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特許7629889倉庫施設の保全管理システムおよび保全管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】倉庫施設の保全管理システムおよび保全管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20240101AFI20250206BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20250206BHJP
【FI】
G06Q10/08
G06Q10/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022079579
(22)【出願日】2022-05-13
(65)【公開番号】P2023167994
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 昌博
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-110709(JP,A)
【文献】特開2022-010971(JP,A)
【文献】特開2014-085685(JP,A)
【文献】特開平11-236105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の荷物を一時的に保管する保管エリアと、前記保管エリアおよび複数の輸送機器の間で前記荷物を荷役する複数の荷役機器と、を有する倉庫施設における前記荷役機器に対する保全作業の日時が予定されている保全予定データを修正する演算装置を備える倉庫施設の保全管理システムにおいて、
前記演算装置が、前記荷役機器に対する保全作業の日時として、前記複数の荷役機器を対象とする複数のセンシング機器が検出した複数の検出データに基づいた予知保全作業の日時が少なくとも予定されている前記保全予定データと、前記複数の輸送機器の発着予定日時に基づいた日時ごとの前記倉庫施設での荷役作業数を示す荷役予定データとが記憶された補助記憶部と、中央演算処理部とを有していて、
前記中央演算処理部は、前記補助記憶部に記憶されている前記保全予定データと前記荷役予定データとの少なくとも一方のデータが更新されると、前記荷役予定データに予定されている所定の日時の前記荷役作業数を、前記複数の荷役機器の中から前記保全予定データにおける前記所定の日時に予定されている前記保全作業の対象となる荷役機器を除いた残りの荷役機器で行うと仮定して、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると予測される日時に予定されている前記保全予定データにおける前記保全作業の日時を変更して、前記保全予定データを修正するデータ処理を実行することを特徴とする倉庫施設の保全管理システム。
【請求項2】
前記中央演算処理部は、予め設定された設定期間の全ての日時での前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率以上になるように、前記修正するデータ処理を実行する請求項1に記載の倉庫施設の保全管理システム。
【請求項3】
前記保全予定データには、予め設定された期間に基づいた予防保全作業の日時と前記予知保全作業の日時と、が予定されていて、
前記修正するデータ処理では、前記予防保全作業の日時の優先度が前記予知保全作業の日時の優先度よりも低く、前記予防保全作業の日時が先に変更される請求項に記載の倉庫施設の保全管理システム。
【請求項4】
前記中央演算処理部は、前記保全予定データと前記荷役予定データとに基づいて、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると予測される日時を抽出する指標として、前記保全予定データに予定されている前記保全作業の実施による前記倉庫施設での荷役効率の低下への影響度を日時ごとに予測するデータ処理を実行し、前記影響度が予め設定した基準よりも高い日時を、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると予測される日時と見做し、前記影響度が前記基準以下の日時を、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率以上に維持されると予測される日時と見做し、予め設定された設定期間の日時の中から前記影響度が前記基準よりも高い日時を抽出し、抽出したその日時に予定されている前記保全作業の日時を変更して、前記保全予定データを修正するデータ処理を実行する請求項1に記載の倉庫施設の保全管理システム。
【請求項5】
保管エリアに多数の荷物を一時的に保管し、複数の荷役機器により前記保管エリアおよび輸送機器の間で前記荷物を荷役する倉庫施設における前記荷役機器に対する保全作業の日時が予定されている保全予定データを演算装置により修正する倉庫施設の保全管理方法において、
前記演算装置の補助記憶部に記憶されている、前記荷役機器に対する保全作業の日時として、前記複数の荷役機器を対象とする複数のセンシング機器が検出した複数の検出データに基づいた予知保全作業の日時が少なくとも予定されている前記保全予定データと、前記複数の輸送機器の発着予定日時に基づいた日時ごとの前記倉庫施設での荷役作業数を示す荷役予定データとの少なくとも一方のデータが更新されると、
前記演算装置の中央演算処理部により、
