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特許7632771エポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含むゾル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】エポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含むゾル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/149 20060101AFI20250212BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250212BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20250212BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250212BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20250212BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20250212BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20250212BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C01B33/149
C08K3/36
C08K9/06
C08L63/00 Z
C08K5/17
C08K5/09
C08K5/42
C08G77/14
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2024553730
(86)(22)【出願日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2024004995
(87)【国際公開番号】W WO2024176909
(87)【国際公開日】2024-08-29
【審査請求日】2024-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2023024669
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】松山 由紀
(72)【発明者】
【氏名】中田 豪
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/050008(WO,A1)
【文献】特表2017-522395(JP,A)
【文献】特表2017-518245(JP,A)
【文献】特開2007-176752(JP,A)
【文献】特開2009-155138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 77/14、77/42
JSTPlus/JSTchina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散質としてエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含み、分散媒として有機溶媒を含み、シリカ粒子が有機溶媒に分散しpH6~8を有するシリカゾルであって、該シリカゾルのエポキシ当量(B)が、5000~25000(シリカゾルg/当量)であり、該シリカゾルをpH3~6未満に保持した場合のシリカゾルのエポキシ当量(A)(シリカゾルg/当量)は比率B/Aが1.0未満である上記シリカゾル。
【請求項2】
エポキシ基含有ケイ素化合物のSi原子は、シリカ粒子の単位面積当たり、0.3~5個/nmの割合で結合しているものである、請求項1に記載のシリカゾル。
【請求項3】
エポキシ基がグリシジル基又は3,4-エポキシシクロヘキシル基である、請求項1又は2に記載のシリカゾル。
【請求項4】
窒素ガス吸着法(BET法)によるシリカ粒子の平均1次粒子径が5~100nmであり、動的光散乱法(DLS法)によるシリカ粒子の平均粒子径が5~200nmである、請求項1又は2に記載のシリカゾル。
【請求項5】
上記分散媒が、ヒドロキシル基を有する有機物、カルボニル構造を有する有機物、又はエポキシ基を有する有機物である請求項に記載のシリカゾル。
【請求項6】
上記分散媒のヒドロキシル基を有する有機物が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルである、請求項5に記載のシリカゾル。
【請求項7】
上記分散媒のカルボニル構造を有する有機物が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項5に記載のシリカゾル。
【請求項8】
上記分散媒のエポキシ基を有する有機物が、ビスフェノールA液状エポキシ化合物、ビスフェノールF液状エポキシ化合物、又は3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである、請求項5に記載のシリカゾル。
【請求項9】
塩基性物質を含有し、塩基性物質がアミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、又は第4級アンモニウム化合物である、請求項1、2、又は5~8のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項10】
上記アミンが、総炭素原子数として5~35の第2級アミン又は第3級アミンである、請求項9に記載のシリカゾル。
【請求項11】
上記シリカ粒子が、更に式(1)から式(3):
【化1】

(式(1)中、Rはそれぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びRはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解物を含む、請求項1、2、又は5~8のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項12】
請求項11に記載のシラン化合物が、上記式(1)(式中、Rがアリール基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示す。)で表されるシラン化合物である、請求項1、2、又は5~8のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項13】
上記分散質のシリカ粒子が、アルミニウム原子をAlに換算して800~10000ppm/SiOの割合で含有する、請求項1、2、又は5~8のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項14】
下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:動的光散乱法(DLS法)による平均粒子径が5~200nmであるシリカ粒子を、アルコールROH(ただしRは酸素原子を有していても良い炭素原子数1~10の有機基を示す。)に分散したシリカゾルであり、該シリカゾル中に水分が5質量%以下である上記シリカゾルを得る工程、
(B)工程:(A)工程で得られたシリカゾルをpH6~8に調整する工程、
(C)工程:(B)工程で得られたシリカゾルにエポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)を有するシラン化合物を添加してシリカ粒子を被覆する工程、を含む、請求項1、2、又は5~8のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項15】
更に(D)工程:
(D)工程:(C)工程で得られたシリカゾルの分散媒をアルコールROHからカルボニル構造を有する有機物、又はエポキシ基を有する有機物に置換する工程、を含む、請求項14に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項16】
上記(C)工程が、更に上記式(1)乃至式(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を添加してシリカ粒子を被覆する(C-1)工程を追加するものである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
上記(D)工程が、分散媒をアルコールROHからカルボニル構造を有する有機物に置換した後に、更にエポキシ基を有する有機物に置換する(D-1)工程である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1、2、又は5~8のいずれか1項に記載のシリカゾルと、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、又は酸発生剤系硬化剤とを含む、硬化体形成組成物。
【請求項19】
更にエポキシ樹脂を含有する、請求項18に記載の硬化体形成組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基含有オルガノシリカゾル、それを用いた硬化体形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒分散シリカゾルは有機樹脂と組み合わせてシリカ含有樹脂組成物として得られ、それらに硬化剤を含有させることで樹脂成形体とする事や、フィルム上に被覆するコーティング組成物とする事ができる。樹脂にシリカ等の無機酸化物粒子を含有させることで表面硬度、耐摩耗性、機械強度、耐熱性、防食性、熱膨張係数、曲げ強度、曲げ弾性率等が改善される。また、シリカ粒子径が50nm以下である場合は透明性を低下させずに硬化物を形成する事ができる。
