(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】計測装置及び加工装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20250210BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20250210BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250210BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20250210BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01C3/06 120P
H01L21/304 622S
B23Q17/20 A
G01B11/06 Z
(21)【出願番号】P 2021047253
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】川澄 健人
(72)【発明者】
【氏名】木村 展之
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017552(JP,A)
【文献】特表2016-521854(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110837(WO,A1)
【文献】特開2018-066693(JP,A)
【文献】特開2001-021324(JP,A)
【文献】特開2008-268121(JP,A)
【文献】特開2014-178287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01C 3/06
H01L 21/304
B23Q 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットで保持された該被測定物の高さ又は厚さを計測可能な計測ユニットと、を有する計測装置であって、
該計測ユニットは、
所定の波長帯域の光を発する光源部と、
該光源部が発した光を伝送する第1の光ファイバーと、
該第1の光ファイバーによって伝送された光を少なくとも2つの測定用光ファイバーへと分岐する分岐部と、
該分岐部で分岐された光を該被測定物に集光させる集光器をそれぞれ含む複数のヘッド部を有するヘッドユニットと、
該第1の光ファイバーに対して該分岐部で分岐されており、該被測定物で反射された各該測定用光ファイバーからの戻り光を伝送する第2の光ファイバーと、
該第2の光ファイバーによって伝送された各測定用光ファイバーからの戻り光を分光する分光器と、該分光器で分光された光を受光する受光部と、を有する分光ユニットと、
を有し、
該計測装置は、
該受光部で受光された各ヘッド部からの戻り光の波長の差異
が反映された、波長及び受光信号の強度のグラフにおける戻り光の重なりの程度に基づいて、各集光器から該被測定物に照射された光の集光点における該被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価する評価部を更に備えることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
被測定物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットで保持された該被測定物の高さ又は厚さを計測可能な計測ユニットと、を有する計測装置と、
スピンドルを有し、該スピンドルの下端部に装着され該被測定物を加工する加工工具を有する加工ユニットと、
プロセッサを有し、該計測装置及び該加工ユニットの動作を制御する制御部と、
を備え、
該計測ユニットは、
所定の波長帯域の光を発する光源部と、
該光源部が発した光を伝送する第1の光ファイバーと、
該第1の光ファイバーによって伝送された光を少なくとも2つの測定用光ファイバーへと分岐する分岐部と、
該分岐部で分岐された光を該被測定物に集光させる集光器をそれぞれ含む複数のヘッド部を有するヘッドユニットと、
該第1の光ファイバーに対して該分岐部で分岐されており、該被測定物で反射された各該測定用光ファイバーからの戻り光を伝送する第2の光ファイバーと、
該第2の光ファイバーによって伝送された各測定用光ファイバーからの戻り光を分光する分光器と、該分光器で分光された光を受光する受光部と、を有する分光ユニットと、
を有し、
該制御部は、該受光部で受光された各ヘッド部からの戻り光の波長の差異
が反映された、波長及び受光信号の強度のグラフにおける戻り光の重なりの程度に基づいて、各集光器から該被測定物に照射された光の集光点における該被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価する評価部を有し、
該制御部は、該被測定物を該加工工具で加工しながら該被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価することを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の高さ又は厚さを計測可能な計測装置と、当該計測装置を備える加工装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
表面側にデバイスが形成された半導体ウェーハは、切削装置、レーザー加工装置等の加工装置によって個々のデバイスチップに分割される前に、半導体ウェーハの裏面側が研削装置によって研削され、所定の厚さに薄化される。
【0003】
