(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20250212BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20250212BHJP
H02K 11/21 20160101ALI20250212BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G02B7/08 Z
G02B7/04 Z
H02K11/21
(21)【出願番号】P 2023549482
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2022034030
(87)【国際公開番号】W WO2023048001
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021156270
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 梓
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 隆利
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-270879(JP,A)
【文献】国際公開第2006/004108(WO,A1)
【文献】特開2016-033569(JP,A)
【文献】特開2012-124994(JP,A)
【文献】特開2019-191233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠の外側に配置される外筒と、
前記レンズ保持枠を光軸方向に案内する案内部と、
前記レンズ保持枠を前記光軸方向に移動させる駆動部と、
前記光軸方向に沿って配置されるスケール部と、前記スケール部と対向して配置されるセンサ部と、を有し、前記レンズ保持枠の前記光軸方向における位置を検出する検出部と、
前記検出部が検出した位置に関する情報に基づいて、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記レンズ保持枠は、前記スケール部と前記センサ部との一方を保持し、
前記外筒は、前記スケール部と前記センサ部との他方を保持し、
前記一方は、前記レンズ保持枠において、前記レンズ及び前記レンズ保持枠に発生する複数の振動モードのうち最も固有振動数が小さい振動モードの節部に相当する位置に配置される、
レンズ鏡筒。
【請求項2】
光軸に直交する平面において、前記案内部の中心と前記光軸とを結ぶ第1直線と、前記一方と前記光軸とを結ぶ第2直線と、がなす角は略90度である、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記レンズ及び前記レンズ保持枠の総質量は、55グラムより重い、
請求項1または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記駆動部は、第1駆動部と第2駆動部とを含み、
前記第1駆動部は、前記第2駆動部より前記案内部の近くに配置され、
前記検出部は、周方向において、前記案内部と前記第2駆動部との間の領域のうち小さい方の領域に配置される、
請求項1
または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記周方向において、前記第1駆動部、前記案内部、前記検出部、及び前記第2駆動部の順に配置される、
請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記駆動部に接続される第1フレキシブル基板と、
前記検出部に接続される第2フレキシブル基板と、を備え、
前記周方向において、前記案内部と前記第2駆動部との間の領域のうち小さい方の領域に、前記第1フレキシブル基板と前記第2フレキシブル基板とが配置される、
請求項4
に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記検出部は、第1検出部と第2検出部とを含み、
光軸に直交する平面において、前記第1検出部と前記第2検出部とは、前記最も固有振動数が小さい振動モードの節部に相当する位置に、前記光軸をはさんで対向して設けられ、
前記制御部は、前記第1検出部が検出した位置に関する情報と、前記第2検出部が検出した位置に関する情報と、に基づいて前記駆動部を制御する、
請求項1
または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記レンズ保持枠は、前記光軸方向に延在する延在部を有し、
光軸に直交する平面において、前記検出部と前記延在部とは、前記光軸をはさんで対向する、
請求項1
または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1