前記荷役予定データに予定されている所定の日時の前記荷役作業数を、前記複数の荷役機器の中から前記保全予定データにおける前記所定の日時に予定されている前記保全作業の対象となる荷役機器を除いた残りの荷役機器で行うと仮定して、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると予測される日時に予定されている前記保全作業の日時を変更して、前記保全予定データを修正することを特徴とする倉庫施設の保全管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫装置の保全管理システムおよび保全管理方法に関し、より詳しくは、多数の荷物を一時的に保管する保管エリアと、前記保管エリアおよび複数の輸送機器の間で前記荷物を荷役する複数の荷役機器と、を有する倉庫施設の保全作業を管理する倉庫施設の保全管理システムおよび保全管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンテナターミナルの生産性を向上させるために、人工知能(AI)を利用する取り組みが進められている。具体的に、熟練技能者のクレーン操作に関する暗黙知をAIにより分析し、形式知とする取り組み、クレーンの操作を遠隔操作化あるいは自動化する取り組み、コンテナの品名、荷主名、および過去の搬入搬出日などをAIにより分析し、コンテナの蔵置場所を最適化する取り組みなどが、進められている。それらの取り組みにより、コンテナターミナルの荷役の効率化が図られることになる。このように、コンテナターミナルなどの日夜、荷物が出入りする倉庫施設では、荷役効率を向上することが求められている。
【0003】
一方で、コンテナターミナルでの荷役作業の安全性を確保するために、ガントリークレーン、トランスファークレーン(ヤードクレーン)、構内トレーラーなどの様々な種類の多数の荷役機器の保全作業(予防保全作業、予知保全作業)も重要となっている。仮に荷役機器の保全作業が不十分で、荷役作業中の荷役機器が停止する事態が生じると、荷役が停止することに加えて、その復旧に多大な手間が割かれることになり、荷役効率が大幅に低下する。それ故、倉庫施設において荷役機器の保全作業は荷役効率を担保するためにも重要である。この保全作業に関して、AIなどを利用して、対象の異常を早期に発見したり、保全作業に関するスケジュールを管理したりするシステムや方法が種々提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、保全作業が行われる場合に、保全作業の対象となる荷役機器を除いた残りの荷役機器による荷役作業となり、全ての荷役機器による荷役作業に比して荷役効率が低下する。このように、荷役機器の保全作業の実施状況は、荷役効率の低下への影響の度合いが高い。特許文献1、2に記載の発明は、保全作業の実施による荷役効率の低下への影響が考慮されていない。それ故、対象の設備の異常を早期に発見したことによる予知保全作業や予定されている予防保全作業により荷役効率が低下することになる。このように、倉庫施設での保全作業における荷役効率の低下の抑制と安全性の向上とを両立させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-182393号公報
【文献】特開2022-010971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、倉庫施設での保全作業における荷役効率の低下の抑制と安全性の向上とを両立させることができる倉庫施設の保全管理システムおよび保全管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の倉庫施設の保全管理システムは、多数の荷物を一時的に保管する保管エリアと、前記保管エリアおよび複数の輸送機器の間で前記荷物を荷役する複数の荷役機器と、を有する倉庫施設における前記荷役機器に対する保全作業の日時が予定されている保全予定データを修正する演算装置を備える倉庫施設の保全管理システムにおいて、前記演算装置が、前記荷役機器に対する保全作業の日時として、前記複数の荷役機器を対象とする複数のセンシング機器が検出した複数の検出データに基づいた予知保全作業の日時が少なくとも予定されている前記保全予定データと、前記複数の輸送機器の発着予定日時に基づいた日時ごとの前記倉庫施設での荷役作業数を示す荷役予定データとが記憶された補助記憶部と、中央演算処理部とを有していて、前記中央演算処理部は、前記補助記憶部に記憶されている前記保全予定データと前記荷役予定データとの少なくとも一方のデータが更新されると、前記荷役予定データに予定されている所定の日時の前記荷役作業数を、前記複数の荷役機器の中から前記保全予定データにおける前記所定の日時に予定されている前記保全作業の対象となる荷役機器を除いた残りの荷役機器で行うと仮定して、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると予測される日時に予定されている前記保全予定データにおける前記保全作業の日時を変更して、前記保全予定データを修正するデータ処理を実行することを特徴とする。
【0008】
