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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/28 20140101AFI20250213BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20250213BHJP
   B23K 26/22 20060101ALI20250213BHJP
   B23K 26/244 20140101ALI20250213BHJP
【FI】
B23K26/28
B23K26/082
B23K26/22
B23K26/244
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021154112
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2022055339
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2020162342
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸男
(72)【発明者】
【氏名】都藤 智仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖也
(72)【発明者】
【氏名】平岡 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】日高 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 元道
(72)【発明者】
【氏名】門 格史
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-207190(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104994988(CN,A)
【文献】特開2020-62682(JP,A)
【文献】特開2010-82655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/28
B23K 26/082
B23K 26/22
B23K 26/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに当接または近接して配置された複数の金属部材をレーザ溶接により接合するレーザ溶接方法であって、
レーザ光を発振し、当該発振された前記レーザ光を、前記配置の外側に位置する第1金属部材の第1主面における溶接箇所に集光するレーザ光照射ステップと、
前記レーザ光のスポットを、前記第1主面内で走査する走査ステップと、
を備え、
前記走査ステップは、
前記レーザ光のスポットを所定箇所の周りを周回するように走査して金属部材を溶融させた平面視ドット状のドット状溶接部を形成するドット部形成サブステップと、
前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続する平面視直線状の直線状溶接部を形成する直線部形成サブステップと、
を有し、
溶接後の前記複数の金属部材は、前記第1主面に沿う第1方向に応力が作用するように外力が付加されるものであって、
前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部が前記第1方向に延びるように、前記レーザ光のスポットを走査する、
レーザ溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
前記ドット部形成サブステップでは、前記ドット状溶接部の外周部分での前記レーザ光の照射による入熱量が、前記外周部分よりも内側の内周部分の入熱量よりも多くなるようにする、
レーザ溶接方法。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ溶接方法において、
前記外周部分での前記レーザ光の照射密度が、前記内周部分での前記レーザ光の照射密度よりも高くなるように前記走査を行い、当該照射密度の差異により前記外周部分での入熱量が前記内周部分での入熱量よりも多くなるようにする、
レーザ溶接方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載のレーザ溶接方法において、
前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部のうち前記ドット状溶接部の前記外周縁との交点を含む起点部分での入熱量が、前記起点部分から離間した部分である離間部分での入熱量よりも多くなるようにする、
レーザ溶接方法。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ溶接方法において、
前記起点部分での前記レーザ光の照射密度が、前記離間部分での前記レーザ光の照射密度よりも高くなるように前記走査を行い、当該照射密度の差異により前記起点部分での入熱量が前記離間部分での入熱量よりも多くなるようにする、
レーザ溶接方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のレーザ溶接方法において、
前記起点部分でのレーザ出力が、前記離間部分でのレーザ出力よりも高くなるようにすることにより、当該レーザ出力の差異により前記起点部分での入熱量が前記離間部分での入熱量よりも多くなるようにする、
レーザ溶接方法。
【請求項7】
請求項2から請求項6の何れかに記載のレーザ溶接方法において、
前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部の長さが前記ドット状溶接部の直径よりも長くなるように、前記直線状溶接部を形成する、
レーザ溶接方法。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部の長さが前記ドット状溶接部の直径よりも短くなるように、前記直線状溶接部を形成する、
レーザ溶接方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載のレーザ溶接方法において、
前記直線状溶接部を第1直線状溶接部とするとき、
前記直線部形成サブステップでは、前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続するとともに、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる平面視直線状の第2直線状溶接部も形成し、
前記第1直線状溶接部の幅方向の中心に長手方向に沿って延びる第1仮想中心線を引き、前記第2直線状溶接部の幅方向の中心に長手方向に沿って延びる第2仮想中心線を引くとき、前記第1仮想中心線と前記第2仮想中心線とは、前記ドット状溶接部が形成された領域で互いに交差する、
レーザ溶接方法。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れかに記載のレーザ溶接方法において、
溶接後の前記複数の金属部材は、前記第1主面に沿うとともに、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に応力が作用するように外力が付加され、
前記直線状溶接部を第1直線状溶接部とするとき、
前記直線部形成サブステップでは、前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続するとともに、前記第2方向に延びる平面視直線状の第2直線状溶接部も形成し、
前記直線部形成サブステップでは、前記第1直線状溶接部の長さが前記第2直線状溶接部の長さよりも長くなるように、前記第1直線状溶接部および前記第2直線状溶接部を形成する、
レーザ溶接方法。
【請求項11】
互いに当接または近接して配置された複数の金属部材をレーザ溶接により接合するレーザ溶接装置であって、
レーザ光を発振するレーザ発振器と、
前記レーザ光を、前記配置の外側に位置する第1金属部材の第1主面における溶接箇所に集光する集光部と、
前記レーザ光のスポットを、前記第1主面内で走査する走査部と、
前記レーザ発振器および前記走査部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記レーザ発振器に対して前記レーザ光を発振させた状態で、
前記レーザ光のスポットを所定箇所の周りを周回するように走査して金属部材を溶融させた平面視ドット状のドット状溶接部を形成する処理と、
前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドッ
ト状溶接部に連続する平面視直線状の直線状溶接部を形成する処理と、
を実行し、
溶接後の前記複数の金属部材は、前記第1主面に沿う第1方向に応力が作用するように外力が付加されるものであって、
前記制御部は、前記直線状溶接部を形成する処理の実行において、前記前記直線状溶接部が前記第1方向に延びるように、前記走査部に対して前記レーザ光のスポットを走査させる、
レーザ溶接装置。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザ溶接装置において、
前記制御部は、前記ドット状溶接部を形成する処理の実行において、前記ドット状溶接部の外周部分での前記レーザ光の照射による入熱量が、前記外周部分よりも内側の内周部分の入熱量よりも多くなるように、前記レーザ発振器および前記走査部を制御する、
レーザ溶接装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のレーザ溶接装置において、
前記制御部は、前記直線状溶接部を形成する処理の実行において、前記直線状溶接部のうち前記ドット状溶接部の前記外周縁との交点を含む起点部分での入熱量が、前記起点部分から離間した部分である離間部分での入熱量よりも多くなるように、前記レーザ発振器および前記走査部を制御する、
レーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士の接合には、レーザ溶接技術が用いられる場合がある。レーザ溶接技術を用いた金属部材の接合は、金属部材同士を当接または近接させた領域に対してレーザ光を照射し、金属部材の一部を溶融させ凝固させることでなされる。
【0003】
特許文献1には、レーザ溶接技術を用いて、重ね合わせた鋼板同士を接合する方法が開示されている。特許文献1に開示のレーザ溶接方法では、鋼板同士が重なり合うラップ領域に対して一方の鋼板側からレーザ光を照射し、レーザ光のスポットが所定箇所の周りを周回するようにレーザ光を走査して平面視ドット状の溶接部を形成している。
