(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、そのドライフィルムおよび硬化物、およびその硬化物を含む電子部品
(51)【国際特許分類】
C08L 75/00 20060101AFI20250210BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20250210BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20250210BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250210BHJP
C08G 18/34 20060101ALI20250210BHJP
C08G 18/83 20060101ALI20250210BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20250210BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20250210BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C08L75/00
G03F7/004 512
G03F7/037
H05K3/46 T
C08G18/34 030
C08G18/83
C08F283/00
C08G73/14
C08F2/44 C
(21)【出願番号】P 2020147328
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019162827
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 陽子
(72)【発明者】
【氏名】舟越 千弘
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221922(WO,A1)
【文献】特開2017-146426(JP,A)
【文献】特開2000-344889(JP,A)
【文献】特開2018-109733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 -101/14
C08G 18/00 - 18/87
C08F283/00
C08G 73/00 - 73/26
C08F 2/00 - 2/60
G03F 7/004
G03F 7/037
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミドイミド樹脂と、
(B)エチレン性二重結合を有する化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(E)カルボキシル基含有樹脂と、
を含み、
前記(A)アミドイミド樹脂は、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物との反応生成物であり、かつ数平均分子量が500~1000であ
り、
前記(E)カルボキシル基含有樹脂は、アミドイミド構造を含まず、配合量が(A)アミドイミド樹脂の固形分100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記トリカルボン酸無水物は、脂肪族構造を有するものであることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(D)熱硬化性樹脂を含む請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から構成される樹脂層を含むことを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項4に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して成る、硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、例えばプリント配線板の再配線等の際に使用される層間絶縁材用の硬化性樹脂組成物、特に硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物のドライフィルムおよび硬化物、並びにこの硬化物を含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板の層間絶縁材としては、従来より、アミドイミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物を用いることにより、硬化物の耐熱性等の諸特性を向上させている。特に、アミドイミド樹脂がカルボキシル基を含有する場合は、硬化性樹脂組成物の塗膜をアルカリ現像することが可能とされる。しかしながら、カルボキシル基を含有するアミドイミド樹脂を用いる場合でも、必ずしも現像性または解像性が良好ではない(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、アミドイミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物において、解像度を向上させるために、アミドイミド樹脂に対して、さらにカルボキシル基含有樹脂を多量に含んだ場合は、ガラス転移温度(Tg)が下がる傾向にあり、これにより得られた硬化物の耐薬品性が低下することがある。特に硬化物を電子部品の基板の一部に含む形態で使用する場合には、基板の作製時における酸やアルカリによる基板表面の洗浄や、実装時の溶媒による洗浄に付されるため、基板の耐薬品性は必須である。しかしながら現在に至るまで、耐熱性、現像性、解像性、および耐薬品性の全て特性において優れた樹脂組成物は得られていない。
【0005】
したがって、本発明は、耐熱性および耐薬品性を低下させることなく、現像性・解像性が向上した硬化性樹脂組成物およびこれを含むドライフィルム、その硬化物、およびその硬化物を含むプリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記目的に鑑み、鋭意検討した結果、
(A)アミドイミド樹脂と、
(B)エチレン性二重結合を有する化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含み、(A)アミドイミド樹脂は、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物との反応生成物であり、かつ数平均分子量が500~1000であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明のトリカルボン酸無水物は、脂肪族構造を有するものであることが好ましい。
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに(D)熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の上記課題は、上記の硬化性樹脂組成物から構成される樹脂層を含むドライフィルム、硬化性樹脂組成物の硬化物、および硬化物を含む電子部品により解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、硬化後の耐熱性および耐薬品性が優れ、かつ現像性および解像性が向上した硬化性樹脂組成物、そのドライフィルム、これらの硬化物、およびその硬化物を含むプリント配線板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)アミドイミド樹脂と、(B)エチレン性二重結合を有する化合物と、(C)光重合開始剤と、を含み、(A)アミドイミド樹脂は、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物との反応生成物であり、かつ数平均分子量が500~1000である。
