(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】エキスパンド装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20250210BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
H01L21/78 W
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020154570
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】松田 智人
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-186447(JP,A)
【文献】特開2020-126960(JP,A)
【文献】特開2019-204832(JP,A)
【文献】特開2010-190885(JP,A)
【文献】特開2013-115065(JP,A)
【文献】特開2019-067945(JP,A)
【文献】特開2021-052031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の分割予定ラインで区画された領域にデバイスが形成された被加工物を、該被加工物の裏面に貼着された接着フィルムを介して、環状のフレームの開口を塞ぐエキスパンドシートに貼着した被加工物ユニットの状態で該エキスパンドシートを拡張し、該分割予定ラインに沿って該接着フィルムを破断するエキスパンド装置であって、
該被加工物ユニットの該フレームを保持して該エキスパンドシートを拡張する拡張ユニットと、
該拡張ユニットに該フレームが保持された状態で該エキスパンドシートの該接着フィルムを介して該被加工物に貼着した領域に当接する当接面、該当接面の裏面である背面及び該当接面と該背面との間に位置する外周面を有する円盤状の冷却テーブルと、
該接着フィルムを破断する際の該冷却テーブルの温度より露点が低く、かつ、雰囲気の露点より温度が高くなるように調整されたガスを、該冷却テーブルの該当接面、該背面及び該外周面に供給するドライガス供給ユニットと、を備える
ことを特徴とするエキスパンド装置。
【請求項2】
該冷却テーブルに固定され、かつ、隙間を介して該背面及び該外周面と対面するカバー部材を備え、
該冷却テーブルには、該背面から該当接面までを貫通する貫通孔が形成され、
該ガスは、該隙間及び該貫通孔に供給される請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項3】
該ガスの露点を測定する露点測定ユニットと、
該冷却テーブルを冷却する冷却ユニットと、
該露点測定ユニットで測定された該ガスの露点が閾値を超えた場合に、該冷却テーブルの冷却を停止するように該冷却ユニットを制御する制御ユニットと、を備える請求項1又は2に記載のエキスパンド装置。
【請求項4】
該ガスの露点を測定する露点測定ユニットと、
該ガスの露点に関する情報を報知する報知ユニットと、
該露点測定ユニットで測定された該ガスの露点が閾値を超えた場合に、該ガスの露点が閾値を超えたことを報知するように該報知ユニットを制御する制御ユニットと、を備える請求項1又は2に記載のエキスパンド装置。
【請求項5】
該被加工物の外周縁と該フレームの内周縁との間の該エキスパンドシートの領域に対面して温風を噴射する温風噴射ユニットを備える請求項1乃至4のいずれかに記載のエキスパンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)及びLSI(Large Scale Integration)等のデバイスを有するチップは、表面の分割予定ライン(ストリート)によって区画された各領域にデバイスが形成されたシリコン(Si)からなるウェーハ等の被加工物を分割することによって製造される。このような被加工物は、例えば、以下の順序で分割される。
【0003】
まず、被加工物の分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射して被加工物の内部に改質層を形成し、また、改質層が形成された被加工物にエキスパンドシート(ダイシングテープ)を貼着する。次いで、エキスパンド装置を用いてエキスパンドシートを拡張してエキスパンドシートに貼着された被加工物に外力を加える。その結果、改質層が破断起点となり、被加工物が分割予定ラインに沿って分割される。
【0004】
