(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】融着機
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
G02B6/255
(21)【出願番号】P 2021150923
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】細井 英昭
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-016905(JP,U)
【文献】特開昭62-272209(JP,A)
【文献】特開昭61-039003(JP,A)
【文献】特開平05-134127(JP,A)
【文献】特開2014-062930(JP,A)
【文献】実開昭57-172409(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0328252(US,A1)
【文献】中国実用新案第208537765(CN,U)
【文献】特開平11-014855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/40
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士を接続する融着機であって、
一対の光ファイバを対向して保持する光ファイバ保持部と、
一対の前記光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に対向配置される一対の電極と、
一対の前記光ファイバを対向して配置した際に、前記光ファイバ同士の間に移動可能な反射部材と、
前記反射部材によって反射された像を撮像する撮像部と、
一対の前記光ファイバのうち、少なくとも一方を、一対の前記光ファイバの対向方向を軸として回転させることで、一対の前記光ファイバ同士を調心することが可能な調心駆動部と、
を具備し、
前記反射部材は、それぞれの前記光ファイバの端面の像を前記撮像部に向けて反射する反射面を有し、
前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避した状態において、前記反射部材と前記光ファイバとの間に配置されるとともに、前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避する際に、前記反射部材の移動に連動して閉じる様に構成された
一対の遮蔽部材を有することを特徴とする融着機。
【請求項2】
前記反射部材又は前記遮蔽部材の状態を検知可能なセンサを有し、前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避した状態又は前記遮蔽部材が閉じた状態を前記センサが検知することで、前記電極間の放電可能とする保護機構を有することを特徴とする請求項1記載の融着機。
【請求項3】
前記遮蔽部材の開
く方向の側面には壁部が形成されず、前記遮蔽部材の開
く方向とは異なる側面に壁部が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の融着機。
【請求項4】
前記遮蔽部材が閉じた状態において、
一対の前記遮蔽部材の先端部が突き合わせられた際に、前記遮蔽部材の
一対の先端部
によって、前記光ファイバの対向位置方向に向かった凸形状
が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の融着機。
【請求項5】
前記撮像部とは異なる方向に、一対の側方撮像部が配置され、前記遮蔽部材の開閉方向は、前記光ファイバの調心位置を撮像する
前記側方撮像部の配置方向とは異なる方向であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の融着機。
【請求項6】
前記遮蔽部材
は先端部に遮蔽部を有し、一対の前記遮蔽部材が閉じた状態では、
前記遮蔽部材の先端部の前記遮蔽部同士が突き合せられ、前記遮蔽部同士の突合せ部が、開閉方向に垂直な方向に対して斜めに形成され、平面視において一対の前記遮蔽部材の先端部の一部が重なり合うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の融着機。
【請求項7】
前記遮蔽部材は、オーステナイト系のステンレス製であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の融着機。
【請求項8】
