(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20250212BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250212BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250212BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20250212BHJP
H01M 50/40 20210101ALI20250212BHJP
H01M 4/133 20100101ALN20250212BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/42
H01M4/46
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/40
H01M4/133
(21)【出願番号】P 2020187990
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2020-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143658
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】李 ミンソク
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山本 章裕
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/088193(WO,A1)
【文献】特開2017-130281(JP,A)
【文献】特開2010-225511(JP,A)
【文献】特開2019-145299(JP,A)
【文献】特開2019-87348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/84,10/00-10/39
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、
前記正極層が、正極集電体、及び前記正極集電体上に配置された正極活物質層を含み、
前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体上に配置された第1負極活物質層を含み、
前記正極活物質層が、多孔性酸化物系複合固体電解質を含み、
前記固体電解質層が、硫化物系固体電解質を含み、
前記正極活物質層と前記正極集電体の1以上の側面を取り囲む不活性部材を含み、
前記不活性部材は、前記固体電解質層の周辺部に配置されて前記固体電解質層の末端部まで延長され、
前記多孔性酸化物系複合固体電解質は、多孔性酸化物マトリックス及び前記多孔性酸化物マトリックスの気孔内に配置される電解質を含み、
前記不活性部材は電気化学的活性を有する物質を含まず、リチウムイオン絶縁体を含む部材である、全固体二次電池。
【請求項2】
前記多孔性酸化物マトリックスが、SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2、ZnO、SnO
2及びCeO
2のうちから選択された1以上を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項3】
前記多孔性酸化物マトリックスが規則的なメソ多孔性気孔を含む、請求項1又は2に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記電解質がリチウム塩及び媒質を含み、前記媒質が、有機溶媒及びイオン性液体のうちから選択された1以上を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記リチウム塩は、前記媒質及び前記リチウム塩の全体モル数に対し1~30モル%である、請求項4に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記リチウム塩が、LiN(SO
2F)
2(LiFSI)、LiN(SO
2CF
3)
2(LiTFSI)、LiSCN、LiN(CN)
2、LiClO
4、LiBF
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiSbF
6、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、LiPF
3(CF
3)
3及びLiB(C
2O
4)
2のうちから選択された1以上を含む、請求項4又は5に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記媒質は少なくとも有機溶媒を含み、前記有機溶媒が、N-メチルアセトアミド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME、ポリグライム)、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(TEGDME、テトラグライム)、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(トリグライム)、ポリ(エチレングリコール)ジラウレート(PEGDL)、ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート(PEGMA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、3-ジオキソラン、4,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、4-エチル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、スクシノニトリル、アジポニトリル、スルホレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちから選択された1以上を含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記媒質は少なくともイオン性液体を含み、前記イオン性液体が、アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピリジニウム系、ピリミジニウム系、イミダゾリウム系、ピペリジニウム系、ピラゾリウム系、オキサゾリウム系、ピリダジニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、トリアゾリウム系、及びその混合物のうちから選択された1以上の陽イオン;及びBF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、AlCl
4
-、HSO
4
-、ClO
4
-、CH
3SO
3
-、CF
3CO
2
-、Cl
-、Br
-、I
-、BF
4
-、SO
4
-、CF
3SO
3
-、(FSO
2)
2N
-、(C
2F
5SO
2)
2N
-、(C
2F
5SO
2)(CF
3SO
2)N
-及び(CF
3SO
2)
2N
-のうちから選択された1以上の陰イオンを含む化合物のうちから選択される、請求項4から7のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記多孔性酸化物系複合固体電解質100重量部に対し、多孔性酸化物マトリックス50ないし70重量部、リチウム塩20ないし40重量部、及び媒質5ないし10重量部を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記多孔性酸化物系複合固体電解質の含量が、正極活物質層総重量の1重量%ないし30重量%である、請求項1から9のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記正極集電体と前記正極活物質層との間に配置されるカーボン層をさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
前記硫化物系固体電解質が、Li
2S-P
2S
5、Li
2S-P
2S
5-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、Li
2S-P
2S
5-Li
2O、Li
2S-P
2S
5-Li
2O-LiI、Li
2S-SiS
2、Li
2S-SiS
2-LiI、Li
2S-SiS
2-LiBr、Li
2S-SiS
2-LiCl、Li
2S-SiS
2-B
2S
3-LiI、Li
2S-SiS
2-P
2S
5-LiI、Li
2S-B
2S
3、Li
2S-P
2S
5-Z
mS
n(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、Li
2S-GeS
2、Li
2S-SiS
2-Li
3PO
4、及びLi
2S-SiS
2-Li
pMO
q(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち一つである)のうちから選択された1以上を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記硫化物系固体電解質が
、Li
7PS
6
及び
/またはLi
2P
2S
6
を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記硫化物系固体電解質が、下記化学式1で表示されるアルジロダイト型固体電解質を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の全固体二次電池:
(化学式1)Li
+
12-n-xA
n+X
2-
6-xY’
-
x
前記化学式1で、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、
Xは、S、SeまたはTeであり、Y’は、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCNまたはN
3であり、1≦n≦5、0≦x0≦2である。
【請求項15】
前記アルジロダイト型固体電解質が、Li
7-xPS
6-xCl
x(0≦x≦2)、Li
7-xPS
6-xBr
x(0≦x≦2)及びLi
7-xPS
6-xI
x(0≦x≦2)のうちから選択された1以上である、請求項14に記載の全固体二次電池。
【請求項16】
前記第1負極活物質層が負極活物質及びバインダを含み、前記負極活物質が粒子形態を有し、前記負極活物質の平均粒径が4μm以下である、請求項1から15のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項17】