本発明の硬化性樹脂組成物は上記の構成を有することにより、アルカリ現像液による現像に付されると、優れた現像性を発揮し、これにより得られる硬化物の解像性が極めて良好とされる。また、この硬化性樹脂組成物より得られる硬化物は耐熱性、硬化塗膜強度、および耐薬品性においても優れている。したがって、繊細な解像性と、塗膜の耐久性(耐熱性、強度、耐薬品性)の双方の必要な適用、例えばプリント配線板等の層間絶縁材、再配線用絶縁材としての適用において有意である。
【0012】
以下、硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳述する。
【0013】
[(A)アミドイミド樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は(A)アミドイミド樹脂を含む。
(A)アミドイミド樹脂は、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物とを反応させることにより製造されるものであり、数平均分子量が500~1000の範囲のものが使用される。すなわち、本発明で用いる(A)アミドイミド樹脂は、上述のイソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物から直接イミド結合を形成させることにより、従来技術のポリアミック酸中間体を経た合成と対比して、材料の安定性、再現性および溶解性が良好で、透明性に優れるアミドイミド樹脂を合成できる。また、(A)アミドイミド樹脂の数平均分子量を500~1000の範囲とすることにより、現像性・解像性が特に向上する。
【0014】
[イソシアヌレート型ポリイソシアネート]
(A)アミドイミド樹脂の合成原料とされる上記のイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、脂肪族イソシアヌレート、すなわち脂肪族直鎖状イソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)または脂環式イソシアネート(イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート)から合成される。
【0015】
イソシアヌレート型ポリイソシアネートの具体例は、
HDI3N:ヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート、
HTMDI3N:トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート、
IPDI3N:イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート、
HTDI3N:水添トリレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート、
HXDI3N:水添キシレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート、
NBDI3N:ノルボルナンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート、および
HMDI3N:水添ジフェニルメタンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネートである。
上記各トリイソシアヌレートは、それぞれを単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(A)アミドイミド樹脂の原料となるイソシアネートは、脂環式イソシアネート、特にイソホロンジイソシアネートが好ましく、これを用いることにより特にTgが向上し、熱的物性に優れた硬化塗膜が得られる。また、上記脂肪族構造を有するイソシアネートは、芳香環構造を有しない構造のため、それによって、得られる本発明に係るアミドイミド樹脂は高い透明性を有する。
【0017】
[トリカルボン酸無水物]
(A)アミドイミド樹脂の他の反応原料であるトリカルボン酸無水物としては、芳香族構造を有するトリカルボン酸無水物、例えば、無水トリメット酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸1,2無水物等が挙げられ、脂肪族構造(脂肪族直鎖状構造または脂環式構造を含む)を有するトリカルボン酸無水物、例えば、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキサントリカルボン酸無水物、シクロヘキセントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物等が挙げられる。トリカルボン酸無水物としては、脂肪族構造を有するものが好ましく、シクロヘキサントリカルボン酸無水物が特に好ましく使用される。イソシアヌレート型ポリイソシアネートおよびトリカルボン酸無水物は、好ましくは、いずれも芳香環構造を有しない構造のものである。それによって、得られる本発明に係るアミドイミド樹脂は高い透明性を有し、ひいては、それを含む本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物もまた高い透明性を有する。
【0018】
シクロヘキサントリカルボン酸無水物は下式(1)
【0019】
【化1】
で表され、その具体例としてのシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物、シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸-3,5-無水物、シクロヘキサン-1,2,3-トリカルボン酸-2,3-無水物等、特に、シクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物が好ましく用いられる。
すなわち、このような脂肪族トリカルボン酸無水物を(A)アミドイミド樹脂の原料とすることにより、本発明の硬化物の耐熱性が一層優れたものとされる。
【0020】
また、(A)アミドイミド樹脂の製造の原料として、上記トリカルボン酸無水物を用いるとともに、場合により、2官能のジカルボン酸化合物、例えば脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、例えばセバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸無水物等を併用することも可能である。
【0021】
前記トリカルボン酸無水物のカルボン酸成分とイソシアヌレート型ポリイソシアネート中のイソシアネート成分とが反応すると、イミド及びアミドが形成され、本発明の樹脂はアミドイミド樹脂となる。また、イソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物とを反応させる際に、酸無水物基とイソシアネート基とからイミド結合が形成され、カルボキシル基とイソシアネート基とからアミド結合が形成されるが、トリカルボン酸無水物のカルボン酸(カルボキシル基)成分を残すような割合でトリカルボン酸無水物基とポリイソシアネート基とを反応させると、得られるポリアミドイミド樹脂はカルボキシ基を有するものとなる。このカルボキシ基は、後述する本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基等の重合性基と反応し、硬化物の架橋構造を形成する。尚、トリカルボン酸無水物とトリイソシアネートとの反応では、上述のアミド化とイミド化の2種類の反応が考えられるが、反応速度はイミド化が速いため、トリカルボン酸は酸無水物基のところで選択的にイミドを形成する。