【0004】
また、特許文献1に開示の溶接方法では、上記のように平面視ドット状の溶接部を形成した後に、当該溶接部の最外周に再びレーザ光を照射して溶接部の周辺部分の焼き鈍し処理を行っている。特許文献1では、この焼き鈍し処理を行うことによって、接合強度の向上が図れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-153851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ溶接方法を用いた金属部材の接合においては、さらなる接合強度の向上が求められている。これに対して、例えば、上記特許文献1に開示された技術においてドット状溶接部の直径を大きくすれば(ドット状溶接部の面積を拡大すれば)接合強度を向上できるとも考えられる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術でドット状溶接部の直径を大きくする場合には、溶け落ちが生じ易くなる。中でも、溶接領域において金属部材間に間隙が空いている場合には、溶け落ちが特に発生し易い。よって、接合強度の向上のためにドット状溶接部の直径を大きくすることは現実には困難であると考えられる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、金属部材同士の接合強度のさらなる向上を図ることができるレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るレーザ溶接方法は、互いに当接または近接して配置された複数の金属部材をレーザ溶接により接合するレーザ溶接方法であって、レーザ光を発振し、当該発振された前記レーザ光を、前記配置の外側に位置する第1金属部材の第1主面における溶接箇所に集光するレーザ光照射ステップと、前記レーザ光のスポットを、前記第1主面内で走査する走査ステップと、を備える。
【0010】
前記走査ステップは、前記レーザ光のスポットを所定箇所の周りを周回するように走査して金属部材を溶融させた平面視ドット状のドット状溶接部を形成するドット部形成サブ
ステップと、前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続する平面視直線状の直線状溶接部を形成する直線部形成サブステップと、を有する。
【0011】
ここで、金属部材は、前記第1主面に沿う第1方向に応力が作用するように外力が付加されるものである。本態様に係るレーザ溶接方法では、上記の応力作用方向を考慮して、前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部が前記第1方向に延びるように、前記レーザ光のスポットを走査する。
【0012】
本態様に係るレーザ溶接方法では、レーザ光照射ステップおよび走査ステップの実行により複数の金属部材をレーザ溶接で接合するので、抵抗溶接で接合する場合に比べて、溶接速度が速く、熱影響が少ない。また、本態様に係るレーザ溶接方法では、金属部材に対して非接触で金属部材間の接合を行うことができるので、加工効率が高く、連続溶接による剛性アップを図ることができる。
【0013】
また、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット部形成サブステップにおいて、レーザ光のスポットを周回させて当該部分の金属を溶融・攪拌し、直線部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部の金属が溶融した状態で直線状溶接部を形成するので、仮に金属部材同士の間に間隙が空いていた場合にも、ドット状溶接部の溶融金属の一部が直線状溶接部を形成しようとする金属部材同士の間隙に流れ込むようにすることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接方法では、金属部材同士の間に間隙が空いている場合であっても、えぐれや溶け落ちといった問題が発生するのを抑制することができる。
【0014】
また、本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、溶接後の複数の金属部材に作用する応力の方向(第1方向)に向けて延びるように直線状溶接部を形成するので、溶接後の複数の金属部材に対して外部から加わる荷重に対する強度を高めることができる。特に、本態様に係るレーザ溶接方法では、溶接後における複数の金属部材において、高い引張せん断強度を実現することができる。
【0015】
さらに、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部に連続する直線状溶接部を形成するので、上記特許文献1に開示の技術のように、ドット状溶接部だけで溶接部を構成する場合に比べて、ドット状溶接部の直径(ドット状溶接部の平面視での面積)を大きくしなくても、さらなる接合強度の向上を図ることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接方法では、溶接時間が長くなるのを防ぎ、溶け落ちの発生を抑制しながら、さらなる接合強度の向上を図ることができる。
【0016】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記ドット部形成サブステップでは、前記ドット状溶接部の外周部分での前記レーザ光の照射による入熱量が、前記外周部分よりも内側の内周部分の入熱量よりも多くなるようにしてもよい。
【0017】
本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部における外周部分の形成に係る入熱量が内周部分の形成に係る入熱量よりも多くなるようにしている。このため、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部の形成に続く直線部形成サブステップの実行において、ドット状溶接部における少なくとも外周部分の金属溶融状態を維持し易い。換言すると、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部の少なくとも外周部分の金属が凝固するまでの時間を長くすることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部の外周部分で溶融状態の金属を良好に直線状溶接部に流し込むことができ、高い強度での接合を実現するのに有効である。なお、本態様に係るレーザ溶接方法では、直線状溶接部に流れ込む金属の量を確保し易いので、金属部材間に間隙があるような場合であっても、当該間隙に溶融金属を十分に充填できることから、溶け落ちの発生を回避するのにも有効である。
【0018】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記外周部分での前記レーザ光の照射密度が、前記内周部分での前記レーザ光の照射密度よりも高くなるように前記走査を行い、当該照射密度の差異により前記外周部分での入熱量が前記内周部分での入熱量よりも多くなるようにしてもよい。
【0019】
本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット部形成サブステップにおいて、外周部分でのレーザ光の照射密度を内周部分よりも高くなるようにすることで、外周部分での入熱量が内周部分よりも多くなるようにしている。この場合においても、上記態様に係るレーザ溶接方法と同様に、ドット状溶接部の外周部分での金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部に流れ込む金属の量を確保し易い。よって、本態様に係るレーザ溶接方法でも、高い強度での接合を実現することができるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0020】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部のうち前記ドット状溶接部の前記外周縁との交点を含む起点部分での入熱量が、前記起点部分から離間した部分である離間部分での入熱量よりも多くなるようにしてもよい。
【0021】
本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成ステップの実行において、ドット状溶接部の外周縁との交点を含む起点部分での入熱量を離間部分での入熱量よりも多くしている。このため、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部の形成に続く直線部形成サブステップの実行において、ドット状溶接部の外周部分の金属溶融状態を維持し易い。換言すると、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部の少なくとも外周部分の金属が凝固するまでの時間を長くすることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部の外周部分で溶融状態の金属を良好に直線状溶接部に流し込むことができ、高い強度での接合を実現するのに有効である。
【0022】
なお、本態様に係るレーザ溶接方法では、上記態様に係るレーザ溶接方法のようにドット状溶接部の形成時に、外周部分全周での入熱量を内周部分での入熱量よりも多くする必要は必ずしもない。即ち、本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて起点部分の入熱量を多くすることで、ドット部形成サブステップにおいて外周部分の入熱量を必ずしも全周において多くしなくても、溶融金属を直線状溶融部に良好に流し込むことができ、溶け落ちの発生を回避するのに有効である。
【0023】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記起点部分での前記レーザ光の照射密度が、前記離間部分での前記レーザ光の照射密度よりも高くなるように前記走査を行い、当該照射密度の差異により前記起点部分での入熱量が前記離間部分での入熱量よりも多くなるようにしてもよい。
【0024】
本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、起点部分でのレーザ光の照射密度を離間部分よりも高くなるようにすることで、起点部分での入熱量が離間部分よりも多くなるようにしている。この場合においても、上記態様に係るレーザ溶接方法と同様に、直線状溶接部の起点部分におけるドット状溶接部の金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部に流れ込む金属の量を確保し易い。よって、本態様に係るレーザ溶接方法でも、高い強度での接合を実現することができるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0025】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記起点部分でのレーザ出力が、前記離間部分でのレーザ出力よりも高くなるようにすることにより、当該レーザ出力の差異により前記起点部分での入熱量が前記離間部分での入熱量よりも多くなるようにしてもよい。
