(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】アンテナ付き半導体パッケージ及びアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 23/14 20060101AFI20250210BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250210BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20250210BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20250210BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20250210BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
H01L23/14 R
H05K3/46 Q
H05K3/46 T
C08L53/02
C08K5/14
C08L27/18
C08L63/00 Z
(21)【出願番号】P 2022533847
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023019
(87)【国際公開番号】W WO2022004409
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020115697
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】高杉 寛史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 遼
(72)【発明者】
【氏名】小松 史和
(72)【発明者】
【氏名】寺木 慎
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14
H05K 3/46
C08L 53/02
C08K 5/14
C08L 27/18
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置部にアンテナ部
とRFチップが一体的に形成されたアンテナ付き半導体パッケージであって、
前記半導体装置部と前記アンテナ部とを接続するための絶縁層、及び前記アンテナ部内部の絶縁層のうちの少なくとも一方が、
(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)
加熱によりラジカルを発生させる化合物とを含む樹脂組成物の硬化物であ
り、
前記(A)成分が、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロックコポリマーを含むスチレン系エラストマを含み、
前記(A)成分が、樹脂組成物中に固形分量で25.0~99.8質量%含有され、
前記(B)成分が、ラジカル発生剤及び又はエチレン性二重結合を有する化合物を含む、アンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項2】
前記ラジカル発生剤が、有機過酸化物を含む、請求項1に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項3】
前記エチレン性二重結合を有する化合物が、末端にビニル基又はスチレン基を有する変性ポリフェニレンエーテルを含む、請求項1に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項4】
前記硬化物中のエポキシ樹脂及び硬化剤の合計質量が、前記(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ及び前記(B)ラジカルを発生させる化合物の合計100質量部に対して、5質量部以下である、請求項1
~3のいずれか一項に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項5】
前記硬化物がPTFEフィラーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項6】
(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)
加熱によりラジカルを発生させる化合物とを含
み、
前記(A)成分が、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロックコポリマーを含むスチレン系エラストマを含み、
前記(A)成分が、樹脂組成物中に固形分量で25.0~99.8質量%含有され、
前記(B)成分が、ラジカル発生剤及び又はエチレン性二重結合を有する化合物を含む、
半導体装置部にアンテナ部とRFチップが一体的に形成されたアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物。
【請求項7】
前記ラジカル発生剤が、有機過酸化物を含む、請求項6に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項8】
前記エチレン性二重結合を有する化合物が、末端にビニル基又はスチレン基を有する変性ポリフェニレンエーテルを含む、請求項7に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【請求項9】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂及び硬化剤の合計質量が、前記(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ及び前記(B)ラジカルを発生させる化合物の合計100質量部に対して、5質量部以下である、請求項