【0022】
脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートと脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物とは、前記脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数(N)と、トリカルボン酸無水物のカルボキシ基のモル数(M1)及び酸無水物基モル数(M2)の合計のモル数との比〔(M1)+(M2))/(N)〕が1.1~3となるように反応させるのが、反応系中の極性が高くなり反応が潤滑に進行する、イソシアネート基が残存せず、得られるポリイミド樹脂の安定性が良好である、トリカルボン酸無水物の残存量も少なく再結晶等の分離の問題も起こりにくい等の理由により好ましい。中でも1.2~2がより好ましい。なお、本発明において酸無水物基とは、カルボン酸2分子が分子内脱水縮合して得られた-CO-O-CO-基を指す。
【0023】
イミド化反応は、溶剤中あるいは無溶剤中で、脂肪族構造を有するイソシアネートの1種類以上と、トリカルボン酸無水物の1種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃~250℃、特に好ましくは70℃~180℃である。このような反応温度にすることにより、反応速度が早くなり、且つ、副反応や分解等が起こりにくい効果を奏する。反応は、脱炭酸を伴いながら酸無水物基とイソシアネート基がイミド基を形成する。反応の進行は、赤外スペクトルや、酸価、イソシアネート基の定量等の分析手段により追跡することができる。赤外スペクトルでは、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が反応とともに減少し、さらに1860cm-1と850cm-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方、1780cm-1と1720cm-1にイミド基の吸収が増加する。反応は、目的とする酸価、粘度、分子量等を確認しながら、温度を下げて終了させても良い。しかしながら、経時の安定性等の面からイソシアネート基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。また、反応中や反応後は、合成される樹脂の物性を損なわない範囲で、触媒、酸化防止剤、界面活性剤、その他溶剤等を添加してもよい。
【0024】
本発明のアミドイミド樹脂の酸価は、70~210KOHmg/gであることが好ましく、90~190KOHmg/gであることが特に好ましい。70~210KOHmg/gであれば、硬化物性として優れた性能を発揮する。
また、本発明のアミドイミド樹脂は、前記した窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤に溶解するアミドイミド樹脂が好ましい。このようなアミドイミド樹脂の例示としては、分岐型構造を有し、樹脂の酸価が60KOHmg/g以上である分岐型アミドイミド樹脂が挙げられる。
【0025】
硬化性樹脂組成物における(A)アミドイミド樹脂は、その数平均分子量Mnが500~1000であり、好ましくは700~900の範囲である。
本発明では、(A)アミドイミド樹脂の数平均分子量Mnが500以上であることにより、硬化塗膜の耐熱性が良好となり、数平均分子量Mnが1000であることにより、硬化性樹脂組成物を現像する際にコントラストを付けやすく、得られる硬化塗膜も解像性に優れたものとされる。
なお、本発明において数平均分子量は、特記しない限り、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエ―ションクロマトグラフィー(GPC)測定結果を用いる。
(A)アミドイミド樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総質量に対して30~85質量%、特に40~70質量%の範囲とされると好ましい。この範囲の配合量とすることにより、硬化性樹脂組成物のTgが向上し、熱的物性に優れる硬化塗膜が得られるためである。
【0026】
[(B)エチレン性二重結合を有する化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)エチレン性二重結合を有する化合物を含有する。(B)エチレン性二重結合を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により光硬化して、本発明の樹脂組成物をアルカリ水溶液に不溶化し、または不溶化を助けることができる。
【0027】
(B)エチレン性二重結合を有する化合物の具体的例としては、
2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類等ヒドロキシル基を有するモノアクリレート類;
エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;
N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;
N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;
ヘキサンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等のアルキルジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体、もしくはε-カプロラクトン付加体などの多価アクリレート類、例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート等の2官能アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル) イソシアヌレートトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオイサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート等の5官能アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能アクリレート、フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加体もしくはプロピレンオキサイド付加体などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;ジシクロペンタジエンジアクリレートなどのジシクロペンタジエン骨格を有するアクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類を挙げることができる。
【0028】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物等を挙げることができる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
