(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】ドライモルタル用高減水性粉末調製物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20250207BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20250207BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20250207BHJP
C08F 222/02 20060101ALI20250207BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250207BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20250207BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20250207BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20250207BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20250207BHJP
C08L 33/26 20060101ALI20250207BHJP
C04B 103/30 20060101ALN20250207BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B28/02
C04B24/26 B
C04B24/26 F
C04B24/12 A
C08F222/02
C08K3/36
C08K3/26
C08K3/22
C08L33/14
C08L35/00
C08L33/26
C04B103:30
(21)【出願番号】P 2021547484
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2020081401
(87)【国際公開番号】W WO2020192735
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】201910229736.9
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ユイ チャオ
(72)【発明者】
【氏名】チュー チアリー
(72)【発明者】
【氏名】リウ チアンホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン リン
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/059723(WO,A1)
【文献】特開2003-277114(JP,A)
【文献】特開2005-272216(JP,A)
【文献】特開2001-294463(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101962273(CN,A)
【文献】特表2014-524402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C08F 222/02
C08K 3/22
C08K 3/26
C08K 3/36
C08L 33/14-33/16
C08L 33/26
C08L 35/00-35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末コポリマーPであって、以下を含むPCEタイプコポリマーを、それぞれ前記粉末の総重量に基づいて、少なくとも80重量%含む、粉末コポリマーP:
(a)aモル部の式Iの構造単位S1
【化1】
(b)bモル部の式IIの構造単位S2
【化2】
(c)cモル部の式IIIの構造単位S3
【化3】
(d)dモル部の式IVの構造単位S4
【化4】
式中、
各Mは、相互に独立して、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し、
各R
uは、相互に独立して、水素又はメチル基を表し、
各R
vは、相互に独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
各R
1及び各R
2は、相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、又は-[AO]
n-R
4を表し、
ここで、A=C
2~C
4-アルキレンであり、R
4は、H、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロヘキシル、又はC
1~C
20-アルキルアリールを表し、かつ
n=2~350であり、
各R
3は、他のものとは独立して、NH
2、-NR
5R
6、-OR
7NR
8R
9を表し、
ここで、R
5及びR
6は、相互に独立して、
C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、
C
1~C
20-アルキルアリール若しくはC
1~C
20-アリール、
又は、ヒドロキシアルキル-若しくはアセトキシエチル-(CH
3-CO-O-CH
2-CH
2-)、又はヒドロキシイソプロピル-(HO-CH(CH
3)-CH
2-)、又はアセトキシイソプロピル基(CH
3-CO-O-CH(CH
3)-CH
2-)であり;
又は、R
5及びR
6は一緒になって、窒素がその一部である環を形成して、モルホリン若しくはイミダゾリン環を形成し、
R
7はC
2~C
4-アルキレン基であり、
各R
8及びR
9は相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、C
1~C
20-アリール、又はヒドロキシアルキル基を表し、かつ
a、b、c及びdは、前記構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部を示し、
ここで、
a/b/c/d=(0.1~0.9)/(0.1~0.9)/(0~0.8)/(0~0.8)であり、
ただし、a+b+c+d=1であり、かつ
前記粉末コポリマーPが、
<250μmのD90値、
<60μmのD10値、及び
70~130μmのD50値
の粒径分布を有すること、及び
40重量%の濃度で水中に再分散したときに、少なくとも8のpHを有すること
を特徴とする。
【請求項2】
各R
1及びR
2は、相互に独立して、-[AO]
n-R
4を表し、ここで、各R
4は、相互に独立して、H又はCH
3から選択され、かつnは、n=8~250である、請求項1に記載の粉末コポリマーP。
【請求項3】
a/bの比が、0.5/1~15/1である、請求項1に記載の粉末コポリマーP。
【請求項4】
それぞれ前記粉末の総乾燥重量に基づいて、<5重量%の、固結防止剤及び抗酸化剤の群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の粉末コポリマーP。
【請求項5】
以下の工程を含む、
粉末コポリマーPの製造方法:
(i)コポリマー水溶液であって、以下を含むPCEタイプコポリマーを、それぞれ前記水溶液の総重量に基づいて、30~99重量%含むコポリマー水溶液を調製すること:
(a)aモル部の式Iの構造単位S1
【化5】
(b)bモル部の式IIの構造単位S2
【化6】
(c)cモル部の式IIIの構造単位S3
【化7】
(d)dモル部の式IVの構造単位S4
【化8】
式中、
各Mは、相互に独立して、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し、
各R
uは、相互に独立して、水素又はメチル基を表し、
各R
vは、相互に独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
各R
1及び各R
2は、相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、又は-[AO]
n-R
4を表し、
ここで、A=C
2~C
4-アルキレンであり、R
4は、H、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロヘキシル、又はC
1~C
20-アルキルアリールを表し、かつ
n=2~350であり、
各R
3は、他のものとは独立して、NH
2、-NR
5R
6、-OR
7NR
8R
9を表し、
ここで、R
5及びR
6は、相互に独立して、
C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、
C
1~C
20-アルキルアリール若しくはC
1~C
20-アリール、
又は、ヒドロキシアルキル-若しくはアセトキシエチル-(CH
3-CO-O-CH
