(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】振動体および振動波モータ
(51)【国際特許分類】
H10N 30/853 20230101AFI20250206BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20250206BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20250206BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20250206BHJP
H02N 2/12 20060101ALI20250206BHJP
H02N 2/14 20060101ALI20250206BHJP
H02N 2/16 20060101ALI20250206BHJP
H10N 30/045 20230101ALI20250206BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20250206BHJP
【FI】
H10N30/853
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G02B7/08 B
G03B17/02
H02N2/12
H02N2/14
H02N2/16
H10N30/045
H10N30/20
(21)【出願番号】P 2020097583
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】000154196
【氏名又は名称】株式会社富士セラミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 隆利
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 和孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 弘文
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-180585(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078239(WO,A1)
【文献】特開2017-108619(JP,A)
【文献】特開2018-088524(JP,A)
【文献】特開2015-113279(JP,A)
【文献】特開2002-255641(JP,A)
【文献】特開2000-313664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/853
H10N 30/20
H10N 30/045
H02N 2/16
H02N 2/14
H02N 2/12
G02B 7/04
G02B 7/08
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生
じ、
前記電気機械変換素子は、下記の物質の化学式からなる、
振動体。
(1-C-E)
(Li
A
(Na
B
K
(1-B)
)
(1―A)
NbO
3
+
C
Ba(Zr
D
Ti
(1―D)
)O
3
+
E
BiFeO
3
ただし、
0<A<0.2、0.4≦B≦0.6、0<C≦0.1、0<D<1.00、0<E<0.02
【請求項2】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生
じ、
前記電気機械変換素子は、下記の物質の化学式からなる、
振動体。
(1-C-E)
(Li
A
(Na
B
K
(1-B)
)
(1―A)
NbO
3
+
C
Ba(Zr
D
Ti
(1―D)
)O
3
+
E
BiFeO
3
ただし、
0<A<0.2、0.4≦B≦0.6、0<C≦0.1、0<D<1.00、0<E<0.02
【請求項3】
請求項1または2に記載の振動体であって、
前記電気機械変換素子には、銅が添加されている、
振動体。
【請求項4】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が4~12%の範囲である、
振動体。
【請求項5】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が4~12%の範囲である、
振動体。
【請求項6】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が0.5~3.9%の範囲である、
振動体。
【請求項7】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が0.5~3.9%の範囲である、
振動体。
【請求項8】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が-0.2~0.7%の範囲である、
振動体。
【請求項9】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が-0.2~0.7%の範囲である、
振動体。
【請求項10】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が15~22%の範囲である、
振動体。
【請求項11】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が15~22%の範囲である、
振動体。
【請求項12】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が6~11%の範囲である、
振動体。
【請求項13】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が6~11%の範囲である、
振動体。
【請求項14】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が3~7%の範囲である、
振動体。
【請求項15】
ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、
前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、
前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が3~7%の範囲である、
振動体。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の振動体と、
前記振動体の駆動面に加圧接触される摺動面を有し、前記振動波によって相対運動される相対運動部材と、
を有する振動波モ-タ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