または請求項2に記載のレンズ鏡筒と、
撮像素子と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レンズ鏡筒および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒において、合焦精度が求められている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、レンズ鏡筒は、レンズを保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠の外側に配置される外筒と、前記レンズ保持枠を光軸方向に案内する案内部と、前記レンズ保持枠を前記光軸方向に移動させる駆動部と、前記光軸方向に沿って配置されるスケール部と、前記スケール部と対向して配置されるセンサ部と、を有し、前記レンズ保持枠の前記光軸方向における位置を検出する検出部と、前記検出部が検出した位置に関する情報に基づいて、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記レンズ保持枠は、前記スケール部と前記センサ部との一方を保持し、前記外筒は、前記スケール部と前記センサ部との他方を保持し、前記一方は、前記レンズ保持枠において、前記レンズ及び前記レンズ保持枠に発生する複数の振動モードのうち最も固有振動数が小さい振動モードの節部に相当する位置に配置される。
【0005】
第2の態様によれば、撮像装置は、上記レンズ鏡筒と、撮像素子と、を備える。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレンズ鏡筒と、カメラ本体と、を備えるカメラを示す図である。
【
図2】
図2(A)は、第2固定筒及びレンズ保持枠の斜視図であり、
図2(B)は、第2固定筒およびレンズ保持枠を被写体側から見た平面図である。
【
図4】
図4(A)及び
図4(B)は、レンズ保持枠の概略斜視図である。
【
図5】
図5は、レンズ保持枠を被写体側から見た平面図である。
【
図6】
図6(A)及び
図6(B)はそれぞれ、第1フレキシブル基板及び第2フレキシブル基板の配置について説明するための斜視図および平面図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)は、振動モードのシミュレーション結果について説明するための図である。
【
図8】
図8(A)及び
図8(B)は、位置検出器の配置の別例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係るレンズ鏡筒100について、図面を参照し、詳細に説明する。なお、各図において、理解を容易にするため、一部の要素の図示を省略している場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係るレンズ鏡筒100と、カメラ本体101と、を備えるカメラ1を示す図である。なお、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、カメラ本体101に対して着脱可能であるが、これに限定されず、レンズ鏡筒100とカメラ本体101とは一体であってもよい。
【0010】
カメラ本体101は、内部に撮像素子ISおよび制御部140等を備えている。撮像素子ISは、たとえばCCD(Charge Coupled Device)等の光電変換素子によって構成され、結像光学系(カメラ本体101に装着されたレンズ鏡筒100)によって結像された被写体像を電気信号に変換する。
【0011】
制御部140は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、カメラ本体101および装着されたレンズ鏡筒100における合焦駆動を含む撮影に係る当該カメラ1全体の動作を統括制御する。
【0012】
図1に示すように、レンズ鏡筒100は、第1固定筒10と、第2固定筒20と、を備える。本実施形態において、第1固定筒10は複数の部品から構成されているが、1つの部品により構成されてもよい。
図1に示すように、第1固定筒10には、レンズ鏡筒100をカメラ本体101に着脱可能とするレンズマウントLMが固定されている。
【0013】
また、レンズ鏡筒100は、共通の光軸OAに沿って順次配列されたレンズ群L1~L7を備える。レンズ群L3はレンズ保持枠F3に保持され、その他のレンズ群は第1固定筒10に保持されている。なお、レンズ群L1~L7はそれぞれ、1つのレンズで構成されていてもよいし、複数のレンズで構成されていてもよい。また、レンズ群L1,L2,L4~L7は、第1固定筒10ではなく、光軸OA方向に移動可能なレンズ保持枠に保持されていてもよい。
【0014】
図2(A)は、第2固定筒20およびレンズ保持枠F3の斜視図であり、