薄化された半導体ウェーハの厚さは、例えば、分光干渉式の計測装置によって測定される(例えば、特許文献1参照)。半導体ウェーハの厚さを計測する計測装置としては、この他にも、1×2型の光ファイバーカプラを用いて光源からの光を被測定物の上面へ集光させ、当該上面からの反射光を分光する装置も存在する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、1×2型の光ファイバーカプラを用いると、光ファイバーの終端部で戻り光の略半分が失われてしまう。そこで、戻り光のロスを低減するために、2×2型の光ファイバーカプラを用いて、被測定物の厚さを測定する計測装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
特許文献3に記載の計測装置では、2×2型の光ファイバーカプラを用いて光源からの光を2つのヘッド部に分岐させると共に、各ヘッド部からの戻り光を、1つの分光器で分光した後に1つの撮像素子で受光する。
【0006】
但し、戻り光とヘッド部との対応関係を特定するために、第1のヘッド部には所定の波長帯域の光を透過させる第1の光学フィルタが配置され、第2のヘッド部には所定の波長帯域とは異なる波長帯域の光を透過させる第2の光学フィルタが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-122894号公報
【文献】国際公開第2015/199054号
【文献】特開2014-178287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この様に、ヘッド部毎に異なる透過波長帯域の光学フィルタを配置すると、ヘッド部の数が増えるにつれて、各ヘッド部における波長の測定レンジが狭くなるという問題がある。
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、1つのヘッド部当たりの測定波長帯域を狭めることなく、且つ、2つ以上のヘッド部を用いて二点以上の多点で、被測定物の上面の高さ等を計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、被測定物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットで保持された該被測定物の高さ又は厚さを計測可能な計測ユニットと、を有する計測装置であって、該計測ユニットは、所定の波長帯域の光を発する光源部と、該光源部が発した光を伝送する第1の光ファイバーと、該第1の光ファイバーによって伝送された光を少なくとも2つの測定用光ファイバーへと分岐する分岐部と、該分岐部で分岐された光を該被測定物に集光させる集光器をそれぞれ含む複数のヘッド部を有するヘッドユニットと、該第1の光ファイバーに対して該分岐部で分岐されており、該被測定物で反射された各該測定用光ファイバーからの戻り光を伝送する第2の光ファイバーと、該第2の光ファイバーによって伝送された各測定用光ファイバーからの戻り光を分光する分光器と、該分光器で分光された光を受光する受光部と、を有する分光ユニットと、を有し、該計測装置は、該受光部で受光された各ヘッド部からの戻り光の波長の差異が反映された、波長及び受光信号の強度のグラフにおける戻り光の重なりの程度に基づいて、各集光器から該被測定物に照射された光の集光点における該被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価する評価部を更に備える計測装置が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、被測定物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットで保持された該被測定物の高さ又は厚さを計測可能な計測ユニットと、を有する計測装置と、スピンドルを有し、該スピンドルの下端部に装着され該被測定物を加工する加工工具を有する加工ユニットと、プロセッサを有し、該計測装置及び該加工ユニットの動作を制御する制御部と、を備え、該計測ユニットは、所定の波長帯域の光を発する光源部と、該光源部が発した光を伝送する第1の光ファイバーと、該第1の光ファイバーによって伝送された光を少なくとも2つの測定用光ファイバーへと分岐する分岐部と、該分岐部で分岐された光を該被測定物に集光させる集光器をそれぞれ含む複数のヘッド部を有するヘッドユニットと、該第1の光ファイバーに対して該分岐部で分岐されており、該被測定物で反射された各該測定用光ファイバーからの戻り光を伝送する第2の光ファイバーと、該第2の光ファイバーによって伝送された各測定用光ファイバーからの戻り光を分光する分光器と、該分光器で分光された光を受光する受光部と、を有する分光ユニットと、を有し、該制御部は、該受光部で受光された各ヘッド部からの戻り光の波長の差異が反映された、波長及び受光信号の強度のグラフにおける戻り光の重なりの程度に基づいて、各集光器から該被測定物に照射された光の集光点における該被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価する評価部を有し、該制御部は、該被測定物を該加工工具で加工しながら該被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価する加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る計測装置では、各測定用光ファイバーからの戻り光を分光ユニットで分光する。各戻り光のピーク波長が互いに離れている場合は、受光信号に複数の山が形成されるが、ピーク波長が互いに接近するにつれて受光信号の山は1つになる。
