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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】ロボット及びハンド部姿勢調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20250207BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020148888
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043559
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】清水 一平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓之
(72)【発明者】
【氏名】山中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 任弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳一
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/072199(WO,A1)
【文献】特開2006-198760(JP,A)
【文献】国際公開第2005/004230(WO,A1)
【文献】特開2019-216401(JP,A)
【文献】特開2002-289673(JP,A)
【文献】特開2004-128021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送するためのロボットであって、
ガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、当該ガイド部が案内する方向に移動可能な移動部と、
前記移動部に設けられ、前記基板を保持するハンド部と、
前記ガイド部の変形に関する情報を取得する変形取得部と、
前記ハンド部の姿勢を、前記変形取得部が取得した前記ガイド部の変形に応じて調整可能な姿勢調整部と、
前記姿勢調整部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、搬送予定の前記基板に対して保持作業を行う前記ハンド部の姿勢を、前記ガイド部の変形に関する情報に基づいて、前記姿勢調整部を用いて調整し、
前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向に沿って移動可能な部材に設けられたセンサの検出結果に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得し、
前記センサは、前記ハンド部に設けられ、鉛直治具を検出するための検出センサであり、
前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向での前記移動部の複数の位置で、前記ハンド部が前記鉛直治具を検出したときの当該ハンド部の位置制御系での位置に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得することを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットであって、
前記姿勢調整部は、前記ハンド部の姿勢を傾けることが可能なチルト機構から構成されることを特徴とするロボット。
【請求項3】
ガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、当該ガイド部が案内する方向に移動可能な移動部と、
前記移動部に設けられ、基板を保持するハンド部と、
前記ガイド部の変形に関する情報を取得する変形取得部と、
前記ガイド部の変形に応じて前記ハンド部の姿勢を調整可能な姿勢調整部と、
を備えるロボットに関し、前記ハンド部の姿勢を調整するハンド部姿勢調整方法であって、
搬送予定の前記基板に対して保持作業を行う前記ハンド部の姿勢を、前記ガイド部の変形に関する情報に基づいて、前記姿勢調整部を用いて調整し、
前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向に沿って移動可能な部材に設けられたセンサの検出結果に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得し、
前記センサは、前記ハンド部に設けられ、鉛直治具を検出するための検出センサであり、
前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向での前記移動部の複数の位置で、前記ハンド部が前記鉛直治具を検出したときの当該ハンド部の位置制御系での位置に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得することを特徴とするハンド部姿勢調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びハンド部姿勢調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハやプリント基板等の基板の保管装置、基板処理装置等から基板を取り出して搬送する基板搬送用のロボットが知られている。特許文献1は、この種のロボットである搬送ロボットを開示する。
