(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250212BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H05H1/46 B
H05H1/46 C
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2024503338
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2023005143
(87)【国際公開番号】W WO2024171326
(87)【国際公開日】2024-08-22
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関根 友博
(72)【発明者】
【氏名】田村 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 基裕
(72)【発明者】
【氏名】川那辺 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 真
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-176146(JP,A)
【文献】特開2016-18657(JP,A)
【文献】特開2017-27869(JP,A)
【文献】特開2016-96091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と連結されプラズマ生成用の電界が伝搬する導波管と、
前記導波管を構成し最低次のモードで動作する矩形導波管と、
前記導波管を構成し最低次のモードで動作する円形導波管と、
前記矩形導波管と前記円形導波管を接続する円矩形変換器と、
前記円形導波管の下方で前記真空容器の内に配置され、前記電界によってプラズマが形成される処理室と、
前記円形導波管の内部に配置された円偏波発生器と、
前記円形導波管の内部の円偏波を調節する円偏波補正器と、
前記円偏波補正器の動作を調節する制御部と、
前記矩形導波管の前記円矩形変換器とは逆の端に接続され、反射した電界を検出し、それに応じてインピーダンスの整合をとる自動整合器と、を備え、
前記自動整合器で測定した反射電界と、反射電界測定面と電界分布をモニタしたい面とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、電界分布に応じて前記円偏波補正器の動作を制御する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、さらに、
プラズマ生成のための高周波電力を供給する高周波電源と、
磁場を生成するための磁場生成機構と、を備え、
前記処理室は、試料を載置するための試料台を備える、プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御部は、前記円偏波補正器の動作を制御した後、繰り返し、前記自動整合器で測定した反射電界と、前記反射電界測定面と前記電界分布をモニタしたい面とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、電界分布に応じて前記円偏波補正器の動作を制御する、プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ処理装置において、
前記円偏波補正器は、第1方向に沿って前記円形導波管への挿入量を調整可能な第1スタブと、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記円形導波管への挿入量を調整可能な第2スタブと、を含み、
前記制御部は、前記第1スタブの前記円形導波管への挿入量と前記第2スタブの前記円形導波管への挿入量とを、前記電界分布に応じて、個別に制御する、プラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ生成のための高周波電力を供給する高周波電源と、磁場を生成するための磁場生成機構と、真空容器と連結されプラズマ生成用の電界が伝搬する導波管と、前記導波管を構成し最低次のモードで動作する矩形導波管と、前記導波管を構成し最低次のモードで動作する円形導波管と、前記矩形導波管と前記円形導波管を接続する円矩形変換器と、前記円形導波管の下方で前記真空容器の内に配置され、試料を載置するための試料台を備え、前記電界によってプラズマが形成される処理室と、前記円形導波管の内部に配置された円偏波発生器と、前記円形導波管の内部の円偏波を調節する円偏波補正器と、前記円偏波補正器の動作を調節する制御部と、前記矩形導波管の前記円矩形変換器とは逆の端に接続され、反射した電界を検出し、それに応じてインピーダンスの整合をとる自動整合器と、を備えるプラズマ処理装置の前記自動整合器で測定した反射電界と、反射電界測定面と電界分布をモニタしたい面とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、電界分布に応じて前記円偏波補正器の動作を制御する第1工程と、