前記負極活物質が、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含み、前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素及び結晶質炭素のうちから選択された1以上を含む、請求項16に記載の全固体二次電池。
【請求項18】
前記金属負極活物質または準金属負極活物質が、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上を含む、請求項17に記載の全固体二次電池。
【請求項19】
前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に配置された第2負極活物質層をさらに含み、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層または析出層である、請求項1から18のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求により、エネルギー密度が高く安全性に優れる電池の開発が活発になされている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器分野、通信機器分野だけではなく、自動車分野においても実用化されている。自動車分野においては、生命に係わるために、特に、安全が重要視される。現在市販されているリチウムイオン電池は、正極層と負極層との間に、液体電解質層が利用されているために、短絡が発生した場合、過熱及び火災が発生する可能性がある。それに対し、液体電解質層の代わりに、固体電解質層を利用した全固体電池が提案されている。該全固体電池は、液体電解質層を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発が発生する可能性を大きく減らすことができる。従って、そのような全固体電池は、液体電解質層を使用するリチウムイオン電池に比べ、安全性を大きく高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、正極層と固体電解質層とが互いに異なる電解質を含む新たな全固体二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一具現例により、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、前記正極層が、正極集電体、及び前記正極集電体上に配置された正極活物質層を含み、前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体上に配置された第1負極活物質層を含み、前記正極活物質層が、多孔性酸化物系複合固体電解質を含み、前記固体電解質層が、硫化物系固体電解質を含む、全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明の一側面により、正極層と固体電解質層とが互いに異なる電解質を含む全固体二次電池によれば、短絡が防止され、サイクル特性が向上された全固体二次電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
【
図2】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
【
図3】例示的な一具現例による全固体二次電池正極層の概路図である。
【
図4】例示的な一具現例による全固体二次電池の内部を部分的に示す概路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池は、例えば、正極層、負極層及び固体電解質層が積層されて積層体が準備され、準備された積層体が加圧されて製造される。しかし、正極層、負極層及び固体電解質層の組成が互いに異なるので、それらの弾性係数などの物性も互いに異なる。従って、正極層、負極層及び固体電解質層の成形に要求される圧力も互いに異なる。例えば、正極層は、正極活物質と硫化物系固体電解質とを含み、正極活物質と硫化物系固体電解質との界面抵抗を低くするために、高い圧力が要求される。すなわち、正極活物質層成形に要求される圧力が、固体電解質層及び負極層の成形に要求される圧力に比べて高い。従って、正極活物質層の成形に適する圧力を加える場合、加えられる圧力が、負極層及び/または固体電解質層の成形に要求される圧力に比べ、過度に高い圧力にもなってしまう。従って、負極層及び/または固体電解質層に亀裂などが発生し、結果として、全固体二次電池の短絡が発生しうる。
【0008】
代案としては、硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池は、例えば、正極層、負極層及び固体電解質層をそれぞれ互いに異なる圧力によって加圧して別途に製造した後、それらを単純に組み立てて製造することができる。そのような場合、最も高い圧力で成形された正極層表面を最も高い程度に焼結させてもよい。従って、単純に組み立てられた全固体二次電池において、正極層と固体電解質層との界面抵抗が増大し、全固体二次電池のサイクル特性が悪くなる場合がある。
【0009】
一側面による全固体二次電池は、新たな組成を有することにより、充放電時に短絡が防止され、サイクル特性が向上するのである。
【0010】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を特定の実施形態に対して限定するものではなく、本創意的思想の技術的範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むものであると理解されなければならない。
【0011】
以下において使用される用語は、ただ、特定実施例の説明に使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」のような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在することを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下において使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0012】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大させたり縮小させたりして示した。明細書全体を通じ、類似部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板のような部分が他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。
【0013】
該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけに使用される。本明細書及び図面において、実質的に同一機能構成を有する構成要素については、同一符号を参照することにより、重複説明を省略する。
【0014】
粒子の平均粒径は、例えば、レーザ回折粒度測定機を使用して測定される体積累積メディアン径(D50)である。
【0015】
以下において、例示的な具現例による全固体二次電池について、さらに詳細に説明する。
[全固体二次電池]
一具現例による全固体二次電池は、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、正極層が、正極集電体、及び正極集電体上に配置された正極活物質層を含み、負極層が、負極集電体、及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層を含み、正極活物質層が、多孔性酸化物系複合固体電解質を含む。該正極活物質層が多孔性酸化物系複合固体電解質を含み、該固体電解質層が硫化物系固体電解質を含むことにより、全固体二次電池の製造に要求される圧力が低下する。従って、該全固体二次電池の製造過程において発生する亀裂などが防止される。結果として、該全固体二次電池の短絡が防止され、該全固体二次電池のサイクル特性が向上する。
【0016】
図1ないし
図4を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10と、負極層20,20a,20bと、正極層10と負極層20,20a,20bとの間に配置された固体電解質層30,30a,30bを含み、正極層10が、正極集電体11、及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12,12a,12bを含み、負極層20,20a,20bが、負極集電体21,21a,21b、及び負極集電体21,21a,21b上に配置された第1負極活物質層22,22a,22bを含み、正極活物質層12,12a,12bが、多孔性酸化物系複合固体電解質を含み、固体電解質層30,30a,30bが硫化物系固体電解質を含む。
図1、
図3及び
図4は、正極集電体11の一面上に、正極活物質層12が配置された構造であり、
図2は、正極集電体11の両面上に、正極活物質層12a,12bが配置された構造である。
【0017】
[正極層]
[正極層:多孔性酸化物系複合固体電解質]
図1ないし
図4を参照すれば、正極層10が、正極集電体11、及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12,12a,12bを含み、正極活物質層12,12a,12bが、多孔性酸化物系複合固体電解質を含む。
【0018】
正極活物質層12,12a,12bが多孔性酸化物系複合固体電解質を含むことにより、正極層10の製造時に要求される圧力が、硫化物系固体電解質を含む固体電解質層30,30a,30bの製造に要求される圧力に比べて低くもなる。従って、全固体二次電池製造において、高圧による硫化物系固体電解質を含む固体電解質層30,30a,30bの亀裂を防止することができる。
【0019】
多孔性酸化物系複合固体電解質は、例えば、多孔性酸化物マトリックス(porous oxide matrix)、及び該多孔性酸化物マトリックスの気孔内に配置される電解質を含む。該多孔性酸化物系複合固体電解質は、絶縁性である多孔性酸化物マトリックスの気孔内に配置されたイオン伝導性電解質を含むことにより、固体状態を維持しながら、イオン伝導度を提供する。該多孔性酸化物マトリックスは、一種の骨格(framework)を形成し、イオン伝導性電解質が骨格間に配置される。該多孔性酸化物系複合固体電解質は、例えば、正極層に適用される前に固体粉末状である。
【0020】
