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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】トンネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
E21D11/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020202494
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090237
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小坂 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】北原 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】森下 真那人
(72)【発明者】
【氏名】尾上 聡
(72)【発明者】
【氏名】秋元 寛生
(72)【発明者】
【氏名】林 悠志
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 弘之
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-089386(JP,U)
【文献】特開2005-139887(JP,A)
【文献】特開2011-208351(JP,A)
【文献】特開2011-021434(JP,A)
【文献】特開2005-042368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0058216(US,A1)
【文献】特開平08-013987(JP,A)
【文献】実開昭62-163600(JP,U)
【文献】特開2005-042361(JP,A)
【文献】特開2017-214795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0020321(US,A1)
【文献】実開昭57-202496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製である円弧状のセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを形成すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで円筒状の覆工体を形成することを含む、トンネルの施工方法であって、
継手構造は、隣り合うセグメントの端部同士を突き合わせて接合するものであり、
前記継手構造は、
一方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第1インサート部材と、
他方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第2インサート部材と、
前記第1インサート部材と前記第2インサート部材とを連結する金属製の連結手段と、
を備え、
前記連結手段は第1ボルトと第2ボルトと板状部材とを含み、
前記第1インサート部材は、前記第1ボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有し、
前記第2インサート部材は、前記第2ボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有し、
前記板状部材は、前記隣り合うセグメントの端部同士に跨るように配置され、
前記板状部材には、前記第1ボルトの雄ねじ部が挿通される第1挿通孔と、前記第2ボルトの雄ねじ部が挿通される第2挿通孔とが貫通形成され、
前記隣り合うセグメントの内面には、前記隣り合うセグメント同士で連続するように凹部が形成されて、前記凹部の底面がコンクリート面であり、
前記板状部材と前記第1ボルトの頭部と前記第2ボルトの頭部とが前記凹部内に収容されて、前記板状部材が前記凹部の底面に当接し、
前記トンネルの施工方法は、
前記覆工体の一部であるセグメント群であって、前記継手構造により連結されて組み立てられた前記セグメント群において、前記連結手段を前記セグメント群から撤去すること、及び、
前記連結手段が撤去された前記セグメント群をシールド掘進機のカッタヘッドで切削すること、
を含む、トンネルの施工方法。
【請求項2】
前記第1インサート部材と前記第2インサート部材とは、それぞれ、筒状であり、
前記第1インサート部材の雌ねじ部が前記第1インサート部材の一端側に形成され、
前記第1インサート部材の一端が前記一方のセグメントの前記凹部の底面にて露出し、
前記第2インサート部材の雌ねじ部が前記第2インサート部材の一端側に形成され、
前記第2インサート部材の一端が前記他方のセグメントの前記凹部の底面にて露出する、請求項1に記載のトンネルの施工方法。
【請求項3】
前記継手構造は、
前記一方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第1環状部材と、
前記他方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第2環状部材と、
更に備え、
前記第1インサート部材は、前記第1環状部材内を貫通するように延在しており、
前記第2インサート部材は、前記第2環状部材内を貫通するように延在している、請求項1又は請求項2に記載のトンネルの施工方法
【請求項4】
前記継手構造は、前記一方のセグメントの端部と前記他方のセグメントの端部との双方に埋設された樹脂製の格子状部材を更に備える、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のトンネルの施工方法
【請求項5】
前記板状部材の前記第1挿通孔の内径が、前記第1ボルトの雄ねじ部の外径よりも大きく形成され、
前記板状部材の前記第2挿通孔の内径が、前記第2ボルトの雄ねじ部の外径よりも大きく形成され、
前記第1ボルトにおける頭部と雄ねじ部との間の部分である首部は、円錐台状に形成されて、前記第1ボルトの頭部から雄ねじ部に向かうほど縮径するテーパ形状をなし、
前記第2ボルトにおける頭部と雄ねじ部との間の部分である首部は、円錐台状に形成されて、前記第2ボルトの頭部から雄ねじ部に向かうほど縮径するテーパ形状をなし、
前記第1ボルトの首部のテーパ形状に対応するように、前記板状部材の前記第1挿通孔にはテーパ面が形成され、
