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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20250210BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250210BHJP
   B24D 5/02 20060101ALI20250210BHJP
   B24D 7/02 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
B24B9/00 601G
H01L21/304 601B
H01L21/304 631
B24D5/02 B
B24D7/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021002741
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022002867
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】16/909,209
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ ラティーナ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-137721(JP,A)
【文献】特開2014-027000(JP,A)
【文献】特開2010-182839(JP,A)
【文献】特開2016-127098(JP,A)
【文献】特開昭55-165638(JP,A)
【文献】特開平01-071655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/00 - 9/20
H01L 21/304
B24D 5/02
B24D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、面取り加工によって曲面状に整形されるとともに該第1面と該第2面とを互いに接続する外周面と、を有するウェーハを加工する際に用いられるウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの該第1面側が露出するように該ウェーハの該第2面側を保持し、
該ウェーハの該第2面側を保持した後、砥粒をボンド材で結合して得られる砥石を含む加工用の工具で該ウェーハの露出した該第1面側の外周部を加工することによって、該ウェーハの中央側から外周縁側に向かうにつれて該第2面に近づくように該第1面に対して傾斜するとともに、該外周面の内端よりも内側に位置する内周と該外周面の該内端よりも外側かつ該外周縁よりも内側に位置する外周とを含む傾斜面を該外周部に形成し、
該傾斜面を形成した後、液状の材料をスピンコーティングで該ウェーハの該第1面に塗布することによって、該ウェーハの該第1面側にレジスト膜を形成するウェーハの加工方法。
【請求項2】
該工具は、円形の外周縁を持つ第1側面と、該第1側面より径が大きい円形の外周縁を持ち該第1側面とは反対側に位置する第2側面と、該第1側面の該外周縁と該第2側面の該外周縁とを接続し該砥石によって構成された外周面と、を有し、該第1側面と該第2側面とに対して該外周面が傾斜している円錐台状の切削ブレードであり、
該傾斜面を形成する際には、該切削ブレードの該第2側面が該ウェーハの該外周縁側に配置された状態で該切削ブレードを該ウェーハの該外周部に切り込ませる請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該工具は、円形の外周縁を持つ第1側面と、円形の外周縁を持ち該第1側面とは反対側に位置する第2側面と、該第1側面の該外周縁と該第2側面の該外周縁とを接続し該砥石によって構成された外周面と、を有する円盤状の切削ブレードであり、
該傾斜面を形成する際には、該切削ブレードを回転させる回転軸を該第1面に対して傾けた状態で該切削ブレードを該ウェーハの該外周部に切り込ませる請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該工具は、該砥石を有する研削ホイールである請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
該傾斜面は、該第1面との間でなす角度が10°以上25°以下になるように形成される請求項1乃至4のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体により形成されるウェーハの表面側を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを設けた後、このウェーハを分割予定ラインで分割することにより得られる。
【0003】
上述のようなデバイスは、一般に、金属膜や絶縁膜等をウェーハの厚みの方向に重ね、これらをデバイスに対応する所定のパターンに加工することによって形成される。金属膜や絶縁膜等の加工には、例えば、液状の材料をスピンコーティングによって塗布して得られるレジスト膜をマスクとして(例えば、特許文献1参照)、高い反応性を持つガスや薬液等で対象を加工するエッチング加工が適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-44064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スピンコーティングによってレジスト膜を形成すると、ウェーハの外周部でレジスト膜が凸状(又は、粒状)に盛り上がり、レジスト膜の平坦性が低下する可能性が高い。このように盛り上がったレジスト膜の厚い部分では、後のプリベークによって溶媒が十分に除去されず、例えば、フォトマスクをレジスト膜に接触させて露光を行う接触式露光が採用される場合には、レジスト膜の材料がフォトマスクに付着してしまうことがあった。