さらに、被加工物を分割することで製造されたチップは、他のチップ又は基板等に固定される場合がある。このような場合には、チップを基板等に固定するための接着フィルムが貼着された状態の被加工物を分割することが求められることがある。
【0005】
ただし、このような接着フィルムは、一般的に、樹脂等の弾性率の小さい材料からなる。そのため、エキスパンド装置を用いて、接着フィルムを介して被加工物に貼着されたエキスパンドシートを拡張したとしても接着フィルムが伸長して破断されないことがある。
【0006】
このような場合に接着フィルムの変形を抑制して分割する方法として、接着フィルムが冷却された状態で、接着フィルムを介して被加工物に貼着されたエキスパンドシート(保護テープ)を拡張する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この方法においては、エキスパンドシートの接着フィルムが貼着されている領域を冷却テーブルに接触させ、この冷却テーブルを冷却して接着フィルムを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エキスパンドシートを拡張して接着フィルムを破断させるためには、例えば、接着フィルムを0度に冷却する必要がある。そのため、上述の方法においては、接着フィルムに接触する冷却テーブルが0度未満に冷却される。
【0009】
この場合、冷却テーブルの表面及び/又は冷却テーブルに近接するエキスパンド装置の構成要素の表面に結露が生じるおそれがある。そして、この結露によって生じた水滴は、被加工物の表面に形成されたデバイスを濡らして、このデバイスの動作不良を引き起こし、また、エキスパンド装置を故障させるおそれがある。
【0010】
この点に鑑み、本発明の目的は、被加工物に貼着した接着フィルムを冷却した状態で破断するエキスパンド装置であって、接着フィルムを破断する際の結露の発生を抑制することができるエキスパンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、表面の分割予定ラインで区画された領域にデバイスが形成された被加工物を、該被加工物の裏面に貼着された接着フィルムを介して、環状のフレームの開口を塞ぐエキスパンドシートに貼着した被加工物ユニットの状態で該エキスパンドシートを拡張し、該分割予定ラインに沿って該接着フィルムを破断するエキスパンド装置であって、該被加工物ユニットの該フレームを保持して該エキスパンドシートを拡張する拡張ユニットと、該拡張ユニットに該フレームが保持された状態で該エキスパンドシートの該接着フィルムを介して該被加工物に貼着した領域に当接する当接面、該当接面の裏面である背面及び該当接面と該背面との間に位置する外周面を有する円盤状の冷却テーブルと、該接着フィルムを破断する際の該冷却テーブルの温度より露点が低く、かつ、雰囲気の露点より温度が高くなるように調整されたガスを、該冷却テーブルの該当接面、該背面及び該外周面に供給するドライガス供給ユニットと、を備えるエキスパンド装置が提供される。
【0012】
好ましくは、該エキスパンド装置は、該冷却テーブルに固定され、かつ、隙間を介して該背面及び該外周面と対面するカバー部材を備え、該冷却テーブルには、該背面から該当接面までを貫通する貫通孔が形成され、該ガスは、該隙間及び該貫通孔に供給される。
【0013】
該エキスパンド装置は、該ガスの露点を測定する露点測定ユニットと、該冷却テーブルを冷却する冷却ユニットと、該露点測定ユニットで測定された該ガスの露点が閾値を超えた場合に、該冷却テーブルの冷却を停止するように該冷却ユニットを制御する制御ユニットと、を備えることが好ましい。
【0014】
あるいは、該エキスパンド装置は、該ガスの露点を測定する露点測定ユニットと、該ガスの露点に関する情報を報知する報知ユニットと、該露点測定ユニットで測定された該ガスの露点が閾値を超えた場合に、該ガスの露点が閾値を超えたことを報知するように該報知ユニットを制御する制御ユニットと、を備えることが好ましい。
【0015】
好ましくは、該エキスパンド装置は、該被加工物の外周縁と該フレームの内周縁との間の該エキスパンドシートの領域に対面して温風を噴射する温風噴射ユニットを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエキスパンド装置においては、被加工物に貼着した接着フィルムを冷却するための冷却テーブルの当接面、背面及び外周面に、接着フィルムを破断する際の冷却テーブルの温度より露点が低く、かつ、雰囲気の露点より温度が高くなるように調整されたガスを供給することができる。