【0013】
計測装置の評価部は、各ヘッド部からの戻り光の波長(ピーク波長)の差異に基づいて形成される受光信号から、被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価する。それゆえ、各ヘッド部に異なる透過波長帯域の光学フィルタを設けることなく、二点以上の多点で、被測定物の高さ又は厚さのばらつきを評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図3(A)は受光信号の一例を示す図であり、
図3(B)は受光信号の他の例を示す図である。
【
図4】補助記憶装置に予め記憶された複数の信号波形を示す図である。
【
図6】
図6(A)はチャックテーブル及び研磨パッドの一部断面側面図であり、
図6(B)は集光点と研磨パッドとの位置関係の一例を示す図である。
【
図7】
図7(A)は研磨前の受光信号の一例を示す図であり、
図7(B)は研磨後の受光信号の一例を示す図である。
【
図8】研磨領域の調整前後での被測定物と集光点の各位置とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る計測装置2の概要図である。
図1では、計測装置2の構成要素のいくつかを機能ブロックで示す。なお、
図1に示すZ軸方向は、鉛直方向であり、それぞれZ軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向は、水平方向を構成する。
【0016】
計測装置2は、被測定物11の上面11aの高さや、被測定物11の厚さ11cを計測する。計測装置2は、例えば、加工装置(研磨装置、研削装置等)に搭載される。但し、本実施形態の計測装置2は、加工装置の付属物ではなく、加工装置とは別個独立の装置である。
【0017】
計測装置2は、チャックテーブル(保持ユニット)4を有する。チャックテーブル4の下部には、チャックテーブル4を所定方向に回転させるモーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル4は、円板状の枠体を有する。
【0018】
枠体の下部には、エジェクタ等の吸引源(不図示)で発生させた負圧をポーラス板に作用させるための流路(不図示)が形成されている。枠体の上部には、円板状の凹部が形成されており、この凹部には円板状のポーラス板(不図示)が固定されている。
【0019】
ポーラス板の上面と、枠体の上面とは、略面一であり、略平坦な保持面4aを構成している。保持面4aは、被測定物11の下面11b側を吸引保持する。被測定物11は、例えばシリコンウェーハである。
【0020】
被測定物11の下面11b側が保持面4aで吸引保持されると、下面11bとは反対側に位置する上面11aが、上方に露出する。上面11aには、計測ユニット6の各ヘッド部18a、18b(詳しくは後述する)から測定光13が照射される。
【0021】
計測ユニット6は、光源部8を有する。本実施形態の光源部8は、励起光源(不図示)を含む。励起光源は、例えば、青色(例えば、波長λ=450nm)の光を発するレーザーダイオード(Laser Diode:LD)を有する。
【0022】
励起光は、レンズ、プリズム等の所定の光学系を経て、蛍光体へ照射される。蛍光体は、例えば、YAG:Ce系蛍光体(一例において、((Y,Gd)3Al5O12:Ce))であり、励起光を吸収し、緑、黄色、赤色等の光を含む所定の波長帯域(例えば、500nmから700nm)の光を発する。
【0023】
蛍光体から生じた光は、光源部8の集光レンズ(不図示)を経て、2×2型の光ファイバーカプラ10の第1のポートに対応する第1の光ファイバー12の一端部へ集光され、測定光13として第1の光ファイバー12によって分岐部14へ伝送される。
【0024】
光ファイバーカプラ10は、例えば、2本の光ファイバーの一部を融着延伸することで形成されている。分岐部14に対して第1の光ファイバー12の反対側には、光ファイバーカプラ10の第3のポート、第4のポートを構成する2つの測定用光ファイバー16a、16bが設けられている。
【0025】
光源部8からの所定の波長帯域の光は、分岐部14から2つの測定用光ファイバー16a、16bへ、例えば、50:50の比率で、分岐される。測定用光ファイバー16aは、ヘッド部18aに接続されている。
【0026】
ヘッド部18aは、その内部に集光器20aを有する。本実施形態の集光器20aは、色収差レンズを有する。集光器20aの軸上色収差により、集光器20aを通過した光の集光点13aの高さ位置は、光の波長に応じて変化する。
【0027】
具体的には、長波長成分ほど、集光器20aから離れた位置で集光し、短波長成分ほど、集光器20aに近い位置で集光する。なお、集光器20aは、色収差レンズに代えて、回折光学素子及び集光レンズを有してもよい。この場合、長波長成分ほど、集光器20aに近い位置で集光し、短波長成分ほど、集光器20aから離れた位置で集光する。
【0028】
集光器20aから被測定物11へ照射された測定光13の一部は、上面11aで反射された後、戻り光15として、再度、集光器20aを経て測定用光ファイバー16aへ戻る。戻り光15の波長は、集光器20aから被測定物11の上面11aまでの距離に対応する。
【0029】
なお、測定用光ファイバー16aには、上面11aで集光した波長成分が主として通過し、上面11aで集光しなかった波長成分は、測定用光ファイバー16aによりほぼ遮られる。この様に、ヘッド部18aでは、共焦点光学系が構成されている。
【0030】
但し、共焦点光学系が構成されていれば、ヘッド部18aの構成は、