【0003】
有機樹脂中に含有されるシリカ等の無機酸化物粒子は、有機樹脂との相性を考慮し、重合性樹脂を用いる場合にはそれら樹脂中の重合性基との反応により、樹脂マトリックスに共有結合を介して存在させることでより一層の物性改善が達せられる。そのためにシリカ粒子上に重合性基を含有するシリカ粒子を含むゾルが望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アミン含有有機溶媒分散シリカゾルと、重合性有機化合物とを混合する、シリカ粒子を含有する重合性有機化合物の組成物の製造方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献1には、コロイダルシリカ粒子が有機シラン化合物で親有機化処理される事や、重合性有機化合物が液状エポキシ樹脂である事が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレートを変性した変性エポキシ樹脂と、シリカ粒子を含む液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/058754号
【文献】国際公開第2009/008509号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エポキシ基又はエポキシ基含有有機基と、アルコキシ基を含むシリカ粒子を分散質として含み、分散媒としての有機溶媒に安定に分散したシリカゾル、及びそれらシリカゾルを含有する硬化体形成組成物とエポキシ硬化体を提供することを目的とする。
【0009】
本発明では、エポキシ基は酸性状態ではエポキシ基が開環してジオール基を形成するが、重合性樹脂や重合性溶媒に分散したエポキシ基がそれら官能基と共有結合するときには、ジオール基であるよりも、エポキシ基の状態で存在する事が好ましい。本発明は、シリカ粒子に結合したエポキシ基の開環を抑制してエポキシ基の状態で存在しているエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含むゾルと樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1観点として、分散質としてエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含み、シリカ粒子が分散媒としての有機溶媒に分散しpH6~8を有するシリカゾルであって、該シリカゾルのエポキシ当量(B)が、5000~25000(シリカゾルg/当量)であり、該シリカゾルをpH3~6未満に保持した場合のシリカゾルのエポキシ当量(A)(シリカゾルg/当量)は比率B/Aが1.0未満である上記シリカゾル、
第2観点として、エポキシ基含有ケイ素化合物のSi原子はシリカ粒子の単位面積当たり、0.3~5個/nmの割合で結合しているものである第1観点に記載のシリカゾル、
第3観点として、エポキシ基がグリシジル基又は3,4-エポキシシクロヘキシル基である第1観点又は第2観点に記載のシリカゾル、
第4観点として、窒素ガス吸着法(BET法)によるシリカ粒子の平均1次粒子径が5~100nmであり、動的光散乱法(DLS法)によるシリカ粒子の平均粒子径が5~200nmである第1観点乃至第3観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第5観点として、上記分散媒がヒドロキシル基を有する有機物、カルボニル構造を有する有機物、又はエポキシ基を有する有機物である第1観点乃至第4観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第6観点として、上記分散媒のヒドロキシル基を有する有機物が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルである第5観点に記載のシリカゾル、
第7観点として、上記分散媒のカルボニル構造を有する有機物がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである第5観点に記載のシリカゾル、
第8観点として、上記分散媒のエポキシ基を有する有機物が、ビスフェノールA液状エポキシ化合物、ビスフェノールF液状エポキシ化合物、又は3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである第5観点に記載のシリカゾル、
第9観点として、塩基性物質を含有し、塩基性物質がアミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、又は第4級アンモニウム化合物である第1観点乃至第8観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第10観点として、上記アミンが総炭素原子数として5~35の第2級アミン又は第3級アミンである第9観点に記載のシリカゾル、
第11観点として、上記シリカ粒子が更に式(1)乃至式(3):
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、Rはそれぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びRはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解物を含む第1観点乃至第10観点のいずれか1項に記載のシリカゾル、
第12観点として、第11観点に記載のシラン化合物が上記式(1)(式中、Rがアリール基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示す。)で表されるシラン化合物である第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第13観点として、上記分散質のシリカ粒子が、アルミニウム原子をAlに換算して800~10000ppm/SiOの割合で含有する第1観点乃至第12観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第14観点として、下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:動的光散乱法(DLS法)による平均粒子径が5~200nmであるシリカ粒子を、アルコールROH(ただしRは酸素原子を有していても良い炭素原子数1~10の有機基を示す。)に分散したシリカゾルであり、該シリカゾル中に水分が5質量%以下である上記シリカゾルを得る工程、
(B)工程:(A)工程で得られたシリカゾルをpH6~8に調整する工程、
(C)工程:(B)工程で得られたシリカゾルにエポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)を有するシラン化合物を添加してシリカ粒子を被覆する工程、を含む第1観点乃至第13観点の何れか一つに記載のシリカゾルの製造方法、
第15観点として、更に(D)工程:
(D)工程:(C)工程で得られたシリカゾルの分散媒をアルコールROHからカルボニル構造を有する有機物、又はエポキシ基を有する有機物に置換する工程、を含む第14観点に記載のシリカゾルの製造方法、
第16観点として、上記(C)工程が更に上記式(1)乃至式(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を添加してシリカ粒子を被覆する(C-1)工程を追加するものである第14観点又は第15観点に記載の製造方法、
第17観点として、上記(D)工程が分散媒をアルコールROHからカルボニル構造を有する有機物に置換した後に、更にエポキシ基を有する有機物に置換する(D-1)工程である第15観点に記載の製造方法、
第18観点として、第1観点乃至第13観点のいずれか一つに記載のシリカゾルと、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、又は酸発生剤系硬化剤とを含む硬化体形成組成物、及び
第19観点として、更にエポキシ樹脂を含有する第18観点に記載の硬化体形成組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、分散質としてエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含み、シリカ粒子が分散媒としての有機溶媒に分散しpH6~8を有するシリカゾルである。エポキシ基は酸性状態では有機溶媒中であっても、痕跡量の水分によりエポキシ基が開環してジオール基になることが発明者らの研究で分かった。重合性樹脂や重合性溶媒に分散したエポキシ基が、それら重合性樹脂や重合性溶媒中の官能基と共有結合するとき又は相溶性よく安定に存在するときには、ジオール基であるよりも、エポキシ基の状態で存在する事が好ましい。本発明は、シリカ粒子に結合したエポキシ基が開環せずにエポキシ基の状態で存在しているエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含むゾルである。
【0014】
エポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子は、シリカゾル中のシリカ粒子にエポキシ基含有ケイ素化合物が共有結合で結合する際に、シリカゾルのpHが6~8の範囲である事が望ましい。その後にpHを酸性側、アルカリ性側に変化させてもエポキシ基からジオール基に変化する。従って、その後の保管においてもpH6~8の状態で保管される事が好ましい。
【0015】
エポキシ基含有ケイ素化合物に含有される加水分解性基(例えば、アルコキシ基)は、中性よりも酸性側やアルカリ性側で加水分解が進み、エポキシ基含有ケイ素化合物のシラノール基がシリカ粒子のシラノール基と結合して、シロキサン結合を介してエポキシ基含有ケイ素化合物がシリカ粒子と結合する。シリカゾルが中性付近のpHではエポキシ基含有ケイ素化合物に含有される加水分解性基の加水分解は進みにくいが、シリカ粒子自体が加水分解触媒として働き、エポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子が生成する。
【0016】
このプロセスはシリカゾル中の媒体が水性媒体ではなく、有機溶媒中で例えばアルコール中やその他の有機溶媒中でも生じるものであり、これらの有機溶媒中に存在する痕跡量の水分により加水分解と結合が進行するものである。水及び極性溶媒の極性基が水素結合により、水分子を分極させ、加水分解が進行しやすくなり、その結果としてエポキシ基含有ケイ素化合物のシラノール基とシリカ粒子のシラノール基との結合が進行する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、分散質としてエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含み、シリカ粒子が分散媒としての有機溶媒に分散しpH6~8を有するシリカゾルであって、該シリカゾルのエポキシ当量(B)が、5000~25000(シリカゾルg/当量)であり、該シリカゾルをpH3~6未満に保持した場合のシリカゾルのエポキシ当量(A)(シリカゾルg/当量)は比率B/Aが1.0未満である上記シリカゾルである。
【0018】
本発明に用いられるシリカゾルは、窒素ガス吸着法(BET法)によるシリカ粒子の平均1次粒子径が5~100nm、又は5~60nm、又は5~50nm、又は5~40nmであり、動的光散乱法(DLS法)によるシリカ粒子の平均粒子径が5~200nm、又は10~100nm、又は10~80nmである事が好ましい。
【0019】
エポキシ基含有ケイ素化合物は、加水分解性基を含有するエポキシ基含有ケイ素化合物であり、加水分解性基としては、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。エポキシ基又はエポキシ基含有有機基は、シリカ粒子にエポキシ基又はエポキシ基含有有機基含有ケイ素化合物を添加した時にシリカ粒子上(表面又は近傍)に形成される官能基である。
【0020】
エポキシ基としては、グリシジル基又は3,4-エポキシシクロヘキシル基が挙げられ、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
シリカゾル中のシリカ粒子のエポキシ当量(B)が、5000~25000(シリカゾルg/当量)、5000~20000(シリカゾルg/当量)、又は10000~20000(シリカゾルg/当量)である。該シリカゾルをpH3~6未満に保持した場合のシリカ粒子のエポキシ当量(A)(シリカゾルg/当量)は5300~26800(シリカゾルg/当量)、又は5300~21500(シリカゾルg/当量)、又は10750~21500(シリカゾルg/当量)である。比率B/Aが1.0未満、又は0~1.0未満、又は0~0.9、又は0~0.7、又は0.1~0.9、又は0.1~0.7、又は0.1~0.5に設定する事ができる。
【0022】
シリカゾルをpH3~6未満に保持した場合のシリカゾルのエポキシ当量(A)(シリカゾルg/当量)は、5000~25000の(シリカゾルg/当量)エポキシ当量(B)を有する有機溶媒分散シリカゾルをpH3~6未満に1時間保持した状態で測定したエポキシ当量(A)とする事ができる。
【0023】
シリカゾル中のシリカ粒子のエポキシ当量の測定は、過塩素酸酢酸標準液を用いる電位差滴定法により行う事ができる。
【0024】
また、本発明のシリカゾルは、エポキシ基含有ケイ素化合物のSi原子はシリカ粒子の単位面積当たり、0.3~5個/nm、又は0.5~3個/nmの割合で結合しているものである事が好ましい。
【0025】
本発明のゾルは、固形分として0.1~70質量%、又は1~60質量%、又は10~55質量%である。ここで固形分とは、ゾルを1000℃で焼成した際の焼成残分である。
本発明のシリカゾルは、有機物を分散媒(溶媒)とするが、例えばヒドロキシル基を有する有機物、カルボニル構造を有する有機物、又はエポキシ基を有する有機物を分散媒(溶媒)とする事ができる。
【0026】
上記分散媒のヒドロキシル基を有する有機物としては、炭素原子数1~5のアルコールが挙げられ、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
上記分散媒のカルボニル構造を有する有機物は、ケトン溶媒、アミド溶媒、及びエステル溶媒である。
【0027】
ケトン溶媒は、炭素原子数3~30の直鎖又は環状の脂肪族ケトンであり、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。アミド溶媒は、炭素原子数4~30の脂肪族アミドであり、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等が挙げられる。エステル溶媒は酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0028】
上記カルボニル構造を有する有機物としては、例えば、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましく挙げられる。
【0029】
エポキシ基を有する有機物は、液状エポキシ化合物であり、例えば1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、トリス-(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1-{2,3-ジ(プロピオニルオキシ)}-3,5-ビス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6・(1H,3H,5H)-トリオン、1,3-ビス{2,3-ジ(プロピオニルオキシ)}-5-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6・(1H,3H,5H)-トリオン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールポリジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、o-フタル酸ジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,6-ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルオキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-3’,4’-エポキシ-1,3-ジオキサン-5-スピロシクロヘキサン、1,2-エチレンジオキシ-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’-エポキシ-2’-メチルシクロヘキシルメチル-4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルが挙げられる。
【0030】
特に、エポキシ基を有する有機物としては、ビスフェノールA液状エポキシ化合物、ビスフェノールF液状エポキシ化合物、又は3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。ビスフェノールA液状エポキシ化合物としては、例えばビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルが挙げられ、ビスフェノールF液状エポキシ化合物は例えばビスフェノール-F-ジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0031】
本発明では、分散質のシリカ粒子が、アルミニウム原子をAlに換算して800~10000ppm/SiOの割合で含有するシリカゾルを用いる事が好ましい。これらのシリカゾルを用いる事により安定性が向上する。
【0032】
本発明のシリカゾルは、下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:動的光散乱法(DLS法)による平均粒子径が5~200nmであるシリカ粒子を、アルコールROH(ただしRは酸素原子を有していても良い炭素原子数1~10の有機基を示す。)に分散したシリカゾルであり、該シリカゾル中に水分が5質量%以下である上記シリカゾルを得る工程、
(B)工程:(A)工程で得られたシリカゾルをpH6~8に調整する工程、
(C)工程:(B)工程で得られたシリカゾルにエポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)を有するシラン化合物を添加してシリカ粒子を被覆する工程、を含む工程により製造する事ができる。