振動体および振動波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
振動波モータは、下記特許文献1のように、圧電体の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以降、進行波と略する)を発生させ、この進行波によって駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子は駆動される。しかしながら、特許文献1では、圧電体の材料に起因する駆動性能の低下については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記電気機械変換素子は、下記の物質の化学式からなる。
(1-C-E)
(Li
A
(Na
B
K
(1-B)
)
(1―A)
NbO
3
+
C
Ba(Zr
D
Ti
(1―D)
)O
3
+
E
BiFeO
3
ただし、
0<A<0.2、0.4≦B≦0.6、0<C≦0.1、0<D<1.00、0<E<0.02
【0005】
第2開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記電気機械変換素子は、下記の物質の化学式からなる。
(1-C-E)
(Li
A
(Na
B
K
(1-B)
)
(1―A)
NbO
3
+
C
Ba(Zr
D
Ti
(1―D)
)O
3
+
E
BiFeO
3
ただし、
0<A<0.2、0.4≦B≦0.6、0<C≦0.1、0<D<1.00、0<E<0.02
第3開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が4~12%の範囲である。
第4開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が4~12%の範囲である。
第5開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が0.5~3.9%の範囲である。
第6開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が0.5~3.9%の範囲である。
第7開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が-0.2~0.7%の範囲である。
第8開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合される前の前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記電気機械変換素子の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が-0.2~0.7%の範囲である。
第9開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が15~22%の範囲である。
第10開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、-20℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する-20℃の時の変化割合が15~22%の範囲である。
第11開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が6~11%の範囲である。
第12開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から60℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の60℃の時に対する0℃の時の変化割合が6~11%の範囲である。
第13開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で500[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が3~7%の範囲である。
第14開示技術の振動体は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、0℃から60℃の温度範囲で比誘電率の温度特性が絶対値で390[ppm/℃]以下である電気機械変換素子を有し、前記電気機械変換素子の励振により振動波が生じ、前記振動体に接合された前記電気機械変換素子は、0℃から25℃までの温度範囲において、前記振動体の静電容量の25℃の時に対する0℃の時の変化割合が3~7%の範囲である。
【0006】
第3開示技術の振動波モータは、第1開示技術または第2開示技術の振動体と、前記振動体の駆動面に加圧接触される摺動面を有し、前記振動波によって相対運動される相対運動部材と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる振動波モータを示す断面図である。
【
図2】
図2は、振動体および移動子の一部を切り欠いた斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1にかかる振動波モータの駆動装置を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態1にかかる圧電体を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1にかかる振動体を示す説明図である。
【
図6】
図6は、材料α~γの各々における化学式(1)の定数(A~E)と、電気機械結合係数、比誘電率、圧電定数、比誘電率の温度特性(-40~170℃、0~60℃)を示す表である。
【
図8A】
図8Aは、実施形態1にかかる圧電体の材料α,βの静電容量の温度特性を示すグラフである。
【
図8B】
図8Bは、実施形態1にかかる圧電体の材料γの静電容量の温度特性を示すグラフである。
【
図9A】
図9Aは、材料α,βを用いた場合の振動体の静電容量の温度特性を示すグラフである。
【
図9B】
図9Bは、材料γを用いた場合の振動体の静電容量の温度特性を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態1にかかる振動波モータとPZT搭載品の振動波モータとについて、各温度の消費電流を測定したグラフである。
【
図11】
図11は、振動波モータの振動体の等価回路を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態1にかかる振動波モータの駆動可能な駆動信号の最低電圧を示す表である。
【
図13】
図13は、振動波モータを搭載したレンズ鏡筒を示す断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態2にかかる円環型の振動波モータをレンズ鏡筒に搭載したレンズ鏡筒を示す断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態3にかかる振動体を示す説明図である。