6~8のいずれか一項に記載のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物。
【請求項10】
PTFEフィラーを含む、請求項
6~8のいずれか一項に記載のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項
6~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含むアンテナ付き半導体パッケージ用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ付き半導体パッケージ及びアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物に関する。更に詳しくは、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスの少ないアンテナ付き半導体パッケージ及びアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の通信技術として5Gの標準化が進み、高周波対応の製品を実現する市場要求は高まりつつある。多素子アンテナ技術、高速伝送等の技術開発が加速し、また、高周波帯の利用により通信容量も増え、情報処理能力の向上と同時に高周波ノイズや熱の発生量も増加し、その対策が大きな課題となっている。
【0003】
5Gミリ波用アンテナでは、パッケージ技術に関してアンテナとICの配線距離を短くして導体損失を低くする(別言すれば、伝送ロスの少ない)構造が必要とされている。このため、近年、アンテナ部が半導体装置部に一体に形成されたアンテナ付き半導体パッケージ(例えば、アンテナ・イン・パッケージ(AiP)やアンテナ・オン・パッケージ(AoP))が開発されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】須藤 薫,他2名,“5Gを実現するミリ波用アンテナ付パッケージング技術”,[online],株式会社 村田製作所,[令和2年4月2日検索],インターネット<URL:https://apmc-mwe.org/mwe2019/pdf/WS_01/TH5B-2_1.pdf>
【文献】村尾 麻悠子,“フジクラが28GHz帯RF IC開発へ、アンテナと一体型”,[online],EE Times Japan,[令和2年4月2日検索],インターネット<URL:https://eetimes.jp/ee/articles/1908/09/news033.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナ付き半導体パッケージの製造には、半導体装置部内のはんだ付けを行うための、はんだリフロー工程が含まれる。このため、アンテナ付き半導体パッケージには、はんだ耐熱性が求められる。もちろん、半導体装置部とアンテナ部とを接続するための絶縁層や、アンテナ部内部の絶縁層にもはんだ耐熱性が求められる。上述した絶縁層には、さらに高周波特性も求められる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスの少ないアンテナ付き半導体パッケージ、及びこのようなアンテナ付き半導体パッケージに用いられるアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すアンテナ付き半導体パッケージ及びアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物が提供される。
【0008】
[1] 半導体装置部にアンテナ部とRFチップが一体的に形成されたアンテナ付き半導体パッケージであって、
前記半導体装置部と前記アンテナ部とを接続するための絶縁層、及び前記アンテナ部内部の絶縁層のうちの少なくとも一方が、
(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)加熱によりラジカルを発生させる化合物とを含む樹脂組成物の硬化物であり、
前記(A)成分が、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロックコポリマーを含むスチレン系エラストマを含み、
前記(A)成分が、樹脂組成物中に固形分量で25.0~99.8質量%含有され、
前記(B)成分が、ラジカル発生剤及び又はエチレン性二重結合を有する化合物を含む、アンテナ付き半導体パッケージ。
【0009】
[2] 前記ラジカル発生剤が、有機過酸化物を含む、前記[1]に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
[3] 前記エチレン性二重結合を有する化合物が、末端にビニル基又はスチレン基を有する変性ポリフェニレンエーテルを含む、前記[1]に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
[4] 前記硬化物中のエポキシ樹脂及び硬化剤の合計質量が、前記(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ及び前記(B)ラジカルを発生させる化合物の合計100質量部に対して、5質量部以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【0011】
[5] 前記硬化物がPTFEフィラーを含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【0012】
[6] (A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)加熱によりラジカルを発生させる化合物とを含み、