前記第2ボルトの首部のテーパ形状に対応するように、前記板状部材の前記第2挿通孔にはテーパ面が形成される、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のトンネルの施工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工用のセグメントの継手構造とトンネルの施工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
地中に形成されるトンネルの一例であるシールドトンネルは、シールド工法により形成される。シールド工法では、例えば、シールド掘進機で地山を掘削しながら、シールド掘進機の後部で次々にトンネル覆工用のセグメント(以下、単に「セグメント」と称する)をトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを構築すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで円筒状の覆工体を構築する。換言すれば、前述の覆工体は、複数のセグメントをトンネル周方向及びトンネル軸方向に連結させることによって構築される。この点、特許文献1には、隣り合うセグメント同士を連結するための継手構造が開示されている。
【0003】
前述の覆工体については、その一部にシールド掘進機のカッタヘッドによって切削可能な部分を設けることがある。その例が特許文献2,3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-336492号公報
【文献】特開2004-36177号公報
【文献】特開2005-61212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、前述の切削可能な部分をシールド掘進機のカッタヘッドで切削するために、当該部分内にセグメントの継手構造が位置しないように、セグメントの特異な割り付けが行われていた(特許文献2,3参照)。これは、セグメントの継手構造(特許文献1参照)の構成要素が金属製であり、この金属製の構成要素をシールド掘進機のカッタヘッドで切削すると支障が出るからである。従って、前述のセグメントの特異な割り付けによって、セグメントの組み立て作業に手間と時間を要していた。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、シールド掘進機のカッタヘッドによる切削が可能なセグメントの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るトンネルの施工方法は、コンクリート製である円弧状のセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを形成すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで円筒状の覆工体を形成することを含む。
手構造は、隣り合うセグメントの端部同士を突き合わせて接合するものであり、一方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第1インサート部材と、他方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第2インサート部材と、第1インサート部材と第2インサート部材とを連結する金属製の連結手段と、を備える。連結手段は第1ボルトと第2ボルトと板状部材とを含む。第1インサート部材は、第1ボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する。第2インサート部材は、第2ボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する。板状部材は、隣り合うセグメントの端部同士に跨るように配置される。板状部材には、第1ボルトの雄ねじ部が挿通される第1挿通孔と、第2ボルトの雄ねじ部が挿通される第2挿通孔とが貫通形成されている。隣り合うセグメントの内面には、隣り合うセグメント同士で連続するように凹部が形成されて、凹部の底面がコンクリート面である。板状部材と第1ボルトの頭部と第2ボルトの頭部とが凹部内に収容されて、板状部材が凹部の底面に当接する。
【0008】
本発明に係るトンネルの施工方法は、覆工体の一部であるセグメント群であって、前述の継手構造により連結されて組み立てられたセグメント群において、連結手段をセグメント群から撤去すること、及び、連結手段が撤去されたセグメント群をシールド掘進機のカッタヘッドで切削すること、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セグメントの継手構造を構成する第1インサート部材及び第2インサート部材が樹脂製である。ゆえに、当該継手構造については、それを構成する連結手段を撤去した後、第1インサート部材及び第2インサート部材を含む残部をシールド掘進機のカッタヘッドによって切削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態におけるトンネルの施工方法を示す図
図2】前記第1実施形態におけるトンネルの覆工体のうち、シールド掘進機のカッタヘッドによって切削され得る部分の一部を地山側と反対の側から見た図
図3】前記第1実施形態におけるセグメントの継手構造を示す図
図4】前記第1実施形態におけるセグメントの連結方法を示す図
図5】本発明の第2実施形態におけるセグメントの継手構造を示す図
図6】本発明の第3実施形態におけるセグメントの継手構造を示す図
図7】本発明の第4実施形態における補強手段を示す図
図8】前記第4実施形態の第1変形例を示す図
図9】前記第4実施形態の第2変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態におけるトンネルの施工方法を示す。
【0013】
既設のトンネル1は、シールド工法により形成されたシールドトンネルである。シールド工法では、図示しないシールド掘進機で地山を掘削しながら、シールド掘進機の後部で次々に円弧状のセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを形成すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで円筒状の覆工体を形成する。この工法では、シールド掘進機は、その後方の既設セグメントリングを推進ジャッキで後方へ押圧し、その反力として発生する推力によって、地山を掘削しながら前進する。
【0014】
本実施形態におけるトンネルの施工方法では、まず、トンネル1内に例えば梁や柱を含む支保工2を設けることで、トンネル1内を補強する。そして、トンネル1の側部に重なるように新たなトンネルを形成する。この新たなトンネルは、前述のシールド掘進機とは別のシールド掘進機4を用いて形成される。トンネル1の覆工体のうち、シールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削され得る部分5には、切削可能な円弧状のセグメント10(図2及び図3参照)が複数配置されている。