【0003】
特許文献1の搬送ロボットは、胴体部と、アーム体と、を備える。アーム体は、胴体部の上部に設けられている。搬送ロボットは、アーム体を伸縮動作させることで基板(ワーク)をカセット(保管装置)と各種処理装置との間で搬送する。アーム体の端部には、基板を保持するエンドエフェクタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-120861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、胴体部が熱等の何らかの理由で変形した場合を考える。例えば、胴体部の上面が、水平ではなく、傾いたり、上に凸となる湾曲面となるように反ったりすることが考えられる。
【0006】
このように胴体部が変形した場合、ハンド部の姿勢が水平な姿勢でなくなる。搬送予定の基板は水平な姿勢でカセットに保管されているので、ハンド部の姿勢が基板に対して適正でない場合、当該ハンド部が搬送予定の基板を保持することができなかったり、保持する動作の過程で基板を損傷させるおそれがある。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ロボットを用いて搬送予定の基板の保持作業を行う前に、この基板の姿勢に応じて当該ロボットのハンド部の姿勢を柔軟に調整可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のロボットが提供される。即ち、ロボットは、基板を搬送するためのものである。このロボットは、ガイド部と、移動部と、ハンド部と、変形取得部と、姿勢調整部と、制御部と、を備える。前記移動部は、前記ガイド部に設けられ、当該ガイド部が案内する方向に移動可能である。前記ハンド部は、前記移動部に設けられ、前記基板を保持する。前記変形取得部は、前記ガイド部の変形に関する情報を取得する。前記姿勢調整部は、前記ハンド部の姿勢を、前記変形取得部が取得した前記ガイド部の変形に応じて調整可能である。前記制御部は、前記姿勢調整部の動作を制御する。前記制御部は、搬送予定の前記基板に対して保持作業を行う前記ハンド部の姿勢を、前記ガイド部の変形に関する情報に基づいて、前記姿勢調整部を用いて調整する。前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向に沿って移動可能な部材に設けられたセンサの検出結果に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得する。前記センサは、前記ハンド部に設けられ、鉛直治具を検出するための検出センサである。前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向での前記移動部の複数の位置で、前記ハンド部が前記鉛直治具を検出したときの当該ハンド部の位置制御系での位置に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得する。
【0010】
本発明の第2の観点によれば、以下のハンド部姿勢調整方法が提供される。即ち、このハンド部姿勢調整方法は、ロボットのハンド部の姿勢を調整するためのものである。このロボットは、ガイド部と、移動部と、前記ハンド部と、変形取得部と、姿勢調整部と、を備える。前記移動部は、前記ガイド部に設けられ、当該ガイド部が案内する方向に移動可能である。前記ハンド部は、前記移動部に設けられ、基板を保持する。前記変形取得部は、前記ガイド部の変形に関する情報を取得する。前記姿勢調整部は、前記ガイド部の変形に応じて前記ハンド部の姿勢を調整可能である。そして、前記ハンド部姿勢調整方法は、搬送予定の前記基板に対して保持作業を行う前記ハンド部の姿勢を、前記ガイド部の変形に関する情報に基づいて、前記姿勢調整部を用いて調整する。前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向に沿って移動可能な部材に設けられたセンサの検出結果に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得する。前記センサは、前記ハンド部に設けられ、鉛直治具を検出するための検出センサである。前記変形取得部は、前記ガイド部の案内方向での前記移動部の複数の位置で、前記ハンド部が前記鉛直治具を検出したときの当該ハンド部の位置制御系での位置に基づいて、前記ガイド部の変形に関する情報を取得する。
【0011】