多孔性酸化物マトリックスは、例えば、SiO2、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、SnO2及びCeO2のうちから選択された1以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、多孔性構造を有する酸化物として使用されるものであるならば、いずれも可能である。該多孔性酸化物マトリックスは、例えば、粒子状でもある。該粒子状多孔性酸化物マトリックスの平均粒径は、例えば、0.5ないし50μm μm 、1ないし50μm、1ないし40μm、1ないし30μm、1ないし20μm、1ないし10μm、または1ないし5μmである。
【0021】
多孔性酸化物マトリックスは、例えば、規則的な(ordered)メソ多孔性(mesoporous)気孔を含む。該多孔性酸化物マトリックスは、例えば、周期的に配列された(periodically arranged)気孔を含む。該多孔性酸化物マトリックスに含まれる気孔の平均径は、例えば、1nmないし900nm、1nmないし500nm、1nmないし400nm、1nmないし300nm、1nmないし200nm、1nmないし100nm、1nmないし50nm、1nmないし40nm、1nmないし30nm、1nmないし20nm、または1nmないし10nmである。該多孔性酸化物マトリックスに含まれる気孔の平均径は、例えば、窒素吸着法によって測定される。
【0022】
多孔性酸化物系複合固体電解質に含まれる電解質は、リチウム塩及び媒質(medium)を含み、該媒質は、例えば、有機溶媒及びイオン性液体のうちから選択された1以上を含んでもよい。
【0023】
電解質に含まれるリチウム塩は、例えば、LiN(SO2F)2(LiFSI)、LiN(SO2CF3)2(LiTFSI)、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(SO2C2F5)2、LiSbF6、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(CF3)3及びLiB(C2O4)2のうちから選択された1以上である。
【0024】
電解質に含まれる有機溶媒は、例えば、N-メチルアセトアミド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME、ポリグライム)、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(TEGDME、テトラグライム)、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(トリグライム)、ポリ(エチレングリコール)ジラウレート(PEGDL)、ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート(PEGMA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、3-ジオキソラン、4,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、4-エチル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(1,1,2,2-tetrafluoroethyl2,2,3,3-tetrafluoropropyl ether)、スクシノニトリル、アジポニトリル、スルホレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちから選択された1以上である。
【0025】
電解質に含まれるイオン性液体は、例えば、アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピリジニウム系、ピリミジニウム系、イミダゾリウム系、ピペリジニウム系、ピラゾリウム系、オキサゾリウム系、ピリダジニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、トリアゾリウム系、及びその混合物のうちから選択された1以上の陽イオン;及びBF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、AlCl4
-、HSO4
-、ClO4
-、CH3SO3
-、CF3CO2
-、Cl-、Br-、I-、BF4
-、SO4
-、CF3SO3
-、(FSO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C2F5SO2)(CF3SO2)N-及び(CF3SO2)2N-のうちから選択された1以上の陰イオンを含む化合物のうちからも選択される。該イオン性液体は、例えば、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(3-トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドからなる群から選択された1以上である。
【0026】
電解質に含まれるリチウム塩の含量は、電解質を含む媒質及びリチウム塩の全体モル数に対し、1mol%ないし30mol%、3mol%ないし30mol%、5mol%ないし30mol%、10mol%ないし30mol%、または15mol%ないし25mol%でもある。該電解質がそのような範囲のリチウム塩含量を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。該リチウム塩含量が過度に少なければ、全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、寿命特性が低下してしまう。該リチウム塩含量が過度に多ければ、リチウム塩の一部が固体に析出されることにより、該多孔性酸化物系複合固体電解質の製造が容易ではなくなる。
【0027】
例えば、多孔性酸化物系複合固体電解質100重量部に対し、多孔性酸化物マトリックス50ないし70重量部、リチウム塩20ないし40重量部、及び媒質5ないし10重量部を含んでもよい。該多孔性酸化物系複合固体電解質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0028】
多孔性酸化物系複合固体電解質の含量は、例えば、正極活物質層12,12a,12b総重量の1重量%ないし30重量%、2ないし28重量%、5ないし25重量%、7ないし23重量%、または10ないし20重量%でもある。該多孔性酸化物系複合固体電解質がそのような範囲の含量を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。該多孔性酸化物系複合固体電解質の含量が過度に少なければ、リチウムイオンの含量が過度に少ないので、電池抵抗が増大してしまい、該多孔性酸化物系複合固体電解質の含量が過度に多ければ、全固体二次電池1の放電容量が低減してしまうことがある。
【0029】
[正極層:不活性部材]
図1ないし
図4を参照すれば、正極層10は、正極集電体11、及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12,12a,12b、及び正極活物質層12,12a,12bの一側面上に配置された不活性部材(inactive member)40を含む。
【0030】
不活性部材40は、電気化学的活性を有する物質、例えば、電極活物質(electrode active material)を含まない部材である。該電極活物質は、リチウムを吸蔵/放出する(absorb/desorb)物質である。不活性部材40は、電極活物質以外の物質であり、当該技術分野として使用する物質からなる部材である。
【0031】
不活性部材40は、正極活物質層12,12a,12bの側面を取り囲み、正極集電体11の周辺部に配置され、正極集電体11の末端部まで延長され、固体電解質層30,30a,30bと接触しうる。不活性部材40が正極活物質層12,12a,12bの側面を取り囲み、正極集電体11の周辺部に配置され、正極集電体11の末端部まで延長され、固体電解質層30,30a,30bと接触することにより、正極活物質層12,12a,12bと接触しない固体電解質層30,30a,30bにおいて、加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30,30a,30bの亀裂を効果的に抑制することができる。
【0032】
不活性部材40は、固体電解質層30,30a,30bの末端部までも延長される。不活性部材40が固体電解質層30,30a,30bの末端部まで延長されることにより、固体電解質層30,30a,30bの末端部で発生する亀裂を抑制することができる。固体電解質層30,30a,30bの末端部は、固体電解質層30,30a,30bの側面と接する最外郭部分である。すなわち、不活性部材40は、固体電解質層30,30a,30bの側面と接する最外郭部分までも延長される。
【0033】
正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、正極活物質層12,12a,12bと接触する固体電解質層30,30a,30bの面積S2に比べて狭く、不活性部材40が、正極活物質層12,12a,12bの側面を取り囲んで配置され、正極活物質層12,12a,12bと固体電解質層30,30a,30bとの面積段差(area error)を補正することができる。不活性部材40の面積S3が、正極活物質層12,12a,12bの面積S1と、固体電解質層30,30a,30bの面積S2との差を補正するにより、請求項に記載の加圧過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30,30a,30bの亀裂を効果的に抑制することができる。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、固体電解質層30,30a,30bの面積S2の100%未満、99%以下、98%以下、95%以下、90%以下、85%以下または80%以下でもある。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、固体電解質層30,30a,30bの面積S2の50%ないし100%未満、50%ないし99%、50%ないし98%、50%ないし95%、60%ないし90%、60%ないし85%、または60%ないし80%でもある。正極活物質層12,12a,12bの面積S1が固体電解質層30,30a,30bの面積S2と同じであるか、あるいはそれよりもさらに広ければ、正極活物質層12,12a,12bと負極活物質層22,22a,22bとが物理的に接触して短絡が発生するか、あるいはリチウムの過充電などによって短絡が発生する可能性が上昇する。
【0034】