【0015】
図2は、トンネル1の覆工体のうち、シールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削され得る部分5の一部を地山側と反対の側から見た図である。以下の説明では、セグメント10のうち、トンネル1の覆工体の内面(内壁面)を構成する表面を「内面」と称する一方、トンネル1の覆工体の外面(地山側表面)に対応する表面を「外面」と称する。従って、図2は、セグメント10の内面11を示す。
【0016】
セグメント10は、シールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削可能なように構成されている。セグメント10は、例えば、鉄筋の代わりにガラス繊維や炭素繊維などの非金属の強化繊維を含んだコンクリート製のセグメントである。
【0017】
セグメント10は、平面視で、トンネル周方向を長辺とし、トンネル軸方向を短辺とする矩形状である。本実施形態では、セグメント10の内面11の周縁部に、複数(図2では8つ)の凹部12が、互いに間隔を空けて形成されている。これら凹部12は、セグメント10におけるトンネル軸方向の両端部及びトンネル周方向の両端部に形成されている。各凹部12は、隣り合うセグメント10同士で連続するように形成されている。
【0018】
図3は、本実施形態におけるセグメント10の継手構造20を示す図である。ここで、図3は、トンネル周方向で隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合する継手構造20を示しているが、これと同様の継手構造が、トンネル軸方向で隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合する場合にも適用可能であることは言うまでもない。
【0019】
以下では、説明の便宜上、トンネル周方向で隣り合うセグメント10のうち、一方のセグメント10に関連する構成要素の符号の末尾に「A」を付し、他方のセグメント10に関連する構成要素の符号の末尾に「B」を付す。ゆえに、一方のセグメント10を「10A」とし、他方のセグメント10を「10B」とする。
【0020】
継手構造20は、筒状のインサート部材21A,21Bと、連結手段22とを含んで構成される。連結手段22は、ボルト23A,23Bと、板状部材24とを含んで構成される。ここで、インサート部材21Aが本発明の「第1インサート部材」に対応し、インサート部材21Bが本発明の「第2インサート部材」に対応する。また、ボルト23Aが本発明の「第1ボルト」に対応し、ボルト23Bが本発明の「第2ボルト」に対応する。
【0021】
インサート部材21Aはセグメント10Aの凹部12Aに埋設されている。
インサート部材21Aは樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。
【0022】
インサート部材21Aは有底円筒状である。インサート部材21Aの一端側(開口端側)には、ボルト23Aの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部が形成されている。ボルト23Aは例えば金属製である。
インサート部材21Aの開口端(雌ねじ部の開口端)はセグメント10Aの凹部12Aの底面にて露出している。
【0023】
インサート部材21Bはセグメント10Bの凹部12Bに埋設されている。
インサート部材21Bは樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。
【0024】
インサート部材21Bは有底円筒状である。インサート部材21Bの一端側(開口端側)には、ボルト23Bの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部が形成されている。ボルト23Bは例えば金属製である。
インサート部材21Bの開口端(雌ねじ部の開口端)はセグメント10Bの凹部12Bの底面にて露出している。
【0025】
板状部材24は例えば金属製であり、矩形状の平板状である。板状部材24は、互いに隣り合うセグメント10A,10Bの凹部12A,12B同士に跨るようにこれら凹部12A,12B内に収容される。
【0026】
板状部材24には、その長辺方向一側と他側とにそれぞれ挿通孔25A,25Bが貫通形成されている。一方の挿通孔25Aにはボルト23Aの雄ねじ部が挿通され、他方の挿通孔25Bにはボルト23Bの雄ねじ部が挿通される。ここで、挿通孔25Aが本発明の「第1挿通孔」に対応し、挿通孔25Bが本発明の「第2挿通孔」に対応する。
【0027】
本実施形態では、板状部材24の挿通孔25A,25Bの各々の中心軸間の距離Lは、セグメント10A,10Bの端部同士の連結が完了した際のインサート部材21A,21Bの雌ねじ部の中心軸間の距離に一致するように設定されている。
【0028】
本実施形態では、ボルト23A,23Bの各々の首部(頭部と雄ねじ部との間の部分)が円錐台状に形成されている。この首部は、ボルト23A,23Bの各々の頭部から離れるほど(換言すれば、雄ねじ部に近づくほど)縮径するテーパ形状をなしている。また、ボルト23A,23Bの首部のテーパ形状に対応するように、板状部材24の挿通孔25A,25Bにはそれぞれテーパ面25AS,25BS(図4(イ)参照)が形成されている。
【0029】
ここで、連結手段22は、インサート部材21Aを介してセグメント10Aの端部とインサート部材21Bとを連結するものである。また、連結手段22は、インサート部材21Bを介してセグメント10Bの端部とインサート部材21Aとを連結するものである。また、連結手段22は、インサート部材21Aとインサート部材21Bとを連結するものである。
【0030】
次に、前述の継手構造20を用いて、セグメント10A,10Bの端部同士を突き合わせて接合する方法について、図4を用いて説明する。
図4は、セグメント10A,10Bの連結方法を示す。
【0031】
この連結方法では、まず、図4(ア)に示すように、セグメント10Aの端面(接合面)10ASと、セグメント10Bの端面(接合面)10BSとを近づけて対向させる。尚、図示は省略するが、セグメント10Aの端面10ASとセグメント10Bの端面10BSとの間の間隙Cにはシール材が介装されている。
【0032】
次に、図4(イ)に示すように、板状部材24の挿通孔25A,25Bのテーパ面25AS,25BS側をトンネル1の内側として、板状部材24を、セグメント10A,10Bの凹部12A,12Bの底面に当接させる。そして、ボルト23A,23Bの雄ねじ部を、板状部材24の挿通孔25A,25Bに挿通し、更に、インサート部材21A,21Bの雌ねじ部に螺合させる。ここにおいて、板状部材24の挿通孔25A,25Bの内径がボルト23A,23Bの雄ねじ部の外径よりも若干大きく形成されており、この若干大きく形成された分が、前述の間隙Cを許容する遊びとして機能し得る。