前記遮蔽部材が閉じた状態において、前記電極と前記遮蔽部材との最短距離が、前記電極間距離よりも長いことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の融着機。
【請求項9】
前記遮蔽部材が閉じた状態において、前記電極と前記遮蔽部材との最短距離が、前記電極間距離の2倍以上であることを特徴とする請求項8に記載の融着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調心作業性に優れた融着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ同士の接続には、融着機が用いられる。融着機は、一対のホルダに保持された光ファイバ同士を突き合わせて、電極間に配置し、アークによって光ファイバ同士の先端を融着して、光ファイバ同士を接続するものである。
【0003】
光ファイバ同士の融着時には、光ファイバの先端位置を合わせる調心作業が必要である。このため、従来は、光ファイバ同士を対向して配置した状態で、側方(光ファイバの軸方向に対して垂直な方向)から、撮像部によって光ファイバの先端位置を撮像して調心を行っていた。
【0004】
一方、一般的な単心の光ファイバではなく、いわゆる偏波保持ファイバやマルチコアファイバのように、断面形態に対して周方向の方向性を有する場合、先端位置のみではなく、回転方向の調心も必要である。すなわち、いわゆる光ファイバのX-Y方向の調心のみではなく、光ファイバの軸方向を中心軸とした周方向の回転調心が必要となる。
【0005】
このような光ファイバの回転調心を行うためには、例えば、光ファイバの対向部の間に反射部材を配置し、光ファイバの端面を撮像部に反射させて撮像し、端面観察によって回転調心を行う方法がある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の方法では、放電や光ファイバからの飛散物等によって、反射部材の反射面が汚れ、光ファイバの端面観察の画像品質を劣化させるおそれがある。このため、精度の良い調心が困難となる恐れがある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、精度の高い調心が可能な融着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために本発明は、光ファイバ同士を接続する融着機であって、一対の光ファイバを対向して保持する光ファイバ保持部と、一対の前記光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に対向配置される一対の電極と、一対の前記光ファイバを対向して配置した際に、前記光ファイバ同士の間に移動可能な反射部材と、前記反射部材によって反射された像を撮像する撮像部と、一対の前記光ファイバのうち、少なくとも一方を、一対の前記光ファイバの対向方向を軸として回転させることで、一対の前記光ファイバ同士を調心することが可能な調心駆動部と、を具備し、前記反射部材は、それぞれの前記光ファイバの端面の像を前記撮像部に向けて反射する反射面を有し、前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避した状態において、前記反射部材と前記光ファイバとの間に配置されるとともに、前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避する際に、前記反射部材の移動に連動して閉じるように構成された一対の遮蔽部材を有することを特徴とする融着機である。
【0010】
前記反射部材又は前記遮蔽部材の状態を検知可能なセンサを有し、前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避した状態又は前記遮蔽部材が閉じた状態を前記センサが検知することで、前記電極間の放電可能とする保護機構を有することが望ましい。
【0011】
前記遮蔽部材の開く方向の側面には壁部が形成されず、前記遮蔽部材の開く方向とは異なる側面に壁部が形成されてもよい
【0012】
前記遮蔽部材が閉じた状態において、一対の前記遮蔽部材の先端部が突き合わせられた際に、前記遮蔽部材の一対の先端部によって、前記光ファイバの対向位置方向に向かった凸形状が形成されることが望ましい。
【0013】
前記撮像部とは異なる方向に、一対の側方撮像部が配置され、前記遮蔽部材の開閉方向は、前記光ファイバの調心位置を撮像する前記側方撮像部の配置方向とは異なる方向であることが望ましい。
【0014】
前記遮蔽部材は先端部に遮蔽部を有し、一対の前記遮蔽部材が閉じた状態では、前記遮蔽部材の先端部の前記遮蔽部同士が突き合せられ、前記遮蔽部同士の突合せ部が、開閉方向に垂直な方向に対して斜めに形成され、平面視において一対の前記遮蔽部材の先端部の一部が重なり合ってもよい。