前記処理室に試料を搬入し、前記試料を前記試料台に載置する第2工程と、
前記処理室の内部にプラズマを発生させ、前記試料をプラズマ処理する第3工程と、を含む、プラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理方法において、
前記第1工程において、前記制御部は、前記円偏波補正器の動作を制御した後、繰り返し、前記自動整合器で測定した反射電界と、前記反射電界測定面と前記電界分布をモニタしたい面とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、電界分布に応じて前記円偏波補正器の動作を制御する、プラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマ処理方法において、
前記円偏波補正器は、第1方向に沿って前記円形導波管への挿入量を調整可能な第1スタブと、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記円形導波管への挿入量を調整可能な第2スタブと、を含み、
前記第1工程において、前記制御部は、前記第1スタブの前記円形導波管への挿入量と、前記第2スタブの前記円形導波管への挿入量と、を前記電界分布に応じて、個別に制御する、プラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマ処理方法において、さらに、
前記処理室から前記試料を搬出する第4工程と、
前記第2工程と前記第3工程との間に、第5工程を含み、
前記第5工程において、前記制御部は、前記自動整合器で測定した反射電界と、前記反射電界測定面と前記電界分布をモニタしたい面とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、電界分布に応じて前記円偏波補正器の動作を制御する、プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関し、特に、導波管を伝搬し処理室内に供給された電磁波によって生成したプラズマにより試料を処理するプラズマ処理装置に係り、偏波面が回転する円偏波を供給する円偏波発生器を備えたプラズマ処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体デバイス製造の工程では、素子の高速化、低消費電力化を達成するために、微細化に加え,デバイス構造の3次元化により高速化と低消費電力化を進めてきた。今後はデバイスのさらなる高性能化を実現するために、従来以上に微細かつ複雑な構造へと移行が進むと予測されている。一方で構造の複雑化に伴い半導体デバイス製造の難易度が急速に上がっており、チップあたりの製造コストの増加が課題となっている。
【0003】
チップあたりの製造コストの低減を実現するためには、半導体ウェハを均一に処理し、ウェハ一枚あたりから取得できるチップ数を増加させることが効果的である。このような背景からプラズマ処理装置には従来よりも均一に半導体ウェハを処理することが求められる。
【0004】
以上のような要求に対し、処理室内のプラズマ密度分布の均一性を向上し、周方向に均一なウェハ加工を実現する方法として、プラズマを生成するための電磁波に円偏波を用いるという技術が報告されている。
【0005】
特許文献1及び特許文献2では、処理室内のプラズマや誘電体部材からの反射波により円形導波管内部の円偏波の軸比が悪化した場合において、その円偏波軸比のモニタ手段および軸比を再び最適に調整するための調整手段を備えたプラズマ処理装置が開示されている。ここで円偏波の軸比とは、1周期のうちに回転する円偏波の電界成分のうち、最大値に対する最小値の比を表す呼称であり、1であれば完全な円偏波を表し、0に近づくほど不均一な電磁波であることを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-77292号公報
【文献】特開2016-96091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体デバイスの加工効率向上のためには、プラズマ処理装置の稼働時間をできるだけ長くし、長時間デバイスの生産を行う必要がある。したがって、プラズマ処理装置に搭載する測定機器の数を最低限に抑制し、メンテナンス周期を可能な限り長くすることが求められる。
【0008】
特許文献1及び特許文献2では、円形導波管内部の円偏波軸比を制御するために、複数の円偏波のモニタ手段を導波管部に備えている。この構成では、モニタ手段のうち1つでもその測定精度が悪化した場合、円偏波調整器が最適値とならず、逆に従来よりも不均一なプラズマ処理を行ってしまう可能性がある。したがって、定期的なモニタ手段のメンテナンスが必要であり、プラズマ処理装置の稼働時間の低減を招く可能性がある。
【0009】
本開示は、電界真円率を最適値に制御することで均一なプラズマ処理を可能とする技術を提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本開示の代表的なプラズマ処理装置の一つは、
真空容器と連結されプラズマ生成用の電界が伝搬する導波管と、
前記導波管を構成し最低次のモードで動作する矩形導波管と、