【0033】
そして、ボルト23A,23Bを徐々に締め込むと、ボルト23A,23Bのテーパ形状の首部が、板状部材24の挿通孔25A,25Bのテーパ面25AS,25BSによってガイドされて、その結果、セグメント10A,10B間の間隙Cが徐々に狭まる。このときに、前述のシール部材がつぶされるように押圧される。
このようにして、セグメント10A,10Bが連結される。
【0034】
尚、ボルト23A,23Bの締め込み方法については、これらの一方を先に締め込み、他方を後に締め込むようにしてもよく、又は、双方を並行して(例えば断続的に互い違いに)締め込んでもよい。つまり、ボルト23A,23Bの締め込み方法は任意である。
【0035】
本実施形態では、トンネル1の覆工体における前述の部分5が、前述のセグメント10の継手構造20により連結されて組み立てられたセグメント群(複数のセグメント10からなるグループ)により構成される。
【0036】
本実施形態におけるトンネルの施工方法は、前述のセグメント10の継手構造20により連結されて組み立てられた当該部分5において、連結手段22(ボルト23A,23B及び板状部材24)を当該部分5から撤去すること、及び、連結手段22(ボルト23A,23B及び板状部材24)が撤去された当該部分5をシールド掘進機4のカッタヘッド4aで切削することを含む(図1参照)。
【0037】
ここで、本実施形態では、連結手段22が、ボルト23A,23Bと板状部材24とによって構成されているので、連結手段22をトンネル1内から容易に撤去することができる。
【0038】
本実施形態によれば、継手構造20は、隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合するものである。継手構造20は、一方のセグメント10Aの端部に埋設されたインサート部材21A(第1インサート部材)と、他方のセグメント10Bの端部とインサート部材21Aとを連結する連結手段22と、を備える。ここで、インサート部材21Aが樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、継手構造20については、それを構成する連結手段22を撤去した後、継手構造20の残部(少なくともインサート部材21A)をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、インサート部材21Aが鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0039】
また本実施形態によれば、継手構造20は、他方のセグメント10Bの端部に埋設されたインサート部材21B(第2インサート部材)を更に備える。連結手段22は、インサート部材21Aとインサート部材21Bとを連結する。ここで、インサート部材21Bが樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、継手構造20については、それを構成する連結手段22を撤去した後、継手構造20の残部(インサート部材21A,21B)をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、インサート部材21Bが鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0040】
また本実施形態によれば、連結手段22はボルト23A(第1ボルト)とボルト23B(第2ボルト)とを含む。インサート部材21Aは、ボルト23Aの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する。インサート部材21Bは、ボルト23Bの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する。ゆえに、連結手段22を構成するボルト23A,23Bとして市販のボルトを用いることができる。
【0041】
また本実施形態によれば、連結手段22は、隣り合うセグメント10A,10Bの端部同士に跨るように配置される板状部材24を更に含む。板状部材24には、ボルト23Aの雄ねじ部が挿通される挿通孔25A(第1挿通孔)と、ボルト23Bの雄ねじ部が挿通される挿通孔25B(第2挿通孔)とが貫通形成されている。ゆえに、連結手段22を簡素な構成とすることができる。
【0042】
また本実施形態によれば、セグメント10は、シールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削可能に構成されており、例えばコンクリート製である。セグメント10は、好ましくはガラス繊維や炭素繊維などの非金属の強化繊維を含んだコンクリート製である。
【0043】
また本実施形態によれば、トンネルの施工方法は、セグメント10の継手構造20により連結されて組み立てられたセグメント群(トンネル1の覆工体における前述の部分5)において、連結手段22をセグメント群(トンネル1の覆工体における前述の部分5)から撤去すること、及び、連結手段22が撤去されたセグメント群(トンネル1の覆工体における前述の部分5)をシールド掘進機4のカッタヘッド4aで切削すること、を含む。ゆえに、トンネル1の覆工体における前述の部分5でのセグメントの割り付けを、当該部分5以外の部分でのセグメントの割り付けと同様に行うことができるので、前述の特許文献2,3のようなセグメントの特異な割り付けを行う必要がなく、ひいては、トンネルの施工効率を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について、図5に基づいて説明する。
【0045】
図5は、本実施形態におけるセグメント10の継手構造20’を示す図である。ここで、図5は、トンネル周方向で隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合する継手構造20’を示しているが、これと同様の継手構造が、トンネル軸方向で隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合する場合にも適用可能であることは言うまでもない。
【0046】
本実施形態においても、前述の第1実施形態と同様に、説明の便宜上、トンネル周方向で隣り合うセグメント10のうち、一方のセグメント10に関連する構成要素の符号の末尾に「A」を付し、他方のセグメント10に関連する構成要素の符号の末尾に「B」を付す。ゆえに、一方のセグメント10を「10A」とし、他方のセグメント10を「10B」とする。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