【0015】
前記遮蔽部材は、オーステナイト系のステンレス製であることが望ましい。
【0016】
前記遮蔽部材が閉じた状態において、前記電極と前記遮蔽部材との最短距離が、前記電極間距離よりも長いことが望ましく、さらに前記電極と前記遮蔽部材との最短距離が、前記電極間距離の2倍以上であることが望ましい。
【0017】
本発明によれば、光ファイバの端面を反射することが可能な反射部材を、対向する光ファイバの間から退避させた際に、反射部材の移動と連動させて遮蔽部材を閉じるため、放電時には、確実に遮蔽部材によって反射部材を汚染から保護することができる。
【0018】
特に、反射部材が光ファイバの対向位置から退避した状態、又は、遮蔽部材が閉じた状態を検知可能なセンサを用いることで、誤動作などで反射部材が退避していない状態や遮蔽部材が閉じていない状態で放電が行われることを防止することができる。
【0019】
また、遮蔽部材の開閉方向の側面に壁部を形成しないようにすることで、遮蔽部材を開いた際に、遮蔽部材の開閉方向に配置される光ファイバ保持部等との干渉を防ぐことができる。
【0020】
同様に、遮蔽部材が閉じた状態において、遮蔽部材の先端部を、光ファイバの対向位置方向に向かった凸形状として、遮蔽部材の上端部を細くすることで、遮蔽部材を開いた際に、遮蔽部材の開閉方向に配置される光ファイバ保持部等との干渉を防ぐことができる。
【0021】
また、遮蔽部材の開閉方向を、光ファイバの調心位置を撮像する側方撮像部の配置方向とは異なる方向とすることで、遮蔽部材の開閉時に、側方撮像部へ異物等が落下することを抑制することができる。
【0022】
また、遮蔽部材が閉じた状態において、平面視において一対の遮蔽部材の先端部の一部が重なり合うようにすることで、単に突き合わせるのみの場合と比較して、より確実に内部への異物の侵入を抑制することができる。
【0023】
また、遮蔽部材を、オーステナイト系のステンレス製とすることで、高温時にも高い機械的強度を確保することができるとともに、放電により発生するオゾンに対しても、高い耐食性を確保することができる。
【0024】
また、遮蔽部材が閉じた状態において、電極と遮蔽部材との最短距離を、電極間距離の2倍以上とすることで、遮蔽部材へのリーク放電を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、精度の高い調心が可能な融着機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】(a)は光ファイバ21の軸方向から見た図、(b)は電極7の軸方向から見た図。
【
図4】反射部材23及び遮蔽部材25の拡大斜視図。
【
図5】(a)は、遮蔽部材25が閉じた状態の側方図、(b)は、反射部材23が上昇して、遮蔽部材25が開いた状態の側方図。
【
図6】(a)は、
図5(a)の遮蔽部29a、29bの状態を示す図、(b)は、
図4(b)の遮蔽部29a、29bの状態を示す図。
【
図7】(a)は、
図5(a)の遮蔽部29a、29bの他の状態を示す図、(b)は、
図4(b)の遮蔽部29a、29bの他の状態を示す図。
【
図9】反射部材23を光ファイバ21同士の間に移動させた状態を示す図。
【
図10】(a)は、反射部材23を光ファイバ21同士の間に移動させた状態を示す平面図、(b)は、(a)のG部拡大図。
【
図11】(a)は、焦点調整を行う工程を示す図、(b)は、回転調心を行う工程を示す図。
【
図12】(a)は、反射部材23の退避状態を示す図、(b)は、光ファイバ21同士を融着する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、融着機1を示す斜視図である。融着機1は、光ファイバを保持するホルダが載置されるホルダ載置部11と、光ファイバが配置される光ファイバ保持部5と、蓋部3と、融着機1の操作を行う操作部15と、各種情報を表示する表示部17等を具備する。なお、表示部17をタッチパネルとすることで、操作部15と表示部17とを一体化してもよい。
【0028】
光ファイバは光ファイバ保持部5上のV溝に保持される。また、一対の光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向には、一対の電極7が対向配置される。蓋部3は回転軸9を中心に回動可能である。蓋部3の裏面には、クランプ13が設けられ、蓋部3を閉じた際に、クランプ13の先端は、光ファイバ保持部5上の光ファイバの位置に対応する部位に位置する。すなわち、蓋部3の裏面に設けられたクランプ13によって、一対の光ファイバを、光ファイバ保持部5において対向して保持することができる。また、クランプ13の間には、後述する端面撮像部が内蔵され、蓋部3を閉じると、一対の光ファイバの先端部近傍を撮像可能な位置に配置される。