不活性部材40が、互いに対向する正極集電体11と固体電解質層30,30a,30bとの間にも配置されるか、あるいは互いに対向する2層の固体電解質層30,30a,30b間にも配置される。不活性部材40は、互いに対向する正極集電体11と固体電解質層30,30a,30bとの間の空間、または互いに対向する2層の固体電解質層30,30a,30b間の空間を充填する充填剤(filler)の役割を遂行することができる。
【0035】
正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、負極集電体21,21a,21bの面積S4に比べても狭い。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、負極集電体21,21a,21bの面積S4の100%未満、99%以下、98%以下、95%以下、90%以下、85%以下または80%以下でもある。例えば、正極活物質層12,12a,12bの面積S1は、負極集電体21,21a,21bの面積S4の50%ないし100%未満、50%ないし99%、50%ないし98%、50%ないし95%、60%ないし90%、60%ないし85%、または60%ないし80%でもある。
【0036】
負極集電体21,21a,21bの面積S4が、正極集電体11の面積S5及び/またはその形態が同一でもある。例えば、負極集電体21,21a,21bの面積S4が、正極集電体11の面積S5の100±5%範囲、100±3%の範囲、100±2%の範囲、100±1%範囲、または100±0.5%範囲でもある。正極集電体11の面積S5が、固体電解質層30,30a,30bの面積S2及び/またはそ形態が同一でもある。例えば、正極集電体11の面積S5が、固体電解質層30,30a,30bの面積S2の100±5%範囲、100±3%の範囲、100±2%の範囲、100±1%範囲、または100±0.5%範囲でもある。本明細書において、「同一」な面積及び/または形態は、意図的に、面積及び/または形態を異ならせる場合を除いては、「実質的に同一」な面積及び/または形態を有する全ての場合を含む。
【0037】
不活性部材40は、リチウムイオン絶縁体及びリチウムイオン伝導体のうちから選択された1以上を含んでもよい。不活性部材40は、電子絶縁体でもある。すなわち、不活性部材40は、電子伝導体ではないのである。
【0038】
不活性部材40は、有機材料、無機材料または有無機複合材料でもある。該有機材料は、例えば、高分子でもある。該無機材料は、例えば、金属酸化物のようなセラミックスでもある。該有無機複合材料は、高分子と金属酸化物との複合体でもある。不活性部材40は、例えば、絶縁性高分子、イオン伝導性高分子、絶縁性無機物、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうちから選択された1以上を含んでもよい。不活性部材40は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)のようなオレフィン系重合体でもある。
【0039】
不活性部材40の密度が、例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる正極活物質の密度の10%ないし200%、10%ないし150%、10%ないし140%、10%ないし130%、または10%ないし120%でもある。不活性部材40の密度が、例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる正極活物質の密度の90ないし110%でもある。不活性部材40の密度が、例えば、正極活物質層12,12a,12bに含まれる正極活物質の密度と実質的に同一でもある。
【0040】
不活性部材40は、例えば、ガスケットでもある。不活性部材40としてガスケットが使用されることにより、加圧過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30,30a,30bの亀裂を効果的に抑制することができる。
【0041】
[正極層:正極活物質]
図1ないし
図4を参照すれば、正極活物質層12,12a,12bは、正極活物質を含む。
【0042】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる化合物である。該正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物、リチウムリン酸鉄酸化物のようなリチウム遷移金属酸化物;硫化ニッケル;硫化銅;硫化リチウム;酸化鉄または酸化バナジウムなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、正極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。正極活物質は、それぞれ単独でもあり、2種以上の混合物でもある。
【0043】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiaA1-bB’bD2(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bB’bO2-cDc(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’bO4-cDc(前記化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobB’cDα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cDα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiI’O2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。そのような化合物表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド・ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。該コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物である。該コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に十分に理解されうる内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0044】
正極活物質は、例えば、前述のリチウム遷移金属酸化物において、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが相互に規則的に配列され、それにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(fcc:face centered cubic lattice)が互いに単位格子(unit lattice)の陵(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNixCoyAlzO2(NCA)、LiNixCoyMnzO2(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)またはLiNixCoyMnzAlwO2(NCMA)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1及びx+y+z+w=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物である。該正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0045】
正極活物質は、前述のように、被覆層によっても覆われている。該被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されたものであるならば、いずれでもよい。該被覆層は、例えば、Li2O-ZrO2(LZO)などである。
【0046】
正極活物質が、例えば、LiNixCoyAlzO2(NCA)またはLiNixCoyMnzO2(NCM)のような三元系リチウム遷移金属酸化物であり、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態において、正極活物質の金属溶出の低減が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態でのサイクル特性が向上する。
【0047】
正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形などの粒子状である。該正極活物質の粒径は、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池1の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質の含量も、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池1の正極層10に適用可能な範囲である。
【0048】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12,12a,12bは、バインダを含んでもよい。該バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどである。
【0049】
[正極層:導電材]
正極活物質層12,12a,12bは、導電材を含んでもよい。該導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(KB)、炭素ファイバ、金属粉末などである。
【0050】
[正極層:その他添加剤]
正極活物質層12,12a,12bは、前述の正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0051】
正極活物質層12,12a,12bに含まれるフィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に、全固体二次電池1の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0052】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0053】
正極集電体11は、金属基材の一面上または両面上に配置されるカーボン層をさらに含んでもよい。該金属基材上にカーボン層がさらに配置されることにより、金属基材の金属が、正極層10に含まれる固体電解質によって腐食されることを防止し、正極活物質層12,12a,12bと正極集電体11との界面抵抗を低下させることができる。該カーボン層の厚みは、例えば、1μmないし5μmでもある。該カーボン層の厚みが過度に薄ければ、金属基材と固体電解質との接触を完全に遮断し難くなる。該カーボン層の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下してしまう。該カーボン層は、非晶質炭素、結晶質炭素などを含んでもよい。
