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特許7632156画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/60 20060101AFI20250212BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20250212BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20250212BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H04N1/60
G06T1/00 510
H04N1/407
B41J2/525
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021125848
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020463
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄大
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-178489(JP,A)
【文献】特開2000-253270(JP,A)
【文献】特開2003-179764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46-62
G06T 1/00
H04N 1/40
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置において、
手本となる第1の出力物および前記画像形成装置にて出力された第2の出力物を各々読み取る画像読取部と、
RGB表色系をCMYK表色系に色変換する場合に用いる色変換ルックアップテーブルを保持する補正データ保持部と、
前記色変換ルックアップテーブルを補正する色変換補正部と、
を備え、
前記色変換補正部は、前記第1の出力物の読み取り情報を用いて、色相毎の画素数および変化量を基に前記色変換ルックアップテーブルの補正を実施すること、および、前記第2の出力物の読み取り情報を用いて、補正済みの前記色変換ルックアップテーブルを再補正すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記色変換補正部は、
前記第1の出力物の読み取り情報から第1の特徴量を取得し、
前記第1の特徴量を三次元ルックアップテーブルに射影し、任意の色相における三次元ルックアップテーブルの格子点周辺の画素数の閾値判断により、初期の前記色変換ルックアップテーブルに対する補正量を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記色変換補正部は、
前記色変換ルックアップテーブルの補正後に入力した前記第2の出力物の読み取り情報に未補正の色相が含まれている場合、前記画素数の閾値判断により、前記色変換ルックアップテーブルに対する補正量を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記色変換補正部は、
前記色変換ルックアップテーブルの補正後に入力した前記第2の出力物の読み取り情報に未補正の色相が含まれていない場合、初期の前記色変換ルックアップテーブルと更新済みの前記色変換ルックアップテーブルとの差分を算出し、
前記差分に基づき、前記色変換ルックアップテーブルの補正の実行を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記色変換補正部は、
前記差分が所定値より大きい場合、前記色変換ルックアップテーブルを変更しない、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記色変換補正部は、
前記第1の出力物の読み取り情報から第1の特徴量を取得し、
前記第2の出力物の読み取り情報から第2の特徴量を取得し、
前記差分が所定値より小さい場合、前記第1の特徴量と前記第2の特徴量とを三次元ルックアップテーブルに射影し、任意の色相における三次元ルックアップテーブルの格子点周辺の画素数の閾値判断を実施する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記色変換補正部は、閾値以上である場合、前記色変換ルックアップテーブルに対する補正量を大きくする、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記色変換補正部は、閾値未満である場合、前記色変換ルックアップテーブルに対する補正量を小さくする、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
画像形成装置を制御するコンピュータを、
手本となる第1の出力物および前記画像形成装置にて出力された第2の出力物を各々読み取る画像読取部と、
RGB表色系をCMYK表色系に色変換する場合に用いる色変換ルックアップテーブルを保持する補正データ保持部と、
前記色変換ルックアップテーブルを補正する色変換補正部と、
として機能させ、
前記色変換補正部は、前記第1の出力物の読み取り情報を用いて、色相毎の画素数および変化量を基に前記色変換ルックアップテーブルの補正を実施すること、および、前記第2の出力物の読み取り情報を用いて、補正済みの前記色変換ルックアップテーブルを再補正すること、
を特徴とするプログラム。
【請求項10】
RGB表色系をCMYK表色系に色変換する場合に用いる色変換ルックアップテーブルを保持する画像形成装置における画像形成方法であって、
手本となる第1の出力物および前記画像形成装置にて出力された第2の出力物を各々読み取る画像読取工程と、
前記色変換ルックアップテーブルを補正する色変換補正工程と、
を含み、
