(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】パターン露光装置、デバイス製造方法、及び露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2023533106
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2022026489
(87)【国際公開番号】W WO2023282208
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2021111450
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 恭志
(72)【発明者】
【氏名】中島 利治
(72)【発明者】
【氏名】川戸 聡
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039871(JP,A)
【文献】特開2006-148137(JP,A)
【文献】国際公開第2004/109777(WO,A1)
【文献】特開2008-197472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画データに基づいて選択的に駆動される複数のマイクロミラーを有する空間光変調素子と、所定の入射角で前記空間光変調素子に照明光を照射する照明ユニットと、前記空間光変調素子の選択されたオン状態のマイクロミラーからの反射光を基板に投影する投影ユニットとを備え、前記描画データに対応したパターンを前記基板に投影露光するパターン露光装置であって、
前記照明ユニットは、
前記照明光の源となる所定形状の面光源からの光を集光して前記空間光変調素子に傾斜照射すると共に、前記投影ユニットの光軸に対して前記入射角で傾いた光軸に沿って配置されて、前記面光源を前記投影ユニットの瞳と光学的に共役にする集光光学部材と、
前記空間光変調素子の前記オン状態のマイクロミラーからの反射光によって前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の像の輪郭が前記入射角に応じて楕円状に歪むことを補正するように、前記面光源の輪郭の形状を変形させる補正光学部材と、
を備えるパターン露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン露光装置であって、
前記照明ユニットは、複数の点光源の集合体によって前記面光源を生成するオプチカルインテグレータを含み、
前記集光光学部材は、前記空間光変調素子を前記複数の点光源の各々からの照明光でケーラー照明するコンデンサーレンズ系で構成される、
パターン露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン露光装置であって、
前記補正光学部材は、前記複数の点光源の集合体のうちの一部分からの照明光を前記コンデンサーレンズ系に向けて通すことによって、前記面光源の輪郭の形状を変形させる開口絞りで構成される、
パターン露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン露光装置であって、
前記開口絞りは、前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の像の楕円状の輪郭の長軸と短軸との方向を90°回転させた状態の楕円状の開口を有する、
パターン露光装置。
【請求項5】
請求項2に記載のパターン露光装置であって、
前記補正光学部材は、変形させるべき前記面光源の輪郭の形状に対応させて前記オプチカルインテグレータに入射する照明光の分布を整形する分布整形光学素子で構成される、パターン露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン露光装置であって、
前記分布整形光学素子は、前記オプチカルインテグレータに入射する照明光の分布の全体的な輪郭を、前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の像の楕円状の輪郭の長軸と短軸との方向を90°回転させた状態の楕円状にする回折光学素子、シリンドリカルレンズ、又はフレネルレンズのいずれかで構成される、
パターン露光装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のパターン露光装置であって、
前記補正光学部材によって変形される前記面光源の輪郭は、短軸方向の寸法と長軸方向の寸法との比が前記入射角の余弦値となる楕円形状に設定される、
パターン露光装置。
【請求項8】
電子デバイス用のパターンの描画データに基づいて選択的に駆動される複数のマイクロミラーを有する空間光変調素子を、照明ユニットからの照明光で傾斜照明し、前記空間光変調素子の選択されたオン状態のマイクロミラーからの反射光を、投影ユニットを介して基板に投影露光することで、前記基板上に前記電子デバイスのパターンを形成するデバイス製造方法であって、
前記照明ユニット内で生成される所定形状の面光源からの光を前記照明光として集光して、前記空間光変調素子に所定の入射角で傾斜照射する段階と、
前記空間光変調素子の前記オン状態のマイクロミラーからの反射光によって前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の像の輪郭が前記入射角に応じて楕円状に歪むことを補正するように、前記面光源の輪郭の形状を変形させる段階と、
を含むデバイス製造方法。
【請求項9】
複数のマイクロミラーを有する空間光変調素子と、
前記空間光変調素子に照明光を照射する照明ユニットと、
前記空間光変調素子のオン状態のマイクロミラーからの反射光を投影する投影ユニットと、を備え、
前記照明ユニットは、
第1シリンドリカルレンズ
を含み、
前記第1シリンドリカルレンズは、前記
第1シリンドリカルレンズを通過した
前記照明光の源となる面光源からの光
が前記空間光変調素子
に照射
されるように配置され、
前記第1シリンドリカルレンズは、前記反射光によって前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の分布の形状が楕円状に歪むことを補正するように、前記面光源の分布の形状を変形させる露光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の露光装置であって、
前記照明ユニットは、前記第1シリンドリカルレンズを通過した光を集光して前記空間光変調素子に照射する集光光学部材を含む、
露光装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の露光装置であって、
前記第1シリンドリカルレンズとは異なる第2シリンドリカルレンズをさらに含み、
前記第2シリンドリカルレンズは、前記第1シリンドリカルレンズと前記空間光変調素子との間の光路上に位置し、
前記第1シリンドリカルレンズは、前記照明ユニットの光軸を含む第1平面において正の屈折力をもち、前記光軸を含み前記第1平面と垂直な第2平面において屈折力をもたず、
前記第2シリンドリカルレンズは、前記第1平面において負の屈折力をもち、前記第2平面において屈折力をもたない、
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス用のパターンを露光するパターン露光装置、そのようなパターン露光装置を用いる電子デバイスのデバイス製造方法及び露光装置に関する。
本願は、2021年7月5日に出願された日本国特願2021-111450号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶や有機ELによる表示パネル、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが使用されている。この種の露光装置は、ガラス基板、半導体ウェハ、プリント配線基板、樹脂フィルム等の被露光基板(以下、単に基板とも呼ぶ)の表面に塗布された感光層に電子デバイス用のマスクパターンを投影露光している。
【0003】
そのマスクパターンを固定的に形成するマスク基板の作製には時間と経費を要する為、マスク基板の代わりに、微少変位する複数のマイクロミラーを規則的に配列したデジタル・ミラー・デバイス(DMD)等の空間光変調素子(可変マスクパターン生成器)を使用した露光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された露光装置では、波長405nm、又は365nmの半導体レーザによる光源3からの光を、照射光学系6を介して空間光変調器4としてのデジタル・ミラー・デバイス(DMD)に、入射角22~26°で傾斜照射し、空間光変調器4(DMD)の複数の画素ミラーのうちオン状態の画素ミラーからの反射光を、投影光学系5を介して対象物Wの露光エリアに投影露光している。
【0004】
特許文献1の場合、DMDの画素ミラー(マイクロミラー)の傾斜角度は、照明光の入射角22~26°の1/2の角度に設定される。複数の画素ミラー(マイクロミラー)はマトリックス状に一定ピッチで配置されている為、光学的な回折格子(ブレーズド回折格子)としての作用も備える。特に電子デバイス用の微細なパターンを投影露光する場合、DMDへの照明光を傾斜照明する場合、DMDの回折格子としての作用(回折光の発生方向や強度分布の状態)によって、パターンの結像状態を劣化させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、描画データに基づいて選択的に駆動される複数のマイクロミラーを有する空間光変調素子と、所定の入射角で前記空間光変調素子に照明光を照射する照明ユニットと、前記空間光変調素子の選択されたオン状態のマイクロミラーからの反射光を入射して基板に投影する投影ユニットとを備え、前記描画データに対応したパターンを前記基板に投影露光するパターン露光装置であって、前記照明ユニットは、前記照明光の源となる所定形状の面光源からの光を集光して前記空間光変調素子に傾斜照射すると共に、前記投影ユニットの光軸に対して前記入射角で傾いた光軸に沿って配置されて、前記面光源を前記投影ユニットの瞳と光学的に共役にする為の集光光学部材と、前記空間光変調素子の前記オン状態のマイクロミラーからの反射光によって前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の像の輪郭が前記入射角に応じて楕円状に歪むことを補正するように、前記面光源の輪郭の形状を変形させる補正光学部材と、を備えるパターン露光装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、電子デバイス用のパターンの描画データに基づいて選択的に駆動される複数のマイクロミラーを有する空間光変調素子を、照明ユニットからの照明光で照明し、前記空間光変調素子の選択されたオン状態のマイクロミラーからの反射光を、投影ユニットを介して基板に投影露光することで、前記基板上に前記電子デバイスのパターンを形成するデバイス製造方法であって、前記照明ユニット内で生成される所定形状の面光源からの光を前記照明光として集光して、前記空間光変調素子に所定の入射角で傾斜照射する段階と、前記空間光変調素子の前記オン状態のマイクロミラーからの反射光によって前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の像の輪郭が前記入射角に応じて楕円状に歪むことを補正するように、前記面光源の輪郭の形状を変形させる段階と、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、複数のマイクロミラーを有する空間光変調素子と、前記空間光変調素子に照明光を照射する照明ユニットと、前記空間光変調素子のオン状態のマイクロミラーからの反射光を投影する投影ユニットと、を備え、前記照明ユニットは、第1シリンドリカルレンズを含み、前記第1シリンドリカルレンズは、前記第1シリンドリカルレンズを通過した前記照明光の源となる面光源からの光が前記空間光変調素子に照射されるように配置され、前記第1シリンドリカルレンズは、前記反射光によって前記投影ユニットの瞳に形成される前記面光源の分布の形状が楕円状に歪むことを補正するように、前記面光源の分布の形状を変形させる露光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態によるパターン露光装置EXの外観構成の概要を示す斜視図である。
【
図2】複数の露光モジュール群MUの各々の投影ユニットPLUによって基板P上に投射されるDMD10の投影領域IAnの配置例を示す図である。
【
図3】
図2中の特定の4つの投影領域IA8、IA9、IA10、IA27の各々による継ぎ露光の状態を説明する図である。
【
図4】X方向(走査露光方向)に並ぶ2つの露光モジュールMU18、MU19の具体的な構成をXZ面内で見た光学配置図である。
【
図5】DMD10と照明ユニットPLUとがXY面内で角度θkだけ傾いた状態を模式的に表した図である。
【
図6】投影ユニットPLUによるDMD10のマイクロミラーの結像状態を詳細に説明する図である。
【
図7】オプチカルインテグレータ108としてのMFEレンズ108Aを出射面側から見た模式的な図である。
【
図8】
図7のMFEレンズ108Aのレンズ素子ELの出射面側に形成される点光源SPFと光ファイバー束FBnの出射端との配置関係の一例を模式的に表した図である。
【
図9】
図6に示した投影ユニットPLUの瞳Epに形成される光源像の様子を模式的に表した図である。
【
図10】
図6の光路図を簡略化して表した光路図である。
【
図11】DMD10からの結像光束Saの0次光相当成分によって瞳Epに形成される光源像Ipsの様子を模式的に表した図である。
【
図12】
図7と同様に、オプチカルインテグレータ108のMFEレンズ108Aを出射面側から見た楕円状の光源面の模式的な図である。
【
図13】
図6に示した投影ユニットPLUの瞳Epから基板Pまでの光路の結像光束Saの振る舞いを模式的に表した図である。
【
図14】DMD10の駆動回路への電源供給がオフの場合におけるDMD10の一部分のマイクロミラーMsの状態を拡大した斜視図である。
【
図15】DMD10のマイクロミラーMsがオン状態とオフ状態となった場合のDMD10のミラー面のうちの一部を拡大した斜視図である。
【
図16】X’Y’面内で見たDMD10のミラー面の一部を示し、Y’方向に並ぶ一列のマイクロミラーMsのみがオン状態になる場合を示す図である。
【
図17】
図16のDMD10のミラー面のa-a’矢視部をX’Z面内で見た図である。
【
図18】
図16のように孤立したマイクロミラーMsaからの反射光(結像光束)Saの投影ユニットPLUによる結像状態をX’Z面内で模式的に表した図である。
【
図19】孤立したマイクロミラーMsaからの正規反射光Saによる瞳Epにおける回折像の点像強度分布Ieaを模式的に表したグラフである。
【
図20】X’Y’面内で見たDMD10のミラー面の一部を示す図であり、X’方向に隣接する複数のマイクロミラーMsが同時にオン状態となる場合を示す図である。
【
図21】
図20のDMD10のミラー面のa-a’矢視部をX’Z面内で見た図である。
【
図22】
図20、
図21の状態のDMD10から発生する回折光Idjの角度θjの分布の一例を表すグラフである。
【
図23】
図22のような回折光の発生状態のときの瞳Epでの結像光束の強度分布を模式的に表した図である。
【
図24】ライン&スペース状のパターンの投影時におけるDMD10のミラー面の一部の状態をX’Y’面内で見た示す図である。
【
図25】
図24のDMD10のミラー面のa-a’矢視部をX’Z面内で見た図である。本実施形態の分配部の変形例を示す図である。
【
図26】
図24、
図25の状態のDMD10から発生する回折光Idjの角度θjの分布の一例を表すグラフである。
【
図27】
図26のような回折光の発生状態のときの瞳Epでの結像光束の強度分布を模式的に表した図である。
【
図28】像面上で線幅が1μmのライン&スペースパターンの空間像のコントラストをシミュレーションした結果を表わすグラフである。
【
図29】式(2)に基づいて波長λとテレセン誤差Δθtとの関係を求めたグラフである。
【
図30】
図4、又は
図6に示した照明ユニットILUのうちの光ファイバー束FBnからMFE108Aに至る光路の具体的な構成を示す図である。
【