本実施形態では、セグメント10Bの内面11Bにボルトボックス15が形成されている。ここで、ボルトボックス15は、セグメント10Bの内面11Bに形成された凹部である。
【0048】
セグメント10Bにおけるトンネル周方向の端部には、棒状部材31が挿通される挿通孔16が形成されている。挿通孔16は、その一端側がボルトボックス15の内壁面15aにて開口し、他端側が、セグメント10Bにおけるトンネル周方向の端面10BSにて開口している。また、挿通孔16は、その一端側から他端側に向かうほど(換言すれば、ボルトボックス15から離れるほど)セグメント10Bの外面に近づくように直線状に延びている。また、挿通孔16は、セグメント10Bの端面10BSに対して傾斜するように延びている。
【0049】
本実施形態では、セグメント10Aに埋設されたインサート部材21Aの雌ねじ部の開口端21ATが、セグメント10Aの端面10AS側(セグメント10Bとの接合面側)にて露出している。尚、インサート部材21Aのうち、雌ねじ部の開口端21ATが位置する側の端面21ATSについては、その少なくとも一部が、セグメント10Aを構成するコンクリートなどによって覆われてもよい。つまり、セグメント10Aの端面10ASよりもセグメント10Aの内側にインサート部材21Aの端面21ATSが配置され、この端面21ATSの少なくとも一部をコンクリートなどで覆うように、インサート部材21Aをセグメント10Aの端面10ASよりもセグメント10Aの内側に埋設されてもよい。
【0050】
本実施形態では、セグメント10A,10Bの端部同士の連結が完了した際に、セグメント10Bの挿通孔16とインサート部材21Aの雌ねじ部とが連通するように、具体的には同一軸線上に並ぶように、各々が配置されている。そして、挿通孔16の開口端16aと、インサート部材21Aの雌ねじ部の開口端21ATとが、セグメント10A,10Bの接合面(端面10AS,10BS)にて対向し得る。尚、前述のようにインサート部材21Aの端面21ATSの少なくとも一部がコンクリートなどによって覆われる場合であっても、セグメント10Bの挿通孔16とインサート部材21Aの雌ねじ部とが連通し得ることは言うまでもない。
【0051】
本実施形態では、継手構造20’は連結手段30を含んで構成され、連結手段30は棒状部材31を含んで構成される。棒状部材31は例えば金属製であり、その少なくとも一方の端部に雄ねじ部が形成されている。本実施形態では、棒状部材31は、その基端部に頭部32を有して、残部(先端部を含む)が雄ねじ部をなしている。つまり、本実施形態では、棒状部材31は、その一方の端部(先端部)に雄ねじ部が形成されている。棒状部材31は、いわゆる通しボルトとして機能し得る。
【0052】
本実施形態では、セグメント10Bのボルトボックス15内から、棒状部材31の雄ねじ部を挿通孔16に挿入し、更にインサート部材21Aの雌ねじ部に螺合させることで、セグメント10A,10Bが連結される。このときには、セグメント10Bのボルトボックス15内に棒状部材31の頭部32が配置される。また、棒状部材31の頭部32とボルトボックス15の内壁面15aとの間にワッシャ33が介装されることが好ましい。
【0053】
ここで、本実施形態では、連結手段30を構成する棒状部材31は、セグメント10Bの端部とインサート部材21Aとを連結する機能を実現する。
【0054】
本実施形態では、トンネル1の覆工体における前述の部分5が、前述のセグメント10の継手構造20’により連結されて組み立てられたセグメント群(複数のセグメント10からなるグループ)により構成される。
【0055】
本実施形態におけるトンネルの施工方法は、前述のセグメント10の継手構造20’により連結されて組み立てられた当該部分5において、連結手段30(棒状部材31)を当該部分5から撤去すること、及び、連結手段30(棒状部材31)が撤去された当該部分5をシールド掘進機4のカッタヘッド4aで切削することを含む(図1参照)。
【0056】
ここで、本実施形態では、連結手段30が棒状部材31によって構成されているので、連結手段30をトンネル1内から容易に撤去することができる。
【0057】
特に本実施形態によれば、継手構造20’は、隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合するものである。継手構造20’は、一方のセグメント10Aの端部に埋設されたインサート部材21A(第1インサート部材)と、他方のセグメント10Bの端部とインサート部材21Aとを連結する連結手段30と、を備える。ここで、インサート部材21Aが樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、継手構造20’については、それを構成する連結手段30を撤去した後、継手構造20’の残部(少なくともインサート部材21A)をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。
【0058】
また本実施形態によれば、連結手段30は、少なくとも一方の端部に雄ねじ部を有する棒状部材31を含む。他方のセグメント10Bの端部には、棒状部材31が挿通される挿通孔16が形成されている。インサート部材21Aは、棒状部材31の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する。挿通孔16の開口端16aとインサート部材21Aの雌ねじ部の開口端21ATとが相対して互いに連通している。挿通孔16の開口端16aとインサート部材21Aの雌ねじ部の開口端21ATとは、隣り合うセグメント10A,10Bの接合面(端面10AS,10BS)にて対向してもよい。これにより、継手構造20’を簡素な構成とすることができる。
【0059】
また本実施形態によれば、トンネルの施工方法は、セグメント10の継手構造20’により連結されて組み立てられたセグメント群(トンネル1の覆工体における前述の部分5)において、連結手段30をセグメント群(トンネル1の覆工体における前述の部分5)から撤去すること、及び、連結手段30が撤去されたセグメント群(トンネル1の覆工体における前述の部分5)をシールド掘進機4のカッタヘッド4aで切削すること、を含む。ゆえに、トンネル1の覆工体における前述の部分5でのセグメントの割り付けを、当該部分5以外の部分でのセグメントの割り付けと同様に行うことができるので、前述の特許文献2,3のようなセグメントの特異な割り付けを行う必要がなく、ひいては、トンネルの施工効率を向上させることができる。
【0060】
次に、本発明の第3実施形態について、図6に基づいて説明する。
【0061】