前記(A)成分が、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロックコポリマーを含むスチレン系エラストマを含み、
前記(A)成分が、樹脂組成物中に固形分量で25.0~99.8質量%含有され、
前記(B)成分が、ラジカル発生剤及び又はエチレン性二重結合を有する化合物を含む、半導体装置部にアンテナ部とRFチップが一体的に形成されたアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物。
[7] 前記ラジカル発生剤が、有機過酸化物を含む、前記[6]に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
[8] 前記エチレン性二重結合を有する化合物が、末端にビニル基又はスチレン基を有する変性ポリフェニレンエーテルを含む、前記[6]に記載のアンテナ付き半導体パッケージ。
【0013】
[9] 樹脂組成物中のエポキシ樹脂及び硬化剤の合計質量が、前記(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ及び前記(B)ラジカルを発生させる化合物の合計100質量部に対して、5質量部以下である、前記[6]~[8]のいずれかに記載のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物。
【0015】
[10] PTFEフィラーを含む、前記[6]~[8]のいずれかに記載のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物。
【0016】
[11] 前記[6]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むアンテナ付き半導体パッケージ用フィルム。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアンテナ付き半導体パッケージは、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスが少ないという効果を奏するものである。また、本発明のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスの少ないアンテナ付き半導体パッケージを実現することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一の実施形態のアンテナ付き半導体パッケージを示す模式的部分断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態のアンテナ付き半導体パッケージを示す模式的部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
(1)アンテナ付き半導体パッケージ:
本発明のアンテナ付き半導体パッケージの一の実施形態は、
図1に示すようなアンテナ付き半導体パッケージ100である。
図1は、本発明の一の実施形態のアンテナ付き半導体パッケージを示す模式的部分断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100は、半導体装置部10にアンテナ部5が一体的に形成されたものであり、特に、5Gミリ波の送信・受信の通信を行うRF(無線周波)チップ8が実装される高周波基板としてのアンテナ付き半導体パッケージ100である。アンテナ部5は、半導体装置部10において、ミリ波の通信を行うRFチップ8と各種配線パターンを有する配線層4により接続されている。
【0022】
図1に示すアンテナ付き半導体パッケージ100における半導体装置部10は、コア基板2と、半導体装置部10の一方の表面側に配設されたアンテナ部5と、半導体装置部10とアンテナ部5とを接続するための絶縁層1(第一絶縁層1A)と、コア基板2内に配置された複層構造の配線層4と、配線層4における配線ビアを被覆するように構成された絶縁層1(第二絶縁層1B、第三絶縁層1C、第四絶縁層1D、第五絶縁層1E)とを含む。なお、第一絶縁層1Aは、半導体装置部10とアンテナ部5との間を介在するように設けられているだけでなく、アンテナ部5の内部にまで延設されるようにして設けられていてもよい。
【0023】
アンテナ付き半導体パッケージ100は、半導体装置部10の他方の表面側において、配線層4の一部位が、ミリ波の送信・受信の通信を行うRFチップ8と連結されるとともに、配線層4の他の部位が、電気連結金属7と連結されている。
図1に示す例では、配線層4とRFチップ8は、半球状の接続パッド9を介して電気的に接続されている。電気連結金属7は、当該電気連結金属7を介して、その機能に合わせて、アンテナ付き半導体パッケージ100と外部とを物理的及び/又は電気的に連結させるための端子部である。
【0024】
絶縁層1は、送信時においてRFチップ8から出力された電流やミリ波信号が減衰することを抑制しつつ、アンテナ部5に伝えて空間に効率よく放射するため、アンテナ部5とRFチップ8をつなぐ接続部の損失(伝送ロス)を小さくすることが求められる。受信時も同様で、アンテナ部5で受信されたミリ波信号の反射波が減衰することを抑制しつつ、受信部としてのRFチップ8に伝えるには、アンテナ部5とRFチップ8をつなぐ接続部の損失(伝送ロス)を小さくすることが求められる。
【0025】
アンテナ部5は、平面アンテナとしてのパッチアンテナとして半導体装置部10の一方の表面側に配設されている。
【0026】