【0006】
また、レジスト膜の盛り上がった厚い部分に、気体が内包されてしまうこともある。その場合には、後の加熱処理(例えば、レジスト膜が形成されたウェーハを別のウェーハに貼り合わせる際に行われる加熱処理)等によって内部の気体が膨張し、レジスト膜の盛り上がった厚い部分が破裂して環境が汚染される可能性があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハの外周部でレジスト膜が盛り上がる可能性を低く抑えることができるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、面取り加工によって曲面状に整形されるとともに該第1面と該第2面とを互いに接続する外周面と、を有するウェーハを加工する際に用いられるウェーハの加工方法であって、該ウェーハの該第1面側が露出するように該ウェーハの該第2面側を保持し、該ウェーハの該第2面側を保持した後、砥粒をボンド材で結合して得られる砥石を含む加工用の工具で該ウェーハの露出した該第1面側の外周部を加工することによって、該ウェーハの中央側から外周縁側に向かうにつれて該第2面に近づくように該第1面に対して傾斜するとともに、該外周面の内端よりも内側に位置する内周と該外周面の該内端よりも外側かつ該外周縁よりも内側に位置する外周とを含む傾斜面を該外周部に形成し、該傾斜面を形成した後、液状の材料をスピンコーティングで該ウェーハの該第1面に塗布することによって、該ウェーハの該第1面側にレジスト膜を形成するウェーハの加工方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様において、該工具は、円形の外周縁を持つ第1側面と、該第1側面より径が大きい円形の外周縁を持ち該第1側面とは反対側に位置する第2側面と、該第1側面の該外周縁と該第2側面の該外周縁とを接続し該砥石によって構成された外周面と、を有し、該第1側面と該第2側面とに対して該外周面が傾斜している円錐台状の切削ブレードであり、該傾斜面を形成する際には、該切削ブレードの該第2側面が該ウェーハの該外周縁側に配置された状態で該切削ブレードを該ウェーハの該外周部に切り込ませることがある。
【0010】
また、本発明の一態様において、該工具は、円形の外周縁を持つ第1側面と、円形の外周縁を持ち該第1側面とは反対側に位置する第2側面と、該第1側面の該外周縁と該第2側面の該外周縁とを接続し該砥石によって構成された外周面と、を有する円盤状の切削ブレードであり、該傾斜面を形成する際には、該切削ブレードを回転させる回転軸を該第1面に対して傾けた状態で該切削ブレードを該ウェーハの該外周部に切り込ませることがある。
【0011】
また、本発明の一態様において、該工具は、該砥石を有する研削ホイールであることがある。さらに、本発明の一態様において、該傾斜面は、該第1面との間でなす角度が10°以上25°以下になるように形成されることがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様にかかるウェーハの加工方法では、ウェーハの中央側から外周縁側に向かうにつれて第2面に近づくように第1面に対して傾斜する傾斜面を第1面側の外周部に形成するので、レジスト膜となる液状の材料をスピンコーティングでウェーハの第1面に塗布する際に、ウェーハの中央側から外周縁側に向かって流れる液状の材料が傾斜面を伝ってウェーハの外部に排出され易くなる。つまり、ウェーハの外周部に液状の材料が溜まり難くなるので、ウェーハの外周部でレジスト膜が盛り上がる可能性を低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ウェーハの斜視図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハが保持される様子を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハに傾斜面が形成される様子を示す断面図である。
図4図4は、傾斜面が形成されたウェーハの一部を拡大した断面図である。
図5図5は、第1実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハにレジスト膜が形成される様子を示す断面図である。
図6図6は、傾斜面が形成されたウェーハの一部と、このウェーハに形成されたレジスト膜の一部と、を拡大した断面図である。
図7図7は、傾斜面が形成されていないウェーハの一部と、このウェーハに形成されたレジスト膜の一部と、を拡大した断面図である。
図8図8は、第2実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハに傾斜面が形成される様子を示す断面図である。
図9図9は、第3実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハに傾斜面が形成される様子を示す断面図である。
図10図10は、第4実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハに傾斜面が形成される様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかるウェーハの加工方法で加工されるウェーハ11の斜視図である。図1に示すように、ウェーハ11は、例えば、シリコン等の半導体を用いて、第1面11aと、第1面11aとは反対側(背面側)の第2面11bと、を持つ円盤状に形成されている。第1面11aと第2面11bとは、いずれも概ね平坦な円形に形成されている。また、第1面11aと第2面11bとは、面取り加工によって曲面状に整形された外周面11cによって互いに接続されている。
【0016】