図31】
図4、又は
図6に示した照明ユニットILUのうちのMFE108AからDMD10に至る光路の具体的な構成を示す図である。
【
図32】MFE108Aに入射する照明光ILmをX’Z面内で傾けた場合に、MFE108Aの出射面側に形成される点光源SPFの状態を誇張して示す図である。
【
図33】回折光学素子(DOE)を用いて、MFE108Aの射出面側に形成される面光源を楕円状にする照明ユニットILUの変形例を示す図である。
【
図34】MFE108Aの射出面側に楕円状の面光源を形成する為の第2の変形例による光学配置を示す図である。
【
図35】MFE108Aの出射面側に形成される複数の点光源SPFの集合体(面光源)を+Z方向に見た図である。
【
図36】
図35の楕円状輪帯開口を変形して4重極照明を行う場合の面光源の4つの扇状領域の配置を模式的に示す図である。
【
図37】DMD10のマイクロミラーMsの配列ピッチで生じる回折光の投影ユニットPLUの瞳Epの面での分布を模式的に表す図である。
【
図38】
図37で説明した波長λと瞳Epの最大の開口数とを変えたときに、投影ユニットPLUの瞳Epの面に現れる回折光の模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の態様に係るパターン露光装置(パターン形成装置)について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。即ち、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。なお、図面及び以下の詳細な説明の全体にわたって、同じ又は同様の機能を達成する部材や構成要素については同じ参照符号が使用される。
【0011】
〔パターン露光装置の全体構成〕
図1は、本実施の形態のパターン露光装置(以下、単に露光装置とも呼ぶ)EXの外観構成の概要を示す斜視図である。露光装置EXは、空間光変調素子(デジタル・ミラー・デバイス:DMD)によって、空間内での強度分布が動的に変調される露光光を被露光基板に結像投影する装置である。特定の実施形態において、露光装置EXは、表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(スキャナ)である。そのガラス基板は、少なくとも一辺の長さ、または対角長が500mm以上であり、厚さが1mm以下のフラットパネルディスプレイ用の基板Pとする。露光装置EXは、基板Pの表面に一定の厚みで形成された感光層(フォトレジスト)にDMDで作られるパターンの投影像を露光する。露光後に露光装置EXから搬出される基板Pは、現像工程の後に所定のプロセス工程(成膜工程、エッチング工程、メッキ工程等)に送られる。
【0012】
露光装置EXは、アクティブ防振ユニット1a、1b、1c、1d(1dは不図示)上に載置されたペデスタル2と、ペデスタル2上に載置された定盤3と、定盤3上で2次元に移動可能なXYステージ4Aと、XYステージ4A上で基板Pを平面上に吸着保持する基板ホルダ4Bと、基板ホルダ4B(基板P)の2次元の移動位置を計測するレーザ測長干渉計(以下、単に干渉計とも呼ぶ)IFX、IFY1~IFY4とで構成されるステージ装置を備える。このようなステージ装置は、例えば、米国特許公開第2010/0018950号、米国特許公開第2012/0057140号に開示されている。
【0013】
図1において、直交座標系XYZのXY面はステージ装置の定盤3の平坦な表面と平行に設定され、XYステージ4AはXY面内で並進移動可能に設定される。また、本実施の形態では、座標系XYZのX軸と平行な方向がスキャン露光時の基板P(XYステージ4A)の走査移動方向に設定される。基板PのX軸方向の移動位置は干渉計IFXで逐次計測され、Y軸方向の移動位置は、4つの干渉計IFY1~IFY4の内の少なくとも1つ(好ましくは2つ)以上によって逐次計測される。基板ホルダ4Bは、XYステージ4Aに対して、XY面と垂直なZ軸の方向に微少移動可能、且つXY面に対して任意の方向に微少傾斜可能に構成され、基板Pの表面と投影されたパターンの結像面とのフォーカス調整とレベリング(平行度)調整とがアクティブに行われる。更に基板ホルダ4Bは、XY面内での基板Pの傾きをアクティブに調整する為に、Z軸と平行な軸線の回りに微少回転(θz回転)可能に構成されている。
【0014】
露光装置EXは、更に、複数の露光(描画)モジュール群MU(A)、MU(B)、MU(C)を保持する光学定盤5と、光学定盤5をペデスタル2から支持するメインコラム6a、6b、6c、6d(6dは不図示)とを備える。複数の露光モジュール群MU(A)、MU(B)、MU(C)の各々は、光学定盤5の+Z方向側に取り付けられて、光ファイバーユニットFBUからの照明光を入射する照明ユニットILUと、光学定盤5の-Z方向側に取り付けられてZ軸と平行な光軸を有する投影ユニットPLUとを有する。更に露光モジュール群MU(A)、MU(B)、MU(C)の各々は、照明ユニットILUからの照明光を-Z方向に向けて反射させて、投影ユニットPLUに入射させる光変調部としてのデジタル・ミラー・デバイス(DMD)10を備える。照明ユニットILU、DMD10、投影ユニットPLUによる露光モジュール群の詳細な構成は後述する。
【0015】
露光装置EXの光学定盤5の-Z方向側には、基板P上の所定の複数位置に形成されたアライメントマークを検出する複数のアライメント系(顕微鏡)ALGが取り付けられている。そのアライメント系ALGの各々の検出視野のXY面内での相対的な位置関係の確認(較正)、露光モジュール群MU(A)、MU(B)、MU(C)の各々の投影ユニットPLUから投射されるパターン像の各投影位置とアライメント系ALGの各々の検出視野の位置とのベースライン誤差の確認(較正)、或いは投影ユニットPLUから投射されるパターン像の位置や像質の確認の為に、基板ホルダ4B上の-X方向の端部には、較正用基準部CUが設けられている。なお、
図1では一部を不図示としたが、露光モジュール群MU(A)、MU(B)、MU(C)の各々は、本実施の形態では、一例として9つのモジュールがY方向に一定間隔で並べられるが、そのモジュール数は9つよりも少なくても良いし、多くても良い。
【0016】
図2は、露光モジュール群MU(A)、MU(B)、MU(C)の各々の投影ユニットPLUによって基板P上に投射されるデジタル・ミラー・デバイス(DMD)10の投影領域IAnの配置例を示す図であり、直交座標系XYZは
図1と同じに設定される。本実施の形態では、X方向に離間して配置される1列目の露光モジュール群MU(A)、2列目の露光モジュール群MU(B)、3列目の露光モジュール群MU(C)の各々は、Y方向に並べられた9つのモジュールで構成される。露光モジュール群MU(A)は、+Y方向に配置された9つのモジュールMU1~MU9で構成され、露光モジュール群MU(B)は、-Y方向に配置された9つのモジュールMU10~MU18で構成され、露光モジュール群MU(C)は、+Y方向に配置された9つのモジュールMU19~MU27で構成される。モジュールMU1~MU27は全て同じ構成であり、露光モジュール群MU(A)と露光モジュール群MU(B)とをX方向に関して向かい合わせの関係としたとき、露光モジュール群MU(B)と露光モジュール群MU(C)とはX方向に関して背中合わせの関係になっている。
【0017】
図2において、モジュールMU1~MU27の各々による投影領域IA1、IA2、IA3、・・・、IA27(nを1~27として、IAnと表すこともある)の形状は、一例として、ほぼ1:2の縦横比を持ってY方向に延びた長方形になっている。本実施の形態では、基板Pの+X方向の走査移動に伴って、1列目の投影領域IA1~IA9の各々の-Y方向の端部と、2列目の投影領域IA10~IA18の各々の+Y方向の端部とで継ぎ露光が行われる。そして、1列目と2列目の投影領域IA1~IA18の各々で露光されなかった基板P上の領域は、3列目の投影領域IA19~IA27の各々によって継ぎ露光される。1列目の投影領域IA1~IA9の各々の中心点はY軸と平行な線k1上に位置し、2列目の投影領域IA10~IA18の各々の中心点はY軸と平行な線k2上に位置し、3列目の投影領域IA19~IA27の各々の中心点はY軸と平行な線k3上に位置する。線k1と線k2のX方向の間隔は距離XL1に設定され、線k2と線k3のX方向の間隔は距離XL2に設定される。
【0018】
ここで、投影領域IA9の-Y方向の端部と投影領域IA10の+Y方向の端部との継ぎ部をOLa、投影領域IA10の-Y方向の端部と投影領域IA27の+Y方向の端部との継ぎ部をOLb、そして投影領域IA8の+Y方向の端部と投影領域IA27の-Y方向の端部との継ぎ部をOLcとしたとき、その継ぎ露光の状態を
図3にて説明する。
図3において、直交座標系XYZは
図1、
図2と同一に設定され、投影領域IA8、IA9、IA10、IA27(及び、他の全ての投影領域IAn)内の座標系X’Y’は、直交座標系XYZのX軸、Y軸(線k1~k3)に対して、角度θkだけ傾くように設定される。即ち、DMD10の複数のマイクロミラーの2次元の配列が座標系X’Y’となるように、DMD10の全体がXY面内で角度θkだけ傾けられている。
【0019】
図3中の投影領域IA8、IA9、IA10、IA27(及び、他の全ての投影領域IAnも同じ)の各々を包含する円形の領域は、投影ユニットPLUの円形イメージフィールドPLf’を表す。継ぎ部OLaでは、投影領域IA9の-Y’方向の端部の斜め(角度θk)に並ぶマイクロミラーの投影像と、投影領域IA10の+Y’方向の端部の斜め(角度θk)に並ぶマイクロミラーの投影像とがオーバーラップするように設定される。また、継ぎ部OLbでは、投影領域IA10の-Y’方向の端部の斜め(角度θk)に並ぶマイクロミラーの投影像と、投影領域IA27の+Y’方向の端部の斜め(角度θk)に並ぶマイクロミラーの投影像とがオーバーラップするように設定される。同様に、継ぎ部をOLcでは、投影領域IA8の+Y’方向の端部の斜め(角度θk)に並ぶマイクロミラーの投影像と、投影領域IA27の-Y’方向の端部の斜め(角度θk)に並ぶマイクロミラーの投影像とがオーバーラップするように設定される。
【0020】
〔照明ユニットの構成〕
図4は、
図1、
図2に示した露光モジュール群MU(B)中のモジュールMU18と、露光モジュール群MU(C)中のモジュールMU19との具体的な構成をXZ面内で見た光学配置図である。
図4の直交座標系XYZは
図1~
図3の直交座標系XYZと同じに設定される。また、
図2に示した各モジュールのXY面内での配置から明らかなように、モジュールMU18はモジュールMU19に対して+Y方向に一定間隔だけずらされると共に、互いに背中合わせの関係で設置されている。モジュールMU18内の各光学部材とモジュールMU19内の各光学部材は、それぞれ同じ材料で同じに構成されるので、ここでは主にモジュールMU18の光学構成について詳細に説明する。なお、
図1に示した光ファイバーユニットFBUは、
図2に示した27個のモジュールMU1~MU27の各々に対応して、27本の光ファイバー束FB1~FB27で構成される。
【0021】
モジュールMU18の照明ユニットILUは、光ファイバー束FB18の出射端から-Z方向に進む照明光ILmを反射するミラー100、ミラー100からの照明光ILmを-Z方向に反射するミラー102、コリメータレンズとして作用するインプットレンズ系104、照度調整フィルター106、マイクロ・フライ・アイ(MFE)レンズやフィールドレンズ等を含むオプチカルインテグレータ108、コンデンサーレンズ系110、及び、コンデンサーレンズ系110からの照明光ILmをDMD10に向けて反射する傾斜ミラー112とで構成される。ミラー102、インプットレンズ系104、オプチカルインテグレータ108、コンデンサーレンズ系110、並びに傾斜ミラー112は、Z軸と平行な光軸AXcに沿って配置される。
【0022】
光ファイバー束FB18は、1本の光ファイバー線、又は複数本の光ファイバー線を束ねて構成される。光ファイバー束FB18(光ファイバー線の各々)の出射端から照射される照明光ILmは、後段のインプットレンズ系104でけられること無く入射するような開口数(NA、広がり角とも呼ぶ)に設定されている。インプットレンズ系104の前側焦点の位置は、設計上では光ファイバー束FB18の出射端の位置と同じになるように設定される。さらに、インプットレンズ系104の後側焦点の位置は、光ファイバー束FB18の出射端に形成される単一又は複数の点光源からの照明光ILmをオプチカルインテグレータ108のMFEレンズ108Aの入射面側で重畳させるように設定されている。従って、MFEレンズ108Aの入射面は光ファイバー束FB18の出射端からの照明光ILmによってケーラー照明される。なお、初期状態では、光ファイバー束FB18の出射端のXY面内での幾何学的な中心点が光軸AXc上に位置し、光ファイバー線の出射端の点光源からの照明光ILmの主光線(中心線)は光軸AXcと平行(又は同軸)になっているものとする。
【0023】
インプットレンズ系104からの照明光ILmは、照度調整フィルター106で0%~90%の範囲の任意の値で照度を減衰された後、オプチカルインテグレータ108(MFEレンズ108A、フィールドレンズ等)を通って、コンデンサーレンズ系110に入射する。MFEレンズ108Aは、数十μm角の矩形のマイクロレンズを2次元に複数配列したものであり、その全体の形状はXY面内で、DMD10のミラー面全体の形状(縦横比が約1:2)とほぼ相似になるように設定される。また、コンデンサーレンズ系110の前側焦点の位置は、MFEレンズ108Aの射出面の位置とほぼ同じになるように設定される。その為、MFEレンズ108Aの複数のマイクロレンズの各射出側に形成される点光源からの照明光の各々は、コンデンサーレンズ系110によってほぼ平行な光束に変換され、傾斜ミラー112で反射された後、DMD10上で重畳されて均一な照度分布となる。
【0024】
MFEレンズ108Aの射出面には、複数の点光源(集光点)が2次元的に密に配列した面光源が生成されることから、面光源化部材として機能する。このような、MFEレンズ108Aは、例えば、特開2004-045885号公報に開示されているように、照明光の入射面側と射出面側の各々に複数本のシリンドリカルレンズを並べて形成したシリンドリカルマイクロフライアイレンズ素子を、光軸方向に2枚配置した構成にしても良い。
【0025】
図4に示すモジュールMU18内において、コンデンサーレンズ系110を通るZ軸と平行な光軸AXcは、傾斜ミラー112で折り曲げられてDMD10に至るが、傾斜ミラー112とDMD10の間の光軸を光軸AXbとする。本実施の形態において、DMD10の複数のマイクロミラーの各々の中心点を含む中立面は、XY面と平行に設定されているものとする。従って、その中立面の法線(Z軸と平行)と光軸AXbとの成す角度が、DMD10に対する照明光ILmの入射角θαとなる。DMD10は、照明ユニットILUの支持コラムに固設されたマウント部10Mの下側に取り付けられる。マウント部10Mには、DMD10の位置や姿勢を微調整する為に、例えば、国際公開特許2006/120927号に開示されているようなパラレルリンク機構と伸縮可能なピエゾ素子を組み合わせた微動ステージが設けられる。
【0026】
DMD10のマイクロミラーのうちのOn状態のマイクロミラーに照射された照明光ILmは、投影ユニットPLUに向かうようにXZ面内のX方向に反射される。一方、DMD10のマイクロミラーのうちのOff状態のマイクロミラーに照射された照明光ILmは、投影ユニットPLUに向かわないようにYZ面内のY方向に反射される。詳しくは後述するが、本実施の形態におけるDMD10は、On状態とOff状態とをマイクロミラーのロール方向傾斜とピッチ方向傾斜とで切り換えるロール&ピッチ駆動方式のものとする。
【0027】
DMD10から投影ユニットPLUの間の光路中には、非露光期間中にDMD10からの反射光を遮蔽する為の可動シャッター114が挿脱可能に設けられている。可動シャッター114は、モジュールMU19側で図示したように、露光期間中は光路から退避する角度位置に回動され、非露光期間中はモジュールMU18側に図示したように、光路中に斜めに挿入される角度位置に回動される。可動シャッター114のDMD10側には反射面が形成され、そこで反射されたDMD10からの光は光吸収体115に照射される。光吸収体115は、紫外波長域(400nm以下の波長)の光エネルギーを再反射させることなく吸収して熱エネルギーに変換する。その為、光吸収体115には放熱機構(放熱フィンや冷却機構)も設けられる。なお、
