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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】アントシアニンの安定化方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 2/729 20250101AFI20250206BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20250206BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250206BHJP
【FI】
A23L3/3463
A61P39/06
A61K31/7048
A61K47/24
A61K9/48
A23L33/105
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019238437
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106508
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山口 知美
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014125(JP,A)
【文献】特開2009-046438(JP,A)
【文献】特開2001-064531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0208705(US,A1)
【文献】特開2018-145148(JP,A)
【文献】特開2018-118934(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125135(WO,A1)
【文献】特開2013-135658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61K 9/00-9/72
A61K 31/33-33/44
A61K 36/00-36/9048
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアニン、及び25~85重量%の液状油を含む組成物において、アントシアニンとレシチンを共存させる、アントシアニンの分解抑制方法。
【請求項2】
アントシアニン100重量部当たり、レシチンを1~300重量部で共存させる、請求項1に記載の分解抑制方法。
【請求項3】
アントシアニンを含む組成物が、ソフトカプセルの内容物である、請求項1又は2に記載の分解抑制方法。
【請求項4】
アントシアニン、及び25~85重量%の液状油を含む組成物において、アントシアニンの分解を抑制するために使用されるアントシアニンの分解抑制剤であって、
レシチンを有効成分とする、アントシアニンの分解抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントシアニンの経時的な分解を抑制できるアントシアニンの安定化方法及びアントシアニンの安定化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アントシアニンは、ブルーベリー、ラズベリー、ビルベリー等のベリー類に多く含まれている天然由来の抗酸化成分であり、抗酸化作用が強く、眼精疲労回復、視力改善、眼病予防、メタボリックシンドローム予防、花粉症予防、血管の保護・強化、循環機能の改善、抗潰瘍、抗炎症等に有効であることが知られており、様々な飲食品や医薬品に使用されている。
【0003】
一方、アントシアニンは、経時安定性が低く、飲食品や医薬品に配合した場合に、経時的に分解され易いことが知られている。そこで、従来、アントシアニンの安定化を図る技術について種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アントシアニンを含有する粉末を分散させた食用油に、クエン酸、リンゴ酸、及び/又は酒石酸を配合することによって、アントシアニンの安定化が図れることが開示されている。特許文献2には、リジン及び/又はヒスチジンをアントシアニンの安定化剤として使用できることが開示されている。特許文献3には、アントシアニンと特定比率のヒスチジン及び/又はアスコルビン酸とを含む組成物は、アントシアニンの安定化が図られることが開示されている。
【0005】
このように、従来、アントシアニンの安定化を図る製剤技術については検討されているものの、近年、製品の多様化や品質向上に対する要望が向上しており、このような要望に追従するために、アントシアニンの安定化を図る新たな技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-135658号公報
【文献】特開2016-3210号公報
【文献】特開2016-96789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アントシアニンの経時的な分解を抑制できるアントシアニン安定化技術を提供することである。