図6は、本実施形態におけるセグメント10の継手構造20”を示す図である。ここで、図6は、トンネル軸方向で隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合する継手構造20”を示しているが、これと同様の継手構造が、トンネル周方向で隣り合うセグメント10の端部同士を突き合わせて接合する場合にも適用可能であることは言うまでもない。
【0062】
本実施形態では、説明の便宜上、トンネル軸方向で隣り合うセグメント10のうち、一方のセグメント10に関連する構成要素の符号の末尾に「A」を付し、他方のセグメント10に関連する構成要素の符号の末尾に「B」を付す。ゆえに、一方のセグメント10を「10A」とし、他方のセグメント10を「10B」とする。
前述の第2実施形態と異なる点について説明する。
【0063】
本実施形態では、セグメント10A,10Bの内面11A,11Bにそれぞれボルトボックス15A,15Bが形成されている。ここで、ボルトボックス15A,15Bは、セグメント10A,10Bの内面11A,11Bに形成された凹部である。
【0064】
継手構造20”は、鞘管(シース管)40A,40Bと、棒状部材41と、ナット42とを含んで構成される。
【0065】
鞘管40Aは、セグメント10Aのトンネル軸方向の端部に複数埋設されている。鞘管40Bは、セグメント10Bのトンネル軸方向の端部に複数埋設されている。鞘管40A,40Bは例えば樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは塩化ビニル樹脂製である。
【0066】
鞘管40Aは、その一端側がセグメント10Aのボルトボックス15Aの内壁面15Aaにて開口し、途中で円弧状に湾曲して、他端側が、セグメント10Aにおけるトンネル軸方向の端面10ASにて開口している。鞘管40Bは、その一端側がセグメント10Bのボルトボックス15Bの内壁面15Baにて開口し、途中で円弧状に湾曲して、他端側が、セグメント10Bにおけるトンネル軸方向の端面10BSにて開口している。鞘管40A,40Bは、セグメント10Aの端面10AS及びセグメント10Bの端面10BSで管路が互いに連通している。
【0067】
棒状部材41は例えば金属製であり、いわゆる曲がりボルトである。棒状部材41は、その少なくとも一方の端部に雄ねじ部を有する。本実施形態では、棒状部材41は、その基端部に頭部43を有して、残部(先端部を含む)が雄ねじ部をなしている。つまり、本実施形態では、棒状部材41は、その一方の端部(先端部)に雄ねじ部が形成されている。棒状部材41は、いわゆる通しボルトとして機能し得る。棒状部材41の雄ねじ部は、円弧状に湾曲している。棒状部材41の雄ねじ部は、鞘管40A,40Bに跨るようにこれら鞘管40A,40Bに挿入される。
【0068】
本実施形態では、セグメント10Bのボルトボックス15B内に、棒状部材41の頭部43が配置されている。一方、セグメント10Aのボルトボックス15A内にはナット42が配置されている。このナット42は例えば金属製であり、棒状部材41の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有する。尚、本実施形態では、ナット42として皿付きナットを用いているが、ナット42はこれに限らない。また、棒状部材41の頭部43とボルトボックス15Bの内壁面15Baとの間にワッシャ44が介装されることが好ましい。
【0069】
本実施形態では、セグメント10A,10Bの端部(継手構造20”が配置される箇所)を補強する補強手段として、棒状の水平補強部材55及び垂直補強部材56が複数設けられている。これら水平補強部材55及び垂直補強部材56は、従来のRCセグメントなどに用いられていた水平補強鉄筋及び垂直補強鉄筋に代わるものであり、例えば炭素繊維補強材やガラス繊維補強材などの非金属の強化繊維補強材によって形成されている。ゆえに、水平補強部材55及び垂直補強部材56をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、水平補強部材55及び垂直補強部材56が鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0070】
本実施形態では、トンネル1の覆工体における前述の部分5が、前述のセグメント10の継手構造20”により連結されて組み立てられたセグメント群(複数のセグメント10からなるグループ)により構成される。
【0071】
本実施形態におけるトンネルの施工方法は、前述のセグメント10の継手構造20”により連結されて組み立てられた当該部分5において、棒状部材41とナット42とを当該部分5から撤去すること、及び、棒状部材41とナット42とが撤去された当該部分5をシールド掘進機4のカッタヘッド4aで切削することを含む(図1参照)。
【0072】
ここで、本実施形態では、セグメント10A,10Bの端面(接合面)10AS,10BS同士の間に、棒状部材41を切断するための隙間(スリット58)が形成されている。それゆえ、曲がりボルトである棒状部材41を撤去する際に引き抜くことが難しくても、当該スリット58に電動ノコギリなどの切断装置を挿入して棒状部材41をその中央部分で切断することができるので、棒状部材41を容易に撤去することができる。
【0073】
特に本実施形態によれば、継手構造20”は、隣り合うセグメント10A,10Bの端部同士を突き合わせて接合するものである。継手構造20”は、セグメント10A,10Bの端部にそれぞれ埋設された鞘管40A,40B同士に跨るように挿入される棒状部材41と、棒状部材41の少なくとも一方の端部に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有するナット42と、を備える。ここで、鞘管40A,40Bが樹脂(合成樹脂)製である。ゆえに、継手構造20”については、それを構成する棒状部材41及びナット42を撤去した後、継手構造20”の残部(鞘管40A,40B)をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、鞘管40A,40Bが鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0074】
次に、本発明の第4実施形態について、図7に基づいて説明する。
図7は、本実施形態における補強手段60を示す。
前述の第3実施形態と異なる点について説明する。
【0075】
本実施形態では、前述の第3実施形態における補強手段の代わりとして、補強手段60を備えている。補強手段60は、セグメント10A,10Bの少なくとも一方に埋設され得る。本実施形態では、セグメント10A,10Bの双方に埋設されている。この点、図7では、セグメント10Aに関する構成のみを図示しているが、セグメント10Bについても同様の構成であることは言うまでもない。