図1に示す形態に限定されない。例えば、集光器20aと測定用光ファイバー16aとの間に、追加の集光レンズを設けてもよい。
【0031】
測定用光ファイバー16bは、ヘッド部18bに接続されている。なお、本明細書では、ヘッド部18a及びヘッド部18bを合わせて、ヘッドユニット18と称する。ヘッド部18bも、同様に、色収差レンズを含む集光器20bを有し、測定用光ファイバー16bと共に、共焦点光学系を構成している。
【0032】
集光器20bの軸上色収差により、集光器20bを通過した光の集光点13bの高さ位置は、波長に応じて変化する。集光器20bから被測定物11へ照射された測定光13の一部も、同様に、上面11aで反射された後、戻り光15として、集光器20bを経て測定用光ファイバー16bへ戻る。
【0033】
戻り光15の波長は、集光器20bから被測定物11の上面11aまでの距離に対応している。なお、集光器20bは、集光器20aと略同じ高さ位置に配置されており、その光軸は、集光器20aと同様に、Z軸方向に略平行に配置されている。
【0034】
測定用光ファイバー16a又は16bを通過する戻り光15は、分岐部14を経て、光ファイバーカプラ10の第2のポートを構成する第2の光ファイバー22へ伝送される。第2の光ファイバー22は、第1の光ファイバー12に対して分岐部14で分岐されている。
【0035】
第2の光ファイバー22の一端部には、分光ユニット24が接続されている。
図2は、分光ユニット24の概要図である。分光ユニット24は、戻り光15を略平行光にするコリメートレンズ26を有する。
【0036】
コリメートレンズ26を通過した戻り光15は、回折格子28により反射され、集光レンズ30を経て、受光部32の受光領域32aで受光される。受光部32は、複数の光電変換素子を有する、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)等のイメージセンサを有する。
【0037】
図2に示す様に、本実施形態の受光部32は、二次元イメージセンサを有するが、受光部32は、一次元イメージセンサ(リニアイメージセンサ、ラインセンサ等とも呼ばれる)を有してもよい。また、回折格子28に代えて、プリズム等の分散型分光器を用いてもよい。
【0038】
受光部32で生成された受光信号は、計測装置2を制御する制御部34へ入力される。制御部34は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリー等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0039】
補助記憶装置に記憶されたソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部34の機能が実現される。制御部34は、分光ユニット24から出力される受光信号に対して所定の評価を行う評価部36を有する。
【0040】
評価部36の機能は、例えば、補助記憶装置に記憶されたプログラムにより実現される。但し、評価部36の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)により実現されてもよい。
【0041】
ここで、受光信号及びその評価方法について説明する。
図3(A)は、各ヘッド部18a、18bからの受光信号の一例を示す図であり、
図3(B)は、各ヘッド部18a、18bからの受光信号の他の例を示す図である。
図3(A)及び
図3(B)において、横軸は光の波長λ(nm)の大きさを示し、縦軸は受光信号の強度を示す。
【0042】
図3(A)に示す様に、ヘッド部18aからの戻り光15A
1のピーク波長λ
1と、ヘッド部18bからの戻り光15A
2のピーク波長λ
2と、の波長の差異d
1が十分に大きい場合、各戻り光15A
1、15A
2はほぼ個別に測定される。
【0043】
この場合、上面11aで集光する測定光13の波長が、各ヘッド部18a、18bにおいて異なっている。つまり、ヘッド部18a直下の上面11aの高さと、ヘッド部18b直下の上面11aの高さと、の差異が、比較的大きいことを意味している。
【0044】
これに対して、
図3(B)に示す様に、ヘッド部18aからの戻り光15A
3(破線)のピーク波長λ
3と、ヘッド部18bからの戻り光15A
4(破線)のピーク波長λ
4との波長の差異d
2が差異d
1に比べて小さい場合、各戻り光15A
3、15A
4は、重ね合わされた戻り光15A
5(ピーク波長λ
5)として測定される。
【0045】
戻り光15A
5は、ヘッド部18a直下の上面11aの高さと、ヘッド部18b直下の上面11aの高さとが、若干異なるが、上面11aにおける高さの差異が、
図3(A)に比べて小さいことを意味している。
【0046】
この様に、分光ユニット24において測定される受光信号では、各集光点13a、13bにおける上面11aの高さばらつきが、各戻り光15のピーク波長の差異を反映した各戻り光15の重なりの程度として測定される。
【0047】
上述の評価部36は、受光信号と、補助記憶装置に予め記憶された複数の信号波形とを、比較することで、受光信号を評価する。
図4は、補助記憶装置に予め記憶された5つの信号波形B
1からB
5を示す図である。
図4において、横軸は、信号波形B
1のピーク波長を基準とした相対的な波長を示し、縦軸は、信号の強度を示す。
【0048】
信号波形B1は、ピーク波長が互いに一致する2つの戻り光15の重ね合わせで構成されている。信号波形B1は、所定のピーク強度C、及び、所定の半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)αを有する。