【0017】
これにより、該接着フィルムに貼着したエキスパンドシートを拡張して接着フィルムを破断する際及びその前後に、冷却テーブルの当接面、背面及び外周面並びに冷却テーブルに近接するエキスパンド装置の構成要素の表面において結露が発生し難くなる。その結果、結露によって生じた水滴を原因とする被加工物の表面に形成されるデバイスの動作不良及びエキスパンド装置の故障の発生確率が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、被加工物を含む被加工物ユニットを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、エキスパンド装置の構成要素の一例を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、拡張ユニット及び冷却テーブル等を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、冷却テーブルの当接面を模式的に示す下面図である。
【
図5】
図5は、冷却テーブルと、ドライガス供給ユニット、昇降ユニット及び冷却ユニットとの接続関係を模式的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、エキスパンド装置の構成要素の他の例を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、エキスパンド装置の構成要素の他の例を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、冷却テーブルと、吸引ユニット等との接続関係を模式的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は、温風噴射ユニット等を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のエキスパンド装置によって分割される被加工物を含む被加工物ユニットを模式的に示す斜視図である。
【0020】
図1に示される被加工物ユニット1は、円盤状の形状を有する被加工物11を備える。被加工物11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料でなるウェーハである。被加工物11の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13で複数の領域に区画されており、各領域には、IC等のデバイス15が形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11として適用しているが、被加工物11の材質、形状、構造及び大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂及び金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。同様に、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ及び配置等にも制限はない。また、被加工物11には、デバイス15が形成されていなくても良い。
【0022】
また、被加工物11の内部には、分割予定ライン13に沿って改質層17が形成されている。改質層17は、例えば、被加工物11を透過する波長を有し、かつ、集光点が被加工物11の内部に位置付けられたレーザービームを分割予定ライン13に沿って被加工物11に照射することで形成される。
【0023】
被加工物11の裏面11bには、接着フィルム21を介してエキスパンドシート23が貼着されている。接着フィルム21は、代表的には、ダイアタッチフィルム(DAF:Die Attach Film)等と呼ばれるフィルム状の接着剤であり、一般的には、被加工物11よりも直径が大きな円盤状の形状を有する。接着フィルム21は、例えば、熱又は光によって硬化する樹脂等を用いて形成され、被加工物11を分割して得られるチップを任意の対象(例えば、他のチップ又は基板)に固定する機能を持つ。
【0024】
接着フィルム21を介して被加工物11の裏面11bに貼着されるエキスパンドシート23は、力が加えられると伸びる樹脂製のフィルムであり、例えば、接着フィルム21よりも直径が大きな円盤状の形状を有する。さらに、エキスパンドシート23の外周部分は、内径が被加工物11及び接着フィルム21の直径よりも大きい環状のフレーム25に貼着される。
【0025】