図4では不図示ではあるが、露光期間中にOff状態となるDMD10のマイクロミラーからの反射光は、DMD10と投影ユニットPLUの間の光路に対してY方向(
図4の紙面と直交した方向)に設置された同様の光吸収体(
図4では不図示)によって吸収される。
【0028】
〔投影ユニットの構成〕
光学定盤5の下側に取り付けられた投影ユニットPLUは、Z軸と平行な光軸AXaに沿って配置される第1レンズ群116と第2レンズ群118とで構成される両側テレセントリックな結像投影レンズ系として構成される。第1レンズ群116と第2レンズ群118は、それぞれ光学定盤5の下側に固設される支持コラムに対して、Z軸(光軸AXa)に沿った方向に微動アクチュエータで並進移動するように構成される。第1レンズ群116と第2レンズ群118による結像投影レンズ系の投影倍率Mpは、DMD10上のマイクロミラーの配列ピッチPdと、基板P上の投影領域IAn(n=1~27)内に投影されるパターンの最小線幅(最小画素寸法)Pgとの関係で決められる。
【0029】
一例として、必要とされる最小線幅(最小画素寸法)Pgが1μmで、マイクロミラーの配列ピッチPdが5.4μmの場合、先の
図3で説明した投影領域IAn(DMD10)のXY面内での傾き角θkも考慮して、投影倍率Mpは約1/6に設定される。レンズ群116、118による結像投影レンズ系は、DMD10のミラー面全体の縮小像を倒立/反転させて基板P上の投影領域IA18(IAn)に結像する。
【0030】
投影ユニットPLUの第1レンズ群116は、投影倍率Mpの微調整(±数十ppm程度)する為にアクチュエータによって光軸AXa方向に微動可能とされ、第2レンズ群118はフォーカスの高速調整の為にアクチュエータによって光軸AXa方向に微動可能とされる。さらに、基板Pの表面のZ軸方向の位置変化をサブミクロン以下の精度で計測する為に、光学定盤5の下側には、斜入射光式のフォーカスセンサー120が複数設けられている。複数のフォーカスセンサー120は、基板Pの全体的なZ軸方向の位置変化、投影領域IAn(n=1~27)の各々に対応した基板P上の部分領域のZ軸方向の位置変化、或いは基板Pの部分的な傾斜変化等を計測する。
【0031】
以上のような照明ユニットILUと投影ユニットPLUとは、先の
図3で説明したように、XY面内で投影領域IAnが角度θkだけ傾ける必要があるので、
図4中のDMD10と照明ユニットPLU(少なくとも光軸AXcに沿ったミラー102~ミラー112の光路部分)とが、全体的にXY面内で角度θkだけ傾くように配置されている。
【0032】
図5は、DMD10と照明ユニットPLUとがXY面内で角度θkだけ傾いた状態をXY面内で模式的に表した図である。
図5において、直交座標系XYZは先の
図1~
図4の各々の座標系XYZと同一であり、DMD10のマイクロミラーMsの配列座標系X’Y’は
図3に示した座標系X’Y’と同一である。DMD10を内包する円は、投影ユニットPLUの物面側のイメージフィールドPLfであり、その中心に光軸AXaが位置する。一方、照明ユニットILUのコンデンサーレンズ系110を通った光軸AXcが傾斜ミラー112により折り曲げられた光軸AXbは、XY面内で見ると、X軸と平行な線Luから角度θkだけ傾くように配置される。
【0033】
〔DMDによる結像光路〕
次に、
図6を参照して、投影ユニットPLU(結像投影レンズ系)によるDMD10のマイクロミラーMsの結像状態を詳細に説明する。
図6の直交座標系X’Y’Zは、先の
図3、
図5に示した座標系X’Y’Zと同じであり、
図6では照明ユニットILUのコンデンサーレンズ系110から基板Pまでの光路を図示する。コンデンサーレンズ系110からの照明光ILmは、光軸AXcに沿って進み、傾斜ミラー112で全反射されて光軸AXbに沿ってDMD10のミラー面に達する。ここで、DMD10の中心に位置するマイクロミラーMsをMsc、周辺に位置するマイクロミラーMsをMsaとし、それらのマイクロミラーMsc、MsaがOn状態であるとする。
【0034】
マイクロミラーMsのOn状態のときの傾斜角は、X’Y’面(XY面)に対して、例えば規格値として17.5°とすると、マイクロミラーMsc、Msaの各々からの反射光Sc、Saの各主光線を投影ユニットPLUの光軸AXaと平行にする為に、DMD10に照射される照明光ILmの入射角(光軸AXbの光軸AXaからの角度)θαは、35.0°に設定される。従って、この場合、傾斜ミラー112の反射面もX’Y’面(XY面)に対して17.5°(=θα/2)だけ傾斜して配置される。マイクロミラーMscからの反射光Scの主光線Lcは光軸AXaと同軸になり、マイクロミラーMsaからの反射光Saの主光線Laは光軸AXaと平行になり、反射光Sc、Saは所定の開口数(NA)を伴って投影ユニットPLUに入射する。
【0035】
反射光Scによって、基板P上には投影ユニットPLUの投影倍率Mpで縮小されたマイクロミラーMscの縮小像icが光軸AXaの位置にテレセントリックな状態で結像される。同様に、反射光Saによって、基板P上には投影ユニットPLUの投影倍率Mpで縮小されたマイクロミラーMsaの縮小像iaが縮小像icから+X’方向に離れた位置にテレセントリックな状態で結像される。一例として、投影ユニットPLUの第1レンズ系116は3つのレンズ群G1、G2、G3で構成され、第2レンズ系118は、2つのレンズ群G4、G5で構成される。第1レンズ系116と第2レンズ系118との間には射出瞳(単に瞳とも呼ぶ)Epが設定される。その瞳Epの位置には、照明光ILmの光源像(MFEレンズ108Aの射出面側に形成される複数の点光源の集合)が形成され、ケーラー照明の構成となっている。瞳Epは、投影ユニットPLUの開口とも呼ばれ、その開口の大きさ(直径)が投影ユニットPLUの解像力を規定する1つの要因になっている。
【0036】
DMD10のOn状態のマイクロミラーMsからの正反射光は、瞳Epの最大口径(直径)で遮られることなく通過するように設定されており、瞳Epの最大口径と投影ユニットPLU(結像投影レンズ系としてのレンズ群G1~G5)の後側(像側)焦点の距離によって、解像度Rを表す式、R=k1・(λ/NAi)における像側(基板P側)の開口数NAiが決まる。また、投影ユニットPLU(レンズ群G1~G5)の物面(DMD10)側の開口数NAoは、投影倍率Mpと開口数NAiの積で表され、投影倍率Mpが1/6の場合、NAo=NAi/6となる。
【0037】
以上の
図6、及び
図4に示した照明ユニットILUと投影ユニットPLUの構成において、各モジュールMUn(n=1~27)に接続される光ファイバー束FBn(n=1~27)の射出端は、インプットレンズ系104によってオプチカルインテグレータ108のMFEレンズ108Aの射出端側と光学的に共役な関係に設定され、MFEレンズ108Aの入射端側は、コンデンサーレンズ系110によってDMD10のミラー面(中立面)の中央と光学的に共役な関係に設定される。それによって、DMD10のミラー面全体に照射される照明光ILmは、オプチカルインテグレータ108の作用によって均一な照度分布(例えば、±1%以内の強度ムラ)になる。また、MFEレンズ108Aの射出端側と投影ユニットPLUの瞳Epの面とは、コンデンサーレンズ系110と投影ユニットPLUのレンズ群G1~G3とによって光学的に共役な関係に設定される。
【0038】
図7は、オプチカルインテグレータ108のMFEレンズ108Aを出射面側から見た模式的な図である。MFEレンズ108Aは、断面形状がDMD10のミラー面全体(画像形成領域)の形状と相似であって、X’Y’面内のY’方向に延びた長方形の断面を有する複数のレンズ素子ELを、X’方向とY’方向に密に配列して構成される。MFEレンズ108Aの入射面側には、
図4に示したインプットレンズ系104からの照明光ILmが、ほぼ円形の照射領域Efになって照射される。照射領域Efは、
図4中の光ファイバー束FB18(FBn)の単一又は複数の光ファイバー線の各出射端と相似の形状で、設計上は光軸AXcを中心とする円形領域になっている。
【0039】
MFEレンズ108Aの複数のレンズ素子ELのうち、照射領域Ef内に位置するレンズ素子ELの各々の出射面側には、光ファイバー束FB18(FBn)の出射端からの照明光ILmによって作られる点光源SPFがほぼ円形の領域内に密に分布する。また、
図7中の円形領域APhは、MFEレンズ108Aの出射面側に円形開口を有する開口絞りを設けた場合の開口範囲を表す。実際の照明光ILmは円形領域APh内に点在する複数の点光源SPFで作られ、円形領域APhの外側の点光源SPFからの光は遮蔽される。
【0040】
図8(A)、(B)、(C)は、
図7のMFEレンズ108Aのレンズ素子ELの出射面側に形成される点光源SPFと光ファイバー束FBnの出射端との配置関係の一例を模式的に表した図である。
図8(A)、(B)、(C)の各々における座標系X’Y’は、
図7で設定した座標系X’Y’と同じである。
図8(A)は、光ファイバー束FBnを単一の光ファイバー線とした場合を表し、
図8(B)は、光ファイバー束FBnとして2本の光ファイバー線をX’方向に並べた場合を表し、
図8(C)は、光ファイバー束FBnとして3本の光ファイバー線をX’方向に並べた場合を表す。
【0041】
光ファイバー束FBnの出射端とMFEレンズ108A(レンズ素子EL)の出射面とは光学的に共役関係(結像関係)に設定されているので、光ファイバー束FBnが単一の光ファイバー線のときは、
図8(A)のように、単一の点光源SPFがレンズ素子ELの出射面側の中心位置に形成される。光ファイバー束FBnとして2本の光ファイバー線をX’方向に束ねたときは、
図8(B)のように、2つの点光源SPFの幾何学的な中心がレンズ素子ELの出射面側の中心位置になるように形成される。同様に、光ファイバー束FBnとして3本の光ファイバー線をX’方向に束ねたときは、
図8(C)のように、3つの点光源SPFの幾何学的な中心がレンズ素子ELの出射面側の中心位置になるように形成される。
【0042】
なお、光ファイバー束FBnからの照明光ILmのパワーが大きく、面光源化部材又はオプチカルインテグレータとしてのMFEレンズ108Aのレンズ素子ELの各々の出射面に点光源SPFが集光すると、レンズ素子ELの各々にダメージ(曇りや焼け付き等)を与えることがある。その場合、点光源SPFの集光位置を、MFEレンズ108Aの出射面(レンズ素子ELの出射面)から若干外側にずれた空間中に設定しても良い。このように、フライ・アイ・レンズを用いた照明系で、点光源(集光点)の位置をレンズ素子の外側にずらす構成は、例えば米国特許第4,939,630号公報に開示されている。
【0043】
図9は、DMD10のミラー面全体を1枚の平面ミラーとして、その平面ミラーを
図6中の傾斜ミラー112と平行になるように角度θα/2だけ傾けたと仮定したときに、
図6の投影ユニットPLの第2レンズ系118内の瞳Epに形成される光源像Ipsの様子を模式的に表した図である。
図9に示す光源像Ipsは、MFEレンズ108Aの出射面側に形成される複数の点光源SPF(ほぼ円形に集合した面光源となる)を再結像したものである。この場合、DMD10の代わりに配置した1枚の平面ミラーからは回折光や散乱光は発生せず、瞳Ep内の中心には正反射光(0次光)のみによる光源像Ipsだけが光軸AXaと同軸に生成される。
【0044】
図9において、瞳Epの最大口径に対応した半径をreとし、面光源としての光源像Ipsの有効径に対応した半径をriとしたとき、瞳Epの大きさ(面積)に対する光源像Ipsの大きさ(面積)を表すσ値はσ=ri/reとなる。σ値は、投影露光されるパターンの線幅や密集度、或いは焦点深度(DOF)の改善等の為に、適宜変更することがある。σ値は、MFEレンズ108Aの出射面側の位置、または第1レンズ系116と第2レンズ系118の間の瞳Epの位置(
図7中の円形領域APhと共役な関係)に可変開口絞りを設けることで変更できる。
【0045】
この種の露光装置EXでは、投影ユニットPLUの瞳Epを最大口径のまま使うことが多いので、σ値の変更は主にMFEレンズ108Aの出射面側に設けた可変開口絞りで行われる。その場合、光源像Ipsの半径riは
図7中の円形領域APhの半径で規定される。勿論、投影ユニットPLUの瞳Epに可変開口絞りを設けて、σ値や焦点深度(DOF)を調整しても良い。
【0046】
しかしながら、DMD10の中立面を投影ユニットPLUの光軸AXaと垂直にし、照明光ILmを比較的に大きな入射角θα(例えば、θα≧20°)に設定した場合、DMD10のオン(On)状態のマイクロミラーMsa(又はMsc)からの反射光による結像光束の瞳Epでの強度分布は、
図9のような円形の輪郭で区画される光源像Ipsの分布にならず、楕円状になることが判明した。このことを、
図10を参照して説明する。
【0047】
図10は、先の
図6の光路図を簡略化して表した光路図であり、直交座標系X’Y’Zは
図6と同じに設定される。また、説明を簡単にする為、
図6中に示した傾斜ミラー112は省略してある。
図10において、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaの傾斜角θdは中立面Pccに対して、設計値として17.5°になるものとする。従って、MFEレンズ108Aとコンデンサーレンズ系110を通る光軸AXbと、投影ユニットPLUの光軸AXaとの成す角度、即ち入射角θαはX’Z面内で35°に設定される。
【0048】
MFE108Aの射出側に形成される複数の点光源SPFのうち、光軸AXbを含むX’Z面と平行な面内で、
図7に示した円形領域APhの最外周に位置する2つの点光源SPFa、SPFbの各々からの照明光ILma、ILmbは、コンデンサーレンズ系110によって、DMD10の全体を照明する。照明光ILma、ILmbの各々の中心光線LLa、LLbは、コンデンサーレンズ系110に入射するまで光軸AXbと平行である。従って、DMD10側からMFE108Aの射出側の面光源(点光源SPFの集合体)を見た場合、その形状は円形CL1となっている。
【0049】
ここで、DMD10の複数のマイクロミラーの反射面が全て中立面Pccと平行な状態と仮定すると、照明光ILma、ILmbは光軸AXaに関して光軸AXbと対称な角度(-θα)で傾いた光軸AXb’に沿って正規反射光となって進む。ここで、投影ユニットPLUの第1レンズ群116の主面とコンデンサーレンズ系110の主面とが、DMD10の中立面Pccと光軸AXaとの交点を中心とした円弧Prr上に位置すると仮定する。光軸AXb’に沿って進む正規反射光は、矢印Arw1側から見たとき、MFE108Aの射出側の面光源(点光源SPFの集合体)と同様の円形CL2として見える。
【0050】
しかしながら、投影ユニットPLUの光軸AXaと平行な矢印Arw2側から見たとき、光軸AXb’に沿って進む正規反射光は、MFE108Aの射出側の円形の面光源(点光源SPFの集合体)を斜めに見込むことになる為、楕円状CL2’に見える。一方、DMD10の駆動によりパターン投影する際は、多くのオン状態のマイクロミラーMsaから発生する反射光(及び回折光)が結像光束Sa’となって投影ユニットPLUの第1レンズ群116に入射する。第1レンズ群116とコンデンサーレンズ系110は、それぞれ角度θαだけ傾いた別々の光軸AXa、AXbに沿って配置されている為、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaから発生する結像光束Sa’のうちの0次光相当成分の強度分布(点光源SPFの像の分布)を瞳Ep上で見てみると、MFE108Aの射出面側の円形の面光源を斜めに見込むことになる為、楕円状CL3に見える。
【0051】
MFE108Aの射出面側の面光源の分布が、光軸AXbを中心とした真円である場合、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される結像光束Sa’(0次光相当成分)の楕円状CL3の強度分布は、X’Y’面内で見たときの照明光ILmの入射方向に圧縮されたものとなる。DMD10への照明光ILmの入射方向はX’Y’面内でX’方向なので、楕円CL3状の強度分布の長軸はY’軸と平行で、短軸はX’軸と平行となる。楕円CL3状の強度分布の長軸の寸法をUy’、短軸の寸法をUx’とすると、照明光ILmの入射角θαに依存して、楕円の比率Ux’/Uy’はcosθαとなる。入射角θαは、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaの傾き角θdの2倍なので、比率Ux’/Uy’はcos(2・θd)で設定しても良い。入射度θαを35°とした場合、比率Ux’/Uy’は約0.82となる。