【0049】
信号波形B2は、ピーク波長の差異が0.25αである2つの戻り光15の重ね合わせで構成されており、信号波形B1に比べて小さいピーク強度を有する。
【0050】
信号波形B3は、ピーク波長の差異が0.5αである2つの戻り光15の重ね合わせで構成されており、信号波形B2に比べて小さいピーク強度を有する。
【0051】
信号波形B4は、ピーク波長の差異がαである2つの戻り光15の重ね合わせで構成されており、信号波形B3に比べて小さいピーク強度を有する。なお、信号波形B4のピークの頂部は、信号波形B1から信号波形B3と比較して、広い範囲で略平坦である。
【0052】
信号波形B5は、ピーク波長の差異が1.5αである2つの戻り光15の重ね合わせで構成されており、信号波形B4に比べて小さいピーク強度を有する。なお、ピーク波長の差異が比較的大きいので、信号波形B5では、2つの山と、その間に位置する谷とが、形成されている。
【0053】
評価部36は、5つの信号波形B1からB5と、受光信号との、形状及び強度を比較することで、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15の波長の差異(即ち、重なりの程度)を評価する。これにより、各集光点13a、13bにおける上面11aの高さばらつきを評価する。
【0054】
例えば、受光信号が、信号波形B5に示す二つの山のピーク間隔以上のピーク間隔を有する場合、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15のピーク波長の差異は比較的大きい(即ち、戻り光15の重なりは比較的小さい)。この場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、比較的大きなレベル6と評価する。
【0055】
また、受光信号が、信号波形B5に示す二つの山のピーク間隔よりは小さいが、信号波形B4に示すような略平坦なピーク強度を有しない場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、レベル6よりもばらつきが小さいレベル5と評価する。
【0056】
受光信号が、信号波形B4に示す様な略平坦なピーク強度を有する場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、レベル5よりもばらつきが小さいレベル4と評価する。
【0057】
受光信号が、信号波形B4に示す様な略平坦なピーク強度を有さず、1つの山を有するが、信号波形B4より大きく信号波形B3よりも小さいピーク強度を有する場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、レベル4よりもばらつきが小さいレベル3と評価する。
【0058】
受光信号が、信号波形B3以上、且つ、信号波形B2よりも小さいピーク強度を有する場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、レベル3よりもばらつきが小さいレベル2と評価する。
【0059】
受光信号が、信号波形B2以上、且つ、信号波形B1よりも小さいピーク強度を有する場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、レベル2よりもばらつきが小さいレベル1と評価する。
【0060】
受光信号が、信号波形B1に示すピーク強度に一致する場合、評価部36は、上面11aの高さばらつきを、最もばらつきが小さいレベル0と評価する。上述の評価方法を表1に記載する。
【0061】
【0062】
この様に、本実施形態では、評価部36が、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15のピーク波長の差異に基づいて形成される受光信号から、被測定物11の高さのばらつきを評価できる。それゆえ、各ヘッド部18a、18bに異なる透過波長帯域の光学フィルタを設けることなく、二点以上の多点で、被測定物11の上面11aの高さのばらつきを評価できる。
【0063】
計測装置2を用いて、上面11aの高さのばらつきを評価する場合、ヘッド部18a、18bの各集光点13a、13bを、上面視で保持面4aの半径上に配置する。そして、被測定物11の下面11b側を保持したチャックテーブル4を所定の回転軸の周りに、所定の速度(例えば、300rpm)で回転させる。
【0064】
制御部34は、分光ユニット24から受光信号を所定の時間間隔で受信すると共に、受信したデータを補助記憶装置に記憶させる。評価部36は、補助記憶装置に記憶されたデータに基づいて、上面11aの高さのばらつきを評価する。
【0065】
なお、本実施形態では、ヘッド部18a、18bから上面11aまでの距離を、保持面4aを基準とする上面11aの高さとしているが、上面11aの高さと、保持面4a(即ち、下面11b)の高さと、の差分を計算すれば、被測定物11の厚さ11cを測定できる。
【0066】
また、第1の実施形態では、2つのヘッド部18a、18bを有する例を説明したが、計測ユニット6は、3つ以上のヘッド部を有してもよい。この場合、補助記憶装置には、それぞれ3つの戻り光15が重ね合わされた複数の信号波形が予め記憶される。
【0067】
ところで、上述の説明では、複数の信号波形が補助記憶装置に予め記憶されている例を説明したが、複数の信号波形に代えて、シミュレーションにより算出された予測値や、実測値に基づいて決定された、ピーク波長、半値全幅α等の所定のパラメータの数値が、補助記憶装置に予め記憶されてもよい。
【0068】