何らかの理由でガイド部が変形した場合、当該ガイド部で案内される移動部の移動に伴って、ハンド部の姿勢が変化することがある。この結果、搬送予定の基板の保持作業に関してハンド部の姿勢が適正でなくなることがある。しかし、本発明によれば、ガイド部の変形によりハンド部が適正な姿勢をとらなくなった場合でも、ハンド部の姿勢を搬送予定の基板に合わせた状態で保持作業を行うことができる。従って、搬送予定の基板の損傷等を防止して、基板の保持作業をスムーズに行うことができる。また、ハンド部にセンサが設けられることで、ガイド部の変形を適切に取得することができる。更に、簡単な構成で、ガイド部の変形に関する情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボットを用いて搬送予定の基板の保持作業を行う前に、この基板の姿勢に応じて当該ロボットのハンド部の姿勢を柔軟に調整可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの全体的な構成を示す斜視図。
図2】(a)は、ロボットが備えるチルト機構の一例を示す斜視図。(b)は、チルト機構の断面図。
図3】ロボットが検出センサを用いてガイド部の変形を検知する作業を説明する図。
図4】基板の保持作業が行われるときの様子を示す図。
図5】昇降ガイド部の変形を説明する模式図。
図6】ブレードに取り付けられた検出センサによって、鉛直治具の直線状部材を検出する作業を示す図。
図7】ブレードの進出方向を異ならせて、鉛直治具の直線状部材を検出センサによって再び検出する作業を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロボット1の全体構成を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すロボット1は、例えば、基板Wの製造工場、倉庫等に設置される。基板Wとしては、例えば、半導体ウエハ、プリント基板等が考えられる。
【0016】
ロボット1は、図示しない基板処理装置と、図4に示す基板保管装置5と、の間で基板Wを搬送するために用いられる。ただし、ロボット1は、例えば、基板Wを処理する複数の基板処理装置の間で基板Wを搬送するために用いられても良い。
【0017】
基板Wは、基板の原料、加工中の半完成品、加工済の完成品のうち何れであっても良い。基板Wの形状は、本実施形態では円板状であるが、これに限定されない。
【0018】
ロボット1は、昇降ガイド部(ガイド部)11と、移動部12と、ブレード(ハンド部)13と、チルト機構(姿勢調整部)14と、ロボット制御部(制御部)15と、を備える。
【0019】
昇降ガイド部11は、上下方向に細長い部材から構成されている。図4に示すように、昇降ガイド部11は、水平な設置面18から上方へ延びるように設けられている。昇降ガイド部11には、昇降ガイド部11の長手方向と平行に延びる直線状の第1ガイド溝20が設けられている。第1ガイド溝20の長手方向は、上下方向と一致する。
【0020】
移動部12は、昇降ガイド部11から突出するように設けられている。移動部12が昇降ガイド部11から突出する向きは、昇降ガイド部11の長手方向と交差する。移動部12は、図略の駆動装置により駆動される。この駆動により、移動部12は、昇降ガイド部11に対して、第1ガイド溝20に沿って上下方向に移動することができる。
【0021】
以下では、説明の便宜上、昇降ガイド部11から移動部12が突出する方向を前方向と定義する。そして、上下方向及び突出方向の何れにも垂直な方向を左右方向と定義する。
【0022】
移動部12は、取付部21と、支持部22と、保持部23と、を備える。
【0023】
取付部21は、昇降ガイド部11から前方へ突出するように設けられている。取付部21は、前記の駆動装置により、第1ガイド溝20に沿って上下方向に移動することができる。
【0024】
支持部22は、チルト機構14を介して取付部21に支持されている。支持部22は、取付部21の上側に配置されている。支持部22と取付部21との間には、回転軸27が設けられている。回転軸27は、図2(a)に示すようにチルト機構14の一部を構成し、上下方向に延びるように配置されている。支持部22は、図略の適宜のアクチュエータにより駆動される。この駆動により、支持部22は回転軸27を中心として回転する。このアクチュエータは、例えば電動モータとすることができる。
【0025】
保持部23は、支持部22に取り付けられている。保持部23は、支持部22の上側に配置されている。保持部23は、図略の適宜のアクチュエータにより駆動される。この駆動により、保持部23は、支持部22に対して、第2ガイド溝29に沿って移動する。このアクチュエータは、例えば電動モータとすることができる。
【0026】
ブレード13は、移動部12が備える保持部23に設けられている。ブレード13は、基板Wを保持するためのものであり、少なくとも1つ備えられる。本実施形態では、ブレード13として、3つのブレード13A,13B,13Cが備えられている。
【0027】
3つのブレード13A,13B,13Cのそれぞれは、保持部23から前方へ突出するように設けられる。3つのブレード13A,13B,13Cは、上下方向に所定間隔をあけて並べて配置される。
【0028】
ブレード13A,13B,13Cは、移動部12(取付部21)と一体的に、第1ガイド溝20に沿う方向に移動することができる。また、ブレード13A,13B,13Cは、保持部23と一体的に、支持部22に対して、第2ガイド溝29に沿う方向に移動することができる。更に、ブレード13A,13B,13Cの姿勢は、チルト機構14によって変更することができる。