【0029】
融着機1は、一対の光ファイバを融着によって接続するものである。図示を省略した一対のホルダによって光ファイバを保持し、ホルダをホルダ載置部11に載置する。この状態で蓋部3を閉じ、光ファイバの先端を突き合わせた状態で、一対の電極7の間にアークを発生させることで、光ファイバの先端部を溶融して接合することができる。
【0030】
図2は、光ファイバを設置した状態における、融着部近傍の概略図であり、
図3(a)は、光ファイバ21の軸方向(
図2のZ方向)から見た側面図、
図3(b)は、電極7の軸方向(
図2のX方向)から見た側面図である。なお、
図2、
図3(a)、
図3(b)は、反射部材23が退避した状態である。
【0031】
ここで、以下の説明において、
図2に示すように、電極7の対向方向をX方向とし、X方向に垂直な方向であって、光ファイバ21同士の対向方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に対して垂直な方向(図中上下方向)をY方向とする。また、Z方向を回転軸とした回転方向をR方向とする。また、以下の図においては、説明に不要な構成については、図示を省略する。
【0032】
前述したように、一対の光ファイバ21同士が互いに対向して配置される。また、一対の電極7が光ファイバ21の対向方向とは垂直な方向(X方向と平行な方向)に対向配置される。光ファイバ21の先端位置を合わせて、電極7同士の間にアークを発生させることで、光ファイバ同士を融着することができる。
【0033】
光ファイバ21の対向部に対して、上方には端面撮像部19aが配置され、下方には、第1側方撮像部19b及び第2側方撮像部19cが配置される。端面撮像部19a、第1側方撮像部19b、第2側方撮像部19cは、光ファイバ21の対向方向に対して略垂直な方向(側面)から一対の光ファイバ21の先端位置の撮像が可能である。また、第1側方撮像部19bと第2側方撮像部19cは、例えば互いに直交する異なる2方向から光ファイバ21の先端位置を撮像することができる。
【0034】
反射部材23と端面撮像部19aは、互いに対向するように、光ファイバ21の上下方向(
図2のY方向)にそれぞれ配置される。なお、図示した例では、反射部材23が下方(第1側方撮像部19b、第2側方撮像部19c側)に配置され、端面撮像部19aは、上方(図示を省略した蓋部3側)に配置される例を示すが、逆であってもよい。また、端面撮像部19aと反射部材23は、互いに対向した位置でなくてもよい。
【0035】
図3(b)に示すように、反射部材23は、反射面27a、27bを有する。反射面27a、27bは、互いに反対方向に向けて配置され、それぞれ、例えばZ方向から入射する光を、90度の方向(Y方向上方)に向けて反射させることが可能である。反射部材23は、一対の光ファイバ21を対向して配置した際に、駆動部によって、光ファイバ21同士の間に移動可能である(図中Y方向)。端面撮像部19aは、反射部材23によって反射された像を撮像可能である。
【0036】
反射部材23が光ファイバ21の対向位置から退避した状態では、反射部材23は、遮蔽部材25によって覆われる。すなわち、遮蔽部材25は、反射部材23が退避状態において、反射部材23と光ファイバ21(融着部)側との間に配置されるものである。遮蔽部材25は、反射部材23の上下動作に伴い開閉可能である。
【0037】
図4は、反射部材23と遮蔽部材25の構造を示す斜視図、
図5(a)は、遮蔽部材25が閉じた状態を示すX方向正面図、
図5(b)は、遮蔽部材25が開いた状態を示すX方向正面図である。前述したように、反射部材23が光ファイバ21の対向位置から退避した状態において、反射部材23の上方(反射部材23と光ファイバ21との間)を覆うように遮蔽部材25が配置される。一対の遮蔽部材25は、例えば図示を省略したコイルバネなどの弾性部材によって、互いに先端を突き合せて閉じた状態を維持する。
【0038】
遮蔽部材25の下部には、それぞれ回転部35が形成され、回転部35の回動によって、遮蔽部材25は開閉可能である。この際、遮蔽部材25の下部において、遮蔽部材25の先端に行くにつれて回転部35から徐々に離れる方向のテーパ部33が形成される。また、反射部材23の下部には、ピン31が配置される。なお、
図5(a)の背面側も同様の構造である。
【0039】
