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特許7629705広視野映像撮影支援装置およびそのプログラム、ならびに、広視野映像撮影システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】広視野映像撮影支援装置およびそのプログラム、ならびに、広視野映像撮影システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/63 20230101AFI20250206BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20250206BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20250206BHJP
   H04N 23/698 20230101ALI20250206BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20250206BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
H04N23/63 330
G03B15/00 W
G03B37/00 A
G03B15/00 H
H04N23/698
H04N23/60 500
G02B27/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020175212
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066711
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 一宏
(72)【発明者】
【氏名】小出 大一
(72)【発明者】
【氏名】久富 健介
(72)【発明者】
【氏名】小峯 一晃
(72)【発明者】
【氏名】三科 智之
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-229802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0074312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/63
G03B 15/00
G03B 37/00
H04N 23/698
H04N 23/60
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広視野映像を撮影するための複数のカメラで視野の一部を重複して撮影した前記カメラごとの映像と、前記複数のカメラの視野全体を撮影した広角カメラの映像とから、前記広視野映像における前記複数のカメラが撮影する重複領域を可視化する広視野映像撮影支援装置であって、
前記広角カメラの映像を構成するフレームごとの広角画像を平面展開した正像画像に補正することで視野全体の全体画像を生成する広角画像補正手段と、
前記全体画像から特徴点を抽出する全体画像特徴点抽出手段と、
前記複数のカメラごとに、前記カメラの映像を構成するフレームごとの画像である部分画像から特徴点を抽出する部分画像特徴点抽出手段と、
前記全体画像の特徴点と前記部分画像ごとの特徴点とをマッチングして、前記全体画像において、前記部分画像の重複領域と、前記部分画像の重複領域で一方の部分画像のみに存在する被写体領域とを視覚化領域として探索する視覚化領域探索手段と、
前記全体画像上に前記視覚化領域を示す図形を合成して表示する領域合成手段と、
を備えることを特徴とする広視野映像撮影支援装置。
【請求項2】
前記視覚化領域探索手段は、前記部分画像間で特徴点のマッチングを行うことで、部分画像同士が重複する領域を特定し、特定した領域の特徴点と前記全体画像の特徴点とのマッチングを行うことで、前記全体画像における前記重複領域を探索することを特徴とする請求項1に記載の広視野映像撮影支援装置。
【請求項3】
前記視覚化領域探索手段は、前記重複領域が同じ部分画像間でブロックごとの類似度を算出することで一方の部分画像のみに存在する被写体の領域を特定し、特定した領域の特徴点と前記全体画像の特徴点とのマッチングを行うことで、前記全体画像における前記被写体領域を探索することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の広視野映像撮影支援装置。
【請求項4】
前記部分画像の特徴点がマッチングする領域をスティッチングして前記部分画像を連結することで、前記広視野映像を生成するスティッチング手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の広視野映像撮影支援装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の広視野映像撮影支援装置として機能させるための広視野映像撮影支援プログラム。