なお、このウェーハ11には、電子回路等のデバイスが形成されていない。ただし、本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、デバイスが形成された状態のウェーハを加工することもできる。また、ウェーハ11の材質、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料を用いて形成されるウェーハを加工することもできる。更に、ウェーハ11は、後の工程で、別のウェーハや基板等に対して貼り合わせられても良い。
【0017】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、まず、ウェーハ11の第1面11a側が露出するように、ウェーハ11の第2面11b側を保持する(保持ステップ)。図2は、ウェーハ11が保持される様子を示す断面図である。なお、図2では、一部の構成要素が記号や機能ブロック等で表されている。
【0018】
ウェーハ11の保持は、例えば、図2に示される加工装置2を用いて行われる。加工装置2は、ウェーハ11を保持できるように構成されたチャックテーブル(保持テーブル)4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属を用いて形成され上面側に凹部を有する円柱状の枠体6を含む。枠体6の内部には、ウェーハ11の吸引に使用される負圧を伝達する流路6aが設けられている。
【0019】
枠体6の凹部には、セラミックス等を用いて多孔質状に形成されたポーラス板8が固定されている。このポーラス板8の上面(保持面)8aによって、ウェーハ11が保持される。枠体6の流路6aには、バルブ10等を介して真空ポンプ等の吸引源12が接続されている。そのため、吸引源12を動作させた状態でバルブ10を開けば、この吸引源12で発生する負圧を、ポーラス板8の上面8aに作用させることができる。
【0020】
チャックテーブル4の枠体6には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、チャックテーブル4は、この回転駆動源から伝わる動力によって、ポーラス板8の上面8aに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4の枠体6は、テーブル移動機構(不図示)に支持されており、このテーブル移動機構によって、ポーラス板8の上面8aに対して概ね平行な第1方向(第1水平方向)に移動する。
【0021】
ウェーハ11を保持する際には、例えば、図2に示すように、ウェーハ11の第2面11bをポーラス板8の上面8aに接触させる。そして、吸引源12を動作させた状態でバルブ10を開いて、ポーラス板8の上面8aに負圧を作用させる。これにより、ウェーハ11の第2面11bがポーラス板8の上面8aに吸着される。すなわち、第1面11a側が上方に露出した状態で、ウェーハ11の第2面11b側がチャックテーブル4によって保持される。
【0022】
なお、本実施形態では、ポーラス板8の上面8aに対してウェーハ11の第2面11bを直に接触させているが、ウェーハ11の第2面11bには、あらかじめテープ等の保護部材を貼付しておいても良い。この場合には、保護部材を介してウェーハ11の第2面11b側がチャックテーブル4によって保持されることになるので、ポーラス板8等との接触に起因するウェーハ11の第2面11bの損傷を防止できる。
【0023】
ウェーハ11の第2面11b側を保持した後には、このウェーハ11の第1面11a側の外周部を加工して傾斜面を形成する(加工ステップ)。図3は、ウェーハ11に傾斜面11dが形成される様子を示す断面図である。なお、図3では、一部の構成要素が記号や機能ブロック等で表されている。
【0024】
傾斜面11dの形成は、引き続き加工装置2を用いて行われる。図3に示すように、チャックテーブル4の上方には、切削ユニット(加工ユニット)14が配置されている。切削ユニット14は、例えば、ポーラス板8の上面8aに対して概ね平行で第1方向に対して概ね垂直な軸心を持つスピンドル16を備えている。スピンドル16の一端側には、砥粒をボンド材で結合して得られる砥石を含む切削ブレード(加工用の工具)18が装着されている。
【0025】
スピンドル16の他端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル16の一端側に装着された切削ブレード18は、この回転駆動源から伝わる動力によって回転する。切削ユニット14は、例えば、切削ユニット移動機構(不図示)に支持されており、この切削ユニット移動機構によって、ポーラス板8の上面8aに対して概ね平行で第1方向に対して概ね垂直な第2方向(第2水平方向)と、第1方向及び第2方向に対して概ね垂直な第3方向(鉛直方向)と、に移動する。
【0026】
切削ブレード18は、例えば、円形の外周縁を持つ第1側面18aと、第1側面18aより径が大きい円形の外周縁を持ち第1側面18aとは反対側(背面側)に位置する第2側面18bと、を含む円錐台状に形成されている。つまり、第1側面18aの外周縁と第2側面18bの外周縁とは、第1側面18aと第2側面18bとの双方に対して傾斜した外周面18cによって互いに接続されている。また、少なくとも外周面18cは、ダイヤモンド等の砥粒が樹脂等のボンド材で結合された砥石によって構成されている。
【0027】
この切削ブレード18は、第1側面18aと第2側面18bとがスピンドル16の軸心に対して概ね垂直になるように、スピンドル16の一端側に装着される。言い換えれば、切削ブレード18の第1側面18aと第2側面18bとは、第2方向に対して概ね垂直である。
【0028】
なお、切削ブレード18の幅(第1側面18aと第2側面18bとの距離)は、希望する傾斜面11dの幅に合わせて任意に設定される。例えば、幅が0.5mm以上3.0mm以下、代表的には、1mmの切削ブレード18を用いることで、十分な幅を持つ傾斜面11dを容易に形成できる。
【0029】