図5(b)に示すように、反射部材23を光ファイバ21同士の間に向けて上昇させると(図中矢印A)、反射部材23のピン31がテーパ部33と接触し、それぞれの遮蔽部材25が押し広げられる(図中矢印B)。すなわち、遮蔽部材25は、回転部35を回転軸として互いに逆方向に回転して、上部が開くため、上昇する反射部材23と干渉することがない。
【0040】
反射部材23は、光ファイバ21の対向部の間まで上昇すると、上昇動作が停止する。このように、反射部材23が光ファイバ21の対向位置へ移動する際には、反射部材23に連動して遮蔽部材25が開く。同様に、遮蔽部材25を降下させると、前述した弾性部材の力によって、遮蔽部材25は再び閉じた状態へ戻る。すなわち、反射部材23が光ファイバ21の対向位置から退避する際には、反射部材23の移動に連動して遮蔽部材25が閉じる。なお、遮蔽部材25の開閉機構はこの例には限定されず、反射部材23の上昇・下降時に、反射部材23の移動に連動して開閉可能であれば、いかなる機構であってもよい。
【0041】
なお、
図4に示すように、遮蔽部材25は、それぞれ一方の側に壁部26を有し、上部に遮蔽部29a、29bを有する。遮蔽部材25の開閉方向(Z方向)の側面には壁部26が形成されず、遮蔽部材25の開閉方向とは異なる側面(X方向)に壁部26が形成される。このように、遮蔽部材25の開閉方向の側面に壁部26を形成しないようにすることで、遮蔽部材25が開いた際に、開く方向に配置される他の部材(例えば光ファイバ保持部5等)との干渉を避けることができる。
【0042】
また、遮蔽部材25同士が閉じた状態では、上部の遮蔽部29a、29bが突き合わさって、内部の反射部材23を上方の光ファイバ21や電極7等から遮蔽することができる。
【0043】
図6(a)は、
図5(a)のC部における遮蔽部29a、29bの状態を示す概念図である。本実施形態では、遮蔽部材25が閉じた状態において、遮蔽部材25の先端部(遮蔽部29a、29b)が、上方(光ファイバ21の対向位置方向)に向かった凸形状である。このようにすることで、遮蔽部材25が開いた際に、遮蔽部29a、29bが、開く方向に配置される他の部材(例えば光ファイバ保持部5等)と干渉することを避けることができる。このように、壁部26の形成方向や遮蔽部29a、29bの形状を適切にすることで、極めて狭い空間において、遮蔽部材25の開閉動作を許容することができる。
【0044】
また、前述したように、遮蔽部材25が閉じた状態では、遮蔽部29a、29bが突き合わさり、下方の反射部材23の上方を覆い、遮蔽部材25が開くことで、
図6(b)に示すように、反射部材23が、遮蔽部29a、29bの間から上方に移動することができる。一方、このような形態では、閉じた状態の遮蔽部29a、29bの合わせ面にわずかな隙間が形成されると、その隙間を通って、上方から内部の反射部材23(反射面27a、27b)に異物等が侵入する恐れがある。
【0045】
このため、
図7(a)に示すように、遮蔽部29a、29bが突き合わさって遮蔽部材25が閉じた状態において、平面視において(Y方向上方から見て)、一対の遮蔽部材25の先端(遮蔽部29a、29b)の一部が重なり合う(図中D)ことが望ましい。このようにすることで、仮に遮蔽部29a、29bの間にわずかな隙間が形成されても、上方から落下した異物がそのまま内部に侵入することを抑制することができる。この場合でも、
図7(b)に示すように、遮蔽部材25を開くと、遮蔽部29a、29bの間から遮蔽部材25を上昇させることができる。
【0046】
なお、融着機1において放電を繰り返し行うことで、風防内の酸素分子が放電によって解離・他の酸素分子と再結合することでオゾンが発生する。オゾンは強力な酸化力を有しているため、遮蔽部材25としては、耐腐食性の高い部材を使用することが望ましい。また、融着の放電はガラスを融かすほどの熱量を持っているため耐熱性、さらには機械的強度も必要である。このため、遮蔽部材25の材質としては、金属が望ましく、その中でも耐腐食性の高いオーステナイト系のステンレスを使用することが好ましい。より具体的には、遮蔽部材25(壁部26、遮蔽部29a、29b)としては、SUS304、SUS312、SUS316等を適用することができる。
【0047】
次に、融着機1の構成について説明する。
図8に示すように、融着機1は、撮像部(端面撮像部19a、第1側方撮像部19b、第2側方撮像部19c)、調心駆動部(第1移動駆動部44、第2移動駆動部45、回転駆動部42)、搬送駆動部43及び、反射部材昇降駆動部41と、これらを制御する制御部40、表示部17等からなる。なお、本実施形態の説明に不要な放電制御等の構成は省略する。
【0048】
操作部15(