2-CH
2-)、又はヒドロキシイソプロピル-(HO-CH(CH
3)-CH
2-)、又はアセトキシイソプロピル基(CH
3-CO-O-CH(CH
3)-CH
2-)であり;
又は、R
5及びR
6は一緒になって、窒素がその一部である環を形成して、モルホリン若しくはイミダゾリン環を形成し、
R
7はC
2~C
4-アルキレン基であり、
各R
8及びR
9は相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、C
1~C
20-アリール、又はヒドロキシアルキル基を表し、かつ
a、b、c及びdは、構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部を示し、
ここで、
a/b/c/d=(0.1~0.9)/(0.1~0.9)/(0~0.8)/(0~0.8)であり、
ただし、a+b+c+d=1である;
(ii)塩基を添加して、前記
コポリマー水溶液のpHを、少なくとも7に調節すること;
(iii)それぞれ前記
コポリマー
水溶液の重量に基づいて、0.01~5重量%の、固結防止剤及び/又は抗酸化剤から選択される少なくとも1種の添加剤を添加すること;
(iv)前記水溶液を噴霧乾燥して粉末を得ること;及び
(v)任意選択により、ふるいにかけること。
【請求項6】
前記粉末コポリマーPは、
<250μmのD90値、
<60μmのD10値、及び
70~130μmのD50値
の粒径分布を有すること
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末コポリマーPにおける各R
1及びR
2は、相互に独立して、-[AO]
n-R
4を表し、ここで、各R
4は、相互に独立して、H又はCH
3から選択され、かつnは50~115である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記粉末コポリマーPにおけるa/bの比が、0.5/1~15/1である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)における前記コポリマーが、ラジカル重合プロセスによって調製されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)で添加する前記塩基は、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)で添加する前記塩基がCa(OH)
2であり、かつ前記pHが10~14であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(iv)を、150℃以下の噴霧乾燥入口温度で行うことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
鉱物バインダ組成物における、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
【請求項14】
前記鉱物バインダ組成物がドライモルタルであることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
鉱物バインダ組成物の水要求量を低減するための、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
【請求項16】
鉱物バインダ組成物の流動性を高めるための、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
【請求項17】
鉱物バインダ組成物のスランプライフを改善するための、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
【請求項18】
鉱物バインダ組成物の圧縮強度を高めるための、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
【請求項19】
鉱物バインダ組成物であって、それぞれ前記鉱物バインダ組成物の総重量に基づいて、以下を含有する鉱物バインダ組成物:
(a)10~50重量%の少なくとも1種の鉱物バインダ、
(b)0.01~10重量%の請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末コポリマーP、
(c)0~80重量%の骨材
(d)0~10重量%の可塑剤、高性能減水剤、レオロジー変性剤、凝結遅延剤、空気連行剤、脱気剤、腐食阻害剤、繊維、合成有機ポリマー、膨張剤、顔料、強度増強剤、防水添加剤、アルカリ-骨材反応阻害剤、クロム酸塩低減剤、及び/又は抗菌剤の群から選択される他の添加剤。
【請求項20】
追加で水を含有する、請求項19に記載の鉱物バインダ組成物。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の鉱物バインダ組成物を硬化することにより得られる成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に再分散可能である粉末形態のPCEタイプコポリマー、この粉末形態のPCEタイプコポリマーの製造、及びドライモルタルを変性するためのこのような粉末PCEタイプコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、ポリカルボキシレート及びポリアルキレングリコール(PCE)のコポリマーが、特に鉱物バインダの水性分散体といった水性分散体のための分散助剤として知られている。PCEは、高性能減水剤として作用すると共に、所与の未硬化の鉱物バインダ組成物において一定レベルの流動度を得るために必要な水を低減させる。鉱物バインダ組成物、特にセメント状組成物における水の低減は、未硬化の組成物における固体成分の分離の低減、及び、硬化した組成物の圧縮強度の増大をもたらすために望ましいものである。
【0003】
近頃においては、工場で予めバッチングされたドライモルタルが、新規建設及び改修工事に用いられている。このようなドライモルタルは、作業現場でバッチングされたモルタルに対して、流動性、硬化速度論及び最終強度などの特性の向上した一貫性という利点を有する。ドライモルタルにおけるPCEの使用では、かた練り、好ましくは粉末形態の前記PCEが要求される。さらに、かた練りPCEは、前記PCEの輸送及び保管に係るコストを低減させるものであり、特に、乾燥PCEが水中に再分散可能であり、それ故、使用する場所で水溶液又は分散体を容易に形成可能である。
【0004】
国際公開第2006/133933号パンフレットには、不飽和長鎖ポリアルキレングリコールエーテル系のモノマーと共重合されたオレフィン性不飽和モノカルボン酸系モノマーのPCEタイプコポリマーが開示されている。このコポリマーは、噴霧乾燥されて粉末に形成することが可能である。しかしながら、開示されているこのコポリマーの構成は、噴霧乾燥プロセスに最適化されているものではない。その結果、固結性の粉末、及び、ドライモルタルにおける使用に最適ではない粒径分布がもたらされてしまう。
【0005】
国際公開第2006/129883号パンフレットには、50%未満の中性化度を有し、向上した微粉化特性が得られるPCEタイプコポリマーが開示されている。微粉化は、噴霧乾燥プロセスを含む種々の手段によることが可能である。一つの欠点は、中性化度が低いことにより、粉末固結に対する傾向が高いままになお存在することである。
【0006】
国際公開第00/47533号パンフレットには、シリカを含む鉱物支持体を含有する粉末PCE系高分子組成物が開示されている。これらの粉末は、噴霧乾燥プロセスに由来する同一のPCEタイプコポリマーの粉末と比した場合に、向上した粉末流及び向上した固結防止特性を有することが報告されている。これらの粉末の一つの欠点は、安定な水性ポリマー分散体を再度調製するために、容易に再分散させることができないことである。
【0007】
中国特許第101824125号明細書には、600~2,000g/molの分子量のポリアルキレングリコール鎖を有するPCEタイプコポリマーが開示されている。粉末生成物を得るための噴霧乾燥法もまた開示されている。しかしながら、開示されている噴霧乾燥プロセスは高温で操作されるものであり、より高いエネルギー入力が求められると共に、噴霧乾燥中にPCEタイプコポリマーが分解されてしまう恐れがある。
【0008】
中国特許第101962273号明細書には、噴霧乾燥プロセスにおける、無機粒子が添加された粉末PCEタイプコポリマーの調製プロセスが開示されている。しかしながら、許容可能な粉末品質を得るためには、相当量の鉱物担体を噴霧乾燥プロセスにおいて添加する必要がある。さらに、開示されている噴霧乾燥プロセスは高温で操作されるものであり、より高いエネルギー入力が求められると共に、噴霧乾燥中にPCEタイプコポリマーが分解されてしまう恐れがある。
【0009】