図1に示される被加工物ユニット1においては、被加工物11の裏面11bに対して接着フィルム21が接触するように、接着フィルム21とエキスパンドシート23とを重ねて被加工物11に貼着する。さらに、エキスパンドシート23の外周部分をフレーム25に貼着してフレーム25の開口を塞ぐ。これにより、被加工物11は、接着フィルム21とエキスパンドシート23とを介してフレーム25に支持された状態になる。
【0026】
図2は、エキスパンド装置の構成要素の一例を模式的に示す機能ブロック図である。
図2に示されるエキスパンド装置2は、
図1に示される被加工物ユニット1のエキスパンドシート23を拡張して被加工物11及び接着フィルム21を分割予定ライン13に沿って分割するための拡張ユニット10と、被加工物ユニット1の接着フィルム21を冷却するための冷却テーブル22とを有する。
【0027】
図3は、エキスパンド装置2に含まれる拡張ユニット10及び冷却テーブル22等を模式的に示す断面図である。拡張ユニット10は、それぞれがエキスパンド装置2の筐体(不図示)に固定された複数(例えば、4個)のシリンダケース12を有する。
【0028】
シリンダケース12の上面には、ピストンロッド14の下端部が挿入されている。なお、
図3においては、エキスパンド装置2に被加工物ユニット1を搬入することが可能な位置である搬入位置に位置付けられた状態のピストンロッド14が示されている。また、ピストンロッド14は、搬入位置から上方に移動可能である。
【0029】
ピストンロッド14の上端部には、
図1に示される被加工物ユニット1のフレーム25を支持することができる環状の支持テーブル16が固定されている。さらに、支持テーブル16の上方には、環状の固定プレート18が配置されている。
【0030】
固定プレート18は、上方への移動が可能なようにエキスパンド装置2の筐体(不図示)に支持される。具体的には、固定プレート18は、ピストンロッド14が搬入位置にある状態で支持テーブル16から離隔するように支持される。
【0031】
そして、被加工物ユニット1のフレーム25が支持テーブル16に支持された状態でピストンロッド14が上方に移動すると、固定プレート18は、フレーム25と接触してフレーム25を支持テーブル16上に固定する。ピストンロッド14がさらに上方に移動すると、固定プレート18は、支持テーブル16及びフレーム25と共に上方へ移動する。
【0032】
固定プレート18の内側には、エキスパンド装置2の筐体(不図示)に固定されている円筒状のドラム20が設けられている。ドラム20の下端は、例えば、ピストンロッド14が搬入位置にある状態で固定プレート18の下面と概ね同じ高さに位置する。
【0033】
図3に示される拡張ユニット10においては、被加工物ユニット1のフレーム25が支持テーブル16及び固定プレート18の間に固定された状態でピストンロッド14を上方に移動させることができる。また、拡張ユニット10は、冷却テーブル22が下降する際にピストンロッド14の位置を維持することもできる。
【0034】
すなわち、拡張ユニット10は、被加工物ユニット1のフレーム25と、冷却テーブル22とを相対的に移動させることができる。そして、冷却テーブル22と固定プレート18に接触するフレーム25とが遠ざかるように両者を移動させることで、被加工物ユニット1のエキスパンドシート23が拡張される。
【0035】
また、ドラム20の内側には、金属等からなる円柱状の支持ロッド30が配置されている。支持ロッド30は、後述するとおり、昇降可能な態様でエキスパンド装置2の筐体(不図示)に支持されている。また、支持ロッド30の下端は冷却テーブル22に固定されている。そして、支持ロッド30は、後述するとおり、冷却テーブル22から吸熱して冷却テーブル22を冷却する媒体としても機能する。
【0036】
冷却テーブル22は、金属(例えば、アルミニウム(Al))等からなり、円盤状の形状を有する。そして、冷却テーブル22においては、下面がエキスパンドシート23の接着フィルム21を介して被加工物11に貼着した領域に当接する当接面(下面)22aとなる。
【0037】
図4は、冷却テーブル22の当接面22aを模式的に示す下面図である。
図4に示されるように、冷却テーブル22の当接面22aには、同心円状に設けられた複数の円状の溝24と、隣接する一対の円状の溝24を連結する複数の放射状の溝26とが設けられている。円状の溝24及び放射状の溝26は、同じ深さ(例えば、2.3mm)となるように設けられている。また、円状の溝24は、隣接した一対の円状の溝24の間隔が所定の2つの距離(例えば、3mm及び5mm)のいずれかになるように設けられている。