【請求項6】
広視野映像を撮影する広視野映像撮影システムであって、
視野の一部を重複するように配置した複数のカメラと、
前記複数のカメラの視野全体を撮影する広角カメラと、
前記複数のカメラで撮影した前記カメラごとの映像と、前記広角カメラで撮影した映像とから、前記部分画像の重複領域と、前記重複領域で一方の部分画像のみに存在する被写体領域とを視覚化領域として表示するとともに、前記広視野映像を生成する請求項4に記載の広視野映像撮影支援装置と、
カメラマンの操作により、前記複数のカメラおよび前記広角カメラの向きおよびズームを制御するカメラ操作装置と、
を備えることを特徴とする広視野映像撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカメラを用いた広視野の映像撮影を支援する広視野映像撮影支援装置およびそのプログラム、ならびに、広視野映像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を利用して、遠隔地の様子をユーザがその場にいるように体験できるVR(Virtual Reality)サービスが普及してきている。VRは、HMDを装着したユーザに、事前に撮影した360°映像の中から、ユーザの頭の動きに応じた映像を提示することで、ユーザに対して、仮想的にその場にいるような没入感を与える技術である。
従来、VR用の360°映像を撮影する技術として、2台の超広角レンズ(魚眼レンズ)カメラで撮影された2つの180°映像を画像処理でつなげる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
この超広角レンズカメラで撮影された視野180°範囲の物体からの反射光は、1つの撮像素子で電荷となり記録される。例えば、SVH(Super Hi-Vision)用の約3300万画素の撮像素子を用いても、水平画素数は7680画素である。
一方、視力1.0の人の視認上限周波数が30cpd(cycles per degree)(60画素/°)であるとすると、視野180°範囲では、60画素×180°=10800画素以上が半円周上に並んでいなければ、人は画素構造を検知してしまうことになり、1つの撮像素子では、画素数が十分ではない。
そこで、複数のカメラで部分的に重複して撮影した映像を合成(スティッチング)することで、高解像度の180°映像を撮影する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-117330号公報
【文献】特表2018-518078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明のように、超広角レンズカメラを用いても広視野映像を撮影するには、解像度が足りないという問題がある。
また、特許文献2に記載の発明のように、複数のカメラで撮影した映像をスティッチングすることで、解像度を高めた広視野映像を撮影することは可能である。
【0006】
しかし、複数のカメラで撮影した映像をスティッチングする手法は、被写体が1台のカメラにしか映っていない状態でスティッチングを行う領域(重複領域)に存在していた場合、被写体の映っている映像と映っていない映像とでスティッチングを行うため、正しくスティッチングが行われず、被写体の一部が消えてしまうという問題がある。
また、スティッチングを行う手法は、スティッチングを行う領域が大きければ、それだけ映像が劣化する原因となる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、複数のカメラで広視野映像を撮影する際に、スティッチングを行う重複領域とその重複領域の一方の映像にしか被写体が存在していないことを、カメラマンに視覚的に提示することが可能な広視野映像撮影支援装置およびそのプログラム、ならびに、広視野映像撮影システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る広視野映像撮影支援装置は、広視野映像を撮影するための複数のカメラで視野の一部を重複して撮影したカメラごとの映像と、複数のカメラの視野全体を撮影した広角カメラの映像とから、広視野映像における複数のカメラが撮影する重複領域を可視化する広視野映像撮影支援装置であって、広角画像補正手段と、全体画像特徴点抽出手段と、部分画像特徴点抽出手段と、視覚化領域探索手段と、領域合成手段と、を備える構成とした。
【0009】
かかる構成において、広視野映像撮影支援装置は、広角画像補正手段によって、広角カメラの映像を構成するフレームごとの広角画像を平面展開した正像画像に補正することで視野全体の全体画像を生成する。これによって、全体画像は、複数のカメラが撮影する画像との比較が容易になる。
そして、広視野映像撮影支援装置は、全体画像特徴点抽出手段によって、全体画像からSIFT、SURF等の特徴点を抽出する。