【0033】
(A)工程では、炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを用いる事ができる。このアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。特に上記アルコールとしてはメタノールが好ましい。
【0034】
OH構造のアルコールを分散媒とするシリカゾルは、水分含有量として5質量%以下、例えば1.0~5.0質量%、又は1.2~5.0質量%、又は1.2~3.0質量%にあることが好ましい。
【0035】
炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~4のアルコールROHを分散媒とするシリカゾルは、水性シリカゾルを出発原料として得られる。水性シリカゾルは、水ガラスを出発原料として、a)水ガラスを陽イオン交換して活性珪酸を得る工程、b)活性珪酸を加熱してシリカ粒子を得る工程から得られる。
【0036】
a)工程では、活性珪酸を高純度化するために鉱酸(例えば、塩酸、硝酸、又は硫酸)を添加して、シリカ以外の金属不純物を溶出させて、陽イオン交換及び陰イオン交換で金属不純物や不要なアニオンを除去した活性珪酸を用いる事ができる。b)工程では、活性珪酸にアルカリ成分(例えばNaOH、KOH)を添加してシリカ粒子の粒子成長を行う。
【0037】
シリカ粒子の粒子成長を促進させるために、a)工程で得られた活性珪酸にアルカリを添加したシード液とフィード液を準備して、シード液を加熱しながらフィード液を供給してシリカ粒子径を増大させることによって任意の粒子径とする水性シリカゾルを得る事ができる。
【0038】
さらに好ましくは、b)工程で得られた水性シリカゾルのうち、粒子の外部に存在しているアルカリイオンを除去した酸性のシリカゾルが本発明の出発原料として適している。
【0039】
本発明の(A)工程では、水性シリカゾルの水性媒体を好ましくは炭素原子数1~4のアルコールROH(ただしRは炭素原子数1~4のアルキル基を示す。このアルコールは特にはメタノール)に溶媒置換して動的光散乱法による平均粒子径が5~200nmであるシリカ粒子を分散質とし、炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを得ることができる。
【0040】
(B)工程は、(A)工程で得られたシリカゾルをpH6~8に調整する工程である。上記pH設定において、塩基性物質は、シリカゾルに添加する事でシリカゾル中に含有される。塩基性物質としては、アミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、又は第4級アンモニウム化合物を用いる事ができる。
【0041】
本発明のシリカゾルのpHは、シリカゾルと有機溶媒と水を1:1:1で混合してpHメーターで測定することができる。例えば有機溶媒がメタノールである場合は、メタノール分散シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1ないしは1:2:1で混合した液体をpHメーターで測定する。有機溶媒がメチルエチルケトンである場合は、メチルエチルケトン分散シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1ないしは1:2:1で混合した液体をpHメーターで測定することができる。
【0042】
上記塩基性物質としては、アミン、アンモニア、無機アルカリ化合物、及び第4級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0043】
アミンとしては、総炭素原子数が5~35の第2級アミン及び第3級アミンを例示する事ができる。
【0044】
上記第2級アミンとしては、例えばエチル-n-プロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルブチルアミン、n-プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、エチルペンチルアミン、n-プロピルペンチルアミン、イソプロピルペンチルアミン、ジペンチルアミン、エチルオクチルアミン、i-プロピルオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジオクチルアミン等が挙げられる。
【0045】
上記第3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、エチルジn-プロピルアミン、ジエチル-n-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジブチルアミン、ジエチルブチルアミン、イソプロピルジブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、トリブチルアミン、エチルジペンチルアミン、ジエチルペンチルアミン、トリn-ペンチルアミン、メチルジオクチルアミン、ジメチルオクチルアミン、エチルジオクチルアミン、ジエチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ベンジルジブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
【0046】
上記アミンの中でも、総炭素原子数が5~35のアルキル基を有する第2級アミン及び第3級アミンが好ましく、例えばジイソプロピルアミン、トリn-ペンチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
【0047】
アンモニアは、ガス状アンモニア、アンモニア水で使用する事ができる。
水酸化第4級アンモニウムとしては、総炭素原子数が4~40の水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-プロピルアンモニウム、水酸化テトラi-プロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0048】
無機アルカリ化合物としては、水酸化アルカリ金属が挙げられ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリム等が挙げられる。
【0049】
(C)工程は、(B)工程で得られたシリカゾルにエポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)を有するシラン化合物を添加してシリカ粒子を被覆する工程である。
【0050】
エポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)は、シリカ粒子にエポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)含有シランを添加した時にシリカ粒子上(表面又は近傍)に形成される官能基である。(R)としては、例えば炭素原子数1~10のアルキル基、アリール基が挙げられる。アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、環状構造、又はそれらの組み合わせであり、プロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルエチル基が挙げられる。アリール基はフェニル基、フェニルメチル基が挙げられる。
【0051】
エポキシ基は、グリシジル基又は3,4-エポキシシクロヘキシル基であり、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。特に2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いる事ができる。
【0052】
この工程は、シリカ粒子の表面又は近傍のヒドロキシ基、例えばシリカ粒子であればシラノール基と上記シラン化合物が反応してシロキサン結合によりシリカ粒子の表面に上記シラン化合物を被覆する工程である。この工程は、0℃からその分散媒の沸点の範囲までの反応温度で行うことができるが、例えば20℃~100℃の範囲で行うことができる。また、この工程は、0.1~6時間程度の反応時間で行うことができる。
【0053】
上記シラン化合物の加水分解には、水が必要であるが、炭素原子数1~4のアルコールROH溶媒のゾルであれば水性媒体をアルコールに溶媒置換したときにアルコール溶媒中に残存する水分を用いる事ができる。残存する水分は、水性媒体のゾルを、炭素原子数1~4のアルコール溶媒のゾルに溶媒置換したときに残存する水分であり、例えば上記アルコールに分散したシリカゾルの水分含有量として5質量%以下、例えば1.0~5.0質量%、又は1.2~5.0質量%、又は1.2~3.0質量%で存在する水分を用いる事ができる。
【0054】
触媒としては、上記塩基性物質が加水分解触媒を兼ねている。
【0055】
(C)工程では、上記エポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)を含有するシランを添加する事に加えて、更に式(1)乃至式(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を添加する(C-1)工程を追加する事ができる。
【0056】
式(1)中、Rはそれぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びRはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。