【0052】
図11は、先の
図9と同様に、DMD10からの結像光束Saのうち最も強度が大きい0次相当成分によって瞳Epに形成される光源像Ipsの様子を模式的に表した図である。光源像Ips(楕円CL3状)は、Y’方向の径方向の寸法は
図9と同じ半径riとなるが、X’方向の径方向寸法は半径riよりも約0.82倍に縮小された半径ri’となる。このように、結像光束Saの0次相当成分によって瞳Epに形成される強度分布(光源像Ipsの分布)が非等方的である場合、投影ユニットPLUを介して基板P上に投影されるパターンのエッジのX’Y’面内(即ち、XY面内)での方向によって、エッジ部の結像特性に違いが生じることがある。その為、結像光束Saの0次相当成分によって瞳Epに形成される強度分布は、一般的には等方的な円形状にすることが望ましい。
【0053】
そこで、本実施の形態では、先の
図7で説明したMFE108Aの出射面側に設けられる開口絞りの開口形状の円形領域APhを、
図12に示すように、X’方向が長軸となり、Y’方向が短軸となるような楕円領域APh’に変形する。
図12は
図7と同様に、オプチカルインテグレータ108のMFEレンズ108Aを出射面側から見た模式的な図である。楕円領域APh’は、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される光源像Ipsの楕円CL3を、X’Y’面内で90°回転させたものである。さらに、楕円領域APh’の楕円の比率(短軸寸法/長軸寸法)も
図10で示した楕円CL3の比率と同様のcosθαに設定される。
【0054】
このように、MFEレンズ108Aの出射面側に形成される面光源(点光源SPFの集合体)の実効的な全体形状(輪郭)を楕円状にすることにより、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される結像光束Sa’の0次光相当成分の強度分布(光源像Ips)を円形状にすることができ、パターンのエッジがX’Y’面内(XY面内)でどのような方向に延びたものであっても、結像特性(特にエッジのコントラスト特性)を均一化することができる。
【0055】
〔投影露光時のテレセン誤差〕
次に、本実施の形態のようにDMD10を用いた露光装置EXの場合に発生し得るテレセン誤差について説明するが、その前にテレセン誤差の発生要因の1つについて、
図13を用いて簡単に説明する。
図13(A)、
図13(B)は、
図6に示した瞳Epから第2レンズ群118を介して基板Pまでの光路の結像光束Saの振る舞いを模式的に表した図である。
図13(A)、
図13(B)における直交座標系X’Y’Zは
図6の座標系X’Y’Zと同一である。説明を簡単にする為、ここでは、DMD10のミラー面全体を1枚の平面ミラーとして、
図6中の傾斜ミラー112と平行に角度θα/2だけ傾けた場合を想定する。
図13(A)、
図13(B)において、瞳Epと基板Pの間には、光軸AXaに沿ってレンズ群G4、G5が配置され、瞳Ep内には
図11のように楕円状の光源像(面光源像)Ipsが形成される。なお、光源像(面光源像)IpsのX’方向の周辺部の1点を通ってレンズ群G4、G5に入射する反射光(結像光束)Saの主光線をLaとする。
【0056】
図13(A)は、光源像(面光源像)Ipsの中心(又は重心)が瞳Epの中心に正確に位置したときの反射光(結像光束)Saの振る舞いを示し、基板P上の投影領域IAn内の1点に向かう反射光(結像光束)Saの主光線Laは、いずれも光軸AXaと平行になっており、投影領域IAnに投射される結像光束はテレセントリックな状態、即ちテレセン誤差がゼロの状態になっている。これに対して、
図13(B)は、光源像(面光源像)Ipsの中心(又は重心)が瞳Epの中心からX’方向にΔDxだけ横シフトしたときの反射光(結像光束)Saの振る舞いを示す。この場合、基板P上の投影領域IAn内の1点に向かう反射光(結像光束)Saの主光線Laは、いずれも光軸AXaに対してΔθtだけ傾いたものとなる。その傾き量Δθtがテレセン誤差となり、傾き量Δθt(即ち、横シフト量ΔDx)が所定の許容値より大きくなるに従って、投影領域IAnに投影されるパターン像の結像状態が低下することになる。
【0057】
〔DMDの構成〕
先に説明したように、本実施の形態で使用するDMD10はロール&ピッチ駆動方式とするが、その具体的な構成を
図14、
図15を参照して説明する。
図14と
図15はDMD10のミラー面のうちの一部を拡大した斜視図である。ここでも直交座標系X’Y’Zは先の
図6における座標系X’Y’Zと同じである。
図14は、DMD10の各マイクロミラーMsの下層に設けられる駆動回路への電源供給がオフのときの状態を示す。電源がオフの状態のとき、各マイクロミラーMsの反射面は、X’Y’面と平行に設定される。ここで、各マイクロミラーMsのX’方向の配列ピッチをPdx(μm)、Y’方向の配列ピッチをPdy(μm)とするが、実用上はPdx=Pdyに設定される。
【0058】
図15は、駆動回路への電源供給がオンとなり、オン状態のマイクロミラーMsaとオフ状態のマイクロミラーMsbとのが混在した様子を示す。本実施の形態では、オン状態のマイクロミラーMsaは、Y’軸と平行な線の回りに、X’Y’面から角度θd(=θα/2)だけ傾くように駆動され、オフ状態のマイクロミラーMsbは、X’軸と平行な線の回りに、X’Y’面から角度θd(=θα/2)だけ傾くように駆動される。照明光ILmは、X’Z面と平行な主光線Lp(
図6に示した光軸AXbと平行)に沿ってマイクロミラーMsa、Msbの各々に照射される。なお、
図15中の線Lx’は、主光線LpをX’Y’面に写影したものであり、X’軸と平行である。
【0059】
照明光ILmのDMD10への入射角θαはX’Z面内でのZ軸に対する傾き角であり、角度θα/2だけX’方向に傾いたオン状態のマイクロミラーMsaからは、幾何光学的な観点では、-Z方向にZ軸とほぼ平行に進む反射光(結像光束)Saが発生する。一方、オフ状態のマイクロミラーMsbで反射した反射光Sgは、マイクロミラーMsbがY’方向に傾いている為、Z軸とは非平行な状態で-Z方向に発生する。
図15において、線LvをZ軸(光軸AXa)と平行な線とし、線Lhが反射光Sgの主光線のX’Y’面への写影とすると、反射光Sgは線Lvと線Lhを含む面内で傾いた方向に進む。
【0060】
〔DMDによる結像状態〕
DMD10を用いた投影露光では、
図15に示した動作で複数のマイクロミラーMsの各々を、パターンデータ(描画データ)に基づいてオン状態の傾斜とオフ状縦の傾斜とに高速に切り換えつつ、その切り換え速度に対応した速度で基板PをX方向に走査移動させてパターン露光を行う。しかしながら、投影されるパターンの微細度や密集度、又は周期性によっては、投影ユニットPLU(第1レンズ群116と第2レンズ群118)から基板Pに投射される結像光束のテレセントリックな状態(telecentricity)が変化することがある。これは、DMD10の複数のマイクロミラーMsのパターンに応じた傾斜状態によっては、DMD10のミラー面が反射型の回折格子(ブレーズド回折格子)として作用する為である。
【0061】
図16は、X’Y’面内で見たDMD10のミラー面の一部を示す図であり、
図17は
図16のDMD10のミラー面のa-a’矢視部をX’Z面内で見た図である。
図16では、複数のマイクロミラーMsのうち、Y’方向に並ぶ一列のマイクロミラーMsのみがオン状態のマイクロミラーMsaとなり、その他のマイクロミラーMsがオフ状態のマイクロミラーMsbとなっている。
図16のようなマイクロミラーMsの傾斜状態は、解像限界の線幅(例えば、1μm程度)の孤立ラインパターンが投影される場合に現れる。X’Y’面内において、オン状態のマイクロミラーMsaからの反射光(結像光束)Saは-Z方向にZ軸と平行に発生し、オフ状態のマイクロミラーMsbからの反射光Sgは-Z方向であるが、
図11中の線Lhに沿った方向に傾いて発生する。
【0062】
この場合、
図17に示すように、X’方向に並ぶ複数のマイクロミラーMsのうちの1つのみが、中立面Pcc(全てのマイクロミラーMsの中心点を含むX’Y’面と平行な面)に対してY’軸と平行な線の回りに角度θd(=θα/2)だけ傾いたオン状態のマイクロミラーMsaとなる。従って、X’Z面内で見ると、オン状態のマイクロミラーMsaから発生する反射光(結像光束)Saは1次以上の回折光を含まない単純な正規反射光となり、その主光線Laは光軸AXaと平行になって投影ユニットPLUに入射する。他のオフ状態のマイクロミラーMsbからの反射光Sgは投影ユニットPLUには入射しない。なお、オン状態のマイクロミラーMsaがX’方向に関して孤立した1つ(又はY’方向に並ぶ1列)の場合、反射光(結像光束)Saの主光線Laは照明光ILmの波長λに関わらず、光軸AXaと平行になる。
【0063】
図18は、
図17のような孤立したマイクロミラーMsaからの反射光(結像光束)Saの投影ユニットPLUによる結像状態をX’Z面内で模式的に表した図である。
図18において、先の
図6で説明した部材と同じ機能の部材には同じ符号を付してある。投影ユニットPLU(レンズ群G1~G5)は両側テレセントリックな縮小投影系である為、孤立したマイクロミラーMsaからの反射光(結像光束)Saの主光線Laが光軸AXaと平行であれば、縮小像iaとして結像される反射光(結像光束)Saの主光線Laも基板Pの表面の垂線(光軸AXa)と平行になり、テレセン誤差は発生しない。なお、
図18で示した投影ユニットPLUの物面側(DMD10)側の反射光(結像光束)Saの開口数NAoは、照明光ILmの開口数と同等になっている。
【0064】
先の
図11(又は
図9)、
図13(A)で説明したように、DMD10を1枚の大きな平面ミラーにして角度θα/2だけ傾けた場合、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される光源像(面光源像)Ipsの中心(重心)位置は光軸AXaを通る。それと同様に、DMD10のミラー面中の孤立したマイクロミラーMsaからの正規反射光Saのみが投影ユニットPLUに入射する場合、その正規反射光Saの瞳Epの位置(フーリエ変換面)での光束Isaの点像強度分布は、マイクロミラーMsの反射面が微細な矩形(正方形)であるので、光軸AXaを中心としたsinc2関数(角形開口の点像強度分布)で表される。
【0065】
図19は、X’方向について孤立した1列(又は単体)のマイクロミラーMsaからの反射光Saによる瞳Epにおける光束(ここでは0次回折光)Isaの理論上の点像強度分布Iea(
図7、
図8に示した1つの点光源SPFからの光束で作られる分布)を模式的に表したグラフである。
図19のグラフにおいて、横軸は光軸AXaの位置としたX’(又はY’)方向の座標位置を表し、縦軸は光強度Ieを表す。点像強度分布Ieaは以下の式(1)によって表される。
【0066】
【0067】
この式(1)において、Ioは光強度Ieのピーク値を表し、孤立した1列(又は単体)のマイクロミラーMsaからの反射光Saによるピーク値Ioの位置は、X’(又はY’)方向の原点0、即ち光軸AXaの位置と一致している。また、先の
図12で説明したように、MFE108Aの射出面側に形成される面光源の形状を楕円領域APhのように調整した場合、点像強度分布Ieaの光強度Ieが原点0から最初に最小値(0)になる第1暗線のX’(又はY’)方向の位置±raは、概ね先の
図9で説明した光源像Ipsの半径riの位置に対応している。なお、瞳Epでの実際の強度分布は、点像強度分布Ieaを
図9に示した光源像Ipsの広がり範囲(σ値)に亘って畳み込み積分(コンボリューション演算)したものとなり、おおよそ一様な強度になる。
【0068】
次に、投影されるパターンのX’方向(X方向)の幅が充分に大きい場合を、
図20、
図21を参照して説明する。
図20は、X’Y’面内で見たDMD10のミラー面の一部を示す図であり、
図21は
図20のDMD10のミラー面のa-a’矢視部をX’Z面内で見た図である。
図20は、先の
図16で示した複数のマイクロミラーMsの全てがオン状態のマイクロミラーMsaとなった場合を示す。
図20では、X’方向に9個、Y’方向に10個のマイクロミラーMsの配列のみを示すが、それ以上の個数で隣接したマイクロミラーMs(又はDMD10上の全てのマイクロミラーMsでも良い)がオン状態となることもある。
【0069】
図20、
図21のように、X’方向に隣接して並ぶオン状態の複数のマイクロミラーMsaからは、回折作用によって反射光Sa’が光軸AXaから僅かに傾いた状態で発生する。
図21の状態におけるDMD10のミラー面を、中立面Pccに沿ってX’方向にピッチPdxで並ぶ回折格子として考えると、その回折光の発生角度θjは、jを次数(j=0、1、2、3、…)、λを波長、そして照明光ILmの入射角をθαとして、以下の式(2)、又は式(3)のように表される。
【0070】
【0071】
【0072】
図22は、一例として照明光ILmの入射角θα(光軸AXaに対する照明光ILmの主光線Lpの傾き角)を35.0°、オン状態のマイクロミラーMsaの傾き角度θdを17.5°、マイクロミラーMsaのピッチPdxを5.4μm、波長λを355.0nmとして計算した回折光Idjの角度θjの分布を表すグラフである。
図22のように、照明光ILmの入射角θαが35°なので、0次回折光Id0(j=0)は光軸AXaに対して+35°に傾き、回折次数が大きくなるに従って、0次回折光Id0に対する角度θjが大きくなる。
図22の下段に示す数値は、括弧内の次数jと、各次数の回折光Idjの光軸AXaからの傾き角とを表す。
【0073】
図22の数値条件の場合、9次回折光Id9の光軸AXaからの傾き角が最も小さく、約-1.04°になる。従って、DMD10のマイクロミラーMsが、
図20、
図21のように密集してオン状態になった場合、投影ユニットPLUの瞳EP内での結像光束(Sa’)の強度分布の中心は、光軸AXaの位置から角度で-1.04°に相当する量だけ横シフトした位置(先の
図13(B)で示した横シフト量ΔDxに相当)に偏心する。実際の結像光束の瞳Ep内の分布は、式(2)又は(3)で表される回折光分布を、式(1)で表されるsinc
2関数によって畳み込み積分(コンボリューション演算)することで求められる。
【0074】
図23は、
図22のような回折光の発生状態のときの瞳Epでの結像光束Sa’の強度分布を模式的に表した図である。
図23における横軸は、投影ユニットPLUの投影倍率Mpを1/6としたとき、回折光Idjの角度θjを物面(DMD10)側の開口数NAoと像面(基板P)側の開口数NAiに換算した値を表す。また、投影ユニットPLUの像面側の開口数NAiを0.3(物面側開口数NAo=0.05)と仮定する。この場合、解像力(最小解像線幅)Rsは、プロセス定数k1(0<k1≦1)を用いてRs=k1(λ/NAi)で表される。
【0075】
従って、波長λ=355.0nm、k1=0.7のときの解像力Rsは約0.83μmとなる。マイクロミラーMsのピッチPdx(Pdy)は、像面(基板P)側では投影倍率Mp=1/6で縮小されて0.9μmとなる。従って、像面側開口数NAiが0.3(物面側開口数NAoが0.05)以上の投影ユニットPLUであれば、オン状態のマイクロミラーMsaの1つの投影像を高いコントラストで結像させることができる。
【0076】
図23において、投影ユニットPLUの瞳Epの最大口径である物面側の開口数NAo=0.05のX’方向における光軸AXaからの角度θeは、NAo=sinθeより、θe≒±2.87°になる。先の
図22に示したように、9次回折光Id9の傾き角-1.04°(正確には、-1.037°)は、物面側の開口数NAoに換算すると約0.018となり、瞳Epにおける結像光束Sa’(0次光相当成分)の強度分布Hpaは、光源像Ips(半径ri)の本来の位置からX’方向にシフト量ΔDxだけ変位する。なお、瞳Ep内の+X’方向の周辺には、8次回折光Id8による強度分布Hpbの一部も現れるが、そのピーク強度は低い。さらに、物面側での10次回折光Id10の光軸AXaからの傾き角は4.81°と大きい為、その強度分布は瞳Epの外に分布して、投影ユニットPLUを通らないことになる。なお、
図23中の強度分布Hpa、Hpbは、先の