この場合、評価部36は、受光信号のピーク波長や半値全幅α等の所定のパラメータを、予め記憶されたパラメータの数値と比較することで、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15の波長の差異(即ち、重なりの程度)を評価する。これにより、各集光点13a、13bにおける上面11aの高さばらつきを評価する。
【0069】
なお、制御部34には、モニター等の表示装置(不図示)が接続されてもよい。例えば、モニターには、上面11aのアウトラインと、上面11aの各測定点の高さを示す情報とが、表示される。各測定点の高さを示す情報を色分けして表示すれば、上面11aの凹凸を視覚的に把握することもできる。
【0070】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、計測ユニット6を有する計測装置2が搭載された研磨装置(加工装置)40により、被測定物11を研磨(加工)する。
図5は、研磨装置40の斜視図である。
【0071】
研磨装置40は、各構成要素を支持する基台42を備える。基台42の前方(X軸方向の一方)の上部には、被測定物(被加工物)11を収容するカセット44が配置されている。基台42の前方の上部に配置された搬送ロボット46は、カセット44から被測定物11を取り出し、カセット44の後方に配置された位置決めユニット48に搬送する。
【0072】
位置決めユニット48の後方にはX軸方向に長手部を有する開口42aが形成されている。開口42aには、X軸方向に沿って移動可能な移動テーブル50が配置されている。移動テーブル50上には、チャックテーブル(保持ユニット)52が設けられている。
【0073】
チャックテーブル52の構造は、上述のチャックテーブル4と略同じであるが、チャックテーブル52の保持面52aは、中心部が外周部に対して僅かに突出した円錐形状を有する(
図6(A)参照)。
【0074】
チャックテーブル52は、保持面52aの一部がX-Y平面と略平行になる様に、その回転軸がZ軸方向に対して所定角度だけ傾いている。チャックテーブル52の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0075】
回転駆動源の下部には、チャックテーブル52、回転駆動源、移動テーブル50等をX軸方向に沿って移動させるボールねじ式のX軸移動機構(不図示)が設けられている。チャックテーブル52は、X軸移動機構により、前方側の搬入搬出位置54aと、後方側の加工位置54bと、の間で移動する。
【0076】
位置決めユニット48のY軸方向の一方側には、第1搬送アーム56が配置されている。位置決めユニット48により位置が調整された被測定物11は、位置決めユニット48から第1搬送アーム56によりチャックテーブル52へ搬送される。
【0077】
被測定物11の一面(下面11b)側にはIC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されている。当該一面には、樹脂製の保護テープ(不図示)が貼り付けられる。一面側が保護テープを介して保持面4aで吸引保持されると、被測定物11は、保持面52aの形状に倣って変形する。
【0078】
被測定物11を吸引保持したチャックテーブル52は、X軸移動機構により、加工位置54bへ移動する。基台42の後方側の端部には、Z軸方向に延伸する態様で四角柱状の支持部60が設けられている。支持部60の前方側面には、Z軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール62が固定されている。
【0079】
一対のガイドレール62には、移動板64がZ軸方向にスライド可能に固定されている。移動板64の後方側面にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸方向に略平行に配置されたボールねじ66が回転可能に連結されている。
【0080】
ボールねじ66の上端部には、パルスモーター等の駆動源68が連結されている。駆動源68を動作させれば、移動板64はZ軸方向に略平行な研磨送り方向に沿って移動する。移動板64の前方側面には、研磨ユニット(加工ユニット)70が固定されている。
【0081】
研磨ユニット70は、高さ方向がZ軸方向と略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング72を有する。スピンドルハウジング72には、円柱状のスピンドル74が回転可能に収容されている。スピンドル74の上部側には、スピンドル74を回転させるモーター(不図示)が設けられている。
【0082】
スピンドル74の下端部には、円板状のマウント76の上面側の中心部が固定されている。また、マウント76の下面側には、研磨パッド(加工工具)78が装着されている。研磨パッド78は、金属で形成された円板状の基部78aを有する。
【0083】
基部78aの下面側には、基部78aと略同径のパッド部78bが固定されている。パッド部78bは、保持面52aよりも小さい径(例えば、保持面4aの径の1/10から1/2程度の径)を有する。
図6(A)は、チャックテーブル52及び研磨パッド78の一部断面側面図である。
【0084】
パッド部78bは、例えば、パッド中に砥粒が固定された固定砥粒研磨パッドである。パッド部78bは、例えば、μmオーダーのサイズの砥粒が分散されたウレタン溶液を、ポリエステル製の不織布に含侵させた後、乾燥させることで製造できる。
【0085】
砥粒は、酸化シリコン、炭化ケイ素、cBN(cubic boron nitride)、ダイヤモンド、金属酸化物微粒子等の材料で形成されている。砥粒に使用される金属酸化物微粒子としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0086】