【0038】
さらに、放射状の溝26の底面には、複数の貫通孔28が開口している。複数の貫通孔28のそれぞれは、冷却テーブル22の当接面22aの裏面である背面22bから当接面22aまでを貫通する。なお、複数の貫通孔28は、後述するとおり、ドライガスを当接面22aに供給するための供給経路として機能する。
【0039】
また、冷却テーブル22には、樹脂等からなるカバー部材34が固定されている。カバー部材34は、円形の下面を持つ円盤状の背面カバー部34aを有する。背面カバー部34aの下面は、隙間32を介して、冷却テーブル22の背面22bに対面している。背面カバー部34aの中央の領域には、厚さ方向に背面カバー部34aを貫通する開口部34bが設けられており、支持ロッド30が開口部34bに挿入されている。
【0040】
冷却テーブル22の複数の貫通孔28の直上に位置する背面カバー部34aの複数の領域のそれぞれには、厚さ方向に背面カバー部34aを貫通するジョイント用孔が設けられている。そして、このジョイント用孔には円筒状のジョイント36が挿入され、ジョイント36の内側が貫通孔28と連通している。
【0041】
さらに、カバー部材34は、背面カバー部34aの外周縁から下方に延在する円筒状の外周面カバー部34cを有する。外周面カバー部34cの内周面は、隙間32を介して、冷却テーブル22の当接面22aと背面22bとの間の外周面22cに対面している。
【0042】
また、カバー部材34は、背面カバー部34aの内周縁から上方に延在する円筒状のジョイント挿入部34dを有する。ジョイント挿入部34dの上部は、隙間32を閉じるように支持ロッド30に固定されている。また、ジョイント挿入部34dには、径方向にジョイント挿入部34dを貫通するジョイント用孔が設けられている。そして、このジョイント用孔には、円筒状のジョイント38が挿入され、ジョイント38の内側が隙間32と連通している。
【0043】
そして、冷却テーブル22は、ドライガス供給ユニット40、昇降ユニット42及び冷却ユニット44に接続されている。
図5は、冷却テーブル22と、ドライガス供給ユニット40、昇降ユニット42及び冷却ユニット44との接続関係を模式的に示すブロック図である。
【0044】
ドライガス供給ユニット40は、配管(不図示)等を介して、バルブ46及びジョイント36に接続される。そのため、バルブ46を開状態とすることで、ドライガス供給ユニット40は、バルブ46、ジョイント36及び貫通孔28を介して、冷却テーブル22の当接面22aにドライガスを提供することができる。
【0045】
また、ドライガス供給ユニット40は、配管(不図示)等を介して、バルブ48及びジョイント38に接続される。そのため、バルブ48を開状態とすることで、ドライガス供給ユニット40は、バルブ48、ジョイント38及び隙間32を介して、冷却テーブル22の背面22b及び外周面22cにドライガスを提供することができる。
【0046】
このドライガスは、冷却テーブル22の当接面に保持された被加工物ユニット1のエキスパンドシート23を拡張ユニット10が拡張して接着フィルム21を破断する際の冷却テーブル22の温度より露点が低く、かつ、雰囲気の露点より温度が高くなるように調整される。なお、ドライガス供給ユニット40は、例えば、ドライガスを内蔵するボンベ及びドライガスの圧力を調整するコンプレッサ等によって構成される。
【0047】
昇降ユニット42は、支持ロッド30等を介して冷却テーブル22に接続される。昇降ユニット42は、例えば、支持ロッド30等を介して冷却テーブル22を下降させることで、冷却テーブル22の当接面22aを被加工物ユニット1のエキスパンドシート23に当接させることができる。なお、昇降ユニット42は、例えば、モータ及びモータにより駆動するボールネジ等によって構成される。
【0048】
冷却ユニット44は、支持ロッド30等を介して冷却テーブル22に接続される。冷却ユニット44は、例えば、冷却テーブル22の当接面22aに被加工物ユニット1が保持された状態で支持ロッド30から吸熱して冷却テーブル22を冷却することで、エキスパンドシート23を介して接着フィルム21を冷却することができる。なお、冷却ユニット44は、例えば、ピストンクーラー等によって構成される。
【0049】
拡張ユニット10、ドライガス供給ユニット40、昇降ユニット42及び冷却ユニット44の動作は、制御ユニット50によって制御される。制御ユニット50は、例えば、エキスパンド装置2の構成要素を制御するための信号を生成する処理部52と、処理部52において用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する記憶部54とを有する。