前記導波管を構成し最低次のモードで動作する円形導波管と、
前記矩形導波管と前記円形導波管を接続する円矩形変換器と、
前記円形導波管の下方で前記真空容器の内に配置され、前記電界によって前記プラズマが形成される処理室と、
前記円形導波管の内部に配置された円偏波発生器と、
前記円形導波管の内部の円偏波を調節する円偏波補正器と、
前記円偏波補正器の動作を調節する制御部と、
前記矩形導波管の前記円矩形変換器とは逆の端に接続され、反射した電界を検出し、それに応じてインピーダンスの整合をとる自動整合器と、を備え、
前記自動整合器で測定した反射電界と、反射電界測定面と電界分布をモニタしたい面とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、計算結果に基づく電界分布に応じて前記円偏波補正器の動作を制御する、技術が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、自動整合器により得られた反射電界と散乱行列Sとを用いて得られた電界分布を基に、円偏波補正器を最適な設定に制御し、導波管内の円形導波管部の下方のマイクロ波電界分布を均一にして、均一なプラズマを生成して、均一なプラズマ処理を可能とする技術を提供できる。つまり、円偏波の軸比を最適値に制御することで、周方向に均一なプラズマを生成し、それにより均一なプラズマ処理を実現する。円形導波管部202の内部の円偏波軸比を直接モニタするための検出器が不要であり、実装が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例に係るプラズマ処理装置の概略全体構成を示す正面の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例に係るプラズマ処理装置の導波管の構成の詳細を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、実施例に係るプラズマ処理装置の導波管の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施例に係る円偏波発生器と円偏波調整器とを説明する図である。
【
図4】
図4は、チューナーでの反射係数|Γ|=0.3、∠Γ=60°の際での、スタブ挿入量に対する円形導波管内部の電界真円率の計算結果を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、チューナーでの反射係数|Γ|=0.2、∠Γ=180°の際での、スタブ挿入量に対する円形導波管内部の電界真円率の計算結果を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、チューナーでの反射係数|Γ|=0.4、∠Γ=150°の際での、スタブ挿入量に対する円形導波管内部の電界真円率の計算結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例に係るプラズマ処理装置のスタブ挿入量の調整の制御チャートを示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施例に係るプラズマ処理装置を用いて、スタブを挿入していない場合でのウェハエッチング量分布の実測値を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、実施例に係るプラズマ処理装置を用いて、スタブを最適位置まで調整した際のウェハエッチング量分布の実測値を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例および変形例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【実施例】
【0014】
図1は、実施例に係るプラズマ処理装置の概略全体構成を示す正面の断面図である。
図2は、実施例に係るプラズマ処理装置の導波管の構成の詳細を示す図である。
図3Aは、実施例に係るプラズマ処理装置の導波管の断面図である。
図3Bは、実施例に係る円偏波発生器と円偏波調整器とを説明する図である。
【0015】
まず、
図1に示すプラズマ処理装置100の構成について概要を説明する。プラズマ処理装置100は、高周波電源101、チューナー102と、導波管103と、円偏波発生器104と、円偏波調整器105と、制御部106と、処理室108と、を備える。
【0016】
導波管103は、真空容器と連結されプラズマ生成用の電界が伝搬する。導波管103は、
図2、
図3Aに示すように、断面が矩形(または、長方形)を有して最低次のモード(TM01モード)の電磁波が伝搬する矩形導波管部201と、断面が円形を有して内部を最低次のモード(TE11モード)の電磁波が伝搬する円形導波管部202と、矩形導波管部201と円形導波管部202を接続する円矩形変換部(円矩形変換器)203から構成される。
【0017】
高周波電源101は、マグネトロンであり、プラズマ生成のための高周波電力である電磁波を導波管103へ供給する。
【0018】