【0026】
本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、起点部分でのレーザ出力を離間部分よりも高くなるようにすることで、起点部分での入熱量が離間部分よりも多くなるようにしている。この場合においても、上記態様に係るレーザ溶接方法と同様に、直線状溶接部の起点部分(ドット状溶接部の外周縁)での金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部に流れ込む金属の量を確保し易い。よって、本態様に係るレーザ溶接方法でも、高い強度での接合を実現することができるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0027】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部の長さが前記ドット状溶接部の直径よりも長くなるように、前記直線状溶接部を形成してもよい。
【0028】
本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、直線状溶接部の長さがドット状溶接部の直径よりも長くなるようにしているので、溶接後において複数の金属部材に作用する応力に対する強度をさらに高くすることができる。
【0029】
なお、本態様に係るレーザ溶接方法のように、直線状溶接部の長さをドット状溶接部の直径よりも長くしようとする場合には、ドット状溶接部における外周部分の入熱量を内周部分よりも多くしたり、直線状溶接部における起点部分の入熱量を離間部分よりも多くしたりして、直線状溶融部に流れ込む溶融金属の量を多く確保することが特に有効である。
【0030】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記直線部形成サブステップでは、前記直線状溶接部の長さが前記ドット状溶接部の直径よりも短くなるように、前記直線状溶接部を形成してもよい。
【0031】
本態様に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、直線状溶接部の長さがドット状溶接部の直径よりも短くなるようにしているので、ドット状溶接部における外周部分の入熱量を内周部分よりも多くしたり、直線状溶接部における起点部分の入熱量を離間部分よりも多くしたりしなくても、溶け落ちの発生を抑制することができる。
【0032】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、前記直線状溶接部を第1直線状溶接部とするとき、前記直線部形成サブステップでは、前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続するとともに、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる平面視直線状の第2直線状溶接部も形成し、前記第1直線状溶接部の幅方向の中心に長手方向に沿って延びる第1仮想中心線を引き、前記第2直線状溶接部の幅方向の中心に長手方向に沿って延びる第2仮想中心線を引くとき、前記第1仮想中心線と前記第2仮想中心線とは、前記ドット状溶接部が形成された領域で互いに交差するようにしてもよい。
【0033】
本態様に係るレーザ溶接方法では、第1仮想中心線と第2仮想中心線とがドット状溶接部が形成された領域で互いに交差するようにしているので、直線状溶接部の方向以外の応力に対しての強度差を解消することができる。よって、本態様に係るレーザ溶接方法では、高い強度での接合にさらに有効である。
【0034】
上記態様に係るレーザ溶接方法において、溶接後の前記複数の金属部材は、前記第1主面に沿うとともに、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に応力が作用するように外力が付加され、前記直線状溶接部を第1直線状溶接部とするとき、前記直線部形成サブステップでは、前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続するとともに、前記第2方向に延びる平面視直線状の第2直線状溶接部も形成し、前記直線部形成サブステップでは、前記第1直線状溶接部の長さが前記第2直線状溶接部の長さよりも長くなるように、前記第1直線状溶接部および前記第2直線状溶接部を形成してもよい。
【0035】
本態様に係るレーザ溶接方法では、応力が作用する方向(第1方向、第2方向)ごとに第1方向に延びる第1直線状溶接部と第2方向に延びる第2直線状溶接部を形成する。そして、本態様に係るレーザ溶接方法では、第1直線状溶接部の長さを第2直線状溶接部の長さよりも長くしている、このように第1直線状溶接部と第2直線状溶接部の長さを変えることで、例えば、第1方向に作用する応力の大きさが第2方向に作用する応力の大きさよりも大きい場合にも、不要に溶接時間を長くすることなく、高い強度での接合が可能となる。
【0036】
ここで、複数の直線状溶接部の形成に際して、作用する応力のうち最も大きな応力で全ての直線状溶接部の長さを一律に規定することも考えられる。しかし、この場合には、溶接時間が長くなってしまい生産性が低下してしまう。これに対して、本態様に係るレーザ溶接方法では、大きな応力が作用する第1方向に延びる第1直線状溶接部の長さを長くし、小さな応力が作用する第2方向に延びる第2直線状溶接部の長さを短くするので、高い接合強度の確保と高い生産性の確保とを両立することができる。
【0037】
本発明の一態様に係るレーザ溶接装置は、互いに当接または近接して配置された複数の金属部材をレーザ溶接により接合するレーザ溶接装置であって、レーザ光を発振するレーザ発振器と、前記レーザ光を、前記配置の外側に位置する第1金属部材の第1主面における溶接箇所に集光する集光部と、前記レーザ光のスポットを、前記第1主面内で走査する走査部と、前記レーザ発振器および前記走査部を制御する制御部と、を備える。
【0038】
前記制御部は、前記レーザ発振器に対して前記レーザ光を発振させた状態で、前記レーザ光のスポットを所定箇所の周りを周回するように走査して金属部材を溶融させた平面視ドット状のドット状溶接部を形成する処理と、前記ドット状溶接部における金属部材が溶融状態の間に、前記レーザ光のスポットを前記ドット状溶接部の外周縁から離間するように走査して金属部材を溶融させた、前記ドット状溶接部に連続する平面視直線状の直線状溶接部を形成する処理とを実行する。
【0039】
ここで、溶接後の前記複数の金属部材は、前記第1主面に沿う第1方向に応力が作用するように外力が付加されるものである。本態様に係るレーザ溶接装置では、上記の応力作用方向を考慮して、前記制御部は、前記直線状溶接部を形成する処理の実行において、前記直線状溶接部が前記第1方向に延びるように、前記走査部に対して前記レーザ光のスポットを走査させる。
【0040】
本態様に係るレーザ溶接装置では、複数の金属部材をレーザ溶接で接合するので、抵抗溶接で接合する場合に比べて、溶接速度が速く、熱影響が少ない。また、本態様に係るレーザ溶接装置では、金属部材に対して非接触で金属部材間の接合を行うことができるので、加工効率が高く、連続溶接による剛性アップを図ることができる。
【0041】
また、本態様に係るレーザ溶接装置では、制御部が走査部を制御することで、レーザ光のスポットを周回させて当該部分の金属を溶融・攪拌し、ドット状溶接部の金属が溶融した状態で直線状溶接部を形成するので、仮に金属部材同士の間に間隙が空いていた場合にも、ドット状溶接部の溶融金属の一部が直線状溶接部を形成しようとする金属部材同士の間隙に流れ込むようにすることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接装置では、金属部材同士の間に間隙が空いている場合であっても、えぐれや溶け落ちといった問題が発生するのを抑制することができる。
【0042】
また、本態様に係るレーザ溶接装置では、溶接後の複数の金属部材に作用する応力の方向(第1方向)に向けて延びるように直線状溶接部を形成するので、溶接後の複数の金属部材に対して外部から加わる荷重に対する強度を高めることができる。特に、本態様に係るレーザ溶接装置では、溶接後における複数の金属部材において、高い引張せん断強度を実現することができる。
【0043】
さらに、本態様に係るレーザ溶接装置では、ドット状溶接部に連続する直線状溶接部を形成するので、上記特許文献1に開示の技術のように、ドット状溶接部だけで溶接部を構成する場合に比べて、ドット状溶接部の直径(ドット状溶接部の平面視での面積)を大きくしなくても、さらなる接合強度の向上を図ることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接装置では、溶接時間が長くなるのを防ぎ、溶け落ちの発生を抑制しながら、さらなる接合強度の向上を図ることができる。
【0044】
上記態様に係るレーザ溶接装置において、前記制御部は、前記ドット状溶接部を形成する処理の実行において、前記ドット状溶接部の外周部分での前記レーザ光の照射による入熱量が、前記外周部分よりも内側の内周部分の入熱量よりも多くなるように、前記レーザ発振器および前記走査部を制御してもよい。
【0045】
本態様に係るレーザ溶接装置では、ドット状溶接部の形成において、ドット状溶接部における外周部分の形成に係る入熱量が内周部分の形成に係る入熱量よりも多くなるようにしている。このため、本態様に係るレーザ溶接装置では、ドット状溶接部の形成に続く直線状溶接部の形成において、ドット状溶接部における少なくとも外周部分の金属の溶融状態を維持し易い。換言すると、本態様に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部の少なくとも外周部分の金属が凝固するまでの時間を長くすることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接装置では、直線状溶接部の形成において、ドット状溶接部の外周部分で溶融状態の金属を良好に直線状溶接部に流し込むことができ、高い強度での接合を実現するのに有効である。なお、本態様に係るレーザ溶接装置では、直線状溶接部に流れ込む金属の量を確保し易いので、溶け落ちの発生を回避するのにも有効である。
【0046】