また、広視野映像撮影支援装置は、部分画像特徴点抽出手段によって、複数のカメラごとに、カメラの映像を構成するフレームごとの画像である部分画像から特徴点を抽出する。カメラが撮影した画像は、広角カメラが撮影した全体画像の部分画像に対応するため、部分画像の特徴点と、全体画像の特徴点とは、特徴量が類似することになる。
【0010】
そして、広視野映像撮影支援装置は、視覚化領域探索手段によって、全体画像の特徴点と部分画像ごとの特徴点とをマッチングして、全体画像において、部分画像の重複領域と、部分画像の重複領域で一方の部分画像のみに存在する被写体領域とを視覚化領域として探索する。
そして、広視野映像撮影支援装置は、領域合成手段によって、全体画像上に視覚化領域を示す図形を合成して表示する。
【0011】
これによって、広視野映像撮影支援装置は、全体画像上のどこにスティッチングを行う重複領域が存在し、その重複領域で一方の部分画像のみに被写体が存在するか否かを視覚的にカメラマンに提示することができる。
【0012】
なお、広視野映像撮影支援装置は、部分画像の特徴点がマッチングする領域をスティッチングして部分画像を連結することで、広視野映像を生成するスティッチング手段をさらに備える構成としてもよい。
また、広視野映像撮影支援装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるための広視野映像撮影支援プログラムで動作させることができる。
【0013】
また、前記課題を解決するため、本発明に係る広視野映像撮影システムは、広視野映像を撮影する広視野映像撮影システムであって、複数のカメラと、広角カメラと、広視野映像撮影支援装置と、カメラ操作装置と、を備える構成とした。
【0014】
かかる構成において、広視野映像撮影システムは、視野の一部を重複するように配置した複数のカメラによって、所望の視野をカメラごとに部分的に撮影する。
また、広視野映像撮影システムは、広角カメラによって、複数のカメラの視野全体を撮影する。
【0015】
そして、広視野映像撮影システムは、広視野映像撮影支援装置によって、複数のカメラで撮影したカメラごとの映像と、広角カメラで撮影した映像とから、部分画像の重複領域と、重複領域で一方の重複領域のみに存在する被写体領域とを視覚化領域として表示するとともに、広視野映像を生成する。
これによって、広視野映像撮影システムは、全体画像上のどこにスティッチングを行う重複領域が存在し、その重複領域で一方の部分画像のみに被写体が存在するか否かを視覚的にカメラマンに提示することができる。
【0016】
そして、広視野映像撮影システムは、カメラ操作装置によって、カメラマンの操作により、複数のカメラおよび広角カメラの向きおよびズームを制御する。
これによって、カメラマンは、重複領域を狭くしたり、重複領域の2つの部分画像の両方に被写体を映すようにしたり、被写体を重複領域から外したり等のカメラ制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、複数のカメラで広角映像を生成する際に、カメラ映像間のスティッチングを行う重複領域や、重複領域の一方のカメラ映像のみに被写体が映っている被写体領域をカメラマンに視覚的に提示することができる。
これによって、本発明は、複数のカメラで広角映像を作成する際にスティッチングでの画質劣化を軽減するために重複領域の大きさを調整し、重複領域の一方のカメラ映像のみに映る被写体の存在を回避するように、カメラマンに対してカメラを操作する際のカメラワークの支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る広視野映像撮影支援装置を含む広視野映像撮影システムの構成を示すブロック図である。
図2】複数のカメラが撮影する映像と、重複領域との関係を説明するための説明図である。
図3】全体画像上に重複領域と被写体領域とを合成した画像を説明するための説明図である。
図4】カメラワークを説明するための説明図であって、(a)は2台のカメラが撮影する重複領域で一方のカメラでしか被写体を撮影していない状態を示し、(b)はズームアウトによって、2台のカメラが撮影する重複領域でともに被写体を撮影している状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る広視野映像撮影支援装置の動作を示すフローチャートである。
図6】カメラ配置の変形例を示す図であって、複数のカメラを円周上に配置した例を示す図である。
図7】円周上のカメラを配置した状態でのカメラワーク(ズームアウト)を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<広視野映像撮影システムの構成>
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る広視野映像撮影システム100の全体構成について説明する。
【0020】
広視野映像撮影システム100は、複数のカメラを用いて広視野映像を撮影するシステムである。