本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100は、半導体装置部10とアンテナ部5とを接続するための絶縁層1(例えば、第一絶縁層1A)、又は、アンテナ部5内部の絶縁層1の構成に関して特に主要な特徴を有している。以下、本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100における絶縁層1の構成について更に詳細に説明する。なお、以下、半導体装置部10とアンテナ部5とを接続するための絶縁層1、及びアンテナ部5内部の絶縁層1を総称して、単に「絶縁層1」ということがある。
【0027】
本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100において、絶縁層1は、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)ラジカルを発生させる化合物とを含む樹脂組成物の硬化物である。このように構成された絶縁層1を備えたアンテナ付き半導体パッケージ100は、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスを少なくすることができる。5Gミリ波用のアンテナ部5を備えたアンテナ付き半導体パッケージ100では、例えば、アンテナ部5を接続するための絶縁層1について、288℃のはんだ試験が行われることがあり、従来では必要なかった耐熱温度での耐はんだ耐熱性が求められる。従来の半導体パッケージにおける絶縁層は、公知の高周波フィルムが使用されているが、このような高周波フィルムは、上述した耐はんだ耐熱性を満たしていないものがあり、5Gミリ波用のアンテナ部5を備えたアンテナ付き半導体パッケージ100に対しての使用できないものが多く含まれている。本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100において、絶縁層1を構成する硬化物は、SPDR(スプリットポスト誘電体共振器)法にて周波数10GHzで測定した誘電正接(tanδ)が0.0020以下であり、はんだ耐熱が290℃2分以上であることが好ましい。
【0028】
絶縁層1は、上述した(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)ラジカルを発生させる化合物とを含む樹脂組成物を、加熱硬化することによって得ることができる。
【0029】
(A)二重結合を有するスチレン系エラストマとしては、例えば、スチレン若しくはその類似体のブロックを少なくとも一つの末端ブロックとして含み、共役ジエンのエラストマーブロックを少なくとも一つの中間ブロックとして含むブロック共重合体を挙げることができる。例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン系エラストマ(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン系エラストマ(SBBS)等を挙げることができる。(A)二重結合を有するスチレン系エラストマを含む樹脂組成物の硬化物は、はんだ耐熱性に優れたものとなる。特に、高周波特性の観点から、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマとして、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロックコポリマーを含むスチレン系エラストマを好適例として挙げることができる。(A)成分は、アミンなどの官能基が付与された反応性のエラストマであってもよい。官能基が付与された反応性のエラストマを使用することで、接着強度(ピール強度)をより向上させることができる。(A)成分の重量平均分子量は、20,000~200,000であるものが好ましく、30,000~150,000であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いた値とする。
【0030】
(A)二重結合を有するスチレン系エラストマの具体例として、JSR社製の商品名「TR2827」,「TR2000」,「TR2003」,「TR2250」、旭化成ケミカルズ社製の商品名「P1083」,「P1500」,「P5051」,「MP10」を挙げることができる。
【0031】
(B)ラジカルを発生させる化合物としては、分解性化合物と、非分解性化合物とを挙げることができる。分解性化合物としては、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル発生剤を挙げることができる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類;2,2-ジ(4,4-ジ-(ジ-tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類;イソプロピルパージカーボネート、ジ-sec-ブチルパージカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパージカーボネート、ジ-1-メチルヘプチルパージカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパージカーボネート、ジシクロヘキシルパージカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert-ブチルパーベンゾエート、tert-ブチルパーアセテート、tert-ブチルパー-2-エチルへキサノエート、tert-ブチルパーイソブチレート、tert-ブチルパーピバレート、tert-ブチルジパーアジペート、クミルパーネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイド類;クメンヒドロキシパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類等を使用することができる。