【0054】
[固体電解質層]
[固体電解質層:固体電解質]
図1ないし
図4を参照すれば、固体電解質層30,30a,30bは、正極層10と負極層20,20a,20bとの間に配置され、固体電解質層30,30a,30bは、化合物系固体電解質を含む。
【0055】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうちいずれか一つである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq(p、qは、0超過10までの正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち一つである)、Li7-xPS6-xClx(0≦x0≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x0≦2)、及びLi7-xPS6-xIx(0≦x0≦2)のうちから選択された1以上である。該硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S、P2S5などの出発原料を、溶融急冷法や機械的ミリング法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を行うことができる。該固体電解質は、非晶質でもあり、結晶質でもあり、それらが混合された状態でもある。また、該固体電解質は、例えば、前述の硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも、構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものでもある。例えば、該固体電解質は、Li2S-P2S5を含む材料でもある。該固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、Li2S-P2S5を含むものを利用する場合、Li2SとP2S5との混合モル比は、例えば、Li2S:P2S5=50:50ないし90:10などの範囲である。
【0056】
代案としては、硫化物系固体電解質は、例えば、下記化学式1で表示されるアルジロダイト型(Argyrodite type)固体電解質を含んでもよい:
(化学式1)Li+
12-n-xAn+X2-
6-xY’-
x
【0057】
上記化学式1で、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、Xは、S、SeまたはTeであり、Y’は、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCNまたはN3であり、1≦n≦5、0≦x0≦2である。例えば、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうちから選択された1以上を含むアルジロダイト型の化合物でもある。硫化物系固体電解質は、例えば、Li6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5Iのうちから選択された1以上を含むアルジロダイト型固体電解質でもある。
【0058】
アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5ないし2.0g/ccでもある。該アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池1の内部抵抗が低下し、Liによる固体電解質層30,30a,30bの貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0059】
硫化物系固体電解質の弾性係数(elastic modulus)、すなわち、ヤング率(Young’s modulus)は、例えば、35GPa以下、30GPa以下、27GPa以下、25GPa以下または23GPa以下でもある。該硫化物系固体電解質の弾性係数、すなわち、ヤング率は、例えば、10ないし35GPa、10ないし30GPa、10ないし27GPa、10ないし25GPa、または10ないし23GPaでもある。該硫化物系固体電解質がそのような範囲の弾性係数を有することにより、焼結などに要求される温度及び/または圧力の大きさが低減されるので、固体電解質の焼結がさらに容易にもなされる。
【0060】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30,30a,30bは、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層30,30a,30bに含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層30,30a,30bのバインダは、正極活物質層12,12a,12bと第1負極活物質層22,22a,22bとに含まれるバインダ同じであっても、異なっていてもよい。
【0061】
[負極層]
[負極層:負極活物質]
負極層20,20a,20bは、負極集電体21,21a,21b上及び負極集電体21,21a,21b上に配置された第1負極活物質層22,22a,22bを含み、第1負極活物質層22,22a,22bは、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
【0062】
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下または900nm以下である。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nmないし4μm以下、10nmないし3μm以下、10nmないし2μm以下、10nmないし1μm以下、または10nmないし900nm以下である。該負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時、リチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易にもなる。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定した中央値(median)直径(D50)である。
【0063】
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含む。
【0064】
炭素系負極活物質は、特に、非晶質炭素(amorphous carbon)である。該非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック、ファーネスブラック(FB)、ケッチェンブラック(KB)、グラフェンなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、非晶質炭素に分類されるものであるならば、いずれも可能である。該非晶質炭素は、結晶性を有さないか、あるいは結晶性が非常に低い炭素であり、結晶性炭素または黒鉛系炭素とは異なる結晶性を示す。
【0065】
金属負極活物質または準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと、合金または化合物を形成する金属負極活物質または準金属負極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、該金属負極活物質ではない。
【0066】
第1負極活物質層22,22a,22bは、そのような負極活物質のうち一種の負極活物質を含むか、あるいは複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22,22a,22bは、非晶質炭素のみを含むか、あるいは金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上を含む。代案としては、第1負極活物質層22,22a,22bは、非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上との混合物を含む。非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上などの混合物との混合比は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1でもあるが、必ずしもそのような範囲に限定されるものではなく、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。該負極活物質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0067】
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子と、金属または準金属からなる第2粒子との混合物を含む。該金属または該準金属は、例えば、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。該準金属は、代案としては、半導体である。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に、8ないし60重量%、10ないし50重量%、15ないし40重量%、または20ないし30重量%である。第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0068】
[負極層:バインダ]
第1負極活物質層22,22a,22bに含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。該バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダとしても構成される。
【0069】