【0057】
上記アルキル基は、炭素原子数1~18のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等があげられるが、これらに限定されない。
【0058】
また、アルキレン基としては、上述のアルキル基から誘導されるアルキレン基を挙げる事ができる。
【0059】
上記アリール基は、炭素原子数6~30のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレン基等が挙げられる。
【0060】
アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上記アルコキシ基としては、炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
上記アシルオキシ基としては、炭素原子数2~10のアシルオキシ基が挙げられ、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
上記ハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0064】
上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方を表す。(メタ)アクリロイル基を有する有機基としては、例えば、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等が挙げられる。
メルカプト基を有する有機基としては、例えば、3-メルカプトプロピル基が挙げられる。
【0065】
アミノ基を有する有機基としては、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0066】
ウレイド基を有する有機基としては、例えば、3-ウレイドプロピル基が挙げられる。
【0067】
シアノ基を有する有機基としては、例えば、3-シアノプロピル基が挙げられる。
【0068】
上記式(2)及び式(3)で表されるシリカ化合物は、トリメチルシリル基をシリカ粒子の表面に形成できる化合物が好ましい。
【0069】
それら化合物としては、以下を例示することができる。
【0070】
【化2】
【0071】
上記式中、R12はアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0072】
好ましい官能基としては、トリメチルシリル基、モノメチルシリル基、ジメチルシリル基、メタクリロキシプロピルシリル基、フェニル基等であり、それに対応するシラン化合物としてヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
上記シラン化合物が、式(1)(Rがアリール基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示す。)で表されるシラン化合物である事が好ましく、例えばフェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランを例示する事ができる。
【0074】
(D)工程は、(C)工程で得られたシリカゾルの分散媒をアルコールROHからカルボニル構造を有する有機物、又はエポキシ基を有する有機物に置換する工程である。
【0075】
カルボニル構造を有する有機物は、ケトン溶媒、アミド溶媒、及びエステル溶媒であり、エポキシ基を有する有機物は、液状エポキシ化合物であり、具体例として上記例示した化合物を挙げる事ができる。
【0076】
(D)工程では、分散媒をアルコールROHからカルボニル構造を有する有機物に置換した後に、更にエポキシ基を有する有機物に置換する(D-1)工程を行うことができる。
【0077】
本発明では、カルボニル構造を有する有機物を分散媒とするシリカゾル、及びエポキシ基を有する有機物を分散媒とするシリカゾルが得られる。いずれのシリカゾルもアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、又は酸発生剤系硬化剤(熱酸発生剤、又は光酸発生剤)等の硬化剤を含み硬化物とする事ができる。シリカゾルと硬化剤を含む硬化体形成組成物を基材に塗布して加熱、光照射、又はその組み合わせにより硬化物を形成する事ができる。上記硬化体形成組成物は更にエポキシ樹脂を含有する事ができる。
【0078】
熱硬化性硬化体形成組成物の場合は、エポキシ基に対して熱硬化剤を0.5~1.5当量、好ましくは0.8~1.2当量の割合で含有することができる。エポキシ化合物に対する熱 硬化剤の当量は、エポキシ基に対する熱硬化剤の硬化性基の当量比で示される。
【0079】
熱硬化剤としては、フェノール樹脂、アミン系硬化剤、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物、熱酸発生剤等が挙げられる。特に酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤が好ましい。
【0080】
これら熱硬化剤は固体であっても溶剤に溶解することによって使用することはできるが、溶剤の蒸発により硬化物の密度低下や細孔の生成により強度低下、耐水性の低下を生ずるために、硬化剤自体が常温、常圧下で液状のものが好ましい。
【0081】
フェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0082】
アミン系硬化剤としては、例えばピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。これらの中で液状であるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等を好ましく用いることができる。
【0083】
ポリアミド樹脂は、ダイマー酸とポリアミンの縮合により生成するものであり、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンが好ましい。
【0084】
イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、エポキシイミダゾールアダクト等が挙げられる。
【0085】
ポリメルカプタンは、例えばポリプロピレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものや、ポリエチレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものであり、液状のものが好ましい。
【0086】
酸無水物系硬化剤としては、一分子中に複数のカルボキシル基を有する化合物の無水物が好ましい。これらの酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0087】
熱酸発生剤としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられるが、中でもスルホニウム塩が好ましく用いられる。例えば以下の化合物を例示することができる。
【0088】
【化3】
【0089】
Rは炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20アリール基が挙げられ、特に炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0090】
これらの中でも常温、常圧で液状であるメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(メチルナジック酸無水物、無水メチルハイミック酸)、水素化メチルナジック酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物が好ましい。これら液状の酸無水物は、粘度が25℃での測定で10mPa・s~1000mPa・s程度である。
【0091】
また、上記硬化物を得る際、適宜、硬化助剤が併用されても良い。硬化助剤としては、トリフェニルホスフィンやトリブチルホスフィンなどの有機リン化合物、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムリン酸ジエチル等の第4級ホスホニウム塩、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エンとオクチル酸の塩、オクチル酸亜鉛、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化助剤は、硬化剤1質量部に対して、0.001~0.1質量部の割合で含有することができる。
【0092】
エポキシ基又はエポキシ基含有有機基(R)と、アルコキシ基(OR)を含むシリカ粒子のシリカゾル、乃至は更にエポキシ樹脂を含む組成物は、硬化剤と所望により硬化助剤をと共に混合することにより、熱硬化性組成物(熱硬化性の硬化体形成組成物)が得られる。これら混合は、反応容器中で撹拌羽根やニーダーを用いて行うことができる。
【0093】
混合は、加熱混合方法により行われ、60℃~100℃の温度で0.5~1時間行われる。
【0094】
得られた液状エポキシ樹脂組成物(熱硬化性組成物)は、熱硬化性組成物であり、例えば液状封止材として用いるための適切な粘度を有する。液状の熱硬化性組成物は、任意の粘度に調製が可能であり、キャスティング法、ポッティング法、ディスペンサー法、印刷法等によりLED等の透明封止材として用いるために、その任意箇所に部分的封止ができる。液状の熱硬化性組成物を上述の方法で液状のまま直接にLED等に実装した後、乾燥し、硬化することによりエポキシ樹脂硬化体が得られる。