【
図16】
図16は、実施形態3にかかる振動体の駆動原理を示す説明図である。
【
図17】
図17は、実施形態4にかかる防塵装置の一例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、振動波モータ用として製作した圧電体の材料であるPZT(富士セラミックス製)の静電容量の温度特性例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、
図18のPZTを圧電体材料とした場合の振動波モータの振動体の静電容量の温度特性例を示すグラフである。
【
図20】
図20は、PZT搭載品の振動波モータについて、各温度時の入力される電流を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
振動波モータは、圧電体の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行波を発生させ、この進行波によって駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子は駆動される。振動波モ-タは、低回転でも高トルクを有すると行った特徴があり、駆動装置に搭載した場合に、駆動装置のギアを省略することができる。したがって、ギア騒音をなくすことで静寂化を達成したり、位置決め精度が向上したりできる。
【0009】
このような振動波モータの振動体は、一般的には、電気機械変換素子(以降、圧電体と称する)と、弾性体とから構成される。圧電体は、一般的には通称PZTと呼ばれるチタン酸ジルコン酸鉛といった材料から構成されている。
【0010】
図18は、振動波モータ用として製作した圧電体の材料であるPZT(富士セラミックス製)の静電容量の温度特性例を示すグラフである。温度に対して約4.4[pF/℃](≒2750[ppm/℃])程度の傾斜を持っていることがわかる。
【0011】
図19は、
図18のPZTを圧電体材料とした場合の振動波モータの振動体の静電容量の温度特性の例を示すグラフである。温度に対して約6.2[pF/℃](≒4430[ppm/℃])程度の傾斜を持っていることがわかる。この傾斜は、たとえば、低温になるほど圧電体の静電容量が下がり、高温になるほど圧電体の静電容量が増加することを示している。
【0012】
図20は、PZT搭載品の振動波モータについて、各温度時の入力される電流を測定したグラフである。各測定とも駆動電圧は70[Vrms]と設定して、所定の回転速度にて駆動した時の振動波モータへ入力される電流を測定した。常温時の電流に対して、低温になるほど入力電流は低下するが、高温になるほど入力電流は増加する現象がみられる。この現象は、
図19に示した振動体の静電容量の値の温度特性と一致する。
【0013】
低温になるほど振動体の静電容量が低下するためインピーダンスが上がる故に入力電流は低下するが、高温になるほど振動体の静電容量が増加するためにインピーダンスが下がってしまい、入力電流がその分増加してしまう。したがって、高温になるほど振動体の静電容量が増加するため、振動波モータは効率的な駆動ができない。
【0014】
振動波モータは、駆動装置から供給される駆動信号により駆動力が生じ、ある駆動信号の条件、たとえば、適正電圧値の時に所望の駆動性能が得られるが、その駆動信号の電圧は、圧電体の静電容量により変化する。
【0015】
圧電モータを駆動する駆動回路のインピーダンスと圧電モータのインピーダンスとの整合(マッチング)をとるための整合回路を備えた駆動装置もある。
図18に示したように、PZTは大きな温度特性を持つため、このような駆動装置において常温時で適正電圧に調整しても、低温時の駆動電圧および高温時の駆動電圧が大きく異なってしまう。したがって、振動波モータの駆動性能(駆動効率や駆動力)を十分に発揮できない。
【0016】
本実施形態では、環境問題に対応すべく、圧電体に鉛フリーの材料を適用することにより、振動波モータの駆動性能の向上を図る。以下、本実施形態の振動体および振動波モータを、実施形態1~実施形態4で説明する。
【0017】
[実施形態1]
<振動波モータ>
図1は、実施形態1にかかる振動波モータを示す断面図である。
図2は、振動体10および移動子20の一部を切り欠いた斜視図である。実施形態1では、振動体10側を固定とし、相対運動部材の一例である移動子20を駆動するように構成される。移動子20は、アルミニウム等の軽金属により構成される。移動子20の摺動面20aには耐摩耗性向上のための表面処理が成されている。
【0018】
振動体10は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気機械変換素子(以下、圧電体と称する)11と、圧電体11が接合された弾性体12と、から構成され、振動体10には進行性振動波が発生する。
【0019】
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料から成り、形状は円環形状である。弾性体12の一面(接合面12f)には圧電体11が接合され、その接合面12fと反対側には、溝12bが切られている。そして、突起部分(溝12bがない箇所)12cの先端は駆動面12aとなって移動子20の摺動面20aに加圧接触される。駆動面12aには潤滑性の表面処理がなされている。
【0020】
弾性体12の溝12bが切られていない部分はベース部12dであり、ベース部12dから内径側にフランジ12eが伸延されている。フランジ12eの最内径部は、固定部材13に固定されている。弾性体12の突起部分12cには、全体を覆うようにして塗装膜や潤滑メッキ等の摺動部材が施されている。
【0021】
圧電体11は、後に詳述するが、鉛フリーの材料である主成分ニオブ酸ナトリウムカリウムの材料から構成されている。圧電体11の弾性体12との接合面12fの反対側の面(反接合面)には、駆動信号を伝達するためにフレキシブルプリント基板(FPC)14が接合されていて、回路基板に伸びている。反接合面には、電極が配置され、それは円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれた2群構造となっている。各相においては、1/2波長毎に交互に分極され、A相とB相との間には1/4波長分間隔があくように電極が配置されている。
【0022】
出力軸21は、ゴム部材22と出力軸21のDカットにはまるように挿入されたストッパー部材23を介して移動子20に結合されている。そして、出力軸21とストッパー部材23はEクリップ24により固定され、移動子20と一体に回転するようにされている。
【0023】