【0029】
次に、ブレード13A,13B,13Cの構成を詳細に説明する。3つのブレード13A,13B,13Cは略同じ構成であるので、以下では、主としてブレード13Aについて説明する。
【0030】
ブレード13Aは、平面視でU字状に形成された板状部材から構成されている。第2ガイド溝29が前後方向を向く状態では、ブレード13Aは、U字の開放側が前方を向き、かつ閉鎖側が後方(保持部23側)を向くように配置されている。ブレード13Aは、本体部30と、第1指部31と、第2指部32と、を有する。
【0031】
本体部30の基端部は、保持部23と連結されている。これにより、ブレード13Aは保持部23に片持ち支持される。
【0032】
以下、第2ガイド溝29が前後方向を向いている場合で説明する。第1指部31及び第2指部32は、互いに左右対称となるように構成されている。第1指部31は、本体部30の右側から前方へ突出するように設けられている。第2指部32は、本体部30の左側から前方へ突出するように設けられている。第1指部31と第2指部32との間には、適宜の間隔が形成されている。第1指部31と第2指部32との間には、後述の鉛直治具70が備える直線状部材71を差し込むことができる。
【0033】
チルト機構14は、取付部21の先端側(前側)に設けられている。チルト機構14は、取付部21に対するブレード13の姿勢を調整することができる。この姿勢の調整については後述する。
【0034】
チルト機構14は、図2に示すように、下板部41と、上板部42と、を備える。下板部41は、取付部21に固定されている。上板部42には、支持部22が回転軸27を介して回転可能に支持されている。下板部41と上板部42の間には、高さ調整機構45が配置されている。チルト機構14は、この高さ調整機構45を用いて、上板部42の下板部41に対する傾斜角度及び傾斜方向を調整する。
【0035】
高さ調整機構45は、例えば、図2(b)に示すように、下板部41及び上板部42の間の異なる位置に設けられた3つの支持部51,52,53を備える。支持部51,52,53は、説明の便宜上、図2(b)においては直線的に並べて描かれているが、実際は図2(a)に示すように、平面視で3角形をなすように配置されている。
【0036】
3つのうち2つの支持部51,52は、オネジ56と、メネジ57と、球面軸受58と、を有する。オネジ56のネジ軸は、下板部41に、軸線を上下方向に向けて回転可能に支持されている。このネジ軸は、図略のアクチュエータ(例えば、電動モータ)によって、2つの支持部51,52で独立して回転させることができる。メネジ57はオネジ56のネジ軸にネジ結合されている。ネジ軸を回転させると、メネジ57が上下方向に移動する。このネジ送りにより、支持部51,52が上板部42を支持する高さを変更することができる。メネジ57と上板部42との間には、球面軸受58が配置されている。
【0037】
残りの支持部53には、球面軸受58が配置されている。この支持部53は、ネジ送りによる支持高さ変更機能を有していない。
【0038】
前記のアクチュエータを駆動し、下板部41に対する上板部42の高さを複数の支持部51,52で独立して変更することで、上板部42の下板部41に対する傾斜角度及び傾斜方向を変更することができる。この結果、取付部21に対する支持部22、ひいてはブレード13の姿勢(傾斜角度及び傾斜方向)を調整することができる。なお、高さ調整機構45(チルト機構14)はこの構成に限定されない。
【0039】
図1に示すように、ブレード13Aの先端側には、検出センサ60が設けられている。検出センサ60は、第1指部31及び第2指部32のそれぞれの先端部に配置されている。検出センサ60は、物体を非接触で検出する物体検出センサとして構成されている。この検出センサ60により、後述の鉛直治具70(直線状部材71)を検出することができる。なお、検出センサ60は、ブレード13A、ブレード13B及びブレード13Cの少なくとも1つに設けられれば良い。
【0040】
本実施形態において、検出センサ60は、投光部61と、受光部62と、を有する光電センサから構成される。なお、検出センサ60の構成は特に限定されない。
【0041】
投光部61は、第1指部31の先端側に設けられている。受光部62は、第2指部32の先端側に設けられ、投光部61と対向するように配置されている。投光部61は、受光部62へ向けて検出光を照射する。検出光としては、例えば赤外光とすることができるが、これに限定されない。
【0042】
受光部62は、無線又は有線でロボット制御部15と接続されている。受光部62は、検出光の受光の有無を示す電気信号をロボット制御部15へ出力する。図3(a)に示すように、投光部61と受光部62の間に物体(例えば、鉛直治具70の直線状部材71)がある場合、投光部61からの検出光が当該物体によって遮られるため、受光部62は受光なしの電気信号を出力する。一方、図3(b)に示すように、投光部61と受光部62の間に物体がない場合、投光部61からの検出光が受光部62に到達するため、受光部62は受光ありの電気信号を出力する。