(B)エチレン性不飽和基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)エチレン性不飽和基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは3~20質量部の割合で添加される。
(B)エチレン性不飽和基を有する化合物の配合量を、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上とすることにより硬化性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、20質量部以下とすることにより過剰な光重合反応によるハレーションを防ぎ、良好な解像性を得られる。
【0029】
[(C)光重合開始剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤を含む。(C)光重合開始剤としては、公知慣用の材料を、特に制限されずに用いることができる。特に、後述するように、一般式(I)で表される構造を含むオキシムエステル系、一般式(II)で表される構造を含むα-アミノアセトフェノン系、一般式(III)で表される構造を含むアシルホスフィンオキサイド系、および一般式(IV)で表される構造のチタノセン系等を使用することができる。
(C)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
[オキシムエステル系光開始剤]
【0031】
【化2】
オキシムエステル系光開始剤は上記一般式(I)で表され、一般式(I)、R1は、水素原子、フェニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルカノイル基またはベンゾイル基を表わす。R2は、フェニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルカノイル基またはベンゾイル基を表わす。R1およびR2により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。R1およびR2により表されるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、アルキル鎖中に1個以上の酸素原子を含んでいてもよい。また、1個以上の水酸基で置換されていてもよい。R1およびR2により表されるシクロアルキル基としては、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましい。R1およびR2により表されるアルカノイル基としては、炭素数2~20のアルカノイル基が好ましい。R1およびR2により表されるベンゾイル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(I)のオキシムエステル系光重合開始剤の具体例としては、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、アデカ社製N-1919、NCI-831等が挙げられる。分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤やカルバゾール構造を有する光重合開始剤も好適に用いることができる。
【0033】
[α-アミノアセトフェノン系光開始剤]
【0034】
【化3】
α-アミノアセトフェノン系光開始剤は上記一般式(II)で表され、一般式(II)中、R3およびR4は、各々独立に、炭素数1~12のアルキル基またはアリールアルキル基を表わし、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、または炭素数1~6のアルキル基を表わし、あるいは2つが結合して環状アル キルエーテル基を形成してもよい。
【0035】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤の具体例としては、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(Omnirad(オムニラッド)369、商品名、IGM Resins社製)、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(Omnirad(オムニラッド)907、商品名、IGM Resins社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Omnirad(オムニラッド)379、商品名、IGM Resins社製)等の市販の化合物またはその溶液を用いることができる。
【0036】
[アシルホスフィンオキサイド系光開始剤]
【0037】
【化4】
アシルホスフィンオキサイド系光開始剤は上記一般式(III)で表され、一般式(III)中、R7およびR8は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5~8のシクロアルキル基、アリール基、またはハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基、または炭素数1~20のカルボニル基(但し、双方が炭素数1~20のカルボニル基である場合を除く。)を表わす。
【0038】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)TPO、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)819などが挙げられる。
【0039】
[チタノセン系光開始剤]
【0040】
【化5】
チタノセン系光開始剤は上記一般式(IV)で表され、一般式(IV)中、R9およびR10は、各々独立に、ハロゲン原子、アリール基、ハロゲン化アリール基、複素環含有ハロゲン化アリール基を表わす。
【0041】
チタノセン系光重合開始剤としては、ビス(η5-2、4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2、6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー784などが挙げられる。
なお、本明細書においてハロゲンまたはハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味し、アリールとは、フェニル基等の単管芳香族炭化水素およびナフチル基等の多環芳香族炭化水素基を意味する。
【0042】
本発明において使用される、他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;キサントン類;3,3’4,4’-テトラ-(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の各種パーオキサイド類;1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン等が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、上記の光重合開始剤以外にも、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような公知慣用の光増感剤の1種または2種以上と組み合わせて用いることができる。さらに、より深い光硬化深度を要求される場合、必要に応じて、3-置換クマリン色素、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0044】