上記態様に係るレーザ溶接装置において、前記制御部は、前記直線状溶接部を形成する処理の実行において、前記直線状溶接部における前記ドット状溶接部の前記外周縁との交点を含む起点部分での入熱量が、前記起点部分から離間した部分である離間部分での入熱量よりも多くなるように、前記レーザ発振器および前記走査部を制御してもよい。
【0047】
本態様に係るレーザ溶接装置では、直線状溶接部の形成において、ドット状溶接部の外周縁との交点を含む起点部分での入熱量を離間部分での入熱量よりも多くしている。このため、本態様に係るレーザ溶接装置では、ドット状溶接部の形成に続く直線状溶接部の形成時に、ドット状溶接部の外周部分の金属の溶融状態を維持し易い。換言すると、本態様に係るレーザ溶接装置では、ドット状溶接部の少なくとも外周部分の金属が凝固するまでの時間を長くすることができる。よって、本態様に係るレーザ溶接装置では、直線状溶接部の形成において、ドット状溶接部の外周部分で溶融状態の金属を良好に直線状溶接部に流し込むことができ、高い強度での接合を実現するのに有効である。
【0048】
なお、本態様に係るレーザ溶接装置では、上記態様に係るレーザ溶接装置のようにドット状溶接部の形成時に、必ずしも外周部分全周での入熱量を内周部分での入熱量よりも多くする必要はない。即ち、本態様に係るレーザ溶接装置では、直線状溶接部の形成時に起点部分の入熱量を多くすることで、ドット状溶接部の形成において外周部分の入熱量を必ずしも多くしなくても、溶融金属を直線状溶融部に良好に流し込むことができ、溶け落ちの発生を回避するのに有効である。
【発明の効果】
【0049】
上記の各態様では、生産性の低下を抑制しながら、金属部材同士の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】第1実施形態に係るレーザ溶接装置の概略構成を示す模式図である。
図2】溶接前における金属部材の配置形態を示す図であって、(a)は、上方からの平面図、(b)は、側方からの側面図である。
図3】レーザ溶接方法を示す図であって、(a)は、ドット状溶接部の形成方法を示す模式図、(b)および(c)は、直線状溶接部の形成方法を示す模式図である。
図4】溶接部の形状と、荷重が加わる方向とを示す平面図である。
図5図4のV-V線断面を示す断面図である。
図6】第2実施形態に係るレーザ溶接方法を示す模式図である。
図7】(a)は、第3実施形態に係るレーザ溶接方法を示す模式図であり、(b)は、第4実施形態に係るレーザ溶接方法を示す模式図である。
図8】(a)は、第5実施形態に係るレーザ溶接方法により形成された溶接部を示す平面図であり、(b)は、直線状溶接部の仮想中心線同士の関係を示す模式図である。
図9】第6実施形態に係るレーザ溶接方法により形成された溶接部を示す平面図である。
図10】(a)は、第7実施形態に係るレーザ溶接方法により形成された溶接部を示す平面図であり、(b)は、第8実施形態に係るレーザ溶接方法により形成された溶接部を示す平面図であり、(c)は、第9実施形態に係るレーザ溶接方法により形成された溶接部を示す平面図である。
図11】第10実施形態に係るレーザ溶接方法を示す図であって、(a)は、ドット状溶接部の形成方法を示す模式図、(b)は、ドット状溶接部の外周縁に再度レーザ光を照射する工程を示す模式図、(c)は、直線状溶接部の形成方法を示す模式図である。
図12】(a)は、確認実験1に用いた溶接部を示す平面図であり、(b)は、直線状溶接部の長さと引張せん断強度との関係を示すグラフである。
図13】確認実験2に用いたサンプルを示す平面図であり、(a)はサンプル1、(b)はサンプル2、(c)はサンプル3、(d)はサンプル4、(e)はサンプル5を示す。
図14】(a)は、サンプル1~5を用いて引張試験を行った結果を示すグラフであり、(b)は、サンプル3~7を用いて引張試験を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0052】
[第1実施形態]
1.レーザ溶接装置1の概略構成
本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接装置1の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0053】
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接装置1は、レーザ発振器10、光路11、集光部12、および溶接ロボット13を備える。レーザ発振器10は、当該レーザ発振器10に接続されたコントローラ(制御部)15からの指令に従ってレーザ光を発振する。集光部12は、走査部としての機能を有し、溶接ロボット13のアーム先端部分に取付けられている。
【0054】
コントローラ15は、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサを有し、構成されている。コントローラ15は、予め格納されたファームウェアを実行することにより、レーザ発振器10および集光部12を制御する。
【0055】
レーザ発振器10で発振されたレーザ光は、光路11を通り集光部12に伝搬される。集光部12では、伝搬されてきたレーザ光が金属部材501における表面に集光する(スポットが形成される)。また、集光部12は、コントローラ15からの指令に従って、金属部材501と金属部材502との重なり部分であるラップ領域500内でレーザ光のスポットを走査する。
【0056】
なお、本実施形態では、光路11の一例として光ファイバーケーブルを用いているが、これ以外にも種々の光路を採用することができる。
【0057】
レーザ溶接装置1は、溶接ロボット13の駆動に係る駆動回路部14も備える。溶接ロボット13は、駆動回路部14に接続されたコントローラ15からの指令に従って、集光部12が取り付けられたアーム先端部分を3次元で移動させることができる。
【0058】
2.金属部材501,502の配置
接合対象である金属部材501,502の配置形態について、図2を用いて説明する。
【0059】
図2(a),(b)に示すように、本実施形態では、金属部材501,502のそれぞれに金属板を採用している。金属部材501,502のそれぞれは、短冊状の平面形状を有する。そして、図2(a)に示すように、金属部材501と金属部材502とは、短手方向の両側辺が揃えられ、長手方向に互いにずれた状態で配置される。
【0060】
図2(b)に示すように、金属部材501と金属部材502とは、側方から見る場合に、互いの厚み方向に間隙Gを空けた状態で配置される。間隙Gは、例えば、0.5mm~1.0mmである。
【0061】
本実施形態では、金属部材501と金属部材502とのラップ領域500で溶接を行う。
【0062】
ここで、図2(a),(b)に示すように、溶接後の金属部材501と金属部材502とには、長手方向に外力Fが加わる。この外力Fの付加により、金属部材501と金属部材502との接合部分に対しては、応力(引張せん断応力)が作用することとなる。本実施形態に係るレーザ溶接は、溶接後に接合部分に作用する応力の方向を考慮する。本実施形態における矢印Fで示す方向が、「第1方向」に相当する。
【0063】
3.レーザ溶接方法
先ず、レーザ溶接の実行においては、コントローラ15は、レーザ発振器10にレーザ光を発振させ、集光部12にラップ領域500の所定箇所にレーザ光を集光させる(レーザ光照射ステップ)。
【0064】
次に、コントローラ15は、レーザ発振器10にレーザ光の発振を指令した状態で、集光部12にラップ領域500内でレーザ光のスポットを走査させる(走査ステップ)。レーザ溶接時におけるレーザ光のスポットの走査方法について、図3を用いて説明する。
【0065】
(1)ドット部形成サブステップ
図3(a)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接では、ラップ領域500内の所定箇所P1の周りを周回するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L1)。これにより、金属部材501,502におけるレーザ光のスポットが周回した領域の金属部材501,502が溶融される。これにより、平面視ドット状(本実施形態では、一例として平面視で略円形状)のドット状溶接部101が形成される。
【0066】
(2)直線部形成サブステップ
次に、図3(b)に示すように、ドット状溶接部101における金属部材501,502が溶融状態の間に、矢印A1で示すように、ドット状溶接部101の外周縁101aから、当該ドット状溶接部101の径方向外側に離間するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L2)。これにより、ドット状溶接部101に対して、当該ドット状溶接部101の外周縁101aで連続する平面視直線状の直線状溶接部102が形成される。
【0067】
なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光のスポットを走査する方向(走査軌跡L2が延びる方向)を、上述の応力が作用する方向(外力Fがかかる方向)に合致させている。
【0068】
次に、図3(c)に示すように、ドット状溶接部101における金属部材501,502が溶融状態の間に、矢印A2で示すように、ドット状溶接部101の外周縁101bから、直線状溶接部102が延びる方向とは反対向きに、当該ドット状溶接部101の径方向外側に離間するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L3)。これにより、ドット状溶接部101に対して、当該ドット状溶接部101の外周縁101bで連続する平面視直線状の直線状溶接部103が形成される。
【0069】
なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光のスポットを走査する方向(走査軌跡L3が延びる方向)も、上述の応力が作用する方向(外力Fがかかる方向)に合致させている。
【0070】
本実施形態では、ドット状溶接部101と直線状溶接部102,103とからなる溶接部100が形成される。
【0071】
4.溶接部100の構造
上記のように形成された溶接部100の構造について、図4および図5を用いて説明する。
【0072】
図4に示すように、レーザ光照射ステップおよび走査ステップ(ドット部形成サブステップ、直線部形成サブステップ)を実行することによって形成された溶接部100は、ドット状溶接部101と直線状溶接部102,103とが互いに連続した溶接部である。即ち、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101の金属部材501,502が溶融状態の間に直線部形成サブステップを実行することにより、ドット状溶接部101と直線状溶接部102,103とからなる溶接部100を形成することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、ドット状溶接部101の平面視での直径D101に対して、直線状溶接部102,103の平面視での長さL102,L103を短く設定している。