最後に、米国特許第7030178号明細書には、45~150の側鎖におけるアルコキシル化度、15~45mol%のアルコキシル化側鎖を有するモノマーの比、及び、70~80%のカルボン酸基の中性化度を有するPCEタイプコポリマーに基づく水硬性組成物用の粉末分散剤が開示されている。噴霧乾燥が、前記粉末分散剤を得るための方法として記載されている。一つの欠点は、開示されている中性化度により、粉末固結に対する顕著な傾向がなお存在することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故、噴霧乾燥により容易に調製可能であると共に、上記の欠点を克服する粉末PCE組成物に対する必要性が存在する。
【0011】
本発明は、噴霧乾燥により入手可能である粉末PCEタイプコポリマーを提供することを目的とする。特に、この粉末の粉末度及び固結防止特性、並びに鉱物バインダ組成物におけるこの粉末PCEタイプコポリマーの減水能及びスランプライフに対する影響は、現在の技術水準よりも向上しているべきである。
【0012】
本発明は、この粉末PCEタイプコポリマーを製造するための噴霧乾燥プロセスを提供することを他の目的とする。
【0013】
本発明は、鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルを向上させるための方法及び前記粉末PCEタイプコポリマーの使用を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外なことに、本発明の目的は、粉末コポリマーPであって、以下を含むPCEタイプコポリマーを、それぞれ粉末の総重量に基づいて、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む、粉末コポリマーPによって、請求項1に従って達成できることが見出された:
(a)aモル部の式Iの構造単位S1
【化1】
(b)bモル部の式IIの構造単位S2
【化2】
(c)cモル部の式IIIの構造単位S3
【化3】
(d)dモル部の式IVの構造単位S4
【化4】
式中、
各Mは、相互に独立して、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し、
各R
uは、相互に独立して、水素又はメチル基を表し、
各R
vは、相互に独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
各R
1及び各R
2は、相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、又は-[AO]
n-R
4を表し、
ここで、A=C
2~C
4-アルキレンであり、R
4は、H、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロヘキシル、又はC
1~C
20-アルキルアリールを表し、かつ
n=2~350であり、
各R
3は、他のものとは独立して、NH
2、-NR
5R
6、-OR
7NR
8R
9を表し、
ここで、R
5及びR
6は、相互に独立して、
C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、
C
1~C
20-アルキルアリール若しくはC
1~C
20-アリールであり、
又は、ヒドロキシアルキル-若しくはアセトキシエチル-(CH
3-CO-O-CH
2-CH
2-)、又はヒドロキシイソプロピル-(HO-CH(CH
3)-CH
2-)、又はアセトキシイソプロピル基(CH
3-CO-O-CH(CH
3)-CH
2-)であり;
又は、R
5及びR
6は一緒になって、窒素がその一部である環を形成して、モルホリン若しくはイミダゾリン環を形成し、
R
7はC
2~C
4-アルキレン基であり、
各R
8及びR
9は相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、C
1~C
20-アリール、又はヒドロキシアルキル基を表し、かつ
a、b、c及びdは、構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部を示し、
ここで、
a/b/c/d/=(0.1~0.9)/(0.05~0.9)/(0.0~0.8)/(0.0~0.8)であり、
ただし、a+b+c+d=1であり、かつ
この粉末コポリマーPが、
<250μm、好ましくは<225μm、特に<210μmのD90値、
<60μm、好ましくは<50μm、特に<40μmのD10値、及び
70~130μm、好ましくは75~120μm、特に80~100μmのD50値
の粒径分布を有すること
を特徴とする。
【0015】
上記の粉末コポリマーPは、有利に、ドライモルタル配合物において用いられて、ドライモルタルにおいて水要求量を低減し、及び/又は、前記ドライモルタルに係る組成物の流動度を高めることが可能であることが見出された。
【0016】
本発明の粉末コポリマーPの他の利点は、この粉末コポリマーPを含む鉱物バインダ組成物が、混合水との混合の後に分離されにくいものであることである。
【0017】
本発明のさらに他の利点は、粉末コポリマーPは、この粉末コポリマーPを含まないが、現在における技術水準のPCEタイプコポリマーを含む同一の鉱物バインダ組成物と比した場合に、水と混合された後における鉱物バインダ組成物のスランプライフの向上をもたらすことである。スランプライフの向上とは、鉱物バインダ組成物と水とを混合した後一定時間の後において、スランプフローにおける変化が最低限であることを意味する。
【0018】
最後に、本発明の粉末コポリマーPの利点は、同一レベルの流動度を有するが、現在における技術水準のPCEタイプコポリマーを含む鉱物バインダ組成物と比した場合に、特に水と混合してから1日又は3日後に計測した場合における、この粉末コポリマーPの硬化後の鉱物バインダ組成物の圧縮強度が高いことである。
【0019】
本発明のさらなる態様がさらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0020】
本発明に関連して、「鉱物バインダ」という表記は特に、水の存在下における水和反応で反応して固体水和物又は水和物相を形成するバインダを指す。これは、例えば、水硬性バインダ(例えばセメント又は水硬性石灰)、潜在水硬性バインダ(例えばスラグ)、ポゾランバインダ(例えばフライアッシュ)、又は、非水硬性バインダ(石こうプラスター又は白しっくい)であることが可能である。「鉱物バインダ組成物」は従って、少なくとも1種の鉱物バインダを含む組成物である。
【0021】
実施形態によれば、鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物は、水硬性バインダ、好ましくはセメントを含有する。35重量%以上のセメントクリンカー含有量を有するセメントが特に好ましい。特に、セメントは、CEM I、II、III(規格EN197-1に準拠)のもの、又は、カルシウムアルミネートセメント(規格EN 14647:2006-01に準拠)、又は、カルシウムスルホアルミネートセメント、又は、これらの混合物である。鉱物バインダの総量における水硬性バインダの割合は、有利には、少なくとも5重量%、特に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、特に少なくとも65重量%である。さらに有利な実施形態において、鉱物バインダは、ある程度、少なくとも95重量%の水硬性バインダ、特にセメントクリンカーから構成される。
【0022】
有利な一実施形態において、セメントは、各々がセメントの総乾燥重量に基づいて、40重量%以下、好ましくは35重量%以下、特に20重量%以下の硫酸カルシウムをさらに含有する。硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム-半水和物、硫酸カルシウム-二水和物及び/又は無水物の形態で存在し得る。
【0023】
さらなる実施形態によれば、バインダ組成物は、水硬性バインダに追加して、又は、これの代わりに他のバインダを含む。これらは特に、潜在水硬性バインダ及び/又はポゾランバインダである。好適な潜在水硬性及び/又はポゾランバインダは、例えば、スラグ、フライアッシュ及び/又はシリカ粉塵である。有利な実施形態において、鉱物バインダは、5~95重量%、特に5~65重量%、特に15~35重量%の潜在水硬性及び/又はポゾランバインダを含有する。
【0024】
本発明に関連して用いられるところ、「骨材」という用語は、鉱物バインダの水和反応において非反応性である鉱物材料を指す。骨材は、典型的にはコンクリート、モルタル、スクリード、レンダリング、グラウト、コーティング、パテ等などのセメント状物質に用いられるいずれかの骨材であることが可能である。典型的な骨材は、例えば岩、砕石、砂利、スラグ、石灰岩、砂、再生コンクリート、パーライト又はバーミキュライトである。