図5に戻り、研磨パッド78には、スラリー供給ユニット80からスピンドル74に形成されている所定の流路を介して、例えば、遊離砥粒を含まないアルカリ性のスラリー(研磨液)が供給される。
【0087】
加工位置54bに配置されたチャックテーブル52のY軸方向の一方側には、上述の計測ユニット6が配置されている。計測ユニット6は、Y軸方向に略平行な態様で開口42aの上方に配置されたアーム82を有する。
【0088】
アーム82の下部には、上述のヘッド部18a、18bの各々が、Y軸方向に独立にスライド可能に固定されている。ヘッド部18a、18bの各々は、例えば、アクチュエータ等の駆動源(不図示)により、Y軸方向に沿って移動する。
【0089】
図6(B)は、集光点13a、13bと、研磨パッド78との位置関係の一例を示す図である。
図6(B)に示す様に、集光点13a、13bは、保持面52aの回転中心52bよりも外側であって、研磨パッド78と重ならない位置に配置される。
【0090】
各ヘッド部18a、18bで上面11aの高さを測定しながら、被測定物11を研磨した後、チャックテーブル52は、搬入搬出位置54aに戻される。そして、第1搬送アーム56のY軸方向の一方側に配置された第2搬送アーム84が、チャックテーブル52からスピンナ洗浄ユニット86(
図5参照)へ被測定物11を搬送する。
【0091】
図5に示す様に、スピンナ洗浄ユニット86で洗浄された被測定物11は、搬送ロボット46により、基台42の前方に配置されたカセット88へ搬送される。研磨装置40は、計測装置(チャックテーブル52及び計測ユニット6)、研磨ユニット70等の各構成要素の動作を制御する制御部90を有する。
【0092】
制御部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリー等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0093】
補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部90の機能が実現される。制御部90は、上述の評価部36を有する。評価部36の機能は、例えば、補助記憶装置に記憶されたプログラムにより実現されるが、ASICや、FPGAにより実現されてもよい。
【0094】
制御部90は、研磨パッド78で被測定物11を研磨しながら、評価部36で上面11aの高さのばらつき(即ち、上面11aの凹凸)を評価する。
図7(A)は、研磨前の受光信号の一例を示す図であり、
図7(B)は、研磨後の受光信号の一例を示す図である。
【0095】
なお、
図7(A)及び
図7(B)において、横軸は光の波長λ(nm)の大きさを示し、縦軸は受光信号の強度を示す。また、
図7(A)及び
図7(B)において、横軸のスケールは互いに同じであり、縦軸の各スケールは互いに同じである。
【0096】
研磨前において、集光点13aでの上面11aの高さと、集光点13bでの上面11aの高さと、の差異が比較的大きい場合、集光点13aでの戻り光15A
6のピーク波長λ
6と、集光点13bでの戻り光15A
7のピーク波長λ
7との波長の差異d
3は十分に大きい。それゆえ、各戻り光15A
6、15A
7は略個別に測定される(
図7(A)参照)。
【0097】
研磨時には、保持面52aで被測定物11を吸引保持した状態で、チャックテーブル52及び研磨パッド78をそれぞれ回転させると共に、スラリーを供給しながら研磨パッド78を下方に所定の送り速度で研磨送りする。
【0098】
パッド部78bが上面11aに接すると、上面11aはパッド部78bにより研磨される。所定時間、上面11a側が研磨されると、被測定物11が薄くなるので、集光器20a、20bから上面11aまでの距離は長くなる。
【0099】
上述の様に、本実施形態の集光器20a、20bは、色収差レンズを有するので、集光器20a、20bから上面11aまでの距離は長くなると、戻り光15のピーク波長は大きくなる(
図7(A)及び
図7(B)の矢印参照)。
【0100】
また、研磨により、上面11aの凹凸が小さくなると、各受光信号のピーク波長の差異は小さくなる。それゆえ、集光点13aでの戻り光15A
8(ピーク波長λ
8)と、集光点13bでの戻り光15A
9(ピーク波長λ
9)とが、重なり合った戻り光15A
10(ピーク波長λ
10)が測定される(
図7(B)参照)。戻り光15A
10は、例えば、レベル3以下(つまり、レベル3、2、1及び0のいずれか)の受光信号である。
【0101】
本実施形態の研磨装置40は、評価部36が、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15のピーク波長の差異に基づいて形成される受光信号から、被測定物11の高さのばらつきを評価する。それゆえ、各ヘッド部18a、18bに異なる透過波長帯域の光学フィルタを設けることなく、二点以上の多点で、被測定物11の高さのばらつきを評価できる。
【0102】
ところで、研磨装置40は、受光信号(即ち、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15のピーク波長の差異)に応じて被測定物11の研磨領域を変更することにより、上面11aの凹凸を低減する(即ち、ピーク波長の差異を小さくする)こともできる。
【0103】
例えば、集光点13bでの上面11aに比べて、集光点13aでの上面11aが高い場合、
図7(A)の様に、ピーク波長の差異が生じる。そこで、制御部90は、集光点13bに対応する上面11aは研磨せずに、集光点13aに対応する上面11aを研磨する様に、研磨領域を調整する。