前記色変換補正工程は、前記第1の出力物の読み取り情報を用いて、色相毎の画素数および変化量を基に前記色変換ルックアップテーブルの補正を実施すること、および、前記第2の出力物の読み取り情報を用いて、補正済みの前記色変換ルックアップテーブルを再補正すること、
を特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新規に購入したプリンタなどの画像形成装置からの印刷において、これまで使用していたプリンタと同じような色合いにするために、細かい濃度調整を手動にて実施することがある。
【0003】
また、特許文献1には、プリンタ出力を手本の色合いに近づける目的で、手本となる出力物をスキャンし、メモリカード内のRGB画像のプリンタ出力を手本の色合いに近づけるパラメータ補正を実行する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術によれば、色変換対象のRGB画像毎に、特徴量抽出および補正パラメータ算出が必要であり、パラメータ管理の煩雑さやメモリ領域の増大という問題があった。また、従来の技術によれば、画像データの読み取り手段が異なるにもかかわらず、読み取りRGB値の補正がされないため、過補正等の判断ができない、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像データ毎の色変換ルックアップテーブルの保持を不要とし、また、特定画像への色合わせ込みによる過補正を防ぐことにより、濃度調整の手順を簡単にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像形成装置において、手本となる第1の出力物および前記画像形成装置にて出力された第2の出力物を各々読み取る画像読取部と、RGB表色系をCMYK表色系に色変換する場合に用いる色変換ルックアップテーブルを保持する補正データ保持部と、前記色変換ルックアップテーブルを補正する色変換補正部と、を備え、前記色変換補正部は、前記第1の出力物の読み取り情報を用いて、色相毎の画素数および変化量を基に前記色変換ルックアップテーブルの補正を実施すること、および、前記第2の出力物の読み取り情報を用いて、補正済みの前記色変換ルックアップテーブルを再補正すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像データ毎の色変換ルックアップテーブルの保持を不要とし、また、特定画像への色合わせ込みによる過補正を防ぐことにより、濃度調整の手順を簡単にすることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2図2は、色変換ルックアップテーブルの補正処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図3図3は、3次元ルックアップテーブルを示す概念図である。
図4図4は、色変換ルックアップテーブルの補正処理の流れを詳細に示すフローチャートである。
図5図5は、リプレース前の画像形成装置およびリプレース後の画像形成装置の出力物サンプルを画像読取部にて読み取った時のRGBの分布の一例を示す図である。
図6図6は、本実施の形態に係る画像処理形成を複合機に適用した場合のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法の実施の形態を詳細に説明する。以下では、本実施形態にかかる画像形成装置を複合機に適用した例について説明する。本実施形態は、新規に購入したリプレース後の画像形成装置の印刷結果を、今まで使用していたリプレース前の画像形成装置と同じような色合いにする場合の処理について説明するものである。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる画像形成装置1の機能的構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置1にはクライアントPC2が接続されている。クライアントPC2は、プリンタドライバ2aを介してRGB色の画像データ2bを画像形成装置1に出力する。尚、プリンタドライバ2aは、画像データ2bに当該画像データ2bを印刷する際の解像度等の情報を付加して画像形成装置1に出力する。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置1は、画像処理部10と、画像形成部20と、画像読取部30と、を備えている。
【0012】
画像処理部10は、クライアントPC2から入力された画像データ2bに色変換処理、濃度変換処理、階調処理等の各処理を行って、処理後の画像データを画像形成部20に出力する。
【0013】
画像形成部20は、主にプリンタで構成され、画像処理部10が処理したCMKY各色の画像データに基づいて、各色の画像データに対応する各色の画像を記録媒体上に形成する。また、画像形成部20は、画像処理部10が処理したCMYK各色の画像データに基づいて、サンプル画像を記録媒体(例えば、印刷用紙または転写ベルト等)上に形成し、サンプル画像が形成された記録媒体(出力物サンプル)を画像読取部30が画像読取を行う読取窓に出力する。
【0014】
画像読取部30は、主にスキャナで構成され、サンプル画像が形成された記録媒体(出力物サンプル)を読み取り、読み取った画像データを画像処理部10に出力する。
【0015】
そして、画像処理部10は、画像読取部30から入力されたサンプル画像が形成された記録媒体(出力物サンプル)を用いて、後述する色変換ルックアップテーブル(LUT)Tの補正処理を行う。
【0016】
次に、画像処理部10の機能についてより詳細に説明する。図1に示すように、画像処理部10は、色変換処理部11と、濃度変換処理部12と、階調処理部13と、色変換補正部14とを備えている。また、色変換補正部14の記憶手段である補正データ保持部144には、色変換ルックアップテーブルTが格納されている。
【0017】
色変換ルックアップテーブルTは、3次元ルックアップテーブルであって、RGBデータ(RGB表色系)をCMYKデータ(CMYK表色系)に色変換する場合に用いるパラメータを格納する。
【0018】