第1負極活物質層22,22a,22bがバインダを含むことにより、第1負極活物質層22,22a,22bが、負極集電体21,21a,21b上において安定化される。また、充放電過程において、第1負極活物質層22,22a,22bの体積変化、及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22,22a,22bの亀裂が抑制される。例えば、第1負極活物質層22,22a,22bがバインダを含まない場合、第1負極活物質層22,22a,22bが、負極集電体21,21a,21bから容易に分離されてしまう。負極集電体21,21a,21bから第1負極活物質層22,22a,22bが離脱することにより、負極集電体21,21a,21bが露出された部分において、負極集電体21,21a,21bが固体電解質層30,30a,30bと接触することにより、短絡が発生する可能性が増大する。第1負極活物質層22,22a,22bは、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bを構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21,21a,21b上に塗布し、乾燥させて作製される。該バインダを第1負極活物質層22,22a,22bに含めることにより、スラリー内に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法で、スラリーを負極集電体21,21a,21b上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することが可能である。
【0070】
[負極層:その他添加剤]
第1負極活物質層22,22a,22bは、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含むことが可能である。
【0071】
[負極層:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22,22a,22bの厚みは、例えば、正極活物質層12,12a,12b厚みの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下である。第1負極活物質層22,22a,22bの厚みは、例えば、1μmないし20μm、2μmないし10μm、または3μmないし7μmである。第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが過度に薄ければ、第1負極活物質層22,22a,22bと負極集電体21,21a,21bとの間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22,22a,22bを崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが過度に厚くなれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22,22a,22bによる全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0072】
第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが薄くなれば、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量も減少する。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量は、例えば、正極活物質層12,12a,12bの充電容量に比べ、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量は、例えば、正極活物質層12,12a,12bの充電容量に比べ、0.1%ないし50%、0.1%ないし40%、0.1%ないし30%、0.1%ないし20%、0.1%ないし10%、0.1%ないし5%、または0.1%ないし2%である。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22,22a,22bの厚みが非常に薄くなるので、反復される充放電過程において、第1負極活物質層22,22a,22bと負極集電体21,21a,21bとの間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22,22a,22bを崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量が過度に大きくなれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22,22a,22bによる全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0073】
正極活物質層12,12a,12bの充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層12,12a,12bにおける正極活物質の質量を乗じて得られる。該正極活物質が多種類使用される場合、正極活物質ごとに、充電容量密度X質量の値を計算し、その値の総合が正極活物質層12,12a,12bの充電容量である。第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量も、同じ方法によって計算される。すなわち、第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、第1負極活物質層22,22a,22bにおける負極活物質の質量を乗じて得られる。該負極活物質が多種類使用される場合、負極活物質ごとに、充電容量密度X質量の値を計算し、その値の総合が第1負極活物質層22,22a,22bの容量である。ここで、該正極活物質及び該負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。全固体半電池を利用した充電容量測定により、正極活物質層12,12a,12bと第1負極活物質層22,22a,22bとの充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。代案としては、正極活物質層12,12a,12bと第1負極活物質層22,22a,22bとの充電容量は、最初サイクル充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0074】
[負極層:第2負極活物質層]
全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置される第2負極活物質層をさらに含んでもよい。全固体二次電池1は、充電により、固体電解質層30,30a,30bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置される第2負極活物質層をさらに含んでもよい。該第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む析出層(plated layer)でもある。該析出層は、電池の充電によっても析出される。該第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。該金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。従って、該第2負極活物質層は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム保存庫(reservoir)として作用する。該リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として使用されるものであるならば、いずれも可能である。該第2負極活物質層は、そのような合金のうち一つまたはリチウムからもなるか、あるいは多種の合金によってもなる。
【0075】
第2負極活物質層の厚みは、特別に制限されるものではないが、例えば、1μmないし1,000μm、1μmないし500μm、1μmないし200μm、1μmないし150μm、1μmないし100μm、または1μmないし50μmである。第2負極活物質層の厚みが過度に薄ければ、第2負極活物質層によるリチウム保存庫の役割を遂行し難い。該第2負極活物質層の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がかえって低下する可能性がある。
【0076】
全固体二次電池1において第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置されるか、あるいは全固体二次電池1の組み立て後、充電により、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に析出される。全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に、該第2負極活物質層が配置される場合、該第2負極活物質層がリチウムを含む金属層であるので、リチウム保存庫として作用する。例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間にリチウムホイルが配置される。それにより、第2負極活物質層を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層が析出される場合、全固体二次電池1の組み立て時、該第2負極活物質層を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増大する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22,22a,22bの充電容量を超えて充電する。すなわち、第1負極活物質層22,22a,22bを過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22,22a,22bにリチウムを吸蔵させる。第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質は、正極層10から移動して来たリチウムイオンと、合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22,22a,22bの容量を超えて充電を行えば、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bの背面、すなわち、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、第2負極活物質層に該当する金属層が形成される。該第2負極活物質層は、主に、リチウム(すなわち、金属リチウム)によって構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22,22a,22bに含まれる負極活物質が、リチウムと、合金または化合物を形成する物質によって構成されることによって得られる。放電時には、第1負極活物質層22,22a,22b及び第2負極活物質層、すなわち、金属層のリチウムがイオン化され、正極層10側に移動する。従って、全固体二次電池1において、リチウムを負極活物質として使用することが可能である。また、第1負極活物質層22,22a,22bが第2負極活物質層を被覆するために、第2負極活物質層、すなわち、金属層保護層の役割を行うと共に、リチウムデンドライトの析出成長を抑制する役割を遂行する。従って、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層が配置される場合、負極集電体21,21a,21b及び第1負極活物質層22,22a,22b、並びにそれら間の領域は、例えば、全固体二次電池1の初期状態または放電後の状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0077】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21,21a,21bは、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料によって構成される。負極集電体21,21a,21bを構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、電極集電体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。負極集電体21,21a,21bは、前述の金属のうち1種によって構成されるか、あるいは2種以上の金属の合金、または被覆材料によっても構成される。負極集電体21,21a,21bは、例えば、板状またはホイル状である。