ストッパー部材23と移動子20との間のゴム部材22は、ゴムによる粘着性で移動子20とストッパー部材23と結合する機能があり、かつ、移動子20からの振動を出力軸21へ伝えないための振動吸収との機能があるブチルゴム等が好適である。加圧部材25は、出力軸21の出力ギア41とベアリング27との間に設けられている。このような構造により、移動子20は弾性体12の駆動面12aに加圧接触する。
【0024】
<振動波モータの駆動装置>
図3は、実施形態1にかかる振動波モータ1の駆動装置300を示すブロック図である。駆動装置300は、制御部301と、発振部302と、移相部303と、増幅部304と、振動波モータ1と、検出部305と、を有する。制御部301は、レンズ鏡筒110(
図13を参照)内またはカメラ本体のCPU310と電気的に接続される。
【0025】
制御部301は、レンズ鏡筒110内またはカメラ本体のCPU310からの駆動指令を基に振動波モータ1の駆動を制御する。制御部301は、検出部305からの検出信号を受け、その値を基に、位置情報と速度情報とを得て、目標位置に位置決めされるように発振部302の周波数を制御する。
【0026】
発振部302は、制御部301の指令により所望の周波数の駆動信号を発生する。移相部303は、発振部302で発生した駆動信号を位相の異なる2つの駆動信号に分ける。増幅部304は、移相部303によって分けられた2つの駆動信号をそれぞれ所望の電圧に昇圧する。増幅部304からの駆動信号は、振動波モータ1に伝達され、この駆動信号の印加により振動体10に進行波が発生し、移動子20が駆動される。
【0027】
検出部305は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等により構成され、移動子20の駆動によって駆動された駆動物の位置や速度を検出し、検出値を電気信号として制御部301に伝達する。
【0028】
次に、振動波モータ1の動作を説明する。制御部301から駆動指令が発令されると、発振部302は駆動信号を発生させる。その駆動信号は移相部303により90度位相の異なる2つの駆動信号に分割され、増幅部304により所望の電圧に増幅される。増幅された駆動信号は、振動波モータ1の圧電体11に印加され、圧電体11は励振(振動)される。その圧電体11の励振によって、弾性体12には4次の曲げ振動が発生する。圧電体11はA相とB相とに分けられており、駆動信号はそれぞれA相とB相に印加される。
【0029】
A相から発生する4次曲げ振動とB相から発生する4次曲げ振動とは位置的な位相が1/4波長ずれるようになっている。また、A相駆動信号とB相駆動信号とは90度位相がずれているため、2つの曲げ振動は合成され、4波の進行波となる。
【0030】
進行波の波頭には楕円運動が生じる。したがって、駆動面12aに加圧接触された移動子20は、この楕円運動によって摩擦的に駆動される。移動子20の駆動により駆動された駆動体には、検出部305としての光学式エンコーダが配置されていて、光学式エンコーダから電気パルスが発生し、制御部301に伝達される。制御部301は、この電気パルスの信号を基に、現在の位置と現在の速度を得ることが可能となる。
【0031】
<圧電体11>
図4は、実施形態1にかかる圧電体11を示す説明図である。
図4の(a)は、圧電体11の表面11Aを示した図であり、
図4の(b)は、圧電体11の裏面11Bを示した図である。
図5は、実施形態1にかかる振動体10を示す説明図である。
図5の(a)は、振動体10の側面を示した図であり、
図5の(b)は、圧電体11の表面11A側から見た振動体10を示した図である。
【0032】
表面11Aにおいて、電極16は円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれている。各相においては、1/2波長毎に交互に分極され、A相とB相との間には1/4波長分間隔が空くように、銀ペーストにより電極16が圧電体11の素地18に印刷されている。電極16は、NiPや金等の金属メッキでもよい。圧電体11の素地18は、主成分をニオブ酸ナトリウムカリウムである鉛フリー材料から構成されている。
【0033】
裏面11Bは、電極16のような電極パターンではない電極19が銀ペーストにより印刷され、外周側と内周側とに圧電体11の素地18が見えた形状となっている。電極19は、NiPや金等の金属メッキでもよい。裏面11Bは、常温硬化性の接着剤により弾性体12と接合する。
【0034】
また、表面11Aには、駆動装置300からの駆動信号を伝達するためにFPC14が接合されていて、駆動装置300に接続される。FPC14のGND線は、1/4波長の電極16に接合されているが、1/4波長の電極16と弾性体12の金属部とは不図示の導電塗料を用いて跨ぐように接合されていて、弾性体12の金属部に接地されるようになっている。
【0035】
ここで、圧電体11の材料について説明する。圧電体11の材料は、ニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電セラミックスで、たとえば、下記の材料および製造方法が使用される。圧電体11の材料は、以下の化学式(1)の通りである。
【0036】
(1-C-E)(LiA(NaBK(1-B))(1―A)NbO3+CBa(ZrDTi(1―D))O3+EBiFeO3
ただし、
0<A<0.2、0.4≦B≦0.6、0<C≦0.1、0<D<1.00、0<E<0.02
・・・(1)
【0037】
この圧電体11の材料においては、比誘電率の温度特性が極めて小さい。具体的には、-40℃から170℃の範囲で比誘電率の変化率が絶対値で500[ppm/℃]以下、すなわち-500~+500[ppm/℃]の範囲となっている。そのため圧電体11の静電容量の温度特性が極めて小さくできる。
【0038】
原料に炭酸ナトリウムと炭酸カリウムを使用すると、混合時と粉砕時のスラリーのpHが強アルカリ性になる。このため、本実施形態では、原料に、水熱合成法で作製したナノサイズの粒径のニオブ酸ナトリウムとニオブ酸カリウムを使用する。これにより、pHを弱アルカリにすることが可能になる。
【0039】
また、ニオブ酸ナトリウムとニオブ酸カリウムのナトリウムとニオブおよびカリウムとニオブの組成比(x)が1.00≦x≦1.01の範囲のものを使用してもよい。以下に示す製造方法では、(x)が1.00の場合と1.01の場合との違いを確認すべく、(x)の範囲を変化させた。
【0040】
以下、製造方法について具体的に説明する。ニオブ系非鉛圧電セラミック材料の組成として、化学式(1-C-E)(LiA(NaBK(1-B))(1-A)NbO3を基準にして、AおよびBを下記の範囲でそれぞれ変化させ実施した。
【0041】
0.055≦A≦0.1
0.4≦B≦0.6
【0042】
これに、チタン酸ジルコン酸バリウムおよびビスマスフェライトを添加した組成とした。
【0043】