処理室108は、試料(ウェハ)がプラズマ処理される処理室であり、円形導波管部202の下方で真空容器120内に配置され、その内部に導波管103から電磁波が供給されてプラズマが形成される。
【0019】
円偏波発生器104は、円形導波管部202の内部に配置され、円偏波を発生する。
【0020】
円偏波調整器105は、円偏波補正器であり、円偏波発生器104の上方または下方に配置され円偏波の分布を調整する。
【0021】
チューナー102は、自動整合器であり、高周波電源101と導波管103の間に接続され、インピーダンスの整合をとることで導波管103側から高周波電源101側へ高周波電力が流入することを防ぐ。チューナー102は、矩形導波管部201に連結され、反射された電磁波に基づいて負荷側のインピーダンスを算出し、発振器側のインピーダンスと整合状態を達成する。つまり、チューナー102は、矩形導波管部201の円矩形変換部203とは逆の端に接続され、反射した電界を検出し、それに応じてインピーダンスの整合をとる。
【0022】
制御部106は、演算処理部106aと動作制御部106bとを含む。制御部106の演算処理部106aは、チューナー102に接続されており、チューナー102で測定された反射電磁波と、導波管103と円偏波発生器104と円偏波調整器105の散乱行列Sから、処理室108へ供給される円偏波の分布を計算する。制御部106の動作制御部106bは、演算処理部106aの計算した計算結果に基づいて、円偏波調整器105の動作を制御し、円偏波調整器105の挿入量を調整する。例えば、円偏波調整器105の挿入量の調整がモータで行われる場合、制御部106の動作制御部106bは、そのモータに接続され、そのモータの回転を制御することになる。円偏波調整器105がスタブとされる2本の棒状部材(例えば、第1スタブとしてのxスタブ105x、第2スタブとしてのyスタブ105y(
図3B参照))で構成される場合、モータはxスタブ105xの挿入量DXを調整する第1モータM1と、yスタブ105yの挿入量DYを調整する第2モータM2と、を含むように構成される。制御部106の動作制御部106bは、第1モータM1と第2モータM2とを個別に制御することができるように構成されている。
【0023】
言い換えると、制御部106は、自動整合器(チューナー)102で測定した反射電界と、自動整合器(チューナー)102の反射電界測定面FA1(
図1参照)と電界分布をモニタしたい面FA2(
図1参照)とを接続する電界伝搬領域の散乱行列Sとを用いて、電界分布を計算し、計算結果に基づく電界分布に応じて円偏波補正器(円偏波調整器)105の動作を制御する。
【0024】
これにより、自動整合器102により得られた反射電界と散乱行列Sとを用いて得られた電界分布とを基に、円偏波補正器105を最適な設定に制御し、導波管103の円形導波管202の下方の真空容器120内のマイクロ波電界分布を周方向に均一にして、周方向に均一なプラズマを処理室108内に生成できる。これにより、プラズマ処理装置100の処理室108内の試料109において、均一なプラズマ処理が可能にできる。
【0025】
さらに、
図1を用いて、本開示の第一の実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成を説明する。
図1に示すように、本実施例のプラズマ処理装置100では、高周波電源であるマグネトロン101から導波管103および誘電体窓107を通って処理室108に電磁波が供給される。ソレノイドコイル111は磁場を生成するための磁場生成機構である。前記電磁波と、ソレノイドコイル111によって生成した静磁場によってサイクロトロン運動する電子とが、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)することによりプラズマが生成される。例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波をプラズマ源として用いる場合、ソレノイドコイル111により処理室108内に0.0875テスラの静磁界を発生させることで、電子サイクロトロン共鳴現象が起こり、効率的にプラズマが生成される。
【0026】
また、処理室108内には試料109を載置するための試料台である基盤電極110が設けられている。基盤電極110には被処理試料109にバイアス電力を供給するための高周波電源115が整合器114を介して接続されている。
【0027】
処理室108には、バルブ116を介してガス供給部117に接続されており、処理室108内にガスが供給可能にされている。バルブ116の開度によってガスの供給量が制御される。
【0028】
処理室108の内部はバルブ112を介してポンプ113に接続されており、ガス供給部117から供給された処理室108内のガスが排気されている。バルブ112の開度によってガスの排気速度を制御することで、処理室108内部の圧力を一定値に調節できる。
【0029】
また、本プラズマ処理装置100はマグネトロン101と導波管103との間にチューナー102が設けられている。チューナー102では負荷側からの反射波の測定結果から負荷側のインピーダンスを計算し、高周波電源101側のインピーダンスと、導波管103から処理室108にかけての負荷側のインピーダンスの整合をとることで、効率よく負荷側に電磁波を供給している。