【0095】
熱硬化性組成物を基材に塗布し、80~200℃の温度で加熱することにより硬化物が得られる。
【0096】
光硬化性組成物(光硬化性の硬化体形成組成物)の場合は、エポキシ基に対して光硬化剤(光酸発生剤)を0.5~20質量%、好ましくは0.8~10質量%の割合で含有することができる。
【0097】
光酸発生剤は、光照射により直接又は間接的に酸を発生するものであれば特に限定されない。
【0098】
光酸発生剤の具体例としては、トリアジン系化合物、アセトフェノン誘導体化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩、メタロセン錯体、鉄アレーン錯体などを用いることができる。
【0099】
上記光酸発生剤として用いるオニウム塩のうち、ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムクロライド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、更にビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのビス(アルキルフェニル)ヨードニウム塩、アルコキシカルボニルアルコキシ-トリアルキルアリールヨードニウム塩(例えば、4-[(1-エトキシカルボニル-エトキシ)フェニル]-(2,4,6-トリメチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなど)、ビス(アルコキシアリール)ヨードニウム塩(例えば、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩)が挙げられる。
【0100】
スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリフェニルスルホニウム塩や、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)等のスルホニウム塩が挙げられる。
【0101】
ホスホニウム塩としては、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のホスホニウム塩が挙げられる。
【0102】
その他、光酸発生剤としては、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェートなどのセレニウム塩、(η5又はη6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなどのメタロセン錯体が挙げられる。
【0103】
また、光酸発生剤としては以下の化合物も用いることができる。
【0104】
【化4】
【0105】
【化5】
【0106】
【化6】
【0107】
【化7】
【0108】
【化8】
【0109】
【化9】
【0110】
【化10】
【0111】
【化11】
【0112】
【化12】
【0113】
光酸発生剤としては、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物が好ましい。それらのアニオン種としてはCF3SO3 、CSO3 、C17SO3 、カンファースルホン酸アニオン、トシル酸アニオン、BF4 、PF6 、AsF6 及びSbF6 などが挙げられる。特に強酸性を示す六フッ化リン及び六フッ化アンチモン等のアニオン種が好ましい。
【0114】
本発明の硬化体形成組成物は、必要に応じて慣用の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、顔料、着色剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、レベリング剤、塗布性改良剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、界面活性剤、溶解促進剤、充填剤、帯電防止剤、硬化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0115】
塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などを挙げることができる。
【0116】
本発明では、光硬化性の硬化体形成組成物を基板上に塗布し光照射により硬化することができる。また、光照射の前後に加熱することもできる。
【0117】
塗膜の厚みは、硬化物の用途に応じて、0.01μm~10mm程度の範囲から選択でき、例えばフォトレジストに用いる場合は0.05~10μm(特に0.1~5μm)程度とすることができ、プリント配線基板に用いる場合は5μm~5mm(特に100μm~1mm)程度とすることができ、光学薄膜に用いる場合は0.1~100μm(特に0.3~50μm)程度とすることができる。
【0118】
光酸発生剤を用いる場合の照射又は露光する光は、例えばガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよく、通常、可視光又は紫外線、特に紫外線である場合が多い。光の波長は、例えば150~800nm、好ましくは150~600nm、さらに好ましくは200~400nm、特に300~400nm程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば2~20000mJ/cm2、好ましくは5~5000mJ/cm2程度とすることができる。
【0119】
光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば紫外線の場合は低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザーなど)などを用いることができる。このような光照射により、前記組成物の硬化反応が進行する。
【0120】
熱酸発生剤を用いる場合や、光酸発生剤を用い光照射後に必要により行われる塗膜の加熱は、例えば60~250℃、好ましくは100~200℃程度で行われる。加熱時間は、3秒以上(例えば、3秒~5時間程度)の範囲から選択でき、例えば、5秒~2時間、好ましくは20秒~30分程度で行うことができ、通常は1分~3時間(例えば、5分~2.5時間)程度で行うことができる。
【0121】
さらに、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板などを製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザー光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。
【0122】
現像液としては、アルカリ水溶液や有機溶剤を用いることができる。
【0123】
アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液を挙げることができる。
【0124】
前記アルカリ現像液は、10質量%以下の水溶液であることが一般的で、好ましくは0.1~3.0質量%の水溶液などが用いられる。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもでき、これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部である。
【0125】
この中で、水酸化テトラメチルアンモニウム0.1~2.38質量%水溶液を用いることができる。
【0126】
また、現像液としての有機溶剤には、一般的な有機溶剤を用いることが可能であり、例えばアセトン、アセトニトリル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸エチル、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として用いることができる。特にプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等を好ましく使用することができる。
【0127】
本発明では、塗布性を向上させる目的で界面活性剤を添加しても良い。このような界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など特に限定されない。前記界面活性剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
これらの界面活性剤の中で、塗布性改善効果の高さからフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例としては、エフトップEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製 商品名)、メガファックF171、F173、R-30、R-40、R-08、R-90、BL-20、F-482(大日本インキ化学工業工業(株)製 商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製 商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製 商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