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アントシアニンを含む組成物において、アントシアニンとレシチンを共存させることにより、アントシアニンの経時的な分解が抑制され、アントシアニンの安定化が図られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. アントシアニンを含む組成物において、アントシアニンとレシチンを共存させる、アントシアニンの安定化方法。
項2. アントシアニン100重量部当たり、レシチンを1~300重量部で共存させる、項1に記載の安定化方法。
項3. アントシアニンを含む組成物が、ソフトカプセルの内容物である、項1又は2に記載の安定化方法。
項4. レシチンを有効成分とする、アントシアニンの安定化剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アントシアニンの経時的な分解を抑制できるので、アントシアニンを含む飲食品、医薬品等の各種製品の保存安定性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.アントシアニンの安定化方法
本発明の安定化方法は、アントシアニンの安定化を図るための方法であって、アントシアニンを含む組成物において、アントシアニンとレシチンを共存させることを特徴とする。以下、本発明の安定化方法について、詳述する。
【0012】
[アントシアニン]
アントシアニンは、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体である。アントシアニンは、アグリコンであるアントシアニジン部分のB環上の水酸基の数によって主にペラルゴジニン、シアニジン、及びデルフィニジンの3系統があり、更に結合している糖の種類に応じて様々な分類があるが、本発明で使用されるアントシアニンは、いずれの構造のものであってもよい。
【0013】
本発明で使用されるアントシアニンは、植物由来のものであってもよく、また化学合成したものであってもよいが、品質や生産性の点から、好ましくは植物由来が挙げられる。
【0014】
植物由来のアントシアニンを使用する場合、その由来植物の種類については、アントシアニンを含むことを限度として、特に制限されないが、例えば、ブルーベリー、ビルベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー、ボイセンベリー、エルダーベリー、リンゴンベリー、グズベリー、アサマベリー、イワキベリー、イチゴ、カシス、アサイー、ブドウ、プルーン、ハスカップ、赤キャベツ、小豆、赤玉ねぎ、紫タマネギ、シソ、ナス、ウスベニアオイ、紫トウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモ、ヤマイモ、黒豆、黒ゴマ、ベニイモ、椿等が挙げられる。アントシアニンは、1種の植物由来のものを単独で使用してもよく、また2種以上の植物由来のものを組み合わせて使用してもよい。これらの由来植物の中でも、好ましくはブルーベリーが挙げられる。
【0015】
本発明で使用されるアントシアニンは、精製物又は粗精製物の状態であってもよいが、アントシアニンを含む植物抽出物の状態であってもよい。
【0016】
アントシアニンを含む植物抽出物は、アントシアニンを含む植物を抽出原料として抽出処理することにより得ることができる。具体的には、アントシアニンを含む植物抽出物は、アントシアニンを含む植物部位(例えば、ブルーベリー等のベリー類の場合であれば果実)を溶媒抽出処理に供することにより得ることができる。溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の炭素数1~4の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;これらの混合液等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは、水、低級アルコール、及びこれらの混合液、より好ましくは水、エタノール、及び含水エタノール、更に好ましくはエタノールが挙げられる。
【0017】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒中に、アントシアニンを含む植物部位を浸漬又は還流させて行えばよい。抽出処理後に固液分離により固形物を除去することにより、アントシアニンを含む抽出液が得られる。得られた抽出液は、そのまま液状のアントシアニン含有植物抽出物として使用してもよい。また、得られた抽出液は、必要に応じて濾過処理、精製処理等に供した後に、乾燥処理することによって、固体状のアントシアニン含有植物抽出物として使用してもよい。
【0018】
本発明の安定化方法において、組成物中のアントシアニンの含有量については、当該組成物の形状や製品形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、3.5~20.0重量%、好ましくは5.0~18.0重量%、より好ましくは7.5~16.0重量%が挙げられる。なお、本明細書におけるアントシアニンの含有量に関する記載は、アントシアニンを含む植物抽出物を使用する場合は、当該植物抽出物に含まれるアントシアニン量に換算した値である。後述するアントシアニンとレシチンの比率に関する記載についても、同様である。
【0019】
[レシチン]
本発明の安定化方法では、アントシアニンの安定化を図るために、組成物中でアントシアニンとレシチンを共存させる。レシチンは、狭義ではホスファチジルコリンを意味するが、広義では各種リン脂質を主成分とする脂質混合物を意味しており、本発明では、「レシチン」という用語は、後者の意味で使用する。