使用される有機過酸化物に特に制限はないが、絶縁層1を、溶剤を含む樹脂組成物やフィルムから形成する場合には、60~80℃程度の乾燥工程が必要となることが多いため、10時間半減期温度が100℃~140℃のものを用いることが好ましい。さらに、10時間半減期温度は110~130℃のものがより好ましい。具体的には、ジクミルパーオキサイドが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾエステル類を挙げることができる。また、非分解性化合物としては、例えば、エチレン性二重結合を有する化合物を挙げることができる。エチレン性二重結合を有する化合物として、例えば、末端にビニル基又はスチレン基を有する変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、マレイミド化合物等を挙げることができる。末端にビニル基又はスチレン基を有する変性ポリフェニレンエーテル(PPE)の数平均分子量(Mn)は、GPC法によるポリスチレン換算で1000~5000の範囲にあることが好ましく、1000~3000の範囲にあることがより好ましく、1000~2500の範囲にあることがさらに好ましい。マレイミド化合物としては、数平均分子量が1000~8000のダイマー酸変性されたビスマレイミドであることが好ましい。
【0032】
(B)ラジカルを発生させる化合物の具体例として、分解性化合物としては、日油化学社製の商品名「パークミルD」、富士フィルム和光純薬社製の商品名「V-601」を挙げることができる。非分解性化合物としては、三菱ガス化学社製の末端変性PPEである、商品名「OPE-2St 1200」,「OPE-2St 2200」を挙げることができる。
【0033】
絶縁層1を構成する硬化物において、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ、及び(B)ラジカルを発生させる化合物の各含有量については特に制限はない。(A)二重結合を有するスチレン系エラストマは、例えば、樹脂組成物中に、固形分量で25.0~99.8質量%含有されていることが好ましく、30.0~85.0質量%含有されていることがより好ましく、35.0~85.0質量%含有されていることが更に好ましい。また、(B)ラジカルを発生させる化合物は、樹脂組成物中に、固形分量で0.1~70.0質量%含有されていることが好ましい。(B)が分解性化合物である場合、(B)は樹脂組成物中に、固形分量で0.10~5質量%含有されていることが好ましく、0.10~2質量%含有されていることがより好ましく、0.10~1質量%含有されていることが特に好ましい。(B)が非分解性化合物である場合、(B)は樹脂組成物中に、固形分量で4~70質量%含有されていることが好ましく、5~30質量%含有されていることがより好ましく、6~15質量%含有されていることが特に好ましい。このように構成することによって、接着強度(ピール強度)が維持されつつ、アンテナ付き半導体パッケージ100のはんだ耐熱性をより向上させ、且つ、伝送ロスを有効に少なくすることができる。
【0034】
絶縁層1を構成する硬化物は、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂や各種硬化剤等の熱硬化性樹脂の硬化物、シリカフィラー等の無機フィラー、PTFEフィラー等の有機フィラー、着色剤や分散剤等の各種添加剤などを挙げることができる。絶縁層1を構成する硬化物は、PTFEフィラーを更に含むことが好ましい。PTFEフィラーを含むことにより、アンテナ付き半導体パッケージ100の高周波特性を更に向上させることができる。接着強度(ピール強度)を維持する観点から、無機フィラーや有機フィラーは、絶縁層1を構成する硬化物において、50質量%以下であることが好ましい。
【0035】
絶縁層1を構成する硬化物は、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ以外に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化物を含んでいてもよい。ただし、硬化物中のエポキシ樹脂成分及び硬化剤成分の合計質量は、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ及び(B)ラジカルを発生させる化合物の合計100質量部に対して、10質量部未満であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。硬化物中のエポキシ樹脂成分及び硬化剤成分の含有量が増加すると、アンテナ付き半導体パッケージ100のはんだ耐熱や誘電正接が悪化することがある。ある態様においては、絶縁層1を構成する硬化物は、エポキシ樹脂の硬化物を含まない。
【0036】
これまでに説明したような硬化物からなる絶縁層1を備えたアンテナ付き半導体パッケージ100は、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスが少ないため、5Gミリ波の送信・受信の通信を行うRF(無線周波)チップ8が実装された半導体パッケージとして好適に利用される。
【0037】
本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100において、半導体装置部10とアンテナ部5とを接続するための第一絶縁層1A、及び、配線層4における配線ビアを被覆するように構成された第二絶縁層1B、第三絶縁層1C、第四絶縁層1D、及び第五絶縁層1Eのそれぞれが、これまでに説明した硬化物からなる絶縁層1と同様に構成されていることが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ100における絶縁層1の作製方法については特に制限はないが、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0039】