図2(B)は、第2固定筒20およびレンズ保持枠F3を被写体側から見た平面図である。第2固定筒20は、レンズ保持枠F3の外側に配置され、第2固定筒20には、ガイドバー22および回転規制バー23が固定されている。ガイドバー22は、レンズ保持枠F3を光軸OA方向に案内する。回転規制バー23は、ガイドバー22を軸とするレンズ保持枠F3の回転を規制する。
【0015】
また、第2固定筒20内には、レンズ保持枠F3を光軸OA方向に移動させるための第1VCM(Voice Coil Motor)50Aと、第2VCM50Bと、が設けられている。第1VCM50Aと、第2VCM50Bと、は、
図2(B)に示すように、光軸OAに直交する平面において、光軸OAをはさんで対向している。なお、VCMの数は本実施形態に限られるものではなく、1個でもよいし、3個以上でもよい。なお、以下の説明において、特に区別する必要のない限り、第1VCM50Aと、第2VCM50Bと、をVCM50と記載する。
【0016】
VCM50は、レンズ鏡筒100内に設けられた駆動装置110(
図1参照)によって駆動される。駆動装置110は、カメラ本体101の制御部140による制御下で、レンズ群L3の合焦駆動を制御する。具体的には、駆動装置110は、後述する位置検出器60から入力されるレンズ群L3の位置情報と、カメラ本体101の制御部140から入力されたレンズ群L3の目標位置情報とに基づいて、VCM50の駆動信号を生成し、VCM50に出力する。駆動装置110は、メイン基板120に設けられている。
【0017】
図3は、VCM50の概略構成を示す図である。VCM50は、光軸OA方向に長さを有する第1サイドヨーク501aおよび第2サイドヨーク501bと、光軸OA方向に長さを有し、第1サイドヨーク501aと第2サイドヨーク501bとの間に配置されるセンターヨーク502と、を備える。
【0018】
また、VCM50は、第1サイドヨーク501a、第2サイドヨーク501b、およびセンターヨーク502の光軸OA方向における一端を接続する上ヨーク503aと、第1サイドヨーク501a、第2サイドヨーク501b、およびセンターヨーク502の光軸OA方向における他端を接続する下ヨーク503bとを備える。これにより、閉磁路が形成される。
【0019】
第1サイドヨーク501aのセンターヨーク502側の側面には第1磁石504aが配置され、第2サイドヨーク501bのセンターヨーク502側の側面には第2磁石504bが配置されている。第1磁石504aは、例えば、センターヨーク502側がN極となるように配置されており、第2磁石504bも、センターヨーク502側がN極となるように配置されている。これにより、磁束が第1磁石504aおよび第2磁石504bのN極からセンターヨーク502に入り、上ヨーク503aおよび下ヨーク503b並びに第1サイドヨーク501aおよび第2サイドヨーク501bを経て、第1磁石504aおよび第2磁石504bのS極にそれぞれ戻る磁路を形成している。
【0020】
また、VCM50は、センターヨーク502に貫通されるコイル505を備える。コイル505の内周面とセンターヨーク502との間には僅かな隙間があり、コイル505は、光軸OA方向に移動可能となっている。またコイル505は、第1サイドヨーク501aおよび第2サイドヨーク501bからセンターヨーク502に集まる磁束の向きが、コイル505の巻き方向に垂直となるように構成されている。
【0021】
コイル505には、駆動装置110から駆動信号(電流)が入力される。コイル505に電流が流れると、第1磁石504aおよび第2磁石504bの磁力によりコイル505は光軸OA方向に移動する。より詳細には、電流が流れているコイル505と第1磁石504aおよび第2磁石504bとの間の電磁相互作用によりコイル505は光軸OA方向に移動する。コイル505に流す電流の向きを変更することで、コイル505の移動方向を被写体側とカメラ本体101側(像面側)との間で切り替えることができる。また、コイル505に流す電流の電流値を変更することで、コイル505の駆動力や移動速度を変更することができる。
【0022】
本実施形態において、レンズ群L3は、フォーカスレンズ群であって、VCM50によって光軸OA方向に移動されて、焦点調節を行う。より具体的には、ヨーク及び磁石が第2固定筒20に設けられ、レンズ群L3を保持するレンズ保持枠F3がVCM50のコイル505と連結されているため、コイル505が光軸OA方向に移動すると、レンズ群L3が光軸OA方向に移動される。なお、VCM50に代えて、ステッピングモータ、超音波モータを用いてレンズ群L3を移動させてもよい。
【0023】
次に、レンズ保持枠F3の構成について説明する。
図4(A)及び
図4(B)は、レンズ保持枠F3の概略斜視図であり、
図5は、レンズ保持枠F3を被写体側から見た平面図である。
図4(B)では、