(C)光重合開始剤は、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、一般には0.1~50質量部、より好ましくは1~30質量部の割合で添加する。(C)光重合開始剤の配合量を、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、上記範囲内であれば、光硬化反応が良好に促進される。
【0045】
[(D)熱硬化性樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに(D)熱硬化性樹脂を含んでもよい。(D)熱硬化性樹脂としては、例えば、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等分子中に2個以上の環状エーテル基および/または環状チオエーテル基、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物等1分子内に2個以上のイソシアネート基、またはブロック化イソシアネート基を有する化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミン樹脂とその誘導体、ビスマレイミド、オキサジン、シクロカーボネート化合物、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0046】
多官能エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形ないし半固形であってもよい。多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型(ビフェニルアラルキル型)エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0047】
耐熱性を向上させる観点からは、芳香環骨格(例えばナフタレン骨格)を有するエポキシ樹脂が好ましく、解像性を向上させる観点からは、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂が好ましくい。
【0048】
芳香環骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、特にアラルキル型ナフタレンが挙げられる。このナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、ナフタレンが平面構造であり、線膨張係数を低下させ、耐熱性をより向上させることができる。このナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄化学製のESN-190、ESN-360、DIC社製のEPICRON HP-4032、EPICRON、HP-4032D、日本化薬株式会社製のNC-7000Lが挙げられる。さらに、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。この脂環骨格を有するエポキシ樹脂は、鎖状骨格のエポキシ樹脂よりもガラス転移温度の向上効果も期待できる。
【0049】
以上説明したような熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)熱硬化性樹脂を用いる場合、配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、5~20質量部とすることにより、硬化性樹脂組成物の現像性および硬化物の耐熱性と解像性の双方が極めて優れたものとされる。
【0050】
[(E)カルボキシル基含有樹脂]
現像性をさらに向上させるために、本発明の硬化性樹脂組成物は、場合により(E)カルボキシル基含有樹脂を含むものであってもよい。
(E)カルボキシル基含有樹脂は、上述の(A)アミドイミド樹脂とは構造が異なる化合物であり、アミドイミド構造を含まず、分子中にカルボキシル基を有する、感光性または非感光性の樹脂を使用することができる。その具体例としては、以下の(E1)~(E10)が挙げられる。
【0051】
非感光性カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
(E1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどの不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0052】
(E2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールを含むフェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物などのジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0053】
(E3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールを含むフェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物などのジオール化合物との重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0054】
(E4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0055】
(E5)上述した(E2)または(E4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0056】
(E6)上述した(E2)または(E4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0057】
(E7)後述するような2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。ここで、エポキシ樹脂は、固形であることが好ましい。
【0058】
(E8)後述するような2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。ここで、エポキシ樹脂は、固形であることが好ましい。
【0059】
(E9)ノボラックなどの多官能フェノール化合物にエチレンオキサイドなどの環状エーテル、または、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネートを付加させ、得られた水酸基を(メタ)アクリル酸で部分エステル化し、残りの水酸基に多塩基酸無水物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0060】
(E10)これら(E1)~(E9)の樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0061】
(E11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物(例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック)を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に、更に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0062】
(E12)ポリフェノール化合物(例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック)と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
本発明では上記(E11)および(E12)などの、ポリフェノール骨格を有する感光性カルボキシル基含有感光性樹脂が好ましく使用される。