ウェーハ11に傾斜面11dを形成する際には、図3に示すように、切削ブレード18を回転させながら、ウェーハ11の第1面11aと外周面11cとの境界を含む外周部に切削ブレード18を切り込ませる。このとき、切削ブレード18の第1側面18aがウェーハ11の中央側に配置され、切削ブレード18の第2側面18bがウェーハ11の外周縁側に配置されるように、ウェーハ11の外周部に切削ブレード18を切り込ませる。そして、その状態で、チャックテーブル4を1回転させる。
【0030】
なお、ウェーハ11に対して切削ブレード18を切り込ませる際の切削ユニット14の高さは、切削ブレード18の外周面18cのみがウェーハ11に接触する範囲内で調整される。具体的には、例えば、切削ブレード18の第1側面18aの下端の高さがウェーハ11の第1面11aの高さ以上となり、第2側面18bの下端の高さが第1面11aの高さ未満となるように、切削ユニット14の高さが調整される。
【0031】
これにより、ウェーハ11の第1面11a側の外周部に切削ブレード18を切り込ませて、第1面11aに対して高低差なく接続された傾斜面11dを形成できる。このように形成される傾斜面11dは、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かうにつれて第2面11bに近づくように第1面11aに対して傾斜している。
【0032】
すなわち、傾斜面11dの高さは、第1面11a側(ウェーハ11の内側)より外周面11c側(ウェーハ11の外側)で低くなっている。また、傾斜面11dが形成された外周部でのウェーハ11の厚みは、第1面11a側に比べて外周面11c側で薄くなっている。
【0033】
図4は、傾斜面11dが形成されたウェーハ11の一部を拡大した断面図である。第1面11aと傾斜面11dとのなす角度θは、例えば、10°以上25°以下の範囲に調整されることが望ましい。これにより、ウェーハ11の第1面11a側に形成されるレジスト膜が盛り上がる可能性を十分に低く抑えられる。一方で、傾斜面11dの幅W(ウェーハ11の径方向に沿った傾斜面11dの長さ)は、例えば、0.5mm以上3.0mm以下の範囲に調整される。ただし、この幅Wに特段の制限はない。
【0034】
ウェーハ11に傾斜面11dを形成した後には、液状の材料をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布することによって、ウェーハ11の第1面11a側にレジスト膜を形成する(レジスト膜形成ステップ)。図5は、ウェーハ11にレジスト膜が形成される様子を示す断面図である。レジスト膜の形成は、例えば、図5に示されるスピンコーター22を用いて行われる。
【0035】
スピンコーター22は、ウェーハ11等が収容される円筒状の収容部24を含む。この収容部24の内側の空間24aが、ウェーハ11に対してレジスト膜を形成する際の処理室となる。空間24aの中央付近には、ウェーハ11よりも径の小さい円盤状のスピンナテーブル26が配置されている。このスピンナテーブル26の上面(保持面)26aによって、ウェーハ11が保持される。
【0036】
スピンナテーブル26の上面26aには、スピンナテーブル26の内部に形成された流路(不図示)やバルブ(不図示)等を介して、真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されている。そのため、吸引源を動作させた状態でバルブを開けば、この吸引源で発生する負圧を、スピンナテーブル26の上面26aに作用させることができる。スピンナテーブル26の下部には、スピンドル28を介してモーター等の回転駆動源30が連結されており、スピンナテーブル26は、この回転駆動源30から伝わる動力によって回転する。
【0037】
スピンナテーブル26の上方には、液状の材料13を先端部から滴下するノズル32が配置されている。ノズル32の基端側には、モーター等の回転駆動源34が連結されており、ノズル32の先端部は、この回転駆動源34から伝わる動力によって、スピンナテーブル26の上方の領域を円弧状の軌跡を描くように移動する。なお、液状の材料13を滴下する際には、ノズル32の先端部を、空間24aの端の退避領域から、スピンナテーブル26の直上の滴下領域に移動させる。
【0038】
ウェーハ11の第1面11a側にレジスト膜を形成する際には、例えば、図5に示すように、ウェーハ11の第2面11bをスピンナテーブル26の上面26aに接触させる。そして、吸引源を動作させた状態でバルブを開いて、スピンナテーブル26の上面26aに負圧を作用させる。これにより、ウェーハ11の第2面11bがスピンナテーブル26の上面26aに吸着される。すなわち、第1面11a側が上方に露出した状態で、ウェーハ11の第2面11b側がスピンナテーブル26によって保持される。
【0039】
次に、ノズル32の先端部をスピンナテーブル26の直上の滴下領域に移動させ、この先端部から、スピンナテーブル26に保持されているウェーハ11の第1面11aに液状の材料13を滴下する。より具体的には、ノズル32の先端部をウェーハ11の中央部の上方に位置付けて、液状の材料13を滴下する。
【0040】
その後、スピンナテーブル26を回転させる。スピンナテーブル26の回転数は、例えば、1000rpm~3000rpmであり、スピンナテーブル26を回転させる時間は、例えば、10秒~60秒である。ただし、スピンナテーブル26の回転等にかかる条件に特段の制限はない。
【0041】
例えば、1000rpm~3000rpm(高い回転数)でのスピンナテーブル26の回転と、10rpm~300rpm(低い回転数)でのスピンナテーブル26の回転と、を組み合わせることもできる。このスピンナテーブル26の回転により、液状の材料13は、ウェーハ11の第1面11a側の全体に広がる。すなわち、ウェーハ11の第1面11a側の全体に液状の材料13が塗布される。
【0042】
本実施形態では、液状の材料13として、レジスト膜の形成に適したSU-8等のエポキシ系の樹脂が使用される。ただし、この液状の材料13にも特段の制限はない。液状の材料13は、レジスト膜に要求される性質等に応じて変更され得る。