図4(A)に図示された構成の一部の図示を省略している。
【0024】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、レンズ保持枠F3はレンズ群L3を保持する筒部30を有し、筒部30の外周部には、ガイドバー22と係合する係合部31と、第1VCM50Aおよび第2VCM50Bのコイル505(
図3参照)をそれぞれ保持する保持部33aおよび33bと、位置検出器60のスケール部60aを保持するスケール保持部34と、が設けられている。また、レンズ保持枠F3は、筒部30から光軸OA方向に延在する延在部36を有する。
【0025】
レンズ鏡筒100は、レンズ保持枠F3(レンズ群L3)の光軸OA方向の絶対位置を検出する位置検出器60を備えている。位置検出器60は、例えば、光学式アブソリュート(ABS)位置検出器であり、スケール部60aと、スケール部60aに対向して設けられるセンサ部60bと、を有する。本実施形態において、スケール部60aは、光軸OA方向に沿ってスケール保持部34に取り付けられ、センサ部60bは、第2固定筒20に取り付けられている。
【0026】
図5に示すように、光軸OAと直交する平面において、位置検出器60は、ガイドバー22と第2VCM50Bとの間の領域のうち小さい方の領域に配置されている。また、周方向において、第1VCM50A、ガイドバー22、位置検出器60、及び第2VCM50B、回転規制バー23の順に配置されている。また、光軸OAに直交する平面において、位置検出器60は、光軸OAをはさんで延在部36と対向している。
【0027】
ここで、VCM50には第1フレキシブル基板FPC1が接続され、位置検出器60には第2フレキシブル基板FPC2が接続されている。
図6(A)及び
図6(B)はそれぞれ、第1フレキシブル基板FPC1及び第2フレキシブル基板FPC2の配置について説明するための斜視図および平面図である。
【0028】
図6(B)に示すように、光軸OAと垂直な平面において、第1フレキシブル基板FPC1及び第2フレキシブル基板FPC2は、周方向においてガイドバー22と第2VCM50Bとの間の領域のうち小さい方の領域に配置されている。このように、第1フレキシブル基板FPC1と第2フレキシブル基板FPC2とがまとめて配置されているため、レンズ鏡筒100内に配置されたメイン基板120への配線をシンプルにすることができる。
【0029】
次に、位置検出器60の配置位置について詳細に説明する。まず、レンズ保持枠F3の駆動制御時に、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3において発生する複数の振動モードについて説明する。
【0030】
発明者らは、上述した構成を有するレンズ群L3およびレンズ保持枠F3に発生する振動モードをシミュレーションした。シミュレーションでは、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3の総質量を、55g~83gと仮定した。
【0031】
図7(A)及び
図7(B)は、シミュレーション結果について説明するための図であり、
図7(A)は、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3の断面図であり、
図7(B)は、レンズ保持枠F3を、被写体側から見た平面図である。
【0032】
シミュレーションの結果、複数の周波数において周波数応答関数(伝達関数)のピーク(固有振動数)が見られた。例えば、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3の総質量を約70gとした場合、264Hzおよび481Hzを含む複数の周波数において周波数応答関数のピークが見られた。
【0033】
ここで、固有振動数が最も小さい(264Hz)振動モード(モード2と記載する)では、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3に、ガイドバー22との係合部31を起点とするチルト運動が励起される。具体的には、モード2では、
図7(A)において破線で示すようにレンズ群L3が運動(振動)する。この振動は、
図7(B)に示すように、光軸OAと直交する平面において、直線Bの位置において振動振幅が略ゼロ(節部)となる振動である。直線Bは、ガイドバー22の中心と光軸OAとを結んだ直線Aと略直交し、光軸OAを通る直線である。すなわち、直線Aと直線Bとがなす角αは、略90°である。ここで、略90°とは、例えば80°~100°の範囲、または、85°~95°の範囲である。なお、
図7(A)では、図の簡略化のためレンズ保持枠F3の運動については図示を省略しており、また、直線Bを含み、光軸OAに垂直な平面と直交する平面をPL1で示している。
【0034】