(1-C-E)(LiA(NaBK(1-B))(1-A)NbO3+CBa(ZrDTi(1-D))O3+EBiFeO3
(0.055≦A≦0.1、0.4≦B≦0.6、0.05≦C≦0.1、
0.17≦D≦0.83、0.005≦E≦0.01)
【0044】
本実施形態の配合方法は、炭酸リチウムを0.055molから0.1mol、炭酸バリウムを0.05molから0.1mol、酸化ジルコニウムを0.05molから0.1mol、酸化チタンを0.05molから0.1mol、酸化ビスマスを0.005molから0.01molおよび酸化鉄を0.005molから0.01molの割合で配合した。
【0045】
また、代表例として全体の配合量が100gスケールになるように配合した
図6の材料αの組成の配合量およびその作製方法を説明する。
【0046】
図6は、材料の各々における化学式(1)の定数(A~E)と、電気機械結合係数、比誘電率、圧電定数、比誘電率の温度特性(変化率)を示す表である。比誘電率の温度特性については、2つの温度範囲(-40~170℃、0~60℃)について測定した。電気機械結合係数は大きいほど、効率よく電気エネルギーを機械エネルギーに変換される。材料γには、本成分の以外にも0.1wt%のCuが添加されている。これにより、機械的品質係数(
図11で後述)が向上する。
【0047】
図6の材料αの組成の配合量およびその作製方法では、炭酸リチウムを0.057mol、炭酸バリウムを0.05mol、酸化ジルコニウムを0.0415mol、酸化チタンを0.0085mol、酸化ビスマスを0.005mol、酸化鉄を0.005molの割合で配合し、ボールミルにより300mlの水中で24時間混合粉砕し、一次混合粉砕液を作製した。また、
図6の材料αの組成の配合量に対し、他のNo.おけるA~Eの組成の配合量はそれぞれ、材料αに対する相違する比率案分で決定される。
【0048】
その一次混合粉砕液に150℃~300℃で1~12時間ソルボサーマル反応させた水熱合成法で作製したニオブ酸ナトリウムを0.444molとニオブ酸カリウムを0.444molの割合で配合し、混合物を作製した。その混合物を室温下で再度ボールミルにより300mlの水中で24時間混合粉砕して二次混合粉砕液を作製した。その後、その二次混合粉砕液はpH10以下のpH8.9~pH9.8の弱アルカリを示した状態で、85℃で48時間乾燥し、乾燥物を作製した。
【0049】
ついで、この乾燥物700℃から800℃の範囲で2回仮焼結を実施した。1回目の仮焼結は電気炉を用いて800℃で2時間行い、その後、その仮焼粉をボールミルにより300ml水中にて24時間粉砕させ、恒温槽を用いて85℃で48時間乾燥し、一次仮焼粉砕乾燥粉を作製した後に再度、仮焼結を実施した。
【0050】
2回目の仮焼結温度範囲は、一度目の仮焼結と同一の温度条件の800℃、時間は2時間で行った。但し、一度目の仮焼結と二度目の仮焼結は、焼成温度が異なる条件で実施しても良い。焼結雰囲気の条件として、本実施形態では大気雰囲気中で行ったが、大気以外の雰囲気として実施も可能である。たとえば、酸素雰囲気中により製造できる。
【0051】
仮焼粉の粉砕方法については、ボールミル、ビーズミルなどの方法で、二次仮焼粉砕乾燥粉の粒径が1μm以下になるように、2回目の仮焼粉をボールミルにより300mlの水中にて24時間粉砕させ、恒温槽を用いて85℃で48時間乾燥し、二次仮焼粉砕乾燥粉を作製した。
【0052】
その後、二次仮焼粉砕乾燥粉と10wt%のバインダーを混合し、#40メッシュの篩を通過させ、恒温槽を用いて110℃で1時間乾燥し、顆粒状の整粒粉を作製した。
【0053】
整粒後に、φ15mmの金型に整粒粉を投入し、油圧プレス機(200tonプレス)を用いて圧力を加えて成型密度(ρ)が約2.3g/cm3から2.6g/cm3で成型体の厚みが1.5mmになるように成型した。圧力を加える時間は1から10秒とした。なお、成型密度(ρ)が約2.3から2.6g/cm3で成型は、上限2.6g/cm3、下限2.3g/cm3のなかで、変化させ実施した。その結果は、2.5g/cm3が最適であった。
【0054】
成型した後、電気炉を用いて温度範囲が700℃から800℃で脱脂を行うが、実施形態では700℃で4時間保持し、その後、焼成温度範囲1100℃から1250℃で焼成することがよい。実施形態では1200℃で実施した。焼成時の雰囲気は大気等で実施した。
【0055】
焼成後、焼成体をT=0.5mmの厚さまで研磨機(6BN、HAMAI、#800番手研磨剤)を用いて加工し、その後、加工した素子の表面に銀ペースト(SR-2099、ナミックス株式会社製)をスクリーン印刷法で塗布し、電気炉を用いて800℃で銀電極を設ける。その銀電極付きの素子を50℃の絶縁オイル(シリコンオイル)中で4.0kV/mmの電圧を10分間印加して分極してニオブ系非鉛圧電セラミックスを製造した。
【0056】
また、ニオブ系非鉛圧電セラミック材料の測定方法は、分極処理後に24時間放置し、インピーダンスアナライザー(Agilent社製 装置4294A)を用いて共振-反共振法により測定した。また、等価圧電定数の測定にはd33メータ(ZJ-43、中国科学院声字研究所)を用いて測定した。
【0057】
本実施形態のニオブ系非鉛圧電セラミックスはこの製造方法で得られた。得られたニオブ系非鉛圧電セラミックスを下記の方法により、電気機械結合係数、比誘電率、圧電定数、比誘電率の温度特性、キュリー点の温度特性を測定した。
【0058】
<測定装置、測定方法>
本実施形態の製造方法で作製したニオブ系非鉛圧電セラミック材料の比誘電率の温度特性の測定方法について説明する。
【0059】
ここで得られた直径φ10×T0.5mmの形状の圧電体11について、24時間放置した後、小型超低温恒温器(MC-811,espec)を使用して、-40℃から170℃までと、170℃から-40℃までの10℃ごとにインピーダンスアナライザー(Agilent社製 装置4294A)を用いて、周波数1kHz、電圧0.5Vの時の静電容量を測定して比誘電率を算出した。その結果を
図7に示す。
【0060】
図7は、比誘電率の温度特性図である。
図7では、その測定を-40℃から170℃の温度範囲に昇温、逆に170℃から-40℃へと降温させたときの比誘電率の変化を示した。本実施形態では比誘電率の値が、-40℃の低温側から測定した昇温時と、170℃の高温側から測定した降温時の値の差が最大38と小さく、かつ、相転移前後の比誘電率のヒステリシス値が32から38の範囲内であった。
【0061】
一般的に、水晶のような材料では、-40℃から170℃の温度範囲で比誘電率が殆ど変化しないことが知られている。本実施形態にあっても、
図7から見られるようにこの範囲内で十分な実用性を持つ素材が提供できたことが認められる。
【0062】
<圧電体11の静電容量の温度特性>
図8Aは、実施形態1にかかる圧電体11の材料α,βの静電容量の温度特性を示すグラフである。
