行った。
・外観の判定基準
- :完全に透明である。
+ :僅かに白濁がある。
++ :白濁があり、半透明の状態である。
+++ :白濁があるが、僅かに透明度がある。
++++:完全に濃く白濁しており、透明度がない。
【0095】
<保存安定性>
調製直後の各洗口液50mlを110ml容の透明ガラス容器(スクリュー管No.8、株式会社マルエム製)に収容して、遮光条件下で、25℃で14日間保存した。保存後の洗口液の外観を目視にて確認し、下記判定基準に従って評価を行った。
- :完全に透明である。
+ :僅かに白濁がある。
++ :白濁があり、半透明の状態である。
+++ :白濁があるが、僅かに透明度がある。
++++:完全に濃く白濁しており、透明度がない。
<呈味>
調製直後の各洗口液をスプレー容器に充填し、5名のパネラー(事前に歯磨剤なしで3分間のブラッシング済)の口腔内に3回噴霧(約1.0ml)し、以下に示す判定基準に従って、界面活性剤に由来する異味(苦味)を指標として呈味を評点化した。
5:苦味を一切感じない。
4:極僅かに苦みを感じるが、全く気にならない
3:わずかに苦みは感じるが、気にならない。
2:若干の苦みは感じるが、ほとんど気にならない
1:苦味を感じ、気になる。
0:非常に強い苦味を感じ、不快である。
【0096】
更に、各パネラーによって判定された評点を平均し、以下に示す分類基準に従って、評価結果を纏めた。
<評点の分類基準>
◎:評点の平均が3点以上
○:評点の平均が2点以上3点未満
△:評点の平均が1点以上2点未満
×:評点の平均が1点未満
【0097】
得られた結果を表1~3に示す。この結果、油溶性香料と共に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含む場合(実施例1~8)では、白濁が抑制され、良好な外観で、保存安定性及び呈味(苦味抑制)も優れていた。一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの一方を欠く場合(比較例1~8)では、呈味(苦味抑制)が優れているものはあるものの、外観、保存安定性を満足させることはできなかった。更に、界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合(比較例9及び10)、並びにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとポリグリセリン脂肪酸エステルを併用した場合(比較例11)でも、外観、保存安定性及び呈味(苦味抑制)の全てを満足させることはできなかった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
処方例
表3に示す組成の洗口液を、前記試験例1と同様の方法で調製した。得られた洗口液は、いずれも、白濁が抑制され、良好な外観で、保存安定性及び呈味(苦味抑制)も優れていた。
【0101】
【表3】