【0074】
図5に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法を用いた接合では、ドット状溶接部101だけでなく、直線状溶接部102,103についても、金属部材501と金属部材502との間隙Gが埋められる。これは、ドット状溶接部101の金属部材501,502が溶融状態の間に直線部形成サブステップの実行を開始するためであり、ドット状溶接部101における溶融金属の一部が直線状溶接部102,103における間隙Gに流れ込むことによる。
【0075】
図4に戻って、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおけるレーザ光のスポットを、溶接後の金属部材501,502に作用する応力が作用する方向に合致するように走査する(走査軌跡L2,L3)。これにより、直線状溶接部102は、ドット状溶接部101の外周縁101aから応力が作用する方向(外力Fがかかる方向)に沿って延びるように形成され、直線状溶接部103は、ドット状溶接部101の外周縁101bから応力が作用する方向(外力Fがかかる方向)に沿い、直線状溶接部102とは反対側に向けて延びるように形成される。
【0076】
5.効果
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光の照射および走査により2つの金属部材501,502を接合するので、抵抗溶接で接合する場合に比べて、溶接速度が速く、熱影響が少ない。また、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、金属部材501,502に対して非接触で金属部材501,502の接合を行うことができるので、加工効率が高く、連続溶接による剛性アップを図ることができる。
【0077】
また、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット部形成サブステップにおいて、レーザ光のスポットを周回させて当該部分の金属を溶融・攪拌し、直線部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部101の金属部材501,502が溶融した状態で直線状溶接部102,103を形成するので、図2(b)に示すように金属部材501,502同士の間に間隙Gが空いていても、ドット状溶接部101の溶融金属の一部が直線状溶接部102,103を形成しようとする部分の間隙Gに流れ込むようにすることができる。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、金属部材501,502同士の間に間隙Gが空いていても、えぐれや溶け落ちといった問題が発生するのを抑制することができる。
【0078】
また、ドット状溶接部101の形成工程については、溶け落ちの発生を抑制しながら直線状溶接部102,103を形成するために、ドット状溶接部101から直線状溶接部102,103に流れ込む溶融金属を生成するための工程であるといえる。
【0079】
また、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、レーザ光のスポットを、溶接後の複数の金属部材501,502に作用する応力の方向(外力Fがかかる方向)に向けて走査することとしている。これより、本実施形態に係るレーザ溶接方法で形成される直線状溶接部102,103は、応力が作用する方向に沿って延びる。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法により接合された金属部材501,502では、外部から加わる荷重(外力F)に対する強度を高めることができる。特に、溶接後における金属部材501,502では、高い引張せん断強度を有する。
【0080】
また、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、図4に示したように、ドット状溶接部101の平面視での直径D101に対して、直線状溶接部102,103の平面視での長さL102,L103が短くなるようにしているので、直線部形成サブステップの実行時における溶け落ちの発生などを抑制することができる。
【0081】
さらに、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101に連続する直線状溶接部102,103を形成するので、上記特許文献1に開示の技術のように、ドット状溶接部だけで溶接部を構成する場合に比べて、ドット状溶接部の直径(ドット状溶接部の平面視での面積)を大きくしなくても、さらなる接合強度の向上を図ることができる。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、溶接時間が長くなるのを防ぎ、溶け落ちの発生を抑制しながら、さらなる接合強度の向上を図ることができる。
【0082】
以上のように、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、金属部材501,502を、接合後にかかる外部からの荷重Fに十分に抗することができる高い接合強度で接合することができる。
【0083】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接方法について、図6を用いて説明する。なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、ドット部形成サブステップにおけるレーザ光のスポットの走査方法が上記第1実施形態に係るレーザ溶接方法と異なる。よって、以下では、ドット部形成サブステップでのレーザ光のスポットの走査方法を主に説明する。
【0084】
図6に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、ドット部形成サブステップにおいて、ラップ領域500内の所定箇所P1の周りを周回するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L1)。本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101の外周部分1011でのレーザ光の照射密度が、内周部分1010でのレーザ光の照射密度よりも高くなるようにレーザ光のスポットを走査する。
【0085】
より具体的には、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット部形成サブステップにおいて、内周部分1010でのレーザ光のスポットの走査軌跡を示す線の間隔を相対的に疎とし、外周部分1011でのレーザ光のスポットの走査軌跡を示す線間の間隔を相対的に密とする。このようにドット部形成サブステップにおけるレーザ光の照射密度を外周部分1011と内周部分1010とで変更することにより、外周部分1011での入熱量を内周部分1010での入熱量よりも多くすることができる。
【0086】
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット部形成サブステップにおいて、外周部分1011でのレーザ光の照射密度を内周部分1010でのレーザ光の照射密度よりも高くなるようにすることで、外周部分1011での入熱量が内周部分1010での入熱量よりも多くなるようにしている。これより、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101の外周部分1011で溶融金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部102,103に流れ込む金属の量を確保し易い。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線状溶接部102,103の長さL102,L103をドット状溶接部101の直径D101よりも長くすることが可能であって、高い強度での接合を実現することができるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、ドット状溶接部101の外周部分1011での入熱量を内周部分1010での入熱量よりも多くするために、外周部分1011と内周部分1010とでレーザ光の照射密度を変えることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ドット部形成サブステップにおいて、外周部分1011でのレーザ光のレーザ出力を内周部分1010でのレーザ光のレーザ出力よりも高くするという方法を採用することも可能である。
【0088】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るレーザ溶接方法について、図7(a)を用いて説明する。なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、直線部形成サブステップにおけるレーザ光のスポットの走査方法が上記第1実施形態に係るレーザ溶接方法と異なる。よって、以下では、直線部形成サブステップでのレーザ光のスポットの走査方法を主に説明する。
【0089】
図7(a)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部101の外周縁101bとの交点およびその近傍部分を含む起点部分103aでレーザ光のスポットが所定箇所の周りを周回するように走査する(走査軌跡L31)。そして、起点部分103aの走査に引き続き、起点部分103aよりもドット状溶接部101から離間した離間部分103bで直線状にレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L32)。即ち、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、レーザ光のスポットを起点部分103aで周回させ(走査軌跡L31)、起点部分103aでのレーザ光のスポットの走査に連続するように、離間部分103bで直線状に走査する(走査軌跡L32)。
【0090】
なお、直線状溶接部103の形成についてのみ説明したが、直線状溶接部102の形成においても同様の方法で溶接をおこなうことができる。具体的には、ドット状溶接部101の外周縁101aとの交点およびその近傍部分を含む起点部分102aでレーザ光のスポットが所定箇所の周りを周回するように走査し、当該走査に引き続き起点部分102aよりもドット状溶接部101から離間した離間部分で直線状にレーザ光のスポットを走査することができる。