【0030】
制御部106は、さらに、マグネトロン101の高周波電源の制御、ソレノイドコイル111の磁場の制御、バルブ112、116の開度の制御、高周波電源115の制御などの制御も行うことができる。
【0031】
図2に導波管103の拡大図を記載する。導波管103は、断面が長方形の矩形導波管部201と、断面が円形の円形導波管部202と、前記矩形導波管部201と円形導波管部202とを接続する円矩形変換部203から構成される。矩形導波管部201は、最低次モードであるTM01モードの電磁波のみが、円形導波管部202は最低次モードであるTE11モードの電磁波のみがそれぞれ伝搬可能となる寸法とした。
【0032】
図2において、矩形導波管部201の一方の端部は自動整合器(チューナー)102に接続されている。自動整合器(チューナー)102の反射電界測定面FA1は、この例では、自動整合器(チューナー)102と矩形導波管部201の一方の端部との間に設定されている。矩形導波管部201の他方の端部は円矩形変換部203の一端に接続される。円矩形変換部203の他端は円形導波管部202の一端に接続され、円形導波管部202の他端は真空容器120に接続されている。電界分布をモニタしたい面FA2は、この例では、円形導波管部202の他端と真空容器120との間に設定されている。
【0033】
円形導波管部202には円偏波を発生させる円偏波発生器104が設置されている。
【0034】
ここで、円偏波について簡単に説明する。電磁波の電界ベクトルを円形導波管の中心軸上で定義したとき、電磁波の進行方向と電界ベクトルからなる面を偏波面と呼ぶ。この偏波面が時間的に回転し、かつ電界ベクトルの軌跡が真円となる電磁波を円偏波と定義する。一方、偏波面が時間的に回転しない電磁波を直線偏波と呼ぶ。円偏波は、偏波面が互いに直行する二つの直線偏波のうち、位相が90°異なるものを重ね合わせることで生成できる。
【0035】
上記の円偏波生成機構を用いた円偏波発生手段としては種々のものが従来から知られており、本開示においても、導波管103のうち石英窓としての誘電体窓107に接する面が円形であるという条件さえ満たせば任意のものを用いることができる。特に
図1のプラズマ処理装置100においては、導波管103内に誘電体製の板状の部材104が、円偏波発生器として、その面が導波管103と平行になるように導入されている。この構成では、導波管103の上部から導入された直線偏波に対し、円偏波発生器104の長手方向LO(
図3B参照)と平行方向成分に関しては、真空との誘電率の差によりその波長が縮小される。一方、円偏波発生器104の短手方向SO(
図3B参照)と平行方向成分に関しては、その波長は縮小されない。したがって、円偏波発生器104の、導波管103と平行方向の長さを最適に調整することで、直線偏波のうち、円偏波発生器104の長手方向LOと平行方向の成分と、円偏波発生器104の短手方向SOと平行方向の成分との間にちょうど90°の位相差を発生させることができ、円偏波発生器104の下方においてそれらが合成されることで円偏波を発生することができる。
【0036】
円偏波の軸比を制御する円偏波補正手段としては種々のものが従来から知られており、本開示においても任意のものを用いることができる。
図2、
図3Bに示すように、本実施例においては、円偏波補正器105としてスタブと呼ばれる二本の棒状部材105を円形導波管部202に互いに垂直になるように取り付け、その挿入量(DX、DY)をそれぞれ制御することにより、円偏波の電界真円率を調整するという手法を用いた。円偏波補正器105は、円偏波発生器104の上方の第1位置Pa、または、円偏波発生器104の下方の第2位置Pb、に設置ことができる。
【0037】
図3Bに示すように、この例では、円偏波補正器である二本のスタブ105のうち,一方を円偏波発生器104の長手方向LOと平行に設置する。このスタブ105を以下ではxスタブ(105x、第1スタブ)と呼ぶ。また、円偏波補正器である二本のスタブ105のうち,もう片方のスタブ105を円偏波発生器104の短手方向SOと平行に設置する。このスタブ105を以下ではyスタブ(105y、第2スタブ)と呼ぶ。なお、xスタブ(105x)やyスタブ(105y)の設置方向は、円偏波発生器104の長手方向LOおよびの短手方向SOと関係なく設定することも可能である。つまり、xスタブ(105x)は、第1方向Xに沿ってその長手方向が設けられており、第1モータM1によってその挿入量DXが制御されるように、円形導波管部202の内部に第1方向Xに沿って挿入可能に設定されている。一方、yスタブ(105y)は、第1方向Xと交差又は直交する第2方向Yに沿ってその長手方向が設けられており、第2モータM2によってその挿入量DXが制御されるように、円形導波管部202の内部に第2方向Yに沿って挿入可能に設定されている。つまり、スタブ105(105x、105y)の挿入量(DX、DY)は調整可能にされている。
【0038】
スタブ105の制御手段について説明する。本開示では、円形導波管部202の内部の電界真円率を計算し、計算した電界真円率が改善するようにスタブ105(105x、105y)の挿入量(DX、DY)を制御する。