【0063】
(E)カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、合計質量が、(A)アミドイミド樹脂の固形分100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、これにより硬化性樹脂組成物の現像性および硬化物の解像性が良好となる。
【0064】
[無機フィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物には、通常の樹脂組成物に用いられる無機フィラーをさらに含有させることができる。
具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、ノイブルグ珪土、有機ベントナイト等の非金属フィラーや、銅、金、銀、パラジウム、シリコン等の金属フィラーを挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、これら無機フィラーは単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。本発明では、硫酸バリウム、シリカ、又はその双方を用いることが好ましい。
【0065】
これら無機フィラーの含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分全質量に対して、5~60質量%であり、特に10~50質量%とすると好ましい。無機フィラーの種類に応じて配合量を適宜選択することにより、硬化塗膜の解像性を低下させることなく、強度を向上させることができる。
【0066】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外の他の成分を添加することができる。添加剤としては、シリコーン系、フッ素系の消泡剤、レベリング剤、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、溶剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等を配合することができる。
【0067】
なお、硬化性樹脂組成物を、基板やキャリアフィルムに塗布するために適切な粘度とするために、溶剤を用いる事が可能である。このような溶剤としては、主に有機溶剤が使用され、その具体例としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等である。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物は、液状型でもよく、液状型樹脂組成物を乾燥させて得られるドライフィルム型でもよい。液状型樹脂組成物は、保存安定性の観点から2液型等としてもよいが、1液型としてもよい。以下、硬化性樹脂組成物の一使用態様としてドライフィルムについて詳述する。
【0069】
[ドライフィルムの製造]
本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を、フィルム(以下、「キャリアフィルム」とも称す)上に塗布し、その後乾燥して得られた樹脂層を有するものである。本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で3~100μm、好ましくは5~40μmの範囲で適宜設定すればよい。
【0070】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムを好適に用いることができ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0071】
キャリアフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥した後、さらに、塗膜の表面に塵が付着するのを防ぐ等の目的で、塗膜の表面に剥離可能なフィルム(以下、「カバーフィルム」とも称す)を積層してもよい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに塗膜とキャリアフィルムとの接着力よりも塗膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物をキャリアフィルム上に塗布した後に行う乾燥処理は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等を用いて行われ、これによりドライフィルムが得られる。
【0073】
硬化性樹脂組成物を直接基板上に塗工する場合、基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0074】
[硬化物の製造]
本発明の硬化性樹脂組成物を用いた硬化物(硬化膜)は以下のように製造される。すなわち、まず硬化性樹脂組成物を必要に応じて溶剤で希釈したのち、基板上に塗布する。硬化性樹脂組成物に対するパターン形成は、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、選択的な露光(光照射)を行い、露光部(光照射された部分)を硬化させることにより行う。その後、未露光部をアルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、塗膜のパターンが形成される。更に、硬化性樹脂組成物に光照射を行うことにより、光硬化塗膜を行い、硬化塗膜が形成される。
【0075】
塗工方法は、ディップコート法、フローコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、の任意の方法を適用することができる。また、活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、UV-LED、レーザー光線、電子線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0076】
塗布後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0077】
乾燥後の硬化性樹脂組成物又はドライフィルムに対し、パターンを形成したフォトマスクを通して、接触式又は非接触方式により活性エネルギー線による露光を行うことができる。このほか、硬化性樹脂組成物又はドライフィルムに対して、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光することにより、露光部分を光硬化させることができる。
【0078】
ここで、活性エネルギー線の照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射できる装置であればよく、さらに、例えば、コンピューターからのCADデータにより直接活性エネルギー線で画像を描くダイレクトイメージング装置のような直接描画装置も用いることができる。直接描画装置の光源としては、水銀ショートアークランプ、LED、最大波長が350~410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーいずれでもよい。パターン樹脂層の画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1,500mJ/cm2、好ましくは20~1,200mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0079】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等を採用することができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を用いることができる。