【0025】
本発明に関連して、「ドライモルタル」とは、上記の少なくとも1種の鉱物バインダと、典型的には骨材と、可塑剤、高性能減水剤、レオロジー変性剤、凝結遅延剤、空気連行剤、脱気剤、腐食阻害剤、繊維、合成有機ポリマー、膨張剤、顔料、強度増強剤、防水添加剤、アルカリ-骨材反応阻害剤、クロム酸塩低減剤及び/又は抗菌剤の群から選択される添加剤とを含有する組成物を指す。ドライモルタルは、少量の水を含有していてもよい。ドライモルタルは、固形のコンシステンシー、特に粉末コンシステンシーを有する。ドライモルタルは、典型的には、工場で予めバッチングされ、作業現場に届けられる。ドライモルタルは、コンクリート用の補修モルタルとして、スクリード、レンダリング、コーティング、パテ、グラウト又は水硬セメントとして、並びに、耐水性又は耐火性用途に用いられるよう配合可能である。
【0026】
本発明に関連して、「粒径分布」は、径に基づく存在する粒子の相対量を定義する値の列挙である。粒径分布は、異なるD値によって記載可能である。例えば、D10値は、粒子の直径であって、所与の分布の粒子の10%がこれよりも小さく、且つ、所与の分布の粒子の90%がこれよりも大きいものである。また、D90値は、直径であって、所与のサンプルの90%がこの値よりも小さい直径を有する粒子を含んでいるものである。別段の定めがない限りにおいては、「粒径」という用語は、本目的については、固体の粒径分布の中間値を指す。この中間値は、所与の粒径分布のD50値とされ、及び、累積分布における50%での粒径の値からなる。D50値は通常、粒径であって、所与の分布の粒子の50%がこれよりも大きく、且つ、50%がこれよりも小さい粒径として解釈される。それ故、D50は数中央値である。
【0027】
上記に定義されている粒径分布、それ故、異なるD値並びに粒径は特に、レーザ光散乱法により、好ましくは規格ISO 13320:2009に準拠して測定可能である。特に、Mastersizer 2000機器を、Hydro 2000G分散ユニット及びMastersizer 2000ソフトウェア(Malvern Instruments GmbH(Germany)製)と共に、この目的のために用いることが可能である。
【0028】
本発明に関連して、「スランプライフ」という用語は、鉱物バインダ組成物と水とを混合した後、例えばASTM C143により計測されるスランプが低下し始めるまでの時間に関する。一般に、より長いスランプライフが、鉱物バインダ組成物はより長い時間の間作業可能となるために、有利である。
【0029】
本発明の粉末コポリマーPは、以下を含むPCEタイプコポリマーを、それぞれ粉末の総重量に基づいて、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む、粉末コポリマーPである:
(a)aモル部の式Iの構造単位S1
【化5】
(b)bモル部の式IIの構造単位S2
【化6】
(c)cモル部の式IIIの構造単位S3
【化7】
(d)dモル部の式IVの構造単位S4
【化8】
式中、
各Mは、相互に独立して、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し、
各R
uは、相互に独立して、水素又はメチル基を表し、
各R
vは、相互に独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
各R
1及び各R
2は、相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、又は-[AO]
n-R
4を表し、
ここで、A=C
2~C
4-アルキレンであり、R
4は、H、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロヘキシル、又はC
1~C
20-アルキルアリールを表し、かつ
n=2~350であり、
各R
3は、他のものとは独立して、NH
2、-NR
5R
6、-OR
7NR
8R
9を表し、
ここで、R
5及びR
6は、相互に独立して、
C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、
C
1~C
20-アルキルアリール若しくはC
1~C
20-アリール、
又は、ヒドロキシアルキル-若しくはアセトキシエチル-(CH
3-CO-O-CH
2-CH
2-)、又はヒドロキシイソプロピル-(HO-CH(CH
3)-CH
2-)、又はアセトキシイソプロピル基(CH
3-CO-O-CH(CH
3)-CH
2-)であり;
又は、R
5及びR
6は一緒になって、窒素がその一部である環を形成して、モルホリン若しくはイミダゾリン環を形成し、
R
7はC
2~C
4-アルキレン基であり、
各R
8及びR
9は相互に独立して、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-シクロアルキル、C
1~C
20-アルキルアリール、C
1~C
20-アリール、又はヒドロキシアルキル基を表し、かつ
a、b、c及びdは、構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部を示し、
ここで、
a/b/c/d=(0.1~0.9)/(0.05~0.9)/(0~0.8)/(0.0~0.8)であり、
特に、a/b/c/d=(0.3~0.9)/(0.05~0.7)/(0~0.3)/(0.0~0.4)であり、
ただし、a+b+c+d=1である。
【0030】
n=8~250、より好ましくはn=11~200、さらにより好ましくはn=20~150、最も好ましくはn=30~125、特にn=50~115を有するPCEタイプコポリマーが、ドライモルタルにおける使用に特に有利であった。
【0031】
有利には、構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部は、以下のとおり選択される:a/b/c/d=(0.3~0.9)/(0.05~0.9)/(0~0.3)/(0~0.4)、好ましくはa/b/c/d=(0.3~0.9)/(0.05~0.7)/0/0。
【0032】
特に有利な実施形態によれば、a/bの比は、0.5/1~15/1、好ましくは1/1~11/1、より好ましくは1.5/1~9/1、最も好ましくは3/1~8/1、特に6/1~7/1である。好ましい限度内のa/bの比は、鉱物バインダ組成物、特に、ドライモルタルにおいて用いられる場合に、粉末コポリマーPの向上した性能をもたらす。それ故、好ましい限度内のa/b比を有する粉末コポリマーPは、他のa/bの比を有する粉末コポリマーPと比した場合に、鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物のより高い初期流動性及びより高い圧縮強度をもたらす。
【0033】
特に有利な実施形態によれば、Ru及びRvは各々水素又はメチル基を表し、m=1であり、p=0であり、及び、R1は-[AO]n-R4を表し、ここで、AはC2-アルキレンを表し、n=50~115であり、及び、R4はH又はCH3から選択される。
【0034】
好ましくは、PCEタイプコポリマーの平均分子量(Mw)は、5,000~150,000g/mol、特に10,000~100,000g/molである。平均分子量は特に、ポリエチレングリコール(PEG)を標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて計測される。
【0035】
特に、構造単位S1、S2、S3及びS4は一緒になって、各々PCEタイプコポリマーの総乾燥重量に基づいて、少なくとも50wt.-%、好ましくは少なくとも90wt.-%、特に少なくとも95wt.-%となる複合分子量を有する。
【0036】
このようなPCEタイプコポリマーを製造する方法は当技術分野において公知である。2つの主な方法が、このようなPCEタイプコポリマーの合成において工業的に用いられている。第1の方法は、エチレン不飽和モノマーのラジカル重合である。得られるPCEタイプコポリマーの側鎖はモノマーユニットに既に結合している。所望の構造及び特性を有するPCEタイプコポリマーは、重合反応溶液中におけるモノマーの特定の選択及び比、特にアクリル及びメタクリル酸モノマーの量によって得られる。このようなラジカル重合並びに得られるPCEタイプコポリマーは、例えば国際公開第2012/084954号パンフレットに記載されている。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、PCEタイプコポリマーはラジカル重合によって得られるものである。典型的には、ラジカル重合は、好ましくは調整剤としての次亜リン酸ナトリウムで調整される。特に好ましい実施形態において、ラジカル重合は室温で実施される。
【0038】