【0043】
液状の材料13をウェーハ11の第1面11a側の全体に広げた後には、この液状の材料13を乾燥させて、液状の材料13に含まれる溶媒や水分を蒸発させる。例えば、80℃~120℃に加熱したホットプレートの上に、ウェーハ11を60秒ほど載せて、ウェーハ11とともに液状の材料13を乾燥させる。これにより、ウェーハ11の第1面11aの全体を覆うレジスト膜15(図6参照)が形成される。ただし、液状の材料13を乾燥させる際の条件にも特段の制限はない。
【0044】
例えば、液状の材料13の供給を停止した状態で、スピンナテーブル26を回転させ続けることによって、ウェーハ11の第1面11aに塗布された液状の材料13を乾燥させることもできる。また、ホットプレートに代えて、オーブン(乾燥炉)、ヒーター、ランプ等を用いて液状の材料13を加熱し、乾燥させても良い。例えば、80℃~120℃に設定されたオーブンにウェーハ11を投入することで、液状の材料13を乾燥させることができる。この場合の加熱の時間は、例えば、10分~20分程度で良い。
【0045】
図6は、傾斜面11dが形成されたウェーハ11の一部と、このウェーハ11に形成されたレジスト膜15の一部と、を拡大した断面図である。図6に示すように、本実施形態では、ウェーハ11の第1面11a側の外周部に傾斜面11dが形成されているので、レジスト膜15となる液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布する際に、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かって流れる液状の材料13が傾斜面11dを伝ってウェーハ11の外部に排出され易くなる。
【0046】
つまり、ウェーハ11の外周部に液状の材料13が溜まり難くなるので、ウェーハ11の外周部でレジスト膜15が盛り上がる可能性を低く抑えられる。図7は、傾斜面が形成されていないウェーハ21の一部と、このウェーハ21に形成されたレジスト膜25の一部と、を拡大した断面図である。
【0047】
ウェーハ21は、傾斜面が形成されていない点を除いて、ウェーハ11と同じである。つまり、ウェーハ21は、第1面21aと、第1面21aとは反対側(背面側)の第2面21bと、を持つ円盤状に形成されている。また、第1面21aと第2面21bとは、面取り加工によって曲面状に整形された外周面21cによって互いに接続されている。
【0048】
このようなウェーハ21の第1面21a側にスピンコーティングでレジスト膜25を形成すると、図7に示すように、レジスト膜25が盛り上がった凸部25aがウェーハ21の外周部に形成される可能性が高い。傾斜面が形成されていないウェーハ21では、液状の材料13がウェーハ21の外周部に溜まりやすく、スピンナテーブル26を回転させる際にウェーハ21の外周部に生じる気流(乱気流)の影響によって、この外周部に溜まった液状の材料13が局所的に乾燥して凸部25aが形成されるものと推測される。
【0049】
以上のように、本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かうにつれて第2面11bに近づくように第1面11aに対して傾斜する傾斜面11dを第1面11a側の外周部に形成するので、レジスト膜15となる液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布する際に、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かって流れる液状の材料13が傾斜面11dを伝ってウェーハ11の外部に排出され易くなる。
【0050】
つまり、ウェーハ11の外周部に液状の材料13が溜まり難くなるので、ウェーハ11の回転に伴いウェーハ11の周囲に生じる気流(乱気流)等の影響によってウェーハ11に塗布された液状の材料13が局所的に乾燥し易い状況でも、ウェーハ11の外周部でレジスト膜15が盛り上がる可能性を低く抑えられる。
【0051】
(第2実施形態)
本実施形態では、上述した実施形態とは異なる方法でウェーハ11に傾斜面11dを形成するウェーハの加工方法について説明する。なお、ウェーハ11に傾斜面11dを形成する方法(加工ステップ)以外の部分は、上述した実施形態にかかるウェーハの加工方法と同じである。よって、以下では、主に相違点について説明する。
【0052】
図8は、本実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハ11に傾斜面11dが形成される様子を示す断面図である。なお、図8では、一部の構成要素が記号や機能ブロック等で表されている。
【0053】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、図8に示される加工装置42が用いられる。具体的には、ウェーハ11の第2面11b側を加工装置42のチャックテーブル4で保持し(保持ステップ)、その後、この加工装置42でウェーハ11に傾斜面11dを形成する(加工ステップ)。なお、加工装置42の一部の構成要素は、上述した加工装置2の一部の構成要素と同じである。よって、加工装置2と同じ構成要素には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、チャックテーブル4の上方には、切削ユニット(加工ユニット)54が配置されている。切削ユニット54は、例えば、ポーラス板8の上面8aに対して軸心のなす角度を変更できるように構成されたスピンドル56を備えている。スピンドル56の一端側には、砥粒をボンド材で結合して得られる砥石を含む切削ブレード(加工用の工具)58が装着されている。
【0055】