【0043】
投光部61から照射される検出光を受光部62が検出できる限り、ブレード13Aにおいて投光部61及び受光部62が配置される場所は任意である。例えば、投光部61が第1指部31に内蔵され、受光部62が第2指部32に内蔵されても良い。
【0044】
図1に示すように、ロボット制御部15は、昇降ガイド部11とは別途に設けられている。なお、ロボット制御部15は、昇降ガイド部11の内部に配置されても良い。ロボット制御部15は、変形取得部66を備える。
【0045】
具体的には、ロボット制御部15は、公知のコンピュータとして構成されている。ロボット制御部15は、マイクロコントローラ、CPU、MPU、PLC、DSP、ASIC又はFPGA等の演算処理部と、ROM、RAM、HDD等の記憶部と、外部装置と通信可能な通信部と、を備える。記憶部には、演算処理部が実行するプログラム、各種の設定データ等が記憶されている。通信部は、各種センサ(例えば、検出センサ60)の検出結果を外部装置へ送信可能に、また、外部装置から基板Wに関する情報等を受信可能に構成されている。このハードウェアとソフトウェアの協働により、ロボット制御部15を、変形取得部66として機能させることができる。
【0046】
変形取得部66は、ブレード13に設けられた検出センサ60の検出結果に基づいて、昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得する。この点については後述する。
【0047】
ロボット制御部15は、取付部21の上下方向の移動、支持部22の回転、第2ガイド溝29に沿った保持部23の移動を制御する。これにより、ブレード13Aの位置、及び、平面視での向きを変更することができる。更に、ロボット制御部15は、チルト機構14の動作を制御する。これにより、ブレード13Aの姿勢を変更することができる。ここでいう姿勢とは、取付部21の上面に対してブレード13Aの面がどのように傾斜しているかを意味する。
【0048】
続いて、本実施形態のロボット1における昇降ガイド部11の変形に関する情報の取得、及び昇降ガイド部11の変形に応じたブレード13A(13)の姿勢の調整方法(ハンド部姿勢調整方法)について、図4から図6等を参照して説明する。なお、以下においては、基板Wを基板保管装置5から取り出す取出し作業(保持作業)が行われる例で説明する。また、各部の構成を分かり易く示すために、図面において一部の構成を省略する場合がある。
【0049】
図4に示す基板保管装置5は、基板Wを保管するために用いられる。基板保管装置5は、ロボット1が取出し作業を行うことができるように、ロボット1に対して適宜の距離を隔てて配置されている。
【0050】
基板保管装置5は、複数枚の基板Wを、上下方向(基板保管装置5の高さ方向)において等間隔で並べた状態で保管することができる。基板保管装置5においては、通常、基板Wは水平な姿勢に保たれる。
【0051】
通常、昇降ガイド部11は、設置面18に対して垂直な直線状に細長く形成される。しかし、図5に示すように、何らかの理由で昇降ガイド部11に変形(反り及び/又は歪み等)が生じることがある。なお、図5では、昇降ガイド部11の変形について分かり易く示すため、変形を誇張して描いている。
【0052】
この場合、チルト機構14による姿勢の調整を仮に行わないと、ブレード13Aの上下位置に応じて、水平面(言い換えれば、設置面18)に対する当該ブレード13Aの姿勢が変化する。この結果、ロボット1は、ある高さの基板Wを基板保管装置5から取り出すことはできても、それとは異なる高さの基板Wを取り出す場合に、基板Wに対するブレード13Aの姿勢が適正とならずに失敗するおそれがある。
【0053】
図5では変形を単純化して示しているが、昇降ガイド部11の実際の変形は3次元的に複雑になる場合もある。従って、ブレード13Aの姿勢(傾斜方向及び傾斜角度)は、ブレード13Aの上下方向の移動に応じて複雑に変化する。
【0054】
そこで、本実施形態のロボット1では、ロボット制御部15が、搬送予定の基板Wに対して取出し作業を行うブレード13Aの姿勢を、チルト機構14を用いて調整することができる。ブレード13Aの姿勢の調整は、昇降ガイド部11の変形と、昇降ガイド部11が案内する方向でのブレード13Aの位置(言い換えれば、取付部21の高さ)と、に基づいて行われる。
【0055】
具体的に説明すると、本実施形態では、昇降ガイド部11の変形によるブレード13Aの姿勢への影響を検出するために、鉛直治具70が用いられる。図6に示すように、鉛直治具70は、細長い直線状部材71と、適宜の重さを有する錘72と、を有する。直線状部材71としては、例えばワイヤを用いることができる。
【0056】
直線状部材71の長手方向一端部に、錘72が連結されている。そして、直線状部材71の長手方向他端部が、ロボット1が設置される建屋の天井等に固定される。直線状部材71により錘72が吊り下げられた状態で静止させることにより、直線状部材71が昇降ガイド部11の近傍で鉛直方向に延びた状態となる。
【0057】