【0078】
全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21,21a,21b上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜をさらに含んでもよい。該薄膜は、負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22,22a,22bとの間に配置される。該薄膜は、例えば、リチウムと合金を形成することができる元素を含む。リチウムと合金を形成することができる元素は、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金を形成することができる元素であるならば、いずれも可能である。該薄膜は、それら金属のうち一つによって構成されるか、あるいは多種金属の合金によって構成される。該薄膜が負極集電体21,21a,21b上に配置されることにより、例えば、該薄膜と第1負極活物質層22,22a,22bとの間に析出される第2負極活物質層の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0079】
薄膜の厚みは、例えば、1nmないし800nm、10nmないし700nm、50nmないし600nm、または100nmないし500nmである。該薄膜の厚みが1nm未満になる場合、薄膜による機能が発揮され難くなる。該薄膜の厚みが過度に厚ければ、薄膜自体がリチウムを吸蔵し、負極において、リチウム析出量が減少し、全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下してしまう。該薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、負極集電体21,21a,21b上にも配置されるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野で薄膜を形成することができる方法であるならば、いずれも可能である。
【実施例】
【0080】
以下の実施例及び比較例を介し、本創意的思想についてさらに具体的に説明する。ただし、該実施例は、本創意的思想を例示するためのものであり、それらだけで本創意的思想の範囲が限定されるものではない。
【0081】
「実施例1:多孔性固体電解質10wt%、正極活物質85.5wt%、SiO2/LiN(SO2CF3)2(LiTFSI)/メチルアセトアミド(MAc)」
(負極層製造)
負極集電体として、厚み10μmのNi箔(foil)を準備した。また、負極活物質として、一次粒径が約30nmであるカーボンブラック(CB)、及び平均粒子径が約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0082】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子とを3:1の重量比で混合した混合粉末0.25gを容器に入れ、そこに、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダ(クレハ社の#9300)が7重量%含まれたN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液2gを加え、混合溶液を準備した。次に、該混合溶液にNMPを少しずつ添加しながら、混合溶液を撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーをNi箔に、バーコータ(bar coater)を利用して塗布し、80℃の対流式オーブンで10分間乾燥させ、積層体を得た。得られた積層体を、40℃で10時間真空乾燥させた。以上の工程により、負極集電体上に第1負極活物質層が形成された負極層を製造した。
【0083】
(固体電解質層の製造)
アクリル系バインダ(SX-A334、Zeon Co.,Ltd.)を酢酸オクチルに添加し、4wt%バインダ溶液を準備した。アルジロダイト型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質(D50=3μm、結晶質)に準備されたアクリル系バインダ溶液を添加し、シンキミキサー(Thinky mixer)で混合してスラリーを準備した。該スラリーは、固体電解質98.5重量部に対し、1.5重量部のアクリル系バインダを含んでいた。製造されたスラリーを不織布上に、バーコータを利用して塗布し、80℃の対流式オーブンで、10分間乾燥させて積層体を得た。得られた積層体を70℃で2時間真空乾燥させた。以上の工程により、固体電解質層を製造した。
【0084】
(負極層/固体電解質層組立体の製造)
負極層の第1負極活物質層上に固体電解質層を配置し、積層体を準備した。準備された積層体を、90℃で500MPaの圧力で10分間、平板加圧(hot plate press)処理し、負極層/固体電解質層組立体を準備した。そのような加圧処理により、固体電解質層が焼結され、電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚みは、約45μmであった。加圧された第1負極活物質層の厚みは、約7μmであった。
【0085】
(正極層製造)
(多孔性酸化物複合固体電解質製造)
N-メチルアセトアミドにLiTFSIを添加し、LiTFSI 20mol%電解液を製造した。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)50.0mLを、26.5Mギ酸水溶液74.0mLと混合し、シリカ前駆体(silica precursor)溶液を製造した。LiTFSI 20mol%電解液133.4gとシリカ前駆体溶液255.9gとを混合し、ゲル状態の組成物を準備した。ゲル状態の組成物を硬化させ、沈殿物を得た。得られた沈殿物を50℃の対流式オーブンで48時間乾燥させ、80℃で48時間真空乾燥させ、多孔性酸化物複合固体電解質粉末を製造した。
【0086】
(正極活物質層製造)
正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Mn0.05O2(NCM)を準備した。固体電解質として、前述のところで製造された多孔性酸化物複合固体電解質を使用した。バインダとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備した。導電材として、カーボンブラック(CB)及び炭素ナノファイバ(CNF)を準備した。そのような材料を、正極活物質:多孔性酸化物複合固体電解質:カーボンブラック:炭素ナノチューブ:バインダ=85.5:10:1.5:1.5:1.5の重量比で、キシレン溶媒と混合させた正極活物質組成物をシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させ、正極シートを製造した。該正極シート周囲に、該正極シートを取り囲むポリプロピレン(PP)材質のガスケットを配置した。該ガスケットで側面が取り囲まれた正極シートを、18μm厚のカーボンコーティングされたアルミニウムホイルからなる正極集電体の一面上に圧着させ、正極層を準備した。該正極層に含まれる正極活物質層及びガスケットの厚みは、約100μmであった。
【0087】
正極集電体の一面上への正極シート圧着は、450MPaの圧力で、100msの間、ロール加圧(roll press)して行われた。
【0088】
該正極活物質層は、正極集電体の中心部に配置され、ガスケットが正極活物質層を取り囲み、正極集電体の末端部まで配置された。
【0089】
該正極活物質層の面積は、正極集電体面積の約90%であり、該正極活物質層が配置されていない正極集電体の残り10%の表面全体にガスケットが配置された。
【0090】
(全固体二次電池の製造)
準備された負極層/固体電解質層組立体の固体電解質層上に、準備された正極層を配置し、積層体を準備した。
該積層体をパウチに入れて真空密封し、全固体二次電池を製造した。
該正極集電体と該負極集電体の一部を、密封された電池外部に突出させ、正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0091】
「実施例2:多孔性固体電解質10wt%、正極活物質85.5wt%、SiO2/LiTFSI/1,2-ジメトキシエタン(DME)」
多孔性酸化物複合固体電解質の製造時、媒質として、N-メチルアセトアミド(n-MAc)の代わりに、ジメトキシエタン(DME)を使用したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0092】
「実施例3:多孔性固体電解質5wt%、正極活物質90.5wt%、SiO2/LiTFSI/MAc」
正極層製造時、多孔性酸化物複合固体電解質の含量を5wt%に変更し、正極活物質含量を90.5wt%に変更したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0093】
「実施例4:多孔性固体電解質15wt%、正極活物質80.5wt%、SiO2/LiTFSI/MAc」
正極層製造時、多孔性酸化物複合固体電解質の含量を15wt%に変更し、正極活物質含量を80.5wt%に変更したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0094】
「実施例5:多孔性固体電解質30wt%、正極活物質65.5wt%、SiO2/LiTFSI/MAc」