図12で説明したように、照明ユニットILUのMFE108Aの射出面側に形成される面光源を楕円領域APh’にすることで、ほぼ円形になる。
【0077】
また、DMD10のマイクロミラーMsはY’方向にもピッチPdy(=5.4μm)で配列されている為、そのピッチPdyに応じてY’方向にも回折光が低い照度で発生して、弱い強度分布Hpc、Hpdが生じる。強度分布Hpc、Hpdは、投影ユニットPLUの開口数NAo(NAi)の大きさによっては、一部分が瞳Ep内に入ることもある。その為、投影ユニットPLUの開口数NAo(NAi)と光源像Ipsの大きさ(半径ri)との関係を適切に設定することによって、強度分布Hpc、Hpdを瞳Ep内に入らないようすることもできる。
【0078】
先の
図13(B)でも説明したように、強度分布Hpaの中心のシフト量ΔDxにより発生する像面側でのテレセン誤差Δθtは、
図22、
図23で示した条件の場合、Δθt=-6.22°(=-1.037°/投影倍率Mp)となる。このように、DMD10の複数のマイクロミラーMsのうちの多くが密にオン状態となるような大きなパターンの露光時には、基板Pへの結像光束Sa’の主光線が光軸AXaに対して6°以上に傾くことになる。このようなテレセン誤差Δθtも一因となって、投影像の結像品質(コントラスト特性、ディストーション特性、対称性等)を低下させることがある。
【0079】
次に、投影されるパターンがX’方向(X方向)に一定のピッチを有するライン&スペースパターンの場合を、
図24、
図25を参照して説明する。
図24は、X’Y’面内で見たDMD10のミラー面の一部を示す図であり、
図25は
図24のDMD10のミラー面のa-a’矢視部をX’Z面内で見た図である。
図24は、先の
図16で示した複数のマイクロミラーMsのうち、X’方向に並ぶマイクロミラーMsの奇数番がオン状態のマイクロミラーMsaとなり、偶数番がオフ状態のマイクロミラーMsbなった場合を示す。X’方向の奇数番のマイクロミラーMsはY’方向に並ぶ一列分が全てオン状態であり、偶数番のマイクロミラーMsはY’方向に並ぶ一列分が全てオフ状態であるとする。
【0080】
図25に示すように、X’方向に関してオン状態のマイクロミラーMsaが1つおきに配列する場合、DMD10から発生する回折光の発生角度θjは、DMD10のミラー面を、中立面Pccに沿ってX’方向にピッチ2・Pdxで並ぶ回折格子として考え、先の式(2)、又は式(3)と同様の以下の式(4)、又は式(5)で表される。
【0081】
【0082】
【0083】
図26は、
図22の場合と同様に、照明光ILmの入射角θα(光軸AXaに対する照明光ILmの主光線Lpの傾き角)を35.0°、オン状態のマイクロミラーMsaの傾き角度θdを17.5°、マイクロミラーMsaのピッチ2Pdxを10.8μm、波長λを355.0nmとして計算した回折光Idjの角度θjの分布を表すグラフである。
図26のように、照明光ILmの入射角θαが35°なので、0次回折光Id0(j=0)は光軸AXaに対して+35°に傾き、回折次数が大きくなるに従って、0次回折光Id0に対する角度θjが大きくなる。
図26の下段に示す数値は、括弧内の次数jと、各次数の回折光Idjの光軸AXaからの傾き角とを表す。
【0084】
図26の数値条件の場合、17次回折光Id17の光軸AXaからの傾き角が最も小さく、約0.85°になる。さらに、光軸AXaからの傾き角が-1.04°の18次回折光Id18も発生する。従って、DMD10のマイクロミラーMsが、
図24、
図25のように、最も微細なライン&スペース状にオン状態になった場合、投影ユニットPLUの瞳EP内での結像光束Sa’の強度分布の中心は、光軸AXaの位置から角度で0.85°、又は-1.04°に相当する量だけ横シフトした位置に偏心する。実際の結像光束Sa’の瞳Ep内の分布は、式(4)又は式(5)で表される回折光分布を、式(1)で表されるsinc
2関数によって畳み込み積分(コンボリューション演算)することで求められる。
【0085】
図26の場合も、先の
図23と同様に、瞳Epにおける結像光束(正規反射光成分)の強度分布Hpaは、17次回折光Id17の傾き角0.85°、及び18次回折光Id18の傾き角-1.04°の各々に対応して、光源像Ips(半径ri)の本来の位置からX’方向に変位して現れる。
図26のような回折光分布の場合、17次回折光Id17の方向に形成される強度分布Hpaと18次回折光Id18の方向に形成される強度分布Hpaとの一方の強度が大きく他方の強度は低い為、強度分布Hpaのシフトにより発生する像面側でのテレセン誤差Δθtは、概ねΔθt=5.1°とΔθt=-6.22°の範囲内になる。
【0086】
この範囲は、先の
図20、
図21図のように複数のマイクロミラーMsが隣接してオン状態のマイクロミラーMsaとなる場合の9次回折光Id9(
図22参照)の発生方向であるテレセン誤差Δθt=-6.22°と若干異なる。さらに先の
図16、
図17のように複数のマイクロミラーMsのうちの1列(又は単独の1つ)が孤立的にオン状態のマイクロミラーMsaとなる場合のテレセン誤差Δθt=0°と比較すると大きく異なるものになる。なお、投影ユニットPLUによって基板P上に投影される実際のパターン像は、投影ユニットPLU内に取り込めるDMD10からの回折光を含む反射光Sa’の干渉により形成される。なお、式(4)又は式(5)は、nを実数とする以下の式(6)又は式(7)によって、配列ピッチや線幅がPdx(5.4μm)のn倍のライン&スペース状のパターンにおける回折光の発生状態を特定することができる。
【0087】
【0088】
【0089】
図27は、
図26に示したDMD10からの反射光(回折光)による投影ユニットPLUの瞳Epでの分布を、先の
図23に対応させて模式的に表した図である。
図27の場合も、先の
図12で説明したように、MFE108Aの射出面側に形成される面光源の輪郭を楕円形状APh’とすることで、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される結像光束Sa’としての回折光束の各々の強度分布は円形となっている。また、
図27では、
図26に示した18次回折光Id18による強度が最も大きいものとし、
図24、25のようなライン&スペース状のパターンの投影の場合、18次回折光Id18を0次相当成分の強度分布Hpaとする。強度分布Hpaは、18次回折光Id18の光軸AXaからの角度-1.04°に対応して-X’方向にΔDxだけ偏心し、テレセン誤差Δθtが発生する。
【0090】
先の
図23で説明したように、瞳Epの面内には、DMD10のマイクロミラーMsのX’方向とY’方向の配列のピッチPdx、Pdyによって生じる回折光成分の強度分布Hpb、Hpc、Hpdが生じるが、その強度は強度分布Hpaの強度に比べると十分に小さい。さらに、DMD10のマイクロミラーMsで作成されるライン&スペース状のパターン(X’方向の線幅がPdxでピッチ2Pdx)からは、回折作用で発生する±1次光相当成分の強度分布±Hpb’が強度分布HpaのX’方向の両側に現れる。+1次光相当成分の強度分布+Hpb’の中心点PXpは、0次光相当成分の強度分布Hpaの中心点(Id18)と+X’方向の強度分布Hpbの中心点とのほぼ中間に位置する。同様に、-1次光相当成分の強度分布-Hpb’の中心点PXmは、0次光相当成分の強度分布Hpaの中心点(Id18)と-X’方向の強度分布Hpbの中心点とのほぼ中間に位置する。
【0091】
また、
図27では、
図24のようにX’方向にピッチ2Pdxとなるライン&スペース状のパターンの場合における瞳Epでの結像光束Sa’(回折光束)の強度分布を示した。これに対して、Y’方向にピッチ2Pdy(Pdy=Pdx)となるライン&スペース状のパターンの場合は、0次光相当成分の強度分布Hpaの中心点(Id18)が-X’方向にΔDxだけ偏心した状態で、±1次光相当成分の強度分布±Hpb’が強度分布HpaのY’方向の両側に現れることになる。
【0092】
このように、DMD10の複数のマイクロミラーMsのうちの多くが、ライン&スペース状にオン状態となるような場合も、基板Pへの結像光束の主光線が光軸AXaに対して大きく傾くことがあり、投影像の結像品質(コントラスト特性、ディストーション特性等)を著しく低下させることがある。そこで、テレセン誤差Δθtの発生による結像品質の変化の一例を、
図28を参照して説明する。
図28は、像面上で線幅が1μm、X’方向のピッチが2μmとなるライン&スペースパターンの空間像をシミュレーションした結果を表わすグラフである。
図28の横軸は像面上のX’方向の位置(μm)を表わし、縦軸は照明光(入射光)の強度を1に規格化した相対強度値を表わす。
【0093】
図28のグラフでは、投影ユニットPLUの像側の開口数NAiを0.25、照明光ILmのσ値を0.6とし、投影ユニットPLUの瞳Epにおける結像光束Sa’が光軸AXaに対してX’方向に偏心して、像面側のテレセン誤差Δθtが50mrad(≒2.865°)になったものとしてシミュレーションを行った。
図28のグラフ中、破線で示した特性Q1は、投影ユニットPLUのベストフォーカス面(最良結像面)におけるコントラスト特性であり、実線で示した特性Q2は、ベストフォーカス面から光軸AXaの方向に3μmだけデフォーカスした面におけるコントラスト特性である。なお、
図28では、線幅1μmの暗線が位置0、±2μm、±4μmの計5ヶ所に形成されるものとした。
【0094】
デフォーカスによって、特性Q2のコントラスト(強度振幅)が特性Q1よりも低下することは典型的なことであるが、テレセン誤差Δθtの影響により、+5μm付近の特性と-5μm付近の特性との対称性が劣化していることが判る。このことから、像面側のテレセン誤差Δθtが許容範囲(例えば、±2°)を超えるようなパターンの場合、即ち、DMD10の複数のマイクロミラーMsのうち、オン状態のマイクロミラーMsaが広い範囲で密集したり、周期性を持って配列したりする場合、露光されたパターンのエッジ部分に対応したレジスト像のエッジ位置の精度が損なわれ、結果として、パターンの線幅や寸法に誤差が生じることになる。即ち、DMD10からの反射光(結像光束)Sa’によって投影ユニットPLUの瞳Epに形成される強度分布(回折光の分布)が、光軸AXaを中心にした等方的な状態、又は対称的な状態から逸脱するに従って、投影されたパターン像の非対称性が増大する。
【0095】
〔テレセン誤差の波長依存性〕
以上で説明したテレセン誤差Δθtは、先の式(2)~式(5)から明らかなように、波長λに依存して変化する。例えば、式(2)で表される
図20、
図21の状態の場合、像面側のテレセン誤差Δθtをゼロにする為には、
図22、
図23に示した9次回折光Id9の光軸AXaからの傾き角-1.04°(正確には-1.037°)がゼロになるような波長λにすれば良い。
【0096】
図29は、先の式(2)に基づいて中心波長λとテレセン誤差Δθtとの関係を求めたグラフであり、横軸は中心波長λ(nm)を表し、縦軸は像面側のテレセン誤差Δθt(deg)を表す。DMD10のマイクロミラーMsのピッチPdx(Pdy)を5.4μm、マイクロミラーMsの傾斜角θdを17.5°、照明光ILmの入射角θαを35°とし、マイクロミラーMsが
図20、
図21のように密にオン状態となる場合、中心波長λが約344.146nmのときにテレセン誤差Δθtは理論上でゼロになる。像面側のテレセン誤差Δθtは、極力ゼロにするのが望ましいが、投影すべきパターンの最小線幅(又は解像力Rs)等に応じて許容範囲を持たせることができる。
【0097】
例えば、
図29のように像面側のテレセン誤差Δθtの許容範囲を±0.6°以内(10mrad程度)に設定する場合、中心波長λは343.098nm~345.193nmの範囲(幅で2.095nm)であれば良い。また、像面側のテレセン誤差Δθtの許容範囲を±2.0°以内に設定する場合、中心波長λは340.655nm~347.636nmの範囲(幅で6.98nm)であれば良い。
【0098】
このように、DMD10のオン状態となるマイクロミラーMsaの配列(周期性)や密集度、すなわち分布密度の大きさに起因して生じるテレセン誤差Δθtは波長依存性も有する。一般に、DMD10のマイクロミラーMsのピッチPdx(Pdy)や傾き角度θd等の仕様は、既製品(例えば、テキサス・インスツルメンツ社製の紫外線対応のDMD)として一義的に設定されている為、その仕様に合うように照明光ILmの波長λを設定する。本実施の形態のDMD10は、マイクロミラーMsのピッチPdx(Pdy)を5.4μm、傾き角度θdを17.5°としたので、光ファイバー束FBn(n=1~27)の各々に照明光ILmを供給する光源として、高輝度の紫外パルス光を発生するファイバーアンプレーザ光源を用いると良い。
【0099】
ファイバーアンプレーザ光源は、例えば、特許第6428675号公報に開示されているように、赤外波長域の種光を発生する半導体レーザ素子と、種光の高速スイッチング素子(電気光学素子等)と、スイッチングされた種光(パルス光)をポンプ光によって増幅する光ファイバーと、増幅された赤外波長域の光を高調波(紫外波長域)のパルス光に変換する波長変換素子等で構成される。このようなファイバーアンプレーザ光源の場合、入手可能な半導体レーザ素子、光ファイバー、波長変換素子の組合せで発生効率(変換効率)を高くできる紫外線のピーク波長は343.333nmである。そのピーク波長の場合、
図20の状態のときに発生し得る最大の像面側テレセン誤差Δθt(
図22、
図23中の9次回折光Id9の像面側での傾き角)は約0.466°(約8.13mrad)となる。
【0100】
以上のことから、照明光ILmとして、ピーク波長が大きく異なる2つ以上の光(例えば、波長350nm台の光と波長400nm台の光)を合成した場合、テレセン誤差Δθtは、投影すべきパターンの形態(孤立状パターン、ライン&スペース状パターン、或いは大きなランド状パターン)に応じて大きく変化する可能性がある。本実施の形態では、各モジュールMUn(n=1~27)に供給する照明光ILmとして、波長依存のテレセン誤差Δθtが許容される範囲内でピーク波長を僅かにずらした複数のファイバーアンプレーザ光源からの光を合成したものを用いる。このように、ピーク波長が僅かにずれた複数の光を合成した照明光ILmを用いることで、照明光ILmの可干渉性によってDMD10のマイクロミラーMs上(並びに基板P上)に発生するスペックル(又は干渉縞)のコントラストを抑制することができる。
【0101】
〔テレセン調整機構〕
以上で説明したように、DMD10の複数のマイクロミラーMsのうち、基板Pに露光すべきパターンに応じてオン状態となるマイクロミラーMsaが、X’方向とY’方向に密に並ぶ場合、又はX’方向(又はY’方向)に周期性を持って並ぶ場合、投影ユニットPLUから投影される結像光束(Sa、Sa’)には、程度の大小はあるもののテレセン誤差(角度変化)Δθtが発生する。DMD10の複数のマイクロミラーMsの各々は、10KHz程度の応答速度でオン状態とオフ状態とに切り換えられる為、DMD10で生成されるパターン像も描画データに応じて高速に変化する。その為、表示パネル等のパターンを走査露光する間、モジュールMUn(n=1~27)の各々から投影されるパターン像は、瞬間的に、孤立した線状又はドット状のパターン、ライン&スペース状のパターン、或いは大きなランド状のパターン等に形状変化する。
【0102】
一般的なテレビ用の表示パネル(液晶型、有機EL型)は、基板P上で200~300μm角程度の画素部を2:1や16:9等の所定のアスペクト比になるように、マトリックス状に配列した画像表示領域と、その周辺に配置される周辺回路部(引出し配線、接続パッド等)とで構成される。各画素部内には、スイッチング用又は電流駆動用の薄膜トランジスタ(TFT)が形成されるが、TFT用のパターン(ゲート層、ドレイン/ソース層、半導体層等のパターン)やゲート配線や駆動配線の大きさ(線幅)は、画素部の配列ピッチ(200~300μm)に比べると十分に小さい。その為、画像表示領域内のパターンを露光する場合、DMD10から投影されるパターン像はほとんど孤立したものとなるので、テレセン誤差Δθtは発生しない。
【0103】