広視野映像撮影システム100は、広視野映像撮影支援装置1と、複数のカメラ(ビデオカメラ)2と、広角カメラ3と、カメラ操作装置4と、表示装置5と、記録装置6と、を備える。
【0021】
広視野映像撮影支援装置1は、広視野映像を撮影するための複数のカメラ2で視野の一部を重複して撮影したカメラ2ごとの映像と、複数のカメラ2の視野全体を撮影した広角カメラ3の映像とから、広視野映像における複数のカメラ2が撮影する重複領域を可視化するものである。
広視野映像撮影支援装置1は、重複領域を可視化した映像を表示装置5に表示することで、カメラマンMのカメラワークを支援する。
また、広視野映像撮影支援装置1は、複数のカメラ2で撮影されたカメラ映像をつなぎ合わせて広角映像を生成し、記録装置6に出力するものでもある。
この広視野映像撮影支援装置1の構成および動作については後記する。
【0022】
カメラ2は、映像を撮影するビデオカメラである。例えば、カメラ2は、SVH(Super Hi-Vision)用のビデオカメラである。
ここでは、カメラ2を、視野の一部を重複するように、水平方向に複数(2a,2b,2c)配置する。
【0023】
例えば、3台のカメラ2a,2b,2cは、図2に示すように、カメラ2aの撮影映像Iaとカメラ2bの撮影映像Ibとが領域D1で重複し、カメラ2bの撮影映像Ibとカメラ2cの撮影映像Icとが領域D2で重複するように配置する。なお、領域D1,D2は、同じ幅(カメラ等間隔)であっても、異なる幅(カメラ非等間隔)であっても構わない。
また、図1では、カメラ2を3台図示しているが、これに限定されず、所望の広視野を撮影するために必要な台数であれば2台でも、4台以上でも構わない。
また、カメラ2は、カメラ操作装置4からの指示により、パン、チルト、ズームを行う。なお、カメラ2は、移動機構を備え、カメラ操作装置4からの指示により、位置を移動させる機能を有するものであってもよい。
カメラ2(2a,2b,2c)は、撮影した映像を広視野映像撮影支援装置1に出力する。
【0024】
広角カメラ3は、複数のカメラ2の視野全体を撮影する広視野のカメラである。例えば、広角カメラ3は、180°以上の視野を持つ広角レンズ(魚眼レンズ)を備えたカメラである。
また、広角カメラ3は、カメラ操作装置4からの指示により、ズームを行う。なお、広角カメラ3は、移動機構を備え、カメラ操作装置4からの指示により、位置を移動させる機能を有するものであってもよい。
この広角カメラ3の解像度は、カメラ2の解像度と同じ、あるいは、それ以下であっても構わない。
広角カメラ3は、撮影した広角映像を広視野映像撮影支援装置1に出力する。
【0025】
カメラ操作装置4は、カメラマンMの操作によって、カメラ2を制御するものである。カメラ操作装置4は、図示を省略したオペレーションパネルを介して、個々のカメラ2(2a,2b,2c)のパン、チルト、ズームを制御する。なお、カメラ操作装置4は、カメラ2の配置を一定間隔に配置するように移動を制御するものであってもよい。
カメラ操作装置4は、カメラ2のズームを制御する場合、それに連動して、広角カメラ3のズームも行う。
【0026】
表示装置5は、広視野映像撮影支援装置1で重複領域を可視化した映像を表示するものである。表示装置5は、一般的なディスプレイであって、例えば、液晶ディスプレイ等である。
記録装置6は、広視野映像撮影支援装置1で生成される広角映像を記録するものである。この記録装置6は、ハードディスク等の一般的な記録媒体に、広角映像を記録する。
【0027】
<広視野映像撮影支援装置の構成>
次に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る広視野映像撮影支援装置1の構成について説明する。
【0028】
広視野映像撮影支援装置1は、広角画像補正手段10と、全体画像特徴点抽出手段11と、部分画像特徴点抽出手段12と、スティッチング手段13と、視覚化領域探索手段14と、領域合成手段15と、を備える。
なお、広角画像補正手段10の前段、部分画像特徴点抽出手段12の前段には、カメラ2および広角カメラ3のそれぞれのレンズ歪を補正する歪補正手段(不図示)を備えることが好ましい。その場合、歪補正手段は、予めキャリブレーションを行った補正係数を保持し、撮影されたフレームごとにレンズ歪の補正を行えばよい。
【0029】
広角画像補正手段10は、広角カメラ3の映像を構成するフレームごとの広角画像を平面展開した正像画像に補正することで視野全体の全体画像を生成するものである。なお、広角画像を正像画像に変換する手法は、正距円筒図法等の一般的な手法を用いることができる。
広角画像補正手段10は、補正後の全体画像を全体画像特徴点抽出手段11と領域合成手段15とに出力する。
【0030】
全体画像特徴点抽出手段11は、広角画像補正手段10で補正された全体画像から、特徴点を抽出するものである。