一方、固有振動数が2番目に小さい(481Hz)振動モード(モード3と記載する)では、ガイドバー22の中心と光軸OAとを結んだ直線Aの位置において振幅が略ゼロ(節部)となる振動がレンズ群L3およびレンズ保持枠F3に生じる。
【0035】
なお、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3の総質量を55g~83gとした実機において振動モードを実際に確認したところ、
図7(B)の直線Bの位置において、固有振動数が最も小さい振動モードの節部が確認された。
【0036】
レンズ群L3およびレンズ保持枠F3が振動すると、位置検出器60は、レンズ保持枠F3の光軸OA方向の位置だけでなく、レンズ群L3およびレンズ保持枠F3の振動による光軸OA方向の変位も検出してしまう。これにより、レンズ保持枠F3(レンズ群L3)の位置検出精度が低下してしまう。レンズ保持枠F3の位置検出精度の低下は、合焦精度の低下を招いてしまう。
【0037】
制御対象の構造共振を抑制するためには、一般的には、制御対象の構造共振の周波数値をAとし、制御周波数をBとした場合に、B<A/5とすることが好適であるといわれている。当該式からわかるように、Aが小さいと、B(制御周波数)が小さくなってしまう。制御周波数が小さくなるほど、制御の間隔(制御周期)が長くなるため、VCM50の駆動制御の応答性が悪くなってしまう。
【0038】
制御周波数の目標値が70Hz~100Hzであるとした場合、モード2の固有周波数は264Hzであるため、モード2の固有周波数(264Hz)に基づいて上式から制御周波数を決定すると、制御周波数は、例えば、52.8Hzとなり目標値の範囲に入らなくなってしまう。すなわち、制御周波数をモード2の固有振動数に基づいて決定すると、VCM50の駆動制御の応答性が悪くなってしまう。
【0039】
そこで、本実施形態では、モード2において節部となる位置に位置検出器60のスケール部60aを配置している。具体的には、レンズ保持枠F3のスケール保持部34が、モード2において節部となる位置に配置され、当該スケール保持部34にスケール部60aを取り付けている。より詳細には、光軸OAに直交する平面において、ガイドバー22の中心と光軸OAとを結んだ直線Aと、スケール部60aと光軸OAとを結んだ直線Bとがなす角αが、略90°となるよう、スケール部60a(位置検出器60)を配置している(
図7(B)参照)。
【0040】
このように位置検出器60を配置することで、レンズ群L3とレンズ保持枠F3とがモード2で振動しても、その節部ではレンズ群L3とレンズ保持枠F3の位置はほとんど変位しないため、モード2の振動が位置検出器60の検出精度に与える影響を低減できる。
【0041】
また、モード3の固有周波数は、481Hzであるため、モード3の固有周波数に基づいて制御周波数を決定すると、制御周波数は96.2Hzとなり制御周波数の目標値の範囲に入る。これにより、VCM50の駆動制御の応答性を向上することができる。また、制御周波数を、モード3の固有周波数の5分の1未満にできるため、モード3の振動が制御に与える影響を低減できる。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、レンズ鏡筒100は、レンズ群L3を保持するレンズ保持枠F3と、レンズ保持枠F3の外側に配置される第2固定筒20と、レンズ保持枠F3を光軸OA方向に案内するガイドバー22と、レンズ保持枠F3を光軸OA方向に移動させるVCM50と、レンズ保持枠F3の光軸OA方向における位置を検出する位置検出器60と、位置検出器60が検出した位置に関する情報に基づいて、VCM50を制御する駆動装置110と、を備える。位置検出器60は、光軸OA方向に沿って配置されるスケール部60aと、スケール部60aと対向して配置されるセンサ部60bと、を有する。レンズ保持枠F3はスケール部60aを保持し、第2固定筒20は、センサ部60bを保持し、スケール部60aは、レンズ保持枠F3において、レンズ群L3及びレンズ保持枠F3に発生する複数の振動モードのうち最も固有振動数が小さい振動モードの節部に相当する位置に配置される。これにより、最も固有振動数が小さい振動モードでレンズ群L3とレンズ保持枠F3とが振動しても、位置検出器60が配置された位置では、レンズ群L3とレンズ保持枠F3の位置はほとんど変化しないため、最も固有振動数が小さい振動モードの振動が位置検出器60の検出精度に与える影響を低減できる。これにより、位置検出器60の位置検出精度を向上させることができるため、位置検出器60の検出結果に基づいて行われる合焦動作の精度(合焦精度)を向上させることができる。