図1参照)は、制御部40が行う各種制御内容及び設定条件等を入力することができる。表示部17は、撮像部で撮像した画像や、融着条件等の情報を表示することができる。調心駆動部は、
図2に示したX、Y、R方向に光ファイバ21(光ファイバ保持部5やホルダ載置部11)をそれぞれ動かすことができる。例えば、第1移動駆動部44、第2移動駆動部45は、一対の光ファイバのうち、少なくとも一方を、軸心方向に垂直なそれぞれ異なる方向に移動させて、光ファイバ21の調心が可能である。すなわち、第1移動駆動部44、第2移動駆動部45によって、X方向及びY方向の調心が可能である。
【0049】
また、さらに、回転駆動部42は、一対の光ファイバのうち、少なくとも一方を、一対の光ファイバの対向方向を軸として回転させることで、一対の光ファイバ同士の周方向の調心を行うことができる。なお、それぞれの調心駆動部は、一方の光ファイバ保持部5に対してのみ配置されてもよく、一対の光ファイバ保持部5の両方に配置されてもよい。例えば、第1移動駆動部44及び第2移動駆動部45(すなわち、X、Y方向調心)は、一方の光ファイバに対してのみ配置し、回転駆動部42は、両方の光ファイバに対して配置してもよい。
【0050】
また、搬送駆動部43は、対向するそれぞれの光ファイバ21を、光ファイバ21の軸方向(Z方向)に対して個別に搬送可能である。反射部材昇降駆動部41は、反射部材23を上下方向(Y方向)に対して移動可能である。なお、各駆動部は、例えばモータ等によって動作する。
【0051】
次に、光ファイバ21の調心方法について説明する。光ファイバ21の先端位置(X-Y方向)の調心作業は、従来の方法で行うことができる。例えば、第1側方撮像部19b及び第2側方撮像部19cによって、各方向から光ファイバ21の先端位置を撮像して表示部17に表示し、両者の位置が合うように、操作部15を用いて第1移動駆動部44及び第2移動駆動部45を動作させ(光ファイバ保持部5や、ホルダ載置部11の位置や向きを動作させ)、互いのX-Y位置を合わせることで光ファイバ21のX方向及びY方向の調心が可能である。
【0052】
単心の光ファイバ同士の接続であれば、X-Y調心のみで調心作業が完了する。一方、断面におけるコア等の配置に対して周方向に対する方向性があるようなマルチコアファイバや偏波保持ファイバ等の調心においては、光ファイバ21のX-Y方向の調心のみではなく、回転方向Rの調心も必要となる。このため、本発明では、光ファイバ21の端面を観察可能な反射部材23と端面撮像部19aが用いられる。
【0053】
以下、回転方向Rの調心方法について説明する。なお、以下の各部の動作の制御は、操作部15からの入力又は自動で、制御部40によって行われる。
図9は、反射部材23を上昇させて、反射面27a、27bを光ファイバ21の間に配置した態を示す図である。この際、光ファイバ21同士の間には、反射部材23が挿入可能な程度に隙間が形成される。この隙間は、搬送駆動部43によって光ファイバ21を軸方向の後方に移動させることで形成することができる。
【0054】
図10(a)は、
図9の状態を、端面撮像部19a側から見た図であり、
図10(b)は、
図10(a)のG部拡大図である。前述したように、反射部材23は、それぞれの光ファイバ21の方向に、反射面27a、27bを有する。また、反射部材23の電極7との対向面側には、反射部材23の移動方向に略平行な方向に溝24が形成される。例えば、反射部材23が、反射面27a、27bを有するミラーと、これを保持する保持部とで構成される場合、保持部の電極7との対向部に切れ込みを入れておくことで、溝24を形成することができる。
【0055】
電極7は、例えば間隔を変化させるための駆動機構を有さず、融着に適した間隔で配置される。このように、反射部材23の電極7と対向する位置に干渉防止用の溝24を形成することで、電極7と反射部材23との干渉を避けることができる。同様に、保持部の反射面27a、27b側にも溝を形成することで、反射面27a、27bの反射面積を確保することができる。すなわち、ミラーの四隅近傍のみを保持部で保持することが望ましい。
【0056】
ここで、遮蔽部材25の開閉方向(
図9、
図10(a)のZ方向)は、光ファイバ21の調心位置を撮像する第1側方撮像部19b及び第2側方撮像部19cの配置方向(第1側方撮像部19bと第2側方撮像部19cの併設方向であって、
図10のX方向)とは異なる方向であることが望ましい。このようにすることで、遮蔽部材25の上面に付着していた異物等が、遮蔽部材25が開閉する際に、第1側方撮像部19b及び第2側方撮像部19c上に落下することを抑制することができる。
【0057】
次に、