この特徴点の抽出には、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、SURF(Speeded-Up Robust Features)等の一般的な手法を用いればよい。
全体画像特徴点抽出手段11は、抽出した特徴点の位置および特徴量(SIFT特徴等)を、視覚化領域探索手段14に出力する。
【0031】
部分画像特徴点抽出手段12は、複数のカメラ2ごとに、カメラ2の映像を構成するフレームごとの画像である部分画像から特徴点を抽出するものである。
カメラ2が撮影するフレームは、撮影対象の視野を部分的に撮影したものである。
ここでは、広視野映像撮影支援装置1は、複数のカメラ2(2a,2b,2c)に対応して、複数の部分画像特徴点抽出手段12(12a,12b,12c)を備える。なお、部分画像特徴点抽出手段12は、必ずしも物理的に複数備える必要はなく、1つの部分画像特徴点抽出手段12で、複数のカメラ2を順次切り替えて特徴点を抽出することとしてもよい。
この部分画像特徴点抽出手段12の特徴点を抽出する手法は、全体画像特徴点抽出手段11と同じ手法を用いる。
【0032】
部分画像特徴点抽出手段12は、抽出した特徴点の位置および特徴量(SIFT特徴等)を、視覚化領域探索手段14およびスティッチング手段13に出力する。
また、部分画像特徴点抽出手段12は、特徴点を抽出した部分画像をスティッチング手段13に出力する。
【0033】
スティッチング手段13は、部分画像特徴点抽出手段12から入力されるカメラ2ごとの部分画像およびその特徴点から、重複する領域を合成するものである。
このスティッチング手段13における重複領域の合成は、一般的なスティッチング手法を用いればよい。例えば、スティッチング手段13は、2つの部分画像間で、特徴量が類似する特徴点の範囲をアルファブレンディングすることで、重複領域を重ねる。アルファブレンディングとは、一方の画像と他方の画像とをそれぞれ予め定めた透明度(α値)を乗算して加算平均する手法である。
このように、スティッチング手段13は、部分画像を重ねて繋げることで、視野を拡大したパノラマ画像を生成する。
スティッチング手段13は、順次生成するパノラマ画像で構成される広角映像を記録装置6に出力する。
【0034】
視覚化領域探索手段14は、全体画像特徴点抽出手段11で抽出された全体画像の特徴点と、部分画像特徴点抽出手段12で抽出された部分画像ごとの特徴点とをマッチングして、全体画像において、部分画像の重複領域と、重複領域で一方の部分画像のみに存在する被写体領域とを視覚化領域として探索するものである。
ここでは、視覚化領域探索手段14は、重複領域探索手段140と、被写体領域探索手段141と、を備える。
【0035】
重複領域探索手段140は、全体画像特徴点抽出手段11で抽出された全体画像の特徴点と、部分画像特徴点抽出手段12で抽出された部分画像ごとの特徴点とから、全体画像において、部分画像が重複する領域を探索するものである。
重複領域探索手段140は、部分画像間の特徴点のマッチングを行うことで、部分画像同士の重複領域を探索する
そして、重複領域探索手段140は、部分画像の重複領域の特徴点と全体画像の特徴点とのマッチングを行うことで、全体画像における重複領域の範囲を特定する。
【0036】
具体的には、重複領域探索手段140は、部分画像間で、特徴点における特徴量の類似度(距離)を計算し、最も近似する特徴点を対応付ける。そして、重複領域探索手段140は、部分画像内でマッチングした特徴点を含む水平領域を部分画像間の重複領域とする。
さらに、重複領域探索手段140は、部分画像間の重複領域と全体画像との間で、特徴点における特徴量の類似度(距離)を計算し、最も近似する特徴点を対応付ける。そして、重複領域探索手段140は、全体画像内でマッチングした特徴点を含む水平領域を全体画像に対応した重複領域と特定する。
重複領域探索手段140は、探索した部分画像間の重複領域を被写体領域探索手段141に出力するとともに、全体画像内の重複領域を領域合成手段15に出力する。
【0037】
被写体領域探索手段141は、重複領域探索手段140で探索された重複領域内において、一方の部分画像に存在し、他方の部分画像に存在しない被写体領域を探索するものである。
被写体領域探索手段141は、重複領域探索手段140で探索された部分画像間の同じ重複領域で、画像特徴が類似しない領域を部分画像内おける被写体領域として探索する。
そして、被写体領域探索手段141は、部分画像内おける被写体領域の特徴点と全体画像の特徴点とのマッチングを行うことで、全体画像における被写体領域の範囲を特定する。
【0038】
具体的には、被写体領域探索手段141は、異なる部分画像の同じ重複領域同士で、予め定めた大きさのブロックごとの類似度を算出し、類似度が予め定めた閾値よりも小さいブロックで構成される領域を部分画像内における被写体領域とする。このブロックごとの類似度には、画像間の誤差の2乗和であるSSD(Sum of Squared Difference)等、一般的な画像類似判定手法を用いればよい。