また、固有振動数が2番目に小さい振動モードの固有周波数に基づいて制御周波数を決定できるため、制御周波数を大きく設定することができ、固有振動数が2番目に小さい振動モードが制御に与える影響を低減しつつ、VCM50の駆動制御の応答性を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態において、光軸OAに直交する平面において、ガイドバー22の中心と光軸OAとを結ぶ直線Aと、スケール部60aと光軸OAとを結ぶ直線Bと、がなす角αは略90°である。レンズ群L3とレンズ保持枠F3の総質量が55グラム以上の場合に、直線Aと略直交する直線B上に、モード2の節部が位置する。したがって、直線B上にスケール部60aを配置することにより、モード2の振動が位置検出器60の検出精度に与える影響を低減でき、合焦精度を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態において、VCM50は、第1VCM50Aと第2VCM50Bとを含み、第1VCM50Aは、第2VCM50Bよりガイドバー22の近くに配置され、位置検出器60は、光軸OAを中心とする円の周方向においてガイドバー22と第2VCM50Bとの間の領域のうち小さい方の領域に配置される。第1VCM50Aの近くにはガイドバー22が配置されているためスペースが少ないが、本実施形態の構成により、ガイドバー22と第2VCM50Bとの間に存在するスペースを効率的に使用することができる。
【0045】
また、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、VCM50に接続される第1フレキシブル基板FPC1と、位置検出器60に接続される第2フレキシブル基板FPC2と、を備え、光軸OAを中心とする円の周方向において、ガイドバー22と第2VCM50Bとの間の領域のうち小さい方の領域に、第1フレキシブル基板FPC1と第2フレキシブル基板FPC2とが配置されている。第1フレキシブル基板FPC1と第2フレキシブル基板FPC2とがまとめて配置されているため、メイン基板120への配線をシンプルにすることができる。
【0046】
なお、上記実施形態において、1つの位置検出器60を設けていたが、位置検出器60を2つ設けてもよい。この場合、
図8(A)に示すように、2つの位置検出器60は、光軸OAと直交する平面において、モード2において節部となる位置に、光軸OAを挟んで対向するように設ければよい。すなわち、光軸OAに垂直な平面において、ガイドバー22の軸中心と光軸OAとを結ぶ直線Aと略直交する直線Bと、光軸OAを中心とする円とが交差する2箇所に位置検出器60を設ければよい。2つの位置検出器60によって検出した位置情報を平均化処理することで、レンズ保持枠F3の位置検出精度をさらに向上することができる。
【0047】
なお、上記実施形態において、位置検出器60は、光軸OAを中心とする円の周方向においてガイドバー22と第2VCM50Bとの間に配置されていたが、例えば、
図8(B)に示すように、第1VCM50Aと回転規制バー23との間に配置されていてもよい。この場合においても、位置検出器60のスケール部60aが配置される位置は、モード2において節部となる位置である。
【0048】
また、上記実施形態では、位置検出器60がレンズ保持枠F3の絶対位置を検出する光学式ABS位置検出器である例を説明したが、位置検出器60は、レンズ保持枠F3の相対位置を検出する位置検出器であってもよい。また、位置検出器60は、光学式ではなく、例えば、磁気式や光電式であってもよい。
【0049】
なお、上記実施形態において、位置検出器60のスケール部60aがレンズ保持枠F3に取り付けられ、センサ部60bが第2固定筒20に取り付けられていたが、これに限られるものではない。スケール部60aを第2固定筒20に設け、センサ部60bをレンズ保持枠F3に設けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ガイドバー22によってレンズ保持枠F3を光軸OA方向に案内していたが、これに限られるものではない。例えば、直進溝によってレンズ保持枠F3を光軸OA方向に案内してもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、レンズ保持枠F3を収納する第2固定筒20は、光軸OA方向に直進移動が可能な移動筒であってもよい。また、上記実施形態において、レンズ鏡筒100は単焦点レンズであってもよいし、ズームレンズであってもよい。
【0052】
上述した実施形態は好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能であり、任意の構成要件を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 カメラ
20 第2固定筒
22 ガイドバー
23 回転規制バー
36 延在部
50A 第1VCM
50B 第2VCM
60 位置検出器
60a スケール部
60b センサ部
100 レンズ鏡筒
101 カメラ本体
F3 レンズ保持枠
L3 レンズ群