等重合度反応として知られる第2の方法において、ポリカルボン酸主鎖は第1のステップにおいて合成される。その後、例えば、アルコール、アミン等を伴うエステル化、アミド化又はエーテル処理反応により、側鎖がこのポリカルボン酸主鎖に結合される。このような等重合度反応並びに得られるPCEタイプコポリマーは、例えば、欧州特許第1138697号明細書及び国際公開第2005/090416号パンフレットに記載されている。
【0039】
さらなるモノマーが、本発明のPCEタイプコポリマーに含有されていることが可能である。このようなさらなるモノマーの例は、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、イソブチレン、ジイソブチレン、シクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロペンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ブタジエン及びアクリロニトリルである。本発明のPCEタイプコポリマーに含有されるいずれかのさらなるモノマーの分子量の和は、各々PCEタイプコポリマーの総乾燥重量に基づいて、50重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に5重量%未満である。
【0040】
本発明の粉末コポリマーPは、<250μm、好ましくは<225μm、特に<210μmのD90値、<60μm、好ましくは<50μm、特に<40μmのD10値、及び、70~130μm、好ましくは75~120μm、特に80~100μmのD50値の粒径分布により特徴付けられる。
【0041】
本発明の粉末コポリマーPは、上記のPCEタイプコポリマーの水溶液を噴霧乾燥させることにより入手可能である。
【0042】
噴霧乾燥前において、水溶液中におけるPCEタイプコポリマーの濃度は特に限定されない。しかしながら、各々前記水溶液の総重量に基づいて、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、及び、75重量%以下のPCEタイプコポリマーの濃度を有する水溶液を用いることが好ましい可能性がある。
【0043】
PCEタイプコポリマーの水溶液のpHは、噴霧乾燥に先だって、>7、好ましくは>9、特に>10に調節される。噴霧乾燥に用いられるPCEタイプコポリマーの水溶液のこのようなpHは、本発明の粉末コポリマーPのより微細な粒径、及び、固結しにくい粉末をもたらす。
【0044】
PCEタイプコポリマーの水溶液の<7のpHは、噴霧乾燥中における高い粘着性及び固結をもたらしてしまう。実施形態によれば、PCEタイプコポリマーの水溶液のpHは、繰返し単位-[AO]-の数nに従って調節される。数nが大きくなるほど、噴霧乾燥中における粘着性及び固結を防止するためにpHを高める必要がある。特に好ましい実施形態によれば、数nは50~115であり、pHは少なくとも10に調節される。
【0045】
実施形態によれば、pHは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの混合物の酸化物又は水酸化物の添加により調節される。好ましくは、PCEタイプコポリマーの水溶液のpHは、NaOH、KOH、MgO、Mg(OH)2、CaO又はCa(OH)2の添加により調節され、Ca(OH)2が最も好ましい。
【0046】
噴霧乾燥は、溶液の急速乾燥と吹付けを組み合わせることにより、液体から乾燥粉末を生成する既知の方法である。乾燥は、高温のガス、好ましくは高温の空気又は高温の窒素で行うことが可能である。高熱のガスを、噴霧される液体と同一の方向に吹き出させることが可能である。同様に、高熱のガスを、噴霧される液体と反対の方向に吹き出させることが可能である。液体はスプレーノズル又はアトマイザで分散され、インレットは、スプレータワーの上部にあることが好ましい。乾燥された粉末は、サイクロンによって高熱のガスから分離可能である。
【0047】
好ましくは、PCEタイプコポリマーの水溶液は、噴霧乾燥器に入る前に予熱される。乾燥にガスが用いられない場合、PCEタイプコポリマー溶液は、0.2~40MPaの圧力で噴霧乾燥器に導入可能である。乾燥にガスが用いられる場合、PCEタイプコポリマー溶液は雰囲気圧で噴霧乾燥器に導入可能である。好ましくは、乾燥は、高温の空気又は高温の窒素で実施され、好ましくは、噴霧される液体と同一の方向にガスが吹き出される。噴霧乾燥は、90~300℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは110~150℃、特に110~120℃のインレット温度で実施され得る。より低いインレット温度はエネルギー消費が低く、並びに、PCEタイプコポリマーが分解されにくいという利点を有する。アウトレット温度は、55~200℃、好ましくは60~150℃、より好ましくは65~100℃であり得る。
【0048】
PCEタイプコポリマーの水溶液は、ノズル、アトマイザ又は遠心分離などの当業者に公知であるいずれかの手段によって噴霧乾燥器に導入可能である。当業者に公知であるいずれかの噴霧乾燥器が、本発明の粉末コポリマーPの製造に好適である。噴霧乾燥器のサイズは、意図されるスループットに従って選択可能である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、粉末コポリマーPは他の添加剤を含有する。好ましい添加剤は、固結防止剤、並びに、熱酸化分解及び自己点火に対して粉末を安定化させる抗酸化剤である。
【0050】
好適な固結防止剤は、当業者に公知であるいずれのものであることも可能である。固結防止剤の例としては、粉末セルロース、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、苦灰石、クレイ、カオリン、バーミキュライト、ベントナイト、タルク、スラグ、フライアッシュ、ケイ酸又はアルミノケイ酸塩、及び、例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゲル又はシリカゾルなどの二酸化ケイ素が挙げられる。
【0051】
好適な抗酸化剤は、当業者に公知であるいずれのものであることも可能である。抗酸化剤の例としては、例えば国際公開第00/17263号パンフレットに開示されており、アルキル化モノフェノール、アルキル化ヒドロキノン、アルキリデン-ビスフェノール、ヒドロキシル化ベンジル、フェノール-チオジフェニルエーテル、アシルアミノフェノール、フェノール系エステル及びフェノール系アミドが挙げられる。
【0052】
実施形態によれば、いずれかのこのような他の添加剤は、このような添加剤の高い性能をもたらすこととなるため、噴霧乾燥プロセスの前に添加される。添加剤は、噴霧乾燥に先行してPCEタイプコポリマーの水溶液に添加可能である。同様に、噴霧乾燥プロセスの最中に、例えば別々の供給ノズルを介して1種以上の添加剤を添加することが可能である。
【0053】
実施形態によれば、粉末コポリマーPにおけるいずれかのこのような他の添加剤の含有量は、各々前記水溶液の総重量に基づいて、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1.5重量%未満、特に1重量%未満である。
【0054】
得られる粉末生成物は、場合により形成され得る小さな凝塊物を除去するためにふるいにかけてもよい。
【0055】
噴霧乾燥プロセスは、連続的に、又は、非連続的に行うことが可能である。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、固体コポリマーPは粉末である。この粉末は、例えばプレスにより他の固体形態に転換し得る。それ故、本発明のコポリマーPはまた、粒質物、成型ブロック、錠剤等の形態であり得る。
【0057】
本発明の粉末コポリマーPは、水とアルカリ性反応を示す。本発明の粉末コポリマーPは、水中に完全に再分散可能である。本発明の粉末コポリマーPの濃度が40重量%であるこのような水中への再分散物は、少なくとも8、好ましくは少なくとも10、特に少なくとも11のpHを有する。
【0058】
追加の態様として、本発明は、本発明の粉末コポリマーPを含有する鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルに関する。この鉱物バインダは、上記に定義されているとおりである。鉱物バインダ組成物は、例えば、乾燥組成物の形態、又は、混合水と混合した流体若しくは堅化バインダ組成物の形態であり得る。鉱物バインダ組成物はまた、完全硬化鉱物バインダ組成物(例えば成型体)の形態であり得る。
【0059】