【0050】
処理部52の機能は、記憶部54に記憶されたプログラムを読みだして実行するCPU(Central Processing Unit)等によって具現される。また、記憶部54の機能は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)及びNAND型フラッシュメモリ等の半導体メモリと、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置との少なくとも一つによって具現される。
【0051】
そして、制御ユニット50は、入力ユニット56から入力される信号に応じて、エキスパンド装置2に含まれる構成要素の動作を制御する。なお、入力ユニット56は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、ボタン及びマイクロフォン等の少なくとも一つによって構成される。
【0052】
入力ユニット56は、例えば、冷却テーブル22の当接面22aに被加工物ユニット1が当接される前のオペレータの操作に応じて、結露の発生を抑制することを指示する信号を制御ユニット50に入力することができる。
【0053】
この信号が入力されると、制御ユニット50は、バルブ46及びバルブ48を開状態とする。そして、制御ユニット50は、冷却テーブル22にドライガスが供給されるようにドライガス供給ユニット40を制御する。
【0054】
この場合、ドライガス供給ユニット40から供給されたドライガスは、バルブ46、ジョイント36及び貫通孔28を介して冷却テーブル22の当接面22aに供給され、また、バルブ48、ジョイント38及び隙間32を介して冷却テーブル22の背面22b及び外周面22cに供給される。
【0055】
さらに、入力ユニット56は、オペレータの操作に応じて、冷却テーブル22の当接面22aに被加工物ユニット1を保持してエキスパンドシート23を拡張することを指示する信号を制御ユニット50に入力することができる。
【0056】
この信号が入力されると、制御ユニット50は、冷却テーブル22の当接面22aが被加工物ユニット1のエキスパンドシート23と当接するように昇降ユニット42を制御する。次いで、制御ユニット50は、冷却テーブル22が冷却されるように冷却ユニット44を制御する。
【0057】
次いで、制御ユニット50は、被加工物ユニット1のエキスパンドシート23を拡張するように拡張ユニット10及び/又は昇降ユニット42を制御する。具体的には、制御ユニット50は、拡張ユニット10のピストンロッド14を上方に移動させ、かつ/又は、冷却テーブル22を下降させるように拡張ユニット10及び/又は昇降ユニット42を制御する。その結果、被加工物ユニット1の被加工物11及び接着フィルム21が分割予定ライン13に沿って分割される。
【0058】
エキスパンド装置2においては、被加工物11に貼着した接着フィルム21を冷却するための冷却テーブル22の当接面22a、背面22b及び外周面22cに、接着フィルム21を破断する際の冷却テーブル22の温度より露点が低く、かつ、雰囲気の露点より温度が高くなるように調整されたドライガスを供給することができる。
【0059】
これにより、接着フィルム21に貼着したエキスパンドシート23を拡張して接着フィルム21を破断する際及びその前後に、冷却テーブル22の当接面22a、背面22b及び外周面22c並びに冷却テーブル22に近接するエキスパンド装置2の構成要素の表面において結露が発生し難くなる。その結果、結露によって生じた水滴を原因とする被加工物11の表面に形成されるデバイス15の動作不良及びエキスパンド装置2の故障の発生確率が低減される。
【0060】
さらに、本発明に係るエキスパンド装置は、
図2に示されるエキスパンド装置2の構成要素以外の構成要素を備えてもよい。
図6及び
図7は、このようなエキスパンド装置の構成要素の一例を模式的に示す機能ブロック図である。なお、
図6及び
図7に示されるエキスパンド装置60,66の構成要素のうちエキスパンド装置2の構成要素と同じものについては同じ符号を付し、また、これらの構成要素の説明については省略する。
【0061】
図6に示されるエキスパンド装置60は、ドライガス供給ユニット40から供給されるドライガスの露点を測定する露点測定ユニット62と、オペレータに各種の情報を報知する報知ユニット64とを有する。なお、露点測定ユニット62は、例えば、露点計等によって構成される。また、報知ユニット64は、例えば、ディスプレイ、パイロットランプ、プリンタ及びスピーカ等の少なくとも一つによって構成される。