まず、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと(B)ラジカルを発生させる化合物とを含むアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物を調製する。以下、「アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物」を、単に「樹脂組成物」ということがある。取り扱いの観点から、樹脂組成物は、フィルム形状であることが好ましい。このアンテナ付き半導体パッケージ用フィルムは、例えば、(A)と(B)とを含む樹脂組成物に有機溶剤を加えた溶液を、支持体である離型処理をほどこしたPETフィルムに塗工し、80~130℃で乾燥させることにより得ることができる。得られたアンテナ付き半導体パッケージ用フィルムを、支持体から剥離し、半導体装置部10に貼り付け、例えば、200℃で30~60分の熱処理を行うことにより、アンテナ付き半導体パッケージを作製することができる。
【0040】
アンテナ付き半導体パッケージ100における半導体装置部10における配線層4等の構成については、
図1に示すような構成に限定されることはなく、5Gミリ波用アンテナを備えた各種半導体パッケージに適用することができる。例えば、
図2は、本発明の他の実施形態のアンテナ付き半導体パッケージを示す模式的部分断面図である。
【0041】
図2に示すアンテナ付き半導体パッケージ200は、半導体装置部30にアンテナ部25,26が一体的に形成されたものである。アンテナ部25,26は、半導体装置部10において、ミリ波の通信を行うRFチップ28と各種の配線パターンを有する配線層24により接続されている。
【0042】
半導体装置部30は、コア基板22と、半導体装置部30の一方の表面側に配設されたアンテナ部25と、半導体装置部30とアンテナ部25とを接続するための絶縁層21と、を有する。コア基板22内には、5Gミリ波の送信・受信の通信を行うRFチップ28が収容されており、コア基板22内に配置された配線層24によって配線されている。半導体装置部30の両端には直線状の導線(エレメント)を左右対称に配設したダイポールアンテナとしてのアンテナ部26が儲けられている。半導体装置部30の他方の表面側は、アンテナ付き半導体パッケージ200と外部とを物理的及び/又は電気的に連結させるための電気連結金属27と連結されている。
【0043】
図2に示すようなアンテナ付き半導体パッケージ200においても、絶縁層21を、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)ラジカルを発生させる化合物とを含む樹脂組成物の硬化物とすることで、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスを少なくすることができる。絶縁層21として用いられる硬化物な、
図1に示すアンテナ付き半導体パッケージ100の絶縁層1として用いられる硬化物と同様に構成されたものを採用することができる。
【0044】
(2)アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物:
次に、本発明のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物の一の実施形態について説明する。本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、
図1に示すようなアンテナ付き半導体パッケージ100の絶縁層1を形成するための樹脂組成物である。
【0045】
本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)ラジカルを発生させる化合物とを含む。本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物を加熱硬化することによって、アンテナ付き半導体パッケージの半導体装置部とアンテナ部とを接続するための絶縁層、又は、アンテナ部内部の絶縁層を形成することができる。このような樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層は、はんだ耐熱性に優れ、且つ、伝送ロスの少ないものとなる。
【0046】
(A)二重結合を有するスチレン系エラストマとしては、上述のように、スチレン/ブタジエン/スチレン系エラストマ(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン系エラストマ(SBBS)等を挙げることができ、特に、高周波特性の観点から、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロックコポリマーを含むスチレン系エラストマを好適例として挙げることができる。(A)二重結合を有するスチレン系エラストマの含有量については特に制限はなく、好ましい量は上述の通りである。
【0047】
(B)ラジカルを発生させる化合物としては、上述のように、分解性化合物と、非分解性化合物とを挙げることができる。分解性化合物としては、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル発生剤を挙げることができ、非分解性化合物としては、例えば、エチレン性二重結合を有する化合物を挙げることができる。(B)ラジカルを発生させる化合物の含有量については特に制限はなく、好ましい量は上述の通りである。
【0048】