スピンドル56の他端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル56の一端側に装着された切削ブレード58は、この回転駆動源から伝わる動力によって回転する。切削ユニット54は、例えば、切削ユニット移動機構(不図示)に支持されており、この切削ユニット移動機構によって、ポーラス板8の上面8aに対して概ね平行でチャックテーブル4が移動する第1方向に対して概ね垂直な第2方向と、第1方向及び第2方向に対して概ね垂直な第3方向と、に移動する。
【0056】
切削ブレード58は、例えば、円形の外周縁を持つ第1側面58aと、第1側面58aと同じ径の円形の外周縁を持ち第1側面58aとは反対側(背面側)に位置する第2側面58bと、を含む円盤状に形成されている。第1側面58aの外周縁と第2側面58bの外周縁とは、外周面58cによって互いに接続されている。また、少なくとも外周面58cは、ダイヤモンド等の砥粒が樹脂等のボンド材で結合された砥石によって構成されている。
【0057】
この切削ブレード58は、第1側面58aと第2側面58bとがスピンドル56の軸心に対して概ね垂直になるように、スピンドル56の一端側に装着される。なお、切削ブレード58の幅(第1側面58aと第2側面58bとの距離)は、希望する傾斜面11dの幅に合わせて任意に設定される。例えば、幅が0.5mm以上3.0mm以下、代表的には、1mmの切削ブレード58を用いることで、十分な幅を持つ傾斜面11dを容易に形成できる。
【0058】
ウェーハ11に傾斜面11dを形成する際には、図8に示すように、回転軸となるスピンドル56をポーラス板8の上面8aに対して傾ける。すなわち、ウェーハ11の第1面11a及び第2面11bに対してスピンドル56を傾ける。その後、切削ブレード58を回転させながら、ウェーハ11の第1面11aと外周面11cとの境界を含む外周部に切削ブレード58を切り込ませる。そして、その状態で、チャックテーブル4を1回転させる。
【0059】
なお、ここでは、ウェーハ11の外周縁側に第1側面58aを配置し、ウェーハ11の中央側に第2側面58bを配置して、第1側面58aの下端の高さが、第2側面58bの下端の高さより低くなるように、スピンドル56を傾けている。ただし、ウェーハ11の外周縁側に第2側面58bを配置し、ウェーハ11の中央側に第1側面58aを配置する場合には、第2側面58bの下端の高さが、第1側面58aの下端の高さより低くなるように、スピンドル56を傾けることになる。
【0060】
また、ウェーハ11に対して切削ブレード58を切り込ませる際の切削ユニット54の高さは、切削ブレード58の外周面58cのみがウェーハ11に接触する範囲内で調整される。具体的には、例えば、切削ブレード58の第1側面58aの下端の高さがウェーハ11の第1面11aの高さ未満となり、第2側面58bの下端の高さが第1面11aの高さ以上となるように、切削ユニット54の高さが調整される。
【0061】
これにより、ウェーハ11の第1面11a側の外周部に切削ブレード58を切り込ませて、第1面11aに対して高低差なく接続された傾斜面11dを形成できる。このように形成される傾斜面11dは、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かうにつれて第2面11bに近づくように第1面11aに対して傾斜している。
【0062】
すなわち、傾斜面11dの高さは、第1面11a側(ウェーハ11の内側)より外周面11c側(ウェーハ11の外側)で低くなっている。また、傾斜面11dが形成された外周部でのウェーハ11の厚みは、第1面11a側に比べて外周面11c側で薄くなっている。
【0063】
なお、第1面11aと傾斜面11dとのなす角度θや、傾斜面11dの幅W(ウェーハ11の径方向に沿った傾斜面11dの長さ)は、上述した実施形態と同じで良い。ウェーハ11に傾斜面11dを形成した後には、液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布して、ウェーハ11の第1面11a側にレジスト膜15を形成する(レジスト膜形成ステップ)。
【0064】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法でも、ウェーハ11の外周部に傾斜面11dを形成するので、レジスト膜15となる液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布する際に、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かって流れる液状の材料13が傾斜面11dを伝ってウェーハ11の外部に排出され易くなる。
【0065】
つまり、ウェーハ11の外周部に液状の材料13が溜まり難くなるので、ウェーハ11の回転に伴いウェーハ11の周囲に生じる気流(乱気流)等の影響によってウェーハ11に塗布された液状の材料13が局所的に乾燥し易い状況でも、ウェーハ11の外周部でレジスト膜15が盛り上がる可能性を低く抑えられる。
【0066】
(第3実施形態)
本実施形態では、上述した実施形態とは異なる方法でウェーハ11に傾斜面11dを形成するウェーハの加工方法について説明する。なお、ウェーハ11に傾斜面11dを形成する方法(加工ステップ)以外の部分は、上述した実施形態にかかるウェーハの加工方法と同じである。よって、以下では、主に相違点について説明する。
【0067】
図9は、本実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハ11に傾斜面11dが形成される様子を示す断面図である。なお、図9では、一部の構成要素が記号や機能ブロック等で表されている。
【0068】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、図9に示される加工装置62が用いられる。具体的には、ウェーハ11の第2面11b側を加工装置62のチャックテーブル4で保持し(保持ステップ)、その後、この加工装置62でウェーハ11に傾斜面11dを形成する(加工ステップ)。なお、加工装置62の一部の構成要素は、上述した加工装置2等の一部の構成要素と同じである。よって、加工装置2等と同じ構成要素には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0069】