【0091】
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、走査軌跡L31と走査軌跡L32とからなる走査軌跡L3に沿ってレーザ光のスポットを走査することで、起点部分103aでのレーザ光の照射密度を離間部分よりも高くなるようにすることができる。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、起点部分103aでの入熱量が離間部分103bでの入熱量よりも多くなるようにすることができ、直線状溶接部103の起点部分103a、即ち、ドット状溶接部101の外周縁101bにおける金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部103に流れ込む金属の量を確保し易い。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線状溶接部103の長さL103をドット状溶接部101の直径D101よりも長くすることが可能であって、高い強度での接合を実現することができるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0092】
なお、直線状溶接部102についても、直線状溶接部103と同様に、起点部分102aでレーザ光のスポットを旋回走査することで、当該起点部分102a(ドット状溶接部101の外周縁101a)における金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部102に流れ込む金属の量も確保し易くなる。これより、直線状溶接部102についても、その長さL102をドット状溶接部101の直径D101よりも長くすることができ、高い強度での接合を実現できるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0093】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係るレーザ溶接方法について、図7(b)を用いて説明する。なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、直線部形成サブステップにおけるレーザ光のスポットの走査方法、特に起点部分103aでの走査方法が上記第3実施形態に係るレーザ溶接方法と異なる。よって、以下では、直線部形成サブステップにおける起点部分103aでのレーザ光のスポットの走査方法を主に説明する。
【0094】
図7(b)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、ドット状溶接部101の外周縁101bとの交点およびその近傍部分を含む起点部分103aでレーザ光のスポットがジグザグ状の走査軌跡L33を走査する。離間部分103bでのレーザ光のスポットの走査については、上記第3実施形態に係るレーザ溶接方法と同じである。
【0095】
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、起点部分103aでレーザ光のスポットがジグザグ状の走査軌跡L33を走査するようにしているので、起点部分103aでのレーザ光の照射密度を離間部分よりも高くなるようにすることができる。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、上記第3実施形態に係るレーザ溶接方法を同様に、起点部分103aでの入熱量が離間部分103bでの入熱量よりも多くなるようにすることができ、直線状溶接部103の起点部分103a、即ち、ドット状溶接部101の外周縁101bにおける金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部102,103に流れ込む金属の量を確保し易い。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、直線状溶接部103の長さL103をドット状溶接部101の直径D101よりも長くすることが可能であって、高い強度での接合を実現することができるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0096】
なお、本実施形態においても、上記第3実施形態と同様に、直線状溶接部102の形成に際して、起点部分102aでレーザ光のスポットをジグザグ状に走査することで、当該起点部分102a(ドット状溶接部101の外周縁101a)における金属が凝固するまでの時間を長くすることができ、直線状溶接部102に流れ込む金属の量も確保し易くなる。これより、直線状溶接部102についても、その長さL102をドット状溶接部101の直径D101よりも長くすることができ、高い強度での接合を実現できるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0097】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係るレーザ溶接方法について、図8を用いて説明する。なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、直線部形成サブステップにおいて形成する直線状溶接部の本数が上記第1実施形態とは異なる。以下では、直線部形成サブステップにおいて形成される直線状溶接部の形態を主に説明する。
【0098】
図8(a)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法で形成する溶接部100は、ドット状溶接部101に連続する4本の直線状溶接部102~105を備える。本実施形態においても、ドット状溶接部101の金属が凝固する前に(溶融状態の間に)、4本の直線状溶接部102~105を形成する。
【0099】
4本の直線状溶接部102~105は、ドット状溶接部101の周方向に分散した箇所に起点部分を有する。本実施形態では、具体的には、図8(a)に示すように、4本の直線状溶接部102~105は、互いに90°ずつ角度を変えて形成されている。
【0100】
ここで、図8(b)に示すように、各直線状溶接部102~105の幅方向での中心に仮想中心線LN1,LN2を引く。なお、本実施形態では、直線状溶接部102と直線状溶接部103とが仮想中心線LN1を共有し、直線状溶接部104と直線状溶接部105とが仮想中心線LN2を共有する。ただし、本発明は、これに限定を受けるものではない。それぞれの直線状溶接部102~105が互いに交差する仮想中心線を有するように、直線状溶接部102~105を形成することとしてもよい。
【0101】
図8(b)に示すように、仮想中心線LN1と仮想中心線LN2とは、ドット状溶接部101の形成領域内で互いに交差する。
【0102】
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、仮想中心線LN1と仮想中心線LN2とがドット状溶接部101が形成された領域内で互いに交差するようにしているので、直線状溶接部102および直線状溶接部103が延びる方向(第1方向)に作用する応力と、直線状溶接部104と直線状溶接部105とが延びる方向(第2方向)に作用する応力とがドット状溶接部101の形成領域内の交点P2で合成されることとなる。そして、ドット状溶接部101の形成領域内の交点P2で合成された応力は、交点P2からドット状溶接部101の径方向外側に向けて分散される。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、高い強度での接合にさらに有効である。
【0103】
[第6実施形態]
発明の第6実施形態に係るレーザ溶接方法について、図9を用いて説明する。なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、直線部形成サブステップにおいて形成する直線状溶接部の長さに関して上記第5実施形態とは異なる。以下では、上記第5実施形態との差異を主に説明する。
【0104】
図9に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、ドット状溶接部101と、当該ドット状溶接部101に連続する4本の直線状溶接部102~105とからなる溶接部100を形成する。本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、ドット状溶接部101の金属が溶融状態の間に、4本の直線状溶接部102~105を形成する。
【0105】
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線状溶接部103の長さL103を、他の直線状溶接部102,104,105の各長さL102,L104,L105よりも長くなるようにしている。これは、溶接後の金属部材501,502に対してかかる荷重F1,F2の内、荷重F1の方が外力F2よりも大きいことを考慮したものである。
【0106】
即ち、相対的に大きな応力が作用する方向に向けて形成された直線状溶接部103の長さL103を、相対的に小さな応力が作用する方向に向けて形成された直線状溶接部104,105の各長さL104,L105よりも長くしている。また、直線状溶接部103の長さL103を、ドット状溶接部101の直径D101よりも長くしている。なお、直線状溶接部102の長さL102についても、直線状溶接部103と同様に長くすることも可能である。
【0107】
本実施形態に係るレーザ溶接方法では、直線部形成サブステップにおいて、相対的に大きな荷重F1がかかり、大きな応力が作用する方向に延びる直線状溶接部103の長さL103を、相対的に小さな荷重F2がかかり、小さな応力が作用する方向に延びる直線状溶接部104,105の長さL104,L105よりも長くしている。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法を用いての金属部材同士の接合では、溶接後において金属部材501,502に作用する応力が2方向に作用する場合にも、高い接合強度を実現することができる。
【0108】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態に係るレーザ溶接方法について、図10(a)を用いて説明する。
【0109】