ロボット制御部15は、準備作業として、第2ガイド溝29の向きが前後方向(厳密には、昇降ガイド部11の前面に垂直な方向)に沿うように、取付部21に対する支持部22の向きを予め調整しておく。また、チルト機構14によるチルトが行われない状態とする。
【0058】
次に、ロボット制御部15は、移動部12(取付部21)の動作を制御して、ブレード13Aを所定の上下位置に保持する。この所定の上下位置で、ロボット制御部15は、移動部12(保持部23)の動作を制御して、ブレード13Aを、第2ガイド溝29に沿う向きで、直線状部材71に近づくように進出させる。このブレード13Aの進出は、ロボット制御部15が、保持部23の支持部22に対する位置制御系での位置を少しずつ変化させる指令を出力することで実現することができる。
【0059】
進出開始当初は、ブレード13Aが直線状部材71から離れているため、図3(a)に示すように、検出センサ60は直線状部材71を検知しない。ブレード13Aが進出していくと、やがて、図3(b)に示すように、ブレード13Aに設けられた検出センサ60の検出光を直線状部材71が遮るので、受光部62が受光なしの電気信号をロボット制御部15に出力する。直線状部材71が検出センサ60によって検知されると、ロボット制御部15は、その時点でのブレード13Aの位置(上述の位置制御系での位置)を記憶するとともに、当該ブレード13Aを退避させる。
【0060】
ロボット制御部15は、上記の処理を、移動部12(厳密に言えば、取付部21)の位置を様々に異ならせながら反復する。ロボット制御部15は、取付部21の高さを、上下方向の可動ストロークの範囲内で例えば数十センチメートルずつ異ならせながら、それぞれの高さにおいて、検出センサ60によって直線状部材71が検知されたときの、ブレード13Aの位置制御系での位置を取得する。この処理が図6に模式的に示されている。
【0061】
直線状部材71は、昇降ガイド部11とは独立に設けられ、絶対的な鉛直を維持している。従って、検出センサ60により直線状部材71が検知されるときのブレード13Aの位置制御系での位置が取付部21の高さ毎に変化する場合、その変化は昇降ガイド部11の変形を示している。
【0062】
次に、ロボット制御部15は、回転軸27を中心として支持部22を適宜の角度だけ回転させ、平面視において、第2ガイド溝29の向きを前後方向から傾斜させる。これにより、ブレード13Aは保持部23とともに、前後方向とは異なる向きで進出/退避するようになる。ロボット制御部15は、この状態で、取付部21の上下方向の位置を様々に異ならせながら、検出センサ60によって直線状部材71が検知されるときのブレード13Aの位置制御系での位置を取得する処理を、再度行う。この処理が図7に模式的に示されている。
【0063】
ロボット制御部15は、図6及び図7で説明した処理で得られたデータに基づいて、変形を加味した昇降ガイド部11の形状を表す3次元的なプロファイルを作成する。このプロファイルは、例えば、取付部21の移動軌跡を示す3次元曲線とすることができる。プロファイルは、公知の幾何学的な計算により得ることができる。
【0064】
上記の3次元曲線を微分することで、昇降ガイド部11の案内によって上下方向に移動する取付部21に関して、取付部21の高さと、取付部21の上面に生じる傾斜と、の関係が得られる。ロボット制御部15は、この傾斜をキャンセルするようにチルト機構14を動作させる。この結果、ブレード13Aの姿勢を、基板保管装置5に保管されている水平な姿勢の基板Wに対して一致させることができる。
【0065】
その後、ロボット制御部15は、ブレード13Aを搬送予定の基板Wの下方に挿入し、搬送予定の基板Wを基板保管装置5から取り出すように制御する。このとき、昇降ガイド部11が変形していても、ブレード13Aの姿勢が、基板Wの姿勢と適合するように、チルト機構14によって水平に調整される。従って、ブレード13Aと基板Wとの意図しない接触により基板Wを円滑に搬送することができない事態の発生を防止することができる。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態のロボット1は、基板Wを搬送するためのものである。このロボット1は、昇降ガイド部11と、移動部12と、ブレード13と、変形取得部66と、チルト機構14と、ロボット制御部15と、を備える。移動部12は、昇降ガイド部11に設けられ、昇降ガイド部11が案内する方向に移動可能である。ブレード13は、移動部12に設けられ、基板Wを保持する。変形取得部66は、昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得する。チルト機構14は、ブレード13の姿勢を、変形取得部66が取得した昇降ガイド部11の変形に応じて調整可能である。ロボット制御部15は、チルト機構14の動作を制御する。ロボット制御部15は、搬送予定の基板Wに対して保持作業を行うブレード13の姿勢を、昇降ガイド部11の変形に関する情報に基づいて、チルト機構14を用いて調整する。
【0067】