図9に示すように、チャックテーブル4の上方には、研削ユニット(加工ユニット)64が配置されている。研削ユニット64は、例えば、ポーラス板8の上面8aに対して概ね垂直な軸心を持つスピンドル66を備えている。スピンドル66の下端部には、円盤状のマウンター68が固定されている。
【0070】
マウンター68の下面には、このマウンター68と概ね径が等しい環状の研削ホイール(加工用の工具)70が装着されている。研削ホイール70は、ステンレスやアルミニウム等の材料を用いて形成された環状のホイール基台72を備えている。ホイール基台72の下面には、ダイヤモンド等の砥粒を樹脂等のボンド材で結合して得られる複数の砥石74が固定されている。
【0071】
スピンドル66の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、マウンター68を介してスピンドル66の下端部に装着された研削ホイール70は、この回転駆動源から伝わる動力によって回転する。研削ユニット64は、例えば、昇降機構(不図示)に支持されており、この昇降機構によって、ポーラス板8の上面8aに対して概ね垂直な方向に移動する。
【0072】
ウェーハ11に傾斜面11dを形成する際には、まず、チャックテーブル4と研削ユニット64とを相対的に移動させて、このチャックテーブル4に保持されたウェーハ11の第1面11aと外周面11cとの境界を含む外周部の上方に研削ホイール70の端部を位置付ける。
【0073】
そして、図9に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール70とをそれぞれ回転させながら、研削ユニット64を下降させる。また、少なくとも研削ホイール70の砥石74がウェーハ11に接触した後には、研削ユニット64から離れる方向にチャックテーブル4を移動させる。つまり、ウェーハ11に対して研削ホイール70を図9の矢印で示す向き(ウェーハ11の中央側から外周縁側へと向かう向き)に移動させる。
【0074】
これにより、ウェーハ11の第1面11a側の外周部を研削ホイール70の砥石74で研削して、第1面11aに対して高低差なく接続された傾斜面11dを形成できる。このように形成される傾斜面11dは、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かうにつれて第2面11bに近づくように第1面11aに対して傾斜している。
【0075】
すなわち、この傾斜面11dの高さは、第1面11a側(ウェーハ11の内側)より外周面11c側(ウェーハ11の外側)で低くなっている。また、この傾斜面11dが形成された外周部でのウェーハ11の厚みは、第1面11a側に比べて外周面11c側で薄くなっている。
【0076】
なお、第1面11aと傾斜面11dとのなす角度θや、傾斜面11dの幅W(ウェーハ11の径方向に沿った傾斜面11dの長さ)は、上述した実施形態と同じで良い。ウェーハ11に傾斜面11dを形成した後には、液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布して、ウェーハ11の第1面11a側にレジスト膜を形成する(レジスト膜形成ステップ)。
【0077】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法でも、ウェーハ11の外周部に傾斜面11dを形成するので、レジスト膜15となる液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布する際に、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かって流れる液状の材料13が傾斜面11dを伝ってウェーハ11の外部に排出され易くなる。
【0078】
つまり、ウェーハ11の外周部に液状の材料13が溜まり難くなるので、ウェーハ11の回転に伴いウェーハ11の周囲に生じる気流(乱気流)等の影響によってウェーハ11に塗布された液状の材料13が局所的に乾燥し易い状況でも、ウェーハ11の外周部でレジスト膜15が盛り上がる可能性を低く抑えられる。
【0079】
(第4実施形態)
本実施形態では、上述した実施形態とは異なる方法でウェーハ11に傾斜面11dを形成するウェーハの加工方法について説明する。なお、ウェーハ11に傾斜面11dを形成する方法(加工ステップ)以外の部分は、上述した実施形態にかかるウェーハの加工方法と同じである。よって、以下では、主に相違点について説明する。
【0080】
図10は、本実施形態にかかるウェーハの加工方法でウェーハ11に傾斜面11dが形成される様子を示す断面図である。なお、図10では、一部の構成要素が記号や機能ブロック等で表されている。
【0081】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、図10に示される加工装置82が用いられる。具体的には、ウェーハ11の第2面11b側を加工装置82のチャックテーブル4で保持し(保持ステップ)、その後、この加工装置82でウェーハ11に傾斜面11dを形成する(加工ステップ)。なお、加工装置82の一部の構成要素は、上述した加工装置2等の一部の構成要素と同じである。よって、加工装置2等と同じ構成要素には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0082】
図10に示すように、チャックテーブル4の上方には、研削ユニット(加工ユニット)84が配置されている。研削ユニット84は、例えば、ポーラス板8の上面8aに対して軸心のなす角度を変更できるように構成されたスピンドル86を備えている。スピンドル86の下端部には、円盤状のマウンター88が固定されている。