さらに、被写体領域探索手段141は、部分画像内おける被写体領域と全体画像との間で、特徴点における特徴量の類似度を計算し、最も近似する特徴点を対応付ける。そして、被写体領域探索手段141は、全体画像内でマッチングした特徴点を含む領域を全体画像に対応した被写体領域と特定する。
【0039】
なお、被写体領域は、2つの部分画像の一方には該当する被写体が存在せず、どちらの部分画像に被写体が映っているのかは不明である。
しかし、被写体領域探索手段141は、2つの部分画像の被写体領域と、全体画像との間で特徴点のマッチングを行うことで、被写体の領域を特定することができる。
被写体領域探索手段141は、探索した全体画像内の被写体領域を領域合成手段15に出力する。
【0040】
領域合成手段15は、広角画像補正手段10で補正された全体画像に、視覚化領域探索手段14で探索された視覚化領域である重複領域および被写体領域を合成するものである。
領域合成手段15は、重複領域および被写体領域として、それぞれ、全体画像上に、枠、ハッチング等の領域を示す図形、画像等を合成する。
例えば、図3に示すように、領域合成手段15は、全体画像ALL上に、重複領域Dab,Dbcとして一点鎖線を描画し、被写体領域Fとして点線を描画する。
領域合成手段15は、視覚化領域を合成した全体画像を、表示装置5に出力する。
【0041】
以上説明した構成により、広視野映像撮影支援装置1は、複数のカメラ2で広角映像を生成する際に、カメラ2間で重複する映像の領域と、当該領域に一方の映像にしか存在しない被写体の領域とを、視覚的にカメラマンMに提示することができる。
【0042】
これによって、カメラマンMは、重複領域を小さく(狭く)したり、撮影対象となる被写体を重複領域から避けるように、カメラ2を操作することができる。また、重複領域で被写体を撮影する場合でも、カメラマンMは、2台のカメラ2の撮影範囲に収まるように、カメラ2を操作することができる。
なお、広視野映像撮影支援装置1は、図示を省略したコンピュータを、前記した各手段として機能させるためのプログラム(広視野映像撮影支援プログラム)で動作させることができる。
【0043】
(カメラワークについて)
ここで、図4を参照して、複数のカメラを用いて広角映像を撮影する場合のカメラワークについて説明する。ここでは、2台のカメラ2a,2bで被写体Oを撮影することとして説明する。
【0044】
図4は、カメラマンMが、カメラ2a,2bの撮影範囲が交差する奥行より遠方を撮影領域Vとし、カメラ2a,2bの画角が重複する画角Wで被写体Oを撮影する状態を示している。
このとき、広視野映像撮影支援装置1は、カメラ2a,2bで撮影する重複領域Dをスティッチングすることで広角映像を生成する。
【0045】
図4(a)に示すように、被写体Oが、カメラ2aには撮影され、カメラ2bには撮影されない重複領域Dに存在する場合、スティッチング処理を行っても、被写体Oが欠落してしまう場合がある。
この場合、広視野映像撮影支援装置1は、図3に示したように、全体画像ALLに重複領域D(Dab)と被写体領域Fとを合成して表示することで、カメラマンMに、広角映像で被写体Oが欠落してしまう可能性があることを提示する。
【0046】
そして、カメラマンMは、図4(b)に示すように、カメラ2a,2bをズームアウトすることで、カメラ2a,2bに撮影される重複領域Dに被写体Oを存在させることができ、広角映像における被写体Oの欠落を防止することができる。
なお、被写体Oの欠落を防止するには、カメラマンMは、カメラ2a,2bの撮影方向(パン方向)を変えて、被写体Oを重複領域Dに存在しない位置で撮影することとしてもよい
また、カメラマンMは、重複領域Dを極力小さくするように、カメラワークを行ってもよい。
このように、広視野映像撮影支援装置1は、映像劣化の原因となる重複領域や被写体領域を提示することで、カメラマンMに対して、映像劣化の原因を防止した広角映像の撮影を支援することができる。
【0047】
<広視野映像撮影支援装置の動作>
次に、図5を参照(構成については適宜図1参照)して、本発明の実施形態に係る広視野映像撮影支援装置1の動作について説明する。なお、以降の動作は、撮影映像のフレーム単位の動作である。
【0048】
ステップS1において、広角画像補正手段10は、広角カメラ3で撮影された広角画像を、平面展開した正像画像に補正し、全体画像を生成する。
ステップS2において、全体画像特徴点抽出手段11は、ステップS1で補正により生成された全体画像から、SIFT、SURF等により、特徴点を抽出する。
【0049】
ステップS3において、部分画像特徴点抽出手段12は、カメラ2で撮影された映像を構成するフレーム(部分画像)から、ステップS2と同じ手法で、特徴点を抽出する。なお、ステップS3は、ステップS1,S2と並列に動作すればよい。