【0039】
電界真円率の計算方法を
図3Aを用いて説明する。矩形導波管部201の内部はTM01モードの電磁波のみが伝搬するため、チューナー102に接続する面(反射電界測定面FA1に対応する)での電界成分はA軸の1方向成分に限られる。また、円形導波管部202の内部はTE11モードの電磁波のみが伝搬するため、互いに直行する2つの軸、B軸とC軸で考えたときに、2方向成分で電界ベクトルが記述できる。
【0040】
矩形導波管部201のチューナー102との接続面(FA1)をポート1、円形導波管部202の下端(電界分布をモニタしたい面FA2に対応する)において、B軸成分をポート2、C軸成分をポート3とする。このとき、ポート1とポート2、ポート3それぞれにおける入射波をai、反射波をbi(ここで、iは、ポートの番号:1,2,3である)と置くと、これらの関係は散乱行列Sを用いて(式1)に示すように記述できる。
【0041】
【0042】
ここで散乱行列Sとは、一般に始状態と終状態の関係を記述する行列であり、特に本開示においては、ポートにおける入射波と反射波の関係を記述する行列である。つまり、散乱行列Sは、チューナー102の反射電界測定面FA1と電界分布をモニタしたい面FA2とを接続する電界伝搬領域の散乱行列とされる。
【0043】
チューナー102で測定している電磁波の反射係数Γは,ポート1における入射波と反射波の比に相当する。したがって、反射係数Γを用いて入射波a1と反射波b1の関係は(式2)のように記述できる。
【0044】
b1=Γa1 (式2)
円形導波管部202の下端での反射係数Rを用いて,入射波a2と反射波b2および入射波a3と反射波b3の関係はそれぞれ(式3)と(式4)で記述できる。
【0045】
a2=Rb2 (式3)
a3=Rb3 (式4)
ここで,磁化プラズマの反射係数Rはテンソルとなる。ただし,反射係数Rをテンソルで表現する場合,方程式の数に対して未知数の数が多くなり,連立方程式を解くことができなくなる。したがって,本開示では磁化プラズマでの反射係数Rをスカラー値で近似している。
【0046】
ポート1における入射波を1と置き,(式1)~(式4)を用いることで,(式5)を得る。
【0047】
【0048】
(式5)はa2、a3、Rの3つの未知数に対し、3つの式の連立方程式となっている。したがって(式5)を解くことによって、チューナー102での電磁波の反射係数Γから、円形導波管部202の内部の電界真円率を求めることができる。
【0049】
その後、円形導波管部202の内部の電界真円率が改善するスタブ105(105x、105y)の挿入量(DX、DY)を制御部106で算出し、その結果に基づいてスタブ105(105x、105y)の挿入量(DX、DY)を調整する。
【0050】
ただし、スタブ105(105x、105y)の挿入量(DX、DY)が変化することで、導波管103の散乱係数Sと反射係数Γが変化する。したがって、本開示では、スタブ105(105x、105y)の挿入量(DX、DY)を徐々に変化させ、その都度変化した散乱係数Sを用いて(式1)~(式4)、(式5)の計算をもう一度実行し、電界真円率を算出するのが良い。
【0051】
以上のスタブ105(105x、105y)の操作を、電界真円率の算出値が所望の値以上になるまで繰り返すことにより、電界真円率の目標値を達成することができる。
【0052】
散乱行列Sはシミュレーション、あるいは事前の計測によって取得が可能である。散乱行列Sは、導波管103の構成により変化するが、導波管103の構成が決定されれば、決定されることになる。散乱行列Sは、制御部106の記憶領域に格納されたデータベース内に記憶させておくのが良い。
【0053】
図4は、チューナーでの反射係数|Γ|=0.3、∠Γ=60°の際での、スタブ挿入量(DX、DY)に対する円形導波管部202の内部の電界真円率の計算結果を示す図である。有限要素法のシミュレーションを用いて散乱行列Sを取得し、二本のスタブ105(105x、105y)それぞれの挿入量(DX、DY)に対する電界真円率を計算したものを、
図4に示す。
図4は横軸xがxスタブ(105x)の挿入量DX,縦軸yがyスタブ(105y)の挿入量DY,コンター(等高線)が電界真円率を示す。スタブ挿入量はm単位で示しており、x、yどちらも最大挿入量は80mmである。また,
図4はチューナー102での電磁波の反射係数の大きさ|Γ|が0.3、位相∠Γが60°の場合における電界真円率の結果を示している。
【0054】
図4から,xスタブ(105x)を35mm、yスタブ(105y)を20mm挿入した点において、電界真円率が最も高くなることがわかる。
【0055】
ただし、前述のとおり、スタブ105の挿入量(DX、DY)を変化させた際には導波管103の散乱行列Sと反射係数Γの値が変化する。したがって、スタブ105を挿入していない時点での反射係数Γから導かれる最適スタブ挿入量までいきなりスタブ105を変化させた場合、最適スタブ挿入量が達成されない可能性がある。
【0056】
実際の測定結果を用いて説明を行う。
図5Aは、チューナーでの反射係数|Γ|=0.2、∠Γ=180°の際での、スタブ挿入量に対する円形導波管部202の内部の電界真円率の計算結果を示す図である。