【0062】
露点測定ユニット62は、例えば、
図3に示される冷却テーブル22とカバー部材34との間の隙間32に存在するドライガスの露点を測定して、測定された露点を制御ユニット50に入力する。また、報知ユニット64は、ドライガスの露点に関する情報をオペレータに報知する。
【0063】
また、
図6に示される制御ユニット50の記憶部54には、接着フィルム21を破断するために冷却された時の冷却テーブル22の温度が予め記憶されている。また、この温度が接着フィルム21の種類に依存して変化する場合には、記憶部54は、接着フィルム21の種類と、この温度とを対応づけて記憶してもよい。
【0064】
そして、制御ユニット50の処理部52は、予め結露の発生を抑制するために必要なドライガスの露点の閾値を設定する。例えば、接着フィルム21を破断するために冷却された時の冷却テーブル22の温度がTであれば、処理部52は、T-5℃~T-2℃の範囲に含まれるいずれかの温度を露点の閾値として設定する。
【0065】
ここで、露点測定ユニット62によって測定されたドライガスの露点が制御ユニット50に入力されると、処理部52は、この露点と閾値とを比較する。そして、この露点が閾値を超えた場合、処理部52は、冷却テーブル22の冷却を停止するように冷却ユニット44を制御し、かつ/又は、この露点が閾値を超えたことをオペレータに報知するように報知ユニット64を制御する。
【0066】
そのため、
図6に示されるエキスパンド装置60においては、露点測定ユニット62によって測定されたドライガスの露点が閾値を超えた場合に、冷却テーブル22の冷却が停止され、かつ/又は、露点が閾値を超えたことがオペレータに報知される。
【0067】
これにより、冷却テーブル22の当接面22a、背面22b及び外周面22c並びに冷却テーブル22に近接するエキスパンド装置60の構成要素の表面における結露の発生が事前に防止される。その結果、結露によって生じた水滴を原因とする被加工物11の表面に形成されるデバイス15の動作不良及びエキスパンド装置60の故障が防止される。
【0068】
図7に示されるエキスパンド装置66は、冷却テーブル22の当接面22aに負圧を生じさせる吸引ユニット68と、被加工物ユニット1の被加工物11の外周縁とフレーム25の内周縁との間のエキスパンドシート23の領域に対面して温風を噴射する温風噴射ユニットとを有する。
【0069】
図8は、冷却テーブル22と、吸引ユニット68等との接続関係を模式的に示すブロック図である。なお、
図8には、ドライガス供給ユニット40、昇降ユニット42及び冷却ユニット44等が示されているが、これらの構成要素の説明については省略する。
【0070】
吸引ユニット68は、配管(不図示)等を介して、バルブ69及びジョイント36に接続される。そして、
図7に示されるエキスパンド装置66においては、貫通孔28は、ドライガスを当接面22aに供給するための供給経路としてのみならず、気体を吸引して当接面22aに負圧を生じさせるための吸引経路としても機能する。
【0071】
そのため、バルブ46を閉状態とし、かつ、バルブ69を開状態とすることで、吸引ユニット68は、バルブ69、ジョイント36及び貫通孔28を介して冷却テーブル22の当接面22aに負圧を生じさせることができる。なお、吸引ユニット68は、例えば、エジェクタ等によって構成される。
【0072】
図9は、温風噴射ユニット等を模式的に示す断面図である。なお、
図9には、拡張ユニット10及び冷却テーブル22等が示されているが、これらの構成要素の説明については省略する。
【0073】
図9に示される温風噴射ユニット70は、ヒータプレート72を有する。ヒータプレート72は、円盤状の形状を有し、支持テーブル16の内側に配置されている。また、ヒータプレート72の上面は、支持テーブルの下面よりも下方に配置されている。ヒータプレート72は、エキスパンド装置の筐体(不図示)に固定されたヒータプレート回転用モータ74によって回転される。
【0074】
ヒータプレート72の上面には、被加工物ユニット1の被加工物11の外周縁とフレーム25の内周縁との間のエキスパンドシート23に対面して温風を噴射する複数の温風噴射部76が設けられている。具体的には、複数の温風噴射部76は、ヒータプレート72の上面の外周部分において周方向に概ね等間隔に設けられている。
【0075】