【0104】
具体的には、まず、研磨ユニット70を一旦上昇させて被測定物11から離す。次いで、チャックテーブル52を搬入搬出位置54a側へ移動させることで、被測定物11を長さLだけ移動させる(
図8参照)。
【0105】
図8は、研磨領域の調整前後での被測定物11と、集光点13a、13bの各位置とを示す図である。
図8では、移動前の被測定物11を破線で示し、移動後の被測定物11を実線で示す。
【0106】
チャックテーブル52の移動により、集光点13bが当たっていた上面11aの領域(円90-1)は、円90-2へ移動する。同様に、集光点13aが当たっていた上面11aの領域(円90-3)は、円90-4へ移動する。
【0107】
更に、制御部90は、矢印92に示す様に、アクチュエータ等の駆動源を動作させて、集光点13aを円90-4上に配置する。なお、このとき、上面11aに対する集光点13bの相対的な位置は変化するが、本実施形態では、当該変化を相殺する様に集光点13bを移動させない。
【0108】
その後、研磨ユニット70を再び下降させて、被測定物11を研磨しつつ、戻り光15を測定することで集光点13a、13bでの高さばらつきを評価する。なお、移動前の被測定物11の集光点13bでの戻り光15のピーク波長を記録しておき、このピーク波長と、移動後の被測定物11の集光点13aでの戻り光15のピーク波長と、を比較することで、高さばらつきを評価してもよい。
【0109】
上面11aの中央部と外周部とで研磨レートが異なる場合には、この様に、ピーク波長の差異に基づいて平坦化が必要な領域を適宜研磨することで、一律に上面11aの全体を研磨する場合に比べて、上面11aのより高い平坦性を実現できる。
【0110】
勿論、第2の実施形態においても、評価部36は、受光信号のピーク波長や半値全幅α等の所定のパラメータを、予め記憶されたパラメータの数値と比較することで、各ヘッド部18a、18bからの戻り光15の波長の差異(即ち、重なりの程度)を評価してもよい。
【0111】
また、チャックテーブル52を移動させて研磨領域を調整する場合に、集光点13a、13bの両方とも移動させずに固定してもよい。これにより、チャックテーブル52の移動の前後において、上面11aに対する集光点13a、13bの相対的な位置は変化するが、各ヘッド部18a、18bの移動に伴う集光点13a、13bの高さ位置のずれを無くすことができる。
【0112】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。第1及び第2の実施形態において、上面11aの高さばらつきに代えて、又はこれと共に、被測定物11の厚さ11cを評価してもよい。
【0113】
また、研磨ユニット70に代えて、マウント76の下面側に研削ホイール(不図示)を装着してもよい。研削ホイールは、金属で形成された円環状のホイール基台を有する。ホイール基台の底面側には、ホイール基台の周方向に沿って、複数の研削砥石が所定の間隔で配置されている。
【0114】
各研削砥石は、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒と、金属、セラミックス、樹脂等の砥粒を固定する結合材と、を有する。ホイール基台には、純水等の研削水を供給するための研削水供給口が形成されている。それゆえ、スラリー供給ユニット80に代えて、研削水供給ユニット(不図示)が配置される。
【0115】
研削時には、スピンドル74を回転中心として研削ホイールを回転させながら、研削ユニットを下方に研削送りする。保持面52aで被測定物11の下面11b側を吸引保持し、チャックテーブル52を回転させる(
図6(A)参照)。
【0116】
保持面52aで保持された被測定物11の上面11aが研削砥石の下面に接触すると、上面11aは研削される。研削前や研削後は勿論、研削中であっても、計測ユニット6を用いて、上面11aの高さを計測できる。
【符号の説明】
【0117】
2:計測装置、4:チャックテーブル、4a:保持面
6:計測ユニット、8:光源部、10:光ファイバーカプラ
11:被測定物、11a:上面、11b:下面、11c:厚さ
12:第1の光ファイバー、14:分岐部、16a,16b:測定用光ファイバー
13:測定光、13a,13b:集光点
15,15A1,15A2,15A3,15A4,15A5,15A6,15A7,15A8,15A9,15A10:戻り光
18:ヘッドユニット、18a,18b:ヘッド部、20a,20b:集光器
22:第2の光ファイバー
24:分光ユニット、26:コリメートレンズ、28:回折格子、30:集光レンズ
32:受光部、32a:受光領域、34:制御部、36:評価部
40:研磨装置、42:基台、42a:開口
44:カセット、46:搬送ロボット、48:位置決めユニット
50:移動テーブル、52:チャックテーブル、52a:保持面、52b:回転中心
54a:搬入搬出位置、54b:加工位置、56:第1搬送アーム
60:支持部、62:ガイドレール、64:移動板、66:ボールねじ、68:駆動源
70:研磨ユニット、72:スピンドルハウジング、74:スピンドル、76:マウント
78:研磨パッド、78a:基部、78b:パッド部、80:スラリー供給ユニット
82:アーム、84:第2搬送アーム
86:スピンナ洗浄ユニット、88:カセット、90:制御部
90-1,90-2,90-3,90-4:円、92:矢印
B1,B2,B3,B4,B5:信号波形、C:ピーク強度
d1,d2,d3:差異、L:長さ
λ1,λ2,λ3,λ4,λ5,λ6,λ7,λ8,λ9,λ10:ピーク波長、α:半値全幅