図11(a)に示すように、反射部材23によって得られる光ファイバ21の像を端面撮像部19aによって撮像する。なお、この際、光ファイバ21の逆の端面又は側面から、光を照射することで、端面におけるコア等の配置を明確に撮像することができる。
【0058】
前述したように、反射部材23は、一方の光ファイバ21の端面の像を端面撮像部19aに向けて反射する第1の反射面27aと(図中矢印I)、他方の光ファイバ21の端面の像を端面撮像部19aに向けて反射する第2の反射面27bとを有する(図中矢印H)。このため、一方の光ファイバ21の端面と他方の光ファイバ21の端面とを、端面撮像部19aによって同時に撮像することが可能である。
【0059】
なお、本実施形態では、一方の光ファイバ21の端面の像の反射面27aにおける反射方向と、他方の光ファイバ21の端面の像の反射面27bにおける反射方向とが同一方向である。このため、一つの端面撮像部19aによって同時にそれぞれの光ファイバ21の端面を撮像可能である。この際、端面撮像部19aの撮像可能範囲としては、光ファイバ21の外径の2倍以上(光ファイバ21の端面から端面撮像部19aまでの像の広がりも考慮して、一対の光ファイバ21の端面を並べて撮像可能な範囲)とすることができる。
【0060】
これに対し、一方の光ファイバ21の端面の像の反射面27aにおける反射方向と、他方の光ファイバ21の端面の像の反射面27bにおける反射方向とを別方向として、複数の端面撮像部19aによって、それぞれの光ファイバ21の端面を同時に撮像可能としてもよい。この場合には、それぞれの端面撮像部19aの撮像範囲を小さくすることができる。すなわち、反射部材23によって反射された像を撮像可能な一つ又は複数の端面撮像部19aを有すればよい。但し、回転方向の調心を行う際には、機差等の影響を低減するため、一つの端面撮像部19aで一対の光ファイバ21の端面を同時に撮像することが望ましい。
【0061】
ここで、各光ファイバ21の端面の焦点調整は、それぞれの光ファイバ21を軸方向に移動させることで行われる(図中矢印J、K)。前述したように、光ファイバ21の融着時には、光ファイバ21同士の突合せや、融着後のスクリーニングなどを行うため、光ファイバ21を軸方向へ移動させるための搬送駆動部43が設けられる。このため、本実施形態では、各端面の焦点調整を、この搬送駆動部43による光ファイバ21のZ方向の動作によって行うことができる。
【0062】
より詳細には、制御部40によって、自動又は手動で、それぞれの光ファイバ21に対応する搬送駆動部43を動作させることで、それぞれの光ファイバ21の撮像画像の焦点調整が可能である。端面撮像部19aで焦点調整を行う場合、それぞれの光ファイバ21の端面画像の焦点が同時に合うように、例えば端面撮像部19a自体の位置や図示しないレンズの位置を調整する必要があるが、制御部40による搬送駆動部43の制御によって、端面撮像部19aにおける撮像画像の焦点位置を制御することで、端面撮像部19aによって、それぞれの光ファイバ21の端面画像を同時にリアルタイムで取得可能であるため、それぞれの光ファイバ21に対して、同時にかつ個別に焦点調整を行うことができる。
【0063】
図11(b)に示すように、焦点調整が終了後、得られた画像によって回転方向Rの調心を行う(図中矢印L、M方向)。前述したように、端面撮像部19aによって、それぞれの光ファイバ21の端面画像を同時にリアルタイムで取得可能である。このため、制御部40は、自動又は手動で、それぞれの光ファイバ21に対応する回転駆動部42を、個別に動作を制御することで、それぞれの光ファイバ21の回転方向Rの調心を行うことができる。すなわち、調心駆動部は、一対の光ファイバ21のうち、少なくとも一方を、一対の光ファイバ21の対向方向を軸として回転させることで、一対の光ファイバ同士の回転方向の調心を行うことができる。
【0064】
また、制御部40は、端面撮像部19aが撮像した像に基づいて、回転駆動部42による光ファイバ21の回転量を自動で制御することもできる。例えば、端面撮像部19aで得られた画像を画像処理部48によって二値化処理し、コア等の配置を特定し、演算処理部49によって、両者のコア等の位置が同一の位置となるように、回転角度情報を算出し、得られた回転角度情報に基づいて制御部40が、回転駆動部42を駆動してもよい。
【0065】
回転方向Rの調心が完了した後、
図12(a)に示すように、反射部材23を下方に降下させる(図中矢印N)。すなわち、反射部材23を退避状態とする。この際、反射部材23の退避動作に連動して、図示を省略した弾性部材等によって遮蔽部材25が閉じられる。
【0066】
調心作業が完了した後、