温風噴射部76は、上部が開口された有底筒状の噴射部本体78と、噴射部本体78内に収容されたコイルヒータ80とを備える。そして、温風噴射部76は、噴射部本体78内にエアーを供給するエアー供給源(不図示)に接続されている。また、コイルヒータ80の2つの端子はスイッチ(不図示)及び直流電源(不図示)に接続されており、このスイッチが導通状態となることで直流電源からコイルヒータ80に電力が供給されてコイルヒータ80が発熱する。
【0076】
温風噴射部76の上方には、シャッタプレート82が設けられている。シャッタプレート82は、直径が支持テーブル16の内径よりも若干小さな円盤状の形状を有し、支持テーブル16の内側に配置されている。シャッタプレート82は、ヒータプレート72に取り付けられたシャッタプレート回転用モータ84によって回転される。また、シャッタプレート82の外周部分には、温風噴射部76を露出させることが可能な開口部86が設けられている。
【0077】
図7~
図9に示される吸引ユニット68及び温風噴射ユニット70は、拡張ユニット10によって被加工物ユニット1のエキスパンドシート23が拡張された後に動作する。すなわち、
図7に示されるエキスパンド装置66においては、冷却テーブル22の当接面22aに保持されているエキスパンドシート23の円形の領域を吸引した後、この円形の領域を囲む環状の領域に生じた弛みを緩和する。
【0078】
具体的には、まず、バルブ46を閉状態とし、かつ、バルブ69を開状態として、吸引ユニット68が冷却テーブル22の当接面22aに負圧を生じさせる。これにより、拡張したエキスパンドシート23のうち当接面22aに保持されている円形の領域が当接面22aに吸引される。
【0079】
次いで、シャッタプレート82の開口部86が温風噴射部76の直上に位置するように、シャッタプレート回転用モータ84がシャッタプレート82を回転させる。次いで、温風噴射部76に接続されたエアー供給源(不図示)が噴射部本体78内にエアーを供給する。
【0080】
この時、噴射部本体78内に供給されたエアーは、通電したコイルヒータ80によって加熱されて温風となり、シャッタプレート82の開口部86を通って上方に噴射される。これにより、開口部86の上方に位置する被加工物ユニット1の被加工物11の外周縁とフレーム25の内周縁との間のエキスパンドシート23の領域に温風が噴射される。
【0081】
次いで、温風がエキスパンドシート23の周方向に沿って噴射されるように、ヒータプレート回転用モータ74がヒータプレート72をシャッタプレート82と共に回転させる。
【0082】
その結果、温風が噴射されたエキスパンドシート23の環状の領域が加熱されて収縮する。すなわち、拡張ユニット10によって拡張されたエキスパンドシート23の当該領域に生じた弛みが緩和される。
【0083】
なお、本発明に係るエキスパンド装置は、
図2に示される各構成要素、
図6に示される露点測定ユニット62及び報知ユニット64並びに
図7に示される吸引ユニット68及び温風噴射ユニット70の全てを備えてもよい。
【0084】
その他、上述した実施形態及び変形例にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0085】
1 :被加工物ユニット
11 :被加工物
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
17 :改質層
21 :接着フィルム
23 :エキスパンドシート
25 :フレーム
2 :エキスパンド装置
10 :拡張ユニット
12 :シリンダケース
14 :ピストンロッド
16 :支持テーブル
18 :固定プレート
20 :ドラム
22 :冷却テーブル
22a :当接面
22b :背面
22c :外周面
24 :円状の溝
26 :放射状の溝
28 :貫通孔
30 :支持ロッド
32 :隙間
34 :カバー部材
34a :背面カバー部
34b :開口部
34c :外周面カバー部
34d :ジョイント挿入部
36 :ジョイント
38 :ジョイント
40 :ドライガス供給ユニット
42 :昇降ユニット
44 :冷却ユニット
46 :バルブ
48 :バルブ
50 :制御ユニット
52 :処理部
54 :記憶部
56 :入力ユニット
60 :エキスパンド装置
62 :露点測定ユニット
64 :報知ユニット
66 :エキスパンド装置
68 :吸引ユニット
69 :バルブ
70 :温風噴射ユニット
72 :ヒータプレート
74 :ヒータプレート回転用モータ
76 :温風噴射部
78 :噴射部本体
80 :コイルヒータ
82 :シャッタプレート
84 :シャッタプレート回転用モータ
86 :開口部