【0020】
本発明で使用されるレシチンの種類については、特に制限されないが、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、ひまわりレシチン、菜種レシチン、リゾレシチン(酵素処理レシチン)等が挙げられる。これらのレシチンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのレシチンの中でも、好ましくは、大豆レシチン、卵黄レシチン、ひまわりレシチン、菜種レシチン;より好ましくは大豆レシチンが挙げられる。
【0021】
本発明の安定化方法において、組成物中でアントシアニンとレシチンを共存させる際のこれらの比率としては、アントシアニン100重量部当たり、レシチンが1~300重量部、好ましくは10~260重量部、より好ましくは30~260重量部、更に好ましくは65~190重量部、特に好ましくは60~130重量部が挙げられる。
【0022】
また、本発明の安定化方法において、組成物中のレシチンの含有量については、前記比率を充足する範囲で適宜設定すればよいが、例えば、0.1~25.0重量%、好ましくは1.0~23.0重量%、より好ましくは2.0~23.0重量%、更に好ましくは5.0~20.0重量%が挙げられる。
【0023】
[液状油]
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物には、液状油が含まれていてもよい。アントシアニンとレシチンを共存させる組成物に液状油を含有させる場合、当該組成物は、ソフトカプセルの内容物として好適に使用できる。
【0024】
液状油とは、25℃において液状の形態を保つ油である。液状油としては、食品又は内服用医薬品に使用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、サフラワー油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、米胚芽油、綿実油、ヤシ油、アーモンド油、アボカド油、ツバキ油、パーシック油、ダイズ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ホホバ油、ククイナッツ油、シアバター、月見草油、シソ油、茶実油、ナタネ油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、メドウホーム油、
米油、大豆油、菜種油、落花生油等の植物油;魚油、魚卵油等の動物油;脂肪酸、中鎖脂肪酸(炭素数6~12程度)トリグリセリド、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられる。これらの液状油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの液状油の中でも、好ましくは植物油が挙げられる。
【0025】
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物に液状油を含有させる場合、組成物中の液状油の含有量としては、例えば、15~85重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは25~75重量%が挙げられる。
【0026】
[界面活性剤]
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物には、必要に応じてレシチン以外の界面活性剤が含まれていてもよい。特に、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物に液状油を含有させる場合には、水溶性を示すアントシアニンを可溶化、分散化、又は乳化させるために、レシチン以外の界面活性剤が含まれていることが好ましい。
【0027】
界面活性剤の種類としては、食品又は内服用医薬品に使用可能であることを限度として、特に制限されず、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
これらの界面活性剤の中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物に界面活性剤を含有させる場合、組成物中の界面活性剤の含有量としては、例えば、0.5~8.0重量%、好ましくは1.0~6.5重量%、より好ましくは3.0~5.0重量%が挙げられる。
【0030】
[その他の成分]
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物には、前述する成分の他に、当該組成物の形状や製品形態に応じて、各種の薬理成分、食品素材、添加剤等の成分を含有させてもよい。このような成分の種類については、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物の形状や製品形態に応じて使用可能なものを適宜選定すればよいが、例えば、水、薬理成分、清涼化剤、ロウ類、脂肪酸類、高級アルコール類、1価低級アルコール類、pH調整剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、崩壊剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、粉体、増粘剤、酸味料、甘味料、香料、着色料等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの成分の濃度については、使用する成分の種類や組成物の形状及び製品形態等に応じて適宜設定される。