ステップS4において、視覚化領域探索手段14の重複領域探索手段140は、ステップS2で抽出された全体画像の特徴点と、ステップS3で抽出された複数の部分画像の特徴点から、特徴点のマッチングを行い、全体画像において、部分画像の重複領域を探索する。ここでは、重複領域探索手段140は、部分画像同士で重複領域を探索した後、その重複領域に対応する全体画像の領域を、視覚化領域となる重複領域として特定する。
【0050】
ステップS5において、視覚化領域探索手段14の被写体領域探索手段141は、ステップS4で探索された重複領域内において、一方の部分画像のみに存在し、他方の部分画像には存在しない被写体の領域を被写体領域として探索する。ここでは、被写体領域探索手段141は、部分画像同士の重複領域で類似しない領域を探索した後、その領域に対応する全体画像の領域を、視覚化領域となる被写体領域として特定する。
【0051】
ステップS6において、領域合成手段15は、ステップS1で生成された全体画像に、ステップS4で探索された重複領域と、ステップS5で探索された被写体領域とを視覚化領域として合成する。この合成画像は、表示装置5に出力され表示される。
【0052】
ステップS7において、スティッチング手段13は、カメラ2ごとの部分画像と、ステップS3で部分画像ごとに抽出された特徴点とから、スティッチング手法により、重複する領域を合成することで、部分画像を連結し、広視野の画像(パノラマ画像)を生成する。このパノラマ画像は、順次、記録装置6に記録される。
なお、ステップS7は、ステップS4~S6と並列に動作すればよい。
【0053】
ステップS8において、広視野映像撮影支援装置1は、カメラ2、広角カメラ3から映像が入力されるか否かにより撮影の終了を判定し、映像が入力される場合(ステップS8でNo)、ステップS1に戻って動作を継続する。
一方、映像入力が終了した場合(ステップS8でYes)、広視野映像撮影支援装置1は、動作を終了する。
なお、この終了判定は、図示を省略したスイッチ等で、終了が指示されたか否かで判定を行ってもよい。
【0054】
以上の動作によって、広視野映像撮影支援装置1は、複数のカメラ2で広角映像を生成する際に、カメラ2間で重複する映像の重複領域を視覚的にカメラマンMに提示することができる。
また、広視野映像撮影支援装置1は、重複領域内に被写体が存在している場合、被写体が一方のカメラ2の映像のみに存在しているか否かをカメラマンMに提示することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態に係る広視野映像撮影システム100の構成と、広視野映像撮影支援装置1の構成および動作について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0056】
<変形例>
ここでは、図1図4に示すように、広視野映像撮影システム100の複数のカメラ2を直線上に並べて配置したが、カメラ2の配置はこれに限定さない。
例えば、図6に示すように、複数のカメラ2(2a,2b,2c,2d,2e)を円周上に配置してもよい。この場合も、広角カメラ3は、複数のカメラ2(2a,2b,2c,2d,2e)の視野全体を撮影する位置に配置すればよい。
【0057】
カメラ2を円周上に配置した場合でも、撮影範囲の重複領域で被写体Oが一方の映像には映って、他方の映像に映っていない場合がある。図6の例では、カメラ2b,2cの重複領域において、被写体Oは、カメラ2bに映っており、カメラ2cには映っていない状態を示している。
この場合、カメラマンMは、図4と同様に、カメラ2(2a,2b,2c,2d,2e)をズームアウトさせることで、図7に示すように、被写体Oを、カメラ2b,2cの重複領域のどちらにも映った状態にすることができる。
【0058】
また、ここでは、広視野映像撮影支援装置1は、表示装置5に、広角カメラ3で撮影された広角画像から生成された全体画像上に、視覚化領域を合成した映像を表示することとした。
しかし、表示装置5には、視覚化領域を合成した映像とともに、スティッチング手段13が出力する実際に生成された広角映像を表示することとしてもよい。
これによって、広視野映像撮影支援装置1は、カメラマンMに、重複領域等の撮影に必要となる情報を提示しつつ、撮影結果を正確に提示することができる。
【0059】
また、ここでは、広視野映像撮影支援装置1は、スティッチング手段13を備える構成としたが、スティッチング手段13を外部の専用装置として分離してもよい。
これによって、広視野映像撮影支援装置1は、負荷を軽減させることができる。
【符号の説明】
【0060】
100 広視野映像撮影システム
1 広視野映像撮影支援装置
10 広角画像補正手段
11 全体画像特徴点抽出手段
12 部分画像特徴点抽出手段
13 スティッチング手段
14 視覚化領域探索手段
140 重複領域探索手段
141 被写体領域探索手段
15 領域合成手段
2 カメラ
3 広角カメラ
4 カメラ操作装置
5 表示装置
6 記録装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7