しかしながら、画素部毎の点灯駆動回路(TFT回路)の構成によっては、画素部の配列ピッチよりも小さいピッチで、X方向又はY方向に並ぶライン&スペース状の配線が形成されることがある。その場合、画像表示領域内のパターンを露光するとき、DMD10から投影されるパターン像は周期性を持ったものとなる。その為、その周期性の程度によってはテレセン誤差Δθtが発生する。また、画像表示領域の露光の際、画素部とほぼ同じ大きさ、或いは画素部の面積の半分以上の大きさの矩形状のパターンを一様に露光する場合もある。その場合、画像表示領域を露光中のDMD10の複数のマイクロミラーMsは、その半分以上がほぼ密な状態でオン状態となる。その為、比較的に大きなテレセン誤差Δθtが発生し得る。
【0104】
テレセン誤差Δθtの発生状態は、複数のモジュールMUn(n=1~27)の各々で露光される表示パネル用のパターンの描画データに基づいて、露光前に推定することができる。本実施の形態では、モジュールMUn内の幾つかの光学部材の各々の位置や姿勢を微調整可能に構成し、それらの光学部材のうち、推定されるテレセン誤差Δθtの大きさに応じて、調整可能な光学部材を選択してテレセン誤差Δθtを補正することができる。
【0105】
図30は、先の
図4、又は
図6で示したモジュールMUnの照明ユニットILUのうちの光ファイバー束FBnからMFEレンズ108Aに至る光路の具体的な構成を示し、
図31は、照明ユニットILUのうちのMFEレンズ108AからDMD10に至る光路の具体的な構成を示す。
図30、
図31において、直交座標系X’Y’Zは
図4(
図6)の座標系X’Y’Zと同じに設定され、
図4に示した部材と同じ機能の部材には同じ符号を付してある。
【0106】
図4では図示を省略したが、
図30では、光ファイバー束FBnの出射端の直後にコンタクトレンズ101が配置され、出射端からの照明光ILmの広がりが抑制される。コンタクトレンズ101の光軸はZ軸と平行に設定され、光ファイバー束FBnから所定の開口数で進む照明光ILmは、ミラー100反射されてX’軸と平行に進んで、ミラー102で-Z方向に反射される。ミラー102からMFEレンズ108Aまでの光路中に配置されるインプットレンズ系104は、光軸AXcに沿って互いに間隔を空けた3つのレンズ群104A、104B、104Cで構成される。
【0107】
照度調整フィルター106は、駆動機構106Bによって並進移動される保持部材106Aに支持され、レンズ群104Aとレンズ群104Bの間に配置される。照度調整フィルター106の一例は、例えば特開平11-195587号公報に開示されているように、石英等の透過板上に微細な遮光性ドットパターンを徐々に密度を変化させて形成したもの、或いは細長い遮光性の楔状パターンを複数列形成したものであり、石英板を平行移動させることで、照明光ILmの透過率を所定範囲内で連続的に変化させることができる。
【0108】
第1のテレセン調整機構は、光ファイバー束FBnからの照明光ILmを反射するミラー100の2次元的な傾き(X’軸回りとY’軸回りの回転角度)を微調整する傾斜機構100Aと、ミラー100を光軸AXcと垂直なX’Y’面内で2次元に微動する並進機構100Bと、傾斜機構100Aと並進機構100Bの各々を個別に駆動するマイクロヘッド又はピエゾアクチュエータ等による駆動部100Cとで構成される。
【0109】
ミラー100の傾きを調整することによって、インプットレンズ系104に入射する照明光ILmの中心光線(主光線)を光軸AXcと同軸な状態に調整することができる。また、ファイバー束FBnの出射端は、インプットレンズ系104の前側焦点の位置に配置されているので、ミラー100をX’方向に微少移動させると、インプットレンズ系104に入射する照明光ILmの中心光線(主光線)は、光軸AXcに対してX’方向に平行シフトする。それによって、インプットレンズ系104から射出する照明光ILmの中心光線(主光線)は光軸AXcに対して僅かに傾いて進む。従って、MFEレンズ108Aに入射する照明光ILmはX’Z面内で全体的に僅かに傾く。
【0110】
図32は、MFEレンズ108Aに入射する照明光ILmをX’Z面内で傾けた場合に、MFEレンズ108Aの出射面側に形成される点光源SPFの状態を誇張して示す図である。照明光ILmの中心光線(主光線)が光軸AXcと平行な場合、MFEレンズ108Aの各レンズ素子ELの出射面側に集光される点光源SPFは、
図32中の白丸で示すように、X’方向に関する中央に位置する。照明光ILmがX’Z面内で光軸AXcに対して傾くと、レンズ素子ELの各々の出射面側に集光される点光源SPFは、
図32中の黒丸で示すように、中央の位置からX’方向にΔxsだけ偏心する。この場合、先の
図7~
図9で説明したように、MFEレンズ108Aの出射面側に形成される複数の点光源SPFの集合体による面光源が全体的にX’方向にΔxsだけ横シフトすることになる。MFEレンズ108Aの各レンズ素子ELのX’Y’面内での断面寸法は小さい為、面光源としてのX’方向への偏心量Δxsも僅かである。
【0111】
図30に示すように、MFEレンズ108Aの出射面側には、
図12に示した楕円領域APh’の開口形状を有する開口絞り108Bが設けられ、MFEレンズ108Aと開口絞り108Bは一体的に保持部108Cに取り付けられる。保持部108C(MFE108A)は、マイクロヘッドやピエゾモータ等による微動機構108Dによって、X’Y’面内での位置が微調できるように設けられる。本実施の形態では、MFEレンズ108AをX’Y’面内で2次元に微動させる微動機構108Dが、第2のテレセン調整機構として機能する。開口絞り108Bは、
図31に示すように、X’方向を長軸、Y’方向を短軸とする楕円領域APh’の開口を有する。楕円領域APh’の長軸の寸法をUx、短軸の寸法をUyとすると、楕円の比率Uy/Uxは、照明光ILmのDMD10への入射角θα(オン状態のマイクロミラーMsaの傾斜角度θdの2倍)の余弦値に依存して、Uy/Ux=cosθαの関係に設定される。
【0112】
MFEレンズ108A(開口絞り108B)の直後には、光軸AXcに対して約45°傾斜したプレート型のビームスプリッタ109Aが設けられる。ビームスプリッタ109Aは、MFEレンズ108Aからの照明光ILmの大部分の光量を透過し、残りの光量(例えば、数%程度)を集光レンズ109Bに向けて反射する。集光レンズ109Bで集光された一部の照明光ILmは、光ファイバー束109Cによって光電素子109Dに導かれる。光電素子109Dは、照明光ILmの強度をモニターして、基板Pに投射される結像光束の露光量を計測するインテグレート・センサー(積算モニター)として使われる。
【0113】
図31に示すように、MFEレンズ108Aの出射面側の面光源(点光源SPFの集合体)からの照明光ILmは、ビームスプリッタ109Aを透過してコンデンサーレンズ系110に入射する。コンデンサーレンズ系110は、間隔を空けて配置された前群レンズ系110Aと後群レンズ系110Bとで構成され、マイクロヘッドやピエゾモータ等による微動機構110CによってX’Y’面内での2次元的な位置が微調整可能となっている。すなわち、微動機構110Cによって、コンデンサーレンズ系110の偏心調整が可能となっている。本実施の形態では、コンデンサーレンズ系110をX’Y’面内で2次元に微動させる微動機構110Cが第3のテレセン調整機構として機能する。なお、第1のテレセン調整機構、第2のテレセン調整機構、及び第3のテレセン調整機構は、いずれもMFEレンズ108Aの出射面側に生成される面光源(或いは開口絞り108Bの楕円領域APh’の開口内に制限された面光源)とコンデンサーレンズ系110との偏心方向に関する相対的な位置関係を調整している。
【0114】
コンデンサーレンズ系110の前側焦点は、MFEレンズ108Aの出射面側の面光源(点光源SPFの集合体)の位置に設定されており、コンデンサーレンズ系110から傾斜ミラー112を介してテレセントリックな状態で進む照明光ILmは、DMD10をケーラー照明する。先の
図32で説明したように、MFEレンズ108Aの出射面側に形成される複数の点光源SPFの集合体による面光源が全体的にX’方向にΔxsだけ横シフトすると、DMD10に照射される照明光ILmの主光線(中心光線)は、
図31中の光軸AXbに対して僅かに傾いた状態になる。すなわち、第1のテレセン調整機構によって照明光ILmに意図的にテレセン誤差を付与することで、先の
図6、
図17、
図21、
図25で説明した照明光ILmの入射角θαを、X’Z面内で初期の設定角度(35.0°)から僅かに変化させることができる。
【0115】
また、
図30に示した第2のテレセン調整機構としての微動機構108Dによって、MFEレンズ108Aと可変開口絞り108Bとを一体にX’Y’面内でX’方向に変位すると、開口絞り108Bの開口(
図31中の楕円領域APh’)が光軸AXcに対して偏心する。それによって、楕円領域APh’内に形成される面光源も全体的にX’方向にシフトする。この場合も、DMD10に照射される照明光ILmの主光線(中心光線)を、
図31中の光軸AXbに対してX’Z面内で傾けること、すなわち、照明光ILmのDMD10への入射角θαを、X’Z面内で初期の設定角度(35.0°)から変化させることができる。なお、微動機構108Dによって、開口絞り108Bのみが単独にX’Y’面内で微動するような構成にしても、同様に入射角θαを変化させることができる。
【0116】
このように、MFEレンズ108Aと開口絞り108Bとを一体に比較的に大きく変位させる為には、インプットレンズ系104からMFEレンズ108Aに照射される照明光ILmの光束幅(照射範囲の直径)を広げておく必要がある。さらに、その変位の量に連動して、MFEレンズ108Aに照射される照明光ILmをX’Y’面内で横シフトさせるシフト機構を設けることも有効である。そのシフト機構は、光ファイバー束FBnの出射端の向きを傾斜させる機構、又は、MFEレンズ108Aの手前に配置した平行平面板(石英板)を傾斜させる機構等で構成できる。
【0117】
第1のテレセン調整機構(駆動部100C等)と第2のテレセン調整機構(微動機構108D等)は、いずれも照明光ILmのDMD10への入射角θαを調整可能であるが、その調整量に関して、第1のテレセン調整機構は微調整用、第2のテレセン調整機構は粗調整用として使い分けることができる。実際の調整時には、第1のテレセン調整機構と第2のテレセン調整機構の両方を使用するか、いずれか一方を使用するかを、投影露光すべきパターンの形態(テレセン誤差Δθtの量や補正量)に応じて適宜選択することができる。
【0118】
さらに、コンデンサーレンズ系110をX’Y’面内で偏心させる第3のテレセン調整機構としての微動機構110Cは、第2のテレセン調整機構によってMFEレンズ108Aと開口絞り108Bで規定される面光源の位置を相対的に偏心させる場合と同等の効果を持つ。但し、コンデンサーレンズ系110をX’方向(又はY’方向)に偏心させると、DMD10に投射される照明光ILmの照射領域も横シフトするので、その横シフト分も見込んで、照射領域はDMD10のミラー面全体のサイズよりも大きく設定される。微動機構110Cによる第3のテレセン調整機構も、第2のテレセン調整機構と同様に粗調整用として使い分けることができる。
【0119】
〔その他のテレセン調整機構〕
テレセン誤差の調整(補正)は、
図4、
図30に示した光ファイバー束FBn(n=1~27)の各々の出射端のX’Y’面内での位置を、微動機構によって横シフトさせることでも可能である。この場合は、先の第1のテレセン調整機構(駆動機構100C等)と同様に、MFEレンズ108Aの出射面側に形成される面光源(複数の点光源SPFの集合)の位置を微調整することができる。
【0120】
テレセン誤差の補正は、
図4、
図6、
図31に示した傾斜ミラー112の本来の角度をマイクロヘッドやピエゾアクチュエータ等の微動機構で調整して、DMD10への照明光ILmの入射角θα(例えば、設計上で35.0°)を微調整することでも可能である。或いは、
図4、
図31に示したマウント部10Mのパラレルリンク機構とピエゾ素子を組み合わせた微動ステージによって、DMD10のミラー面(中立面Pcc)の傾きを微調整して、テレセン誤差を補正しても良い。但し、傾斜ミラー112やDMD10の角度の調整は、反射光がその調整角度の倍角で傾く為に粗調整用として使われる。さらに、DMD10の角度調整では、基板P上に投影される中立面Pccの共役面(ベストフォーカス面)が光軸AXaと垂直な面に対して走査露光の方向(X’方向、又はX方向)に傾く像面傾斜が生じる。
【0121】
像面傾斜の方向が走査露光の方向の場合、傾斜した像面の平均的な像面位置で走査露光される為、露光されたパターン像のコントラストの低下は軽微である。投影ユニットPLUから投影されるパターン像のベストフォーカス面と基板Pの表面とを、走査露光の方向に相対的に僅かに傾ける露光方法は、例えば、特許第2830492号公報に開示されているように、特に孤立状のパターンの露光時の焦点深度(DOF)を拡大させる効果が得られる。
【0122】
従って、DMD10を走査露光方向(X’方向又はX方向)に傾斜させてテレセン誤差Δθtを補正する機能も、露光されるパターン像のコントラスト低下が無視できる範囲で活用することができる。コントラスト低下が無視できない程度にDMD10を傾斜させる場合は、投影ユニットPLU内に何らかの像面傾斜補正系(2枚の楔状の偏角プリズム等)を設けることになる。或いは、テレセン誤差Δθtの補正の為に、投影ユニットPLU内の特定のレンズ群やレンズを光軸AXaに対して偏心させる機構を設けても良い。
【0123】
以上の説明では、テレセン誤差Δθtが主にX’方向(オン状態のマイクロミラーMsaの傾き方向)に発生するとした。しかしながら、露光されるパターンは、基板P上でX’方向とY’方向の各々に対して30°~60°の角度で傾いたライン&スペース状パターンの場合もある。そのような場合、オン状態のマイクロミラーMsaもX’Y’面内で斜めに配列されると共に、その斜め方向と直交した方向には周期性を持って配列される。その為、オン状態のマイクロミラーMsaから発生する反射光(結像光束)Sa’には、回折現象の影響によるテレセン誤差Δθtが生じる。
【0124】
先の
図24のようなライン&スペースパターンの場合、テレセン誤差ΔθtはX’方向のみに発生したが、X’Y’面内(XY面内)で傾いたライン&スペースパターンの場合、テレセン誤差ΔθtはX’方向とY’方向とに発生する。従って、30°~60°の角度で傾いたライン&スペースパターンの場合でも、発生し得るテレセン誤差ΔθtがX’方向とY’方向のいずれかで許容範囲を超えるときは、先の
図30、
図31で説明したテレセン誤差の幾つかの調整機構によって補正することができる。
【0125】
また、テレセン誤差Δθtは、投影すべきパターンの態様に関わらず、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsの傾き角度θdの設計値からの誤差によっても発生する。先に例示したDMD10では、オン状態のマイクロミラーMsaの傾き角度θdを公称値(設計値)で17.5°としたが、DMD10の製造段階のプロセスのバラつき等によって、±0.5°の駆動誤差が発生する。駆動誤差が±0.5°の場合、DMD10への照明光ILmの入射角θαが35.0°で一定であると、投影ユニットPLUの物面側(DMD10側)のテレセン誤差は最大で、±1°となる。従って、投影ユニットPLUの投影倍率Mpが1/6の場合、マイクロミラーMsaの駆動誤差に起因した像面側のテレセン誤差Δθtは最大で±6°となる。
【0126】
従って、先の
図1に示した露光装置の基板ホルダ4B周辺に設けた較正用基準部CUを用いて、モジュールMUn(n=1~27)の各々のDMD10の駆動誤差に起因したテレセン誤差Δθtを事前に計測して、実パターンの露光前に調整(キャリブレーション)しておくことが望ましい。較正用基準部CUには、DMD10で作られたパターンの投影ユニットPLUによる投影像を部分的に拡大観察する撮像素子が組み込まれている。そこで、DMD10で作られたテストパターン(ライン&スペース等)の投影像を、フォーカス位置(基板ホルダ4BのZ方向の位置)を少しずつ変化させは画像サンプリングし、フォーカス位置毎のテストパターン像の横ずれの変化を解析すれば、テレセン誤差Δθtを計測することができる。
【0127】
以上の第1の実施の形態の説明において、パターンの態様として孤立状パターンとは、必ずしもDMD10の全マイクロミラーMsのうちの単一、又は一列分がオン状態のマイクロミラーMsaになる場合のみに限られない。例えば、オン状態のマイクロミラーMsaの2個、3個(1×3)、4個(2×2)、6個(2×3)、8個(2×4)、又は9個(3×3)が密に配列し、その周囲のマイクロミラーMsがX’方向とY’方向とに、例えば10個以上、オフ状態のマイクロミラーMsbとなるような場合も、孤立状パターンと見做すこともできる。その逆に、オフ状態のマイクロミラーMsbの個、3個(1×3)、4個(2×2)、6個(2×3)、8個(2×4)、又は9個(3×3)が密に配列し、その周囲のマイクロミラーMsがX’方向とY’方向とに、例えば、数個以上(孤立状パターンの数倍以上の寸法に対応)に亘って密にオン状態のマイクロミラーMsaとなるような場合は、ランド状パターンと見做すこともできる。