何らかの理由で昇降ガイド部11が変形した場合、当該昇降ガイド部11で案内される移動部12の移動に伴って、ブレード13の姿勢が変化することがある。この結果、ブレード13の姿勢が搬送予定の基板Wの取出し作業に関して適正でなくなることがある。しかし、本実施形態の構成によれば、昇降ガイド部11が変形しても、それに応じてチルト機構14がブレード13Aの姿勢を調整するため、ブレード13の姿勢を搬送予定の基板Wに合わせた状態で取出し作業を行うことができる。従って、搬送予定の基板Wの損傷等を防止して、基板Wの取出し作業をスムーズに行うことができる。
【0068】
また、本実施形態のロボット1において、チルト機構14は、ブレード13の姿勢を傾けることが可能である。
【0069】
これにより、簡素な構成でブレード13の姿勢を容易に調整することができる。
【0070】
また、本実施形態のロボット1において、変形取得部66は、ブレード13に設けられた検出センサ60の検出結果に基づいて、昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得する。ブレード13は、昇降ガイド部11の案内方向に沿って移動可能な部材である。
【0071】
このようにブレード13に検出センサ60が設けられることで、昇降ガイド部11の変形を適切に取得することができる。
【0072】
また、本実施形態のロボット1において、昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得するために用いられるセンサは、ブレード13に設けられ、鉛直治具70を検出する検出センサ60である。変形取得部66は、昇降ガイド部11の案内方向での移動部12の複数の位置で、ブレード13が鉛直治具70を検出したときの当該ブレード13の位置制御系での位置に基づいて、昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得する。
【0073】
これにより、簡単な構成で、昇降ガイド部11の変形に関する情報を得ることができる。
【0074】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0075】
検出センサ60は、ブレード13が複数備えられる場合、何れのブレード13に設けられていても良い。
【0076】
検出センサ60による鉛直治具70の検出が、単に昇降ガイド部11がどのように変形しているかを把握するために行われても良い。昇降ガイド部11の変形の情報は、例えば上記の3次元曲線を適宜のディスプレイに表示することで出力することができる。このように昇降ガイド部11の変形を診断するための構成は、チルト機構14を有していないロボット1に適用することもできる。
【0077】
昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得するために用いられるセンサは、重力加速度を測定して昇降ガイド部11の水平面(設置面18)に対する傾斜角度を検出する傾斜センサであっても良い。傾斜センサは、ブレード13Aの適宜の位置に固定される。この場合、変形取得部66は、傾斜センサの検出結果に基づいて、昇降ガイド部11の変形に関する情報を取得する。この構成では、鉛直治具70を用いることなく、昇降ガイド部11の変形を取得することができる。傾斜センサは、例えばMEMS(微小電気機械システム)を用いた構成とすることができる。
【0078】
なお、傾斜センサの構成は特に限定されないが、傾斜センサとして、重力加速度を測定するための加速度センサを用いることができる。この場合、加速度センサにより測定された重力加速度に基づいて、昇降ガイド部11の水平面に対する傾斜角度が求められる。
【0079】
ブレード13に設けられた検出センサ60は、鉛直治具70を検出するだけでなく、搬送対象の基板Wを検出するためのセンサとして用いることもできる。
【0080】
検出センサ60は、ブレード13に限定されず、取付部21、支持部22又は保持部23に設けられても良い。傾斜センサも同様である。
【0081】
ロボット1は、基板Wを直接保持する代わりに、基板Wを収容するトレイ等を用いて基板Wを保持しても良い。
【0082】
ブレード13の本体部30は、移動部12の保持部23と一体的に形成されても良い。
【0083】
昇降ガイド部11に生じる変形として、左右方向に垂直な平面内での変形だけを取り扱うように構成しても良い。この場合、図7の作業を省略し、図6の作業だけで昇降ガイド部11の変形を把握することができる。
【0084】
チルト機構14は、取付部21と支持部22の間に配置される構成に限定されず、例えば、支持部22と保持部23の間に配置することもできる。
【0085】
昇降ガイド部11の変形の影響を取り除くために、ブレード13Aの姿勢をチルト機構14によって補正するだけでなく、ブレード13Aの位置を補正することが好ましい。
【0086】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0087】
1 ロボット
11 昇降ガイド部(ガイド部)
12 移動部
13 ブレード(ハンド部)
14 チルト機構(姿勢調整部)
15 ロボット制御部(制御部)
60 検出センサ
66 変形取得部
70 鉛直治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7