図5Bは、チューナーでの反射係数|Γ|=0.4、∠Γ=150°の際での、スタブ挿入量に対する円形導波管部202の内部の電界真円率の計算結果を示す図である。
図5Aおよび
図5Bにおいて、スタブ挿入量はm単位で示している。
【0057】
図5Aにスタブ105を挿入していない場合(|Γ|=0.2、∠Γ=180度)における、スタブ挿入量(DX、DY)と電界真円率の関係を示す。
図5Aから、xスタブ(105x)を70mm挿入し、yスタブ(105y)を20mm挿入することで、最適な電界真円率が達成されることがわかる。しかし、実際にxスタブ(105x)を70mm挿入し、yスタブ(105y)を20mm挿入すると、スタブ105での電界反射などの影響により、チューナー102における反射係数Γが、|Γ|=0.4、∠Γ=150°に変化する。この場合のスタブ挿入量と電界真円率の関係を
図5Bに示す。このとき最適なスタブ挿入量はxスタブ40mm、yスタブ15mmであり、最適なスタブ挿入量が達成されていないことがわかる。
【0058】
以上のように、チューナー102における電磁波の反射係数Γとスタブ挿入量(DX、DY)とは独立した変数ではなく、互いに影響する。したがって、スタブ105(105x、105y)を挿入していない時点での反射係数Γから求まる最適値までスタブ挿入量を変化させても、最適な電界真円率は達成できず、制御機構を要する。
【0059】
図6は、実施例に係るプラズマ処理装置のスタブ挿入量の調整の制御チャートを示す図である。
図6を用いて、チューナー102での反射係数Γの測定値によるスタブ挿入量の制御チャートを説明する。
【0060】
(ステップS1)
まず、制御部106は、チューナー102で計測された反射電磁波の反射係数Γの測定値を取得する。
【0061】
(ステップS2)
制御部106は、制御部106のデータべース内から導波管103の散乱行列Sを取得する。
【0062】
(ステップS3)
制御部106は、取得した反射係数Γと散乱行列Sから電界真円率を求める。そして、制御部106は、電界真円率が改善するスタブ105の挿入量(DX、DY)を算出し、その算出結果に基づいて、モータM1,M2を制御して、スタブ105の挿入量(DX、DY)を調整する。つまり、制御部106は、電界真円率が改善するスタブ挿入量(DX、DY)を計算して、スタブ挿入量を予測する。
【0063】
(ステップS4)
制御部106は、スタブ挿入量(DX、DY)が最適否かを判断する。スタブ挿入量(DX、DY)が最適な場合(Yes)、制御チャートを終了する。一方、スタブ挿入量(DX、DY)が最適ではない場合(No)、ステップS5へ移行する。
【0064】
(ステップS5)
次に、制御部106は、スタブ105の挿入量(DX、DY)を制御することで、スタブ挿入量を微調整する(つまり、第1モータM1,第2モータM2が制御部106により制御される)。そして再度、ステップS1-S3を繰り返す。このとき、制御部106は、スタブ挿入量(DX、DY)である制御量を徐々に変化させ、その都度、反射係数Γを参照して最適なスタブ挿入量を更新する。
【0065】
以上の操作(S1~S5)を繰り返し行い、現在のスタブ105のスタブ挿入量(DX、DY)が最適なスタブ挿入量に一致した時点で制御チャートを終了する。
【0066】
実際に電界真円率の計算結果を用いてスタブ挿入量を調整した場合のウェハ加工結果を
図7A,
図7Bを用いて説明する。
図7Aは、実施例に係るプラズマ処理装置を用いて、スタブを挿入していない場合でのウェハエッチング量分布の実測値を示す図である。
図7Bは、実施例に係るプラズマ処理装置を用いて、スタブを最適位置まで調整した際のウェハエッチング量分布の実測値を示す図である。
【0067】
図7A,7Bでは、2.45GHzマイクロ波を真空処理室に供給し、電子サイクロトロン共鳴によって生成したプラズマを用いて、半導体デバイスの材料である30mmウェハをエッチングするマイクロ波プラズマエッチング装置を用いた実験結果であり、コンターはある時間幅におけるウェハ表面のエッチング量の大きさを表している。また、エッチング量が等しいラインを等高線で示している。
【0068】
図7Aはスタブを挿入していない場合のエッチング結果である。スタブを挿入していない状態においては、チューナーの反射係数Γから計算した電界真円率の値は0.38である。また、エッチング結果をみると、エッチング量のピークがウェハの中心からずれており、ウェハ周方向において不均一な分布であることがわかる。
【0069】
ここで、エッチング量の分布を定量的に評価するための値として、ウェハ半径100mmにおけるエッチング量の均一性Uを(式6)で定義する。
【0070】
U=((最大値-最小値)/(最大値+最小値))×100% (式6)
均一性Uの値が大きいほどエッチング量の分布は周方向で不均一であることを表し、0に近いほど均一であることを表す。
【0071】
以上の(式6)を用いると、
図7Aのエッチング量の均一性Uは、U=2.4%と表される。
【0072】
次に本開示で提案した手法を用いてスタブ挿入量を調整し,エッチング量の分布を取得したときの結果を