本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、エポキシ樹脂や各種硬化剤等の熱硬化性樹脂、シリカフィラー等の無機フィラー、PTFEフィラー等の有機フィラー、着色剤や分散剤等の各種添加剤などを挙げることができる。本実施形態のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、PTFEフィラーを更に含むことが好ましい。PTFEフィラーを含むことにより、アンテナ付き半導体パッケージ100の高周波特性を更に向上させることができる。接着強度(ピール強度)を維持する観点から、無機フィラーや有機フィラーは、アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物の50質量%以下であることが好ましい。
【0049】
アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物中のエポキシ樹脂及び硬化剤の合計質量は、(A)二重結合を有するスチレン系エラストマ及び(B)ラジカルを発生させる化合物の合計100質量部に対して、10質量部未満であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。エポキシ樹脂及び硬化剤の含有量が増加すると、アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層のはんだ耐熱や誘電正接が悪化することがある。ある態様においては、アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含まない。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0051】
〔実施例1〕
実施例1においては、以下のようにしてアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物を調製した。まず、(A)成分の(A3)スチレン系エラストマとして、二重結合を有するスチレン系エラストマ(一部水添)を99.75部、(B)成分の(B1)ラジカルを発生させる化合物として、分解性のラジカルを発生させる化合物を0.25部用意した。(A3)スチレン系エラストマは、旭化成ケミカルズ社製の商品名「P1500」を用いた。(B1)ラジカルを発生させる化合物は、日油化学社製の有機過酸化物 商品名「パークミルD」を用いた。
【0052】
(A)成分と(B)成分を計量配合した後、それらを有機溶剤とともに、回転数150rpmで回転させながら混合溶解を行って、実施例1のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物の塗工液を調製した。
【0053】
次に、この塗工液を、支持体の片面に塗布し、120℃で乾燥させることにより、支持体付きの接着フィルムを得た。支持体としては、離型処理をほどこしたPETフィルムを用いた
【0054】
得られた支持体付きの接着フィルムに、離型処理を施したPETフィルムを配置して、PETフィルム/接着フィルム/PETフィルムのフィルム積層体を得た。このフィルム積層体を、プレス温度200℃、温度保持時間60分間、プレス圧力0.98MPaの加熱加圧条件にて熱間プレスを施して、接着フィルムを熱硬化させた。
【0055】
硬化した接着フィルムの両面に配置した上述のPETフィルム除去し、実施例1のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物からなる試験体Aを作製した。このようにして得られた実施例1の試験体Aについて、以下の誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
〔誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)〕
試験体Aの硬化した接着フィルムから、一辺が50±0.5mm、他辺が70±2mmの長方形の試験片を切り出し、切り出した試験片の厚みを測定した。厚みを測定した試験片をSPDR(スプリットポスト誘電体共振器)法にて、周波数10GHzで、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)を測定した。誘電正接(tanδ)については、以下の評価基準により評価を行った。
評価「優」:誘電正接(tanδ)が0.0015以下。
評価「良」:誘電正接(tanδ)が0.0015超、0.0020以下。
評価「不可」:誘電正接(tanδ)が0.0020超。
【0057】
〔ピール強度〕
片面を粗化した銅箔を準備した。粗化面を内側にして銅箔を貼りあわせ、銅箔/接着フィルム/銅箔の積層体を得た。この積層体を、真空プレス機を用いて、200℃、60分、0.98MPaの条件で熱圧着し、硬化させた。この硬化体を10mm幅にカットし、ピール強度測定用試料(試験体B)を作製した。試験体Bを、島津製作所社製オートグラフ(型番:ASG-J-5kNJ)で引きはがし、ピール強度を測定した。なお、ピール強度の測定については、JIS C 6471に準拠して行った。測定結果について、各N=5の平均値を計算した。ピール強度については、以下の評価基準により評価を行った。
評価「優」:ピール強度が5N/cm以上。
評価「良」:ピール強度が2N/cm以上、5N/cm未満。
評価「不可」:ピール強度が2N/cm未満。
【0058】
〔はんだ耐熱試験〕
片面を粗化した銅箔を準備した。粗化面を内側にして銅箔を貼りあわせ、銅箔/接着フィルム/銅箔の積層体を得た。この積層体を、真空プレス機を用いて、200℃、60分、0.98MPaの条件で熱圧着し、硬化させた。この試験片を各辺が30mmとなるように正方形にカットし、はんだ耐熱試験用試料(試験体C)を作製した。その後、試験体Cを、290℃のはんだ槽にフロートし、膨れの有無を確認した。なお、はんだ耐熱試験は、JIS C 5012 1993に準拠して行った。はんだ耐熱試験については、以下の評価基準により評価を行った。