【0128】
また、パターンの態様としてのライン&スペース状パターンも、必ずしも1列分のオン状態のマイクロミラーMsaと1列分のオフ状態のマイクロミラーMsbとを交互に繰り返し配列した
図24のような態様に限定されない。例えば、2列分のオン状態のマイクロミラーMsaと2列分のオフ状態のマイクロミラーMsbとを交互に繰り返し配列した態様、3列分のオン状態のマイクロミラーMsaと3列分のオフ状態のマイクロミラーMsbとを交互に繰り返し配列した態様、又は、2列分のオン状態のマイクロミラーMsaと4列分のオフ状態のマイクロミラーMsbとを交互に繰り返し配列した態様であっても良い。いずれのパターン形態の場合も、DMD10の全マイクロミラーMs中の単位面積(例えば100×100個のマイクロミラーMsの配列領域)当たりにおけるオン状態のマイクロミラーMsの分布状態(密度や密集度)が判れば、テレセン誤差Δθtやパターンエッジの非対称性の程度をシミュレーション等によって容易に特定することもできる。
【0129】
〔変形例1〕
先の実施の形態では、DMD10への照明光ILmの傾斜照明によって、
図11で説明したように、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される結像光束Sa’の0次光相当成分の強度分布(光源像Ips)が楕円状になるので、その補正の為に、
図31に示したように、MFE108Aの射出面側に楕円領域APh’の開口を有する開口絞り108Bを設けた。
【0130】
この場合、
図12に示したように、MFE108Aの入射面側に照射される照明光ILmは、円形の照明領域Efとなっているので、楕円領域APh’の外側に分布する点光源SPFは遮光されることになり、照明光ILmの利用効率の低下、即ち光量損失が生じる。そこで、本変形例では、MFE108Aの入射面側に照射される照明光ILmの照明領域Efを、楕円領域APh’に合わせて楕円状に成型する。その為、本変形例では、透過型の回折光学素子(DOEとも呼ぶ)を用いて、光量損失が少なくなるように構成する。
【0131】
図33は、回折光学素子(DOE:Diffraction Optical Element)200を用いた照
明ユニットILUの主要部の光学配置を模式的に表した図である。
図33(A)は、DOE200、インプットレンズ系202(先の
図30のインプットレンズ系104に相当)、MFE108Aの配置をX’Z面内で見た図であり、
図33(B)は、DOE200、インプットレンズ系202、MFE108Aの配置をY’Z面内で見た図である。DOE200は、石英板の表面に微細なライン状の凹凸を刻設して、ピッチや方向を異ならせた複数の回折格子要素を形成したものである。このようなDOE200をフライ・アイ・レンズの手前に配置して、フライ・アイ・レンズの射出面側に形成される面光源の形状を変化させる照明光学系は、例えば特開2001-176766号公報に開示されている。
【0132】
本変形例では、MFE108Aの入射面側における照明光ILmの照明領域EfをX’Y’面内で楕円状にするように、DOE200の回折格子のピッチ等が設定されている。先の
図30に示したファイバー束FBnからの照明光ILm(発散光)は、不図示のビームエキスパンダー光学系等によって、断面内の強度分布が円形の平行光束に変換された後、DOF200に入射する。
図33(A)、
図33(B)に示すように、DOE200から発生する回折光の回折角は、X’Z面内で見たときの回折角Δdxに比べて、Y’Z面内で見たときの回折角Δdyの方が小さくなるように設定されている。
【0133】
インプットレンズ系202の後側焦点の位置はMFE108Aの入射面に設定されているので、回折角Δdx、Δdyの違いによって、X’Z面と平行な光軸AXcを含む面内での照明領域EfのX’方向の寸法Uxに比べて、Y’Z面と平行な光軸AXcを含む面内での照明領域EfのY’方向の寸法Uyの方が小さくなる。長軸となる寸法Uxと短軸となる寸法Uyとの比率Uy/Uxは、先に説明したように、cosθαに設定される。
【0134】
このような構成によって、MFE108Aの射出面側に形成される複数の点光源SPFは、照明領域Efに対応した楕円状の範囲内に配列された複数のレンズ素子ELの各々の射出面側のみに形成される。DOE200に形成される回折格子は、照明光ILmの総光量の大部分(例えば、90%程度)がインプットレンズ系202に入射するように、回折角がΔdx、Δdyよりも大きい高次回折光を発生させない、又は発生しても極めて低い強度となるような格子構造になっている。
【0135】
なお、DOE200を用いる場合でも、楕円状の開口を有する開口絞り108Bを用いる場合でも、MFE108Aの射出面側に形成される楕円状の面光源の長軸方向と短軸方向は、DMD10への照明光ILmのX’Y’面内での入射方向で一義的に決まる。その為、楕円領域APh’のX’Y’面内での回転方向の調整は不要であるが、必要であれば、DOE200や開口絞り108Bの微小回転機構を設けても良い。
【0136】
また、テレセン誤差Δθtの調整(補正)の為に、照明光ILmのDMD10への入射角θαを規定値(例えば、35.0°)から微調整する場合、楕円領域APh’の楕円比率Uy/Ux(
図30、
図33参照)の調整も考えられる。例えば、入射角θαを規定値の35.0°から±0.5°(投影倍率Mp=1/6としたときの像面側のテレセンの角度調整量として±6°に相当)だけ変化させたとすると、入射角35.0°のときの楕円比率Uy/Uxは0.8191、入射角34.5°のときの楕円比率Uy/Uxは0.8241、入射角35.5°のときの楕円比率Uy/Uxは0.8141となる。従って、入射角θαの±0.5°の調整による楕円比率Uy/Uxの変化率は±0.6%と微小である。さらに、入射角θαの調整範囲が仮に±1.0°になった場合でも、楕円比率Uy/Uxの変化率は±1.2%となるので、楕円比率Uy/Uxを調整しなくても問題無いことになる。
【0137】
〔変形例2〕
図34は、MFE108Aの射出面側に楕円状の面光源(複数の点光源SPFの集合体)を形成する為に、MFE108Aに入射する照明光ILmの断面内の分布(輪郭)を楕円状にする第2の変形例による光学配置を示す。
図34(A)は、MFE108Aの手前の位置に配置される2つのシリンドリカルレンズ210,212の配置をX’Z面内で見た図であり、
図34(B)は、
図34(A)の配置をY’Z面内で見た図である。本変形例では、MFE108Aの手前の位置に、照明ユニットILuの光軸AXcに沿って正の屈折力を有するシリンドリカルレンズ210と負の屈折力を有するシリンドリカルレンズ212とを、所定の間隔で配置する。
【0138】
シリンドリカルレンズ210、212の各々の母線は、X’軸と平行に設定される。従って、断面内で円形の強度分布を持ち、平行光束にされた照明光ILmがシリンドリカルレンズ210に入射すると、X’Z面内ではシリンドリカルレンズ210は屈折力を持たない平行平板として機能するので、
図34(A)に示すように、照明光ILmのX’方向の幅は変わらずに、そのままシリンドリカルレンズ212に入射する。一方、
図34(B)に示すように、シリンドリカルレンズ210はY’Z面内では正の屈折力を持つので、シリンドリカルレンズ210を通過した照明光ILmは、X’方向の幅を徐々に減少させながら、シリンドリカルレンズ212に入射する。
【0139】
シリンドリカルレンズ212は、X’Z面内では屈折力を持たない平行平板として機能するので、
図34(A)に示すように、照明光ILmのX’方向の幅は変わらずに、そのまま平行光束の状態で射出されて、後段のMFE108A上の照明領域Efに達する。一方、
図34(B)に示すように、シリンドリカルレンズ212はY’Z面内では負の屈折力を持つので、シリンドリカルレンズ212を通過した照明光ILmは、Y’方向の幅が元の幅よりも縮小された平行光束の状態で、後段のMFE108A上の照明領域Efに達する。
【0140】
このように、非等方的な屈折力を持つレンズ素子として2つのシリンドリカル210、212を設ける場合、シリンドリカルレンズ210の焦点位置(Y’Z面内で照明光ILmが集光する位置)とシリンドリカルレンズ212の焦点位置とは、光軸AXc上で同じ位置になるように設定される。シリンドリカルレンズ210、212の各々の焦点距離とシリンドリカルレンズ210、212の間隔とを適当に設定することで、照明領域Efの楕円比率Uy/Uxを、入射角θαに対応して値(cosθα)にすることができる。
【0141】
なお、
図34の構成では、元の照明光ILmの断面内での円形の強度分布をY’方向に圧縮することで楕円状に変形したが、シリンドリカルレンズ210、212の配置を入れ替えて、円形の強度分布を持つ照明光ILmを、負のシリンドリカルレンズ212でY’方向に拡大した後、正のシリンドリカルレンズ210で平行光束に変化するようにしても良い。この場合、元の照明光ILmの断面内での円形の強度分布は、X’方向の幅はそのままで、Y’方向に伸張された楕円状に変換される。従って、負のシリンドリカルレンズ212から正のシリンドリカルレンズ210に向けて照明光ILmを通す場合は、シリンドリカルレンズ210、212の各々の母線をY’軸と平行に設定する。
【0142】
以上のように、MFE108Aに照射される照明光ILmの断面内の強度分布を楕円状にする構成としては、アナモフィックレンズのように縦方向と横方向との倍率が異なるレンズ系、トロイダル面(トーリック面)を有するレンズ素子や反射素子、フレネルレンズ素子、或いはマイクロプリズムアレー等を、単独で、又は他の球面レンズや非球面レンズと組み合わせて使うこともできる。この場合、アナモフィックレンズ、トロイダル面(トーリック面)を有するレンズ素子、フレネルレンズ素子、マイクロプリズムアレーは、いずれもシリンドリカルレンズと同様に、非等方的な屈折力又は屈折角を持つ光学素子(レンズ素子)、或いは断面内での強度分布の輪郭を整形する分布整形光学素子として機能する。
【0143】
〔変形例3〕
マスク基板を用いて、半導体ウェハ上やガラス基板上に半導体回路や表示パネル等の電子デバイス用のパターンを露光する投影露光装置では、より微細な線幅のパターンを忠実に露光する為、マスク基板に照明光を照射する照明光学系内の瞳面(例えば、フライ・アイ・レンズの射出面側)に形成される面光源の形状を、単純な円形だけでなく、輪帯状、2極状、4極状にする変形照明法を使うことが知られている。先に挙げた特開2001-176766号公報にも、回折光学素子を用いて、4重極照明等の多重極照明や輪帯照明を行う構成が開示されている。
【0144】
DMD10を用いたパターンの投影露光においても、高解像化に対応する為に、照明ユニットILU内に同様の変形照明法に対応可能な構成を設けることができる。変形照明法を行う簡単な構成は、先の
図31に示した開口絞り108Bの開口形状を輪帯状や多重極状にすることである。
図35は、
図31と同様に、MFE108Aの出射面側に形成される複数の点光源SPFの集合体(面光源)を+Z方向に見た図である。開口絞り108Bには、輪郭が楕円状の外輪AProと楕円状の内輪APriとの間の領域のみの点光源SPFからの光は透過させ、光軸AXcを含む内輪APriの内側の中央部と外輪AProの外側の周辺部に位置する点光源SPFからの光は遮光するように、楕円状輪帯開口が形成されている。
【0145】
本変形例でも、楕円状の外輪AProのX’方向の長軸の寸法Uxと、Y’方向の短軸の寸法Uyとの比率Uy/Uxは、入射角θαにより、cosθαに設定される。また、楕円状の内輪APriのX’方向の長軸の寸法とY’方向の短軸の寸法との比率も、入射角θαで規定されるcosθαに設定される。開口絞り108Bを楕円状輪帯開口にする場合は、透明な石英板の表面にクロム層による遮光膜を全面に形成した後、遮光膜の一部をエッチングにより楕円状輪帯開口の形状に除去すれば良い。
【0146】
また、多重極照明として4重極照明を行う場合は、
図36に示すように、
図35中の外輪AProと内輪APriとで囲まれた楕円状輪帯領域のうちのX’軸とY’軸の各々から約45°傾いた方向の4つの扇状領域APa1、APa2、APa3、APa4の各々を、点光源SPFからの光が透過するような開口とした開口絞り108Bが設けられる。4つの扇状領域APa1、APa2、APa3、APa4の全てを含む環状領域の輪郭、又は扇状領域APa1、APa2、APa3、APa4の各々の中心(重心)点を通る環状線の形状が、入射角θαの余弦値(=cosθα)の比率を持つ楕円形状に設定される。
【0147】
本変形例では、輪帯照明や多重極照明の為に、開口絞り108Bに楕円状輪帯開口や4つの扇状開口を設けるとしたが、先に挙げた特開2001-176766号公報に開示されているように、回折光学素子(DOE)やアキシコン素子(光軸を回転中心とする円錐状プリズム)等を用いることにより、MFE108Aの入射面上に楕円状の輪帯照明領域や4重極照明領域を形成することができ、開口絞り108Bの遮光部で点光源SPFからの光が遮られることによる光量損失を低減することができる。また、多重極照明の為の各極の面光源の形状は、
図36のように、扇状領域APa1、APa2、APa3、APa4に限られず、矩形領域や円形領域であっても良い。また、極数は4極以外に、2極、6極、8極であっても良い。
【0148】
〔変形例4〕
照明光ILmのDMD10への傾斜照明によって、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される結像光束Sa’の0次光相当成分(
図22中の9次回折光Id9、
図26中の18次回折光Id18)の分布が楕円状に変形することは、照明ユニットILU内の面光源の形状を変形させることで円形状に補正できる。しかしながら、先の
図23、又は
図27で説明したように、投影ユニットPLUの瞳Epの直径(開口数NA)、円形補正された0次光相当成分の強度分布Hpa(
図23中の9次回折光Id9、
図27中の18次回折光Id18)の直径、DMD10のマイクロミラーMsの配列ピッチPdx、Pdy、入射角θα(=2θd)、並びに照明光ILmの波長λの設定によっては、不要な回折光成分が瞳Ep内を多く通ることになり、基板P上に露光されるパターン像の品質を悪化させることがある。
【0149】
不要な回折光成分は、主にDMD10のマイクロミラーMsの配列のピッチPdx、Pdyと波長λとで決まる回折光成分である。例えば、先の
図22、
図23で説明したように、0次光相当成分である9次回折光Id9のX’方向(並びにY’方向)の両側には、ピッチPdx(=Pdy)で生じる±1次光相当成分である8次回折光Id8と10次回折光Id10とによって、それぞれ円形状の強度分布Hpb(並びにHpc、Hpd)として発生する。
図23の場合、0次光相当成分である9次回折光Id9の強度分布Hpaのシフト量ΔDx(テレセン誤差Δθt)をゼロに補正すると、8次回折光Id8と10次回折光Id10の各々による強度分布Hpbの両方の一部が、投影ユニットPLUの瞳Ep内に現れることになる。
【0150】
投影ユニットPLUの瞳Epの直径に対応する像面側の最大の開口数をNAiとしたとき、開口数NAiが
図23に例示した0.3よりも大きい場合、DMD10からの±1次光相当成分の強度分布Hpb、Hpc、Hpdの多くが瞳Epを通ることになる。その為、基板P上には、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaの個々のエッジラインが弱いながらも解像されることになり、最終的に露光されるパターンの像品質の劣化を招くことになる。
【0151】
そこで、投影ユニットPLUの瞳Epの最大の有効径に対応した像面側の開口数NAiを、必要とされる解像度R(μm)、照明光ILmの中心波長λ、及びプロセスファクタk(0<k≦1)で決まる式、R=k(λ/NAi)の関係から設定する。一例として、プロセスファクタkを0.6、中心波長λを355.00nmとし、必要な解像度Rを0.8μmとする場合、開口数NAiは約0.266となる。また、中心波長λを343.33nmとし、他の条件を同じにした場合、開口数NAiは約0.257となる。また、中心波長λとDMD10のマイクロミラーMsのピッチPdx、Pdy、並びに照明光ILmの入射角θαは決まっているので、テレセン誤差Δθtを補正した後の0次光相当成分の9次回折光Id9に対する±1次光相当成分の8次回折光Id8と10次回折光Id10の物面側での角度は、先の式(2)又は式(3)から一義的に定まる。