好ましくは、鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物は、鉱物バインダの総重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.1~2重量%、特に0.15~0.8重量%の量で本発明を含有する粉末コポリマーPを含有する。本発明の粉末コポリマーPの向上した性能のために、鉱物バインダ組成物中における前記粉末コポリマーPの投与量は少なくすることも可能である。
【0060】
本発明の鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルは、好ましくは砂といった骨材を追加で含有していてもよい。砂は、微細な岩又は鉱物粒子で組成される天然の粒状材料である。これは、種々の形態及び径で入手可能である。好適な砂の例は、石英砂、石灰岩砂、川砂又は破砕骨材である。好適な砂は、例えば規格ASTM C778又はEN196-1に記載されている。
【0061】
好ましくは、砂の少なくとも一部は、石英砂若しくは石灰岩砂、又は、これらの混合物であり、化学的に不活性で、強固であり、種々の径で入手可能であり、及び、組成物の流動度を有利に設定可能であるために石英砂が特に好ましい。
【0062】
通例、砂は、有効な開口部を有するふるいを通過する粒子を異なる割合で含んで供給される。好ましくは少なくとも95重量%が5mmよりも小さく、より好ましくは4mmよりも小さく、さらにより好ましくは3.5mmよりも小さい砂である。大きな粒子は不適切な混合をもたらし得る。
【0063】
好ましくは、砂の少なくとも一部は、少なくとも100μm、より好ましくは少なくとも200μmの粒径を有する。このようなグラニュロメトリーは、均質な混合、新しいモルタルの良好なレオロジー、及び、硬化されたモルタルの高い強度のために最適化された粒径分布を実現する。
【0064】
好ましい砂は、0.04~5mm、より好ましくは0.05~4mm、及び、さらにより好ましくは0.05~3.6mmの粒径を有する。
【0065】
本発明の好ましい鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルはそれ故、前記鉱物バインダ組成物の総乾燥重量に基づいて、10~80重量%、好ましくは25~70重量%、特に40~65重量%の砂を含む。
【0066】
本発明の鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルが、鉱物バインダ組成物、特にセメント状バインダ組成物に係る他の添加剤を追加的に含有していることが有利である可能性がある。このような添加剤は、例えば、可塑剤、高性能減水剤、レオロジー変性剤、凝結遅延剤、空気連行剤、脱気剤、腐食阻害剤、繊維、合成有機ポリマー、膨張剤、顔料、強度増強剤、防水添加剤、アルカリ-骨材反応阻害剤、クロム酸塩低減剤及び/又は抗菌剤であることが可能である。
【0067】
実施形態によれば、上記のPCEタイプコポリマーとは異なる合成有機ポリマーが、本発明の鉱物バインダ組成物中に含有されている。合成有機ポリマーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、ビニルエステル、塩化ビニルからなる群から選択されるモノマーのラジカル重合により製造可能である。合成有機ポリマーは、2種以上、好ましくは2種の異なるモノマーから合成されたコポリマーであることが好ましい。コポリマーの配列は、交互、ブロック又はランダムであることが可能である。好ましい合成有機ポリマーは、酢酸ビニルとエチレン、酢酸ビニルとエチレンとメチルメタクリレート、酢酸ビニルとエチレンとビニルエステル、酢酸ビニルとエチレンとアクリル酸エステル、塩化ビニルとエチレンとラウリン酸ビニル、酢酸ビニルとバーサチック酸ビニル、アクリル酸エステルとスチレン、アクリル酸エステルとスチレンとブタジエン、アクリル酸エステルとアクリロニトリル、スチレンとブタジエン、アクリル酸とスチレン、メタクリル酸とスチレン、スチレンとアクリル酸エステル、スチレンとメタクリル酸エステルのコポリマーである。
【0068】
前記合成有機ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、広い範囲内において様々であることが可能である。好適な合成有機ポリマーのTgは、例えば-50℃~+60℃、好ましくは-45℃~+50℃、より好ましくは-25℃~+35℃であることが可能である。
【0069】
本発明の組成物において、2種以上の前記合成有機ポリマーの混合物を用いることが可能であると共に、一定の事例においては好ましい。
【0070】
実施形態によれば、合成有機ポリマーは、例えば再分散可能なポリマー粉末などの固体形態で用いられる。このような再分散可能な粉末は、例えば欧州特許出願第1042391号明細書に記載されているとおり、例えばポリマー分散体の噴霧乾燥によって生産可能である。好適な再分散可能な粉末は、例えばWacker Chemie AGから、商品名Vinnapasで入手可能である。合成有機ポリマーの再分散可能な粉末の使用が本発明においては好ましい。
【0071】
本発明の好ましい鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルはそれ故、各々鉱物バインダ組成物の総重量に基づいて、
(a)10~50重量%の少なくとも1種の鉱物バインダ、
(b)0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.1~2重量%、特に0.15~0.8重量%の粉末コポリマーP、
(c)0~80重量%、好ましくは10~65重量%の骨材、
(d)0~10重量%、好ましくは0.1~6重量%の、可塑剤、高性能減水剤、レオロジー変性剤、凝結遅延剤、空気連行剤、脱気剤、腐食阻害剤、繊維、合成有機ポリマー、膨張剤、顔料、強度増強剤、防水添加剤、アルカリ-骨材反応阻害剤、クロム酸塩低減剤及び/又は抗菌剤の群から選択される他の添加剤、並びに
(e)任意選択により水
を含む。
【0072】
成分(a)~(e)の混合は、鉱物バインダ、モルタル又はコンクリートの製造において通例用いられるミキサによって、いずれかの所与の順番で可能である。本発明の鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルは、工場において予めバッチングされることが可能である。同様に、本発明の鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルは、作業現場で混合することも可能である。
【0073】
本発明に関連して、鉱物バインダ組成物は、乾燥組成物、例えばドライモルタル組成物であることが好ましい。従って、鉱物バインダ組成物は実質的に水を含んでいないことが好ましい。
【0074】
上記の粉末コポリマーPを含有する鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物は、比較粉末コポリマーを有する同一の鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物と比した場合に、高い流動性、低いスランプの損失、特に早期における高い圧縮強度を有することが見出された。
【0075】
上記の粉末コポリマーPはそれ故、鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物の流動性を高めるための方法において用いられることが可能である。
【0076】
上記の粉末コポリマーPはさらに、水と混合した後、例えば20分間超、好ましくは30分間超、より好ましくは45分間超といった既定の期間にわたって鉱物バインダ組成物の流動性を維持するための方法において用いることが可能である。
【0077】
上記の粉末コポリマーPはまた、鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物の水要求量を低減させる方法において用いることが可能である。
【0078】
最後に、上記の粉末コポリマーPは、特に水と混合してから1日及び/又は3日後における、鉱物バインダ又は鉱物バインダ組成物の圧縮強度を高める方法において用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、以下の実施例に従って調製したポリマー粉末P1及びP2の粒径分布を示す。
【0080】
以下の実施例は本発明を例示するものである。これらの実施例は、いかように本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0081】
ポリマー溶液SP1の調製
330gの水、330gのメタリルポリエチレングリコール(OH-末端、Mw=4000g/mol)、42gのアクリル酸、NaOHの16%水溶液(102g)、Fe(II)SO4・7H2Oの10%水溶液(1.5g)及び2gの次亜リン酸ナトリウムを、撹拌機を備える反応容器に加えた。
【0082】
次いで、10gの30%過酸化水素水溶液及び4gの5%ロンガリット水溶液を、20℃~35℃の温度で、70分間にわたって、撹拌しながら滴下した。