上記の目的を達成する本発明の倉庫施設の保全管理方法は、保管エリアに多数の荷物を一時的に保管し、複数の荷役機器により前記保管エリアおよび輸送機器の間で前記荷物を荷役する倉庫施設における前記荷役機器に対する保全作業の日時が予定されている保全予定データを演算装置により修正する倉庫施設の保全管理方法において、前記演算装置の補助記憶部に記憶されている、前記荷役機器に対する保全作業の日時として、前記複数の荷役機器を対象とする複数のセンシング機器が検出した複数の検出データに基づいた予知保全作業の日時が少なくとも予定されている前記保全予定データと、前記複数の輸送機器の発着予定日時に基づいた日時ごとの前記倉庫施設での荷役作業数を示す荷役予定データとの少なくとも一方のデータが更新されると、前記演算装置の中央演算処理部により、前記荷役予定データに予定されている所定の日時の前記荷役作業数を、前記複数の荷役機器の中から前記保全予定データにおける前記所定の日時に予定されている前記保全作業の対象となる荷役機器を除いた残りの荷役機器で行うと仮定して、前記倉庫施設の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると予測される日時に予定されている前記保全作業の日時を変更して、前記保全予定データを修正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、修正された保全予定データは、元の保全予定データに比して保全作業による荷役効率の低下への影響度が考慮されることで、実際に保全作業が実施された場合の倉庫施設の荷役効率の低下を抑制することができる。つまり、予定で示される保全作業の実施による荷役効率の低下への影響度が高いと予測される場合には、その予定を変更し、保全作業の実施による荷役効率の低下への影響度が低いと予測される場合には、その予定を変更しない。このように、本発明は、荷役機器の保全作業により倉庫施設の安全性を向上する構成でありながら、その保全作業による荷役効率の低下を抑制することで、荷役効率の低下の抑制と安全性の向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】倉庫施設を例示する説明図である。
図2】倉庫施設の保全管理システムの実施形態を例示する説明図である。
図3】保全予定データを例示する説明図である。
図4】荷役予定データを例示する説明図である。
図5】倉庫施設の保全管理方法における保全予定データを更新する方法を例示するフロー図である。
図6】倉庫施設の保全管理方法における荷役予定データを更新する方法を例示するフロー図である。
図7】倉庫施設の保全管理方法における保全予定データを修正する方法を例示するフロー図である。
図8】修正した保全予定データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の倉庫施設の保全管理システムおよび保全管理方法を、図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示する倉庫施設1は、コンテナターミナルを示している。倉庫施設1は、物流の拠点となっているコンテナターミナルや物流倉庫などの公知の種々の倉庫施設であればよい。倉庫施設1は、複数の輸送機器2により輸送された荷物3が入庫して一時的に保管され、保管された荷物3が複数の輸送機器2により外部へと出庫して輸送されている。輸送機器2は、荷物3を輸送する公知の種々の乗り物であり、コンテナターミナルにおいて、荷物3としてコンテナを輸送する船舶や車両が例示される。倉庫施設1は、保管エリア4と複数の荷役機器5とを有している。保管エリア4は、多数の荷物3を一時的に保管するエリアである。コンテナターミナルにおける保管エリア4は、荷物3として多数のコンテナが蔵置される蔵置レーンが該当する。複数の荷役機器5は、倉庫施設1での荷物3の荷役を行う公知の種々の荷役機器である。コンテナターミナルにおける複数の荷役機器5は、荷物3としてコンテナを荷役、運搬するガントリークレーン、トランスファークレーン(ヤードクレーン)、構内シャーシが該当する。
【0013】
図2に例示する保全管理システム10の実施形態は、倉庫施設1の複数の荷役機器5の保全作業を管理している。保全管理システム10は、複数のセンシング機器11と演算装置12とを備えている。
【0014】
複数のセンシング機器11は、複数の荷役機器5をセンシングの対象としており、公知の種々のセンシング機器を用いることができる。センシング機器としては、荷役機器5の位置、荷役機器5のモータなどの駆動源の温度、荷役機器5の可動部の振動、荷役機器5の全体像や部分像を撮像した画像、荷役機器5に搭載された装置の通電状況などを検知する多種多様なセンサが例示される。複数のセンシング機器11は、倉庫施設1の各所に配置されていてもよく、複数の荷役機器5のそれぞれに設置されていてもよい。
【0015】
演算装置12は、中央演算処理部(CPU)13、主記憶部(メモリ)14、補助記憶部(例えば、HDD)15、入出力部(例えば、マウス、キーボード、ネットワークのインターフェース)16を備えている。補助記憶部15には、保全予定データ20および荷役予定データ21が記憶されている。演算装置12は、複数のセンシング機器11が取得した複数の検知データが入力可能に複数のセンシング機器11と接続されている。また、演算装置12は、図示しない輸送機器2に搭載された通信機器や輸送機器2の運行を管理する管理装置から送信されるデータが入力可能にそれらの通信機器や管理装置と接続されている。演算装置12との他の機器との接続には、ネットワーク(インターネットを含む)を用いてもよい。
【0016】
図3は、保全予定データ20の一例を示している。保全予定データ20は、設定期間内の日時(D1、・・・、Dn)ごとに、複数の荷役機器5ごと(a、b、・・・)の保全作業(PV、PD)が予定されている。複数の荷役機器5の保全作業は、保全予定データ20に予定されている日時に実施される。
【0017】