【0031】
[組成物の形状・製品形態等]
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物の形状については、特に制限されず、固体状、半固体状、液状のいずれであってもよい。
【0032】
本発明の安定化方法において、アントシアニンとレシチンを共存させる組成物の製品形態については、特に制限されず、例えば、飲食品、内服用医薬品等が挙げられる。
【0033】
飲食品としては、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品等の食品形態であることが好ましい。飲食品として、具体的には、例えば、前記組成物を収容しているソルトカプセル、ハードカプセル、シロップ剤、ゼリー剤、錠剤、顆粒剤、粉剤、散剤、懸濁剤等のサプリメント;涼飲料水、酒類、栄養ドリンク、コーヒー、茶、牛乳、果汁飲料、清涼飲料等の飲料等が挙げられる。アントシアニンとレシチンを共存させる組成物は、サプリメント、とりわけソフトカプセルの内容物として好適である。
【0034】
内服用医薬品としては、例えば、前記組成物を収容しているソルトカプセル、ハードカプセル剤、液剤散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤等が挙げられる。
【0035】
2.アントシアニンの安定化剤
本発明のアントシアニンの安定化剤は、レシチンを有効成分として含むことを特徴とする。
【0036】
本発明のアントシアニンの安定化剤は、アントシアニンを含む組成物において、アントシアニンの経時的な分解を抑制し、アントシアニンを安定化させるために使用される添加剤である。
【0037】
本発明のアントシアニンの安定化剤において、使用されるレシチンの種類や添加量、安定化対象となるアントシアニンの種類や含有量、アントシアニンを含む組成物の形状や製品形態等については、前記「1.アントシアニンの安定化方法」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
試験例1
表1に示す組成のアントシアニン含有組成物(ソフトカプセルの内容物)を調製した。具体的には、先ず、所定量のグリセリン脂肪酸エステル及び大豆レシチンをサフラワー油中で加温溶解した。得られた溶液を40℃以下まで冷却した後、所定量のブルーベリー果実抽出物を添加し、ホモミキサーにて微細分散化の処理を行い、アントシアニン含有組成物を得た。
【0040】
得られたアントシアニン含有組成物20gを、50ml容の遮光ガラス瓶に充填し、40℃条件下で1ヵ月間保存した。保存前と1カ月間保存後のアントシアニン含有組成物についてアントシアニンの含有量を定量し、下記算出式に従って、アントシアニン残存率を求めた。
【0041】
【数1】
【0042】
なお、アントシアニンの含有量の定量は比色法によって行った。具体的には、先ず、保存前と1カ月間保存後のアントシアニン含有組成物0.5gを、2重量%の塩酸を含むエタノール溶液60mlに添加して混和し、80~90℃で30分間加熱還流を行い、アントシアニンを加水分解してアントシアニジンに変換させた。加熱還流後に室温まで冷却した後に溶液を濾過し、適宜希釈した後に、分光光度計を用いて可視吸収スペクトル(350~600nm)を測定し、極大吸収波長の吸光度の値からアントシアニジン含有量をデルフィニジン量として算出した。
【0043】
結果を表1に示す。この結果、アントシアニンとレシチンを共存させた場合には40℃で1カ月保存後のアントシアニンの残存率が向上しており、レシチンにはアントシアニンの安定性を向上させる作用があることが確認された。
【0044】
【表1】
【0045】
試験例2
表2に示す組成のアントシアニン含有組成物(ソフトカプセルの内容物)を調製した。具体的には、先ず、所定量のグリセリン脂肪酸エステル、ミツロウ、大豆レシチンをサフラワー油中で加温溶解した。得られた溶液を35℃以下まで冷却した後、所定量のβ-カロチン、マリーゴールド色素、及びビタミンE含有植物油を添加し、攪拌混合した。次に、ブルーベリー果実抽出物とカシス抽出物を添加し、ホモミキサーにて微細分散化の処理を行い、アントシアニン含有組成物を得た。次いで、得られたアントシアニン含有組成物350mgを、ソフトカプセル皮膜(ゼラチン及びグリセリン含有)で被覆し、ソフトカプセルを調製した。
【0046】
得られたソフトカプセルを40℃条件下で4ヵ月間保存した。保存前と4カ月間保存後のアントシアニン含有組成物についてアントシアニンの濃度を定量し、前記算出式に従って、アントシアニン残存率を求めた。保存前と4カ月間保存後のアントシアニン含有組成物(ソフトカプセルの内容物)についてアントシアニンの濃度を定量し、前述する算出式に従って、アントシアニン残存率を求めた。なお、アントシアニンの濃度の定量は、HPLC法によって行った。
【0047】
結果を表2に示す。この結果、アントシアニンとレシチンを共存させた内容物を収容しているソフトカプセルは、レシチンの濃度依存的に40℃で4カ月保存後のアントシアニンの残存率が高くなることが確認された。
【0048】
【表2】