【0083】
滴下の開始から120分後に、清透で粘性のポリマー溶液が得られた。
【0084】
ポリマー溶液SP2の調製
ポリマーSP2を、366gのメタリルポリエチレングリコール(OH-末端、Mw=2400g/mol)を用いたが、上記のポリマーSP1と同様に調製した。
【0085】
ポリマー溶液SP3の調製
部分中和ポリアクリル酸(Mw=4000g/mol)の50重量%水溶液(145g)及び7.5gの50重量%硫酸を、温度計、撹拌機、ガスインレットチューブ及び蒸留アセンブリを備えるガラス反応器中に入れた。この溶液を70℃に加熱し、52gのメトキシ-末端ポリエチレングリコール(Mw=1000g/mol)と300gのメトキシ-末端ポリエチレングリコール(Mw=3000g/mol)との混合物を添加した。この混合物を、一定の窒素流下に加熱し、165℃で維持した。この温度で6時間撹拌した後、混合物を室温に冷却した。得られた混合物のpHは約3であった。
【0086】
ポリマー溶液SP4の調製
ポリマーSP4を、2種の異なるメトキシ-末端ポリエチレングリコールの混合物の代わりに347.5gのメトキシ-末端ポリエチレングリコール(Mw=5000g/mol)を用いたが、ポリマーSP3と同様に調製した。得られた混合物のpHは約3であった。
【0087】
ポリマー粉末P1の調製
3gのCa(OH)2、68gの水、及び3gのヒュームドシリカ(Evonik製のAerosil(登録商標)150)を、200gのSP1に添加した。得られた懸濁液は約13のpHを有していた。得られた懸濁液を、実験室の噴霧乾燥器(Mini Spray Dryer B-290(Buechi AG,Switzerland))で乾燥させた。噴霧乾燥器のヘッドにあるノズルで懸濁液を導入することにより噴霧乾燥を実施した。噴霧した材料と同一の方向に流れる圧縮空気を、600L/hの流速及び0.5MPaの圧力で用いた。インレット温度は120℃であった。投与速度は、アウトレット温度が65~70℃に達するよう調節した。仕込んだ粉末を、サイクロンにより空気流から分離した。
【0088】
ポリマー粉末P2の調製
ポリマー粉末P2を、Ca(OH)2の量を60mgに調節したが、上記のポリマー粉末P1と同様に調製した。得られた懸濁液のpHは約9であった。
【0089】
ポリマー粉末P3の調製
ポリマー粉末P3を、Ca(OH)2を添加することなく、上記のポリマー粉末P1と同様に調製した。得られた懸濁液のpHは約5であった。
【0090】
ポリマー粉末P4の調製
ポリマー粉末P4を、SP1の代わりにSP2を用いたが、上記のポリマー粉末P1と同様に調製した。
【0091】
ポリマー粉末P5の調製
ポリマー溶液SP3を、直径約100mm及び高さ7mmであり、周囲温度及び圧力で乾燥させた蓋のないアルミニウム皿に入れた。得られた固体材料を標準的な乳鉢及び乳棒で粉砕して微粉末を形成した。
【0092】
ポリマー粉末P6の調製
ポリマー粉末P6を、ポリマー溶液SP3の代わりにSP4を用いて、上記のポリマー粉末P5と同様に調製した。
【0093】
以下の表1は、得られた粉末の概要を示す。ポリマー粉末P1及びP4は本発明によるものである。
【0094】
【0095】
上記の表1から、pHが9以上である場合にのみポリマー溶液SP1からの噴霧乾燥が可能であることが分かる。ポリマー溶液のpHが5しかない場合、粉末を得ることはできなかった。さらに、ポリマー溶液のpHが13に高まると、非固結特性を有するより微細な粉末Pを得ることが可能であることが分かる。
【0096】
セメント状組成物(実施例M1~M6)の性能試験
セメント状混合物の流動度の尺度として、スランプフローテストを、実施例M1~M3についてはJC/T985-2005に準拠し、及び、実施例M4~M6についてはGB/T50448-2008に準拠して行った。スランプフローテストは、混合水と混合した後、規定の時点において個別のサンプルで行った。
【0097】
規格GB/T17671-1999に準拠して、4×4×16cmの角柱を用い、以下の表2~4に示されている23℃/50%相対湿度での硬化時間後に圧縮強度を測定した。
【0098】
線収縮を、JC/T985-2005に準拠して、23℃/50%相対湿度での硬化から28日後に測定した。
【0099】
実施例M1~M3に係る調製について、200gのセメント(CEM I 52.5)、340gのカルシウムアルミネートセメント、160gのα-半水和物、400gの石灰岩、860gの石英砂(0.1~0.3mm粒子)、並びに、4gの粉末P1、P4及びP6のそれぞれを、Hobartミキサ中において、1分間、23℃で乾燥混合して、ドライモルタルを得た。
【0100】
10秒間以内に混合水を乾燥混合物に添加して、0.22の水/バインダ比を得た。混合は170秒間継続した。
【0101】
以下の表2は結果の概要を示す。
【0102】
【0103】
これらの結果は、本発明に従う粉末P1及びP4は、良好な液化特性を有すると共に、経時的なスランプフローの損失が特に低いことを示す。本発明に係る粉末はまた、1日後における高い圧縮強度、並びに、低い収縮性をもたらす。
【0104】
実施例M4~M6の調製について、750gのセメント(CEM I52.5)、120gの高炉スラグ、40gのシリカフューム、340gの微細な石英砂、120gの微細な川砂(粒径0.3~0.6mm)、560gの粗い川砂(粒径0.6~2.3mm)、並びに、2.8gの粉末P1、P4及びP5のそれぞれを、Hobartミキサ中において、1分間、23℃で乾燥混合して、ドライモルタルを得た。
【0105】
10秒間以内に混合水を乾燥混合物に添加して、0.15の水/バインダ比を得た。混合は170秒間継続した。
【0106】
以下の表3は結果の概要を示す。
【0107】
【0108】
これらの結果は、本発明に係る粉末P1及びP4は、良好な液化特性を有すると共に、経時的なスランプフローの損失が特に低いことを示す。本発明に係る粉末はまた、3日後における高い圧縮強度をもたらす。
本開示は以下も包含する。
[1]
粉末コポリマーPであって、以下を含むPCEタイプコポリマーを、それぞれ前記粉末の総重量に基づいて、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む、粉末コポリマーP:
(a)aモル部の式Iの構造単位S1
【化1】
(b)bモル部の式IIの構造単位S2
【化2】
(c)cモル部の式IIIの構造単位S3
【化3】
(d)dモル部の式IVの構造単位S4
【化4】
式中、
各Mは、相互に独立して、H
+
、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し、
各R
u
は、相互に独立して、水素又はメチル基を表し、
各R
v
は、相互に独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
各R
1
及び各R
2
は、相互に独立して、C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロアルキル、C
1
~C
20
-アルキルアリール、又は-[AO]
n
-R
4
を表し、
ここで、A=C
2
~C
4
-アルキレンであり、R
4
は、H、C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロヘキシル、又はC
1
~C
20
-アルキルアリールを表し、かつ
n=2~350であり、
各R
3
は、他のものとは独立して、NH
2
、-NR
5
R
6
、-OR
7
NR
8
R
9
を表し、
ここで、R
5
及びR
6
は、相互に独立して、
C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロアルキル、
C
1
~C
20
-アルキルアリール若しくはC
1
~C
20
-アリール、
又は、ヒドロキシアルキル-若しくはアセトキシエチル-(CH
3
-CO-O-CH
2
-CH
2
-)、又はヒドロキシイソプロピル-(HO-CH(CH
3
)-CH
2
-)、又はアセトキシイソプロピル基(CH
3
-CO-O-CH(CH
3
)-CH
2
-)であり;
又は、R
5
及びR
6
は一緒になって、窒素がその一部である環を形成して、モルホリン若しくはイミダゾリン環を形成し、
R
7
はC
2
~C
4
-アルキレン基であり、
各R
8
及びR
9
は相互に独立して、C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロアルキル、C
1
~C
20
-アルキルアリール、C
1
~C
20
-アリール、又はヒドロキシアルキル基を表し、かつ
a、b、c及びdは、前記構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部を示し、