保全作業は、事後保全作業を含まず、複数の荷役機器5に不具合や故障が生じるよりも前に行われる点検、整備、部品交換などの作業を示す。保全作業には、予防保全作業PVおよび予知保全作業(劣化予兆診断、状態基準保全)PDを含む。予防保全作業PVは、予め設定された所定の期間ごとに行われる定期点検作業である。予防保全作業PVは、その作業の日時が所定の期間に基づいて予定されている。所定の期間としては、一ヶ月などの短期的な期間と、一年などの長期的な期間と、が例示される。予防保全作業PVとしては、短期的な期間の定期点検作業と長期的な期間の定期点検作業との両方を行うことが望ましい。予知保全作業PDは、複数の荷役機器5を常時、監視して、監視により不具合や故障の兆候が予測された場合に行われる点検、整備、部品交換などの作業を示す。予知保全作業PDは、予防保全作業PVと異なり、その作業の日時が荷役機器5の監視に基づいて予測されている。つまり、予防保全作業PVは、倉庫施設1での荷役作業の予定を考慮した日時に予定することが可能であるが、予知保全作業PDは、その作業の日時が荷役作業の予定を考慮せずに突発的に予測される。保全作業の作業時間は、その作業時間の単位時間が一日に限定されるものではなく、単位時間が12時間などでもよい。保全作業の作業時間は、一日のものもあり、複数日に亘るものもある。
【0018】
保全予定データ20の設定期間は、任意に設定可能である。設定期間は、予防保全作業PVの日時が予定されている場合に、その予定されている日時を含む期間に設定されてもよい。また、設定期間は、例えば、一週間などの短い期間に設定されてもよく、その場合に、設定期間外の予防保全作業PVの日時が予定されている別の予定データを用意しておくとよい。
【0019】
保全予定データ20は、まず、所定の期間に基づいた予防保全作業PVの日時が表中に埋められて予定される。ついで、保全予定データ20は、監視に基づいた予知保全作業PDの日時が予測されるごとに、予測された予防保全作業PDの日時が表中に埋められて、更新される。
【0020】
図4は、荷役予定データ21の一例を示している。荷役予定データ21は、設定期間内の日時(D1、・・・、Dn)ごとに、予測される倉庫施設1の荷役作業数を表している。荷役予定データ21は、日時ごとの荷役作業数を示す度数分布に限定されるものではなく、保全予定データ20と同様に、日時ごとに、複数の荷役機器5ごとの荷役作業の予定が集積されたデータでもよい。本実施形態では、後述するように、保全作業の実施による荷役効率の低下への影響度を予測できればよく、各荷役機器5の詳細な荷役作業の予定が特に必要になることがないが、場合によっては各荷役機器5の詳細な荷役作業の予定が必要になる場合もある。
【0021】
一日当たりの倉庫施設1の荷役作業数は、倉庫施設1に入庫される荷物3の数と倉庫施設1から出庫される荷物3の数とを合計した入出庫数に概ね比例する。よって、荷役作業数の代わりに、倉庫施設1の入出庫数を用いてもよい。倉庫施設1の荷役作業数(入出庫数)の変位は、複数の輸送機器2の発着状況に応じている。発着する輸送機器2が多くなるに連れて、荷役作業数が多くなり、発着する輸送機器2が少なくなるに連れて、荷役作業数が少なくなる。コンテナターミナルにおける荷役作業数は、輸送機器2のなかでも特に、荷物3としてコンテナを輸送する船舶の発着状況に左右される。
【0022】
図5図7に倉庫施設1の保全管理方法の一例を示す。まず、演算装置12の補助記憶部15に保存されている所定のプログラムを起動、実行する。所定のプログラムは、演算装置12に各手順を実行させる。具体的に、所定のプログラムは、図5に例示する(S110)~(S140)の各手順を演算装置12に実行させて、保全予定データ20を更新する。また、所定のプログラムは、図6に例示する(S210)~(S230)の各手順を演算装置12に実行させて、荷役予定データ21を更新する。さらに、所定のプログラムは、図7に例示する(S310)~(S350)の各手順を演算装置12に実行させて、保全予定データ20を修正する。図5図6、および、図7に例示する各々のステップ郡は、互いに独立して行われる。以下に各ステップの内容を詳述する。
【0023】
図5に例示する各ステップにより、予知保全作業PVの日時が予測され、保全予定データ20に予測された予知保全作業PVの日時が予定される。各ステップが行われる前に、保全予定データ20には、所定の期間に基づいた予防保全作業PVの日時が予定されているものとする。各ステップは、所定の周期ごとに繰り返し行われる。所定の周期は、任意に設定することが可能であるが、複数のセンシング機器11のサンプリング周期に設定してもよく、そのサンプリング周期が複数回繰り返される周期に設定してもよい。サンプリング周期が複数回繰り返される周期としては、一時間、あるいは、一日などが例示される。
【0024】
検知データを取得するステップ(S110)では、複数のセンシング機器11により取得された複数の検知データが演算装置12に入力される。複数のセンシング機器により取得された複数の検知データは、演算装置12の補助記憶部15に保存される。
【0025】
予知保全作業PDの日時を予測するステップ(S120)では、演算装置12により、複数の検知データに基づいて、荷役機器5に不具合や故障が発生する日時を予測し、予測したその日時よりも前の日時を予知保全作業PDの日時として予測するデータ処理が実行される。不具合や故障が発生する日時の予測には、公知の種々の予測手法を用いることができる。予測手法としては、検知データと予め設定された閾値とを比較して、不具合や故障の兆候を特定し、不具合や故障が発生する日時を予測する手法が例示される。この手法で用いられる閾値や予測される日時は、過去の不具合や故障の履歴から得られる経験則に基づいて予め設定することができる。予測される日時は、不具合や故障の兆候が特定された時から経験則に基づいた期間が経過した日時として特定される。過去の不具合や故障の履歴は、倉庫施設1の運用の履歴の他、多数の実験や試験の蓄積やコンピュータシミュレーション結果の蓄積を用いることができる。また、予測手法としては、複数の検知データと教師あり機械学習により作成された予測モデルとを用いて日時を予測する手法なども例示される。