【0080】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線を、例えば50mJ/cm2~1500mJ/cm2の範囲で照射し光硬化させることができる。光照射は、紫外線、電子線、化学線等の活性エネルギー線の照射により、好ましくは紫外線照射により行われる。硬化性樹脂組成物が熱硬化性成分を含む場合には、光硬化の後に、約100~180℃の温度に加熱して熱硬化(ポストキュア)させることにより、塗膜の硬化が促進する。
【0081】
本発明の硬化性樹脂組成物は、電子部品に対して適用可能である。なお、本発明において電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他、抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれ、本発明の硬化性組成物の硬化塗膜が、本発明の効果を奏するものである。本発明の硬化性樹脂組成物は、特にプリント配線板の絶縁性硬化被膜の形成用として好適であり、カバーレイ、ソルダーレジスト、層間絶縁材、再配線層形成用絶縁材等の永久絶縁膜の形成用としてさらに好適である。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物から得られた硬化物を含む電子部品は、硬化物の解像性と耐熱性に優れることから、電子部品としての機能をいかんなく発揮することができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は耐薬品性においても優れることから、基板の作製時における酸、アルカリによる洗浄や、実装時の溶媒による洗浄においても、使用される薬剤により変質・変形等することがなく、電子部品の精度を維持・向上することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例、参考例、比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、以下に記載の「部」及び「%」とは、特に断りのない限り全て質量基準とする。
【0084】
[原料の合成]
[アミドイミド樹脂の製造]
合成例1:(A)アミドイミド樹脂1の合成
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)5184g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2070g(3mol)及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物1782g(9mol)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で140KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量800であった。また、樹脂分の濃度は40重量%であった。この樹脂の溶液を(A)アミドイミド樹脂1の溶液とする。
【0085】
合成例2:(A’)アミドイミド樹脂2の合成
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)4628g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2070g(3mol)及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物1386g(7mol)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で140KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量5800であった。また、樹脂分の濃度は40重量%であった。この樹脂の溶液を(A’)アミドイミド樹脂2の溶液とする。
【0086】
合成例3:(A’)アミドイミド樹脂3の合成
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)4903g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2070g(3mol)及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物1683g(8.5mol)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で140KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量1500であった。また、樹脂分の濃度は40重量%であった。この樹脂の溶液を(A’)アミドイミド樹脂3の溶液とする。
【0087】
合成例4 (A)アミドイミド樹脂4の合成
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)3554g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2070g(3mol)及び1,2,4-べンゼントリカルボン酸1,2-無水物1333g(9mol)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は褐色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で140KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量800であった。また、樹脂分の濃度は40重量%であった。
この樹脂の溶液をアミドイミド樹脂4の溶液とする。
【0088】
なお、上記アミドイミド樹脂1~4の数平均分子量の測定はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、下記測定装置、測定条件にて測定した。
【0089】
装置名:Waters社製、Waters 2695
検出器:Waters社製、2414示差屈折率(RI)検出器
カラム:Waters社製、高速分析用HSPgelカラム、HR MB-L、
3μm、6mm×150mm×2、および
Waters社製、HSPgelカラム、HR1,3μm、
6mm×150mm×2
測定条件:
カラム温度:40℃
RI検出器設定温度:35℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
サンプル量:10μl
サンプル濃度:0.5wt%
【0090】
合成例5:カルボキシル基含有樹脂の合成
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子(株)製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、固形分71%のカルボキシル基含有樹脂を得た。
【0091】
[参考例1、実施例2~4、参考例3および比較例1~3]
[硬化性樹脂組成物の調製]
表1に記載のように各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにより混錬して分散させ、実施例、参考例、及び比較例に係る硬化性樹脂組成物を調製した。
なお、表中の配合量は質量部(固形分換算)を示す。
【0092】
<最適露光量>