本発明の硬化体形成組成物における界面活性剤の添加量は、固形分中で、0.0008~4.5質量%、好ましくは0.0008~2.7質量%、より好ましくは0.0008~1.8質量%である。
【0130】
本発明では、現像後の基板との密着性を向上させる目的で、密着促進剤を添加することができる。これらの密着促進剤はトリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。
【0131】
前記密着促進剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの密着促進剤の添加量は、固形分中で、通常18質量%以下、好ましくは0.0008~9質量%、より好ましくは0.04~9質量%である。
【0132】
本発明では、増感剤を含んでいても良い。使用できる増感剤としては、アントラセン、フェノチアゼン、ぺリレン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン等が挙げられる。更に、増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。
【0133】
特に好ましいのは、アントラセン系の増感剤であり、カチオン硬化触媒(感放射性カチオン重合開始剤)と併用する事により、感度が飛躍的に向上すると共に、ラジカル重合開始機能も有しており、本発明のカチオン硬化システムとラジカル硬化システムを併用するハイブリッドタイプでは、触媒種をシンプルにできる。具体的なアントラセンの化合物としては、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラキノン等が有効である。増感剤の添加量は固形分中で、0.01~20質量%、好ましくは0.01~10質量%の割合で使用される。
【0134】
本発明では、エポキシ化合物を含有する硬化体形成組成物を光酸発生剤又は熱酸発生剤を用い光硬化又は熱硬化させようとするものである。光酸発生剤又は熱酸発生剤を用いるために、通常用いられるエポキシの硬化剤(例えばアミンや酸無水物)を用いないか又はそれらを用いたとしても極端にそれらの含有量が少ないため、エポキシ化合物を含有する組成物の保存安定性が良くなる。
【0135】
上記液状エポキシ化合物を含有する組成物が、光カチオン重合性を有することを発明者らは見出した。従来品の液状エポキシ化合物(例えばエポキシシクロヘキシル環を有する脂環式エポキシ化合物)よりも高い硬化速度を有する。硬化速度が速いため、酸発生剤添加量の低減や、弱酸系酸発生剤の使用も可能である。酸発生剤の低減は、UV照射後も酸活性種が残存することがあり金属腐食防止の上で重要である。硬化速度が速いため厚膜硬化が可能である。
【0136】
UV照射による硬化は、熱に弱い材料(機材)に適用できる。
【0137】
本発明のエポキシ化合物を含有する硬化体形成組成物を用いた熱硬化材料、光硬化材料は、速硬性、透明性、硬化収縮が小さい等の特徴を持ち、電子部品、光学部品、精密機構部品の被覆や接着に用いることができる。例えば携帯電話機やカメラのレンズ、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)などの光学素子、液晶パネル、バイオチップ、カメラのレンズやプリズムなどの部品、パソコンなどのハードディスクの磁気部品、CD、DVDプレヤーのピックアップ(ディスクから反射してくる光情報を取り込む部分)、スピーカーのコーンとコイル、モーターの磁石、回路基板、電子部品、自動車などのエンジン内部の部品等の接着に用いることができる。
【0138】
自動車ボディー、ランプや電化製品、建材、プラスチックなどの表面保護のためのハードコート材向けとしては、例えば自動車、バイクのボディー、ヘッドライトのレンズやミラー、メガネのプラスチックレンズ、携帯電話機、ゲーム機、光学フィルム、IDカード等への適用ができる。
【0139】
その他、アルミニウム等の金属、プラスチックなどに印刷するインキ材料向けとしては、クレジットカード、会員証などのカード類、電化製品やOA機器のスイッチ、キーボードへの印刷用インキ、CD、DVD等へのインクジェットプリンター用インキへの適用が挙げられる。
【0140】
さらに、3次元CADと組み合わせて樹脂を硬化し複雑な立体物をつくる技術や、工業製品のモデル製作等の光造形への適用、光ファイバーのコーティング、接着、光導波路、厚膜レジストなどへの適用が挙げられる。
【0141】
また、本発明のエポキシ化合物を含有する硬化体形成組成物は、半導体封止材料、電子材料用接着剤、プリント配線基板材料、層間絶縁膜材料、パワーモジュール用封止材等の電子材料用絶縁樹脂や発電機コイル、変圧器コイル、ガス絶縁開閉装置等の高電圧機器に使用される絶縁樹脂として好適に使用できる。
【実施例
【0142】
〔SiO濃度の測定〕
シリカゾルを坩堝に取り、130℃で乾燥後、1000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した。
〔平均一次粒子径(窒素吸着法粒子径/BET法)の測定〕
シリカゾルの300℃乾燥粉末の比表面積を、比表面積測定装置モノソーブ(商品名)MS-16(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて測定した。
〔粘度の測定〕
有機溶媒分散シリカゾルの粘度は、オストワルド粘度計を用いて20℃で測定した。樹脂モノマー分散ゾルの粘度は、B型回転粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。
〔動的光散乱法/DLS法による平均粒子径の測定〕
シリカゾルの動的光散乱法による平均粒子径測定は、ゾルを各種分散溶媒で所定濃度に希釈し、動的光散乱法粒子径測定装置(Malvern Instruments LTD製、商品名ZETASIZER Nano series)を用いて平均粒子径を測定した。
【0143】
〔pHの測定〕
シリカゾルのpHは、シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1で混合した液を20℃に調整し、pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製、商品名MM-43X)で測定した。なお、本測定方法で測定したpHは、pH(1+1+1)と表記した。
〔水分量〕
シリカゾルに含まれる水分量は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、商品名:MKA-610)を用いてカールフィッシャー滴定法にて測定した。
〔有機溶媒含有量〕
シリカゾル中の有機溶媒含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、商品名GC-2014s)にて求めた。
【0144】
〔エポキシ当量(A)の測定準備〕
シリカゾルに酢酸を添加し、シリカゾルとメタノールと純水を質量比で1:1:1の液体をpH4に調整し1時間保持した。
〔エポキシ当量(B)測定〕
ガラスビーカーにシリカゾルを適量採取し、クロロホルムまたはアセトンを10mL添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。前記溶液に対し、酢酸を20mL添加し、続いて臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液(0.25g/mL酢酸)を20mL添加し、撹拌した。その後、自動滴定装置((株)HIRANUMA製、商品名COM-1700A)を用いて、前記溶液を過塩素酸―酢酸標準液(0.1mol/L)にて電位差滴定し、JIS K7236(2001)に従って、エポキシ当量を算出した。
〔エポキシ当量(A)測定〕
上記エポキシ当量(A)の測定準備を行ったシリカゾルを、ガラスビーカーに適量採取し、クロロホルムまたはアセトンを10mL添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。前記溶液に対し、酢酸を20mL添加し、続いて臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液(0.25g/mL酢酸)を20mL添加し、撹拌した。その後、自動滴定装置((株)HIRANUMA製、商品名COM-1700A)を用いて、前記溶液を過塩素酸―酢酸標準液(0.1mol/L)にて電位差滴定し、JIS K7236(2001)に従って、エポキシ当量を算出した。
【0145】
〔エポキシ当量比率(B/A)の算出〕
エポキシ当量測定(A)、(B)で得られたそれぞれの値を用いて、以下の式からエポキシ当量比率を算出した。
【0146】
エポキシ当量比率(B/A)=エポキシ当量(B)/エポキシ当量(A)
【0147】
〔エポキシ基結合数の算出〕
シリカゾル4mLを遠沈管に入れ、ヘキサン20mLを添加し、高速冷却遠心機(トミー工業(株)製、商品名Suprema21)にセットして5℃で5,000rpm、30分間遠心分離を行った。その後、上澄みと沈殿に分離し、上澄みを回収した。その後、沈殿物にアセトン8mLを加え、再分散させた後、ヘキサン10mLを加えて再度遠心分離を行った。遠心分離工程は3~5回行った。回収した上澄みをロータリーエバポレーターにて、減圧度500~100Torr、浴温度80℃で30分~1時間加熱し、溶媒を留去した。フラスコに残ったシランカップリング剤を計量し、仕込みのシランカップリング剤量との差から、粒子に結合したシランカップリング剤の重量を得た。必要に応じて、沈降せずに上澄みに分散したシリカ量を溶媒留去後の重量から差し引いた。得られた重量からエポキシ基結合数(個/nm)を算出した。