図8Bは、実施形態1にかかる圧電体11の材料γの静電容量の温度特性を示すグラフである。
図8Aおよび
図8Bでは、たとえば、-20℃より大きく0℃以下を低温範囲、0℃より大きく25℃以下を常温範囲、25℃より大きく60℃以下を高温範囲とする。低温時から高温時までの材料α,β,γの静電容量の変化は、60℃を基準とした場合に、材料αについては、0℃では約2%、-20℃でも約10%の変動となっている。材料βについては、0℃では約4%、-20℃時でも約11%の変動となっている。材料γについては、0℃では約1%、-20℃時でも約5%の変動となっている。
【0063】
<振動体10の静電容量の温度特性>
図9Aは、材料α,βを用いた場合の振動体10の静電容量の温度特性を示すグラフである。
図9Bは、材料γを用いた場合の実施形態1にかかる振動体10の静電容量の温度特性を示すグラフである。低温時から高温時までの振動体10の静電容量の変化は、60℃を基準とした場合に、材料αについては、0℃では約8%、-20℃でも約18%の変動となっている。材料βについては、0℃では約10%、-20℃時でも約20%。材料γについては、0℃では約6%、-20℃時でも約16%の変動となっている。これは、PZT搭載時の変化割合である0℃時で25%、-20℃時で31~33%よりもかなり小さくなっている。
【0064】
<消費電流測定>
図10は、実施形態1にかかる振動波モータ1とPZT搭載品の振動波モータとについて、各温度の消費電流を測定したグラフである。各測定とも駆動電圧は70[Vrms]と設定して、所定の回転速度にて駆動した時の振動波モータへ入力される電流を測定した。材料α,β,γを搭載した振動波モータ1は、入力される電流の温度特性がほとんどないことが分かる。
図19に示したPZT搭載品の入力電流の温度特性と比較すると、特に高温時にはPZT搭載品よりも効率的に駆動できていることがわかる。この現象は、前記したように振動体10の静電容量の温度特性に起因している。この現象について
図11を用いて説明する。
【0065】
図11は、振動波モータ1の振動体10の等価回路を示す説明図である。振動体10の等価回路1100は、圧電体11の静電容量Cと、等価インダクタンスLと、等価容量Cと、共振抵抗Rと、から構成される。振動体10の電流Iaは、圧電体11の静電容量C成分への電流Ib(下記式(2))とLCR直列側への電流Ic(下記式(3))との和となる。
【0066】
【0067】
一般的に、振動波モータは、等価回路900のインピーダンスが極小になる共振周波数や、等価回路900のインピーダンスが極大になる反共振周波数よりもやや高周波側に離れた駆動周波数にて駆動する。この駆動周波数の条件においては、電流Ibの分母である1/ωCdの値は、電流Icの分母であるR+(ωL-1/ωC)値よりも非常に小さい値となるため、振動体10に入力される電流Iaは、ほぼ電流Ibと同じ値になる。すなわち、振動体10の消費電流は、圧電体11の静電容量Cの値の大小にほぼ依存されることになる。
【0068】
したがって、振動体10の静電容量が温度により変化すると、インピーダンスも変化してしまい、入力される電流の変化が生じる。材料α,β,γの搭載品は、高温になっても静電容量の増加がほとんどないため、入力される電流の増加もほとんどない。
【0069】
また、一般的な振動波モータは、駆動装置のインピーダンスと振動波モータのインピーダンスとの整合(マッチング)をとるように設計されている。それ故に圧電体11の静電容量Cdの値が変わってしまうと、駆動信号の電圧(駆動電圧E)が変わってしまう。そのため、圧電体11の静電容量Cdが環境温度により変動すると、駆動信号の電圧も変動することになる。
【0070】
PZTを搭載した振動波モータは、常温時で適正電圧に調整しても低温時の駆動電圧および、高温時の駆動電圧が大きく異なってしまう。具体的には、常温時の電圧に対して、低温時は大きくなり、高温時は小さくなる現象が生じる。低温時には本来必要な駆動電圧よりも大きく設定されてしまい、電圧が高い故に駆動回路自体の駆動効率が損なわれていた。実施形態1にかかる振動波モータ1は、PZT搭載品に比べて低温時と高温時の静電容量の変化が少ないため、駆動電圧の変動をかなり少なくすることができ、駆動装置300自体の駆動効率が改善される。
【0071】
下記式(4)のQは、機械的品質係数である。等価インダクタンスLや等価容量Cの値は、振動体10の共振特性に影響する。機械的品質係数Qは、共振特性を示す尺度で、機械的品質係数Qの値が大きいほど共振特性が良いことを示す。機械的品質係数Qは、Lm値が大きいほど大きくなる。
図6に示した材料γは材料βに比べて、機械的品質係数Qが大きくなり、共振特性が向上する。
【0072】
【0073】
また、実施形態1にかかる振動波モータ1は、駆動可能電圧の温度特性が小さいことも分かった。
【0074】
図12は、実施形態1にかかる振動波モータ1の駆動可能な駆動信号の最低電圧(以下、駆動可能電圧と称す。)を示す表である。駆動可能電圧の値よりも低い駆動電圧Eでは振動波モータ1は駆動できない。材料α,β,γとも、静電容量がほとんど変わらない温度0~50℃の範囲では、駆動可能電圧はほとんど変わっていないことがわかる。-20℃ではやや駆動可能電圧が大きくなっているが、PZT搭載した場合よりも変動量はかなり小さい。
【0075】
本発明者の実験で、駆動可能電圧は振動体10の静電容量と相関があることが分かっている。その理由を説明する。振動体10の電気機械結合係数Kvnは、振動体10に蓄えられる電気的エネルギーUiから振動の歪エネルギーである機械エネルギーUtへの変換される量として下記式(5)で示される。
【0076】
Kvn=(Ut/Ui)0.5・・・(5)
【0077】
振動体10に蓄えられる電気的エネルギーUiは、ほとんどが圧電体11に蓄えられることになる。一方、圧電体11に蓄えられるエネルギーPfは下記式(6)に示した通りとなる。
【0078】
Pf=E×ω×Cdv・・・(6)
【0079】
Eは駆動電圧、ωは角振動数、Cdvは振動体10の静電容量である。振動波モータ1が駆動可能となる状態は、ある閾値以上の歪エネルギーとなった状態と考えられる。電気機械結合係数Kvnとωを一定値とすると、ある閾値の歪エネルギーは振動体10の静電容量Cdvの値と印加する電圧値に依存することになる。しかし、PZT搭載品は振動体10の静電容量Cdvが温度により変動してしまうため、それに伴い駆動可能電圧が変化してしまうと考えられる。
【0080】
一定電圧の駆動信号で駆動する場合、PZT搭載品は駆動可能電圧が大きくなる-20℃の駆動可能電圧を基準に設定して駆動電圧Eが設定される。しかし、常温時や高温時の駆動電圧Eと駆動可能電圧との差が大きくなるため、本来必要な電流よりも余計な電流が入力されることになる。一方、実施形態1にかかる振動波モータ1は、駆動可能電圧の温度特性が小さく、各温度での駆動電圧と駆動可能電圧との差があまり変わらないため、各温度にてほぼ必要な電流が入力されるようになる。