【0026】
予測手法の閾値の設定基準や機械学習での目的関数は、安全性を示す指標を用いることが望ましい。安全性を示す指標としては、荷役機器5を構成する種々の部品ごとの仕様や定期点検項目などを用いることができる。例えば、荷役機器5がクレーンの場合に、ワイヤーロープの安全性を示す指標としては、ワイヤーロープの断線の度合い(断線本数およびその分布状況)、ワイヤーロープの直径、ワイヤーロープの腐食の度合いなどの規定された交換基準が例示される。
【0027】
予測した予知保全作業PDの日時は、予測した不具合や故障が発生する日時よりも前の日時であればよいが、保全作業が日程的に余裕を持って対応可能なようにより早めの日時であることが望ましい。例えば、予測した予知保全作業PDの日時は、予測した不具合や故障が発生する日時に固定値(例えば、一週間など)を加算して算出される。また、予測した予知保全作業PDの日時は、予測した不具合や故障が発生する日時までの期間の長さに対して、「1」よりも小さい正の値(例えば、「0.7」)を乗算して算出される。このように、予測した予知保全作業PDの日時が予測した不具合や故障が発生する日時よりも前の日時に設定されることで、予知保全作業PDの日時が前後しても、実際に不具合や故障が発生するよりも前に予知保全作業PDを実施することが可能となる。
【0028】
保全予定データ20を更新するステップ(S130)では、演算装置12により、保全予定データ20に予測した予知保全作業PDの日時を予定して、保全予定データ20を更新するデータ処理が実行される。このステップにより、保全予定データ20には、所定の期間に基づいた予防保全作業PVの日時と、複数のセンシング機器11の検出データ(監視)に基づいた予知保全作業PDの日時と、が予定されることになる。
【0029】
図6に例示する各ステップにより、日時ごとの荷役作業数が予測され、荷役予定データ21は、予測された荷役作業数に更新される。各ステップは、図5の各ステップと同様に所定の周期ごとに繰り返し行われてもよく、複数の輸送機器2の発着予定日時が演算装置12に入力される毎に行われてもよい。
【0030】
輸送機器2の発着予定日時を取得するステップ(S210)では、輸送機器2や輸送機器2の管理者から送信された輸送機器2の発着予定日時が演算装置12に入力される。輸送機器2の発着予定日時は、演算装置12の補助記憶部15に保存される。輸送機器2の発着予定日時は、荷物3の品名、荷主名、および過去の入出庫日などを教師データとして教師あり機械学習により作成された予測モデルを用いて予測してもよい。
【0031】
荷役作業数を予測するステップ(S220)では、演算装置12により、輸送機器2の発着予定日時に基づいて、設定期間の日時ごとの荷役作業数を予測するデータ処理が実行する。荷役作業数の予測には、公知の種々の予測手法を用いることができる。予測手法としては、日時ごとの輸送機器2の発着台数とその種類(例えば、外来シャーシと船舶)から倉庫施設1の入出庫数を算出して、算出したその入出庫数に基づいて荷役作業数を算出する手法、輸送機器2の発着予定日時と教師あり機械学習により作成された予測モデルとを用いる手法などが例示される。
【0032】
予測した荷役作業数は、保管エリア4および複数の輸送機器2の間の荷役作業に加えて、保管エリア4での荷繰り作業を含めることが望ましい。荷繰り作業は、保管エリア4に保管された荷物3を整理する作業であり、円滑な荷役作業に必要な作業である。そこで、このステップでは、輸送機器2の発着予定日時に加えて、保管エリア4での荷物3の保管位置を荷役作業数の予測に用いるとよい。予測した荷役作業数が荷繰り作業も含むことで、荷役作業数をより高精度に予測可能になる。
【0033】
荷役予定データ21を更新するステップ(S230)では、演算装置12により、荷役予定データ21の日時ごとの荷役作業数を更新するデータ処理が実行される。荷役予定データ21は、日時ごとの荷役作業数が輸送機器2の発着予定日時により大幅に変動する可能性がある。それ故、荷役予定データ21は、輸送機器2の発着予定日時を取得するごとに更新されることが望ましい。特に、倉庫施設1がコンテナターミナルで構成される場合に、荷役予定データ21は、荷役作業数が大幅に変動する船舶の発着予定日時を取得するごとに更新されることが望ましい。
【0034】
図7に例示する各ステップにより、保全予定データ20に予定されている保全作業の実施による倉庫施設1での荷役効率の低下への影響度が予測され、予測された影響度に基づいて保全予定データ20が修正される。各ステップは、(S310)のステップにより、保全予定データ20および荷役予定データ21の少なくともどちらか一方のデータが更新された場合に行われてもよく、図5および図6の各ステップと同様に所定の周期ごとに繰り返し行われてよい。
【0035】
データが更新されたか否かを判定するステップ(S310)では、演算装置12により、保全予定データ20および荷役予定データ21の更新を監視し、少なくともどちらか一方のデータが更新されたか否かを判定するデータ処理が実行される。図7に例示する各ステップが所定の周期ごとに行われる場合に、このステップは省略することが可能である。