【0083】
マウンター88の下面には、このマウンター88と概ね径が等しい環状の研削ホイール(加工用の工具)90が装着されている。研削ホイール90は、ステンレスやアルミニウム等の材料を用いて形成された環状のホイール基台92を備えている。ホイール基台92の下面には、ダイヤモンド等の砥粒を樹脂等のボンド材で結合して得られる複数の砥石94が固定されている。
【0084】
スピンドル86の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、マウンター88を介してスピンドル86の下端部に装着された研削ホイール90は、この回転駆動源から伝わる動力によって回転する。研削ユニット84は、例えば、昇降機構(不図示)に支持されており、この昇降機構によって、ポーラス板8の上面8aに対して概ね垂直な方向に移動する。
【0085】
ウェーハ11に傾斜面11dを形成する際には、まず、図10に示すように、回転軸となるスピンドル86をポーラス板8の上面8aに対して傾ける。すなわち、ウェーハ11の第1面11a及び第2面11bに対してスピンドル86を傾ける。その後、チャックテーブル4と研削ユニット84とを相対的に移動させて、このチャックテーブル4に保持されたウェーハ11の第1面11aと外周面11cとの境界を含む外周部の上方に研削ホイール90を位置付ける。
【0086】
そして、図10に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール90とをそれぞれ回転させながら、研削ユニット84を下降させて、研削ホイール90の砥石94をウェーハ11の外周部に接触させる。なお、ここでは、ウェーハ11に接触する砥石94の下面の高さが、ウェーハ11の中央側より外周縁側で低くなるように、スピンドル56を傾けている。
【0087】
これにより、ウェーハ11の第1面11a側の外周部を研削ホイール90の砥石94で研削して、第1面11aに対して高低差なく接続された傾斜面11dを形成できる。このように形成される傾斜面11dは、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かうにつれて第2面11bに近づくように第1面11aに対して傾斜している。
【0088】
すなわち、この傾斜面11dの高さは、第1面11a側(ウェーハ11の内側)より外周面11c側(ウェーハ11の外側)で低くなっている。また、この傾斜面11dが形成された外周部でのウェーハ11の厚みは、第1面11a側に比べて外周面11c側で薄くなっている。
【0089】
なお、第1面11aと傾斜面11dとのなす角度θや、傾斜面11dの幅W(ウェーハ11の径方向に沿った傾斜面11dの長さ)は、上述した実施形態と同じで良い。ウェーハ11に傾斜面11dを形成した後には、液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布して、ウェーハ11の第1面11a側にレジスト膜を形成する(レジスト膜形成ステップ)。
【0090】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法でも、ウェーハ11の外周部に傾斜面11dを形成するので、レジスト膜15となる液状の材料13をスピンコーティングでウェーハ11の第1面11aに塗布する際に、ウェーハ11の中央側から外周縁側に向かって流れる液状の材料13が傾斜面11dを伝ってウェーハ11の外部に排出され易くなる。
【0091】
つまり、ウェーハ11の外周部に液状の材料13が溜まり難くなるので、ウェーハ11の回転に伴いウェーハ11の周囲に生じる気流(乱気流)等の影響によってウェーハ11に塗布された液状の材料13が局所的に乾燥し易い状況でも、ウェーハ11の外周部でレジスト膜15が盛り上がる可能性を低く抑えられる。
【0092】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した各実施形態にかかるウェーハの加工方法には、2種類の装置(加工装置2等とスピンコーター22)が用いられているが、本発明にかかるウェーハの加工方法には、加工装置2等の機能とスピンコーター22の機能とを併せ備える1台の複合的な装置が用いられても良い。
【0093】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施できる。
【符号の説明】
【0094】
11 :ウェーハ
11a :第1面
11b :第2面
11c :外周面
11d :傾斜面
13 :液状の材料
15 :レジスト膜
21 :ウェーハ
21a :第1面
21b :第2面
21c :外周面
25 :レジスト膜
25a :凸部
2 :加工装置
4 :チャックテーブル(保持テーブル)
6 :枠体
6a :流路
8 :ポーラス板
8a :上面(保持面)
10 :バルブ
12 :吸引源
14 :切削ユニット(加工ユニット)
16 :スピンドル
18 :切削ブレード(加工用の工具)
18a :第1側面
18b :第2側面
18c :外周面
22 :スピンコーター
24 :収容部
24a :空間
26 :スピンナテーブル
26a :上面(保持面)
28 :スピンドル
30 :回転駆動源
32 :ノズル
34 :回転駆動源
42 :加工装置
54 :切削ユニット(加工ユニット)
56 :スピンドル
58 :切削ブレード(加工用の工具)
58a :第1側面
58b :第2側面
58c :外周面
62 :加工装置
64 :研削ユニット(加工ユニット)
66 :スピンドル
68 :マウンター
70 :研削ホイール(加工用の工具)
72 :ホイール基台
74 :砥石
82 :加工装置
84 :研削ユニット(加工ユニット)
86 :スピンドル
88 :マウンター
90 :研削ホイール(加工用の工具)
92 :ホイール基台
94 :砥石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10