【0081】
<レンズ鏡筒>
図13は、振動波モータ1を搭載したレンズ鏡筒110を示す断面図である。レンズ鏡筒110は、外側固定筒31と、内側固定筒32と、振動波モータ1と、を有する。外側固定筒31は、たとえば、円筒形状であり、レンズ鏡筒110の外周部を覆う。外側固定筒31は、その内周面から光軸OAに向かって突出する突出片31aを有する。突出片31aは、内側固定筒32を支持する。内側固定筒32は、たとえば、円筒形状であり、外側固定筒31よりも内周側に設けられる。振動波モータ1は、外側固定筒31と内側固定筒32との間に設けられる。
【0082】
内側固定筒32には、被写体側から第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、第4レンズ群L4が同一の光軸OA上に配置されている。第3レンズ群L3は、円環状のAF(Auto Focus)環119に保持されたAFレンズである。第1レンズ群L1、第2レンズ群L2および第4レンズ群L4は、内側固定筒32に固定されている。第3レンズ群L3は、AF環119が移動することにより内側固定筒32に対して光軸OAの方向(以下、光軸方向)に移動可能に構成される。
【0083】
振動波モータ1は、ギアユニットモジュール113に取り付けられている。ギアユニットモジュール113は、レンズ鏡筒110の内側固定筒32に取り付けられている。振動波モータ1の出力ギア41は、ギアユニットモジュール113の減速ギア115を介して、カム環116に回転運動が伝達され、カム環116は回転駆動する。
【0084】
カム環116には、周方向に対して斜めにキー溝117が切られている。AF環119は、固定ピン118を有する。固定ピン118は、キー溝117に挿入される。AF環119は、固定ピン118がキー溝117に挿入された状態でカム環116が回転駆動することにより、光軸OA方向に直進方向に駆動され、所望の位置に停止できるようにされている。
図2に示した駆動装置300は、レンズ鏡筒110の外側固定筒31と内側固定筒32との間に設けられ、上述した振動波モータ1の駆動、制御、回転数の検出等を行う。
【0085】
このように、実施形態1にかかる振動波モータ1によれば、PZT搭載品と比較して消費電流の温度特性を小さくすることができる。また、PZT搭載品と比較して低温時と高温時の振動体10の静電容量Cdvの変化が少ないため、駆動電圧Eの変動をかなり少なくすることができ、駆動装置300自体の駆動効率が改善される。さらに、PZT搭載品と比較して振動体10の静電容量Cdvが環境温度により変動しにくいため、振動波モータ210の駆動可能電圧の温度変化も小さくすることができる。
【0086】
[実施形態2]
実施形態2は、実施形態1の振動波モータ1を円環型の振動波モータとした例である。実施形態1と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図14は、実施形態2にかかる円環型の振動波モータをレンズ鏡筒に搭載したレンズ鏡筒を示す断面図である。レンズ鏡筒200には外側固定筒31および内側固定筒32が有り、外側固定筒31および内側固定筒32に円環型の振動波モータ210を有するモータユニットを固定する機構となっている。駆動装置300は、レンズ鏡筒200の外側固定筒31と内側固定筒32の間に設けられ、振動波モータ210の駆動、制御、回転数の検出等を行う。駆動装置300は、駆動装置300のインピーダンスと振動波モータのインピーダンスとの整合(マッチング)とるようにしてある。
【0088】
つぎに、振動波モータ210の構成を説明する。振動体211は、実施形態1と同じニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電体11と、圧電体11を接合した弾性体214と、から構成されている。振動体211には進行波が発生するようにされているが、実施形態2では一例として9波の進行波として説明する。
【0089】
弾性体214は、共振先鋭度が大きな金属材料から成る。弾性体214の形状は、円環形状である。圧電体11が接合される弾性体214の反対面には溝が切ってある。溝を切る理由は、進行波の中立面にできる限り圧電体11側に近づけ、これにより駆動面216aの進行波の振幅を増幅させるためである。溝が設けられていない部分の面が駆動面216aとなり、移動子220に加圧接触される。弾性体214の駆動面216aの表面には、駆動性能確保および耐久性向上のために潤滑塗装膜が施されている。
【0090】
圧電体11は、実施形態1と同様、円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれており、各相においては、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられていて、A相とB相との間には1/4波長分間隔が空くようにしてある。圧電体11の材料は、実施形態1と同じで、比誘電率の温度特性が極めて小さい材料で、すなわち、静電容量Cの温度特性が小さい材料から構成されている。
【0091】
圧電体11の下には、不織布252、加圧部材250が配置されている。不織布252は、フェルトを例としたものであり、圧電体11の下に配置され、振動体211の振動を加圧部材250に伝えないようにしてある。
【0092】
加圧部材250は、加圧板(図示せず)の下に配置されていて、加圧力を発生させる。実施形態2では、加圧部材250を皿バネとする。皿バネでなくともコイルバネやウェーブバネでもよい。加圧部材250は、押さえ環251が固定部材223に固定されることで、保持される。
【0093】
移動子220は、アルミニウムといった軽金属からなり、摺動面の表面には耐摩耗性向上のための摺動材料が設けられている。移動子220の上には、移動子220の縦方向の振動を吸収するために、ゴムのような振動吸収部材243が配置され、その上には出力伝達部材242が配置されている。
【0094】
出力伝達部材242は、固定部材223に設けられたベアリング253により、加圧方向と径方向とを規制し、これにより移動子220の加圧方向と径方向とが規制されるようにされている。出力伝達部材242は、突起部241があり、そこからカム環315に接続されたフォークがかん合しており、出力伝達部材242の回転とともに、カム環315が回転される。
【0095】
カム環315には、周方向に対してキー溝317が斜めに切られており、AF環319に設けられた固定ピン318が、キー溝317にかん合していて、カム環315が回転駆動することにより、光軸方向に直進方向にAF環319が駆動され、所望の位置に停止できるようにされている。
【0096】