図10(a)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101と、当該ドット状溶接部101に連続する直線状溶接部103とからなる溶接部100を形成し、金属部材501,502の接合を行う。本実施形態でも、ドット状溶接部101の金属が溶融状態の間に直線状溶接部103の形成を行う。これにより、ドット状溶接部101の溶融金属の一部が直線状溶接部103の側へと流れ込み、高い接合強度をもって金属部材501,502の接合を行うことができる。
【0110】
本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、溶接後の金属部材501,502にかかる外部からの荷重を考慮し、応力が作用する方向に延びるように直線状溶接部103を形成している。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0111】
また、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、上記第1実施形態よりも直線状溶接部の本数を減らしているので、溶接に要する時間を短縮することができ、より高い生産性を実現することができる。
【0112】
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態に係るレーザ溶接方法について、図10(b)を用いて説明する。
【0113】
図10(b)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101と、当該ドット状溶接部101に連続する3本の直線状溶接部103,106,107とからなる溶接部100を形成し、金属部材501,502の接合を行う。本実施形態でも、ドット状溶接部101の金属が溶融状態の間に直線状溶接部103,106,107の形成を行う。これにより、ドット状溶接部101の溶融金属の一部が直線状溶接部103,106,107の側へと流れ込み、高い接合強度をもって金属部材501,502の接合を行うことができる。
【0114】
本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、溶接後の金属部材501,502にかかる外部からの荷重を考慮し、応力が作用するそれぞれの方向に延びるように直線状溶接部103,106,107を形成している。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0115】
[第9実施形態]
本発明の第9実施形態に係るレーザ溶接方法について、図10(c)を用いて説明する。
【0116】
図10(c)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接方法では、ドット状溶接部101と、当該ドット状溶接部101に連続する5本の直線状溶接部103,108~111とからなる溶接部100を形成し、金属部材501,502の接合を行う。本実施形態でも、ドット状溶接部101の金属が溶融状態の間に直線状溶接部103,108~111の形成を行う。これにより、ドット状溶接部101の溶融金属の一部が直線状溶接部103,108~111の側へと流れ込み、高い接合強度をもって金属部材501,502の接合を行うことができる。
【0117】
本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、溶接後の金属部材501,502にかかる外部からの荷重を考慮し、応力が作用するそれぞれの方向に延びるように直線状溶接部103,108~111を形成している。よって、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0118】
[第10実施形態]
本発明の第10実施形態に係るレーザ溶接方法について、図11を用いて説明する。
【0119】
(1)ドット部形成サブステップ
図11(a)に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接では、上記第1実施形態と同様に、ラップ領域内の所定箇所P1の周りを周回するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L1)。これにより、平面視ドット状のドット状溶接部101が形成される。
【0120】
(2)ドット状溶接部101の外周縁へのレーザ光の再照射
次に、図11(b)に示すように、ドット状溶接部101を形成した後、直線状溶接部102,103を形成する前に、ドット状溶接部101の外周縁をレーザ光のスポットが周回するように走査する(走査軌跡L4)。
【0121】
(3)直線部形成サブステップ
次に、図11(c)に示すように、ドット状溶接部101の外周縁にレーザ光を再照射した後、ドット状溶接部101の金属部材が溶融状態の間に、ドット状溶接部101の外周縁101aから、当該ドット状溶接部101の径方向外側に離間するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L2)。これにより、ドット状溶接部101に対して、当該ドット状溶接部101の外周縁101aで連続する平面視直線状の直線状溶接部102が形成される。
【0122】
なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、レーザ光のスポットを走査する方向(走査軌跡L2が延びる方向)を、溶接後において応力が作用する方向(外力Fがかかる方向)に合致させている。
【0123】
次に、ドット状溶接部101における金属部材が溶融状態の間に、ドット状溶接部101の外周縁101bから、直線状溶接部102が延びる方向とは反対向きに、当該ドット状溶接部101の径方向外側に離間するようにレーザ光のスポットを走査する(走査軌跡L3)。これにより、ドット状溶接部101の外周縁101bで連続する平面視直線状の直線状溶接部103が形成される。
【0124】
なお、本実施形態に係るレーザ溶接方法でも、レーザ光のスポットを走査する方向(走査軌跡L3が延びる方向)も、上述の応力が作用する方向(外力Fがかかる方向)に合致させている。
【0125】
本実施形態では、ドット状溶接部101を形成した後、直線状溶接部102,103を形成する前に、溶接部101の金属部材が溶融状態の間に、ドット状溶接部101の外周縁にレーザ光を再照射することで、ドット状溶接部101の外周縁101a,101bにおける金属が凝固するまでの時間を長くすることができる。
【0126】
上記のように直線状溶接部102,103に加えて、さらに多くの直線状溶接部を形成しようとする場合には、ドット状溶接部の外周縁へのレーザ光の再照射と直線状溶接部の形成とを交互に行えばよい。このようにドット状溶接部の外周縁へのレーザ光の再照射と直線状溶接部の形成とを交互に行うようにすれば、ドット状溶接部の外周縁における金属が凝固するまでの時間を長くすることができる。
【0127】
従って、本実施形態に係るレーザ溶接方法を用いれば、直線状溶接部102,103に流れ込む金属の量も確保し易くなり、直線状溶接部102,103の長さをさらに長くすることができ、高い強度での接合を実現できるとともに、溶け落ちの発生を回避することができる。
【0128】
[確認実験1]
確認実験1について、図12を用いて説明する。
【0129】
1.実験条件
確認実験1では、金属部材501,502として次のような部材を用いた。
【0130】
・材質:SPFC590
・寸法:L=100mm、W=40mm、T=1.0mm
また、確認実験1では、金属部材501と金属部材とを次のようにレーザ溶接を行った。
【0131】
・ラップ代:40mm
・間隙:G=0.5mm
・ドット状溶接部101の直径:D101=φ4mm~φ6mm
・直線状溶接部102,103の長さ:L102=L103=0mm~6mm
ただし、長さL102,L103については、直径D101以下とした。
【0132】
以上のような条件でレーザ溶接を行い、引張せん断強度を測定した。
【0133】
2.実験結果
図12(b)に示すように、直線状溶接部102,103を形成しなかった場合(L102、L103が“0mm”の場合)には、ドット状溶接部101の直径D101の大きさに従って引張せん断強度が変化した。具体的には、ドット状溶接部101の直径D101がφ5mmの場合には、直径D101がφ4mmの場合よりも引張せん断強度が高くなり、直径D101がφ6mmの場合には、直径D101がφ5mmの場合よりもさらに引張せん断強度が高くなった。
【0134】
また、直径D101がφ4mmの場合には、直線状溶接部102,103の長さL102,L103が長くなるに従って引張せん断強度も微増した。直径D101がφ5mmの場合にも、同様に、直線状溶接部102,103の長さL102,L103が長くなるに従って引張せん断強度も高くなった。なお、直径D101がφ5mmの場合には、直線状溶接部102,103の長さL102,L103の増加に伴う引張せん断強度の上昇度合が、直径D101がφ4mmの場合よりも大きくなった。
【0135】
直径D101がφ6mmの場合にも、直線状溶接部102,103の長さL102,L103が長くなるに従って引張せん断強度も高くなった。なお、直径D101がφ6mmの場合には、直線状溶接部102,103の長さL102,L103の増加に伴う引張せん断強度の上昇度合が、直径D101がφ5mmの場合と同程度となった。
【0136】
以上より、ドット状溶接部101と直線状溶接部102,103とを有する溶接部100を形成することにより、溶接後の金属部材501,502における引張せん断強度を高くすることができることが分かる。なお、直線状溶接部102,103の長さL102,L103については、溶け落ちを生じない範囲で長くすることが、高い溶接強度を得る上で望ましいといえる。
【0137】
[確認実験2]
確認実験2について、図13および図14を用いて説明する。
【0138】
1.実験条件
確認実験2では、金属部材501,502として次のような部材を用いた。
【0139】
・材質:鋼材(SPCC-SD、SPFC590、SPFC980Y)
・寸法:L501=L502=100mm、W=40mm、T=1.0mm
また、確認実験2では、金属部材501と金属部材とを次のようにレーザ溶接を行った。
【0140】
・ラップ代:L500=40mm
・レーザ出力:3000W(SPCC-SDは、3100W)
・走査速度:ドット状溶接部・・250mm/s 直線状溶接部・・100mm/s
【0141】
(1)サンプル1
図13(a)に示すように、サンプル1は、ドット状溶接部101と直線状溶接部102,103とからなる溶接部100を形成して金属部材501,502の接合を行った。サンプル1では、上記第1実施形態と同様に、直線状溶接部102,103を応力が作用する方向に延びるように形成した。
【0142】
なお、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0mm(当接させた状態)とした。また、直線状溶接部102,103の長さL102,L103を4.5mmとした。