【0076】
補強手段60は、単数又は複数(図7では3つ)の環状部材61a~61cと、格子状部材62と、補強筋ユニット63とを含む。
【0077】
補強筋ユニット63は、各々がトンネル軸方向、周方向、及び径方向のいずれかに延びる複数の棒状の補強筋64により構成されており、これら補強筋64を籠状に組み立ててなる。補強筋ユニット63を構成する補強筋64は、従来のRCセグメントなどに用いられていた補強鉄筋に代わるものであり、例えば炭素繊維補強材やガラス繊維補強材などの非金属の強化繊維補強材によって形成されている。ゆえに、補強筋ユニット63をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、補強筋ユニット63が鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0078】
格子状部材(格子筋)62は、セグメント10Aの端部とセグメント10Bの端部との双方に埋設されている。格子状部材62は、従来の鉄筋格子(バーメッシュ)に代わるものであり、樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、格子状部材62をシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、格子状部材62が鉄製ではないので、防錆効果がある。尚、格子状部材62として、ネフマック(登録商標)を用いることができる。
【0079】
環状部材(フープ筋)61a~61cは、セグメント10Aの端部とセグメント10Bの端部との双方に埋設されている。環状部材61a~61cは、例えば、円形状、楕円形状、角丸多角形状(例えば角丸四角形状)のいずれかであり得る。環状部材61a~61cは、本実施形態では閉じた環状であるが、この他、開いた環状(換言すれば、周方向の一部が切断された環状)であってもよい。鞘管40Aは、環状部材61a~61c内を貫通するように延在している。図7に示す例では、環状部材61a~61cは、鞘管40Aの延在方向に互いに間隔を空けて配置されている。図示は省略するが、鞘管40Bについても同様に環状部材61a~61cが配置され得る。環状部材61a~61cは、樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、環状部材61a~61cをシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、環状部材61a~61cが鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0080】
図8は本実施形態の第1変形例を示す。
図8は、前述の第1実施形態における継手構造20に補強手段60を適用した場合を示しており、図示簡略化のため、補強手段60の構成要素のうち環状部材(フープ筋)61d,61eのみを図示している。換言すれば、補強手段60は、その構成要素として、図示しない格子状部材62と補強筋ユニット63とを含んでいる。環状部材61d,61eは、例えば、円形状、楕円形状、角丸多角形状(例えば角丸四角形状)のいずれかであり得る。環状部材61d,61eは、本変形例では閉じた環状であるが、この他、開いた環状(換言すれば、周方向の一部が切断された環状)であってもよい。
【0081】
本変形例において、本発明の「第1インサート部材」に対応するインサート部材21Aは、本発明の「第1環状部材」に対応する単数又は複数(図8では1つ)の環状部材61d内を貫通するように延在している。環状部材61dは、セグメント10Aの端部に埋設されている。本発明の「第2インサート部材」に対応するインサート部材21Bは、本発明の「第2環状部材」に対応する単数又は複数(図8では1つ)の環状部材61e内を貫通するように延在している。環状部材61eは、セグメント10Bの端部に埋設されている。
【0082】
環状部材61d,61eは、樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、環状部材61d,61eをシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、環状部材61d,61eが鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0083】
図9は本実施形態の第2変形例を示す。
図9は、図5に示した第2実施形態における継手構造20’に補強手段60を適用した場合を示しており、図示簡略化のため、補強手段60の構成要素のうち環状部材(フープ筋)61f,61gのみを図示している。換言すれば、補強手段60は、その構成要素として、図示しない格子状部材62と補強筋ユニット63とを含んでいる。環状部材61f,61gは、例えば、円形状、楕円形状、角丸多角形状(例えば角丸四角形状)のいずれかであり得る。環状部材61f,61gは、本変形例では閉じた環状であるが、この他、開いた環状(換言すれば、周方向の一部が切断された環状)であってもよい。また、図9では、図示簡略化のため、継手構造20’の構成要素のうち連結手段30(頭部32を有する棒状部材31)及びワッシャ33のみを図示している。
【0084】
本変形例において、本発明の「第1インサート部材」に対応するインサート部材21A(図5参照)は、本発明の「第1環状部材」に対応する単数又は複数(図9では1つ)の環状部材61f内を貫通するように延在している。環状部材61fは、セグメント10Aの端部に埋設されている。挿通孔16(図5参照)は、本発明の「第3環状部材」に対応する単数又は複数(図9では1つ)の環状部材61g内を貫通するように延在している。環状部材61gは、セグメント10Bの端部に埋設されている。ここで、連結手段30(通しボルト)を構成する棒状部材31は、環状部材61f,61g内を貫通するように延在している。
【0085】
環状部材61f,61gは、樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、環状部材61f,61gをシールド掘進機4のカッタヘッド4aによって切削することができる。また、環状部材61a~61cが鉄製ではないので、防錆効果がある。
【0086】
特に本実施形態の第1変形例及び第2変形例によれば、継手構造20,20’は、一方のセグメント10Aの端部に埋設された環状部材61d,61f(第1環状部材)を更に備える。インサート部材21A(第1インサート部材)は、環状部材61d,61f内を貫通するように延在している。ここで、環状部材61d,61fが樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、環状部材61d,61fにより、インサート部材21Aの周辺を補強することができる。