前記実施例、参考例及び比較例の硬化性樹脂組成物について、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してから、スクリーン印刷法により、この回路パターン基板に全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で60分間乾燥させる。乾燥後、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置を用いてステップタブレット(コダックNo.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが7段の時を最適露光量とした。
【0093】
<1.解像性>
硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで適切な粘度に希釈し、キャリアフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの硬化性樹脂組成物層を形成し、塗膜上にカバーフィルム(ポリプロピレンフィルム)を貼り合わせてドライフィルムを得た。その後、カバーフィルムを剥がし、銅貼り積層基板に、得られたドライフィルムを熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置を用いて最適露光量でパターン露光し、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で250秒間現像を行うことにより、ビアパターンを形成した。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、180℃で60分加熱して硬化させた。
上記のようにして評価基板作成方法にて作成した基板の解像性を、電子顕微鏡を用いて観察した。ビア開口サイズを確認し、下記のように評価した。
◎:φ20μm未満のビアパターン形成
〇:φ20μm以上50μm未満のビアパターン形状
△:φ50μm以上のビアパターン形状
×:開口形状が形成できない
【0094】
<2.現像性>
硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで適切な粘度に希釈し、キャリアフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの硬化性樹脂組成物層を形成し、得られた塗膜上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。その後、カバーフィルムを剥がし、銅貼り積層基板に、得られたドライフィルムを熱ラミネートした。得られた基板を30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像して、現像残渣を下記のように評価した。
◎:残渣なし
〇:膜厚1μm未満の残渣
△:膜厚1μm以上3μm未満の残渣
×:膜厚3μm以上の残渣
【0095】
<3.耐熱性>
硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで適切な粘度に希釈し、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの硬化性樹脂組成物層を形成し、塗膜上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。その後、カバーフィルムを剥がし、銅箔に熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置を用いて最適露光量でベタ露光し、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で250秒間現像を行った。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、180℃で60分加熱して硬化させた。得られた硬化塗膜付き銅箔より硬化塗膜を剥がしとることで、硬化塗膜フィルムを得た。
得られた硬化塗膜のガラス転移温度を下記の条件にて測定を実施した。
装置:動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ社製 DMA6100)
測定温度:30~300℃(5℃/min)
周波数:1Hz
ガラス転移温度:測定したtanδの最大値をガラス転移温度とする。
ガラス転移温度が高いほど、弾性変化が高温で発生するため耐熱性が高いと判断する。
評価基準は、以下のとおりである。
◎:190℃以上
〇:180℃以上
△:170℃以上
×:170℃未満
【0096】
<4.破断強度>
耐熱性評価に用いた評価基板について、JIS K7127に準拠して破断強度を測定して評価した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:80MPa以上
〇:40MPa以上、80MPa未満
△:40MPa未満
【0097】
<5.耐薬品性>
硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで適切な粘度に希釈し、シリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布、80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの硬化性樹脂組成物層を形成した。高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置を用いて最適露光量でベタ露光し、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で250秒間現像を行った。
この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、180℃で60分加熱して硬化させた。得られたウエハ上の硬化性樹脂組成物層を、カッターを用いて1辺が1mmの四角形のマス目を100個形成するようにクロスカットをした。水酸化カリウム10%溶液をウォーターバスで40℃にあたため、クロスカットした樹脂層付のウエハを30分間浸漬させた後、水洗、乾燥した樹脂層にセロテープ(登録商標)を貼り付け、ピーリングにより耐薬品性を評価した。評価基準は下記のとおりである。
○:はがれ無し
△:クロスカットの線に沿って樹脂層がウエハからわずかにはがれる
×:クロスカットした四角のマス目が1枚以上はがれる
【0098】
【0099】
表中に記載した材料の詳細を以下に示す。
アミドイミド樹脂1:合成例1により合成 Mn=800
アミドイミド樹脂2:合成例2により合成 Mn=5800
アミドイミド樹脂3:合成例3により合成 Mn=1500
アミドイミド樹脂4:合成例4により合成 Mn=800
光重合開始剤1: 2-メチル-1-(4-メチルオフェニル)-2モルフォリノプロパン-1-オン
エチレン性二重結合を有する樹脂1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
エチレン性二重結合を有する樹脂2:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
カルボキシル基含有樹脂:合成例5
熱硬化性樹脂:ナフトール変性エポキシ樹脂 NC-7000L (日本化薬社製)
無機粒子1:硫酸バリウム
無機粒子2:シリカ
【0100】
以上より、本発明の硬化性樹脂組成物は耐熱性に優れるのみならず、解像性および現像性、破断強度、並びに耐薬品性が向上していることがわかる。
【0101】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。