色変換処理部11は、色変換補正部14内の補正データ保持部144の色変換ルックアップテーブルTを使用して、クライアントPC2から入力されるRGB各色の画像データ2bに色変換処理を行ってCMYK各色の画像データに変換する。具体的には、色変換処理部11は、クライアントPC2のモニタ表示の色合いを、画像形成装置1の色材にて再現するような色変換を実施する。
【0019】
濃度変換処理部12は、色変換処理後の画像データに対して濃度変換処理を行う。より具体的には、濃度変換処理部12は、色変換処理部11から入力される画像データを、CMYKの色毎に濃度変換する。具体的には、濃度変換処理部12は、画像形成装置1の個体差を吸収するような濃度変換を実施する。
【0020】
階調処理部13は、濃度変換処理後のCMYK各色の画像データを、画像形成部20の階調処理能力に応じた階調数の画像データに変換する。具体的には、階調処理部13は、画像形成時のドット配置を決定し、画像形成部20に送る。
【0021】
色変換補正部14は、画像読取部30が読み取ったリプレース前の画像形成装置の出力物サンプルおよびリプレース後の画像形成装置1の出力物サンプルのデータを用いて、色変換ルックアップテーブルTの補正処理を行う。
【0022】
次に、色変換補正部14の機能についてより詳細に説明する。図1に示すように、色変換補正部14は、データ処理部142と、補正データ生成部143と、上述した色変換ルックアップテーブルTを格納する補正データ保持部144とを備えている。
【0023】
データ処理部142は、画像読取部30が読み取ったリプレース前の画像形成装置の出力物サンプルおよびリプレース後の画像形成装置1の出力物サンプルのデータの解析を行う。
【0024】
補正データ生成部143は、データ処理部142の解析に基づき色変換ルックアップテーブルTの変更および修正を実施し、補正データ保持部144に保存する。
【0025】
次に、画像形成装置1における色変換ルックアップテーブルTの補正処理について詳述する。
【0026】
ここで、図2は色変換ルックアップテーブルTの補正処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0027】
図2に示すように、まず、画像読取部30は、リプレース前の画像形成装置の出力物サンプル(手本となる第1の出力物)およびリプレース後の画像形成装置1の出力物サンプル(第2の出力物)をスキャンして読み取る(ステップS1)。
【0028】
次に、データ処理部142は、スキャンしたデータから文字以外の領域の抽出を行う(ステップS2)。より詳細には、データ処理部142は、文字部は黒文字のように紙白に対する変化量が多くエッジが強い傾向があることから、この傾向に従い文字部および非文字部の抽出を行う。
【0029】
次に、データ処理部142は、非文字領域の抽出後、スキャンデータの画素の平滑化処理を行う(ステップS3)。より詳細には、データ処理部142は、読み取り時のノイズの影響を低減するために、平滑化処理を実施する。
【0030】
次に、補正データ生成部143は、平滑化処理後、リプレース前の画像形成装置の出力物サンプルのスキャンデータの画素値(RGB値:第1の特徴量)およびリプレース後の画像形成装置1の出力物サンプルのスキャンデータの画素値(RGB値:第2の特徴量)を、3次元ルックアップテーブル(3D-LUT)にマッピングし(ステップS4)、色相毎の入力画素値の分布を把握する(ステップS5)。
【0031】
図3は、3次元ルックアップテーブル(3D-LUT)を示す概念図である。3D-LUTは、図3(a)に示すように、RGB色空間をベースとする場合は、R方向、G方向、B方向の3次元の軸を持った立体にて構成される。RGB各8bitとした時、R=G=B=0の色は黒を表し、R=G=B=255は白を表す。また、3D-LUTは、2以上の任意の値毎に均等に分割した時の格子点を代表点とすることにより、データ量を削減することができ、格子点上に無い値は、補間演算による算出が可能である。
【0032】
図3(b)に示すように、白とR,G,BおよびC,M,Yを結ぶ線、また、R,G,BおよびC,M,Yと黒を結ぶ線は、R,G,BおよびC,M,Yの色の系統を表し、任意のRGB値を3D-LUT上にプロットすることにより、色相の把握が可能になる。図3(b)にて、RとYの間にも色相の基準点を設け、色相の区分け数を多くすることも可能である。
【0033】
次に、補正データ生成部143は、リプレース前の色相毎の入力画素値の分布およびリプレース後の色相毎の入力画素値の分布から差分等を算出し、リプレース後の画像形成装置1に保持している色変換ルックアップテーブルTの補正を行う(ステップS6)。なお、色変換ルックアップテーブルTは、構成としては3D-LUTであるが、ステップS4で用いた3D-LUTは画素値に分布の把握および差分算出に使用するものであり、色変換ルックアップテーブルTとは異なるものである。
【0034】
次に、補正データ生成部143による色変換ルックアップテーブルの補正処理について詳述する。ここで、図4は色変換ルックアップテーブルの補正処理の流れを詳細に示すフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、まず、補正データ生成部143は、色変換ルックアップテーブルTの補正が初めてかどうかを確認する(ステップS11)。
【0036】
補正データ生成部143は、色変換ルックアップテーブルTの補正が初めてである場合(ステップS11のYes)、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値以上かどうかを確認する(ステップS12)。
【0037】
補正データ生成部143は、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値以上である場合(ステップS12のYes)、リプレース後の画像形成装置1にて保持している色変換ルックアップテーブルT(初期の色変換ルックアップテーブルTとする)に対する補正量を大きくし(ステップS13)、色変換ルックアップテーブルTの補正を行う(ステップS14)。