固定部材223は、押さえ環251がネジにより取り付けられ、これを取り付けることで、出力伝達部材242から移動子220、振動体211、加圧部材250までを一つのモータユニットとして構成できるようになる。
【0097】
実施形態2にかかる振動体211を用いた振動波モータ210も、PZT搭載品と比較して消費電流の温度特性がかなり小さいことは実施形態1と同じである。また、駆動装置300のインピーダンスと振動波モータ210のインピーダンスとの整合(マッチング)とるようにしてある。実施形態2にかかる振動波モータ210でも、PZT搭載品に比べて低温時と高温時の振動体10の静電容量Cdvの変化が少ないため、駆動電圧Eの変動をかなり少なくすることができ、駆動装置300自体の駆動効率が改善される。さらに、振動体10の静電容量Cdvが環境温度により変動しにくいため、振動波モータ210の駆動可能電圧の温度変化も小さいという点は実施形態1と同じである。
【0098】
[実施形態3]
実施形態3の振動波モータは、振動体が圧電体11のみから構成され、相対運動部材である駆動レールが直進駆動するタイプである。実施形態1および実施形態2と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
図15は、実施形態3にかかる振動体を示す説明図である。
図15の(A)は、振動体1500の正面図および背面図であり、
図15の(B)は、振動体1500の概略斜視図であり、
図15の(C)は、振動体1500の実装例を示す説明図である。
【0100】
実施形態3にかかる振動波モータ1は、振動体1500が圧電体11のみから構成され、相対運動部材である駆動レール1550が直進駆動するタイプである。振動体1500は、実施形態1と同じニオブ酸ナトリウム・カリウム金属酸化物からなる圧電体11と、端部に設置された摺動部材1560と、から構成されている。
【0101】
振動体1500は加圧バネ1525により駆動レール1550に加圧されている。固定部材1513と駆動レール1550との間にはリニアガイド1527が設けられており、リニアガイド固定部1527aが固定部材1513に固定され、可動部1527bが駆動レール1550に結合されており、駆動レール1550が図面の左右方向のみ可動出来るようになっている。振動体1500の摺動部材1560の位置には楕円運動を生じさせ、駆動レール1550は直進駆動される。
【0102】
振動体1500は二層構造となっており、一層目は一つの電極1510が第一面1501に設けられ、反対側の第二面1502にも同じ形状の一つの電極1520が設けられている。A相駆動信号が第一面1501側の電極1510に入力され、第二面1502の電極1520はGNDとなっている。A相駆動信号の入力により振動体1500には縦1次モード振動の定在波が発生する。
【0103】
二層目の第三面1503には4分割された電極1531~1534が設けられており、4つの電極1531~1534の分極方向はそれぞれ交互となっている。反対側の第四面1504にも第一層目と同じ形状の一つの電極1540が設けられている。B相駆動信号が第三面1503側の電極1531~1534に入力され、第四面1504側の電極1540はGNDとなっている。B相駆動信号の入力により振動体1500には屈曲二次モード振動の定在波が発生する。
【0104】
一層目と二層目とは、一層目のGNDである第二面1502と、二層目のGNDである第四面1504とが接合され、共通GNDとなっている。振動体1500の中央部には、溝部1505が設けられており、加圧バネ1525がこの溝に嵌ることで、加圧位置のずれ防止ととともに、駆動レール1550の長手方向への支持もできるようにされている。
【0105】
摺動部材1560は、耐摩耗性の良いエンジニアプラスチック材料から構成され、縦1次モード振動の定在波の振幅が最大になり、かつ屈曲2次モード振動の定在波の振幅が最大になる位置である図の場所に設けられている。
【0106】
<振動体1500の動作原理>
図16は、実施形態3にかかる振動体1500の駆動原理を示す説明図である。以下、
図16の(a)~(e)の順に時系列に説明する。
図16の(a)~(e)の左端のグラフにおいて、tは時刻であり、縦軸は電圧であり、横軸は時間である。
【0107】
t=1: A相の電圧は0で、B相の電圧はマイナスになる。このとき、縦1次振動の変位はゼロ、C点がマイナス方向で、D点がプラス方向に変位する屈曲2次振動が発生する。
【0108】
t=2: A相の電圧がプラスで、B相の電圧が0になる。このとき、プラス方向に変位となる縦1次振動が発生し、屈曲2次振動の変位はゼロになる。
【0109】
t=3: A相の電圧が0で、B相の電圧がプラスになる。このとき、縦1次振動の変位はゼロ、C点がプラス方向で、D点がマイナス方向に変位する屈曲2次振動が発生する。
【0110】
t=4: A相の電圧がプラスで、B相の電圧が0になる。このとき、マイナス方向に変位となる縦1次振動が発生し、屈曲2次振動の変位はゼロになる。
【0111】
t=5: t=1の場合に戻る。このように振動を発生させた場合、摺動部材1560が貼られたC点、D点では、
図16の右端のように楕円運動が発生する。この摺動部材1560に移動子を加圧接触されると、移動子は楕円運動により摩擦力を受け、駆動される。実施形態3では、圧電体11を実施形態1と同じ材料にしたことで、実施形態1と同様な効果が得られる。
【0112】
[実施形態4]
実施形態4は、カメラに備えられた防塵装置に振動波モータ1を適用する例を示す。実施形態1と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
図17は、実施形態4にかかる防塵装置の一例を示す説明図である。防塵装置1700は、撮像素子1701付近に設置され、圧電体11の振動により光学フィルター1702を振動させて、光学フィルター1702に付着した粉塵を除去する。実施形態4にかかる防塵装置1700も圧電体11と駆動装置300とから構成される。圧電体11の静電容量Cdの値により駆動装置300からの駆動振動の電圧が変動してしまうという課題は振動波モータ1の振動体10と同じである。実施形態4では、圧電体11を実施形態1と同じ材料にしたことで、実施形態1と同様な効果が得られる。
【0114】
なお、上述した実施形態は上記の内容に限定されるものではなく、これらを任意に組み合わせたものであってもよい。また、上述した実施形態の技術的思想の範囲で考えられるその他の態様もこれらの範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 振動波モータ、10 振動体、11 圧電体、12 弾性体、12a 駆動面、12f 接合面、20 移動子、20a 摺動面、30 駆動装置、110 レンズ鏡筒、200 レンズ鏡筒、210 振動波モータ、211 振動体、214 弾性体、216a 駆動面、220 移動子、1400 振動体、1700 防塵装置