正極層製造時、多孔性酸化物複合固体電解質の含量を30wt%に変更し、正極活物質含量を65.5wt%に変更したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0095】
「実施例6:多孔性固体電解質10wt%、正極活物質85.5wt%、SiO2/LiN(SO2F)2(LiFSI)/MAc」
多孔性酸化物複合固体電解質の製造時、リチウム塩として、LiTFSIの代わりに、LiFSIを使用したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0096】
「実施例7:多孔性固体電解質10wt%、正極活物質85.5wt%、SiO2/LiTFSI/MAc」
正極層製造時、正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Mn0.05O2(NCM)の代わりに、Li2O-ZrO2(LZO)コーティングされたLiNi0.8Co0.15Mn0.05O2(NCM)を使用したことを除いては、実施例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
LZOコーティングされた正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造した。コーティングされたLZOの厚みは、約10nmであった。
【0097】
「比較例1:硫化物系固体電解質15wt%、正極活物質80.5wt%、温間静水圧加圧(warm isostactic press)」
(負極層製造)
負極集電体として、厚み10μmのNi箔を準備した。また、負極活物質として、一次粒径が約30nmであるカーボンブラック(CB)、及び平均粒子径が約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0098】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子とを3:1の重量比で混合した混合粉末0.25gを容器に入れ、そこに、PVDFバインダ(クレハ社の#9300)7重量%を含まれたNMP溶液2gを加え、混合溶液を準備した。次に、該混合溶液にNMPを少しずつ添加しながら混合溶液を撹拌し、スラリーを製造した。製造されたスラリーをNi箔に、バーコータを利用して塗布し、80℃の対流式オーブンで10分間乾燥させ、積層体を得た。得られた積層体を、40℃で10時間真空乾燥させた。以上の工程により、負極集電体上に第1負極活物質層が形成された負極層を製造した。
【0099】
(固体電解質層の製造)
アクリル系バインダ(SX-A334、Zeon Co.,Ltd.)を酢酸オクチルに添加し、4wt%バインダ溶液を準備した。アルジロダイト型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質(D50=3μm、結晶質)に、準備されたアクリル系バインダ溶液を添加し、シンキーミキサ(Thinky mixer)で混合し、スラリーを準備した。該スラリーは、固体電解質98.5重量部に対し、1.5重量部のアクリル系バインダを含んでいた。製造されたスラリーを、不織布上にバーコータを利用して塗布し、空気中において、80℃温度で10分間乾燥させて積層体を得た。得られた積層体を、80℃で10時間真空乾燥させた。以上の工程により、固体電解質層を製造した。
【0100】
(正極層製造)
正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Mn0.05O2(NCM)を準備した。固体電解質として、前述のところで製造された多孔性酸化物複合固体電解質を使用した。バインダとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備した。導電材として、カーボンブラック(CB)及び炭素ナノファイバ(CNF)を準備した。そのような材料を、正極活物質:硫化物系固体電解質:カーボンブラック:炭素ナノチューブ:バインダ=80.5:15:1.5:1.5:1.5の重量比で、キシレン溶媒と混合させた正極活物質組成物をシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させ、正極シートを製造した。該正極シート周囲に、該正極シートを取り囲むポリプロピレン(PP)材質のガスケットを配置した。ガスケットで取り囲まれた正極シートを、18μm厚のカーボンコーティングされたアルミニウムホイルからなる正極集電体の一面上に圧着させ、正極層を準備した。該正極層に含まれる正極活物質層及びガスケットの厚みは、約100μmであった。
【0101】
該正極活物質層は、正極集電体の中心部に配置され、ガスケットが正極活物質層を取り囲み、正極集電体の末端部まで配置された。該正極活物質層の面積は、正極集電体面積の約90%であり、該正極活物質層が配置されていない正極集電体の残り10%の表面全体にガスケットが配置された。
【0102】
(全固体二次電池の製造)
正極層の一面上に固体電解質層を配置し、この固体電解質層状に、第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように、負極層をそれぞれ配置し、積層体を準備した。準備された積層体を、80℃で500MPaの圧力で30分間、温間静水圧加圧(warm isostactic press)処理した。そのような加圧処理により、固体電解質層が焼結され、電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚みは、約45μmであった。加圧された第1負極活物質層の厚みは、約7μmであった。
【0103】
加圧された積層体をパウチに入れて真空密封し、全固体二次電池を製造した。正極集電体と負極集電体との一部を、密封された電池外部に突出させ、正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0104】
「比較例2:硫化物系固体電解質15wt%、Li2O-ZrO2(LZO)コーティング正極活物質80.5wt%、第1負極活物質層なし、温間静水圧加圧(warm isotactic press)」
第1負極活物質層を形成させず、Ni負極集電体のみを使用し、正極層10製造時、正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Mn0.05O2(NCM)の代わりに、Li2O-ZrO2(LZO)コーティングされたLiNi0.8Co0.15Mn0.05O2(NCM)を使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、全固体二次電池を製造した。
【0105】
「比較例3:第1負極活物質層なし」
第1負極活物質層を形成させず、Ni負極集電体のみを使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、全固体リチウム電池を製造した。
【0106】
「比較例4:Ni単独」
負極活物質として、一次粒径が30nmほどであるカーボンブラック(CB)、及び平均粒子径が約60nmである銀(Ag)粒子の3:1重量比混合物の代わりに、平均粒径100nmのニッケル(Ni)粒子を使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、全固体リチウム電池を製造した。
【0107】
「評価例1:充放電試験」
実施例1ないし7、及び比較例1ないし4で製造された全固体二次電池の充放電特性を、以下の充放電試験によって評価した。該充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて行った。
【0108】
第1サイクルは、電池電圧が3.9Vないし4.25Vになるまで、0.6mA/cm2の定電流で12.5時間充電した。次に、電池電圧が2.5Vになるまで、0.6mA/cm2の定電流で12.5時間放電を実施した。第1サイクルの放電容量を標準容量にした。第2サイクル後においては、第1サイクルと同一条件で、充電及び放電を120サイクルまで実施した。第2サイクル後、放電容量が標準容量の80%に逹するサイクル回数について、下記評価基準により、表1に寿命特性を分類した。
【0109】
また、充放電過程で短絡が発生するか否かということを評価し、その結果を下記表1に記載した。短絡発生の場合は、「短絡」と表示した。
【0110】
評価基準
×:第2サイクルないし第5サイクル
△:第6サイクルないし第50サイクル
〇:第100サイクル以上
【0111】
【0112】
実施例1ないし7の全固体二次電池は、標準容量の80%に逹するサイクル数が第6サイクル以上であり、寿命特性が良好であった。
実施例1、4及び7の全固体二次電池は、標準容量の80%に逹するサイクル数が第100サイクル以上であり、寿命特性にすぐれている。
比較例1の全固体二次電池は、標準容量の80%に逹するサイクル数が第6サイクル以上であり、寿命特性が良好であった。
従って、実施例1ないし7の全固体二次電池は、比較例1の全固体二次電池に比べ、同等以上の寿命特性を示した。
【0113】
比較例2の全固体二次電池は、標準容量の80%に逹するサイクル数が第5サイクル以下であり、寿命特性にすぐれず、第5サイクルに逹する前に短絡が発生した。
比較例3及び4の全固体二次電池は、第1サイクルの充電過程、または第1サイクルの放電過程において短絡が発生した。
【0114】
実施例1ないし7の全固体二次電池において、第1サイクルの充電が完了した後、それら電池の断面に対するSEMイメージを測定し、第1負極活物質層と負極集電体との間に第2負極活物質層に該当する析出層(すなわち、リチウム金属層)が形成(すなわち、析出されること)されたことを確認した。
【0115】
上記説明したように、本実施例に係る全固体二次電池は、さまざまな携帯機器や車両などにも適用可能である。
【0116】
以上、添付された図面を参照し、例示的な一具現例について詳細に説明したが、本創意的思想は、そのような例に限定されるものではない。本創意的思想が属する技術分野で当業者であるならば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種変形例または修正例を導き出すことができるということは自明であり、それらも、また本創意的思想の技術的範囲に属するということは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0117】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12,12a,12b 正極活物質層
20,20a,20b 負極層
21,21a,21b 負極集電体
22,22a,22b 第1負極活物質層
30,30a,30b 固体電解質層
40 不活性部材