【0038】
また、補正データ生成部143は、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値未満である場合(ステップS12のNo)、リプレース後の画像形成装置1にて保持している色変換ルックアップテーブルT(初期の色変換ルックアップテーブルTとする)に対する補正量を小さくし(ステップS15)、色変換ルックアップテーブルTの補正を行う(ステップS14)。
【0039】
対象とする画素数が多ければ多いほど信頼性の高い情報をみなせるため、補正データ生成部143は、リプレース前の画像形成装置の色合いに近づけるべく、対象とする画素数が多ければ多いほど補正量を大きくする制御を行う。
【0040】
一方、補正データ生成部143は、色変換ルックアップテーブルTの補正が初めてでない場合(ステップS11のNo)、入力データに新規の色相(未補正)が含まれているかどうかを確認する(ステップS16)。
【0041】
補正データ生成部143は、入力データに新規(未補正)の色相が含まれている場合(ステップS16のYes)、ステップS12の画素数の閾値判定に従い、補正量を決定する。
【0042】
補正データ生成部143は、入力データに新規(未補正)の色相が含まれていない場合(ステップS16のNo)、更新済の色変換ルックアップテーブルTの対象色相に対し、補正の実施要否を判断することになる。
【0043】
具体的には、補正データ生成部143は、初期の色変換ルックアップテーブルTと更新済の色変換ルックアップテーブルTの差分を算出する(ステップS17)。
【0044】
補正データ生成部143は、差分が所定値より大きい場合(ステップS18のYes)、実施済みの補正が既に十分であるとみなし、色変換ルックアップテーブルTの補正は実施せずに、処理を終了する。これにより、対象色相の変更度合いを把握することができるので、過補正を防ぐことができる。
【0045】
補正データ生成部143は、差分が所定値より小さい場合(ステップS18のNo)、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値以上かどうかを確認する(ステップS19)。
【0046】
補正データ生成部143は、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値以上である場合(ステップS19のYes)、更新後の色変換ルックアップテーブルTからの補正量を大きくする(ステップS20)。このように、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値以上である場合に、更新後の色変換ルックアップテーブルTからの補正量を大きくするのは、新たに取得したデータのほうが、信頼性が高いとみなしていることに因る。これにより、参照数が多い場合に色変換ルックアップテーブルTの高精度化を図ることができる。
【0047】
一方、補正データ生成部143は、任意の色相の3D-LUT格子点周辺の画素数が閾値未満である場合(ステップS19のNo)、更新後の色変換ルックアップテーブルTからの補正量を小さくする(ステップS21)。これにより、参照数が少ない場合の過補正を防ぐことができる。
【0048】
図5は、リプレース前の画像形成装置およびリプレース後の画像形成装置1の出力物サンプルを画像読取部30にて読み取った時のRGBの分布の一例を示す図である。図5(a)はリプレース前の画像形成装置の出力物サンプルを画像読取部30にて読み取った時のRGBの分布の一例を示す。図5(b)は、リプレース後の画像形成装置1の出力物サンプルを画像読取部30にて読み取った時のRGBの分布の一例を示す。図5に示すように、リプレース前の画像形成装置のほうがRの値が大きい方向に分布しているため、リプレース後の画像形成装置1の色変換ルックアップテーブルTに対しても、Rの出力値を大きくする方向に補正する必要があることがわかる。
【0049】
このように本実施形態によれば、新規に購入したリプレース後の画像形成装置1の印刷結果を、今まで使用していたリプレース前の画像形成装置と同じような色合いにする時に、画像データ毎の色変換ルックアップテーブルの保持を不要とし、また、特定画像への色合わせ込みによる過補正を防ぐことにより、濃度調整の手順を簡単にすることができる。
【0050】
より詳細には、画像形成装置1の色変換ルックアップテーブルTを補正する際に、任意の画像(出力物サンプル)のスキャナ読み取り情報を用いて、色相毎の画素数および変化量を元に補正を実施すること、および、別の画像(出力物サンプル)のスキャナ読み取り情報を用いて、補正済みの色変換ルックアップテーブルTを再補正する。これにより、色変換対象のRGB画像毎に特徴量抽出および補正パラメータ算出することなく色変換ルックアップテーブルTを生成し、特定のRGB画像に特化することによる過補正を防ぐことができる。
【0051】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置1を複合機に適用した場合のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本図に示すように、この複合機は、コントローラ110とエンジン部(Engine)160とをPCI(Peripheral Component Interconnect)バスで接続した構成となる。コントローラ110は、複合機全体の制御と描画、通信、図示しない操作部からの入力を制御するコントローラである。エンジン部160は、PCIバスに接続可能なプリンタエンジンなどであり、たとえば白黒プロッタ、1ドラムカラープロッタ、4ドラムカラープロッタ、スキャナまたはファックスユニットなどである。なお、このエンジン部160には、プロッタなどのいわゆるエンジン部分に加えて、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれる。
【0052】