【0036】
データを読み込むステップ(S320)では、演算装置12により、保全予定データ20および荷役予定データ21の両方のデータを読み込むデータ処理が実行される。データの読み込みは、補助記憶部15に保存されている保全予定データ20および荷役予定データ21を主記憶部14に読み込むことである。
【0037】
荷役効率の低下への影響度を予測するステップ(S330)では、演算装置12により、保全予定データ20および荷役予定データ21に基づいて、設定期間の日時ごとに、保全予定データ20に予定されている保全作業の実施による倉庫施設1の荷役効率の低下への影響度を予測するデータ処理が実行される。影響度を予測する手法としては、種々の手法を用いることができる。例えば、荷役予定データ21の所定の日時に予定されている荷役作業数と、保全予定データ20のその所定の日時に予定されている保全作業の対象となる荷役機器5を除いた残りの荷役機器5での最大荷役作業数と、の割合と予め設定した閾値を比較する手法を用いてもよい。また、所定の日時のそれらの残りの複数の荷役機器5の一台当たりの荷役作業数を算出し、算出した一台当たりの荷役作業数と予め設定した閾値を比較する手法を用いてもよい。また、荷役予定データ21の所定の日時に予定されている荷役作業数を、複数の荷役機器5のなかの保全予定データ20のその所定の日時に予定されている保全作業の対象となる荷役機器5を除いた残りの荷役機器5で行うと仮定したコンピュータシミュレーションにより予測する手法を用いてもよい。コンピュータシミュレーションは、倉庫施設1での荷役作業をモデル化したモデルを用いてもよく、教師あり機械学習により作成された予測モデルを用いてもよい。
【0038】
影響度を予測する手法の閾値の設定基準やコンピュータシミュレーションでの目的関数は、荷役効率を示す指標を用いることが望ましい。荷役効率を示す指標としては、複数の荷役機器5の一台あたりの荷役作業数、複数の輸送機器2の倉庫施設1での滞在時間、時間当たりの荷物3の入出庫数、荷物3の荷役速度などを用いることができる。例えば、倉庫施設1がコンテナターミナルの場合に、コンテナ港湾生産性指数(CPPI)が例示される。
【0039】
影響度は、保全予定データ20に予定されている保全作業が実施された場合の倉庫施設1の荷役効率の低下に影響を及ぼす度合いを示す。影響度は、所定の日時の荷役作業数およびその所定の日時の荷役作業可能な荷役機器5の台数の割合と正の相関関係がある。影響度は、所定の日時の荷役作業数が多くなるにつれて高くなり、所定の日時の荷役作業数が少なくなるにつれて低くなる。また、影響度は、所定の日時の荷役作業可能な荷役機器5の台数が少なくなるにつれて高くなり、所定の日時の荷役作業可能な荷役機器5の台数が多くなるにつれて低くなる。
【0040】
影響度が高いか否かを判定するステップ(S340)では、演算装置12により設定期間の日時ごとの影響度が、予め設定した基準よりも高いか否かを判定するデータ処理が実行される。このステップで、設定期間の日時のいずれか一つでも影響度が基準よりも高いと判定されると、(S350)のステップへ進み、設定期間の日時のいずれも影響度が基準以下と判定されると、スタートへ戻る。具体的に、演算装置12は、影響度が基準よりも高い場合に、予定されている保全作業を実施すると倉庫施設1の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると見做し、影響度が基準以下の場合に、予定されている保全作業を実施しても倉庫施設1の荷役効率が目標とする荷役効率以上に維持されると見做している。
【0041】
倉庫施設1の荷役効率が、倉庫施設1が目標とする荷役効率を下回ると、複数の輸送機器2の倉庫施設1での滞在時間が長期化したり、時間当たりの荷物3の入出庫数が減少したりする。つまり、倉庫施設1の荷役効率は、目標とする荷役効率を下回ることなく維持されることが望ましい。予定されている保全作業が実施されても影響度が低い場合では荷役効率が低下してもその低下幅が小さく、倉庫施設1が目標とする荷役効率を下回る可能性が低い。一方で、影響度が高い場合では荷役効率の低下幅が大きく、倉庫施設1が目標とする荷役効率を大幅に下回る可能性が高い。このように、予定されている保全作業が実施された場合の影響度は、倉庫施設1の目標とする荷役効率が維持可能か否かを判断する指標になっている。それ故、影響度を予測することにより、倉庫施設1の荷役効率を目標とする荷役効率を下回らないように対処することが可能になる。
【0042】
影響度の高低の基準は、任意に設定してもよいが、目標とする荷役効率を下回ることを回避するために倉庫施設1が目標とする荷役効率を基準とするとよい。倉庫施設1が目標とする荷役効率は、予め設定された荷役効率を示す指標(複数の荷役機器5の一台あたりの荷役作業数、複数の輸送機器2の倉庫施設1での滞在時間、時間当たりの荷物3の入出庫数、荷物3の荷役速度)の目標値で表してもよく、倉庫施設1の荷役効率を示す指標の平均値、中間値、中央値などで表してもよい。また、倉庫施設1が目標とする荷役効率は、予定されている荷役作業数に応じた荷役作業可能な荷役機器5の台数で表してもよい。このように、影響度の高低を判断して、影響度が高いことに起因した荷役効率が基準を下回らない条件を設けることで、より確実に倉庫施設1の荷役効率を目標とする荷役効率を下回らないように維持することが可能となる。
【0043】