図7Bに示す。この時、スタブ挿入量はxスタブ70mm、yスタブ15mmであり、チューナー102で測定した反射係数Γから求めた電界真円率は0.59であった。この電界真円率の値は、制御前の電界真円率の値0.38と比較して改善している。(式6)で定義したエッチング量の均一性Uを計算すると、U=0.7%である。したがって、本開示で提案した手法によってスタブ105を制御した結果、エッチング量の分布が2.4%から0.7%まで改善したことがわかる。
【0073】
以上の様に、チューナー102により得られた反射電界と散乱行列Sとを用いて得られた電界分布を基に、スタブ105を最適な設定に制御することで、導波管103の円形導波管部202の内部のマイクロ波電界分布を均一にできるので、導波管103の下方の処理室108内のマイクロ波電界分布を均一にできる。これにより、均一なプラズマを処理室108内に生成できるので、プラズマ処理装置100においてウェハに対し均一なプラズマ処理が可能にできる。特に、ウェハの中心に対して周方向に均一なプラズマを処理室108内に生成できるので、プラズマ処理装置100においてウェハの周方向に均一なプラズマ処理が可能にできる。
【0074】
次に、
図8を用いて、プラズマ処理装置100を用いたウェハ(半導体ウェハ)のプラズマ処理方法を説明する。
図8は、実施例に係るプラズマ処理装置100を用いたプラズマ処理方法を示す図である。
【0075】
(ステップS10)
ます、プラズマ処理装置100において、
図6で説明したスタブ挿入量の制御チャートが実施される。これにより、均一なプラズマを処理室108内に生成できるように、スタブ105が最適な設定に制御される。ステップS10は、第1工程ともいう。
【0076】
(ステップS11)
処理室108の内部に、半導体ウェハである試料109が搬入され、試料109が試料台である基盤電極110の上に載置される。ステップS11は、第2工程とも言う。
【0077】
(ステップS12)
次に、処理室108の内部に、プラズマが生成され、試料109がプラズマにより加工処理される。このプラズマ加工処理は、例えば、エッチング処理、成膜処理などである。エッチング処理の場合、ガス供給部117から処理室108の内部にエッチング用のガスが供給される。また、成膜処理の場合、ガス供給部117から処理室108の内部に成膜用のガスが供給される。エッチング用のガスや成膜用のガスは、公知のガスを利用することが可能なので、詳しい説明は、省略することとする。ステップS12は、第3工程とも言う。
【0078】
(ステップS13)
次に、処理室108の内部から、半導体ウェハである試料109が搬出される。ステップS13は、第4工程とも言う。
【0079】
これにより、半導体ウェハ109に対するプラズマ加工処理のプラズマ処理方法が終了する。したがって、マイクロ波電界分布が均一にされたプラズマ処理装置100の処理室108内において、半導体ウェハ109がプラズマによる加工処理が行われるので、均一なプラズマ処理が可能にできる。特に、半導体ウェハ109の中心に対して周方向に、均一にされたプラズマ加工処理を行うことができる。
【0080】
図8のステップSAで示すように、ステップS10を実施した後、ステップS11~S13を繰り返して複数の半導体ウェハ109のプラズマ処理を行ことができる。つまり、プラズマ処理装置100の導波管103の構成が決定されれば散乱行列Sが決定されるので、ステップS10を1回実施することで、半導体ウェハ109に対して均一なプラズマ処理が可能にできる。
【0081】
(変形例)
図9は、の変形例に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法を示す図である。
図9に示す変形例のプラズマ処理方法が
図8の実施例のプラズマ処理方法と異なる点は、ステップS11(第2工程)とステップS12(第3工程)との間に、
図6に示すスタブ挿入量の制御チャートが実施されるステップS20(ステップS20は第5工程とも言う)が追加されていることである。ステップS20は、ステップS10と同様に、スタブ挿入量の制御チャート工程である。
【0082】
したがって、ステップSBで示すように、ステップS11、S20、S12、S13を繰り返して複数の半導体ウェハ109をプラズマ処理する場合、繰り返しのたびに、ステップS20が行われることとなる。この様に、繰り返しのたびに、ステップS20が毎回行われるので、導波管103の円形導波管部202の内部のマイクロ波電界分布をさらに均一にできるので、導波管103の下方の処理室108の内部のマイクロ波電界分布をさらに均一にできる。これにより、さらに均一なプラズマを処理室108内に生成できるので、プラズマ処理装置100において半導体ウェハ109に対してさらに均一なプラズマ処理が可能にできる。
【0083】
以上、本開示を実施例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
100:プラズマ処理装置、102:チューナー(自動整合器)、103:導波管、104:円偏波発生器、105:円偏波調整器(円偏波補正器)、106:制御部、108:処理室、109:試料(半導体ウェハ)、110:基盤電極(試料台)