コントローラ110は、CPU111と、ノースブリッジ(NB)113と、システムメモリ(MEM-P)112と、サウスブリッジ(SB)114と、ローカルメモリ(MEM-C)117と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)116と、ハードディスクドライブ(HDD)118とを有し、ノースブリッジ(NB)113とASIC116との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス115で接続した構成となる。また、MEM-P112は、ROM(Read Only Memory)112aと、RAM(Random Access Memory)112bとをさらに有する。
【0053】
CPU111は、複合機の全体制御をおこなうものであり、NB113、MEM-P112およびSB114からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0054】
NB113は、CPU111とMEM-P112、SB114、AGP115とを接続するためのブリッジであり、MEM-P112に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0055】
MEM-P112は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM112aとRAM112bとからなる。ROM112aは、プログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM112bは、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0056】
SB114は、NB113とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB114は、PCIバスを介してNB113と接続されており、このPCIバスには、ネットワークインターフェース(I/F)部なども接続される。
【0057】
ASIC116は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGP115、PCIバス、HDD118およびMEM-C117をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC116は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC116の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM-C117を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などをおこなう複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、エンジン部160との間でPCIバスを介したデータ転送をおこなうPCIユニットとからなる。このASIC116には、PCIバスを介してFCU(Fax Control Unit)130、USB(Universal Serial Bus)140、IEEE1394(the Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インターフェース150が接続される。操作表示部120はASIC116に直接接続されている。
【0058】
MEM-C117は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD(Hard Disk Drive)118は、画像データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。
【0059】
AGP115は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレーターカード用のバスインターフェースであり、MEM-P112に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレーターカードを高速にするものである。
【0060】
なお、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0061】
さらに、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0062】
本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、上述した画像処理部10の各部(色変換処理部11、濃度変換処理部12、階調処理部13、色変換補正部14)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、色変換処理部11、濃度変換処理部12、階調処理部13、色変換補正部14が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0063】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置1を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち、少なくともプリンタ機能(画像形成部20)およびスキャナ機能(画像読取部30)を有する複合機に適用した例を挙げて説明したが、プリンタ機能およびスキャナ機能を有する画像形成装置であれば、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等のいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 画像形成装置
14 色変換補正部
30 画像読取部
144 補正データ保持部
T 色変換ルックアップテーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】特許第4793356号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6