保全予定データ20を修正するステップ(S350)では、演算装置12により、予測した影響度に基づいて、保全予定データ20を修正するデータ処理が実行される。具体的に、演算装置12は、設定期間の日時のなかから影響度が高い日時を抽出し、抽出した日時に予定されている保全作業を実施すると倉庫施設1の荷役効率が目標とする荷役効率を下回ると見做して、その抽出した日時を変更して、保全予定データ20を修正するデータ処理を実行する。最終的に修正された保全予定データ20は、予定されている保全作業が実施されても設定期間の全ての日時の影響度が基準よりも低くなっていて、倉庫施設1の荷役効率が目標とする荷役効率を維持可能になっている。なお、最終的に修正された保全予定データ20は、設定期間の全ての日時の影響度が基準よりも低くなっていなくてもよく、保全予定データ20の最初の日時から所定の期間(例えば、一週間)までの間の日時の影響度が基準よりも低くなっていればよい。最終的に修正された保全予定データ20での影響度が基準よりも低くなっている期間は、任意に設定することができるが、三日~一週間以上であることが望ましい。
【0044】
保全予定データ20を修正する手法としては、所定の期間(設定期間の全ての日時を含む)の影響度が基準よりも低くなっていれば、公知の種々の日程調整の手法を用いることができる。日程調整の手法としては、影響度が基準よりも高い日時のなかの影響度が最も高い日時に予定されている保全作業の日時を変更して保全予定データ20を修正し、修正した保全予定データ20の影響度を予測し直すことを繰り返す手法が例示される。この繰り返す手法では、日時の変更の単位が短い期間であることが望ましく、保全作業の作業時間でもよく、一日~三日の期間でもよい。また、この繰り返す手法では、変更後の日時を元の日時に対して早めるか、あるいは、遅らすかを任意に設定してもよく、元の日時の影響度よりも低い影響度の日時の側へ早めたり、遅らせたりしてもよい。また、日程調整の手法としては、保全予定データ20を修正する手法としては、目的関数を影響度とする教師あり機械学習により作成された日程調整モデルを用いる手法も例示される。なお、保全予定データ20を修正する手法として、教師あり機械学習により作成された日程調整モデルを用いる場合には、影響度の予測や保全予定データ20の修正を繰り返す必要がないため、(S350)のステップが終了するとスタートへ戻るようにしてもよい。
【0045】
このステップでは、予防保全作業PVの日時の優先度を予知保全作業PDの日時の優先度よりも低く設定することが望ましい。この設定により、日時を変更する場合に、優先度が低い予防保全作業PVの日時が先に修正されることになる。予防保全作業PVは、予め設定された所定の期間ごとに行われていればよく、その日時は予定された日時から変更しても問題がない。一方で、予知保全作業PDは、予測された不具合や故障が発生する日時を超過する前に行われる必要がある。それ故、予防保全作業PVの日時の優先度を予知保全作業PDの日時の優先度よりも低く設定することで、予知保全作業PDが予定された日時どおりに実施される頻度を高くすることができる。これにより、予知保全作業PDが余裕を持って予測された不具合や故障が発生する日時よりも前に実施されることになり、荷役機器5に不具合や故障が発生するリスクを回避するには有利になる。なお、予知保全作業PVの日時が変更されることもあるが、予知保全作業PVの予定された日時は、予測された不具合や故障が発生する日時に対して十分に猶予を有して設定されている。それ故、予定された日時が多少前後しても、予測された不具合や故障が発生する日時よりも前に予知保全作業PVを実施することが可能になっている。
【0046】
図8は、図3に例示する元の保全予定データ20と図4に例示する荷役予定データ21とに基づいて、修正された保全予定データ20の一例を示している。元の保全予定データに例示するように、設定期間の日時D3、D7、Dnには、短期的な期間に基づいた予防保全作業PVが予定されており、日時D4~D6には、長期的な期間に基づいた予防保全作業PVが予定されており、日時D6~D8には、予知保全作業PDが予定されている。荷役予定データ21に例示するように、設定期間の日時D4~D7は、予定されている荷役作業数が多くなっている。元の保全予定データ20の予定では、日時D5~D7の影響度が高くなっている。
【0047】
上記の(S310)~(S350)の各ステップの実行により、最終的に修正された保全予定データ20では、図中の(1)に例示するように、優先度に基づいて、日時D5~D7に予定されている予防保全作業PVの日時が変更されている。これにより、日時D5、D7の影響度が低くなる。また、図中の(2)に例示するように、日時D5~D7に予定されていた予防保全作業PVの日時を変更しても、日時D6の影響度が高いままであるため、日時D6~D8に予定されている予知保全作業PDの日時が日時D7~D9に変更されている。これにより、日時D6の荷役作業可能な荷役機器5の台数が確保されることで、日時D6の影響度が低くなる。さらに、図中の(3)に例示するように、(1)での予防保全作業PVの日時の変更により、日時D3の影響度が高くなったため、日時D3に予定されている予防保全作業PVの日時が変更されている。以上の日時の変更により、最終的に修正された保全予定データ20では、設定期間の全ての日時での影響度が低くなっている。このように、保全予定データ20の設定期間の全ての日時での影響度が低くなることで、保全予定データ20に予定されている全ての保全作業が実施されても倉庫施設1の荷役効率が大幅に低下することが回避される。この結果、倉庫施設1の荷役効率が目標とする荷役効率以上に維持される。