図12(b)に示すように、搬送駆動部43を動作させることで、光ファイバ21同士の先端部を突き合わせる(図中矢印O)。その後、所定の条件によって電極7間にアークを発生させて融着作業が行われる。以上により、光ファイバ21同士を調心して接続することができる。
【0067】
ここで、反射部材23又は遮蔽部材25の状態を検知可能なセンサ46(
図8参照)を有してもよい。例えば、センサ46が、反射部材23が光ファイバの対向位置から退避した状態又は遮蔽部材25が閉じた状態を検出することで、制御部40は、電極7間の放電を可能とする。このように、反射部材23の退避状態又は遮蔽部材25の閉状態を検知しないと、放電の開始を禁止する保護機構を設けることで、誤って反射部材23が遮蔽されていない状態で放電が開始されることを抑制することができる。
【0068】
また、遮蔽部材25が閉じた状態において、電極7と遮蔽部材25との最短距離(
図3(a)の距離F)は、電極7間距離(
図3(a)の距離E)よりも長いのが望ましく、2倍以上であることがより望ましい。このようにすることで、電極7間に放電する際に、リーク放電を避けることができる。
【0069】
以上、本実施の形態によれば、一対の光ファイバ21の端面を同時に撮像可能であるため、調心作業が容易である。また、それぞれの端面の画像を同一方向に反射させることで、同一の端面撮像部19aによって一対の光ファイバ21の端面を撮像することができる。また、反射部材23が退避するのと連動して遮蔽部材25が閉じるため、反射部材23の昇降駆動部と遮蔽部材25の開閉駆動部を別個に配置する必要がなく、反射部材23を退避させた際に、確実に反射部材23を遮蔽部材25で遮蔽することができる。
【0070】
この際、反射部材23が光ファイバ21の対向位置から退避した状態、又は、遮蔽部材25が閉じた状態を検知可能なセンサ46を用いることで、誤動作等により、反射部材23が遮蔽されていない状態で放電が行われることを抑制することができる。
【0071】
また、遮蔽部材25の開閉方向の側面の全体を塞ぐ壁部26を設けずに開口させることで、光ファイバ保持部5等との干渉を避けることができる。同様に、遮蔽部29a、29bを上方に向けた凸形状(山形状)とすることで、遮蔽部材25を開いた際に、光ファイバ保持部5等との干渉を避けることができる。
【0072】
また、遮蔽部材25の開閉方向を、光ファイバ21の調心位置を撮像する第1側方撮像部19b及び第2側方撮像部19cの配置方向とは異なる方向とすることで、遮蔽部材25の開閉時に、第1側方撮像部19b又は第2側方撮像部19cに異物等が落下することを抑制することができる。
【0073】
また、遮蔽部材25を閉じた状態において、遮蔽部29a、29bの一部が平面視で重なり合うようにすることで、遮蔽部29a、29bの突合せ部にわずかに隙間が形成されても、遮蔽部材25の内部に異物等が侵入することを抑制することができる。
【0074】
なお、端面撮像部19aで撮像された画像中の光ファイバ21の端面の位置を把握することで、端面撮像部19aによる端面観察のみで、X-Y方向の調心を行うこともできる。すなわち、撮像された画像中の光ファイバ21の端面の位置から、X-Y方向の位置と回転方向Rの方向を知ることができるため、全ての調心作業を端面観察によって行うこともできる。
【0075】
また、光ファイバ21の端面観察においては、光ファイバ21の端面の状態を把握可能としてもよい。例えば、端面の画像から、端面の一部に掛けやクラックなどがないかを把握することもできる。特に、端面の各部における焦点深度や真円度を把握することで、切断面が斜めになっている場合や、凹み形状になっている場合など、光ファイバ21の端面形状、または光ファイバ21の端面形状の異常を把握することができる。さらに、干渉顕微鏡等の撮像装置を用いて、端面の干渉縞を把握することで、切断面の形態を画像化することもできる。
【0076】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0077】
1………融着機
3………蓋部
5………光ファイバ保持部
7………電極
9………回転軸
11………ホルダ載置部
13………クランプ
15………操作部
17………表示部
19a………端面撮像部
19b………第1側方撮像部
19c………第2側方撮像部
21………光ファイバ
23………反射部材
24………溝
25………遮蔽部材
26………壁部
27a、27b………反射面
29a、29b………遮蔽部
31………ピン
33………テーパ部
35………回転部
40………制御部
41………反射部材昇降駆動部
42………回転駆動部
43………搬送駆動部
44………第1移動駆動部
45………第2移動駆動部
46………センサ
48………画像処理部
49………演算処理部