〔Alの測定〕
シリカゾルを白金皿に採取し、超純水、塩酸、硫酸、フッ酸を加え、加熱することによってシリカ分を除去した。その後、超純水を加えて濃度調整し、測定原液とした。測定原液を所定の倍率に希釈し、ICP-MS(Agilent8900、アジレント・テクノロジー製)にてシリカゾル中のAlを測定した。その後、Alに換算し、シリカゾル中のシリカ濃度で除することでシリカに対するAl(ppm/SiO)を算出した。
【0148】
(実施例1)
水分散シリカゾル1(BET法による平均一次粒子径22nm、pH2~3、シリカ濃度40質量%、日産化学株式会社製)を準備した。
上記シリカゾル14000gを限外濾過法でメタノールによる水の置換を行った。ゾル中の水分量が0.5質量%に到達したところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾル1として14000gを得た。得られたメタノール分散シリカゾル1は、SiO濃度40.6質量%、水分0.5質量%、粘度5.4mPa・s、NaはSiOに対して2210ppm、SOはSiOに対して0.7ppmであった。
【0149】
上記メタノール分散シリカゾル1の200gを500mLナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、超純水を1.9g添加した。その後、撹拌しながらジイソプロピルエチルアミン(DiPEA)を0.15g添加し、pH(1+1+1)を7.1に調整した。その後、撹拌しながらグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学製)4.1gを添加し、液温60℃で2時間保持した。その後、撹拌しながらフェニルトリメトキシシラン(商品名KBM-103、信越化学製)6.8gを添加し、液温60℃で2時間撹拌した。
【0150】
その後、ゾルにMEKを加えてSiOを30質量%に希釈した後、ロータリーエバポレーターにて減圧度500~450Torr、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながらMEKを供給し、ゾルの分散媒をMEKに置換することにより、MEK分散シリカゾル1(SiOは30.2質量%、粘度(20℃)1.4mPa・s、水分0.04質量%、メタノール0.2質量%、動的光散乱法平均粒子径49.5nm、エポキシ当量(B)15700(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(A)16600(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(B/A)0.95、Al 4900ppm/SiO)を得た。
【0151】
(実施例2)
実施例1に記載のメタノール分散シリカゾル1の400gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、超純水を4.1g添加した。その後、撹拌しながらDiPEAを0.29g添加し、pH(1+1+1)を7.5に調整した。その後、撹拌しながらグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学製)8.0gを添加し、液温60℃で2時間保持することでメタノール分散シリカゾル2(SiOは40.1質量%、粘度(20℃)6.8mPa・s、水分1.4質量%、動的光散乱法平均粒子径32.7nm、エポキシ当量(B)11800(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(A)12400(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(B/A)0.95、
エポキシ基含有ケイ素化合物のSi原子がシリカ粒子の単位面積当たり0.95個/nm、Al 4900ppm/SiO)を得た。
【0152】
(実施例3)
実施例2で得られたメタノール分散シリカゾル2の150gを300mLのナスフラスコに仕込み、MEKを加えてSiOを30質量%に希釈した。その後、実施例1と同様の方法でMEK置換をすることにより、MEK分散シリカゾル2(SiOは30.0質量%、粘度(20℃)1.5mPa・s、水分0.4質量%、メタノール3.8質量%、動的光散乱法平均粒子径43.8nm、エポキシ当量(B)16000(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(A)17200(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(B/A)0.93、エポキシ基含有ケイ素化合物のSi原子がシリカ粒子の単位面積当たり0.98個/nm、Al 4900ppm/SiO)を得た。
【0153】
(実施例4)
実施例3で得られたMEK分散シリカゾル2の40.0gを300mLのナスフラスコに仕込み、脂環式エポキシモノマー(商品名CEL-2021P、ダイセル(株)製)37.0gを加え、溶解させた。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度300~100Torr、浴温度80℃で1時間加熱し、大部分の溶媒を留去した。その後、減圧度50Torr、浴温度80℃で3時間加熱し、溶媒を留去することでエポキシモノマー分散ゾル1(B型粘度(25℃)910mPa・s、動的光散乱法平均粒子径63.3nmを得た。
【0154】
(比較例1)
撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積3Lのガラス製反応器に、水分散シリカゾル1(平均一次粒子径22nm、pH2~3、シリカ濃度40質量%、日産化学株式会社製)を2,500g仕込み、加温して該シリカゾルを沸騰させた。反応器内のシリカゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込み、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾル3を2,500g得た。得られたメタノール分散シリカゾル3は、SiO濃度40.4質量%、水分量2.1質量%、粘度2.3mPa・sであった。
【0155】
上記メタノール分散シリカゾル3の250gを500mLナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、トリ-n-ペンチルアミンを0.09g添加し、pH(1+1+1)を4.3に調整した。その後、撹拌しながらグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名KBE-402、信越化学製)2.6gを添加し、液温60℃で3時間保持した。その後、撹拌しながらフェニルトリメトキシシラン(商品名KBM-103、信越化学製)4.1gを添加し、液温60℃で3時間撹拌した。
【0156】
その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度250~200Torr、浴温度60℃で溶媒を蒸発留去させながらMEKを供給し、ゾルの分散媒をMEKに置換することにより、MEK分散シリカゾル3(SiOは40.2質量%、粘度(20℃)2.8mPa・s、水分0.3質量%、メタノール0.6質量%、動的光散乱法平均粒子径40.2nm、エポキシ当量(B)123700(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(A)123700(シリカゾルg/当量)、エポキシ当量(B/A)1.0、Al 4900ppm/SiO)を得た。
【0157】
(比較例2)
水分散シリカゾル1(平均一次粒子径22nm、pH2~3、シリカ濃度40質量%、日産化学株式会社製)を準備した。
上記シリカゾル14000gを限外濾過法でメタノールによる水の置換を行った。ゾル中の水分量が0.5質量%に到達したところで置換を終了し、14000gのメタノール分散シリカゾル1を得た。得られたメタノール分散シリカゾル1は、SiO濃度40.6質量%、水分0.5質量%、pH(1+1+1)=3.5、粘度5.4mPa・s、NaはSiOに対して2210ppm、SOはSiOに対して0.7ppmであった。
【0158】
メタノール分散シリカゾル1の400gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、超純水を4.1g添加した。その後、撹拌しながらグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学製)8.0gを添加し、液温60℃で2時間保持することでメタノール分散シリカゾル4(SiOは40.1質量%、粘度(20℃)9.2mPa・s、水分1.4質量%、動的光散乱法平均粒子径29.1nm、エポキシ当量(B)は検出なし、Al 4900ppm/SiO)を得た。
【0159】
(比較例3)
比較例2で得られたメタノール分散シリカゾル2の150gを300mLのナスフラスコに仕込み、MEKを加えてSiOを30質量%に希釈した。その後、実施例1と同様の方法でMEK置換を実施したが、置換途中でゲル化したため、MEK分散ゾルは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、シリカ粒子に結合したエポキシ基の開環を抑制してエポキシ基の状態で存在しているエポキシ基含有ケイ素化合物が結合したシリカ粒子を含むゾルと樹脂組成物を提供する。