【0152】
中心波長λを355.00nmとした場合、先の
図22、
図23に示した例のように、9次回折光Id9の回折角θ9=-1.04°、8次回折光Id8の回折角θ8=+2.73°、10次回折光Id10の回折角θ10=-4.81°となる。このことから、9次回折光Id9から見た8次回折光Id8の開き角Δθ8は3.77°となり、9次回折光Id9から見た10次回折光Id10の開き角Δθ10も3.77°となる。開き角Δθ8、Δθ10は同じとなるので、Δθ8=Δθ10=Δθjとして、物面側の開口数NAojに換算すると、NAoj=sin(Δθj)より、NAoj≒0.06575となる。投影ユニットPLUの投影倍率Mpを1/6とした場合、物面側の開口数NAojに対応した像面側の開口数NAijは、NAij=NAoj/Mp≒0.395となる。
【0153】
さらに、投影ユニットPLUの瞳Ep内には、
図23に示したように、楕円化が補正された0次光成分相当の9次回折光Id9の円形状の強度分布Hpaが形成される。先の
図11でも説明したように、強度分布Hpaの直径と瞳Epの直径との比であるσ値(0<σ≦1)は、
図31に示したMFE108Aの出射面側に形成される面光源から投影ユニットPLUの瞳Epまでの結像光路の倍率と、MFE108Aの出射面側に形成される面光源の大きさ(開口絞り108Bを設ける場合は、その開口の大きさ)によって決まる。従って、強度分布Hpaの半径に対応した像面側の開口数NAibは、NAib=σ・NAiとなる。同様に、±1次光相当成分の8次回折光Id8と10次回折光Id10の各々による強度分布Hpb(及びHpc、Hpd)も、強度分布Hpaとほぼ同じ直径で分布する。
【0154】
以上の状態を模式的に表すと、
図37のようになる。
図37において、横線は瞳Epの面内のX’方向の開口数を表し、縦線は瞳Epの面内のY’方向の開口数を表し、中心点は瞳Epの中心(光軸AXp)を表し、ここでは、マイクロミラーMsの配列ピッチPdx(Pdy)を5.4μm、中心波長λを355.00nm、投影ユニットPLUの像面側の最大の開口数NAiを0.266、σ値を0.8とした。従って、強度分布Hpa、Hpb、Hpc、Hpdの各々の像面側の開口数NAibは約0.213となる。
【0155】
以上のような条件の場合、±1次光相当成分の8次回折光Id8と10次回折光Id10の各々による強度分布Hpb、Hpc、Hpdの中心(重心)の位置は、開口数NAij=0.395と大きいので瞳Epの外に位置するものの、それらの一部は瞳Epを通る。その為、オン状態のマイクロミラーMsaのエッジラインが弱いながらも結像される可能性がある。そこで、強度分布Hpb、Hpc、Hpdの全てをほぼ完全に瞳Epの外に位置するように設定することが考えられる。中心波長λ、マイクロミラーMsのピッチPdx、Pdy、入射角θα、及び、投影ユニットPLUの像面側の最大の開口数NAi(ここでは、NAi=0.266)を変更しないものとすると、σ値を調整して、0次光成分相当の9次回折光Id9の強度分布Hpaの直径、即ち、開口数NAibを、
図37の状態から小さくすることで、強度分布Hpb、Hpc、Hpdの全てをほぼ完全に瞳Epの外に配置できる。
【0156】
具体的な一例としては、±1次光相当成分の8次回折光Id8と10次回折光Id10の各々の中心(重心)の位置に相当する開口数NAij(≒0.395)と、投影ユニットPLUの像面側の最大の開口数NAi(≒0.266)と、σ値で設定される0次光成分相当の9次回折光Id9の強度分布Hpaの直径に相当する開口数NAibとを、理論的には以下の式(8)のような関係にすればよい。
【0157】
【0158】
先の実施の形態で説明したように、0次光成分相当の9次回折光Id9の強度分布Hpaの楕円化の補正が行われ、発生するテレセン誤差Δθtもゼロに補正された状態では、強度分布Hpaの直径に相当する開口数NAibは、式(8)を満たして、出来るだけ大きくすることが望ましい。従って、
図37の条件では、NAib≒0.129に設定するのが望ましく、これはσ値で表すと、σ=NAib/NAi=0.485となる。実際の設定では、許容範囲を持たせて、σ=0.485±15%の範囲であれば良い。このような設定は、
図35、
図36で説明した輪帯照明法や多重極照明法においても同様に適用できる。
【0159】
また、先の
図24~
図27で説明したようなライン&スペース状のパターンの場合は、ライン&スペースのピッチが2Pdx(又は2Pdy)になるため、±1次光相当成分の回折光の0次光相当成分の回折光に対する開き角は、
図37の場合の半分程度で、開口数に換算すると約NAij/2になる。その為、±1次光相当成分の回折光の多くが瞳Epを通ることになり、ライン&スペース状のパターンは忠実に露光されることになる。
【0160】
図38は、
図37で説明した条件において、照明光ILmの波長λを343.44nmに変更し、投影ユニットPLUの像面側の最大の開口数NAiを0.25にした場合の各回折光の分布を模式的に示す図である。DMD10のマイクロミラーMsの配列ピッチPdx(=Pdy)が5.4μmの場合、投影ユニットPLUの光軸AXaからの傾き角が最も小さい9次回折光Id9の物面側(DMD10側)でのテレセン誤差は、先の式(2)又は(3)に基づいて計算すると、角度で約0.078°となり、像面側でのテレセン誤差Δθtとしては約0.467°となる。この値が許容できない場合は、先に説明したテレセン誤差の調整機構によって補正される。
【0161】
また、
図38では、テレセン誤差Δθtの補正後の照明光ILmの入射角θαに応じて、9次回折光Id9(0次光相当成分)の瞳Epでの強度分布は、楕円状から円形状の分布Hpaに補正されているものとする。波長λが343.33nmの場合、マイクロミラーMsのピッチPdx(Pdy)に対応した+1次光相当成分の8次回折光Id8の中心(重心)点と、-1次光相当成分の10次回折光Id10の中心(重心)点とは、開口数NAijで表すと、X’方向とY’方向の各々に関して、NAij≒0.382となる。
【0162】
そこで、先の式(8)に基づくと、瞳Epの最大の開口数NAiが0.25のとき、DMD10からの0次光相当成分(9次回折光Id9)の円形の強度分布Hpaの開口数NAibは約0.132となる。従って、MFE108A、又は開口絞り108Bで生成される面光源の大きさ(具体的には、楕円状の短軸方向の寸法)を、σ(=NAib/NAi)値として約0.528以下にすれば、
図38のように、不要な+1次光相当成分の8次回折光Id8や-1次光相当成分の10次回折光Id10の強度分布Hpbを瞳Epの外にすることができる。
【0163】
そのようなσ値の設定により、
図24、
図25のように、X’方向にピッチ2Pdxで作られるライン&スペース状のパターン、即ち、DMD10上で最も小さい格子ピッチのライン&スペース状のパターンの場合、ピッチ2PdxでX’方向に1つ置きに並ぶオン状態のマイクロミラーMsaから発生する±1次光相当成分の高次回折光の強度分布±Hpb’の各中心(重心)点は、開口数NA$1に換算して約0.19となり、強度分布±Hpb’の各々の半径に相当する開口数は強度分布Hpaの開口数NAibと同等となる。その為、投影ユニットPLUの最大の開口数NAi(=0.25)内には、強度分布±Hpb’の各々の中心(重心)点を含む半分以上(計算では約72.6%)の面積が、光軸AXaと対称的に現れることになり、ライン&スペース状のパターンは良好に結像される。
【0164】
なお、Y’方向にピッチ2Pdyで作られるライン&スペース状のパターンの場合、±1次光相当成分の高次回折光の強度分布±Hpb’の各中心(重心)点は、
図38の状態から軸AXaの回りに約90°光回転したY’軸上に現れる。
【0165】
以上のことから、±1次光相当成分の高次回折光の強度分布±Hpb’の各々を瞳Ep内に完全に包含させることも考えられる。その場合は、
図38に示した強度分布±Hpb’の各々の半径に相当する開口数を、NAi(0.25)-NA$1(0.19)=0.06に設定すれば良い。このことは、強度分布Hpaの開口数NAibを約0.06に設定すること、即ち、σ値を約0.24(=0.06/0.25)にすることを意味する。
【0166】
ここで、オン状態のマイクロミラーMsaがピッチPdx(Pdy)の場合の±1次光相当成分の8次回折光Id8、10次回折光Id0の強度分布Hpbの各中心(重心)点の開口数NAij(≒0.382)と、オン状態のマイクロミラーMsaが1つ置きに配置されるピッチ2Pdx(2Pdy)の場合の±1次光相当成分の高次回折光の強度分布±Hpb’の各中心(重心)点の開口数NA$1(≒0.19)とを考慮した場合、先の式(8)の条件は、更に式(9)の条件としても良い。
【0167】
【0168】
この式(9)を投影ユニットPLUの像面側の最大の開口数NAiで割ると、σ値の好ましい範囲を表す式(10)に変形できる。
【0169】
【0170】
以上の実施の形態や変形例では、投影ユニットPLUの瞳Epに形成される光源像Ips、即ち、DMD10からの0次光相当成分である9次回折光(又は18次回折光等)の強度分布Hpaの楕円化を抑制して、円形状に補正するようにした。その為、±1次光相当成分の強度分布Hpb、Hpc、Hpd、±Hpb’も円形になるとした。しかしながら、実際は、照明光ILmがX’方向から傾斜照明されることから、強度分布Hpaが真円になったとしても、強度分布Hpb、Hpc、Hpd、±Hpb’の各々は、強度分布Hpaの中心(光軸AXaの位置)からの回折角に応じて、X’方向に僅かに圧縮された楕円状となる。
【0171】
従って、
図37、
図38に示した強度分布Hpb(及びHpc、Hpd)の半径に相当する像面側のX’方向の開口数は、厳密には強度分布Hpbの開口数NAibよりも若干小さい開口数NAib’になる。ここで、強度分布Hpaの半径に相当する像面側の開口数NAibは、物面側(DMD10側)では、投影倍率Mp(=1/6)倍となり、Mp・NAibとなる。そこで、開口数(Mp・NAib)に相当する角度をΔθσ(=arcsin(±Mp・NAib))とする。同様に、強度分布Hpb(及びHpc、Hpd)の像面側のX’方向の開口数NAib’は、物面側(DMD10側)では、投影倍率Mp(=1/6)倍となり、Mp・NAib’となる。そこで、X’方向の開口数(Mp・NAib’)に相当する角度をΔθib(=arcsin(±Mp・NAib’))とする。
【0172】
これらの角度Δθσ、Δθibを考慮すると、先の式(2)、又は式(3)は、それぞれ以下の式(11)、式(12)のように表される。
【0173】
【0174】
【0175】
〔変形例5〕
また、
図37、
図38のように、DMD10のマイクロミラーMsの配列ピッチPdx、Pdyによって発生する±1次光相当成分の回折光の強度分布Hpbの全体を、投影ユニットPLUの瞳Epの外に配置させるためのσ値の設定は、照明光ILmをDMD10に落射照明する方式の露光装置であっても同様に適用できる。この場合、DMD10と投影ユニットPLUとの間の光路中には、偏光ビームスプリッタと1/4波長板が設けられる。この場合、偏光ビームスプリッタの偏光分離面は、一例として投影ユニットPLUの光軸AXaと45°になるように設定され、照明光ILmは偏光ビームスプリッタ側からDMD10の中立面Pccに対してほぼ垂直(入射角θα≒0°)に設定される。
【0176】
この構成では、照明光ILmを射出するコンデンサーレンズ系の光軸(AXc、AXb)と投影ユニットPLUの光軸AXaとが、DMD10上で同軸又は平行になる。その為、楕円化の問題は生じないが、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaの駆動誤差に起因したテレセン誤差Δθtは発生するので、その補正が必要となる。なお、落射照明方式でも、コンデンサーレンズ系の光軸と投影ユニットPLUの光軸AXaとがDMD10上で厳密に平行ではなく、意図的に一定の入射角θα(例えば、5°以上)で傾くように設定されている場合は、楕円化の補正を行うのが望ましい。
【0177】
〔変形例6〕
以上の実施の形態や変形例で説明した楕円化の補正方法では、投影ユニットPLUの瞳Epに楕円状に形成される光源像Ips(DMD10からの0次光相当成分の回折光の強度分布Hpa)の輪郭が円形に補正されるように、照明ユニットILU内で生成される面光源の輪郭形状を相補的な楕円状にした。照明光ILmのDMD10への入射角θαは、装置構成上で大きく変化させることは無いので、楕円の比率もほぼ一定と考えられる。
【0178】
そこで、照明ユニットILU内で生成される面光源の輪郭形状は円形のままとし、投影ユニットPLU内の瞳Epの手前又は前後の位置に、シリンドリカルレンズ、トーリックレンズ、回折光学素子等の非等方的な屈折力を持つ分布整形光学素子を追加して、楕円状となる光源像Ipsの分布(DMD10からの0次光相当成分の回折光の強度分布Hpa)を円形に補正するようにしても良い。但し、そのような投影ユニットPLUの場合は、投影ユニットPLUの結像性能、特に投影倍率Mpの等方性、ディストーション特性、その他の収差特性が許容範囲となるように、分布整形光学素子を含む結像レンズとしての光学設計を行う必要がある。
【0179】
以上の実施の形態や変形例で説明したパターン露光装置EXは、描画データに基づいて選択的に駆動される複数のマイクロミラーMsを有するDMD10(空間光変調素子)と、所定の入射角θαでDMD10に照明光ILmを照射する照明ユニットPLUと、DMD10の選択されたオン状態のマイクロミラーMsaからの反射光を入射して基板Pに投影する投影ユニットPLUとを備える。
【0180】
そのうちの照明ユニットILUには、照明光ILmの源となる所定形状の面光源(MFE108Aの出射面側の複数の点光源SPFの集合体)からの光を集光してDMD10に傾斜照射すると共に、投影ユニットPLUの光軸AXaに対して入射角θαで傾いた光軸(AXb,AXc)に沿って配置されて、面光源(点光源SPFの集合体)を投影ユニットPLUの瞳Epと光学的に共役にする為の集光光学部材としてのコンデンサーレンズ系110と、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaからの反射光としての0次光相当成分の回折光(Id9、Id18等)によって投影ユニットPLUの瞳Epに形成される面光源の光源像Ipsの強度分布Hpaの全体的な輪郭が入射角θαに応じて楕円状に歪むことを補正するように、面光源Ips(強度分布Hpa)の輪郭の形状を変形させる補正光学部材としての開口絞り108B、回折光学素子(DOE)200、又は非等方的な屈折力を持つレンズ素子210、212等とが設けられる。
【0181】
また、以上の実施の形態や変形例によれば、電子デバイス(半導体回路、ディスプレイ、配線、センサー等)用のパターンの描画データに基づいて選択的に駆動される複数のマイクロミラーMsを有するDMD10(空間光変調素子)を、照明ユニットILUからの照明光ILmで照明し、DMD10の選択されたオン状態のマイクロミラーMsaからの反射光を、投影ユニットILmを介して基板Pに投影露光することで、基板P上に電子デバイスのパターンを形成するデバイス製造方法において、照明ユニットILU内で生成される所定形状の面光源からの光を照明光として集光して、DMD10に入射角θαで傾斜照射する段階と、DMD10のオン状態のマイクロミラーMsaからの反射光(0次光相当成分の回折光Id9、Id18)によって投影ユニットPLUの瞳Epに形成される面光源の光源像Ips(強度分布Hpa)の輪郭が入射角θαに応じて楕円状に歪むことを補正するように、面光源の輪郭の形状を変形させる段階と、とが実施される。
【0182】
このような構成によって、影ユニットPLUの瞳Epに形成される光源像Ips、即ちDMD10のオン状態のマイクロミラーMsaからの0次光相当成分の強度分布Hpaの全体的な輪郭を、歪んだ楕円形から円形状に補正することができ、投影ユニットPLUによって基板Pに投影露光されるパターン像のエッジ部の像質を、そのエッジの方向性に依らずに均一にすることができる。
【符号の説明】
【0183】
10…DMD、108…オプチカルインテグレータ、ILU…照明ユニット