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、修正された保全予定データ20(図8)は、元の保全予定データ20(図3)に比して保全作業による荷役効率の低下への影響度が考慮されることで、実際に保全作業が実施された場合の倉庫施設1の荷役効率の低下を抑制することができる。このように、本実施形態は、荷役機器5の保全作業により倉庫施設1の安全性を向上する構成でありながら、その保全作業による荷役効率の低下を抑制することで、荷役効率の向上と安全性の向上とを両立させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、予防保全作業PVに加えて、予知保全作業PDが実施されることで、荷役機器5に不具合や故障が生じる直前に交換、修理作業が行われることになり、不要な交換や修理の頻度が減り、保全に要する費用を低く抑えることができる。また、荷役作業中の荷役機器5が不具合や故障により荷役作業が中断される事態が生じる頻度も大幅に低減する。これにより、停止した荷役機器5の復旧に要する多大な手間が省かれることにより、荷役効率の大幅な低を回避することができる。この結果、目標とする荷役効率を担保することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の倉庫施設の保全管理システム10および保全管理方法は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0051】
保全管理システム10は、保全作業の対象が複数の荷役機器5のみに限定されるものではない。保全管理システム10は、複数のセンシング機器11が保管エリア4も対象とすることで、保管エリア4の保全作業を管理してもよい。保管エリア4の保全作業としては、荷役機器5が走行する走行路面の点検、整備が例示される。保管エリア4の保全作業は、荷役機器5の保全作業よりも倉庫施設1の荷役効率の低下への影響度が高い場合がある。それ故、保全管理システム10は、保管エリア4の保全作業も管理することが望ましく、保管エリア4の保全作業を管理することにより、より倉庫施設1の荷役効率を考慮した保全作業を実施することが可能となる。
【0052】
保全作業は、予防保全作業PVと予知保全作業PDとの両方の作業を含むことが望ましいが、予知保全作業PDのみで安全性を担保することが可能であれば、予知保全作業PDのみでもよい。予知保全作業PDの日時の予測は、予測回数が多くなるにつれてその精度が高まる可能性がある。保全作業が予知保全作業PDのみになることで、不必要な部品交換費用の削減に加えて、定期的な予防保全作業PVに要する手間や費用の削減も図ることができる。
【0053】
保全管理システム10は、複数のセンシング機器11により複数の荷役機器5を常時、監視している。それ故、荷役作業中の荷役機器5に予測できなかった不具合や故障が生じてその荷役機器5が停止しても、その荷役機器5の停止を迅速に検知することができる。これにより、早急に復旧作業により対処することが可能となり、早期の復旧によるダウンタイムの最小化に寄与する。
【0054】
保全管理システム10は、演算装置12が少なくとも三つの演算装置で構成されてもよい。具体的に、三つの演算装置として、保全予定データ20を作成、更新するデータ処理を実行する保全用演算装置と、荷役予定データ21を作成、更新するデータ処理を実行する荷役用演算装置と、保全予定データ20および荷役予定データ21に基づいて、保全予定データ20を修正する演算装置と、が例示される。このように、演算装置12が複数の演算装置で構成されることで、演算負荷の分散には有利になる。なお、保全管理システム10は、保全予定データ20および荷役予定データ21を作成、更新するデータ処理を実行せずに、他の装置で作成、更新された保全予定データ20および荷役予定データ21を用いて、保全予定データ20を修正するデータ処理のみを実行してもよい。
【0055】
保全管理システム10は、センシング機器11、輸送機器2の通信機および管理装置と演算装置12とがネットワークを介して接続される場合に、演算装置12として物理サーバーや仮想サーバー(クラウドサーバーを含む)などの公知の種々のサーバーを用いることができる。演算装置12と他の機器とは、同一のネットワーク(LAN)を介して相互に接続されていてもよく、複数のネットワークがインターネットルータを介して相互に接続された広域通信網(WAN)を介して相互に接続されていてもよく、インターネットを介して相互に接続されていてもよい。保全管理システム10は、クライアントサーバーシステムでもよく、Webシステムでもよい。本開示において、クライアントサーバーシステムは、Webブラウザではなく、専用のアプリケーションを使用するシステムを示し、Webシステムは、Webブラウザを使用するシステムを示す。
【0056】
既述した実施形態の保全予定データ20および荷役予定データ21は、それぞれの予定が一日ごとに示されているが、それぞれの予定が時間ごとに示されていてもよい。保全予定データ20および荷役予定データ21のそれぞれの予定が時間ごとに示されることで、より詳細に倉庫施設1の日程を管理することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 倉庫施設
2 輸送機器
3 荷物
4 保管エリア
5 荷役機器
10 保全管理システム
11 センシング機器
12 演算装置
20 保全予定データ
21 荷役予定データ
PV 予防保全作業
PD 予知保全作業
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8