【0087】
また本実施形態の第1変形例によれば、継手構造20は、他方のセグメント10Bの端部に埋設された環状部材61e(第2環状部材)を更に備える。インサート部材21B(第2インサート部材)は、環状部材61e内を貫通するように延在している。ここで、環状部材61eが樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、環状部材61eにより、インサート部材21Bの周辺を補強することができる。
【0088】
また本実施形態の第2変形例によれば、継手構造20’は、他方のセグメント10Bの端部に埋設された環状部材61g(第3環状部材)を更に備える。挿通孔16は、環状部材61g内を貫通するように延在している。ここで、環状部材61gが樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、環状部材61gにより、挿通孔16の周辺を補強することができる。
【0089】
また本実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)によれば、継手構造20,20’20”は、一方のセグメント10Aの端部と他方のセグメント10Bの端部との少なくとも一方に埋設された格子状部材62を更に備える。ここで、格子状部材62が樹脂(合成樹脂)製であり、好ましくは繊維強化プラスチック(FRP)製であり、更に好ましくはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。ゆえに、格子状部材62により、セグメント10A,10Bの端部を補強することができる。
【0090】
前述の第1~第4実施形態及びその変形例では、トンネル1の側部に重なるように新たなトンネルを形成する例を示したが、これに加えて、又は、これに代えて、トンネル1の上部及び/又は下部に重なるように新たなトンネルを形成する場合にも、前述の第1~第4実施形態及びその変形例にて説明したセグメントの継手構造を適用することが可能である。
【0091】
前述の第1~第4実施形態及びその変形例にて説明したセグメントの継手構造が適用される地下構造物はトンネルに限らない。例えば、地中に構築される立坑を構成するセグメントの継手構造として、前述の第1~第4実施形態及びその変形例にて説明したセグメントの継手構造を適用することが可能である。
【0092】
以上の説明から明らかなように、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
隣り合うセグメントの端部同士を突き合わせて接合する継手構造であって、
一方のセグメントの端部に埋設された第1インサート部材と、
他方のセグメントの端部と前記第1インサート部材とを連結する連結手段と、
を備え、
前記第1インサート部材が樹脂製である、セグメントの継手構造。
[請求項2]
前記一方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第1環状部材を更に備え、
前記第1インサート部材は、前記第1環状部材内を貫通するように延在している、請求項1に記載のセグメントの継手構造。
[請求項3]
前記他方のセグメントの端部に埋設された第2インサート部材を更に備え、
前記連結手段は、前記第1インサート部材と前記第2インサート部材とを連結し、
前記第2インサート部材が樹脂製である、請求項1又は請求項2に記載のセグメントの継手構造。
[請求項4]
前記連結手段は第1ボルトと第2ボルトとを含み、
前記第1インサート部材は、前記第1ボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有し、
前記第2インサート部材は、前記第2ボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する、請求項3に記載のセグメントの継手構造。
[請求項5]
前記連結手段は、前記隣り合うセグメントの端部同士に跨るように配置される板状部材を更に含み、
前記板状部材には、前記第1ボルトの雄ねじ部が挿通される第1挿通孔と、前記第2ボルトの雄ねじ部が挿通される第2挿通孔とが貫通形成されている、請求項4に記載のセグメントの継手構造。
[請求項6]
前記他方のセグメントの端部に埋設された樹脂製の第2環状部材を更に備え、
前記第2インサート部材は、前記第2環状部材内を貫通するように延在している、請求項3~請求項5のいずれか1つに記載のセグメントの継手構造。
[請求項7]
前記連結手段は、少なくとも一方の端部に雄ねじ部を有する棒状部材を含み、
前記他方のセグメントの端部には、前記棒状部材が挿通される挿通孔が形成されており、
前記第1インサート部材は、前記棒状部材の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する、請求項1又は請求項2に記載のセグメントの継手構造。
[請求項8]
前記挿通孔の開口端と前記第1インサート部材の雌ねじ部の開口端とが相対して互いに連通している、請求項7に記載のセグメントの継手構造。
[請求項9]
前記一方のセグメントの端部と前記他方の端部との少なくとも一方に埋設された樹脂製の格子状部材を更に備える、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載のセグメントの継手構造。
[請求項10]
請求項1~請求項9のいずれか1つに記載のセグメントの継手構造により連結されて組み立てられたセグメント群において、前記連結手段を前記セグメント群から撤去すること、及び、
前記連結手段が撤去された前記セグメント群をシールド掘進機のカッタヘッドで切削すること、
を含む、トンネルの施工方法。
【符号の説明】
【0093】
1…トンネル、2…支保工、4…シールド掘進機、4a…カッタヘッド、5…部分、10,10A,10B…セグメント、10AS,10BS…端面、11,11A,11B…内面、12,12A,12B…凹部、15,15A,15B…ボルトボックス、15a,15Aa,15Ba…内壁面、16…挿通孔、16a…開口端、20,20’,20”…継手構造、21A,21B…インサート部材、21AT…開口端、21ATS…端面、22…連結手段、23A,23B…ボルト、24…板状部材、25A,25B…挿通孔、25AS,25BS…テーパ面、30…連結手段、31…棒状部材、32…頭部、33…ワッシャ、40A,40B…鞘管、41…棒状部材、42…ナット、43…頭部、44…ワッシャ、55…水平補強部材、56…垂直補強部材、58…スリット、60…補強手段、61a~61g…環状部材、62…格子状部材、63…補強筋ユニット、64…補強筋、C…間隙、L…距離
図1
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図9