ここで、
a/b/c/d=(0.1~0.9)/(0.1~0.9)/(0~0.8)/(0~0.8)であり、
ただし、a+b+c+d=1であり、かつ
前記粉末コポリマーPが、
<250μm、好ましくは<225μm、特に<210μmのD90値、
<60μm、好ましくは<50μm、特に<40μmのD10値、及び
70~130μm、好ましくは75~120μm、特に80~100μmのD50値
の粒径分布を有すること
を特徴とする。
[2]
各R
1
及びR
2
は、相互に独立して、-[AO]
n
-R
4
を表し、ここで、各R
4
は、相互に独立して、H又はCH
3
から選択され、かつnは、n=8~250、より好ましくはn=11~200、さらにより好ましくはn=20~150、最も好ましくはn=30~125、特にn=50~115である、態様1に記載の粉末コポリマーP。
[3]
a/bの比が、0.5/1~15/1、好ましくは1/1~11/1、より好ましくは1.5/1~9/1、最も好ましくは3/1~8/1、特に6/1~7/1である、態様1に記載の粉末コポリマーP。
[4]
それぞれ前記粉末の総乾燥重量に基づいて、<5重量%、好ましくは<2重量%、より好ましくは<1重量%の、固結防止剤及び抗酸化剤の群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことを特徴とする、態様1に記載の粉末コポリマーP。
[5]
40重量%の濃度で水中に再分散したときに、少なくとも8、好ましくは少なくとも10、特に少なくとも11のpHを有することを特徴とする、態様1に記載の粉末コポリマーP。
[6]
以下の工程を含む、粉末コポリマーPの製造方法:
(i)コポリマー水溶液であって、以下を含むPCEタイプコポリマーを、それぞれ前記水溶液の総重量に基づいて、30~99重量%、好ましくは40~95重量%、より好ましくは50~90重量%含むコポリマー水溶液を調製すること:
(a)aモル部の式Iの構造単位S1
【化5】
(b)bモル部の式IIの構造単位S2
【化6】
(c)cモル部の式IIIの構造単位S3
【化7】
(d)dモル部の式IVの構造単位S4
【化8】
式中、
各Mは、相互に独立して、H
+
、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し、
各R
u
は、相互に独立して、水素又はメチル基を表し、
各R
v
は、相互に独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
各R
1
及び各R
2
は、相互に独立して、C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロアルキル、C
1
~C
20
-アルキルアリール、又は-[AO]
n
-R
4
を表し、
ここで、A=C
2
~C
4
-アルキレンであり、R
4
は、H、C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロヘキシル、又はC
1
~C
20
-アルキルアリールを表し、かつ
n=2~350であり、
各R
3
は、他のものとは独立して、NH
2
、-NR
5
R
6
、-OR
7
NR
8
R
9
を表し、
ここで、R
5
及びR
6
は、相互に独立して、
C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロアルキル、
C
1
~C
20
-アルキルアリール若しくはC
1
~C
20
-アリール、
又は、ヒドロキシアルキル-若しくはアセトキシエチル-(CH
3
-CO-O-CH
2
-CH
2
-)、又はヒドロキシイソプロピル-(HO-CH(CH
3
)-CH
2
-)、又はアセトキシイソプロピル基(CH
3
-CO-O-CH(CH
3
)-CH
2
-)であり;
又は、R
5
及びR
6
は一緒になって、窒素がその一部である環を形成して、モルホリン若しくはイミダゾリン環を形成し、
R
7
はC
2
~C
4
-アルキレン基であり、
各R
8
及びR
9
は相互に独立して、C
1
~C
20
-アルキル、C
1
~C
20
-シクロアルキル、C
1
~C
20
-アルキルアリール、C
1
~C
20
-アリール、又はヒドロキシアルキル基を表し、かつ
a、b、c及びdは、構造単位S1、S2、S3及びS4のモル部を示し、
ここで、
a/b/c/d=(0.1~0.9)/(0.1~0.9)/(0~0.8)/(0~0.8)であり、
ただし、a+b+c+d=1である;
(ii)塩基を添加して、前記溶液のpHを、少なくとも7、好ましくは少なくとも10に調節すること;
(iii)それぞれ前記ポリマー溶液の重量に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.05~2重量%、より好ましくは0.1~1重量%の、固結防止剤及び/又は抗酸化剤から選択される少なくとも1種の添加剤を添加すること;
(iv)前記水溶液を噴霧乾燥して粉末を得ること;及び
(v)任意選択により、ふるいにかけること。
[7]
前記粉末コポリマーPは、
<250μm、好ましくは<225μm、特に<210μmのD90値、
<60μm、好ましくは<50μm、特に<40μmのD10値、及び
70~130μm、好ましくは75~120μm、特に80~100μmのD50値
の粒径分布を有すること
を特徴とする、態様6に記載の方法。
[8]
前記粉末コポリマーPにおける各R
1
及びR
2
は、相互に独立して、-[AO]
n
-R
4
を表し、ここで、各R
4
は、相互に独立して、H又はCH
3
から選択され、かつnは50~115である、態様6に記載の方法。
[9]
前記粉末コポリマーPにおけるa/bの比が、0.5/1~15/1、好ましくは1/1~11/1、より好ましくは1.5/1~9/1、最も好ましくは3/1~8/1、特に6/1~7/1である、態様6に記載の方法。
[10]
工程(i)における前記コポリマーが、ラジカル重合プロセスによって調製されることを特徴とする、態様6に記載の方法。
[11]
工程(ii)で添加する前記塩基は、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)
2
、Ca(OH)
2
、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、態様6に記載の方法。
[12]
工程(ii)で添加する前記塩基がCa(OH)
2
であり、かつ前記pHが10~14であることを特徴とする、態様11に記載の方法。
[13]
工程(iv)を、150℃以下、好ましくは120℃以下の噴霧乾燥入口温度で行うことを特徴とする、態様6に記載の方法。
[14]
鉱物バインダ組成物、好ましくはセメント状バインダ組成物における、態様6~13のいずれかに記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
[15]
前記鉱物バインダ組成物がドライモルタルであることを特徴とする、態様14に記載の使用。
[16]
鉱物バインダ組成物の水要求量を低減するための、態様6~13のいずれかに記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
[17]
鉱物バインダ組成物の流動性を高めるための、態様6~13のいずれかに記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
[18]
鉱物バインダ組成物のスランプライフを改善するための、態様6~13のいずれかに記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
[19]
鉱物バインダ組成物の圧縮強度を高めるための、態様6~13のいずれかに記載の方法によって調製された粉末コポリマーPの使用。
[20]
鉱物バインダ組成物、特にドライモルタルであって、それぞれ前記鉱物バインダ組成物の総重量に基づいて、以下を含有する鉱物バインダ組成物:
(a)10~50重量%の少なくとも1種の鉱物バインダ、
(b)0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.1~2重量%、特に0.15~0.8重量%の、態様6~13のいずれかに記載の方法によって調製された粉末コポリマーP、
(c)0~80重量%、好ましくは10~65重量%の骨材
(d)0~10重量%、好ましくは0.1~6重量%の、可塑剤、高性能減水剤、レオロジー変性剤、凝結遅延剤、空気連行剤、脱気剤、腐食阻害剤、繊維、合成有機ポリマー、膨張剤、顔料、強度増強剤、防水添加剤、アルカリ-骨材反応阻害剤、クロム酸塩低減剤、及び/又は抗菌剤の群から選択される他の添加剤。
[21]
追加で水を含有する、態様20に記載の鉱物バインダ組成物。
[22]
態様20又は21に記載の鉱物バインダ組成物を硬化することにより得られる成型体。