【0143】
(2)サンプル2
図13(b)に示すように、サンプル2も、ドット状溶接部101と直線状溶接部112,113とからなる溶接部100を形成して金属部材501,502の接合を行った。ただし、サンプル2では、直線状溶接部112,113を応力が作用する方向に対して直交する方向に延びるように形成した。
【0144】
なお、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0mm(当接させた状態)とした。また、直線状溶接部112,113の長さを4.5mmとした。
【0145】
(3)サンプル3
図13(c)に示すように、サンプル3は、スポット溶接を行い溶接部900を形成した。
【0146】
SPCC-SDでのスポット溶接の条件は、電流値が11000A、加圧力が0.2MPa、通電時間が10Hzである。SPFC590でのスポット溶接の条件は、電流値が9500A、加圧力が0.3MPa、通電時間が9Hzである。SPFC980Yでのスポット溶接の条件は、電流値が9500A、加圧力が0.4MPa、通電時間が9Hzである。
【0147】
なお、溶接部900の直径は、φ5.5mm~φ6.0mmとした。また、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0mm(当接させた状態)とした。
【0148】
(4)サンプル4
図13(d)に示すように、サンプル4は、直線状溶接部901を形成して金属部材501,502の接合を行った。サンプル4では、直線状溶接部901を応力が作用する方向に延びるように形成した。
【0149】
レーザ溶接の条件は、レーザ出力を2000W、走査速度を80mm/sとした。なお、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0mm(当接させた状態)とした。また、直線状溶接部901の長さを15mmとした。
【0150】
(5)サンプル5
図13(e)に示すように、サンプル5も、直線状溶接部902を形成して金属部材501,502の接合を行った。ただし、サンプル5では、直線状溶接部902を応力が作用する方向に対して直交する方向に延びるように形成した。
【0151】
レーザ溶接の条件は、レーザ出力を2000W、走査速度を80mm/sとした。なお、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0mm(当接させた状態)とした。また、直線状溶接部901の長さを15mmとした。
【0152】
(6)サンプル6
図示を省略しているが、サンプル6は、図13(a)に示すサンプル1と基本的に同じ条件で作成した。ただし、サンプル6の作成に当たっては、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0.7mmとした。
【0153】
(7)サンプル7
図示を省略しているが、サンプル7は、図13(b)に示すサンプル2と基本的に同じ条件で作成した。ただし、サンプル7の作成に当たっては、金属部材501と金属部材502との間隙Gを0.7mmとした。
【0154】
2.実験結果
先ず、図14(a)には、サンプル1(Sam1)~サンプル5(Sam5)のそれぞれに対して、引張試験を行った結果を示す。引張試験における引張方向(外部から荷重をかける方向)は、図13(a)~(e)において矢印Fで示した方向である。
【0155】
図14(a)に示すように、サンプル4(Sam4)およびサンプル5(Sam5)は、金属部材501,502の材質にかかわらずサンプル3(Sam3:スポット溶接を行ったサンプル)の半分程度の引張せん断強度しかなかった。また、サンプル4(Sam4)およびサンプル5(Sam5)では、界面破断していた。よって、直線状溶接部901,902だけで金属部材501,502の接合を行った場合には、高い接合強度を得ることができない。
【0156】
また、サンプル2(Sam2)についても、金属部材501,502の材質にかかわらずサンプル3(Sam3)と同等以下の引張せん断強度となった。即ち、直線状溶接部112,113を応力が作用する方向に対して直交する方向に延びるように形成した場合には、ドット状溶接部101の外周縁に応力が作用する結果となり、直線状溶接部112,113による応力緩和効果を得ることができなかったと考えられる。
【0157】
なお、サンプル2(Sam2)では、試験による破断が直線状溶接部112,113の先端からではなく、ドット状溶接部101の外周縁を起点に発生していた。
【0158】
一方、サンプル1(Sam1)では、金属部材501,502の材質がSPCC-SD、SPFC590、SPFC980Yの何れの場合においても(母材強度が300MPa、614MPa、1065MPaの何れの場合においても)、サンプル3(Sam3:スポット溶接を行ったサンプル)より高い引張せん断強度が得られた。
【0159】
また、サンプル1(Sam1)では、破断が直線状溶接部102,103の先端から始まっており、直線状溶接部102,103が応力緩和効果を奏していたことが分かった。そして、サンプル1(Sam1)では、直線状溶接部102,103における破壊モードが、サンプル2(Sam2)のような界面破断ではなくプラグ破断であった。
【0160】
次に、図14(b)には、サンプル3(Sam3)~サンプル7(Sam7)のそれぞれに対して、引張試験を行った結果を示す。なお、図14(b)において、サンプル3(Sam3)~サンプル5(Sam5)の実験結果は、図14(a)に示す結果と同じである。
【0161】
図14(b)に示すように、サンプル7(Sam7)は、サンプル3(Sam3)とほとんど変わらない引張せん断強度となった。即ち、金属部材501と金属部材502との間隙Gが0.7mmでレーザ溶接を行ったサンプル7(Sam7)も、直線状溶接部112,113が応力が作用する方向に対して直交する方向に延びるように形成されたため、応力緩和効果をほとんど奏していないと考えられる。
【0162】
一方、サンプル6(Sam6)は、金属部材501,502との間隙Gが0.7mmである場合においても、サンプル3(Sam3)に対して高い引張せん断強度を得ることができた。特に、金属部材501,502の材質がSPFC980Y(母材強度:1065MPa)の場合には、顕著に高い引張せん断強度を得ることができた。
【0163】
なお、サンプル6(Sam6)でも、破断が直線状溶接部102,103の先端から始まっており、直線状溶接部102,103が応力緩和効果を奏していたことが分かった。また、サンプル6(Sam6)でも、直線状溶接部102,103における破壊モードがプラグ破断であった。
【0164】
以上の結果より、ドット状溶接部101と、当該ドット状溶接部101に連続する複数の直線状溶接部102,103とから溶接部100を形成し、且つ、直線状溶接部102,103を応力が作用する方向に延びるように形成することで、金属部材501,502を高い強度をもって接合することができるといえる。
【0165】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第10実施形態では、2枚の板形状を有する金属部材501,502を接合することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。本発明は、3つ以上の金属部材を接合するのにも用いることができる。
【0166】
また、接合対象である金属部材としては、上記第1実施形態から上記第9実施形態で採用した板形状の金属部材501,502に限定されず、パイプ状、棒状など種々の金属部材とすることが可能である。
【0167】
また、上記第1実施形態から上記第10実施形態では、ドット状溶接部101の形状を平面視で略円形状としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、楕円形状や長円形状、さらには多角形状とすることも可能である。
【0168】
また、上記第2実施形態では、ドット状溶接部101における外周部分1011でのレーザ光の照射密度を、内周部分1010でのレーザ光の照射密度よりも高くすることで、外周部分1011における入熱量を内周部分1010における入熱量よりも多くすることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、外周部分1011でのレーザ出力を内周部分1010でのレーザ出力よりも高くしたり、周回数を増加させたり、断続した円を重ねるように周回させたりすることでも、外周部分1011の入熱量を多くすることができる。
【0169】
また、ドット状溶接部101の外周部分1011における入熱量の増加は、必ずしもドット状溶接部101の外周縁まで行う必要はなく、外周縁よりも若干径方向内側まで入熱量を多くしてもよい。この場合においても、ドット状溶接部101の外周縁について、熱伝達により金属の凝固を遅らせることができ、直線状溶接部102,103への溶融金属の流れ込みを生じさせることができる。
【0170】
上記第3実施形態および上記第4実施形態では、直線状溶接部103の起点部分103aでのレーザ光の照射密度を、離間部分103bでのレーザ光の照射密度よりも高くすることで、起点部分103aにおける入熱量を離間部分103bにおける入熱量よりも多くすることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、起点部分103aでのレーザ出力を離間部分103bでのレーザ出力よりも高くすることでも、起点部分103aの入熱量を多くすることができる。この場合にも、ドット状溶接部101における溶融金属の一部が直線状溶接部103側へ流れ込むようにすることができる。
【0171】
なお、ドット状溶接部101の直径D101に対して、直線状溶接部102~111の長さを短くする場合においては、ドット状溶接部101の外周部分1011での入熱量の増加や直線状溶接部103の起点部分103aでの入熱量の増加などを必ずしも図る必要はない。即ち、ドット状溶接部101の直径D101に対して、直線状溶接部102~111の長さを短くする場合には、上記のような入熱量の増加を図らなくても、溶け落ち等を生じ難い。
【符号の説明】
【0172】
1 レーザ溶接装置
10 レーザ発振器
12 集光部
15 コントローラ(制御部)
100 溶接部
101 ドット状溶接部
102~113 直線状溶接部
103a 起点部分
103b 離間部分
500 ラップ領域
501,502 金属部材
1010 内周部分
1011 外周部分
G 間隙
図1
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