評価「優」:膨れが確認されるまでの時間が180秒以上。
評価「良」:膨れが確認されるまでの時間が120秒以上180秒未満。
評価「可」:膨れが確認されるまでの時間が60秒以上120秒未満。
評価「不可」:膨れが確認されるまでの時間が60秒未満。
【0059】
〔実施例2~20,22、参考例21、比較例1~3〕
アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物の配合処方を表1~表3に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物を調製した。
【0060】
次に、実施例2~20,22、参考例21、及び比較例1~3の各アンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物を含む塗工液を、支持体の片面に塗布し、120℃で乾燥させることにより、支持体付の接着フィルムをそれぞれ得、実施例1と同様の方法で試験体(硬化した接着フィルム)を作製した。作製した各試験体について、実施例1と同様の方法で、誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)、ピール強度、及びはんだ耐熱試験についての評価を行った。結果を、表1~表3に示す。
【0061】
実施例2~20,22、参考例21、及び比較例1~3においてアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物の調製に使用した原料は以下の通りである。
【0062】
(A1):二重結合を有するスチレン系エラストマ(非水添、SBS)、JSR社製、商品名「TR2003」。
(A2):二重結合を有するスチレン系エラストマ(一部水添、SBBS)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「P1083」。
(A3):二重結合を有するスチレン系エラストマ(一部水添、SBBS)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「P1500」。
(A4):二重結合を有するスチレン系エラストマ(一部水添、SBBS)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「P5051」。
(A5):二重結合を有するスチレン系エラストマ(一部水添、アミン変性SBBS)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「MP10」。
(A6):二重結合を有しないスチレン系エラストマ(水添)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「H1052」。
(B1):ラジカルを発生させる化合物(分解性)、日油化学社製、商品名「パークミルD」。
(B2):ラジカルを発生させる化合物(非分解性)、三菱ガス化学社製、商品名「OPE-2St 1200」。
(B3):ラジカルを発生させる化合物(非分解性)、三菱ガス化学社製、商品名「OPE-2St 2200」。
(C1):硬化剤、アデカ社製イミダゾール、商品名「EH2021」。
(C2):有機フィラー、ダイキン工業社製PTFE、「ルブロンL-5F」。
(C3):無機フィラー、デンカ社製シリカ、商品名「FB3SDX」。
(E):エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「828EL」。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
表1~表3に示すように、(A)成分として二重結合を有するスチレン系エラストマと、(B)成分としてラジカルを発生させる化合物とを含む樹脂組成物の硬化物は、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)について良好な値を示すものであった。また、このような硬化物は、ピール強度及びはんだ耐熱試験についても良好な結果となった。
【0067】
一方で、比較例1の樹脂組成物は、(B)成分としてラジカルを発生させる化合物を含んでいないため、ピール強度及びはんだ耐熱試験の評価結果が非常に劣るものであった。比較例2の樹脂組成物は、一定量の有機フィラー((C2)PTFE)を含んでいるものの、(B)成分としてラジカルを発生させる化合物を含んでいないため、はんだ耐熱試験の評価結果が非常に劣るものであった。比較例3の樹脂組成物は、(A)成分として二重結合を有さないスチレン系エラストマを用いた樹脂組成物であり、ピール強度には優れるものの、はんだ耐熱試験の評価結果が非常に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のアンテナ付き半導体パッケージは、5Gミリ波の送信・受信の通信を行うRFチップが実装される高周波基板として利用することができる。本発明のアンテナ付き半導体パッケージ用樹脂組成物は、本発明のアンテナ付き半導体パッケージの絶縁層に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 絶縁層
1A 第一絶縁層
1B 第二絶縁層
1C 第三絶縁層
1D 第四絶縁層
1E 第五絶縁層
2 コア基板
4 配線層
5 アンテナ部(パッチアンテナ)
7 電気連結金属
8 RFチップ
9 接続パッド
10 半導体装置部
21 絶縁層
22 コア基板
24 配線層
25 アンテナ部(パッチアンテナ)
26 アンテナ部(ダイポールアンテナ)
27 電気連結金属
28 RFチップ
30 半導体装置部
100,200 アンテナ付き半導体パッケージ